第95回 消費者委員会 議事録

日時

2012年7月10日(火)16:00~19:45

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 河上委員長、山口委員長代理、小幡委員、川戸委員、
 田島委員、夏目委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
 東京消費者団体連絡センター 矢野洋子事務局長
 全国消費者団体連絡会 阿南久事務局長
 水上貴央弁護士(第一東京弁護士会所属)
 梶川融 太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員
 経済産業省資源エネルギー庁  糟谷電力・ガス事業部長
片岡電力市場整備課長
 武井共夫 日本弁護士連合会副会長
 国府泰道 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長
 山口正行 東北大学大学院法学研究科准教授
 沼尾波子 日本大学経済学部教授
【事務局】
 原事務局長、小田審議官

議事次第

1.開会
2.電気料金について
 (1)電気料金に関する消費者団体・有識者からのヒアリング
○説明者: (消費者団体)
   矢野洋子 東京消費者団体連絡センター事務局長
 阿南 久 全国消費者団体連絡会事務局長
  (電気料金問題検討ワーキングチーム有識者)
   水上貴央 弁護士(第一東京弁護士会所属)
 梶川 融 太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員
 (2)東京電力株式会社の供給約款変更認可申請にかかる査定方針案に関するヒアリング
○説明者: 経済産業省資源エネルギー庁  糟谷 電力・ガス事業部長
片岡 電力市場整備課長
3.地方消費者行政について
○説明者: 武井共夫 日本弁護士連合会副会長
国府泰道 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長
山口正行 東北大学大学院法学研究科准教授
沼尾波子 日本大学経済学部教授
4.その他
5.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:9KB)
【資料1】 東京電力値上げ問題について(水上弁護士提出資料) 【資料2】 (梶川総括代表社員提出資料)(PDF形式:90KB)
【資料3】 (太田教授提出資料)(PDF形式:755KB)
【資料4】 (大塚准教授提出資料)(PDF形式:137KB)
【資料5】 東京電力株式会社の供給約款変更認可申請にかかる査定方針案関連資料(経済産業省資源エネルギー庁提出資料)
(資料5-1) 東京電力の認可申請に係る電気料金審査専門委員会の査定方針案について(PDF形式:298KB)
(資料5-2) 東京電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針案
※経済産業省『東京電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針案』は、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業WARP(http://warp.da.ndl.go.jp/)に掲載されております。www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denkiryokin/pdf/report01_01_00.pdf(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)の保存ページ)を御参照ください
(資料5-3) 「東京電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関する消費者委員会としての現時点の考え方」に対する考え(PDF形式:151KB)
【資料6】 地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実強化に向けた現地ヒアリング調査の結果概要(PDF形式:246KB)
【資料7】 内閣府消費者委員会ヒアリング・発言用レジュメ(日本弁護士連合会提出資料) 【資料8】 地方消費者行政に関するヒアリング資料(山口准教授提出資料)(PDF形式:144KB)
【資料9】 地方消費者行政に関する委員会ヒアリング 発言要旨(沼尾教授提出資料)(PDF形式:156KB)
【参考資料1】 消費者委員会からの依頼事項に対する東京電力の回答(東京電力株式会社提出資料) 【参考資料2】 第3回 地方消費者委員会(千葉)実施結果(PDF形式:95KB)
【参考資料3】 委員間打合せ概要(PDF形式:96KB)
【追加資料】 全国消費者団体連絡会提出資料(PDF形式:44KB)

委員会終了後、電気料金に関する河上委員長の取りまとめ発言を公表しています。
7月10日消費者委員会における河上委員長取りまとめ(PDF形式:13KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきます。
本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第95回)」会合を開催いたします。
本日は、所用によりまして、稲継委員が御欠席、田島委員が若干遅れて御出席の予定となっております。川戸委員、村井委員、小幡委員が若干早めに退席される予定でございます。よろしくお願いします。
それでは、配付資料の確認をお願いいたします。

○原事務局長 配付資料を確認させていただきますけれども、本日は、前半と後半とそれぞれ大変大きい課題を抱えております。途中で休憩も入れたいと思っています。
配付資料は、議事次第と書かれた紙の後ろに一覧をおつけしております。
資料1、資料2、資料3、資料4につきましては、これから有識者の方々にヒアリングを予定しておりますけれども、その関連の資料です。
資料5ですけれども、東電の今回の値上げ申請に係る関連の資料ということで、資源エネルギー庁から御提出いただいた資料です。
資料6は、消費者委員会が地方自治体に出かけていって、現地ヒアリングをした調査結果の概要。
資料7、資料8、資料9は、それぞれ後段、有識者ヒアリングを予定しておりますので、その関連の資料です。
参考資料1といたしまして、「消費者委員会からの依頼事項に対する東京電力の回答」ということで、東京電力株式会社提出資料。
参考資料2といたしまして、第3回地方消費者委員会を先週の土曜日、千葉で開催いたしましたけれども、その実施結果。
参考資料3といたしまして、この間、委員間打合せを実施しておりますので、委員間打合せの概要。
それから、地方消費者委員会を名古屋で7月21日に開催予定ですけれども、そのチラシを配付しております。
もし不足がございましたら、審議の途中でお申出いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

≪2.電気料金について≫

○河上委員長 それでは、早速、議題に入らせていただきます。今日は盛り沢山ですので、よろしくお願いいたします。
初めに、「電気料金について」でございます。この議題につきましては、二部構成という形でお願いしたいと思います。前半は、消費者団体と電気料金問題検討のワーキングチームの有識者メンバーの方々からヒアリングを行いたいと考えておりまして、後半は、東京電力株式会社の供給約款変更認可申請にかかる査定方針案について、経産省から御説明をいただいて、議論を行いたいと考えております。


1) 電気料金に関する消費者団体・有識者からのヒアリング

○河上委員長 まず、前半の消費者団体・有識者からのヒアリングでございますが、本日は、東京消費者団体連絡センターの矢野洋子事務局長、全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長にお越しいただいております。
また、電気料金問題検討ワーキングチーム有識者メンバーのうち、水上貴央弁護士、梶川融太陽ASG有限責任監査法人総括代表にお越しいただいております。
忙しい日程で急遽お願いしたものですから、大変御迷惑をおかけしましたけれども、よろしくお願いいたします。
皆様におかれましては、忌憚のない御意見をお願いしたいと思います。本日、東京電力の家庭用電気料金の値上げについて皆様の御意見を伺った上で、委員として一定の問題意識を共有した上、経産省からの説明を受けたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
説明時間は、大変短くて恐縮ですけれども、矢野事務局長、阿南事務局長には5分ぐらいずつでお願いできればということでございます。更に、少し専門的な内容に入りますので、水上弁護士、梶川さんには、10分ぐらいの枠でお話をいただければありがたいと思います。その後、残った時間で委員と質疑をさせていただくという手順を考えております。よろしくお願いいたします。
まず、矢野さんから始めていただければと思います。よろしくお願いします。

○東京消費者団体連絡センター矢野洋子事務局長 今回は、非常に貴重な検討の場にお呼びいただいて、どうもありがとうございます。時間が限られていますので、早速、意見を述べさせていただきます。
電気料金審査専門委員会に、阿南さんと私は消費者団体の代表としてオブザーバー参加が10回認められました。このことは非常にプラスになった面があります。私ども、消費者の素朴な意見、疑問で随時10回の間に意見を述べましたが、そのことが毎回毎回、マスコミを通じて広く国民に問題点を明らかにしたり、情報をより明確に打ち出したりということが可能になり、そのことでかなりの関心を広げることができました。
ただ、専門委員会の結果としては、あくまでも現行の総括原価方式のルールに基づいての判断ということと、公的資金を導入された企業であり、実質的な破綻状況にある企業ではあるけれども、そのことは今回の検討の材料とはしないという立場で審査が行われました。結果として、公聴会、「国民の声」とさまざま寄せられたことが、決して十分には反映された中身にはなっておりません。
私からは、具体的に論点になったところを中心に、補足として意見を述べたいと思います。
一つ目は人件費です。人件費に関しては、「国民の声」が最も多く寄せられた項目でした。2,000件を超える「国民の声」のうち、1,200件余が人件費についてということで、電気料金そのもの自体は非常に難しい内容を持っていますが、一般の消費者からの感覚としては、まず人件費が、東電の今の状況に対して十分身を切る努力がされているのかどうかというのは、非常に厳しい目があったと思います。
一つは賞与の問題です。夏のボーナスはカットしておりますが、資料5-2の19ページを見ていただくと一覧表が出ておりまして、今年度は既に赤字の決算状況が想定されていますが、期末一時金が計上されています。一般常識として、赤字なのに賞与が出せる状況というのは一体どうなっているのだろうかということは、オブザーバーとしても意見を述べましたが、このことは深く掘り下げはされませんでした。
併せて、1人当たりの平均年間単価ですが、ようやく全国水準と並ぶようになった。東電は20~25%のカットをしているということですけれども、ようやく世間並みになった。むしろこれからが本当にスタートではないか。どれだけ努力をするかということが問われていたわけですが、ここに関しては、3年間平均でほぼ水準だということで、専門委員会では妥当だということになりました。私自身は、たくさんの声が寄せられたという中で、ルールの中で徹底するのであれば、単年度ごと、特に25年、26年は水準を越えていますから、ここについてもやはり水準に近づけた査定がなされるべきではなかったかととらえています。
2つ目は、減価償却費とレートベースの関係です。同じく資料の52ページで、現在稼働していない福島第一の5~6号機、福島第二の1~4号機に関しては、委員会の中でも、かなり判断が困難であるという言葉が何回も綴られています。再稼働の見通しが少なくとも10年はない中で、減価償却を見込むのかどうかということは、委員会の中でも困難性を極めていたにもかかわらず、結果としては入れ込んでいます。本来、レートベースと減価償却というのはセットなので、どちらか一方を抜くということはないわけですが、今回、レートベースに関して東電自らがカットをしていますので、そのことについて意見の中には、2分の1減価償却を入れるべきだというのがありましたけれども、私たち消費者としては、ここは両方とも入れるべきではないという考えを持っておりました。
3つ目は、61ページ、β値に関してです。β値というのもなかなか難しい言葉ですが、これはある意味ではリスク値ととらえていいと思います。61ページは、結果としてマル6番の全国平均の0.82が今回採用されたわけですが、当初、東電は0.9で申請を行っていました。非常にリスクが高い状況にあることを自ら言っているわけです。しかし、ほかのことに関して、東電側の申請はごくごく普通の状況のルールの中での審査を要望していましたから、この辺の矛盾があるわけですが、その辺が委員会の中でも一定論議はされたものの、本当に0.82のβ値が妥当なのかどうか。このことについては、更に論議が必要だったのではないかというふうにとらえています。
最後に、88ページです。福島第一原発で廃炉が決まった1~4号機に関しての安定化費用、現在、多額の賠償が行われていますが、そのためのコールセンター等のさまざま委託をした賠償対応費用、これらが電気料金の原価の中に入り込んでいます。私たちは、今回の特別な事故の中での賠償対応費用というものは、改めて別建て、特損で対応すべきではないかという意見を述べてきましたが、このことも結果としては取り入れられず、中に組み込まれています。ここについては異論を持っております。
細かいところでは具体的にそういうところを述べましたが、以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
続いて、阿南事務局長、お願いします。

○全国消費者団体連絡会阿南久事務局長 私どもは、昨年の暮れに、自由化部門への値上げが東京電力事業者の権利であると言われたときから、一斉に要請活動などをしております。その後、学習活動も取り組んできております。私たちが一番思っていますのは、事故によって苦しんでいる福島県民の人たち、いまだに避難生活を送っている方たちが16万人もいらっしゃるということをなぜに放っておくのか。賠償の方もまだまだ進んでいないわけです。そういう状況を踏まえたときに、東京電力の事故を起こした企業としての責任が問われないまま、その負担というものを、私たち消費者に電気料金の値上げという形で押しつけてくるところが、全く納得ができないということです。そこが基本的な問題です。
そういう観点でずっと活動をしてきて、東京電力からもいろいろ説明を受けました。質問したことに対しては、かなり踏み込んでそれなりに説明はしてくれて、確かに丁寧な説明はしているけれども、聞けば聞くほど、責任逃れをしようとしていると感じてとても腹が立ちます。責任をどう果たそうとしているのか、というところが明確にならないわけです。そこに一番怒りを感じています。
7月4日には、100人ほどの参加で抗議集会を行いました。東京電力からの説明、経済産業省からの説明もやっていただいて、消費者団体それぞれが、自分たちが考えていることをそこで表明しました。本当に怒りがあらわれていたと思っています。
それをまとめましたのが、今日持ってまいりました黄色い紙のその日の決議文です。みんなでつくりましたので、ここにすべての問題意識が記されています。要は、東京電力は、福島第一原発事故の責任を自覚していないということです。そればかりか、経営者が関連企業などへの異動で新しい立場を得ているということ。それはとんでもないことであり、全く理解できないことです。また、燃料費の増大を値上げの理由としているわけですけれども、だとするならば、燃料費の原価や、購入時の商社との契約書など、係る資料をすべて開示して私たちに説明しなければいけないと思います。
さらに今回の電気料金値上げの中には、柏崎刈羽原発の、来年4基、再来年2基、6基の稼働が前提とされていることも問題だと思います。先ほど矢野さんからもありましたけれども、稼働の見込みのない原発、つまり福島第一の5、6、第二の4基の減価償却費までもそこに組み込んでいるということです。10年後には、動く可能性があると言われていますけれども、とんでもない話です。福島県知事は福島県内すべての原発の廃炉を求めています。ですから、今後、稼働する見込みは99.9%以上ないと思います。そういうものの減価償却費をそこに含めるのかという話です。柏崎刈羽の6基は、この3年以内に行われようとしていますが、活断層の問題も上がっています。しかも、今の新潟県知事も、あそこは動かさないと言っています。そういうものを組み込んだ値上げであるということを、私たちは本当に怒りをもって抗議したいと思います。
また、原価の中には、ほかの電力会社からの原子力発電所の電力の購入費1,003億円、福島第一原発の1~4号機にかかる安定化費用と賠償対応費用などを含めていますけれども、これらは電気料金の値上げには算入すべきではないと考えます。
人件費、福利厚生費など、削減率ですが、20%、25%でようやく他企業並みということです。これは、全く消費者にとっては納得できない。破綻して公的資金を導入された企業のやることかということです。もっともっと合理化をすべきだと思います。
また、最後にも書いてありますが、私たち家庭部門は、電気をどこから買うのか選べません。ですから、言いなりなのです。今回の消費者に対する説明は全く不十分です。検針表と一緒にお願いが入りましたけれども、もう決まったかのような表現になっていましたし、意見や要望を書く欄もないです。そんなものは普通ありません。あれだけの値上げをお願いする企業の姿勢としては、全く誠実さに欠けると思います。
以上、抗議集会をやって、決議文も上げましたけれども、今後もこうしたことで取組を進めていきたいと思っております。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、水上さんの方からお願いします。

○水上貴央弁護士 外部有識者の水上でございます。今日は、お時間をいただきまして、ありがとうございます。意見を申し上げます。
まず、まさかこれほど早く取りまとめをされるスケジュールになると思わなかったので、まず一番重要な事業報酬からと思っていたのですが、スケジュール感、急速に進められるような形をお考えのようですので、これまで余り指摘してこなかった委託費の話と買電費用の方からお話ししたいと思います。パワーポイント資料の20ページの方を先に話します。
まず、東京電力は、委託費・修繕費に当たるところですけれども、もともと85%随意契約であったところを70%まで下げるという話をしてきました。それに対しては問題視する意見もあって、60%にしようかみたいな議論はあるわけですが、7割を6割にするというのは、正直、本質的な議論ではなくて、東京電力は事実上、国有の会社になるわけですから、独立行政法人と同様の基準、ほぼ100%競争入札でやらなければいけない形になろうかと思います。
それに当たって、私、5月14日のワーキンググループにおいて、書面で、実際にどれぐらいのコストが削減できるのかを計算するために、具体的にどのようなものを競争入札にするつもりで、競争入札にする予定のものについては何割削減する予定ですかということを聞きました。それを横展開したときに、トータルどれぐらいが妥当なのかという計算ができるということになります。少なくとも昨日現在までの段階で、今日の資料でもしかしたら出るかもしれないけれども、私が見られる形ではその資料は来ませんでした。したがって、どれが妥当なのかということを詳細に検討することはできないことになります。
では、この段階でどうするかということですが、まず、90%以上の競争入札は必要条件にすることが手続論として必要だと思います。次に、そうである以上は、最初から委託費・修繕費については、8掛けでしか積ませないという外形的なルールを設定するしかないと思います。実際には、もっと経営努力をすれば30%、40%削れるかもしれないけれども、そこまで頑張った分は内部留保にしてもいいでしょう。しかし、少なくとも現状、彼らが明確な数字も出してこない以上は、8掛け分しか電気料金には乗せられないということにするのは、現状においてはやむを得ないと思います。
東京電力の側が、絶対20%も削れませんと言うのであれば、もっと詳細なコスト構造を彼らが提示してくるべきだと思いますが、それがなされない以上は、我々としては今ある数字で考えざるを得ないから、今、85%随契なものを90%競争入札にすれば、2割ぐらい減るというのは妥当ではないかということは、それほど不合理な判断ではないと思いますので、8掛けでしか積めないということにする必要があると思います。これによって、値上げにかかる原価については1,000億円程度、電気料金の原価から削減できることになります。
次に、他電力からの原発の買電費用については、今日の資料の中に若干契約内容が書かれているようですが、契約書そのものを見せていただく必要があると思います。というのは、東京電力は私企業で、私企業間の契約なので秘密だという話をしているようですが、それ自体は別に間違いではなくて、秘密にするのはいいけれども、契約内容さえ明かさない状態で、それを電気料金原価にのせることはできないはずです。勝手に秘密で契約を結ぶことは自由ですけれども、秘密である以上、彼らが開示しない以上は電気料金にはのせられないということになります。逆に、のせてほしいのだったら開示してくださいということになるはずです。彼らが、私企業だから絶対に契約書を出さないということであれば、この1,003億円は計上させることはできないということになります。したがって、ここでも1,000億円削減されることになります。まず、ここで2,000億という話になります。
次が、事業報酬の関係です。そもそも事業報酬とは何かという話を、ここで正確にさせていただくと20分ぐらいかかってしまうものですから、最初にお断りなのですが、ワードの方の意見の骨子というところを見ていただくと、その最後に、「なお、上記意見についての補足解説を、以下のホームページにて実施しているので参照されたい」と書いてあります。以下のホームページ上に解説の動画をアップさせていただきましたので、今日、詳細には説明できないので、そちらを是非見ていただきたいと思います。今日はかいつまんで御説明します。
さて、事業報酬ですけれども、事業報酬は何のために積むのかというと、大まかに言うと、自己資本報酬というのは、もともと株主に対する配当と内部留保の原資として積まれているものです。他人資本報酬というのは借金の利息を払うために積まれているものです。いずれも、東京電力が発電事業をするために必要な固定資産、発電所とか、送配電網とか、そういうものを形成するためにはお金を調達してこなければいけないのですけれども、その方法は、株で調達するか、借金で調達するかしかないので、株で調達した分については株主に対するリターンを、借金で調達したものについては利息を返さなければいけないということで、これをあらかじめ電気料金に積んでいるというものになります。
最初に問題を指摘したいのは、自己資本報酬というものです。現在、6.32%が計上されています。パワーポイントの5ページの下の方、実額が1,778億円あって、これは、自己資本で形成されていることになっている(フィクションですが)固定資産2兆8,148億円に、年率6.32%の利回りを賦課しているということです。つまり、株主に対しては年率6.32%の利益分を約束しなければいけないので、あらかじめ電気料金に積ませてくださいということです。
しかし、今の東京電力は、現実には完全に株価はゼロになっていてもおかしくないし、株は紙ぺらになっていてもおかしくないし、実質債務超過の会社ですから、何でこのような会社に対して、我々消費者の負担で6.32%もの株主配当や内部留保の利回りを設定しなければいけないのか、というのが根本的な問題としてあります。これは、原理的にはゼロにするべきだということになります。原理的にはと申し上げましたのは、実は、電気事業法の規則上は上限と下限というのが決まっていまして、その規則を無視しない限りは、今の国債の利回り程度はどうしても積まなければいけないということになります。それでも1%を切る水準だと思いますし、ゼロにすることができるのかという議論はあると思いますが、原理的にはゼロにするべきだということになります。
一方、実質的な理由としては、ここで事業報酬を積まないと福島の損害賠償の返済ができない。特別負担金という形で、東京電力は、福島の損害賠償の支払いのために国から交付されたお金を、返さなければいけないとなっています。その点がもし約束されているのであれば、つまり、自己資本報酬がしっかりと特別負担金になるというルールがもしあるのであれば、それは消費者としても納得する余地があるかもしれない。勿論、先ほども消費者団体の方がおっしゃっていましたけれども、全面的に消費者負担でいいのかという議論はそこにはあると思いますが、少なくとも一定の合理性はあるということになると思います。
しかしながら、11ページを見ていただきたいのですけれども、特別負担金の拠出と事業報酬の間には明確な関連がないということになっています。法制度上は、支援機構法52条の枠組みでは、事業報酬は直接的に特別負担金の原資になっていません。更に本委員会自体で、まさに山口委員長代理が、エネ庁の方にだと思いますが、質問されたときに、特別負担金に拠出することを明確にするルールはつくらない、ということを明示的におっしゃっていましたから、そのつもりはないと言っているわけです。つまり、実質的な特別負担金とのひもづけがなされていない以上、自己資本報酬を積む実質的根拠はないということになります。もし、形式上、どうしても規則は遵守しなければいけないとすれば、一たんは自己資本報酬率を1%台まで下げた上で、国債利回りだから1%切ると思いますけれども、規則の下限まで下げた上で、早急に規則の改正も含めた検討をする必要があると思いますが、少なくとも実質的な根拠はないということになります。
時間がないので、最後、条件のところを申し述べさせていただきます。意見の骨子の(イ)を見ていただきたいのですが、自己資本報酬については、まず、名前を特別負担金拠出勘定という形に改めて、明確に特別負担金とのひもづけをつけることが約束される必要があります。更に、本当に特別負担金に拠出されたのかということを、事後的に、今や東京電力は国の子会社ですから、国とは全く独立した機関によって検証される必要があります。このことが事前に明確にならない限りは、自己資本報酬は積めないということを確認する必要があります。
ちなみに、そもそもの問題を言うと、自己資本報酬を計上する前提になっている自己資本比率の資本構成比が、今、30%は自己資本だという前提で規則上、積まれていますけれども、現実に東京電力の自己資本比率は、日曜日の朝日の記事によりますと、5.6%ということになっている。少なくとも1995年から今まで30%になったことは一度もないということですから、資本構成という点からもこの規則を適用することが余りに現状とかけ離れているのではないか。特に自己資本の関係で言うと、東京電力の自己資本は完全に毀損した状態にあります。資金交付がなければもうやれないという状況になるので、実質の自己資本比率はゼロです。そのようなことを考えたときに、30%自己資本であることを前提にした規則をそもそも適用してよいのかということ自体、問われていると思います。
以上より、意見の骨子でまとめさせていただいた、(ア)、(イ)、(ウ)というもの、自己資本の関係では、特別負担金とのひもづけを明確にするということが骨子です。委託費との関係、買電については、2割の削減と徹底的な情報開示。これらが明確にならない限りは、事業報酬で2,092億、委託費・修繕費で1,000億円強、買電費用で1,000億円強は、原価繰入れを認めることができず、値上げ幅は3~4%程度しか認められないということになります。東京電力がそれ以上の値上げを要求するのであれば、東京電力の側が上記の必要条件を満たす必要がある。つまり、適切な情報を開示したり、契約書を出したりしなければならないということになります。そうでない限り、消費者の利益を代表する消費者庁・消費者委員会は、今回の値上げ幅を極小化することが必要だということになります。
私は、全面的に絶対値上げをしてはいけないと思っているわけではありませんが、現時点では開示されている情報も極めて不十分であるし、議論もできていない。このままでは、3~4%というような極小化したものしか認められないのであって、それ以上の値上げが必要であれば、むしろ東京電力の側にもっと徹底した情報を開示してもらう必要があると考えています。
なお、今日欠席のお二人の先生から、ここだけは言ってくださいというふうに言われているのですが、まず、大塚先生の関係で、少なくとも原発の不稼働期間に係る減価償却費は、電気料金の原価を構成するとは言えないのではないかということ。この点は特に今回の意見書の中でも強く主張したいということですので、申し上げさせていただきます。
太田先生との関係では、手続面だけではなく、今回、この値上げが妥当かどうかということを審査するのだから、原価の内容に踏み込んだチェックがどうしても必要であって、その情報が開示されない以上は専門家として意見を申し上げることはできない、ということをことづかっております。
是非とも早急に具体的な情報を開示していただき、実効的な議論を受けて、まずは一たん何か意見を申し上げられるかもしれませんが、その後の本質的な御提言については、実質的な議論の後にしっかりとしたものを消費者の利益でやっていただければというふうに思います。
以上、意見です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、梶川先生、お願いいたします。

○梶川融太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員 梶川でございます。
皆様、個別の費用項目等のお話をしている中で、また、お時間がない中、私は概括的なお話になってしまうと思いますけれども、少しでも御参考になればということでお話をさせていただきます。
今、あえて話題にすることもないですが、そもそも総括原価とはというところで、これは、実際に公益企業の料金設定の根拠になるものであると同時に、経営管理の目標となる原価という意味合いがあると思います。そもそも原価の構成要素としましては、まさに今、これらが一番問題になるわけですけれども、今後の経営行動によって管理可能な費目というのが当然ございます。これは今回、人件費や委託費も含めまして、まさに原価節減を経営の厳格な移行によってお願いしなければいけない部分というのがございます。
もう一つは、既に投資をされているもの、また、契約行為が行われ、機会原価としては存在してしまっているものというのでしょうか、減価償却費などもありますけれども、こういった種類のものがあります。これはもう既に投資されてしまっているものですから、この原価を算入する、しないというのは、実績と異なった場合、事業体の留保される利益という形の数字として差が出てくるということになると思います。いずれにしろ、何らかの形で減損なり減価償却は行わないわけにいきませんので、これは事業体としては費用項目に出ざるを得ない。ですから、最初の管理可能原価とは意味が違う部分がございます。
最後に、事業報酬と言われる、一定の仮定に基づく事業維持コストというものを、大きく言ってこういう公益企業を維持するために、ある種のフィクションの中でつくられた原価の算定根拠というのがございます。事業報酬は確かにわかりづらい部分だとは思いますけれども、これをどういうふうに考えていったらいいかというのが、今、非常に大きな論点になり、水上先生もこれを現況との比較によってお話しされているということだと思います。
私は別に異論ではないのですけれども、一つの仮定計算に基づく事業報酬をどのようにとらえるかというのは、こういった事業体自身を、今後、全体にどのように運営していくかというテーマにかかります。4の考慮すべき点に挙げていますが、今回、東電の管轄の中の消費者を代表してお話しさせていただいているということは、十分に私も納得していることでございますけれども、ただ、電気料金全体の消費者という意味で言えば、東電管轄以外の電気事業者の消費者というのもあります。
これにある種の仮定計算を用いず実績計算を用いると、変な例えで恐縮ですが、非常にもうかっていない、自己資本が毀損している会社の電力料は少し低めに、もうかっている会社、自己資本が多い会社の電力料は少し高めになり続けるという、そういう傾向になるわけです。企業体の現況と別の、こういう公営企業が本来は維持すべき安定性を持った自己資本比率というものを一つのモデルとして計算されて、ある種それを算入していく、そういう考え方も存在しないわけではないと思います。ただ、今回は非常に特殊なケースで、ほとんど国有化ということなので、通常の公営企業の料金算定の枠組みから出すという話だとすれば、今回の期間内にどういう算定方法があるかということでございますけれども、この辺は、いわゆる仮定計算と実績というものについて、どのように考えていくかという整理が必要だと思います。
これは、前に述べた減価償却とも同じで、両者とも、フィクションと、いわゆる標準的に想定される、ないしは設定されたものと、実績の差というのは、今回の場合には一たん東電の内部留保的なものになりますが、これは私が最も主張したい、これは水上先生と同じですが、この利益が特別負担金に納付されると。ここが確実だという前提でこの後のお話をさせていただきますけれども、そういう前提だとしますと、他の電力管内の消費者との公平性の問題。この問題は、単独で行われている場合にはそれほどではなかったのですが、今回、原発の事故の賠償というテーマで、原賠機構という中に、他の電力会社も入れながら、全体として過去に起こったもの、そして将来に対する賠償金を備えるという、この仕組みの中で言いますと、どこの管内の消費者とのバランスというものがどのようになるかという観点は、少し必要になるのではないかと思います。
このケースでは、特別負担金が確実に納付される。利益、内部余剰になった分が確実に納付されるということが前提になれば、東電という事故に帰責する電力会社の自己資本持ち分であった利益が、賠償金の原資に当たっていくことは、賠償金の負担の考え方からみて、全国の消費者的に見た場合の公平性として妥当性がないとは言い切れないのではないかと思います。勿論、そのために東電の消費者がいたずらに高い料金を甘受するということでは、これは問題かもしれないです。値上げですから、消費者は絶対に痛みがありますし、最大限抑えていただきたいということでございますけれども、この料金設定上のルールが普遍的であれば、こういった事態を起こした管内の電気料金の算定方法と、隣の管内の電気料金の算定方法が異なることについては、一つきちっとした説明が必要になると考えます。全国の消費者の公平性の観点からどのように考えていくかという整理は必要なのではないか。
更に言えば、原子力の賠償の可及的に必要になる損害賠償、被害者の方に対する支払いに対して、ある種の原資を、管内の消費者としても、他の管内の消費者と同様な負担をしていくということは当然のことと言えます。
いずれにしろ、このようなことを確実に担保するというのは、事業報酬もそうですし、その他の本来管理可能な原価もそうですけれども、これが標準的な設定される。私は戦略的標準原価などという言葉を使いましたけれども、更にそれよりも引き下がったとき、その余剰分も合わせて、事業報酬のフィクションの差額と合わせて、これが確実に内部留保、内部利益に上がり、それが間違いなく特別負担金になっていくという、この透明度は間違いなく必要になる。我々の言葉では原価の差額分析と言いますけれども、このプロセスは評価も含めて担保していただきたいという形が、私の専門的な見識からのお願いです。
なおかつ、差額をきちっと分析された上で、特別負担金という原賠機構の損害賠償の原資に行く、このルートを確実に担保していただきたい。これは、東電の経営者のガバナンスもそうですし、監督官庁もそうですし、最後の砦であるこの消費者委員会も、ここに関するきちっとした第三者評価は是非行い続けていってほしいということでございます。一番避けるべきは、フィクションで上がってくるであろう利益が、経営改善が厳格に行われないことによって本来上がるべきものが上がらなかった。これが本来は避けるべき話で、そうなってしまったならば、私もここで意見を述べさせていただくという責任上、これは消費者にとって最も申し訳ないとしか言いようがございません。
ですから、大前提として、ここの部分が正確に分析され、かつ、原賠機構の方に納付される。原賠法の52条が本来の意味を持ってきちっと担保されていく。ここを最後の主張としてお伝えさせていただければと。全体像としましては、個別費用項目については皆さんそれぞれ御意見があると思いますが、事業報酬のところ、一見、水上さんと違うのかもしれませんけれども、思いは同じ部分が強くあると思います。そのような形で整理させていただければと思います。
以上、長くなりましたけれども、申し訳ございません。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
残り10分ぐらい、委員の方から御意見、御質問を伺った方がいいかと思いますので、よろしくお願いします。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 お忙しいところをありがとうございます。
まず、矢野さん、阿南さんにお聞きしたいのですが、今回の東京電力の値上げの問題につきましては、公聴会あるいは「国民の声」、消費者団体からの意見聴取の機会が設定されました。その結果として、専門委員会の結論らしきものが出ているわけですが、消費者の声、公聴会や「国民の声」、消費者団体からの意見聴取がどういうふうに生かされたのか。あるいは、お二人はアドバイザーという形で専門委員会に毎回出席なさったわけですが、その結果として、どういうふうにこの専門委員会の結論に反映されたとお考えなのか。そこのところの感想や、今後の改善点について、御意見があれば伺いたいと思います。
それから、お聞きしている限り、水上さんと梶川さんの意見は理念的には真っ向から対立しているような感じがしたのですが、私自身、気持ち的には水上さんの御意見はよくわかりますけれども、一番の隘路は、実は経産省令で一般電気供給約款料金算定規則という規則があります。その第4条に、「報酬率は、次の各号に掲げる方法により算定した自己資本報酬率及び他人資本報酬率を30:70で加重平均した率とする」とありまして、自己資本報酬率はこれこれに算定した率、他人資本報酬率はこれこれで算定した率だとあります。
委員会としては、今年の3月30日に有識者懇談会でまとめられたものに基づいてつくられた審査要領、これについては、必ずしも縛られないで検討すればいいと思っていますが、国家機関の一つである以上、省令を無視するわけにはいかない。エネルギー庁の説明もよくわからない部分がありますが、この省令をそのまま素直に解釈すると、どうしても7:3という数字は自ずから出てくる。それから、他人資本報酬率1.61というのがこの規則の4条の条文から出てくる。自己資本率6.32%というのもここから出てくる、というような御説明があるわけです。その辺についてどういうふうにお考えなのか。この省令をちゃんと解釈しても十分に今の水上論理が成り立つのかどうか。ここは慎重に検討しなければいけないと思いますので、時間が限られていると思いますが、端的に御説明いただければと思います。

○河上委員長 では、矢野さんからお願いいたします。

○東京消費者団体連絡センター矢野洋子事務局長 たくさんの声が寄せられて、それらの声にできるだけ応えていこうという姿勢はあったと思いますが、あくまでも専門委員会はルールに基づいてということで審査が行われました。ただ、公聴会、「国民の声」、消費者団体からの意見聴取については、すべて情報は専門委員会に出されましたし、途中段階で、「国民の声」の2,000余りの声は非常に分厚いものでしたが、それも全部資料提供されました。
実は、今日出されている査定方針案の5-2の中に、そのことについてどう対応したかというのは一つひとつ専門委員会なりのコメントはあるわけです。ルールに基づいて最大限の努力を行ったことと、一方で、たくさん消費者から寄せられた声の中には、ルールに直接かかわるというよりも、むしろ総括原価方式や原子力発電所の問題等、今後の制度や課題に結びつく問題が非常に多かった。このことは可能な限り、最後の方に「今後に向けて」というところがありますが、そこに一定取り込みはされたということで、全く無視はされていないけれども、結果としては、声を聞き入れた結果にはなっていないという状況です。

○河上委員長 阿南さん、何かありますか。

○全国消費者団体連絡会阿南久事務局長 同じように思います。公聴会は2か所だけで、東京と埼玉だけでした。東電管内という意味で言えば、茨城とか、栃木、群馬とかでも行われるべきだったと思います。そうしないと消費者団体も参加は難しいです。交通費も手当も何もない。そういう中で、遠くから参加するのはなかなか大変なわけです。そういう場がもう少し細やかにあってしかるべきだったと思います。そして、もともと、このような消費者の暮らしに直接影響の大きい問題について、消費者参加で検討する仕組みがないこと自体、問題なのではないかと思いますので、今後はそれを制度化すべきだと思います。

○河上委員長 水上先生、どうぞ。

○水上貴央弁護士 ワードの縦書きの2ページ目、※印の「この点に対し」というところを見ていただければと思います。1段落目と2段落目は、そもそも今の時点の東京電力に対してこの規則を適用することは本当に妥当なのか、著しく事情の変更があるではないかという主張をしています。これは、私はそのとおりだと思っていて、例えば、あるべき資本構成比の自己資本比率は30%というけれども、実態は5%台で、更に言うと、それでさえも資金交付によってかさ上げされている数字だということを考えると、余りに実態とかけ離れているという意味で、著しく事情変更があるという考え方は妥当だと思います。
一応国の機関なので、規則には従わなければいけないという前提に立ったとした場合の話が「次に」というところですが、「もしも規則を適用すべきとの前提に立ったとしても、規則第4条4項に、自己資本報酬率の下限は『国債、地方債等公社債の利回りの実績率』とあり、実質国有企業である東電においては、国債利回りの実績を基準に考えるべきである」と。これは東京電力の資料では、勝手に社債も含めた平均にしていますけれども、公社債を含めた平均にすることは何にも規則上、書かれていないので、東京電力は今や国有の会社ですから、国債利回りを前提に考えるべきだと思います。それと、1%をはるかに切る率になりますから、自己資本報酬率の下限は、6.32%どころか1%を大幅に割るというところが規則上の下限です。
ですから、規則上6.32%になるというのは、もしそうなのであれば、私はエネ庁の方に説明を聞きたいと思いますが、法律家として規則を読む限りでは、とても6.32という数字の計算根拠は、規則上、読み取ることができません。審査要領の方には書いてありますので、審査要領には拘束されないということを前提に、規則にだけ拘束されるのだとすると、私の申し上げているゼロというのはやりすぎだという議論はあるかもしれませんが、それでも1%を大きく切る水準までは下げられる、ということは補足させていただきたいと思います。
もう一点だけ。梶川先生との間では、一見、意見が対立しているようですけれども、少なくとも特別負担金との間で明確なひもづけがない限りは認められないという点については、明確に一致しています。この点は争いがないということは、まずしっかり整理をしたいと思います。
その関係で言うと、先ほど、ほかの電力会社の消費者との関係という話をしましたが、この問題はそうではないと思います。あくまで株主と東電、消費者の関係、及び債権者と東電、消費者の関係であると思います。なぜなら、今回の事業報酬の計上が認められなかったからといって、それによってほかの電力会社の料金が上がるわけではないです。ですから、そこは必ずしもほかのところとのバランスという話ではないと思います。
最後に、後で経産省でこの点については逆に反論があるかもしれません。特別負担金拠出勘定にすると、それによって債務超過になってつぶれてしまいますという説明がもしかしたらあるかもしれませんが、恐らくそれはミスリードですので、うのみにされないようにしてください。それから、そこを動かすと、ほかの数字が動いてやはり同じになりますという説明があるかもしれませんが、それもミスリードですので、うのみにされないでください。反論させていただければ、必ず合理的な反論をさせていただきますので、あらかじめお話しさせていただきます。

○河上委員長 予定していた時間が来てしまいましたが、これだけはという質問はまだありますか。よろしいですか。
それでは、短い時間で申し訳なかったのですけれども、御出席の皆様には本日は貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。いただきました御意見につきましては、委員会における今後の検討の参考にさせていただきます。 皆様におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、大変ありがとうございました。

2) 東京電力株式会社の供給約款変更認可申請にかかる査定方針案に関するヒアリング

○河上委員長 続きまして、「電気料金の値上げ申請にかかる査定方針案に関するヒアリング」を行いたいと思います。
経済産業省の資源エネルギー庁におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。消費者委員会では、東京電力の家庭用電気料金値上げ申請に関して、これまで、5月29日、6月12日、6月19日の3回にわたりまして議論を行ってまいりました。委員から提起された疑問や課題につきましては、6月19日に「東京電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関する消費者委員会としての現時点の考え方」ということで公表させていただきました。
また、去る7月5日の経済産業省における電気料金審査専門委員会で示されました認可申請にかかわる査定方針案については、同日付で消費者庁に協議がかけられ、更に、消費者庁長官から消費者委員会に対して、これに対する意見を求めるという付議がございました。
本日は、この付議を受けまして、査定方針案の概要や、委員会による考え方における指摘事項に対して、どういうふうに対応されたのかという辺りを中心に御説明をいただき、議論を行いたいと考えております。査定方針案そのものは既に公表されている資料でもございますので、なるべくコンパクトな形で御説明をいただければありがたいと思います。
経済産業省資源エネルギー庁からは、糟谷事業部長、片岡整備課長においでいただいておりますので、よろしくお願いいたします。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 まず、資料5-2をごらんください。去る7月5日、先週の木曜日に、電気料金審査専門委員会でまとめていただきました「査定方針案」です。既に繰り返しの部分がありますので、その経緯だけ簡略に申し上げますが、3~4ページにかけて、5月15日から10回開いて、配付資料を含めてすべて公開の形式で開催いたしました。第1回会合で、自治体、消費者団体、中小企業団体の関係者を招いて意見を聴取いたしました。第8回会合においても、消費者団体を公募の上、意見聴取を行いました。1回から10回のすべてにおいて、阿南さん、矢野さんをはじめ、消費者庁の長谷川課長を含めオブザーバーとして参加いただきました。
実際の料金の査定のベースとなります具体的な契約や資料につきましても、6月12日の第5回の会合以降、委員が2人1組となって、担当分野を決めまして、それぞれ守秘義務を負っていただいた上で、契約書のコピーを含む資料を確認していただいて、それに基づいて担当分野ごとに査定方針を検討いただきました。委員から事務局に対するヒアリング時間は、延べ33回56時間でございます。
それと別に経済産業省の事務局として、委員からのヒアリングを受ける前に、5月15日から25日まで2週間弱、電気事業法に基づく立入検査である特別監査を実施しまして、帳簿等を直接確認いたしました。ここで確認した帳簿の事実等は、2人1組となって委員の確認をいただいているところであります。
今回の専門委員会の審査に当たっては、5ページ目の(ク)のところですが、電気事業法もくしは同法に基づく規則等、あらかじめ定められたルールにのっとりまして、査定方針案を中立的・客観的かつ専門的な見地から検討をいただきました。東京電力は、福島の第一原子力発電所の事故によって公的資金を注入される企業ですので、これを踏まえ、既存のルールにかかわらず特別の対応をすべきだという強い御意見を、消費者代表のオブザーバーの方をはじめとして、公聴会、「国民の声」でも多数寄せられました。これを認識した上で、専門委員会としては、あらかじめ定められたルールに従ってこの認可申請は行われており、申請後にルールを変更することは、このルールが一般電気事業者すべての認可申請時に適用し得るものである以上、特定の事業者に有利不利な扱いを、公的資金があるかどうかということですべきではないという公平性の観点、それから、ほかの一般電気事業者を含む事業者にとっての行政手続上の予見可能性の観点からも、東京電力に対して特別のルールを適用することは適当でない、という考え方をまとめられたわけであります。
原子力発電所事故による東京電力の責任の在り方の議論についても、この専門委員会の目的を超えるものと言わざるを得ない、という結論をまとめられております。
それから、消費者委員会として6月19日付で現時点の考え方というのをいただきました。これをそれぞれの項目ごとに、査定方針案でどういう考え方をとったかということを資料5-3にまとめております。膨大になりますので、これに基づいてかいつまんで御説明を申し上げます。
まず、人件費でありますが、最初は福利厚生費であります。原価と認めるのは法定厚生費に限るべきではないか、それ以外の福利厚生費は利益の中から工面すべきではないかという御指摘をいただきました。これに対して専門委員会では、一般厚生費の中には、労働安全衛生法、次世代育成支援対策推進法といった法令等に定められた、企業としての責務を果すためのものが含まれていることから、原価に算入せず利益からのみによる支給を求めることは適当ではないという判断であります。結果として、常用労働者1,000人以上の企業の平均値と比べまして、それを下回っているということで、申請内容は妥当だという判断をまとめていただいております。
人件費の2つ目でありますが、公的資金が資金注入された東京電力の人件費について、他の公益企業と同レベルを維持することは一般の理解を得られにくいのではないか、更に圧縮できるのではないか、そういう御指摘であります。これについては審査要領では、賃金構造基本統計調査における常用労働者1,000人以上の企業の平均値を基準とすると定めておりまして、この基準が客観的かつ明確であること。この基準が、ほかの電力会社の料金改定時も適用されるものであることから、この基準に沿って査定を行う。統一的に適用すべきであるという御判断であります。専門委員会としては、公的資金が注入されることによってどうかということについては、公的資金注入時に議論すべき論点であって、この専門委員会で検討することは困難であるという結果になっております。
なお、ほかの公益企業、ガス会社等との比較ですが、ガス会社の基準賃金、賞与の1人当たり水準が644万、電力を除く公益企業の平均が625万、これに対して東京電力の申請は556万でありまして、これを下回っているということであります。
2つ目に、競争入札、随意契約についての御指摘であります。まず、競争入札比率を高める目標、これは申請段階で、東京電力の申請では30%ということで申請があったわけですが、これを更に高めるべきではないかという御指摘です。これについては、先週木曜日の電気料金審査専門委員会に東電の廣瀬新社長が出席しまして、そこで、競争入札の比率を5年間で60%にすることを目指すという発言をしております。
2ページ目ですが、随意契約をせざるを得ない場合でも、取引先である子会社、関連会社の費用削減目標を更に高めるべきではないかという御指摘をいただきました。これについては、専門委員会の査定方針案では、東京電力が子会社、関連会社へ発注するか否かを問わず、随意契約を行う取引に係る必要について、去年の秋に行われました東京電力に関する経営・財務調査委員会で、9.6%の単価低減を図ることが可能であると推計されていることを勘案いたしまして、各費用項目の性格に応じて、つまり、コストの削減を求めることが困難な費用、例えば電車の料金でありますとかそういうものを除いて、コストの削減額が原則10%に満たない場合には未達分を減額するという、減額査定の方針が出されております。
3番目に、燃料費であります。燃料の購入価格水準、燃料の負担増を全額、値上げに賦課することの再検討が必要ではないか。燃料費圧縮のための作業を考えていただきたい、とう御指摘をいただきました。これに対して、右側に石油、LNG、石炭と書いてありますが、このうちLNGの購入価格につきまして、原価算定期間中に価格の更新時期を迎えるLNGのプロジェクトが4つあります。このプロジェクトについて、東京電力の認可申請では、最近、単価が値上がりしていることを踏まえて、値上げを織り込んだ価格で申請が出てきていたわけですが、この交渉努力を先取りする形で、直近の実績レベルまで原価を減額するという減額査定をされております。石油、石炭については、確認をした上で、妥当であるということが示されているところであります。
4番目の購入電力料であります。日本原子力発電等からの電力の購入がないにもかかわらず、購入電力料として年平均で約1,000億円を支払うことについて、理由が不明確ではないかという御指摘でありました。これについては、購入の相手方との契約書原本等を確認いただきまして、2つの理由で料金原価に算入することを認めることが適当であるという方針であります。
理由の第1として、当該原子力発電所は、契約の相手方との共同開発であると認められるということ。第2に、このため、人件費、修繕費や減価償却費等の維持管理費用、将来の投資に向けた費用についても、自社電源同様、負担する義務があると考えられる。この2つの理由を掲げた上で、料金原価に算入することを認めることが適当とされております。
他方、契約の相手方に対して東京電力が効率化努力を求めていくべきであり、既設分の減価償却費や固定資産税といった効率化の努力が見込めない費用を除く部分、つまり、人件費や修繕費について、東京電力自身による効率化努力分と比較して、既に織り込まれている効率化努力分では足りない分については原価から削減すべきであるということで、根っこは含めるものの、効率化を行うことによって削減の査定をするという方針が出されています。
5番目の点、事業報酬・減価償却費であります。福島の第一原発6号機、福島第二原発について、減価償却費等が原価に含まれていることについて問題がないのかという御指摘でありました。これについて審査要領上は、長期停止発電設備については、原価算定期間内に緊急時の即時対応性を有すること、改良工事中などの将来の稼働の確実性を踏まえてレートベースに算入する。電力会社からの同種の設備と比較して、著しく低い稼働率となっている設備に係る減価償却費等の営業費については、正当な理由がある場合を除き、原価算入を認めないとなっているところであります。
ちなみに、福島第一の5~6号、第二原発については、レートベースには算入しない形で認可申請がされておりますので、あくまでここでの議論は減価償却費に限ってのものであります。
その上で、(2)のところですが、5~6号機、第二の1~4号機については、マル1として、主要設備について現時点で大きな損傷が見つかっておらず、設備としては健全であると言えること。マル2として、東京電力において改良工事を実施していまして、廃炉を行うという判断を行っていないこと。原子力発電所については、(3)のマル3のところでありますが、安全・安心を確保しつつ、地元の理解を得て、再稼働させることが可能か否かが将来の再稼働の見通しに大きな影響を与えるわけですが、他方、福島県内の御地元が、5~6号、第二原発を廃炉にすべきということをおっしゃっている中で、再稼働が想定し得ないという強い御意見があったわけでありますが、専門委員会として、将来の再稼働の見通しについて専門的見地から判断できるものではない。こうした事情から、再稼働が見込めないということが、専門委員会として正当な理由に該当するかどうかを判断することは困難である、とされたところであります。
(4)ですが、これらの原子力発電所、今後10年間の稼働は未定とされているわけですが、同時に、原子力災害対策特別措置法に基づく緊急事態応急対策、もしくは原子力災害事後対策を実施中でありまして、稼働を現時点で行わないことについての一定の正当な理由もあるということです。
以上から、(5)でありますが、原価算定期間終了後、将来にわたって再稼働しないと確定的に判断することはできない。また、現時点で再稼働が見込めないことに一定の正当な理由があると考えられる以上、減価償却費を全額料金原価に算入することが妥当であると考えられる。そういう査定方針をまとめられております。
他方、なお書きのところでありますが、建設仮勘定の場合、資産価値の1/2をレートベースに算入している例があり、これも全額を原価として認めるのではなく、一定額の減額を行う余地があるということをおっしゃる委員の方もおられました。この少数意見を、なお書きのところに付記しております。
(6)は、減価償却は自動的に開始されるものですので、このことを原価に織り込まないことによって、その部分を誰がどのように負担するかという問題が生じることに留意することが必要である、とされたところであります。
次に、柏崎刈羽原子力発電所について、順次稼働させるという仮定を置いて今回の認可申請が出てきておりますが、一定の不稼働期間があることから、原価算定に当たって、建設中の設備と同様の仮勘定としての扱い、つまり1/2を算入する、そんな例にならった扱いができないのかどうか。
原子力発電所が停止したために、燃料費が増えたことが今回の値上げ申請の要因であるところ、減価償却費を原価に含めると、発電費用の二重計上になるのではないか。したがって、減価償却費を柏崎刈羽についても、不稼働期間中は原価から除くべきではないか、こういう御指摘をいただきました。
これについても明示的に示した上で、専門委員会で御議論をいただきました。柏崎刈羽については、一定の仮定を置いて申請をしていることを触れた上で、ピーク対応電源などの火力発電については、季節的に稼働する、本当にピークのときだけ稼働するという火力発電もございます。柏崎刈羽について御指摘のような扱いをすることによって、火力発電についてもピークのときだけ勘案をして、それ以外の期間は原価算定期間に織り込まないということではないか、そんな議論が生じるわけであります。
火力発電所については、ピーク時間帯だけ使う電源についても、動く時間帯以外を原価から入れない、そういう扱いはしていないわけであります。また、原子力発電所も、13か月動きますと、3~4か月定期検査を行うわけで、この定期検査期間中、原価算定期間から外すという扱いもしていないわけであります。こういうことを考えると、これらを直ちに原価算定不可と。つまり、止まっている期間について直ちに原価算定をしないということは、電気事業の実態から見て適当ではなく、また、会計上の資産価値と収益の整合性の観点からも、適当とは言えないという取りまとめになっております。
続いて、6ページ目であります。公的資金が資本注入される東京電力においては、事業報酬率について、事情変更としてその実情に即した算定方法が考えられないかという御指摘であります。
これについて、現在の電気料金の総括原価方式においては、実は1960年まではそれぞれの会社のそれぞれの事情を勘案して行っておりました。その結果、それぞれの会社の資本構成の差によって原価水準に差が生じる。また、それぞれの事業者の資金調達コストを下げようというインセンティブが働きにくかった。そういうことを考えて、電力会社一律の事業報酬率を設定することに1960年にしたわけであります。
そういう制度の趣旨から考えますと、東京電力の事業報酬についても、機構法に基づく資金援助をするということ。そういう変化を勘案するのではなく、各電力会社一律に適用される報酬率を算定すべきであり、東京電力が今回の申請において、自らの事業リスクのみに基づいて事業報酬率を設定していることは適当ではないとした上で、他社の電力会社一律の平均の事業リスク等を勘案して、事業報酬率を一定の減額査定をするという取りまとめをされております。
そのあとのところは、震災の前と後で自己資本コストが変わったのではないかということを、(5)では触れております。震災後でなるべく長期の期間をとった上で、自己資本コストを各社平均値として採用すべきであるという取りまとめになっております。
7ページ、最後のページですが、規制部門と自由化部門のコスト配分ルールが実態に合っているかどうか、検証が必要ではないか。また、規制部門と自由化部門の売電量、利益率について、料金認可当時の計画と著しく乖離した場合に取るべき措置について、今後、消費者委員会の建議を踏まえて検討すべきではないか、という御指摘をいただきました。
これにつきましては、固定費の配分方法について、2:1:1法という方法でやっております。公聴会におきまして、これが過大推計ではないかという御指摘がありましたので、これについて明示的に確認をいただいて、サンプル調査に基づく推計値であり、過大推計されていないことを確認をいただいております。
今回の改定後の収益構造の変更については、事後評価で部門別の収支が毎年公表され、原価算定期間終了後に原価と実績の部門別評価を実施することとなっておりますけれども、経済産業省に対して、収益構造のゆがみが著しいとか、構造的なものと認められる場合には、事業者に料金改定を促すとともに、それに応じない場合には、料金認可申請命令の発動を検討すべきであるという取りまとめがされております。
今回の審査で終わることなく、引き続き、経済産業省、行政においては、監視を続けるべきであるというふうにもされております。具体的には、原価算定期間内においては毎年度、事業者が決算発表時等に収支見通し等を説明するとともに、効率化の進捗状況を説明すべきである。原価算定期間、今回は3年ですが、それの終了後も、事業者が料金改定を行わない場合には、行政が、原価算定期間終了後も引き続き、その料金を採用する妥当性について評価を行った上で、必要に応じて、電気事業法23条に基づく認可申請命令を発動すべきである。ただ、23条の認可申請命令というのは、非常にハードルが高いのではないか、発動しにくいのではないかという御指摘もありましたので、その際の具体的な発動要件について検討すべきである、そういう御指摘をいただいております。
それから、事業報酬について、最優先で特別負担金の返済に充てられることを、事前にも事後にも検証・確認をすべきではないかということであります。
これについては、特別事業計画において、東京電力は当分の間無配を継続することを株主に要請しております。それから、原子力損害賠償支援機構法の52条では、機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める金額を、特別負担金として機構に対し納付いたしますが、これは財務大臣に協議をした上で認可をするわけです。この認可の際に、そこを検証していくという制度になっておりまして、そこをしっかりと検証すべきであるということで御指摘をいただいております。
6月19日付で消費者委員会からいただいた考え方について、それぞれの対応する査定方針の部分を抜き出して御説明を申し上げました。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
ただいまお話しいただきました内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 たくさんありますが、3点に絞って意見を述べさせていただいて、もし御反論いただければお聞きしたいと思います。
まず、1,003億円の日本原電、東北電力との基本契約の問題についてです。この分厚い資料の42ページをごらんいただきますと、日本原電と東北電力との契約内容の概要があります。委員会の中には、原契約書を見ないと、はい、わかりましたと言うわけにいかないのではないかという強い意見がございます。それに配慮してこういう概要を出されたのだと思いますが、2点だけ、指摘させていただきたいと思います。
まず1番目は、日本原電が1,003億円の幾らを占めているのか知りませんが、少なくとも東電の勝俣前会長が日本原電の社外取締役にあるわけです。この両社の関係のもとでこれから3年間、ここから電気が実際来ないにもかかわらず、ずっと払い続けるというのはどうしてもあり得ない。弁護士的感覚から見ますと、契約書概要の5つ目のポツに、「定めのない事項及びより難い情報が生じた場合は、3社誠意をもって協議する」とあります。私は、どう考えても今の事態は「定めのない」状況だと思います。
そうなると、この条項に基づいて、当面東海第二から発電が来る余地はないけれども、どうしましょうかという交渉は、当然、なされるべきだと思います。オブザーバーの阿南さんも矢野さんも見せていただいていないような契約書に基づいて、1,003億円と言われても、これは承服しがたいというところについてはどうなのか。まず第1点です。
2番目は、水上専門委員からもお話をお聞きしたわけですけれども、例の事業報酬の割合の問題です。3:7は規則で決まっている。しかしながら、自己資本報酬率が6.32%というのは、規則から自動的に弾き出される数字ではないのではないか。審査要領はエネルギー庁の内部の審査要領なので、消費者庁、消費者委員会、あるいは一般に拘束性があるものではないと思いますし、これに基づいて計算すれば6.32という数字は出てくるのかもしれませんけれども、6.32を前提に事業報酬が計算されるというのは、消費者感情からいって納得できないのではないかという点がありますが、この点はどうでしょうか。
3番目は、燃料費の問題ですけれども、燃料費調整制度が現状のままでいいのかどうか。燃料費調整制度というのは平成8年に導入されたとお聞きしております。その段階では経費に占める割合は1割だった。それが現段階では4割を占めるような大変大きな経費になっているわけです。それが、燃料費が上がれば自動的に料金の値上げにつながる。これはどう考えても、電気事業者が、より安く燃料を購入するというインセンティブを欠如させる要因になると思いますが、その辺はどういうふうにお考えなのか。
以上、3点、お願いします。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 まず、1点目の日本原電との契約であります。これは、専門委員会の委員の先生に実際の契約書もごらんいただきました。これは、相手との関係で東電は一切公開できないという話だったのですが、そんなことはないだろう、できる範囲は最大限公開しようということで、主要なところ、これぐらいはオープンにしないと御理解いただけないだろうということで、抜き書きをしたものです。そういう意味で、文言は基本的に契約書の文言のとおりであります。
おっしゃったように、定めのない事項は3社誠意をもって協議するということになっております。他方で、先ほど御紹介しました取りまとめにおいても、人件費や修繕費のように効率化努力が見込める部分については、東京電力自身による効率化努力分と比較して、足りない分について原価から削減すべきだという御指摘をいただいております。これを受けて、東京電力自身による効率化努力と比較して相応のものになるように、これは原価から削減することになると思いますし、削減されれば、その分、東京電力は料金では回収できないわけですから、3社誠意をもって協議ということに従って協議をすることになると理解しております。

○山口委員長代理 少なくとも勝俣さんはどうなんですか。それは個別の問題で、特にエネルギー庁としてどうこう言えないとは思いますが。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 それは民間の株式会社の役員人事でありまして、株主が決めたことでありますので、行政として、どの人がいいとか悪いとか、言うことは難しい状況にございます。
2点目は、後で片岡課長から御説明いたしますが、3点目の燃料費調整制度、現状のままでいいのかどうか。これは、この3月末に、現在の総括原価方式に基づく料金制度の運用の在り方を検討いただいたときに、まさにそういう問題意識で御議論をいただきました。燃料費調整制度で、全国平均の輸入価格、政府ベースの輸入価格で上がれば、その分反映される結果、コストを削減しようという努力のインセンティブが失われるのではないか。何かほかのいいやり方があるのではないか。これも公開の場でいろいろ御議論いただきましたけれども、なかなかこれという代わるものが、今のところ、見いだせない状況であります。
中長期的には、アジアの平均価格とかそういうものを何らかの形で指標化して、もし日本だけ高いものを買っている、日本の輸入価格がアジア全体から見ても高いということであれば、日本の輸入価格によるのではなく、アジアのほかの国が買っている価格に合わせていく、そういうこともあるのではないか。そんな御意見があって、そんなところを報告書に少し書いておりますけれども、直ちにアジアの燃料輸入価格の指標があるわけでもありませんので、その辺りをどうするかというのが引き続き課題だということは、我々も重々認識しております。
他方で、これは全国平均の指標価格ですので、もし全国のほかの社が安く買っているときに、1社だけ高い価格で買えば、高く買った分は反映されなくなるわけであります。つまり、ほかの社がみんな安く買うと、日本全体の平均は下がるわけですので、平均の上がり下がりでしか燃料費調整制度は反映されないので、そういう意味ではある程度は燃料費調整制度も、国内の平均よりは高く買わないようにしようというインセンティブは働くものと。そういう認識をした上で、それでももっといいやり方がないのか、そんな議論はいただきましたけれども、これに代わるものが直ちに今の段階で見いだせてはいない状況であります。

○経済産業省資源エネルギー庁片岡電力市場整備課長 事業報酬についての御質問ですけれども、算定規則と算定要領、両方に書かれていまして、算定規則の方で、御指摘のとおり、自己資本30、他人資本70で配分するというのは省令に書かれております。自己資本報酬率をどういうふうに計算するかということも、省令でどうなっているかと申しますと、電気事業者を除く全産業の自己資本利益率の実績率を上限とし、国債、地方債、公社債の利回りを下限として算定した率ということで、上限と下限が決まっているということです。
補足で、他人資本報酬率は、すべての電気事業者の有利子負債の実績値の利子率にするということが決まっています。算定要領の方で、自己資本報酬率をどのように決めるかということが規定されています。ここで、自己資本報酬率の上限と下限を、β値という事業のリスクで配分するということが、自己資本報酬率=1マイナスβ×公社債の利回り実績値+(足す)β×全産業の自己資本の利益率という形で、β値を1~0の間で配分するということが書かれています。
β値につきましては、東日本大震災後の状況を勘案しつつ、過大な利益が生じないようにする一方で、資金調達に支障が生じないといった公正報酬の観点から、適正な事業リスクを見極めた上で設定するということになっています。これは専門委員会でも議論になりましたけれども、β値についてはある意味、裁量といいますか、判断の余地が入り得る。他方、全産業の自己資本報酬率については、過去7年間の実績値をとっていまして、実を申しますと、平成10年の認可の際も、消費者庁や消費者委員会ができる前ですけれども、物価安定政策会議を含めて経済企画庁で協議をしていましたので、そのときに、7年間の値をとって、全産業のROEといいますか、自己資本利益率を設定しています。それを使って、7年間で、自己資本の報酬率と公社債の利回りを計算しています。
β値については、まさに先ほどの議論のとおりでありまして、東電は、自らのリスクということで0.9で出してきたということで、全産業のROEと公社債を9:1で配分していたのですけれども、これについては全電力で見るべきだということで、90ではなく、82で見るべしということになったわけであります。
審査要領ですけれども、これは3月末にできております。これ自体も昨年11月に、総括原価方式に対する信頼が揺らいでいるという背景で、枝野大臣の下に有識者会議を設置しまして、半年間にわたってこの有識者会議で議論をしてきました。

○山口委員長代理 それについて、有識者会議でルールを決めた方が、今度、審査専門委員会の委員になっておられます。だから、自縄自縛になっているのではないか。幅広感で検討する余地がなくなってしまったのではないかという議論がありますが、その辺はどうですか。

○経済産業省資源エネルギー庁片岡電力市場整備課長 行政庁としましては、委員会の人選については大臣の御判断で決めていますけれども、行政手続法上、認可に当たりましては、審査要領を明らかにするということになっています。それを明らかにしている以上、専門委員会がどうあるかというのは別の問題としてありますけれども、いずれにせよ、行政、我々事務方としましては、審査要領に相当縛られる。自己拘束的なものだと私は思っております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。
小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 今、審査基準の話がございましたが、今年の3月に一般電気事業供給約款料金審査要領をつくられた有識者のメンバーが、今回、有識者委員会としてチェックをなさったのですね。勿論、消費者団体の方も入っていらっしゃいますが、学者の先生はほとんど同じ方がなっていらっしゃるわけです。資料5-3の考え方のところで強調されているのは、この要領が他の電力会社の料金改定時にも適用されるもので、今回も同じものを使いたいというご趣旨が、我々消費者委員会としての現時点の考え方に対する回答のところで何箇所も出てきます。今回は東電からの申請ですけれども、この審査要領は、ほかの電力会社およそ一般的に使うものであって、それをそのまま東電にも使いたいという趣旨のお答えだと思います。
確かに行政手続法上の審査基準というのは、事業者に対して予測可能性を与えて、原則としてそのとおりに審査をしていくという、そういう意味のものではありますが、今回、東電という大変特殊な状況下で申請が出されてきているものです。しかも、経産省の方のお話では、これ以前は審査基準といってもほとんど抽象的なもので、ほぼなかったに等しいということでした。このような状況下で、今回はじめてこの要領が作られた。そして第1号として東電の申請が出てきたわけです。ほかの電力会社の申請が出てきたときに、これを審査基準として適用するというのはよくわかりますが、消費者団体の方もおっしゃっているように、東電という非常に特殊な、実質国有化されているようなところが出してきたものに、ほかの電力会社と同じですからこれを当てはめるしかありませんということが、果たして消費者の方にとって、なるほどそうですねということになるかという問題だと思うのです。
チェックをなさった専門委員会は確かに御自身がつくったものなので、それを改めて、そこからはみ出していないかどうかのチェックをなさっているかと思います。そうすると、普通の消費者的感覚で、東電からきた申請であるということをどう考えるかということとのギャップがあるのではないかというのが我々の認識です。人件費についても、やはり今回の東電については、異なる考え方をすべきではないかということを縷々消費者委員会としては述べさせていただいています。それに対して、経産省からは、ほかの電力会社と同じに扱いますというお答えだったと思いますが、それではなかなか納得は得られないのではないかというのが私の意見です。
もう一点は、資料5-3の2の競争入札比率のところです。これは水上先生もおっしゃったところですが、東電というのは民間企業といえども、今は、実質的には民間ではない。ほぼ破綻状態で実質国有化の企業である。そうであれば、例えば、国の独法であれば、私もしばしば言っておりますが、原則として随契ではいけないので競争入札にすべきで、それも1社入札になれば、どうして競争がなかったかということをチェックされる、というような時代になっているわけです。東電の置かれた立場で考えれば、この競争入札比率を高めるというところで、今回、「コスト削減額が原則10%に満たない場合には」という整理をなさっていますが、これは非常にアバウトな話であって、競争入札が原則化すればもっと下がるはずなので、これではやはり足りないのではないかということになります。最初の水上先生からのお話にもあったかと思いますが、ここはもう少し深掘りする必要があるのではないかと思います。

○河上委員長 何かお答えはありますか。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 前者については、こういう査定方針を取りまとめていただいたので、それと離れて裁量的にやるというよりは、既存のルールに従ってやるというのが行政のあるべき姿だと思います。
それから、国が出資することに着目するということでもし議論をしますと、例えばJRでも国が100%株主のJRがいっぱいあるわけで、そういうところの運賃の値上げ認可申請があったときは同様の判断になるのかどうか、そんな議論もあろうかと思います。なぜ東電が料金の意味において特別なのかどうか、その辺りもクリアしていかなければいけないだろうと思いますので、その辺も含めて考えられるべき話だろうというふうに思っております。

○小幡委員 今は、電力会社の審査要領についてのお話として申し上げているわけで、JRなど鉄道の話ではないので、それだけ付け加えておきます。

○河上委員長 片岡さん、何かございますか。

○経済産業省資源エネルギー庁片岡電力市場整備課長 前者につきましても、審査委員会としてはこういう意見ということで、大臣も会見等で、電気事業者一般に適用されるルールを今回見ていただいた。それを踏まえて自分に法律で与えられている裁量での範囲で判断したいと。当然、消費者庁なり皆さんと協議をし、閣僚会合で最後決めるのは、そういう意味では裁量権があるからだということは、大臣が会見で申し上げていますので、その点はちょっと補足します。
入札比率につきましても、もともと独法とは違った面があって、東電もこの場で説明がありましたけれども、例えばタービンの一部取りかえのところが果たして入札できるのか、既につくったものの一部をどう変えていくかということについて、全面的にできるかどうかということは、議論は実際問題としてはあり得ると思います。
他方で、新しい東電といいますか、新生東電、今回マネジメントも変わったわけであります。廣瀬社長が先週のタイミングで、5年で6割はやりたいということをおっしゃったので、それは、そういうことも考えた上で発言されているということだと思います。
特別事業計画の中でも、リストラといいますか、経営合理化については、打ち止めにすることなく不断にやっていくとなっていますので、その辺りはできるものについてはやっていくとともに、機構としてもモニタリングをしていくということはあろうかと思います。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。
川戸委員、どうぞ。

○川戸委員 ちょっとだけ感想を述べさせていただきますと、行政というのは国がつくったルールに従って粛々と仕事を進めていくと、すごい違和感があったんですね。行政というのは私たちのためにやることであって、今、このような状況であるならば、消費者の値上げの問題とか、被害者の問題とか、そういうことを第一に考えて、少し行政のやり方を変えた方がいいのではないか。私はお話を伺っていて、すごく残念に思いました。

○河上委員長 感想ということでよろしいですか。

○川戸委員 はい。

○河上委員長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 私も今の意見につながるのですけれども、消費者の選ぶ権利もあると言われていて、逆に言うと、選ぶ権利がないところだからこそ規制部門はあるわけで、ということは消費者は選ぶ権利を行使できない。だからこそ、公正なサービス、公正な商品が消費者に適正な価格で届くようにするというのは、行政の義務なわけです。
そういう意味で言うと、消費者の権利を担保するのはまさに消費者の知らされる権利であり、意見を反映される権利なわけで、今までのお話を聞いていると、消費者の権利、消費者の視点が弱い中で公共料金が決められてきたと思います。ある意味、これはすごくいい機会であると思いますので、我々消費者委員会も、今まで遠巻きに、遠慮がちに発言していた部分もありますので、ここではしっかりと消費者の権利の視点からもの申すべきだと思います。これは、経産省の方というよりも、消費者委員会がそうすべきだという私の意見です。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 御説明いただいた中で、福島第一の4号機、5号機と第二の減価償却、ここは理屈上、先ほど部長がおっしゃったような話になるのかもしれませんけれども、東電でさえレートベースにのせるのはしなかった。しかも地元では、原発の被災者、県知事さんを含め、再稼働についてはあり得ないということをおっしゃっているような発電設備について、判断することが困難だからとりあえず減価償却にのせますと言われても、ここはそれこそ行政の判断で、今回はのせるのはだめというようなことが判断できないのかなと思います。東電がのせるなら、エネルギー庁としてもしょうがないという話になってしまうのでしょうか。ここのところが、4ページの理由を聞いても何だかよくわからないという感じなのですが、どうでしょうか。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 これは、あくまで専門委員会として査定方針案を取りまとめていただいたわけでありまして、経済産業省としてどういう形で認可をするかというのは、これから消費者委員会、消費者庁の御意見も伺いながら、大臣と相談して、最終的に内閣として決まっていくものであります。今の段階で、我々がどう考えているかということを聞かれましても、なかなか答えにくうございます。

○河上委員長 夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 御説明、ありがとうございます。専門委員会が審査要領に従って決めたのだから、経産省はそれを超えた発言はできないし、決定もできないという説明でございましたけれども、多くの国民から2,000もの声が寄せられて、そのうちの1,200件は人件費にかかわる意見だったというお話もありました。今回は、私どもの消費者委員会が、電気料金も含めた公共料金を決定するときに今まで消費者の権利が反映される場がなかったので、それをやってほしいということで公聴会も開いていただきました。さまざまな決定過程のところでも、消費者団体もオブザーバーとか、意見を聞く形で呼ばれてはいますけれども、結果として、それがこういうところに反映されにくいという状況は、余り変わっていないことが明らかになったのではないかと思います。
そうしますと、私ども委員会としては、経産大臣、消費者担当大臣がそこで決めていくとすれば、そこへむしろ消費者の意見を反映させるべく努力をする必要があるというのは、改めて感じたところです。そうでなかったとすれば、私も消費者団体でございますけれども、消費者団体が一生懸命要請し、意見を述べてきたにもかかわらず、それは実らないということであれば、この騒ぎは何だったのかということにもなりかねないということで、今、とても残念な思いをしているところでございます。

○河上委員長 どうぞ。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 誤解を与えている可能性があるので申し上げますが、この方針案が取りまとめられたので、この査定方針案に反すること、超えることは発言できない、ということを申し上げたつもりはございません。我々は、これをお願いしてまとめていただいたので、当然、尊重すべきものだと思っております。ただ、政府として、少なくとも経済産業省としての考え方が決まっておりません。つまり、認可をするタイミングまで決まりませんので、これ以上のことをなかなか申し上げにくいということを申し上げたということであります。

○夏目委員 まだ確定ではないということであれば、逆に、まだまだ反映させる余地はあると。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 政府としての意思決定は、公共料金についての物価関係閣僚会議も経た上で決まっていく。その上で、経済産業大臣が認可権限を持つ大臣として認可をするというものでございます。

○河上委員長 ほかにはよろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。消費者委員会におきましては、東京電力における家庭用電気料金の値上げ申請の内容について、5月29日、6月12日、6月19日と、3回にわたって、東京電力さんにも来ていただいてヒアリングを行うとともに、経済産業省の電気料金審査専門委員会の査定方針案についての説明をいただいて、その都度、委員会の内部でも議論をしてまいりましたし、この委員会でもいろいろな意見が開陳されてきたところでございます。
こうした議論の積み重ねを踏まえまして、タイミング的な問題、つまり国からの資本注入のタイミングの問題がありますから、我々もそれを全く無視して議論をするわけにはいきませんので、かなり精力的に時間を詰めて議論をさせていただいているところでございます。明日も消費者庁の検討会があるということで、なかなか大変ですけれども、現段階で消費者委員会としてどんなふうに考えているかという、粗々の意見の取りまとめを行っておきたいと思います。私の誤解もあるかもしれませんが、これまでに、いろいろと御意見を聞いた中で、委員長としての一定の見解を述べさせていただいて、その後で、付議をされたものに対する回答を、少し検討の時間をいただいて出させていただきたいと思う次第でございます。
まず、値上げ申請に関する査定方針案について、当委員会からの指摘ということで、簡単にポイントを申し上げたいと思います。
最初に明らかにしておきたいことは、このたび、経産省の検討会から出された審査基準というのは、あくまでノーマルな事業活動を続けている電気事業者、それにも妥当するように考えられたものでありますから、その限りでは一定の枠が最初からはめられているということになります。それに対して、国からの大幅な資本注入を前提に活動せざるを得ない東京電力に、この審査基準がそのまま妥当するものではないということは、最初に明らかにしておきたいと思います。現に原価への算入として組み入れられたコストの中には、今回の事故を含めて責任をもって賠償せざるを得ない東電に固有のものが、費用として相当入っているということは争いのないところだろうと思います。
原発事故を契機に発生した多額の特殊なコストを、東京電力自身、国民、ステークホールダー、利用者たる消費者、それらがどういう形で負担をしていくかということについて、その負担の分かち合いに関する論点を、避けて通れないものだと考えているところでございます。今回の東電の値上げについては、一般的な審査基準だけではなく、やはり一定の特例措置が取られるべきであると考えているところでございます。
少し細かい話になりますが、一つずつ項目についてお話しします。
第1は、人件費に関してでありまして、「国民の声」等に寄せられた意見のうちでかなりの部分が人件費に関するものであります。勿論、東電の社員の方々にとってみてもこれは切実な問題で、今、大変なときですから、人件費をもっと切り詰めてという話はしたくないところでありますけれども、やはりそこは厳しい対応がある程度は必要であるということで、公的資金を注入された企業の給付水準を考慮して、更なる削減を検討すべきではないかと考えられます。
その中でも、法定外厚生費、例えば余暇、レジャー、自己啓発等に充てられるような、原価として認めるべき意義が、今の段階で見いだすことは極めて困難なものも含まれているわけで、差し当たって、労働安全衛生法や次世代育成支援対策推進法といった、法令等に定められた企業としての責務を果たすものに限定して、これを算入するというところから出発すべきではないかと考えているところでございます。
第2番目に、競争入札、随意契約の問題がございます。随意契約取引の費用に関しましては、コスト削減額が原則10%に満たない場合には、未達分を減額とされているわけです。ただ、東京電力の実質国有化の状況を踏まえて考えると、むしろ競争入札をこそ原則とすべきであると考えられるわけでして、この点を厳格に適用するべきではないかと考えております。
第3番目、購入電力料に関してでございます。日本原電あるいは東北電力からの購入電力料についても、東京電力本体同様に、人件費や随意契約等について厳しいコスト削減努力を行い、この点を原価に反映させるべきではないかと思います。そもそも購入電力量がゼロであるということを考え、それに加えて、日本原電が東電との間で共同事業体とでも評すべき密接な関係にあるという性格も考えていきますと、そこでの算入原価というものは、更に下方修正してしかるべきではないかという点も申し上げたいと思います。
第4番目に、減価償却費、事業報酬に関する部分でございます。福島第一原子力発電所の5号機、6号機、福島第二原子力発電所は、原価算定期間内において再稼働の見込みがないということですし、今後10年間の稼働も極めて不透明な状態にあることは争いのない事実ではないかと思います。まだ使えるかもしれないという言い方で対応できるものではないわけで、こうした現状を踏まえて考えれば、これらの減価償却費は原価から除くべきであると考えているところでございます。この点についても、なかなか断言するのは難しいですけれども、これを抜いていく方向で考えるべきではないかと思います。
更に、事業報酬の問題です。事業報酬に関しては、各電力会社が一律に適用される経済産業省令及び審査要領に基づいて算出されていることは、先ほど、委員会の中でも議論されたところであります。最初に申し上げたとおり、公的資金が注入されている東京電力について、通常の経営環境下にある他の電力会社と同様の扱いをされることについては、強い疑問を持たざるを得ないということでございます。この点は委員会としても検討させていただきたい。
仮に通常通りの割合で認めるとしても、それによって浮いた部分は福島原発の賠償等に必ず充てられるという明確なルール、これが担保されるような措置が講ぜられるべきではないか。これは、先ほど水上先生からも御指摘のあった点でございます。少なくとも自己資本の在り方に関して、3:7という今までの数自身も、果たしてそれでいいのかという辺りの議論も長期的には考えていった方がいいのではないか、この3:7という数について、固定的に考えることについてはやはり疑問がございます。
第5番目に、福島の第一原発安定化費用、賠償対応費用でございます。これらの費用については、原価に算入して利用者にのみ負担を求めるのは適切ではないのではないかということでございます。これは、先ほどからお話ししていることと関連しているところですけれども、生産のための費用に対する対価として利用料金というものがあるので、ノーマルな事業として利用料金の値上げを言うのであれば、その部分に限定していただきたいということであります。
さらに、今後の検討課題として申し上げたいことが何点かございます。今回の電気料金値上げ申請の議論の過程でさまざまな課題が指摘されておりまして、経済産業省においても適切な対応を取っていただきたいし、消費者委員会としても、その対応について更に検証を行いたいと考えている点がございます。
第1点は、今後は、原価と実績の部門別評価をきちんと毎年実施して、規制部門の電気料金が不当に高い事態となる場合には、本年2月の当委員会における「公共料金問題についての建議」でも指摘いたしましたように、適正な料金に確実に値下げをしていただく、そういう仕組みを構築するために、電気事業法第23条に基づく料金認可変更命令等を含めた法令等の見直し、あるいは整備に係る検討を行うことが必要であろうということです。
第2点は、事業報酬と資金調達コストの差分、経営努力の結果生じた原価と実績との差分については、最優先で特別負担金に充てられることを事前にきちんと確認して、事後にも、それを検証できるようにする必要があるだろうということでございます。
第3点は、先ほど山口委員からも御発言がございましたが、燃料費調整制度が果たして現状のままでいいのか、あるいは、価格変動による燃料費増をそのまま値上げ理由とすることでいいのか。これは糟谷部長からも、なかなかいい知恵がないというお話がございましたけれども、深掘りをして更に検討する必要があるだろうということでございます。この辺は経済産業省において今後とも検討していただきたいことですけれども、消費者委員会としても、更に検討を続けたいと考えているところでございます。
長々と申し上げましたけれども、現時点での消費者委員会としての考えをとりまとめる形で述べさせていただきました。
消費者庁からの付議に対する最終的な対応につきましては、タイムスケジュールの問題もございますから、我々も、悠長にしているつもりはございません。今、申し上げました取りまとめに沿って正式な意見にしていければと考えております。
また、詳細な内容、公表時期については、委員の皆様方には申し訳ございませんが、委員長一任という形にさせていただければと思いますが、よろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 今の内容で、委員長一任で私は賛成です。ほかの委員の方々もほぼ賛成だと思います。一部、ミスリーディングな報道もございましたけれども、今の委員長が取りまとめられた意見を、正式に消費者委員会の意見として一日も早く公表して、経産省はもとより、消費者庁あるいは松原大臣の考慮の参酌の中に入れていただきたいと思います。私どもとしては、いい意見だと思っていますので、一日も早く出していただければと思っています。
もう一点、この過程で痛感いたしましたのは、私どものマンパワーの欠如です。専門委員の太田先生は会計専門の大変意欲あふれる先生ですから、自由化部門と規制部門の中身をきちんとチェックするから原資料を取り寄せてほしい、あるいは、燃料費の調整制度の中身についても、本当に今の金額で妥当なのかどうかを専門家としての立場でチェックしてみたいということで、意欲あふれる申し出もございました。できればそうしたいと思ったのですが、消費者委員会として、原資料に当たってその適正性がどうかということを、責任を持って審査するマンパワーがないというところがありまして、この辺は消費者委員会の今後の体制としては、本当に考えていかなければいけないなと思ったところです。余計な話ですが、一つ、つけ加えさせていただきます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
経済産業省におかれましては、国の機関としてある程度枠がはめられているというお話でしたけれども、消費者委員会からのただいまのような意見を念頭に置いていただいて、むしろ経済産業省の中に「消費者マインド」というものを是非持っていただいて、今後のいろいろな作業に携わっていただければありがたいと思うところでございます。
今日は、お忙しいところを大変ありがとうございました。
それでは、ここで10分ほど休憩をとりたいと思います。よろしくお願いします。

(休憩)

≪3.地方消費者行政について≫

○河上委員長 続きまして、「地方消費者行政について」ということで、お願いしたいと思います。
本日は、地方消費者行政について有識者の皆様からヒアリングを行いたいと思います。武井共夫日本弁護士連合会副会長様、国府泰道日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長様、山口正行東北大学大学院法学研究科准教授様、沼尾波子日本大学経済学部教授様、この四方にお越しいただいております。
沼尾教授につきましては、若干到着が遅れているということでございます。有識者の皆様におかれましては、お忙しいところを、また、遠方より御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
消費者委員会におきましては、平成23年4月に、「地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議」を発出いたしまして、その後も、消費者庁の対応状況等について継続的にフォローアップを実施しているところでございます。特に、今年度末で期限を迎えます地方消費者行政活性化基金については、基金終了後も、各自治体の取組が充実し後退することがないように、制度・財政・人材の面からの継続的な支援が是非とも必要であると考えているところであります。
現在、消費者庁におきましては、基金終了後における地方消費者行政の充実・強化に向けた指針を取りまとめておりまして、その原案の内容につきましては、前回の委員会において御報告をいただいたところであります。
これと並行して、消費者委員会といたしましても、地方消費者行政の実情と課題を把握するために、担当委員と事務局が複数の自治体を直接訪問してヒアリングを実施するとともに、委員会の場において有識者の方々からヒアリングを行っております。本日はその第2回目になりますけれども、本日お越しの有識者の方々から、地方消費者行政活性化基金を通じた取組の評価、基金終了後における必要な支援策の在り方等について、御意見を伺えればというふうに考えております。
有識者の方々から御説明をいただく前に、消費者委員会が行いました、自治体へのヒアリングの調査結果の概要というのがございますので、その資料について、事務局から簡単に御報告をいただきたいと思います。

○原事務局長資料6として用意しておりますけれども、簡単に現地ヒアリング調査の結果概要について、御報告をしたいと思います。
調査の趣旨ですけれども、昨年の4月15日に消費者委員会といたしまして、「地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議」を出しております。その建議事項のフォローアップの一環として、再度、地方自治体に対するヒアリング調査を実施し、特に集中育成・強化期間終了後、基金終了後に、地方消費者行政を持続的に展開し、更に強化していく上で、早急に実施する必要のある支援策の検討に資する事項を聴取ということで、目的を持ってヒアリングをしてまいりました。
調査対象は全国の自治体20か所で、10か所は都道府県、10か所は市町村になります。
調査実施期間は、本年の5月24日から6月28日。それぞれの自治体に消費者委員会の委員と事務局員で出向きまして、意見を聴取してまいりました。
報告ですけれども、「自治体における“集中育成・強化期間”終了後の対応見通し」「国に対する自治体の意見・要望」ということで整理しております。
まず、集中育成・強化期間終了後の対応見通しですけれども、そこに4つ、指摘しております。ほぼすべての調査対象自治体が、活性化基金が造成された平成21年~24年度に地方消費者行政は前進したことは高く評価しております。
しかしながら、集中育成・強化期間終了後に自主財源確保の見通しがあるのは、一部の自治体に限られており、大きな地域間格差が見られます。
3つ目の指摘ですが、自主財源確保の見通しがあるのは、基金前より相応の実績の積み上げがあるか、ある程度の財政的基盤の下で、消費者行政に対する首長の理解と積極性、担当職員の資質と熱意、相談員の経験・スキルと熱意をはじめとした、さまざまな要件をクリアできた一部の自治体にとどまります。
4つ目ですけれども、一般財源全体にシーリングがかかっております。そういう中で、集中育成・強化期間にようやく消費者行政充実・強化の足がかりを得たばかりの自治体や、窓口新設直後で、目に見える成果を出し切れなかった自治体をはじめ、多くの自治体は自主財源確保が困難な状況に陥ることが予想されました。
自主財源確保の見通しがある自治体の声と、自主財源確保の見通しがない自治体の声の主な事例を挙げておりますけれども、一般財源全体が縮減傾向、新設センターの閉鎖や機能縮減を懸念。この中で、ようやく基金でセンターを設置し、十分な成果を上げられないうちに基金の終了を迎えた市町村が多く、財政当局に何も言えないまま縮減されてしまい、地域間格差が広がることを懸念しているという声。相談員雇止めの懸念、庁外ネットワーク縮減の見込み。それから、研修費縮減も相当のところから寄せられておりました。
国に対する自治体の意見・要望は、5つ、指摘をしております。
集中育成・強化期間終了後は、自治体としても育成・強化した事業が後退せぬよう、自助努力を検討している。何もしていないということではなく、検討している。庁内連携や広域連携などの可能性を模索する自治体もあります。
一方で、相談窓口や相談体制の整備は途上にあり、現段階で国の支援が途切れれば、新規開設した窓口の縮小・閉鎖、相談員の雇止めなど、深刻な後退を余儀なくされる自治体もあります。
自治体は相談員研修への継続支援・強化を期待。消費者がどこに住んでいても、一定水準以上の相談対応が可能となるよう、基金で強化した相談レベルの維持・向上を望んでいる。
人件費確保、相談員の処遇改善のため、国の取組に対し切迫した要望が寄せられている。
地方が個別に実施するより、国が一括して行った方が効率的・効果的な施策としては、特に啓発事業が挙げられている。更に、国が消費者行政全体のビジョンを示す必要性や、国、都道府県、市町村の役割分担を明確にするための議論の必要性などが指摘されているということです。
意見を大きく2つに分けておりまして、国の財政支援に対する主な意見・要望と、国の制度・体制支援に対する主な意見・要望と書いています。窓口未設置市町村や新設センターの対策費を支援してほしい。せめて地方消費者行政が充実するまで、財政支援をお願いしたい。
人件費等を負担してほしいということで、PIO-NET入力のように法定受託事務に近い部分には国の経費の一部を負担してほしい。消費者庁設置後、非常に仕事が増えているということですけれども、財源の移譲がないということで補助を強く要望されています。自主財源確保のための資料提供を是非お願いしたいということです。
それから、国の制度・体制支援、これは財政支援と別に出したものですけれども、相談員の研修、相談員同士の情報交流の場、相談員の処遇の改善というところが挙げられています。これについては、総務省と消費者庁が足並みをそろえ行ってほしいということです。全国規模の消費者教育・啓発により効率化を図ってほしい。法執行体制を強化してほしい。
一番最後にビジョンの話を書いていますけれども、これも大変たくさん聞かれたもので、消費者行政をどういう姿にもっていこうとしているのか、国のビジョンを見える形で発信してほしい。国・都道府県・市町村の役割分担と責務を明確にしてほしいという声もたくさん聞かれました。
以上、簡単ですけれども、もう少し詳細なものは、できれば次回辺りの委員会にお示ししたいと考えておりますけれども、概要ということで御説明をいたしました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、有識者の方々から御説明をちょうだいしたいと思います。説明時間が短くて大変恐縮ですけれども、それぞれ10分程度でお願いいたしたいと思います。
最初に、武井日弁連副会長からお願いいたします。

○武井共夫日本弁護士連合会副会長 日弁連副会長の武井でございます。今日は貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私から、この1、2年の当連合会の意見を簡単に申し上げたいと思います。
当連合会では、2011年4月14日の理事会で、「地方消費者行政の充実・強化に対する国の支援の在り方に関する意見書」を決議し、公表しております。その要点については、国府委員長のレジュメ資料7-1に簡単に出ておりますので、ごらんいただきたいと思います。
更に、6月14日の理事会で、「地方消費者行政の持続的強化を求める意見書」を決議し、公表しております。この中では、地方消費者行政活性化交付金について、これが消えた後も、地方消費者行政の強化に向けた特定財源措置の継続をすべきであるということを提言しております。併せて、地方財政法の第10条に加える形で、今、まさに出ました人件費などについて、恒久的な負担をすべきであるということを提言しております。また、機能的な面では、地方消費者行政の質的向上に向けた国民生活センターの機能強化というものも提言しております。
この6月19日に消費者庁から出ました、「地方消費者行政の充実・強化のための指針~地域社会の消費者問題解決力の向上を目指して~」の原案に対しても、この原案が、地域主権を強調して地方自治体への期待を多数列挙する一方で、国の財政的支援策については抽象的かつ不十分な内容にとどまっている。また、地方自治体の先進的な取組等への支援に力点が置かれてしまう余り、地方自治体全体の体制整備への支援が不十分であることなど、不適切な点が少なくないという点を指摘し、修正を求める意見を述べております。これは6月28日に正副会長会で決議しまして、既に公表しております。
このように私ども連合会は、3法が成立して以来、この動きを注目しておりましたが、この1年、また昨今、非常に重要な課題であると考えて取り組んでおります。その具体的内容については、国府委員長から報告したいと思います。
私からは以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
では、国府先生、お願いします。

○国府泰道日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長 私からは発言用のレジュメを、7-1ということで用意しております。特に、これは財政的な国の支援について力点を置いた発言となっております。日弁連は、武井副会長からも申し上げましたように、昨年の4月14日に意見書を出しております。これはタイミングとしては、この消費者委員会の建議が4月15日に出されています。それから、4月7日に専門調査会の報告書がまとめられたという、ちょうど同じ時期なわけです。消費者委員会としては、2011年4月の建議をベースに、今後、どういう提言をされていくのか、我々としては注目しております。
私は、4月15日の建議のもとになる専門調査会の報告書の取りまとめにもかかわったのですが、この報告書については、一つ大きな問題があったのではないかと思っております。それは、消費者行政は自治事務であるという、一種のドグマにとらわれすぎているのではないかということです。相談窓口を置いたり、あっせんをしたり、住民の苦情を聞く、これは確かに自治体の業務かもしれませんが、それを通じて国が、今、全国でどういう問題が起こっているかという情報を収集する。消費者安全法によって、自治体が収集した情報を国に通知する義務が課せられているわけです。ですから、かつての住民に寄り添っていた相談業務が、消費者安全法ができてからは国の情報収集のためのシステムに変わっていったわけです。PIO-NETも中身が変わっていったのも、相談支援よりも情報収集の端末としての性格づけが強くなっていっている。そういうことがあるわけですから、やはり端的に、その部分においては国の事務であるということはきちっと見据えておく必要がある。そして、国と自治体とがお互いどういう役割分担の中でやっていくのか、ということがきちっと整理される必要があると考えております。
昨年、消費者委員会の建議が出されて後、全国で200の地方議会から意見書が出されています。いずれも、国に対して財政的な支援を求める内容のものであります。それから、全国市長会も国に対して同様の提言をなさっております。
ということで、今、消費者委員会が取り組まれているように、育成・強化期間の4年間(1年延長しての4年ですが)を済ませた後、今後どんな財政措置が講じていくのかを考える上で、過去4年間の財政措置の実効性について検証・評価することが必要です。昨年の消費者委員会の建議でも、検証・評価ということを強く打ち出しておられたように思います。
日弁連は、恒常的な財政支援が必要であるというところで、活性化基金は一時的なもので人件費に使われなかったという問題指摘をしております。恒常的なものにするための方法として、昨年の意見書では、消費者事故情報の収集業務、消費生活相談業務等に関する経費ということで、地方財政法10条の規定を置くことによって国からの財政支援をすべきであるという提案をしました。
本年6月14日の意見書の中でも同様の考え方に立って提言しているわけですが、地方財政法10条の改正による財政負担の提言については、情報の集約・通知の事務をその対象にすべきだとしています。消費者安全法は、収集された情報の通知の方法としては、重大事故情報の場合は直ちに通知をすることになっておりますし、その他の消費者事故に関しては、PIO-NETに入力する方法での通知という形になっております。実際、消費者委員会が地方自治体にヒアリングされて、皆さんお聞きになられたことと思われますが、集められた情報を更に精査し、自治体では決裁という作業を通じてPIO-NETに入れられた情報が消費者庁に集約される、そういう大変な手間もかかっているわけです。そういったところの人件費は、まさにここで手当すべきだということであります。
もう一つは、法執行の人件費ということもやはり考える必要があるのではないかと、今回の意見書の中では述べております。これは、特定商取引法の法執行であったり、景品表示法の法執行であったり、こういったものについての人件費が自治体によって結構かかります。実は専門調査会の議論でも明らかになったのですが、特定商取引法の執行、景表法の執行、いずれも、一都道府県の範囲内での被害事案に関するものではなく、複数都道府県にまたがる事案がほとんどであるということが明らかになったわけです。これなどは本来の行政処分の考え方から言うと、都道府県の行政処分ではなくて、国もしくは国の出先機関において行政処分されるべき案件が、実は国がやらずに、都道府県において行われてきているという側面があるわけです。
専門調査会のときは、都道府県がやった行政処分を、域外効力ということで他の都道府県域にも効力を及ばせることができないかという、域外効力の議論としてやられていたわけです。域外効力が話題になるような行政処分、つまり、広域的な行政処分ですから、本来的に国がやるべきだというところをきちっと位置づけないと、国から地方自治体に対する財源支援が引き出せないと思うわけであります。
私のレジュメでは、参考の脚注として、※1のところで地方財政法10条の引用をしておりますが、これも省略させていただきたいと思います。
脚注※2で、子育て支援法案、これはまだ法案の段階ではありますが、参考として挙げさせていただきました。国から地方に対する財政支援を定めるやり方として、私どもは従来、地方財政法10条ということを言っておりましたが、そうではなく、子育て支援法案のように、ある特別の事業について定める法律の中で、国の財政負担について個別に定めるという手法もあると考えるわけです。そうすると、消費者安全法の中で、地方自治体は国に対して集めた情報をこのように通知しなさいということを義務づけているわけで、そういった事務の支援のために、国はこの費用を負担して地方に交付することを定めることもできる。消費者安全法の改正という形もできます。それから、特定商取引法の中にこういう1条を置くことも可能です。そういう個別法による国の財政支援についての定めを考えてはどうかという参考として、子育て支援法案を引用させていただきました。
脚注※3は地方交付税の問題について書いていますが、これも地方ヒアリングで聞かれたように、地方交付税が倍になった、また、昨年は更に45億の増額があったのですが、地方の消費者行政に使われる財源が、決して増えていないということが明らかになっているわけです。では、一体これはどうやったらいいのかというところの問題で、非常に悩ましいところです。地方交付税は、いくら基準財政需要額で消費者行政の需要を算定したところで、地方の独自財源ですから、地方は自由に使えるということです。実際、消費者行政に使われなかったという問題があります。
我々は、消費者行政の充実と言うときに、消費者行政に使われる多くは人件費だということで、消費者行政に携る行政職員を増やしたり、相談員を増やしたりというふうに議論するわけですが、専門の先生方に聞くと、行政職員の人件費のために予算措置を講ずるなどということは、活性化基金であれ何であれ、ほとんどできない。地方財政法10条でも難しいのではないかというふうに聞いたりもします。
そこで一つの知恵として、地方財政の専門の先生にお聞きしたところ、地方交付税という形で積み上げをしたときに、単に積み上げをして終わっているからだめなのだと。そのときに同時に、例えば消防力整備指針のように、消費者行政整備のための指針を国が目安として提示する。特定商取引法の執行のためには、人口何万人のところでは年間何件ぐらいを目標にして、それに対する職員を何人ぐらい確保するのかというのを目安として提示する。これは、国から地方に対する法律や何かによる義務づけではなく、単なる目安でもいい。それと、それに対する裏付けとして、地方交付税をその分これだけ増やしましたというセットで示せば、地方交付税が消費者行政の整備のためにもっと有効に使われる可能性があるのではないか、というようなお知恵をいただいております。
本日の資料6の右のページの下から3行目にある「県レベル・市町村レベルで消費者行政に最低限備えるべき基準を示してもらえれば、財政課の理解が得やすい」という記載は、まさにその方法を言われているのではないかと考えるところです。できましたら、消費者委員会では、消費者行政の中に国の事務があるということをきちんと整理して、だから国の財政支援が必要なんだということを打ち出していただきたいと思っております。
最後に一点だけ、申し忘れましたが、専門調査会の報告書も昨年の消費者委員会の建議も、相談窓口の整備という点に力点が置かれています。ところが、相談窓口の整備と言われるときには、相談窓口が設置されていない未設置の自治体にどう設置させるかというところの議論が中心でした。目標が何%までいっているかという議論をされていますが、ただ、大都市の問題がほとんど議論されていないのではないかと思って、問題提起をしておきたいと思います。
私が仕事をしている大阪市では、消費生活センターは大阪市の端っこに1か所あって、その支所が市役所と阿倍野区というところにありますが、人口250万人のところで相談窓口が1つしかないということを考えると、人口30~40万人の市で窓口が1つあるのとでは、市民のアクセス性の度合いが大変違うということを理解いただきたいと思います。実際、大阪市ではあっせん率が非常に低かったり、来所相談の割合が他の市町村に比べて非常に低いという問題が出ています。大都市における「相談過疎」とでも言うのでしょうか、そういった点にももう少し目を向けていただきたいということをつけ加えさせていただいて、私の意見陳述を終わります。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、山口先生、お願いします。

○山口正行東北大学大学院法学研究科准教授 東北大学の山口でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、相談対応体制、特に単独ではセンター設置が難しい市町村について、広域連携でどう補っていったらいいのかということを中心に、若干御説明させていただこうと思います。ただ、最近の状況につきましては、大学院の授業活動の中で若干のヒアリングをしていますけれども、岩手県、宮城県、福島県といった近県に断片的に聞いた情報しかございませんので、仮説の検証、十分ではございません。そこは御容赦いただければと思います。
では、説明の順序でございますが、まずは市町村の相談窓口の状況、相談窓口が単体で機能するときに求められる姿はどういうものだろうかということを考えてみたいと思います。次に、それが不十分な場合、広域連携によって補っている現状、広域連携のあるべき姿を考えてみたいと思っております。
まず、資料8の2番でございますが、(1)の相談窓口の設置状況につきましては、設置は随分進んでおります。人口カバー率ではほとんど100%と言われています。実際、私が聞きました東北3県におきましても、すべての市町村で窓口は既に整備をしましたと。ただ、福島県は今回の震災後の事故の後に、窓口自体、役所自体が移転しているようなところもございますので、そこは県でも現況未確認ということですが、震災前の状況で言えば、すべての整備が終わっていたということでございます。
ただ、一点、気になっておりますのは、市町村合併後、合併後の単独の市としては、どこにも1つ以上は大きなセンターがあるわけですけれども、合併によって消滅した市町村につきましては、もとの役場が支所として残ることが多いと思いますが、その支所をずっと残すかどうかは合併後の市の判断に任されている。その合併した市町村の大きさにもよると思いますが、合併後の支所としての複数の窓口を残す必要がないのかどうかということは、今後の検討課題かと思っております。
次に、(2)でございます。相談窓口は設置されたものの相談員の数はどうなのかというところで、消費者庁がお示しの指針においても、相談員ゼロのところがなお37%とあります。東北3県を見ましても、岩手が18/33、宮城5/35、福島49/59というふうに、ばらつきはありますけれども、相談員ゼロの窓口はまだ結構あるということでございます。そして、相談員配置済みといえども、相談員が1人だけというところは、何かとやりにくいという声が上がるわけでございますが、そういう市町村も、岩手、宮城、福島、それぞれそれなりの数がありまして、ゼロまたは1というところで見るとまだ結構な比率であるということでございます。かつ、相談員ゼロ、1人の窓口というのも、行政相談の一環という形で、消費者行政の専門ではないところもそれなりにあるようでございます。
ここも詳細未確認でございますが、相談員の勤務はシフトを組んでいる可能性があります。例えば、相談員が2人です、4日間開設ですといっても、4日間いつ行っても2人の相談員がいらっしゃるというわけではない。例えば宮城県は、県の一番大きいセンターは週7日、土日もやっているわけですが、相談員の勤務は原則週4でシフトを組んでいるということでございます。それは相談員一人ひとりの労務環境の観点からは勿論望ましいことでもあるわけですけれども、相談員の数、開設日数がもともと少ないところで、更にシフトによって体制がもっと弱いという可能性もなきにしもあらずということだと思います。
次に、(3)でございますが、有資格者の比率でございます。ざっくりで申し上げますと、宮城、福島、岩手とも、県のセンターの相談員の方については、8割、9割、10割と、かなりの比率で有資格者でございます。他方、市町村の相談員については、5割とか4割という状況でございます。岩手は、もともと全県域にかなりの数の県のセンターがございまして、集中期間の間に市のセンターがたくさんできたところにつきましては、県のセンターは廃止してそちらに移管するということをやったものですから、もともと県にいた有資格の相談員の方が市にもそれなりの数がいるという、恵まれている状況なのかもしれませんけれども、一般的には地方においては、最初から資格を持っている相談員の方は少ないので、この基金の期間において新たに雇用された相談員は最初から資格はない。これから継続して雇っていただいて実力をつけていただく、将来的には資格を取っていただく、そういう必要のある方が多いのではないかということでございました。
(4)に、窓口の開設日数でございますが、週3日以下というところがそれなりに窓口の数があるということでございます。逆に相談員がゼロの窓口については、週5日という整理のところも多いわけですけれども、それは単純に行政窓口、職員が平日いつもいるから、当然、週5日ですというだけのことである場合も多いようでございます。この考え方に従えば、窓口が行政の役所の庁舎にあれば、相談員が1人、2人いる場合であっても、それは週5日ということになるのかもしれませんが、相談員がいる日数は週2日ですということもあるわけでございます。その辺りの質の評価というのは、今後、取り方を考えなければいけないのかなと思われるところです。
次に3番で、求められる相談窓口の体制はどういう機能だろうかということを改めて振り返ってみますと、大きく申し上げれば、住民のニーズ、これが最重要でございまして、それを支えるものとして、相談員にとっての適正な環境という2つではないかと思います。
1つ目が(1)のアで、身近な窓口の必要性と書かせていただいておりますが、多重債務の相談等におきましては、恥ずかしいので、余り身近な顔見知りのところには逆に行きたくない、少し離れた窓口の方が望ましいという声もよく聞かれるところでございます。ただし、それは身近な窓口が必要ないということではなく、相談の内容によっては少し離れたところにも相談に行きたいという、両方のニーズがあるということなのではないかと思います。
高齢者、障害者、遠くへ出かけるのは難しい方ですとか、迅速な対応、クーリングオフ8日間の中で何回もやり取りをしなければいけないですとか、継続的な対応、あっせん対応で半年もかかるという事案もございます。電話だけでは済まない、何回も通わなければいけないという事案もございます。それから、方言への対応ですとか、生活支援の必要性、これも多重債務だけではなくて、悪質商法で身ぐるみ剥がされて生活困窮に陥るといった事案もございますので、地元の市町村の生活保護、納税部門との連携は重要かと思われます。仮に県の窓口で対応いただいた場合でも、最終的には市町村の関係部門と連携を取っていただくために、そこに戻ってくる必要もありますので、こういった必要性等々を考慮すれば、いずれにせよ、身近な窓口の整備は必要ということは疑いないのではないかと思います。
次に、イでございます。身近な窓口が備える機能というのは、幾つか整理して考えれば、1つ目、潜在的な相談の需要(市町村の人口規模で近似するかと思いますが)に応じて、適正な人数の相談員を配置すること。2つ目が、その相談員がきちんと相談・あっせんできるように、一定割合は資格や経験を持っていること。3つ目に、週4日とまで全部に要求するのは難しいかもしれませんが、いつ行っても対応してもらえるようなそれなりの体制を確保することだと思います。
そして、(2)ですけれども、相談員が研修の機会を確保すること、休暇をきちんと取れることなど、長期間勤務していただける体制を整えることが重要だと思います。特にストレスが多いことですとか、複数の相談員で話し合いながら、個別の事案を適切に解決していくことで能力のレベルアップも図れるということで、一つの窓口に相談員をせっかく置くのであれば、是非2名以上を置いてほしいという意見はよく聞くところでございます。
4は、市町村の広域連携の状況でございます。単独の窓口でここまでの機能を、人口の少ない小規模市町村が全部を配置するのは難しいでしょうし、効率がよいというわけでもないと思いますけれども、それを広域連携で補っていく事例も、仄聞するところでは増えてきていると伺っております。ただ、その分類におきまして、広域連合や一部事務組合という例はまだ少ない。むしろ1名の相談員を複数市町村で雇用して、それがぐるぐると巡回するという方式の方が多いやに伺っております。
これは全く私見でございますけれども、形式の分類と内容の分類は分けて考えた方がよいのではないかと思っているところでございます。
まず、広域連合なのか、任意協定なのかといった、形式面の話を(2)で書かせていただいてございます。私、個人的には、最も重いやり方、広域連合というのが、広域連携による機能向上という目的を最も徹底して果すためには適しているだろうと思います。ただ、広域連合以外の方式であっても、それによって目指そうとしている個別の相談窓口の機能の補完が達成されるのであれば、別段、どんな形式、やり方でも構わないだろうと思います。
考えられるポイントはその3点ぐらいかと思いますが、アの相談員の常勤雇用化に向けてというところにつきましては、地方自治法上の定数管理を外れていくためには、特別地方公共団体である広域連合あるいは一部事務組合という形に、切りかえることが有効なのではないかと思うところです。ただ、前回の有識者ヒアリングでの御提案の資料の中にも、どちらかあったかと思いますが、専門職の任用制度など、こちらの方は私は不勉強ですが、そういった工夫で定数の制約を突破することができるのであれば、別段それでも足りるのかもしれません。
2番目に、あっせんの実効化というところです。市町村の相談員の方があっせんをしようとしても、行政処分の権限が背景にないので、なめられてしまうということがよく聞かれるところでございます。もし広域連合に県も参加していただいて、処分権限を広域連合として持つことができれば、そこは抜本的に解決されるということなのではないかと思います。ただし、そこまでのことをしなくても、県と市町村が一体となって相談対応をやっているという緊密な連携、例えば但馬の例などは、県の建物の中でまさに県と市町村の相談員の方が、かなりの日数、一緒にいて仕事をしているということです。そういった連携を、事業者が十分認識する程度にアピールできれば足りることかもしれません。
3番目に、構成市町村への関与ということです。広域連携を行う場合の懸念の一つとして、周辺の市町村が中心の市町村や県に頼りきりになってしまって、責任感喪失、身近なサービスはかえって低下するのではないかというものがございます。その点、広域連合の場合には、勧告権限を持って、広域計画、周辺市町村の個々の窓口も、こういう水準のことをやりなさいということを守らせることができる点でも、メリットがあるのかなと思います。この点は、周辺構成市町村が積極的にあらかじめ体制整備を行っているのであれば、そもそも問題ではないということになろうかと思います。
内容面の選択でございますが、どういう形式を採用するにしても、単独の窓口では足りない機能を、どういうふうに補完していくかという内容面のやり方の選択肢としまして、消費者庁の資料でも、中心市集約、巡回、相互乗り入れという3タイプが挙げられることが多いように思います。ただ、これも私見でございますが、本来択一的なものではなくて、組み合わせが可能な要素なのではないかと思います。
中心市集約型というものが、私が東北で聞いた限りでは多かったわけでございますが、岩手県では、7つの市のセンターが2~8の市町村を対象に広域対象のセンターとして機能しているということでございます。そのときに、周辺市町村に窓口は残していますけれども、相談員はゼロ。相談員はすべて中心の市町村に集まっている形が原則である。盛岡は例外で、周辺の市町村もたくさんありますので、そのうちの幾つかは1~2人の相談員を配置でございますが、基本的な考え方はそうであると。周辺の窓口に常に相談員はゼロということでいいのだろうか、というところについては、出前講座などによって、若干ですが、補う努力をしているということでございます。
岩手県の方の考え方として、できれば広域センターは3名以上相談員がいることが望ましい。2名常駐で、1名が管内を巡回できることが望ましいのではないかということでございました。なお、岩手では宮古市周辺だけは、広域によるセンターの対応が進んでおりませんで、県のセンターと宮古市の窓口で事実上の対応という状況でございます。それから、単独の市のセンターとなっている奥州市、その他の幾つかの市につきましては、5名とか3名という相談員がいますが、ここは市町村合併後の市でございますので、この人数でも多すぎるわけではない。むしろぎりぎりだろうということでございました。
次に、宮城県でございます。宮城県では、まだゼロ、1人という窓口は結構あるわけですけれども、広域で補っている例は、大崎市周辺の5市町の事例だけのようでございます。この場合には、周辺の4町の窓口にも相談員が1人~2人配置ということですけれども、そちらの窓口も軽い相談については自前でやっております。重要・対処困難な事例は大崎市と連携ということで、大崎市の相談員の巡回はしていないといったことでございます。福島県では広域連携の事例はないようでございます。
次に、巡回型でございます。典型的な巡回型というのは、複数市町村が1人だけ、あるいは1人~2人という相談員を雇って、その方が月曜日はどこ、火曜日はどこというふうにぐるぐる回る形のようでございます。ただし、単独では十分な体制を持たない市町村同士が連携するときに、こういう形をとることが多いのかもしれないですけれども、各窓口で見た開設日数が週に1日だけといったことであれば、住民にとっては、身近な窓口はそこだけで十分ということにはならないので、結局のところ、行ってみて相談員がいないというときに、今、どこにいますかと、そこで電話なりつないでいただいて、どうやって継続的な相談ができるかといった課題があることは、中心市集約型の場合と変わりはないのかなと思います。
ただ、週に1日、2日であっても、身近に相談員がいないよりは、いる方がいいということは間違いないと思いますので、中心市集約型においても、相談員の数に余裕があれば、巡回方式を併用することがよいのかなと思います。
相互乗り入れについては、例えば、2つの市町村がお互いに週に2日ずつしか開設をしていないけれども、どちらの住民も、自分のところが開いていないときは相手の方に行けるようにしようというパターンだと思います。これは別段、不十分なところ同士だけではなくて、十分な体制の市町村同士であっても、あえて離れたところに相談したいという先ほどのニーズのようなこともあることを踏まえれば、こういう協定を結ぶことは常に有意義なのではないかと思われます。他方、不十分なもの同士が相互乗り入れを行うだけでは、先ほどまで述べたような課題が解決されないことは同じであり、これだけで問題が解決するということではないのではないかと思うところでございます。
5は、求められる広域連携の在り方はどうかということでございますが、相談員の総数としては、広域全体で2名というのは最低必要でしょうし、人口規模から考えて、2名で不十分であれば3名以上ということになろうかと思います。
相談員の配置の方式につきましては、中心市集約型のよさは、複数相談員が中心市の同じ場所で知識を共有し合いながら仕事を進められるということで、適切な対応、能力向上、継続相談の引き継ぎも容易といったことがあると思います。休暇や研修も取りやすくなると思います。それは別段、中心市型にしなくても、3人とか、4人、5人の相談員のチームが常に全員で巡回する、拠点を常に移し続けるというやり方でもいいのかもしれません。ただ、広い範囲の中で、住民から見て端から端へという移動が大変な場合もあることを考えますと、距離的に適当なポイントに中心市があるのであれば、そこに拠点があった方が便利なのかもしれないと思います。
巡回型のよさは、不十分ながらも身近なところで相談員がいる日があるということだと思いますが、広域全体で相談員の数がかなり確保できるのでしたら、そもそも巡回とせず、主要な周辺市町村には1名ずつ常駐といった形にしても、よりよいのだろうと思います。確保できる総数に応じて、中心市には2名以上常駐ですとか、周辺市町村の中でも、幾つか大きめのところには1名常駐ですとか、あるいは、1名以上がチームとなって周辺市町村を巡回といった方式を組み合わせて、一番効率的なやり方を探ることがよいのではないかと思います。
それに加えて相互乗り入れ型の発想は、どういう広域連携の参加市町村であっても、どこにでも相談に行けるという協定を結んでもよいのではないか。費用負担の定め方は難しくなるかもしれませんが、それは、後からの相談実績に応じて検討してもよいのではないかと思います。
住民視点から見ますと、どういう広域連携の形をとっても、自分が身近な窓口に行った後、その相談解決までどういうふうにつないでもらえるのかというところが最重要だと思います。実際に身近な窓口に行ったとき、相談員がその曜日はいないということになったときに、その曜日まで待つのか、それとも市や県の近いところのセンターに、行政職員から相談をつないでいただくのかということになるわけでございますが、現在のところ、岩手、宮城等で聞いている話では、基本的には電話ですと。相手の相談員から、あるいは行政職員からの相談に対応して終わるということもあるし、相談自体を移管する例もあるということでございます。いずれにしても、窓口の行政職員が受けた相談を、近隣のセンターにつなぐということは以前から行われているはずですが、そこで住民に不満のない形で、センターへの連携、庁内連携を含めて行われているのかというところについては、どこも十分把握していないということでございまして、ここも、本当は確認をしていく必要があるのではないかと思います。
最後に6番、一言だけ、基金終了後にこういった相談対応体制がどうなるかということでございますが、やはり懸念する声が非常に大きいところでございます。岩手、宮城、福島いずれも基金ができたので、各市町村がセンターを設置したり、相談員を増員したり、あるいは開設日数を増やしたりというところができてきたわけでございますが、そこのランニングコストの部分については、基金終了後の目途と言われても、「さあ」という感じでございまして、相当の影響が出るのではないかという心配が聞かれました。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、沼尾先生、お願いいたします。

○沼尾波子日本大学経済学部教授 日本大学の沼尾でございます。
私は地方財政が専門ですので、消費者行政そのものを中心に研究しているわけではないのですが、本日は、自分の専門である財政の観点から意見を申し上げたいと思います。
お手元の資料9に沿って、説明をさせていただきます。
まず初めに、地方消費者行政活性化基金が今年度末をもって終了するということですけれども、基金について私なりに、国の方でまとめておられる資料ですとか、自分なりに自治体でお話を伺っていることから判断して評価すると、消費生活相談窓口が全国的に確保される体制が整えられたという意味では、一定の成果が上がったのだろうと理解しているところです。以前に調査をしたある県でも、これを使って、相談員の増員、処遇改善としての賃金上乗せ、あるいは弁護士、司法書士にいろいろアドバイスをいただくとか、さまざまな形でこれを有効に活用したと聞いております。
他方で、幾つかの自治体に話を聞きますと、本来であれば、窓口の開設であるとか、システム自体の拡張に使いたかったけれども、期間が限られていることを考慮した場合、どうしても、この基金が終わった段階で打ち切ることができる事業のほうに充当せざるを得なかったということで、教育や普及啓発の事業に充当することとしたという話も聞いているところでございます。
そう考えますと、今後の課題としては、本来であればこの仕組みをもう少し機能強化したかったけれども、そこに充てられなかった自治体、あるいは、機能強化を図ったけれども、基金が打ち切られる中で、今後、実施体制維持のため、あるいは更なるニーズに応えていくための予算確保をどのように考えるかというところが、大きな課題になるだろうと。他方で、この3年、4年間の中で、センターや窓口が立ち上がって一定の仕組みができたわけですけれども、成果が見えるというところに到達するには期間が短い。基金をもらって、仕組みを入れて1、2年で、なかなか形になっていないところもあって、財政当局を説得できるだけの数字が出せていないところもあるようでございます。
片や自治体の財政状況から、一般財源における対応は可能なのかということを考えてみます。こちらでは、地方交付税の基準財政需要額に相談員の人件費その他を積んでいることをもって、一定の財政需要に対応しているということがしばしば説明として出てくるところで、先ほどの国府先生からのお話にもそういったご説明があったかと思いますけれども、皆様御承知のとおり、基準財政需要額に算入されたからといって、その分の財源が自治体に上乗せされて交付されるわけでは必ずしもない。レジュメの1ページにも書きましたとおり、例えば平成24年度の地方交付税の算定に当たって、地方財政計画ベースで見た地方の財源不足額は23.6兆円でしたけれども、交付税総額は17.5兆円であった。残りの不足の6.1兆円については、交付税を交付する代わりに、地方自らが臨時財政対策債という地方債を発行して交付税の不足分をカバーする、こういうことになっているわけでございます。
そういうことを考えると、自治体の財政当局からすると、できるだけ歳出削減・抑制基調で、需要額を全部満たすだけの交付税が来ない以上、臨時財政対策債を発行してもいいわけですけれども、できるだけ赤字地方債については発行を抑制したいという思いもあるわけです。一方で集中改革プランというものを総務省が打ち出しておりまして、年々、人件費の削減、定数管理が厳しくなっている状況の中で、人員を確保するのが難しいという状況もございます。
さらに、財政の硬直化ということを考えますと、義務的経費、すなわち人件費・扶助費・公債費の3つの合計額が非常に重視されるわけです。人件費については毎年削っているところですけれども、その一方で、この不況の中での生活保護費の急増ですとか、高齢者の福祉ですとか、介護・医療の支出増大等により、いくら人件費を削っても扶助費がどんどん増えているというところでして、なかなか義務的経費が削れない。裁量的な政策経費の確保が大きな課題になっているというのが、今の多くの自治体が抱えている状況だと理解していいと思います。
そうした中で、地方消費者行政の充実・強化、そのための財源確保をどのように考えていくのかということですけれども、私自身が一番申し上げたいのは、非常に基本的なことですが、社会経済情勢が目まぐるしく変化している中で、地方消費者行政に期待されている役割が非常に重要になってきているということが、案外国民に共有されていないのではないかということです。
例えばよく言われる話としては、単身世帯が増加しているとか、インターネットを通じた商取引が増大していて、相手が見えない形での買い物が行われている。あるいは、ネットやメールなどを通じて気がつかないうちにいろいろなトラブルに巻き込まれている。こうしたデジタルコンテンツに関する消費者相談が非常に増えていることを、いろいろな自治体からも聞くわけですけれども、相談内容の多様化・複雑化が進む中で、実は消費者行政分野のサービスというのは、私たち国民生活の安心・安全にかかわる重要施策だということは案外国民にも知られていませんし、それこそ自治体の中でも、財政当局はこのような認識をしておりません。昔からの商品テストですとか、だまされてしまったというので、相談には乗るけれども、それはだまされたあなたの問題でしょうというところで、誰もがこうしたリスクを抱えている社会になってしまった。そういった取引が常に行われている。あるいは、メールを使ったりインターネットを使ったりしているだけで、こういうことに巻き込まれるリスクがあるというところが、案外知られていないのではないかと感じているところでございます。
そのように考えたときに、こうしたサービスをどう位置づけるのかというところが、今後の財源確保を考える上で非常に重要になってくるのではないかと思います。まず、消費生活相談、あっせんというのは、福祉、と言うと言い過ぎですけれども、ある種のユニバーサルサービスというふうにとらえ直してみてはどうか。全国どこの地域に居住していようとも、こうしたトラブルや被害に遭った場合には、相談して、解決に向けた対応を得られる機会が国民全体に保障されている。そういったところをきっちり打ち出していくことが、国としては重要なのではないか。
窓口自体は、私は、すべての自治体に窓口を置くことまではしなくてもいいのではないかと思っていまして、窓口の在り方というのは、必ずしも消費生活相談でなくても、それこそホームヘルパーさんであっても、生活保護のケースワーカーさんであってもいいと思いますけれども、誰かがきっちりその情報を受け取って、最終的に専門性を持って相談やあっせんにつながる、そこの相談員につなげられるようなネットワークを、しっかりつくっていくことが重要なのではないかと思っているところです。
もう一つは、「予防」としての消費者行政分野のサービスと書きましたけれども、消費生活相談は、他方で多重債務問題などを抱えている人たちの相談にも乗っているという意味では、生活保護ですとか、貧困への転落を予防する側面も持っているのではないか。生活保護の受給者の自立の阻害要件の非常に大きな一つである多重債務問題、これの解決は実は生活保護の分野でも大きな課題になっている。こうしたところを考えると、こういう相談やあっせんが重要な意味を持っているというところが、もう少し光が当たる、見えてくるのではないかというふうに感じています。
普及啓発や教育、あるいは商品テストというのは、将来的な消費生活相談のコストを削減する可能性を持っている意味では、予防のための予防というのでしょうか、そういう側面を持っていると思います。他方で、財政難の中では比較的削減しやすいというか、切り捨てやすい領域でもあるのではないかとも思っているところです。
事業者への指導のところですけれども、これは行政としての対応が求められる領域で、警察との連携や協力も必要かと思います。国がやるべきか、地方がやるべきかという役割分担は議論になると思いますが、私は、都道府県がやることには一定の意味があるところも大きいのかなというふうに思っているところです。
このように自治事務としての地方消費者行政をどう考えるかというときに、手段や方法は、自治事務として地域の実態に応じたものであってよいと思いますけれども、何らかの相談や支援サービスに普遍的に、ユニバーサルにアクセスできることが必要だという視点から、財源保障をどう考えるのかということを、もう少し国として明確に打ち出してもいいのではないかと思っています。
その上で、活性化基金終了後に求められる対応をどう考えるかということですけれども、まず自治体の側からすると、消費者行政単独での予算の獲得が非常に難しいとするならば、例えば福祉ですとか、ケアの領域ですとか、商業政策ですとか、そういうところとうまく組み合わせながら予算を調整する方法が、一つ、あり得るのではないかと思っているところでございます。先ほども申しましたとおり、多重債務の問題解決が生活保護の受給の削減につながる可能性もあるとすれば、福祉事務所や地域包括支援センターとの連携を図りつつ、そういったところについて財政措置をするという方法も考えられるだろう。そういったことを財政当局に説明していくのも、一つのやり方ではないかと思います。
3ページ目にいきまして、近隣市町村間、県と市町村との連携・協力の話ですけれども、小規模町村ほど活性化基金への依存割合が高い傾向にあります。他方、町村の場合は、1人の職員が複数の業務をかけ持ちながら、消費者行政の分野についても、その一つとして対応するという方法を採用しているということで、それぞれ単独の専門性を持った相談員を確保するのは難しい実態があると思いますけれども、そこで何とか近隣との連携ですとか、市との連携や県との連携というところで、効率的な対応を図る方法があるのではないか。
私が以前に調査をさせていただいた神奈川県では、県がその辺のコーディネートをやっておりまして、中心となる市に周辺の町村とうまく組み合わせるようなマッチングを行ったり、あるいは、相談員が1人しかいなくて研修に出られない場合には、県の職員がそれぞれの市の窓口を回って、研修を補完するといったこともやられている。こういった仕組みも、もう一方で考えていく必要があるだろうと思ったところです。
次に、国としてどう考えるかということです。こうした消費者行政のサービスに関するニーズと成果について、こちらの自治体のヒアリング、調査の結果にもありましたけれども、国としての明確なビジョン、方針について、あるいは、その成果としてどういうことが期待されるのかということに関する情報提供を、積極的に行っていく必要があるのではないかと思います。先ほども申しましたとおり、こうしたサービスの重要性というのは案外と国民には知られていないところがあるのではないか。行政内部でも、消費者行政部門に配属されるまでは、まさかこんな重要なことをやっていることは全く知らなかったというふうにおっしゃっている職員の方もいらっしゃいます。そうだとすれば、その成果についても併せて伝えていくとともに、そこでの財政需要の必要性を主張する、そういうことに対する支援があり得るのではないか。
2点目としては財政支援ですけれども、確かに継続的な支援を必要に応じて行うことができる体制の整備を保障することは、非常に重要だと思います。ただ、地方交付税の基準財政需要額への算入自体に、意味がないわけではないですけれども、交付税に算入したということだけではなかなか財政当局は動かない。そういう意味で言うと、補助金、交付金のような形で、別枠で財源手当で行われる事業へのインセンティブは高いだろうということは言えます。
あと、これはちょっと当てはまるかどうか難しいのですけれども、例えば過疎地域、辺地に対して、条件不利地域のところで特別に財政需要とかコストがかかる場合、そこでの優遇政策の中に該当する、いろいろなメニューが上がってくるケースがあると思います。そこで消費者行政に関するサービスというのは見た記憶がなくて、そういったところでも何らかのインセンティブを与える仕組みを、現行の制度の補助金や交付金、あるいは支援策の中で入れ込むことも考えられていいのではないかと思います。
何らかの交付金が今後も創設されれば、一定のインセンティブを期待することは可能だと思いますけれども、その際には、ユニバーサルサービスとしての特性を踏まえつつ、無駄のない仕組みを考えることが必要だろうと。だとすれば、各地で行われている福祉施策や商業政策などとの連携の事例などについても、国として幅広く情報提供をしながら、予算化の方法を模索するための支援があってもいいのではないかと思います。
PIO-NETの入力費用は、そもそも機材等の整備は国セン、実際の入力作業に要する経費は自治体という仕分けがなされてきたと思いますが、自治体の現場の職員の方に話を聞くと、とにかくシステムが使いづらい。入力したデータはすべて国センのサーバーに行ってしまうし、字も小さくて見づらくて、とにかく使いづらいということで、現場ですぐに利活用することができにくい、国中心のシステムになっているのではないかという御指摘もあります。実際に国では、事故情報の通知ですとか、法執行に当たって、自治体が入力した情報を使用していることを考えても、こうした入力業務を行う場合に、費用負担を行うことが求められてよいのではないかと思います。
ただ、私の方で懸念しているのは、負担金なり何なりを使用することによって、すべての市町村の現場が、入力をある種の義務としてやらざるを得なくなってしまうということです。そこについてそれだけの労力が割けない自治体が出てくることを考えるとすれば、情報提供に対する対価という形での負担の在り方を考えて、幾つかの自治体で、入力をやれるところがやれるといった形で柔軟に対応する。つまり、自治体の方に過剰な業務が国から下りてきたという形にならないような費用負担の在り方と、その業務を地方へ委任する方法がないのかなというところが、非常に気になっているところでございます。
私からは、以上とさせていただきます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、今、御説明いただいた内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 示唆に富む御説明をいただきまして、本当にありがとうございました。
最初に国府先生から、消防のような目安を示すことによって、自主財源、一般財源を確保しやすくなるのではないかというご指摘は、私もそのとおりだと思っています。その目安、基準を示すに当たって、住民に一番近い市町村の消費者行政の場合でお聞きしたいのですけれども、まず市町村の消費者行政が何をすべきか、何をしなければいけないか、あるいは、こういう姿を目指すべきというものがないと、それに見合う人が幾ら要るのか、お金が幾らかかるのかという目安や基準が示せないのではないかというふうにも思っております。
お伺いしたいのは、日弁連として、市町村の消費者行政が目指すべき姿、こういうことをすべきということが、既に先生方の間で整理がなされているのかどうか。あるいは、こんなふうにやったらいいのではないかというアイデアがあれば、是非教えていただきたいというのが一つです。それを踏まえて、目安と言ったときに例えばどんな目安があり得るのか。人口何万人当たりに消費者行政の職員が何人必要とか、あるいは、1人の相談を担当する職員が1年間に対応し得る相談の件数が何件なのか、具体的な目安のアイデアというのでしょうか、そういったものがあれば伺いたいと思います。
これに関連して、沼尾先生にお伺いしたいのですけれども、消防のように基準、目安をつくったときに、果たしてこれが一般財源確保にどれだけ効力を有するのか、というところです。厳しい地方財政の中で、どれだけ財源確保の可能性があるか、目安や基準が財政課と闘い得る武器になるのかという辺りの御考え、御意見を教えていただければと思います。

○河上委員長 それでは、お願いします。

○国府泰道日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長 吉田委員のおっしゃった第1点目の目指すべき姿、これは、弁護士会で議論をしたものは特にありません。消費者団体の中ではいろいろ言われていると思いますが。相談業務でも、単に1件受け付けして、忙しいから他機関を紹介して一丁上がりとなったら、1人の職員で何件でもやれます。それを消費者に寄り添って、事業者とのあっせんまで相談員が入るということになると、処理できる件数はおのずと限られてくるというところで、例えばあっせん率のようなものが一つの指標になって、どんな丁寧な相談業務が行われているのかを見ることができるという考え方が、よく指摘されているところではあります。
消費者団体の皆さんからいただいた情報によりますと、大阪府内で人口10万人、20万人、30万人という市の場合は、センターのあるところは相談件数が人口比にして1%。30万人の市であれば年間3,000件。それを相談員が6人でやったら1人当たり500件ぐらい。そうすると、人口5万人当たり相談員1人ぐらいがほぼの目安かなというのが出てくると思います。他方、先ほども申し上げたけれども、大阪市は非常に相談件数が多くて、電話はひっきりなしです。人口と相談員の数の比率から見ると非常に相談員が少ない。その結果、1人の相談員が年間1,000件ぐらいの相談案件を受け付けているということになり、おのずとあっせん率が低くなる。
そういう意味で、人口比で5万人に1人とか、丁寧にやっている市町村レベルで言うとあっせん率は10%に達します。大阪市辺りになるとほんの数%です。ですから、10%ぐらいを一つの目安にするとか、そういった形で具体的な指標というか、目安を立てながら、あるべき相談業務の姿を示すことが可能かもしれないと個人的には思います。

○河上委員長 沼尾先生、お願いします。

○沼尾波子日本大学経済学部教授 基準なり目安を示せば一般財源の確保に動くのかということですけれども、一つ、典型的な生活保護の事例を挙げたいと思います。
生活保護は、1999年まではケースワーカー1人が80ケースが必置規制として決められておりました。それは必置規制ですので、都市部の場合は、どこの自治体も80世帯に対して1人のワーカーをつけますので、当然、それだけの実態があれば、公務員数実態調査が行われ、その結果に基づいて人件費は交付税措置をされる。財政当局もその分、人と給与を出すという仕組みでした。けれども、2000年に必置規制が外れましてから、実際に保護の受給者が増えたこともあって、今、平均するとケースワーカー1人に100ケースぐらいです。ただ、厚労省としては依然として基準値というのを持っておりまして、定期的に自治体に監査に行くときは、おたくは80ケースを守っていないですねというところを監査でチェックはされますが、実際にはそれを守れない。特に大都市などに行くと、1人が200ケースを持っているとか、すごいことになっているわけです。
ところが、交付税の場合、自治体の職員の数で算定しておりますので、基準値によって人件費を算定しているわけではない。そこでどういうふうにクリアしているのかというと、厚生労働省は、非常勤とか嘱託で、例えば社会福祉、警察のOBの方とか何かを雇えるような、活性化基金のような形で、3年間の時限つきとか何かというものの、100%を人件費に使える補助金というのを別途用意している。そちらの方で非常勤や嘱託の職員を雇用しながら、3年期限つきと言いつつ延ばし延ばしして、そこで何とか別途の職員を別枠の予算で持っていきながら、そういった人たちがカバーしながら、今、福祉事務所が運営されているという実態がございます。
そういったことを考えたときに、仮に基準値を定めたとして、一定の枠の予算を財政当局が認めることはあると思いますけれども、それに対して人件費がきっちりつくかどうかというのは、なかなか難しい。交付税の方も職員数の実態で算定をしていきますから、実質的に人件費がつくかどうかというのは難しい。やはり基金に代わる戦略的な交付金のようなもので、実際の消費者行政の現場はこれだけ大変だけれども、職員はこれしかいないというところをうまく示しつつ、何とか別枠での職員の人件費を取ることの方が、戦略としてはほかの施策とのバランスで見ると、あり得るのではないか。
ただ、消費者行政の世界で言うと、非常勤とか職員の待遇がなかなか厳しいので、常勤化してほしいという意見も出ているところではあるかと思いますけれども、ほかの社会保障の分野の方ではそういった実態になっているということはございます。

○吉田委員 基準、目安を示せばという考えも私も前からあるのですが、私も消防の方を参考にしていまして、現役時代に、消防の関係のお金がどうなっているのか調べたことがあります。盛岡市の場合、消防の予算というのは、国から来たものを、一部事務組合でやっていましたが、そっちの方にそのまま流すというふうに説明されたことがあります。例えば、消防車の更新時期が来たから消防車を買うお金が必要だとなれば、それに見合うお金が国からきて、それを右から左に盛岡市の財政を通して一部事務組合に交付するという仕掛けになっていて、そのお金の確保について、財政課との間でもめるとか、交渉するとかそういう話にはならないような話を聞いたことがあって、それならばこれを応用して消費者行政でも同じようにやることはできないだろうか、というところからスタートした覚えがあります。
一方で、生活保護の例を見ると、私もケースワーカーをやっていましたが、120ケースを持っていまして、目安の1.5倍もということで、非常に大変な思いをしたのですが、法定から目安というふうに変わった瞬間、財政難や人手不足に引っ張られてなし崩しになっていく側面もあるので、これは一長一短があるというか、気をつけなければいけないところなのかなというふうに思います。
御示唆のあった福祉施策等との連携ということで、私もそれはすごくいいアイデアだと思っていますけれども、商業政策との連携というのは、私の知り得る範囲では事例として聞いたことがなかったので、どんな事例があるのかということをお聞きしたいのが1点と、それから、情報提供の対価という形で、お金の負担を国に求めることができないかということを実際やろうとしたときに、どんな障害が想定されるかという辺り、もしもアイデアをお持ちでしたらお聞きしたいと思います。

○沼尾波子日本大学経済学部教授 まず、1点目の商業政策の話ですけれども、これは都道府県の場合と市町村の場合で違うと思いますが、対事業者への指導との関係で、事業者の方が問題を起こさなければ相談というのは出てこないものなので、そこと日ごろからよい関係を築いておきたいと。商業政策ということで、地元のつながりを密にしつつ、あとは一定の情報を取るということがあるのではないか、ということが言われてきたところです。そういうことで挙げてはいますけれども、ただ、最近言われているインターネットの商取引とか何かということには、なじみにくいものなのかと思います。
都道府県の方では、いろいろな事業者間の情報を取ることによって、業者に対する指導や何かを行うときに、最近あそこにああいう事業者が入ってきたよとか、架空の住所を使っている団体さんもあったりするので、そういったところで民間の事業者とのつながりをとっておくことで、効率的に情報が取れることがあるということでした。そういうことで載せておりまして、あくまでも中心はこちらのケアの領域の話でございます。大変失礼しました。
それから、最後の情報提供に対する対価というときに、何がいいと思ったかというと、先ほどの山口先生のお話にもありましたけれども、広域的な連携、事務分担の在り方が地域によって多様だとすると、それぞれの自治体に人件費みたいな形で張り付けてしまうと、すべてのところでやらなければいけなくなる。ですが、情報提供何件というふうにしてしまえば、うちは余裕があるから人をいっぱい雇って、雇用も確保できるし、PIO-NETに入力してもらえば地域に雇用が生まれると。逆に、うちはそんなところはやりたくないというところで、うまく地域で補完しながら、やってもいいよというところが情報の入力をいっぱい引き受ける、かつ、相談のところも引き受けるというところが、うまく組み合わせができないかなというふうに思ったところです。
ただ、これは私が、情報の入力、提供と相談というのは密になっていると思いますけれども、そこをどこまでうまく切り離せるのかとか、当事者が入力しなければいけないのかというところの値ごろ感がわかっていないので、ひょっとしたら実現性が弱いものなのかもしれません。そのときに、1件提出をどこからしたのかということが把握できて、その件数に応じて費用を負担するという仕組みがうまくつくれれば、やる気があるところは、いっぱい周辺のところまで引き受けるというところの役割分担ができないかなということで、このような形のものを挙げさせていただきました。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 三先生にそれぞれ簡単にお聞きしたいのですが、一つは、国府先生の方でお話があった中で、国の財政措置を特商法の中に定めたらどうかというお話があったかと思います。その辺は、具体的にどういう形で定めたらいいというふうにお考えなのか、これを教えていただければと思います。
山口先生には、沼尾先生と全く別の視点から、こうあったらいいかなという、どちらかというと実現可能なのかなというような、割と理念型的なところをお話しいただいたかと思います。財政措置をどう具体化して実現したらいいのかというところが、一番苦労するところですけれども、先生の視点から言うと、先ほどの沼尾先生の意見も踏まえながら、どういうふうな形で先生がおっしゃった理念型を実現する財政措置を講ずる余地があるのか。何かお考えがあったらお聞かせいただければと思います。
沼尾先生については、実は吉田委員は前から、PIO-NETの情報を国に買ってもらうという形の話はどうなのだろうということを、アイデアとして言われていますけれども、ただ、そういう例というのはあるのでしょうか。要するに、地方の情報とか何かを国が買うといいますか、スピード違反の罰金じゃあるまいし、そういう具体的な例があれば、こういう例もあるからこういうふうにやったらどうかということが言えると思うので、何かあればと思いますが、いかがでしょうか。

○国府泰道日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長 特商法や消費者安全法の中で財政的な措置に関する規定を置くという提案を、2つの法律を引用してそういうことを申し上げた理由を説明します。従来我々は、継続的・恒常的に国が財政措置を講ずるものとして、地方財政法10条というものにとらわれてそこの議論をしていました。最近でも、高校の就学援助のためにということで、平成22年にそういう条項が追加されて、やはり必要な政策については10条に規定されるというのはあります。しかし、なかなか総務省の壁が厳しいということもよく聞いたりするものですから、それだったら、例えば消費者庁が所管している法律の中に財政に関する規定を置いてはどうかという提案です。消費者庁の一つの事業としてこういう政策をやっていく、そのための措置を地方にやってもらうから、国としてもこんな財政支援をやるということを個別法規に明記する方法があるのではないか。その一つの例が、子ども・子育て支援法案という、今、まさに国会で問題になっている法案が、特定の政策について特定の法律の中で国の負担を義務づける内容になっているものですから、こういう手法も消費者庁としては考えていただいたらいいのではないか、そういう意味での提案です。

○山口正行東北大学大学院法学研究科准教授 御指摘いただきました点は、財政措置の面で、市町村の窓口にせよ、広域連携にせよ、実現していく方策の面で何かアイデアがあるのかということでございますが、つらつら書かせていただきました、具体的なこういう方法を組み合わせてはどうかという一つひとつについて、財政措置の方策まで深く考えているわけではございません。
大ざっぱに考えますと、財政当局に対する説明というのは、一に必要性の説明、二にその施策による効果の説明ということなのではないかと思っております。必要性の説明という点では、先ほど国府先生、沼尾先生、基準の示し方ですとか、それを示しても財政当局への説明としてどれほど有効かということはございましたけれども、それでも最低限こういうものが必要だと。それは、個別の市町村で達成できればそれでもいいし、それができなければ広域でやってもいいけれども、最低限これぐらいのエリア、こういう住民ニーズに対してセンター1つは必要、その備えるべき最低限の機能はこういうものではないかというものを、国の方針で打ち出すことはある程度意味があることなのではないかと思います。
私自身は、具体的アイデアをそんなにたくさん持っているわけではないですけれども、例えば、1968年というすごく古いもので恐縮ですが、自治省の行政局が当時出されていた生活圏についての調査の報告書の中で、一次生活圏、二次生活圏はこうあるべきだという話がありまして、その中の三次生活圏というのが15~30キロ圏で、人口が10万人程度。バスで60分で行けるようなエリアで、そこで提供されるべきサービスは、消防署、警察署、市役所、保健所、福祉事務所等々はそれぐらいのエリアで1つあるべきだという議論があったかと思います。消防署、警察署と消費生活センターを全く一緒とまで言い切れるかどうかはわかりませんけれども、一つこういうものも参考にする。
人口も大事だと思いますけれども、住民にとって身近で、ちょっと行こうかなと思える距離というのも大事だと思います。例えば、真ん中とって半径20キロぐらいですとか、車で30分ぐらいで行けるとか、それが数字として正しいかどうかわかりませんけれども、そういう考え方で、最低限、それ以上のことをケースバイケースで考えたらという設定の仕方はあり得るのかなと思いました。
また、人口の面でも、これも私のとった数字は2年前ぐらいの古いもので恐縮ですけれども、全国19の政令指定都市で考えますと、人口が1,940万人ぐらいで相談員が250人ぐらいで、割ってみると7万8,000人に相談員1人という感じではないか。私の身近な仙台市で同様に割り算してみますと、8万6,000人ぐらいという感じになりますので、間をとって8万人に1人ぐらいはいた方がいいのではないか。個人的には、小さい窓口であってもそこを拠点にするなら、本当は2人はいた方がいいと思いますけれども、人口割の考え方というのは、都市の問題というのも先ほど国府先生の御指摘がありましたが、政令指定都市は一応それなりの水準には行っているという考え方に立てば、例えばそういうとっかかりの取り方もあるのかなと思うところであります。
効果の方の説明というのは、これも難しいのですけれども、例えばという一つの例だけでございますが、広域にやると何がいいことがあるだろうというのは、水準の足りないところに最低サービスをということが、最初の眼目なわけです。プラスアルファの方向性の効果として、県と市町村の役割分担というのも本当は別の論点であると思いますけれども、県は広域的な事案をもともと担っていますとよく言われるわけですが、被害者が相談を持っていったときに、これが県に広がっている相談です、これは一つの町にとどまっている相談です、だから、こっちは私が受けるけれども、こっちはあっちに横流しをするとか、そういうことはないわけです。普通は来たものは、県だろうが市だろうが受けている。
大事なのは、県がそういう情報を集約したときに、これは広がっている事案だなと思ったときには、ほかの市町村にも情報提供して、未然防止ですとか、いざ相談が来たときにすぐ対応が取れるようにするということです。PIO-NETの整備というのは、各窓口、必ずしも進んでいないということも踏まえますと、県とか広域にしたときの広域の部分が仲立ちをして、情報共有していって未然防止にもつなげていくというのは、大事な機能なのではないか。
宮城県の方に話を聞いたときは、全域に広がる事案というのは重視されているわけですけれども、例えば、まだA町にしかないという事案であっても、それをPIO-NETがないB町の人は知らないので、A町で広がった事案、隣に行くかもということをB町に先んじて伝えてあげるとか、そういうことが迅速対応ができれば、それだけでもかなり効果があるのではないかとおっしゃっていました。
そういった整備を、広域連携を含めて進めていくことの効果を、断片的でも数字を積み上げて立証していければ、そういう説明の方法もあるのかなと少し思ったところでございます。

○沼尾波子日本大学経済学部教授 情報提供をして、それを国に買ってもらうという仕組みはないのかということです。ちょっと調べてみますが、今は詳しいことが即答できないということで、その点は申し訳ありません。
ただ、例えば国勢調査のような形ですと、あれは完全に国が本来担うべき事務を、効率性の観点から地方に委託をするということで、その費用については原則としては全額100%国庫委託金という形で、国から支払われる仕組みになっております。あれについては、あくまでも国が本来担うべきものを地方に委託するということなので、国と地方がいわば共同の責任で管理するということだとすると、それは必ずしもなじまないだろう。そうだとすると、これまではそれに対する人件費の負担という発想だったわけですけれども、消費者行政の領域というのは地方の自治事務としてやっている。これだけ分権化の時代になってきたときに、国と地方が対等・協力の関係という議論もありますし、こうした情報を提出して、それに対する情報料として何かやり取りするという制度を、新たに構築するということが消費者庁の側から提起されても、私は、時代にかなったいい仕組みなのではないかと思います。勿論、前例を考えてみるというのも一つのやり方ですけれども、新たな自治事務が出てきた時代における、国と地方の情報共有の在り方と費用負担というものを、逆に消費者庁の方から新しく提案していくということはあっていいのではないかというふうに思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。いろいろ議論し始めると次から次へと課題が出てきますけれども、予定していた時間にもなりましたので、この辺でよろしゅうございましょうか。これだけはということがございましたらあれですけれども、いいですか。
では、細川委員。

○細川委員 私は、住民の需要がないところに行政は育たないと思うので、先ほど沼尾先生がおっしゃられていた、消費者行政というのは重要なのにその認識がされていないというところ。そういう意味で言うと、行政需要あるいは行政の重要性の見える化というのをしないと、なかなかうまくいかないのではないかと思います。
私は前にアメリカの州政府のことを調べたことがあって、アメリカの州では、消費者保護を担当しているのはOffice of Attorney General、司法長官というのがありますけれども、多くの州で選挙で選ばれる政治家なのです。彼らは、私が任期中にこれだけの金額を悪質業者から奪ってきて消費者に返しました、というのが政治的なアピールになっているわけです。
そういう意味で言うと、消費者行政がこれだけ住民、市民のために役立っているということの見える化をしていかないとだめだなと思って、それはある意味、消費者行政の数値的な政策評価ということになると思いますけれども、是非、これは消費者委員会でも研究する。あるいは、山口先生にも研究していただきたいと思いますけれども、これだけ消費者行政をやっているがゆえにこれだけの被害が救済されたとか、これだけの啓発によってこれだけ財産が奪われるのを未然予防したとか、金額で示すというのは結構大きいと思います。そうすれば、1億かけたけれども、5億円分は消費者の利益になりましたということを言うことができるので、是非そういう研究をしたいなと、そんな感じがしています。

○河上委員長 特に御意見は要らないかと思いますけれども、こちらから宿題を出してしまいまして、申し訳ございません。
どうもありがとうございました。大変貴重な御意見をちょうだいしまして、今後の消費者委員会での活動にも大いに参考にさせていただきたいと思います。
最初に申しましたように、活性化基金終了後の地方の消費者行政をどんなふうに維持してこれを強化していくかということは、第2次の消費者委員会にとっても大変重要な課題であります。例えば、国の事務としての部分をきちんと整理していくこととか、情報共有の新たな在り方を考えてみることとか、それから、私は今日初めて気がついたのですけれども、大都市における消費者問題の過疎があるという視点とか、広域連携もやればいいというわけではなくて、在り方とか人員配置等について、いろいろな問題点があることがわかりまして、大変参考になりました。
我々も地方に行ってみるとわかるのですけれども、地方に消費者問題をリードしていく人材が育っていないという辺りはいろいろなところから聞きます。消費者相談員も、ちょうど働き盛りの中間層の相談員がいないということを聞くわけで、人の育成という辺りも、消費者委員会としては考えていかなくてはいけないということを痛感しているところであります。
今後、消費者委員会におきましては、消費者庁の地方消費者行政の充実・強化のための指針というのがありまして、パブコメを経て修正するようですけれども、そういう指針であるとか、各自治体、有識者の皆様からの意見などを踏まえて、基金終了後の地方消費者行政の充実・強化に向けた建議ないし提言を、7月中を目途に取りまとめていく予定にしております。
有識者の皆様におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

≪4.その他≫

○河上委員長 続きまして、「その他」として、事務局からお願いいたします。

○原事務局長参考資料2としておつけしておりますけれども、「第3回地方消費者委員会(千葉)」の実施結果について、御報告いたします。
6月30日(土曜日)の午後に行いました。参加人数が117名、課題は、地方消費者行政そのものについてということで取り上げております。
3番目にフリーディスカッションということで、河上委員長をはじめ、小幡委員と夏目委員が参加しておりますが、県・市町村の消費者行政の担当者が8人も出てきてくださって、大変活発な議論の展開になりました。アンケートの実施結果の中に入っておりますけれども、議論の中心も、県内の地域格差が非常に大きいということが指摘されております。既に資料はホームページにアップしておりますので、内容についてはごらんいただければと思います。
もう一つ、第4回の地方消費者委員会ということで、名古屋で7月21日(土曜日)に開催する予定にしておりますので、御案内いたします。
内容については、「これからの消費者教育を考える」ということで、河上委員長と細川委員に御参画いただく予定にしておりますので、これも是非、御案内、御参加していただければ大変ありがたく思います。
事務局からは以上です。

○河上委員長 本日の議題は以上でございます。お忙しい中、長時間にわたって審議に御協力いただきまして、ありがとうございます。

≪5.閉会≫

○河上委員長 事務局から、今後の予定について簡単に説明をお願いいたします。

○原事務局長 次回の委員会につきましては、7月24日(火曜日)の16時からを予定しております。ちょっと時間がありますので、内容につきましては改めて御案内したいと思います。

○山口委員長代理 一言だけ、希望。

○河上委員長 どうぞ。

○山口委員長代理 先ほど、委員長が取りまとめていただいた東京電力の値上げに対するコメントですが、できるだけ今週中ぐらいには、消費者委員会としての正式の意見として出すように、ほとんどあの内容で結構だと思いますので、各委員としても議論してやっていければと思います。

○原事務局長 本日終了後も、担当委員の打合せをお願いしたいと思います。

○河上委員長 せっかくですので、拙速でやるつもりはないですけれども、できるだけ早く対応できるように、スピード感をもって対応したいと思います。
それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)