第56回 消費者委員会 議事録

日時

2011年6月3日(金)15:00~17:17

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
松本委員長、中村委員長代理、池田委員、佐野委員、下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員
【説明者】
慶應義塾大学 金子名誉教授
東北大学 藤田名誉教授
消費者庁 成田企画課長
坂田消費者安全課長
国土交通省 石崎住宅局建築指導課昇降機等事故調査室長 他
【事務局】
齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.国民生活センターの在り方について
○説明者: 金子晃 慶應義塾大学名誉教授(元 会計検査院長)
藤田宙靖 東北大学名誉教授(元 最高裁判所判事)
3.「消費者基本計画」の「検証・評価」(平成22年度)及び計画の見直しについて
○説明者: 消費者庁 成田企画課長
4.消費者基本計画の検証・評価・監視について
○説明者: 消費者庁 坂田消費者安全課長
国土交通省 石崎住宅局建築指導課昇降機等事故調査室長 他
5.閉 会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 「国民生活センター見直し」に関する意見(金子名誉教授提出資料)(PDF形式:11KB)
【資料2】 独立行政法人国民生活センターの消費者庁への統合問題について-行政組織法の見地から-(藤田名誉教授提出資料)(PDF形式:21KB)
【資料3】 「消費者基本計画」の検証・評価と見直しについて(消費者庁提出資料)
(資料3-2) 平成22年度の実施状況に関する検証・評価及び計画の見直しの素案
表紙から123ページ (PDF形式:646KB) / 124から250ページ (PDF形式:666KB) / 251から299ページ (PDF形式:396KB)
【資料4】 消費者基本計画の検証・評価・監視にかかるヒアリング対象施策及びヒアリング項目について
【資料5】 消費者基本計画(施策番号13)関連資料(消費者庁提出資料)
【資料6】 消費者基本計画(施策番号15)関連資料(国土交通省提出資料)
【資料7】 JAS法の規定に基づく品質表示基準の改正に係る答申関連
【資料8】 消費者基本計画の見直し案(山口委員提出資料)(PDF形式:15KB)
【資料9】 消費者基本計画に盛り込むべき新規の施策についての意見(佐野委員提出資料)(PDF形式:13KB)
【参考資料1】 委員間打合せ概要(PDF形式:10KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、始めさせていただきたいと思います。
本日は、皆様、先生方におかれましても、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第56回)」の会合を開催いたします。
それでは、委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

≪2.国民生活センターの在り方について≫

○松本委員長 それでは、議題に入ります。
まず初めに、「国民生活センターの在り方について」です。国民生活センターの在り方につきましては、消費者委員会としてこれまでに、地方自治体からのヒアリング、事業者団体、消費者団体からのヒアリング等を行ったところですが、本日は引き続き、有識者からのヒアリングを行いたいと思います。
本日は、金子晃慶應義塾大学名誉教授と藤田宙靖東北大学名誉教授のお二方においでいただいております。
金子名誉教授におかれましては、会計検査院長及び金融庁の公認会計士・監査審査会会長を務められ、行政機関の事務の無駄や非効率性に関する検証、行政組織に関する評価等について知見をお持ちのほか、東京都消費生活対策審議会の委員あるいは国民生活審議会の消費者政策部会長等も務められるなど、消費者行政についても造詣が深いことは御承知のとおりでございます。
また、藤田名誉教授におかれましては、第二次橋本内閣の下で行われた中央省庁の再編に際し、行政改革会議の委員として最終報告の取りまとめに当たられるなど、現在の国家行政組織の根幹を定める一連の改革の中心におられまして、その際、独立行政法人制度の創設にも深く関与されましたほか、その後、昨年まで最高裁判所の判事も務められ、司法の側から行政の動きを見て来られた方でございます。
本日はお二方より、去る5月13日に消費者庁と国民生活センターが取りまとめたタスクフォースの中間整理において示されました、消費者庁と国民生活センターとの一元化等の問題に関する御意見につきまして、それぞれ御説明をいただき、議論を行いたいと思います。進め方といたしましては、初めにお二方に順次御説明をいただき、その後、質疑を行いたいと思います。
それでは、金子名誉教授からまず御説明をお願いいたします。

○慶應義塾大学金子名誉教授 ただいま御紹介いただきました金子でございます。
本日は、これまでの私の行政における経験を前提にしてお話をさせていただきたいと思います。ただいま御紹介がありましたけれども、1997年から5年間、会計検査院の検査官、院長を経験いたしました。その後、1年間置いて、公認会計士の監査の信頼性が揺らいだため、その信頼性を確保するという目的で公認会計士・監査審査会という新たな組織が金融庁に設置され、その立ち上げと、我が国の公認会計士事務所における業務運営の適正化をチェックするという仕事を6年間やってまいりました。その経験に基づいて、今回の国民生活センターの見直しに関して意見を述べさせていただきます。
申し上げたい点は多々ありますけれども、時間の関係がありますので、絞った形でお話をさせていただきます。資料1に従ってお話をいたしますので、ご覧いただければと思います。
まず第一点目としまして「見直しの視点および手法に関して」意見を述べます。
私は会計検査院において、国の組織あるいは公的な組織の業績についてチェックをしてまいりました。一般的には財務検査という形で理解されていると思いますけれども、会計検査院では、現在、財務検査だけではなく、それぞれの組織、それぞれの組織の行う政策決定あるいは政策の実施に関して、本来の目的が実現されているかどうか、また、それが経済性、効率性の観点から見て適切に執行されているかということを検査しております。
この点で今回の見直しは、国民生活センターの業績、あるいは国民生活センターを消費者庁に一元化したときに達成されると考えられる業績を考える場合、有効性の観点からの見直しが不可欠ではないかと考えます。機能が重複しているという観点、これは経済性あるいは効率性の観点からの見直しになると思いますけれども、それに合わせて、本来の目的が過去どれだけ実現されたのか。そして、今後、その業績を上回る業績が達成できるのかを、慎重に検討する必要性があると考えます。
したがいまして、国民生活センターがこれまでに与えられた使命、目的をどれだけ実現してきているのかを評価することが不可欠と考えます。さらに国民生活センターを消費者庁に一元化した場合、それを上回る業績が達成できるということを示す必要があると考えています。それが示されませんと、国民生活センターを廃止し、国民生活センターの機能を消費者庁に取り入れることで、従来国民生活センターが果たしてきた業績を更に増大させることができるのかを検証する必要性があるのではないかというのが第1点です。
第2点は、見直しというのは専門性の観点に立ち、なおかつ客観的に、そして、そのプロセス及び成果が信頼性のあるものであることが必要です。今回、見直しの主体となった消費者庁に設置されたタスクフォースを考えてみますと、自らが廃止を主張している消費者庁のトップ3名と、廃止の対象とされている国民生活センターのトップを含めた3人で構成された組織で検討が行われています。これら構成員すべてが専門性を持っていない。私がいま専門性と申し上げるのは、消費者行政、消費者問題に関して専門的知識・経験をお持ちであること。それから、国民生活センターの業績の見直しをするわけですから、行政評価をするに際しての専門性が必要となります。私は、構成員すべてがこれらを持てということが必要であるということを主張しているのではなく、見直しをする主体であるタスクフォースには全体的に見て専門性が備わっている必要があると主張している訳です。そういう点で見た場合、今回の見直しの主体であるタスクフォースには専門性があると言えるのか疑問を持っています。
次に、客観的な見直しがされる必要性があります。見直しをする側と見直される側の当事者だけで客観的な見直しができているのかどうか、見直しは実態に基づいた形で客観的な評価がなされる必要があります。そういう意味で、単に閣議決定が出ているからとか、機能が重複しているからという、単にそういう観念的な形だけではなく、実態に基づき、事実に基づいた評価がなされることが必要です。こうした専門性、客観性に基づいて分析がなされ、結果がだされる。そこに信頼性が出てきます。今回の取りまとめは、これらの点で果たして専門性、客観性、信頼性を十分に備えているのかどうか疑問があります。
会計検査院はこれらの点に関して、国民に対し検査結果を示すという観点から、それを担当する職員に対して専門性を要求していますし、事実に基づいて評価をするということで、客観的な評価に努めております。このようにして信頼性のある結果を出す努力をしています。専門性、客観性、信頼性は、各国の会計検査院の業績検査の国際的スタンダードであると申し上げていいかと思います。
次に2の「行政および事務事業の継続性に関して」を述べます。私は、行政は継続性を持って行われていく必要性があると考えております。継続性を持ちながら、なおかつ新しい事態に適切に対応していくことが必要ですから、新しい環境変化への対応も欠かせないことになります。この観点からみますと、中間取りまとめでは、国民生活センターを廃止し機能を消費者庁に移すと言っています。しかし現在の消費者庁が行政の継続性を確保する体制を有する組織として確立されているかどうかということについて、私は非常に疑問を持っています。
私は、金融庁に新たに設置された公認会計士・監査審査会において職員の人たちを指揮監督して業務を実施する経験をしたのですが、この新しい組織、なおかつ金融庁というある意味寄せ集めではない職員、大蔵省が財務省と金融庁に分かれた、そのかつて大蔵省の職員、その後採用された職員、その意味では原則として金融庁プロパーの職員が審査会に来ているわけです。しかしながら、私が在任している6年間に事務局のトップである局長が6人ほど代わりました。その下に2名の室長がいますけれども、室長も3人ほど代わりました。
この審査会においては、証券等を取引するに際してこれらの評価の基礎になる財務諸表の適正性を確保することが使命です。財務情報は公認会計士事務所の監査によって担保されるわけです。ところがその監査事務所の業務運営が実は適切ではないということで、監査の信頼性が大きく失われる事件が多発しました。皆さんも御承知のとおり、アメリカの最大の監査法人が崩壊するという事件がありました。これはまさに監査の信頼性の喪失が問題であったわけです。それを受けて日本を含め各国で監査事務所の業務運営を監査するという組織がつくられ、そこで監査事務所の業務運営についてチェックをするということが始められました。
審査会は新しい組織ですから、トップとして目標を掲げて、この目標を実現するためこういう考え方でまた方法で運営していくということを幹部職員と十分に話し合い、定期的に対話をすることを行いました。しかしながら、6年間に5人以上も局長が代わる、その下の室長が2年くらいで代わってしまうということは、方針および方法を幹部職員に徹底することが非常に困難でした。最初にそのことを理解してもらい、やっとそれに従って仕事をしてもらえるなと思ったときに代わるわけですから、次の局長以下に対してまた同じ説明をしなければならない。そのうち、だんだんあほらしくなって嫌になってくるということが起こりましたけれども、繰り返し、繰り返しこれをやらないと業務の一貫性を保つことができない。
金融庁の組織であって、金融庁の職員によって構成されている事務所においてこういう状態です。現在の消費者庁の職員、幹部職員を含めて関係省庁から出向されている人たちで構成されています。その人たちが、消費者庁で一生仕事をするならまだしも、2、3年で出身の省に戻る場合、果たして継続性はどういう形で担保されることになるのか疑問です。
今回の中間見直しの中で、国民生活センターの職員をプロパーとして機能強化のために消費者庁に取り込むと言っていますが、その国民生活センターのプロパーの人たちを指揮監督して、消費者行政を行っていく幹部職員の考え方の一貫性はどういう形で担保されていくのか。そのことがやはりきちっと整理される必要があります。そのことが確保されるということであれば、消費者行政の一貫性は担保されることになります。果たして今の消費者庁にこうした形での消費者行政の一貫性を要請することが可能なのか。また、それを維持することが可能なのかどうかということをよく考えてみる必要があります。もし現行の形で一貫性が保たれるというのであれば、幹部職員をどういう形で消費者庁に帰属させるのかということを十分に考えていく必要性があります。
私は多くの官僚に接しました。その官僚の方がそれぞれの組織を離れたときには、新しい組織の中で一生懸命やるという能力、性格は皆さんお持ちです。しかしながら、またもとに戻るといったときに、果たしてその点はどうなるのか。もとのことを考えずに消費者庁において消費者行政に本当に専念してもらえるのかどうか、この辺りのところに不安がないわけではありません。
3番目「消費者庁、消費者委員会および国民生活センターの役割分担と連携に関して」に移ります。消費者庁が司令塔、国民生活センターがその実施部隊、消費者委員会が意思決定および業務執行に関して外部からチェックするというのは、組織としては非常にうまくできているという気がいたします。
これは後で藤田先生からお話があると思いますけれども、今のいわゆる何々庁と言われるところが、本来は事務の実施という組織としてつくられていながら、実際には多くの政策の企画・立案という仕事をしている。私が属していた金融庁も内閣府に属しますので、当然、金融庁は金融行政についての企画・立案をし、関連法令を企画・立案していくと同時に金融機関に対する金融検査という実務も行っております。そういう二重的な性格は持っていますけれども、政策の企画・立案と実施は、できれば分かれていた方が、お互いにチェックし合うということでいいのではないか。そういう意味で今の体制は、もし問題がなければこういう体制が残ってもいい。消費者委員会が更に外から政策の企画・立案、その実施を見て、チェックした結果を再び企画・立案にフィードバックしていく。よく「Plan-Do-See」という輪が言われますけれども、「Plan-Do-See-Plan」という枠が確保されていることが必要と思います。
それから、消費者庁と国民生活センターの機能が重複しているということが言われますが、機能をどうとらえるかによって、重複しているというふうにも言えるだろうと思うのです。相談機能であるとか、情報提供機能であるとか、いろいろ機能を取り上げますけれども、そういう大分類でくくれば国民生活センター、消費者庁の機能は重複していると言えると思いますが、実際に消費者庁がやろうとしている機能、果たそうとしている機能、それと国民生活センターがこれまで果たしてきた機能がどういう関係にあるのか。もし、今まで国民生活センターが果たしてきた機能を消費者庁がこれからやろうというのであれば、そちらの方に問題があるのではないか。従来、国民生活センターが果たしてきた機能は多くの経験と知識を積み重ねてきているわけですから、そういうものを尊重した上でそうした部門に任せることの方が効率的ではないでしょうか。消費者庁がそういうことをしようと企画すること自体に問題がある。むしろ重複させようとしているのではないか、という気がしないわけでもありません。
それから、消費者庁が政策決定・企画と実施を一元化することが本当にいいのかどうか、私は疑問がないわけではありません。
最後に、「国民生活センターの事業者対応と消費者庁の法的規制に関して」に移ります。先ほども申しましたように、私は金融庁の審査会において監査事務所の検査を実施してきました。しかしながら、チェックした結果、その業務運営が不適切であるといった場合に、対応する措置をする権限は審査会には与えられていません。我々に与えられているのは、検査し、それに基づいて一定の行政処分あるいは措置が必要であるということになれば金融庁に対して勧告をします。それに基づいて金融庁が業務改善指示、命令、あるいは処分等を行うという組み立てになっております。
法律に基づく規制の場合にはいろいろと要件が定められて、特に事業者に対する規制という場合にはかなり厳しい条件が付されることになります。私どもの組織の場合で言えば、監査事務所の業務運営が著しく不適切である場合に一定の処置や処分ができます。例えば改善指示が出せるとか、改善命令ができるとか、そういう形になっています。そうなりますと、本来は改善した方が投資家の利益にかなう、あるいは公認会計士事務所の品質管理の改善につながるということがあったとしても、著しい業務運営の不当性がないと、なかなか勧告もできないという形になるわけです。
そこでどういうことをしたかというと、検査報告を相手方に渡すのですが、そのときに「改善を必要とする事項」を相手方に知らせます。改善せよというふうに言いますと、金融庁の方から、審査会にそんな権限はあるかという苦情が来ます。現にそのようにいわれました。ですから、我々はそういうことを言わずに、改善を必要とする事項という形で公認会計士事務所に検査結果を渡して、相手方に自主的に改善してもらう。それが確実に改善されるのであれば我々はそれ以上の措置はとらない。検査は一定のサイクルで実施しますので、次の検査のときに改善されたかどうかということをチェックします。改善されていなければ金融庁に対して勧告をすることになります。
こういう意味で消費者行政においても権力的ないわゆる法に基づく規制と、もう少しやわらかなといいますか、事業者の自主的な改善を要請する対応というのがあってもいいのではないかと思います。国民生活センターは、いろいろな苦情、相談、そういうものの中から事業者に対して改善を要すると考えられる事項について、迅速かつソフトな形で自主的な対応を求める。それができない場合には、勿論、法的な措置が必要になってくると思いますけれども、その場合には法的な条件を満たさないと対応できない。また、手続も非常に手間がかかりますので、時間がかかってしまう側面があります。そういう意味で現在の国民生活センターの対応と、新しい消費者庁の法的な権限に基づく規制、それとの連携が消費者行政を進めていく上で私は意味があるのではないかと思っております。
最後に、今までのことをまとめますと、今回の問題に関しては専門家及び関係する人たちを含めた十分かつ慎重な検討をしていく必要性があるのではないかと考えております。

○松本委員長 ありがとうございました。
続きまして、藤田名誉教授から御説明をお願いいたします。

○東北大学藤田名誉教授 藤田でございます。
本日は、今、金子先生もお話になりました、国民生活センターを消費者庁に一元化すること、私は統合という言葉を使いましたけれども、これがいいかどうか、意見を言えということで頼まれたのですけれども、私は消費者行政については制度も実態ももともと余り詳しくなかったところに、この7年半、最高裁におりますうちに行政組織のことには全くかかわることなく、だいぶ記憶も遠くなっておりまして、はて何かお役に立つだろうかと思ったわけです。今度、いろいろ資料をいただきまして、その上で私なりに考えたのですが、私の言えることは、あくまでもこの問題について、行政組織法上の問題として理論的にどういう問題があるか、どう言えるかということに限られます。こういう観点に絞ってお話をしたいと思います。
本日、私のお話ししますことは資料2としてお手元に配付しておきました。話が少々込み入るところもありますし、時間の制約もあるということで全部は触れられないと思いますので、この中から重点を口頭でお話ししたいと思います。
最初に申し上げたいことは、国民生活センターは現在は独立行政法人という性格を持っているわけですが、独立行政法人というのは一体何のためにつくられた制度であるのかということについてです。通常、事務の効率化ということが非常に強調されて言われますが、それもさることながら、先ほど委員長から御紹介がありました、橋本行革の際に中央省庁再編の一環として独立行政法人ができたというのは、国の行政組織の減量化にそもそも出発点があったということなのです。これは私のペーパーの1ページの下の方に書いておきましたけれども、橋本行革での中央省庁再編というのは、まず、国の行政組織が余りにも余計なことをやり過ぎているのではないか、国の行政組織が本来やるべき事務を減らして減量する、そのことによって行政組織も減量しようということです。何も国の行政機関が直接やらなくてもいいことは外へ出す、アウトソーシングする、こういうねらいがまずあったわけです。そして、外へ出す際の受け皿として新たに考えられたのが独立行政法人ということであったわけです。
外へ出すか出さないかという際の切り分け方の基準としてとらえましたのが、先ほど金子先生も触れられました、企画・立案事務か実施事務かということだったわけです。国の行政組織が直接やるのは企画・立案事務であって、実施事務というのは原則的に外へ出す。その受け皿となるのが、これはものによっては民営化ということで、民間法人もあるだろうし、地方公共団体もあるだろう。しかし、受け皿として独立行政法人というものを新たに設ける。今、特殊法人としていろいろなものがありますけれども、これも整理して、できるものは独立行政法人とするし、そうでないものは民営化する。こういう方針をついでに立てたわけです。ですから、独立行政法人というのは、そもそも国の行政組織が従来やってきたものの中で、企画・立案事務ではない実施事務を任せる、こういうためにつくられたものでありました。したがってこれは、何よりも国からは独立した法人としての性格を持っていることが一番重要だったわけで、そのことによって独立行政法人にとってはそもそも国家行政組織法の枠から外れる。職員数についても定員法による規制はかからない、そういう存在としてつくられたわけです。
現在、こういう構想に基づく中央省庁再編の基本的な考え方がもう根本的に変わったのだということであれば話は別ですが、そうでないということであるとするならば、独立行政法人国民生活センターを消費者庁と統合する問題についても、組織の減量化という見地からどうなのかということがどうしても検討されなければならないことになるはずです。そして、少なくともそういう見地から見る限りにおいては、センターを消費者庁に統合することはつまり、かつて特殊法人としてもともと行政の外にあったもの、そしてそれが担っていた作用を、一度独立行政法人化を経た上で、更に国の行政組織の中に取り込もうということですから、これは、独立行政法人制度の設立のねらいに明らかに逆行することになります。理論的にはそういう動きだということになります。ただ、それは組織の減量化というもともとのねらいから言ってそうだということで、後にも見るように、そのほかにもいろいろな問題点があります。
次に、「効率化」ということです。独立行政法人設立のねらいとしては、国の行政組織の減量が非常に重要な目標であったわけですが、勿論それだけではない。実施事務をアウトソーシングすることを通して事務の効率化を図るところにその重要な面があった。これは勿論、否定できないところであります。そこで重要なのは、何よりもそこで目的とされている効率化の重点というのは、金子先生が先ほどお話になりましたが、企画・立案と実施の担い手を分けることによってそれぞれの作業内容の充実化を図る、そういう意味での効率化ということであった。これが何よりも一番重要な効率化のねらいであったわけです。
ただ、あらゆる行政作用をすべて企画・立案と実施に分けられるかどうか、あらゆる場合において両者の機能を完全に分けることが本当に合理的なのかどうかといったことについては、いろいろ問題はありますが、ただ、少なくとも中央省庁再編の基本構想というのはそこから出発するものであったわけです。ですから、中央省庁再編の基本構想が、現在、もう否定されているというならばともかく、そうでないとするならば、企画・立案と実施という基準が事務の振り分けの基本とならなければならないことになるわけです。
それを前提としてその限りで考えますと、国民生活センターの消費者庁への統合の理由は、一つには、事務の重複ということが言われているようでありますが、事務が重複しているのかどうかということは、金子先生がお話しになりましたように、そのこと自体問題であろうと思いますが、仮に重複していたとして、その事務の性質が実施事務としての性質を持つものである限り、理論的にむしろすべて独立行政法人側に移行すべきもの、基本的にはそういうことになるはずです。仮に事務の内容に重複がない場合であっても、先ほどの基準に従う限り、国民生活センターが現に行っている事務を消費者庁が行う理由はないし、むしろ消費者庁が現に行っている事務が企画・立案事務でなく実施事務としての性質を持つとすれば、それは、それをそのままにしておくべき決定的な理由があるのでない限り、本来これは独立行政法人側に移行すべきもの。理論的にはそういう筋になるはずであります。
ただその際、ほかに幾つか検討しておかなければならない問題があるわけで、その一つが、私のペーパーでは3ページ目、4というところに書いてある問題です。
消費者庁というのは内閣府や他の省のように本府本省ではない。内閣府の外局です。外局というのは本府本省からは一定の独立性を保っているわけですから、効率性の達成のために外に出すという要請は、少なくともその限りにおいて既にある程度満たされているのではないか。こういう議論が出てこようかと思います。そうであるとすれば、センターを吸収したとしても、「外に出す」という問題の関連でそんなに基本的な問題はないのではないかという議論があり得ようかと思います。
ただ、この議論では、「外に出す」というのはそもそも国の行政組織の外へ出すという話だったわけですから、外局は、本省とはいくらか独立性を持っているといっても、これはやはり国の行政組織の一部であり、国家行政組織法ないし内閣府設置法のカバーする範囲内にあるわけであって、根本的な要請に反しているという点については変わりがない。
もう一つ、消費者庁の性格が問題になります。消費者庁は外局ですけれども、一体どういう外局なのかということが検討の対象となり得ます。先ほど金子先生も触れられたのですが、消費者庁というのは「庁」ですが、実は庁の中には中央省庁再編の構想の下では3つの種類のものがあったわけです。一つは「大臣庁」というものです。あの当時は防衛庁、国家公安委員会がそうでありました。ここでは委員会も庁の中に入れていたのですが、大臣がそのトップになるという意味で大臣庁。これが一つです。これはその意味が他と全然違う。もう一つは「政策庁」で、これは企画・立案事務を行う庁。3番目に「実施庁」でありました。実施庁というのは、法律の上では(私のメモでは中央省庁設置法となっていますが、これはミスプリで、正しくは「中央省庁等改革基本法」です)基本法の16条4項で書いてありますが、「主として政策の実施に関する機能を担う庁」のことであります。これは国家行政組織法では7条5項に載っているもので、企画・立案ではなく実施をもっぱら基本的な任務とするという庁です。
この大臣庁、政策庁、実施庁という3つのうち、中央省庁再編では、庁というのは原則として実施庁とするという出発点だったわけです。それは「実施事務は外に出す」というその基本的な考え方がもとになっているのですが、ただ、実施事務といっても外に出しきれない事務がある。例えば行政処分などの公権力の行使等はその典型例ですけれども、公権力の行使というのは、国の機関以外のものがやっていいのだろうかという問題があります。これは憲法に反するとか、行政法の基本原理に反するとか、いろいろあって、そういうことはできないのではないかという議論が一方であります。他方、いや、そうでもない、ほかのものでもできないことはないのではないかという議論もありますけれども、少なくとも公権力の行使を広範に国の機関以外のものにやらせるのは望ましくない、ということにおいては大体共通の理解があるわけです。そこで、実施事務の中でも公権力の行使に当たるようなものは独立行政法人に委ねることはちょっと難しいだろう。そうすると、これは庁だということになる。本省からは一応の独立性を持っているけれども、しかし、行政組織の中の一部である庁にやらせる。もっぱらそういうものをやるという意味で実施庁というものが必要になったわけです。そういうことも含めて、中央省庁再編の基本構想では、外局としての庁は基本的に実施庁とする、これが出発点でありました。
ところが、実際にはこれがそうはいかなくて、大臣庁は別として、実施庁というのは現行法上、数が5つですか、そのくらいしかなくなってしまって、外局としての庁の中の半分に満たないものになってしまったわけです。これをどう考えるかという問題はもう一つあるのですが、とりあえずここでは、実施庁というのはそういうものだということをお話しておきます。そして、消費者庁がもし実施庁であるとするならば、もっぱら消費者行政に関する実施を行うのだから、独立行政法人なる国民生活センターがやっているものも、実施事務として一緒にやりましょうと引き取るにしても、それはそれなりの意味が、あるいはあるかもしれない。
しかし、御承知のように消費者庁は実施庁ではなくて、企画・立案とその実施をともに行う庁として現在機能しているわけです。そこで、これをどうとらえるかという話になるのですけれども、これを理論的に明確に整理するとすれば、消費者庁はやはり本来企画・立案を行う政策庁としてつくられたのではないか。消費者庁ができたころ私は行政には全くタッチしていなかったので、その辺本当はよくわからないですし、そもそもその辺のところがきちんと議論されたのかどうかもよくわからないのですけれども、少なくとも今できている消費者庁というのは、企画・立案事務というのが重点となった行政機関のようであります。それに加えて、行政処分等については独立行政法人にやらせるわけにはいかないというので、消費者庁の中に留め置かれている。そういったものなのではないかという気がするわけです。そうすると、それ以外の実施事務というのは何も消費者庁がやらなくてもいい。むしろできるものは外へ出すという先ほどの議論に戻ってくるのではないか。こういう一つの筋があるわけです。
なお、資料2の3ページ目の下の方に、消費者庁は省に置かれた外局ではなく、内閣府という特殊な行政機関に置かれた外局であることに触れております。このことが本日の問題との関係で何か特別の意味があるかどうかということですが、ペーパーに書きましたように、私は、これは余り意味はないと思っていますのでここでは省略いたします。
そこで、最後に残った問題ですが、私のペーパーでは4ページの5になります。消費者庁は現在の制度の下では「企画・立案プラス実施」庁ということになっている。これをどう考えるかいうことです。先ほど言いましたように中央省庁再編に際しましては、外局は原則として実施庁として設置するという方針が出発点とされました。しかし、実際にはいろいろな政治的圧力だとか、組織保存の本能ですか、いろいろ働きまして、結局は企画・立案と実施をともに行う行政機関としての旧来型の外局である庁が数多く存在することになりました。実施庁として現行法上位置づけられているのは全体の半数を割って、公安調査庁、国税庁、特許庁、気象庁、海上保安庁、の5庁だけです。中央省庁再編後に続々できた金融庁、観光庁、そして消費者庁(今度また、復興庁というのができるとか、できないとか言っています)、は、いずれも「実施庁」ではありません。
こういう庁の設置の際に、中央省庁再編の際の出発点は「実施庁」であったというところがどれだけ理解されていたのかというのは、私もよくわからないのですけれども、いずれにしても結果としてはそうなっている。外局は本来実施庁としてのみ設置されるのが筋だとしてその例外を設けるとするならば、設置の際に、それはそれなりの正当な根拠が必要だったはずなのです。庁に企画・立案をやらせるというそれなりの正当な根拠が必要になる。そういった理由としてあり得るのは、少なくとも理論的に言う限りは、事務の効率性のためには企画・立案と実施を分離するのではなくむしろ一緒に行わせたほうがより合理的である、そのために組織の減量が犠牲にされてもやむを得ないといったことで、それしかあり得ないわけです。
この場合には、分離しない方が合理的であると主張する側が挙証責任を負うことになるわけですけれども、消費者庁の場合、そこがどうだったのかということが一つ問題なのです。私はそこのいきさつはわからないのですが、ただ、現にできてしまっていることを前提とすれば、そこの議論はもう終わっている。消費者庁が企画・立案事務をやるということは、それはそれなりに合理的な理由があるとなったということは、つまり、消費者庁はそもそも中央省庁再編の基本構想に対して「敢えて」設けられた例外の一つなんだ。これはもう、ほとんど「居直りの論理」ですけれども、そういう可能性も理論的には無いではないわけです。そうなると、今までいろいろ言ってきたことはすべて御破算。それはもう知らないよ、別の世界の話だということになって、何でもありということになる可能性もあるわけです。
今回の統合問題についての消費者庁のスタンスを理論的に整理すると、こういうことになるのではないかと私は思いますけれども、そこで、そういう居直りが許されるのかどうかということを一つ、議論していただかなければいけないだろうと思います。例えば、仮にこういうスタンス、こういう理論的筋道をとったといたします。そうすると、その論理というのは要するに、あえて企画・立案及び実施をともに行う外局として消費者庁は設立されたのだから、国民生活センターの行っている実施事務をもこれにともに行わせるのが合理的だ、こういう論理になるはずです。そうだとすると、統合した上で改めて、消費者庁の内部でその事務を新たに設置する一定の独立性を持った特別な機関であるとか、施設等機関等の機関に委ねるということは、これはおかしいのではないか、十分な理由がないのではないかということにもなるわけです。仮にセンターを統合する以上はそういう処置が不可欠だ、不可避なのだということであるとすれば、それは、そもそも統合そのものが組織法上の合理性を欠くことの証しなのではないか。こういう話になるのではないかなと私は考えているわけです。
私の話は以上で終わりですけれども、結局のところ、国民生活センターを消費者庁に統合することがいいか悪いかという話につきましては、行政組織法の見地からは両方の見地があり得るだろうということです。その上でしかし、それぞれに論証しなければならない問題が個々にあるということを申し上げました。これらを議論した上で、果たしてどっちが消費者行政の有効な運営のためには効率的・合理的なのか、こういう実質的な議論を更に深めていくよりほかないのではなかろうか。これが私のただいまのところの感想であります。
ちょっと長くなりまして、失礼しました。

○松本委員長 ありがとうございました。お二人の先生にはもっといろいろ御高見を賜りたいところでございますけれども、時間の関係で短くさせてしまいまして、申し訳ございません。
それでは、お二人の御説明につきまして、御質問ございましたら、どうぞお出しください。
山口委員、どうぞ。

○山口委員 御説明ありがとうございました。藤田先生に伺いたいのですが、実施事務を国の本庁から外に出したというお話ですが、実は国民生活センターの事務は、例えば相談支援とか、場合によっては直接相談とかADRのように、消費者の個別の利益のために、あっせん的な業務をしたり、事業者と渡り合って仲裁的な業務を行うとか、あるいは、その解決例を一つのスタンダードにして各地の解決の指針とするとか、そういう事務があるわけです。この事務は、仮に国の消費者庁に統合した場合、庁がやるということで理論的に矛盾はないのか。それともやはりその辺は何か問題があるのか、どうなんでしょうか。

○東北大学藤田名誉教授 相談事務あるいはADR、そういったものを庁がやるということ自体に矛盾があるかということですか。

○山口委員 はい。

○東北大学藤田名誉教授 それはいろいろな考え方があって、理論的な矛盾ということでは必ずしもないのではなかろうかという気はします。ただ、国民生活センターの場合は、御承知のように独立行政法人ですが、これは国の事務が移行されてきたものではなく、もともと特殊法人で国の外にあったものです。それが言ってみれば整理されて、独立行政法人の事務とされたものです。独立行政法人は、国とは違う独立の法人ですが、しかし、その行う事務は、やはり国の行政の一部であるというふうには位置づけられているわけです(ここは非常にわかりにくいところではありますけれども。)。ですから、従来一層外にあったものを国の行政として取り込んだということで、要するに国の事務が下りてきたというのとは逆方向をたどって、今、独立行政法人になっているわけです。ですから、それを更に国に引き上げるというのは、外へ出すという論理からすれば、まさにこれは逆方向だということを先ほど申し上げたわけです。その限りのことは私申せますけれども。

○松本委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 藤田先生、もしくはお二人にお聞きしたいのですが、要するに独法というのは国の事務の軽量化、減量化ということでスタートしたというのですが、逆に、独立行政法人が国の行政機関にまた入ってきたというケースがあるやに聞いております。そういう入ってきたものは、消防研究センターと国立オリンピック記念青少年総合センターというのが総務省と文科省にあると聞いています。それが行政の中に入ったときに、施設等機関として位置づけられているという説明も聞いています。これは非常に特殊な例外ではないかと思いますが、この例外と同じように、今回、国民生活センターが消費者庁に入ることが同じような理由で合理的に説明できるのかどうか。その辺、お考えがあったらお聞きしたいのですが。

○東北大学藤田名誉教授 特に消費者庁であるからどうかという話は私にはよくわかりません。御指摘になった2つの例が、一体どういう理屈に基づいてどういう経緯でそうなったかということは私はよく知らないので、消費者庁の場合にどうかということについて、比較においてそれをお話しするということはできない。ですから、理論的に言えば、最初の2つの例も、ここで言った理論の筋からすれば、そのためには十分な論証が必要であるはずで、そう簡単にできるものではないはずだというふうに私は思っています。
ただ、一つ、実施庁でなければいけないということであったのですけれども、実際にできたのはそうではないのが過半数だということです。これを考えたときに、企画・立案と実施というのは分離しない方がより合理的に機能するんだという具体的な例として、そういうふうになったものもあるかもしれないわけです。先ほど政治的な圧力だとか、組織防衛論とかいろいろ言いましたけれども、その辺のところは一つひとつ検証しなければいけないと思います。

○慶應義塾大学金子名誉教授 理論的には、藤田先生がお話になられましたように、省庁再編の方向から言えば、取り込むというのは理論的に一貫性を持たないだろう。もし取り込むとすれば、これも藤田先生がおっしゃったように、取り込むことに相当の合理的な理由があることが必要であろう。その意味では、国民生活センターを廃止してその機能を取り込む。それによって、従来国民生活センターが果たしてきたよりも更にそれを上回るパフォーマンスが得られる。その結果、消費者の利益が実現されるということが明らかに示される場合だろうと思います。
それから、いわゆる企画庁の国民生活局、その支配下にある一つの行政組織として国民生活センターが国の機関として設置されたわけです。それが法人化の流れの中で独立行政法人という形になった。そういう意味で独立行政法人に本当になじむ組織であったのかどうか。ただ減量化ということの中で、独立行政法人という衣を着せて国の外に出したという経緯があったのではないかと思います。
もう一つ、申し上げたいのは、組織としてやはり機能しているわけです。国民生活センターの機能といった場合に、その組織を離れて機能を云々する。国民生活センターの職員を取り込めば機能が消費者庁へ来る。そして、同じような機能が発揮できるというのはどうか。組織として人材を抱え、経験と知識、そこに専門性が加わるという形で一つの機能が発揮されている。そういうものを、ただ人を移すということだけで本来の機能を発揮できると考えているとすれば、それは余りに安易な考え方ではないか。その点については私は、今後、更に検討していく必要性があるのではないかと考えております。

○松本委員長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 私は事業者の方の立場でものを言わせていただきたいのですが、金子先生、藤田先生のお二人の話は大変勉強になりました。
まず、金子先生にお聞きしたいのですけれども、金融庁でお仕事をなさったということで、私の経営者同士の知り合いで、銀行の経営者がおりますが、金融庁の検査は大変な負担であるとか、内輪話をいろいろお聞きしました。それがいいか悪いかは別にして、やはり金融庁という法的権限を持ったものの検査ということですから、対事業者に対してそれだけのプレッシャーなり圧力があるということであったと思います。そういうご経験をされた組織の一員として、今、国民生活センターが持っている相談機能は、消費者なり地方の消費者行政にとっても相談相手になると思いますけれども、我々事業者にとっても相談相手なわけです。そういうものを、どういうかたちにしろ、省庁に取り込むことになると、いわゆる相談ではなくなって、完全な行政処分とか、指導とか、どちらかになっていくのではないかと思うわけです。相談、あっせんというのは、マルとかバツではない、どこかに答えを持っていくところに意味合いがあると思いますが、国の行政機関になると、なかなかそういうことはできなくなるのではないかという点について先生にお伺いしたい。
藤田先生については、独立行政法人の設立の由来の話、私が全く知らないことをお聞きしまして、大変勉強になりました。ただ、国の行政機関の効率化・スリム化ということで独法という組織をつくられて、その検討の中で、独法の育成といいますか、独法の将来性、あるいは独法でない組織の検討ということがその中であったのかどうか。私は国民生活センターが今のままでいいか悪いかもわからないのですけれども、独法全体を見直そうという動きがありますので、藤田先生が関与されていたところで何かあったのかどうか。その2つをお聞きしたいと思います。

○慶應義塾大学金子名誉教授 それでは、私の方からお答えいたします。
最初の点ですけれども、金融庁の金融検査は金融にかかわるものですから、金融機関の適正性確保のために、当然、厳しい検査が金融庁によって行われることになります。我々の組織はこういう金融庁の持つ厳しい検査機能ではなく、むしろ公認会計士事務所の監査機能を適正化するために、公認会計士事務所における内部統制をきちっとさせることにあるので、その意味では同じ検査といっても検査の性格が異なるのです。そのために金融庁の中に新たに一つの組織をつくって、金融庁自体がやるのではなくて、新しくつくった組織がそういう機能を発揮する。そして、この組織は独立性をもって事業をするということで、金融庁から指揮監督は受けないという性格を持っております。
したがって、私が最初に申し上げたのは、実はそういう検査であるので、これをきちっと職員に理解させないと厳しい検査をしてしまう。検査官は金融検査の経験者が来るわけです。国税庁から国税調査をやっているのが来ます。彼らは取り締り検査をしてきたわけです。それはしてはいけないということで、トップから下まで、実際に検査をする人物に至るまでそういうことを徹底しないといけない。さっき言ったように、なかなかそれを徹底することが難しい。そのために現場でさまざまなトラブルを起こしました。苦情が来ました。検査官が机を叩いて書類を出せと言ったとか、そういうような苦情が来て、いや、そうではありませんということで監査事務所の方々にも説明し、最終的には理解をしていただくというふうになりました。
相談機能の面ですけれども、相談機能を消費者庁がどのように性格づけ、それを消費者庁の中でどのように実施していくかということにかかわり合いを持つのではないか。消費者庁がそういう相談機能を持ってはおかしいとか、理論的にそれは成り立たないということは言えないだろうと思います。もし取り込むとすれば、相談機能をこういう形で位置づけるということをきちっとした上で、そういう形で運営していくことが必要なのではないか。
それから、私は、相談についての理解の仕方が多少皆さん方と違うところがあるのかと思います。それは、事業者と消費者がいろいろな点で格差を持っている。情報格差であるとか、交渉力格差であるとか言われていますね。そのことから消費者問題が発生してくる。消費者トラブルが発生してくる。国民生活センターが本来やっていた消費者相談は、消費者を支援して事業者と対等の立場で交渉ができるようにする。もしトラブルを解決するということになれば、これは弁護士法との関係が問題になってきます。事件の解決ということではなく、当事者同士が対等の立場で交渉をして問題を解決するという方向に導いていく。その場合に事業者側が非常に対応が悪いということになってくれば、当然、支援の仕方もそれに応じて事業者側に対して強くなるとか、場合によっては、こういう形での解決ではどうですかという形で基準を示していく。いわゆるあっせんという形になる場合もあると思います。
こうした解決が積み重なって、個別の解決基準がほかのものに一般化してルールとして適用されていくということになります。あっせんしたから直ちにその基準が全国的に一つの基準として、という形ではないだろうと。それは個別事件の解決です。そういうものが積み重なることによって、そういう問題についての解決の仕方、あるいは当事者同士で解決した解決の仕方はこういうものですよということで、それがルールになって、お互いにその線で解決していきましょうということになっていくのではないかと考えています。そういう点では事業者にも別にこうしなさいああしなさい、こういうふうに解決しなさいということではなく、お互いが対等の立場に立つ。ただし、消費者は弱い立場にありますから、国あるいは地方自治体がそれを支援して、対等の立場に立ったところで交渉が成り立つという形になっていくというふうに私は理解しております。

○松本委員長 藤田先生、どうぞ。

○東北大学藤田名誉教授 独立行政法人制度は検討の余地はないのかということでしたけれども、勿論、中央省庁再編の際も、中央省庁の在り方、独立行政法人の話も含めて、あの改革の結果は未来永劫、絶対変えてはならぬものだというふうには誰も思っていなかったわけです。それは時と必要に応じていろいろ修正もなさるべきであろうし、何せとにかく初めての試みですから、試行錯誤は当然行われている。とりわけ独立行政法人の場合には、一方で独立の法人といっても国の事業をやるしお金も出るのだから、それなりの監督もされなければいけない。ある意味では公の側の規制等もあるわけです。しかし、他方では企業会計原則を導入して民間法人の自由さも与える。ですから、官のいいところと民のいいところ両方を取ってつくろうといった制度だったわけです。
しかし、かつての特殊法人でも同じようなことがあったわけですけれども、要するにやりようによっては官と民の両方の悪いところだけ出てしまう可能性もあるわけです。それはやってみないとわからないというところもありますから、経験に応じて悪いところは直していく必要は出てくるかもしれない。ただ、独立行政法人という枠組み自体は、これは暫定的なものであるというふうには全く考えたことはなかったわけで、その枠組みの中、そういう制度の中で、どういうよりよい制度ができていくか。そういうレベル、範囲のこととしては考えたことはあると思いますけれども、そんなところでしょうか。

○松本委員長 佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 どうもありがとうございました。金子先生にお伺いしたいのですけれども、現在を見ますと、タスクフォースで国民生活センターと消費者庁がもう何回も何回も検討を重ね、専門家の方々のヒアリングをして、パブリックコメントもして、公開ヒアリングもして、まさにまとめて夏には最終報告をしようという段階に来ています。先生の5番目の「専門家および関係者を含めた検討の必要性」というところを見ますと、どちらかというと当事者はオブザーバー的に置いておいて、第三者が集まってきちんと最初から検討する。今まであったことをちゃらにするとか、別に置いといて凍結するような形で新たな検討が必要だとお思いになっているのか。今あるところに足していって、何とかもう少し多くの人の意見を取り入れたものにするべきなのか。何しろもう時間がないので、その辺りを現実的な問題としてどうお考えになっているのかお聞きしたいと思います。

○慶應義塾大学金子名誉教授 今、時間がないという話がありましたけれども、これは消費者庁の長官が時間を設定して、この期間の中でという、私に言わせれば非常に乱暴な形での設定の仕方をしていると思うのです。それから、先ほども言いましたように当事者同士の議論ですからね。一方は、どう見ても一元化、あるいは国民生活センターの廃止を当然の前提にしたような形での議論の進め方になっている。閣議決定の中に「国民生活センターについては廃止も含め」と。「含め」というのですから「廃止を前提として」ではないわけで、当然、見直しをするには「廃止も含め」ということはあり得ると思いますけれども、ただ、今のタスクフォースを見ていますと、もう廃止の方向でということで、国民生活センターをいかに納得させるかという議論が延々と続いている。その議論を正当化するために、ヒアリングとかが行われているというのが実態ではないか。
私は、タスクフォースでここまで議論をしてきたのですから、これをもう少し広い形で、それこそ行政の見直しの専門家であるとか、消費者問題、消費者行政の専門家であるとか、あるいは、その利益を受ける、消費者行政の対象になる団体、消費者側も含めて議論をする。その議論をするときに、中間取りまとめが出ていますから、この中間取りまとめをたたき台にして、これに何かを足すとかということではなく、これ自身を俎上にあげて議論をする。例えば「機能が重複している」と述べているが本当に重複しているのかどうか、そこのところを検証してみる。それから、「一元化する」と述べていますが、一元化して消費者庁をどういう組織にするのか、どういう方法で、今後、消費者行政を展開していくのか。その辺りはどうなのか。今までどおりの寄り合い所帯で消費者庁は構成されていくのかどうか。そうではなく、そこに骨を埋めるプロパーの人が所属するという形で組織が構築され運営されていくのかどうか。そういうことを一つひとつ詰めていく必要があるのではないか。せっかく出ていますからね。いい素材ではないですか。切り刻んでみたらいかがでしょうか。

○松本委員長 ありがとうございました。
では、下谷内委員、最後にお願いします。

○下谷内委員 藤田先生にお伺いしたいのですが、先生の今日の御説明はとてもよくわかりました。ありがとうございました。少しは力強さを感じております。
企画・立案、実施につきましてはやはり分離するということですが、先生の3ページのところにもちょっと書いていらっしゃいます。執行のところで、現在、消費者庁の中においては、執行権限をかなり3条の法律の中で持っているところがありますものですから、そうなりますと、企画・立案と執行の一つのかたまりと、実施事務をすることに関して、独法でなくてもそれは構わないかとは思いますが、別な組織としてあるべきものであると。ちょっと確認をしたいのですが、よろしいでしょうか。

○東北大学藤田名誉教授 別な組織というのは。

○下谷内委員 今は独法になっておりますが、消費者庁の中ではなく。

○東北大学藤田名誉教授 別の組織というのは本省ですか。ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったのですが。

○下谷内委員 すみません、本省ではなくて。

○東北大学藤田名誉教授 今、消費者庁が企画・立案をやっておりますね。

○下谷内委員 消費者庁が企画・立案と執行権限を持っているわけです。実施の部分におきましては国民生活センターというふうに理解しています。そのような形で、それが今のような独立行政法人という形ではないかもしれないのですが、何かそういう分かれた組織体があった方がいいというふうに私は理解したのですが。

○東北大学藤田名誉教授 理論的にはそうなるだろうということで申しましたけれども、要するに中央省庁再編の基本理念に従えば、企画・立案・執行をやる庁というのは例外であるわけですが、現に、それをやっている。しかし、執行については、本来ならば、実施の一部としてそれとは分離するということだと思うのです。ただ、行政処分というのは、なかなか国の行政機関以外のものにやらせるということが難しい。だとすると、処分というのは消費者庁ということで、これはもうしょうがないというか、そういう位置づけはできる。(広い意味での)実施の中でもそういったものについてはそうであるけれども、しかし、例えば相談とか何とか、そういったことはむしろ国の行政機関でないところに出す方が理論的には筋が通るのではないかということを申し上げたわけです。

○松本委員長 ありがとうございました。まだまだ議論をしたいところでございますけれども、お二人の先生の共通の議論として、企画・立案と実施という2つのものをどういうふうに関連させるか、あるいは分けるかというところがあったと思います。そして実施の中に、先ほどから議論にも出ていますが、行政処分的なハードな実施と、相談、支援、ADRといったソフトな実施、金子先生が委員長の審査会が行っていたソフトな、「是正をするように」という、そういうのも入るかと思いますが、法律を適用して処分をする、取り締まるというタイプのものと、そうではないものと、実施の中に2つあると思います。それを更に、一つの組織でやるのがよいのか、2つの組織で分けてやった方がいいのかといったところが、今日の議論の中からかなり浮かび上がってきたと思います。
本日は、金子先生、藤田先生におかれましては、大変お忙しい中を当委員会の審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

≪3.「消費者基本計画」の「検証・評価」(平成22年度)及び計画の見直しについて≫

○松本委員長 続きまして、「『消費者基本計画』の『検証・評価』及び計画の見直しについて」でございます。平成22年3月30日に閣議決定されました消費者基本計画において、その検証・評価・監視については、毎年度、計画に盛り込まれた施策の実施状況について行い、検証・評価の結果と、それによって必要となる消費者基本計画の見直しについては閣議決定を行い公表することによって、翌年度の施策に確実に反映させるとされております。
消費者庁におかれましては、このたび、平成22年度の実施状況に関する「検証・評価」及び計画の見直しの素案を取りまとめ、現在、パブリックコメントにかけているところと伺っております。本日は消費者庁においでいただいておりますので、素案について御説明をいただき、併せて議論を行いたいと思います。
それでは、御説明をお願いいたします。

○消費者庁成田企画課長 消費者庁企画課の成田でございます。
「消費者基本計画」の検証・評価と見直しにつきまして、現在の作業の状況を御報告させていただきます。資料でございますが、資料3-1と、資料3-2がございます。これに沿って御説明させていただきます。
現在の「消費者基本計画」は、消費者基本法に基づき、消費者委員会における8回にわたる御審議等を踏まえまして、昨年3月30日に閣議決定されたところでございます。この計画は、平成22年度を初年度とする5年間に、消費者庁を含めた各省庁等が実施する171の具体的な施策が盛り込まれております。資料3-1の1枚目に少し書いてございますし、今、松本委員長からも御紹介がございましたけれども、この「消費者基本計画」では計画を実効性のあるものとするための検証・評価についての記載がございます。具体的には、毎年度、検証・評価を行って、その結果とそれによって必要となる「消費者基本計画」の見直しについて閣議決定を行って、翌年度の施策に確実に反映するということが書いてございます。
計画の初年度でございます平成22年度の具体的施策の実施状況に関する検証・評価につきましては、その結果を来年度、すなわち平成24年度の施策に反映させていくためには、各省庁等が来年度の予算編成作業を本格化させる前の、6月末ごろまでに閣議決定を目指すことが適当ではないかと考えているところでございます。
消費者庁におきましては、消費者庁を含む各担当省庁等に対しまして、一つひとつの具体的施策の検証・評価の作業をお願いいたしまして、このたび、お手元の資料3-2として取りまとめたところでございます。この資料につきましては、先週の水曜日、5月25日から2週間という期間で国民の皆様からの御意見を募集しているところでございます。
検証・評価の作業は、本来であれば年度が明けた4月の早い段階から開始をしたいと考えていたところでございますけれども、東日本大震災の対応のために、各省庁において作業を行っていただくことが非常に困難な状況が続いておりました。したがいまして、取りまとめがこのタイミングになりまして、意見募集の期間も2週間となっております。また、意見募集を開始いたしました5月25日にはすべての施策がそろわず、6月1日に171の施策をパブリックコメントに付すことができたところでございます。
資料3-1は消費者庁関連の施策についてまとめたものでございますので、これに沿って、検証・評価と見直しの内容について少し御紹介させていただければと思います。
まず、消費者庁の関連施策で平成22年度中に実施した事項の例を幾つか挙げてございます。例えば、PIO-NETの端末を経済産業局、公正取引委員会地方事務所等に配備したこと、子どもの事故防止の関連で、使い捨てライターの安全対策を実施したこと、本年2月にトランス脂肪酸の情報開示に関する指針の取りまとめを行ったこと、消費者教育の関連では、消費者教育推進会議を開催したこと、地方消費者行政支援の関連では、活性化基金の運用の見直しを行ったことなどを記載しております。
こういった検証・評価の結果を踏まえまして、基本計画について一定の見直しが必要になっていると思います。消費者庁関連施策の主な見直し事項を記載しております。
まず、1つ目の☆印でございます。消費者事故の独立・公正・網羅的な調査機関の在り方につきましては、この後も消費者庁から御説明させていただくかと思いますけれども、先般、検討会の取りまとめが行われたところでございまして、今後、これを踏まえて具体的な施策を盛り込む予定にしております。意見募集を開始した段階ではまだ取りまとめが行われる前でございましたので、現在は「(P)」という形で御意見を伺っているところでございます。
4つ目の☆印でございますが、同じく国民生活センターの関係につきましても、現在、検討が行われており、今後、その結果を踏まえて具体的な記述をしていくということで、現在は「(P)」という形で御意見を募集しております。
2つ目の☆印、食品表示の一元化でございますけれども、今回、実施時期について、平成24年度中の法案提出を目指すということを基本計画の中に明示したいと考えております。
また、次の消費者被害救済制度につきましても、設置法の附則第6項におきまして「施行後3年を目途」と書いてございますので、今回、次期通常国会への法案提出を目指す旨を実施時期に明記したいと考えております。
5つ目の☆印でございます。「集中育成・強化期間」後の地方消費者行政支援につきましては、本年度中に消費者庁としての方針を取りまとめ、その具体化に取り組むことを明記いたしました。
最後の☆印でございますが、インターネット消費者取引につきましては、現在の基本計画において「22年度中に結論を得る」と書いておりまして、昨年度中に研究会の取りまとめが行われました。今回、その取りまとめを踏まえまして、新たに決済代行業者に係るわかりやすい表示の仕組み作り等の具体的な施策を追加することにしております。
資料の2枚目は、今、御説明させていただいた基本計画の見直しの中身について、実際に具体的な記述がどうなるかというものをお示ししたものでございます。左側が現行の計画の書きぶり、右側が変更部分について記載したものでございます。
3枚目でございますけれども、1枚目、2枚目で御紹介した施策以外の消費者庁関連の施策の見直しの内容を、幾つか御紹介したものでございます。消費者庁関連施策は、現在、意見募集をしている段階で、実施時期の変更ですとか、担当省庁等の変更なども含めまして、約40の施策について基本計画の見直しをすることを考えております。今後、意見募集の結果や、消費者委員会の御意見なども踏まえながら6月末に向けて作業を進めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの報告につきまして、御質問、御意見のある方はどうぞお出しください。
中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 今回、震災のことがあって大変だったと思うのですが、意見募集を25日に出されて、実際に5月31日とか6月1日に追加で項目が出てきた。いずれも6月7日がパブコメの締切、郵送の場合は必着。こうなりますと、従来の基本計画に対するパブコメと比べてかなりきちきちで、我々国民の意見が十分反映できないのではないかと心配しております。ですから、ちょっとお願いしたいのですが、予算のこともあるかもしれませんけれども、7日を過ぎても受け付けるという態勢はとれないものでしょうか。

○消費者庁成田企画課長 6月末を守るかどうか、あるいは御意見をいただく期間を長くとるかの選択の中で私どもは6月末というのを設定しているところでございます。6月末ということを考えますと、6月7日の締切を守っていただくのは、その後の作業を考えますとかなりぎりぎりのスケジュールであると思っております。御意見があったことは上にも伝えたいとは思いますけれども、6月末を守るのであればそこはデッドラインだと思っております。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 御説明ありがとうございました。余り時間がないので簡単に。施策の今回の見直しのところでお伺いしたいのですが、総論は書き込んでいただきましたので、ありがたく思っております。施策1番ですが、今度の見直しのところで、前は担当部局が消費者庁地方協力課、国民生活センター情報部となっていたのですが、今回、担当省庁が消費者庁としか入っていないのです。現在、タスクフォースで国センの在り方について見直しを検討されておりまして、これでは、もう既に消費者庁の中に取り込まれているようにしか見えないのですが、これはどうなのでしょうかというのが一点ございます。
PIO-NETに関してもう一つ、128番ですが、「適格消費者団体への情報提供等」というところで、今回は「PIO-NET端末の設置に向けて検討を進める」となっておりまして、この制度が濫用・悪用されないように云々と書いてある。これは、確かにこうしていただかなければいけないことですが、PIO-NETというのは相談情報を生にいただいたものですので、確かに適格団体が差し止め請求だとか、今後、集団的消費者被害救済制度になりますと、情報というものは必要かとは思いますが、今は精査されていない情報が直接入ってきているわけです。それを、適格団体の審査の適用をするときに、濫用・悪用されないように審査をするということですが、やはりそこのところは十分に検討していただいて、もうしばらく検討が必要なのではないかなということを感じております。
そして、PIO-NETの端末に向けて、設置の費用、メンテナンスの費用ということで支援をしていただけるような話もちょっと伺ってはいますが、それよりも適格団体には、やはり財政が不足しておりまして、差し止め請求等もできにくい状態ですので、できましたらば全体的な財政的支援という形のものを御検討いただけないかなと。
この2点です。よろしくお願いします。

○松本委員長 それでは、お願いします。

○消費者庁成田企画課長 まず、担当省庁等のところでございますけれども、今回、国民生活センターが担当になっていたものは全部、担当を消費者庁にしております。これは国センの見直しの話というよりは形式的なものとして、消費者基本計画というのは閣議決定をする政府の施策を記載したものですので、基本的には国の行政機関が責任を持ってやるものだと考えております。今回、国民生活センターと、金融広報中央委員会もそうですけれども、担当省庁等から落としております。従来も、例えば、NITEの施策は経済産業省と書いてございましたので、その辺とのバランスをとった形の整理にしております。
PIO-NETの適格消費者団体への配備についてでございますけれども、情報のセキュリティのようなことにつきましては、どういうふうにするのがいいのか、担当の地方協力課とも相談して、御指摘のとおり情報が適切に利用されるよう検討したいと思います。

○下谷内委員 この1番のところは、主語の問題ではないかと思うのですが、見直し案にマル1、マル2、マル3がございまして、これは現在の国民生活センターの全国消費生活情報ネットワーク、PIO-NETという理解で、主語が入ることではないかと思いますが、違いますか。御検討いただければと思います。

○消費者庁成田企画課長 表現は検討はいたしますけれども、消費者庁が責任を持ってやるということでこういう形で整理をさせていただいております。

○松本委員長 先ほどの議論にもありましたけれども、消費者庁が企画・立案して、実施をするのが国民生活センターだとすれば、消費者庁の施策になると思います。
佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 私はペーパーで出してありますので、是非ご覧いただきたいのですが、資料9になっております。これは新しい項目として是非検討していただきたいのです。3月11日に東日本大震災が発生しました。福島原子力発電所の事故については収束の目途さえついていないという状況だと思います。今後の放射性物質の汚染問題への対応が消費生活において大きな課題となると思います。是非それを一つのくくりとして、今日いただいた分厚いところではまとめとして1、2、3になっていますけれども、昨年の基本計画の中ではもう少し細かなくくりができているので、その一つとして放射能汚染対策の推進という形で、入れていただけないかということを検討してください。これは、現在でも各省庁いろいろ対応されているので、その辺りを是非お願いしたいと思います。放射性物質に関しては短期間では解決しないで、少なくとも数年間、数十年間にわたるかもしれない、消費生活に大きな影響を与えるので、是非お願いしたいと思います。
時間がないので読みませんが、ここに書いてありますので、是非御検討いただきたいと思います。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 私も、時間がないということだったので、資料8として、24項目にわたって、契約問題などを中心に取りまとめて見直しできないかと指摘させていただいておりますので、御検討をお願いします。特に運用の改善にとどまらない、制度的な法制の在り方も含めて、踏み込んで検討をするべきところがあるのではないかというところもかなりございますので、その点、是非御検討をお願いします。今、佐野委員が言ったような安全問題について、特に放射性物質などについても、これは今の状況の中で基本計画の中に組み込んでいただくのは当然のことだと思いますので、是非再検討をお願いします。

○松本委員長 ほかに御意見ございませんか。
どうぞ、日和佐委員。

○日和佐委員 食品表示の一元化、69番に関してですが、法案提出の目途を明確にしていただいたのは大変よかったと思いますけれども、それまでのプロセスがほとんどわからない。どういう形でこの法案の起案がなされていくのか。例えば審議会をつくるのか、検討会をつくるのか等、これは非常に大きな問題ですので、事業者、消費者、多くの方たちの意見を集約してつくっていっていただきたいと思っておりますので、プロセスがもう少し明確にわかるように記載していただきたいと思います。

○松本委員長 ほかに御意見はございませんか。
多数の施策が存在するわけで、それぞれにつきまして消費者委員会の委員としていろいろ意見を持っておられる方もいらっしゃいます。その一部は既にペーパーとして出されておりますし、この後、また追加の意見も出るかもしれませんので、そういった部分についても十分考慮した上で、見直しの中に組み込める部分は組み込むことを行っていっていただきたいと思います。本件につきましては、改めて委員会の議題としても取り上げたいと思います。
消費者庁におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。

≪4.消費者基本計画の検証・評価・監視について≫

○松本委員長 続きまして、消費者基本計画の検証・評価・監視の各論の部分でございます。消費者委員会として行う消費者基本計画の検証・評価・監視につきまして、重点施策に関する昨年度の実施状況について先月からヒアリングを行っているところですが、本日はその第3回目として、資料4-1にありますように、事故調査機関の在り方に関連する施策である13番、15番について、それぞれ関係省庁においでいただいておりますので、ヒアリングを行いたいと思います。
ヒアリングの進め方といたしましては、初めに13番について御説明をいただき、その後、質疑を行います。そして、15番について同様に説明、質疑を行いたいと思います。
なお、資料4-2にありますように、一部の施策については、委員会で更にお伺いしたい内容をヒアリング項目としてまとめてあらかじめ各省庁にお伝えしておりますので、これも含めて御説明をいただきたいと思います。
初めに、13番の施策についてでございます。本日は、関係省庁として消費者庁においでいただいておりますので、御説明をお願いいたします。

○消費者庁坂田消費者安全課長 消費者庁消費者安全課長の坂田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
資料は5-1から5-3まで、資料5-1のA3のものをお出しいただきたいと思います。これまでの検討経緯等を整理し、今後の取り組みについて御説明をさせていただきたいと思います。
まず、経緯のところでございます。背景として、消費者安全法によりまして消費者事故等情報の一元化は整備されたけれども、原因究明のための事故調査を行う仕組みは不十分であるということでございます。
消費者庁設立の際の設置法案等の国会審議の中でも、附帯決議におきまして、「消費者事故等についての独立した調査機関の在り方について法制化を含めた検討を行う」とされたところでございます。更に消費者基本計画でも、「消費者事故の独立した公正かつ網羅的な調査機関の在り方について検討します」という閣議決定がなされたということでございます。
私ども消費者庁では、被害者遺族を含む有識者からなる検討会を昨年の8月に立ち上げまして、関係省庁・機関の協力も得て議論していただいたということでございます。5月31日にその「取りまとめ」がまとまったということで、その概要を御紹介いたします。
まず、「事故調査の必要性」という部分でございます。2番目のマルにも書いてございますけれども、現状では、さまざまな事故について漏れなく予防、再発防止のための事故調査がなされる体制にないという点を踏まえまして、「すき間事故」に機動的に対応する制度の整備が必要であるという御指摘をいただいております。
ここで申します「すき間事故」といいますのは、1つ目に、事故の調査をする体制がない分野の事故でございます。例えばこんにゃく入りゼリーのようなものは規制もない、事故調査の体制もないということでございます。
2つ目に、事故の調査をする体制はあるけれども、その目的や権限との関係では、消費者保護の観点から十分な調査を進めることが困難な分野の事故というのが考えられるかと思います。
3つ目に、分野横断的であるために、消費者保護という統一的な観点で調査を進めることが困難な事故などが当たるということで、この例でございますけれども、例えばプールの排水口に吸い込まれるといった事故がそれに当たるのではないかと思います。
2点目、「事故調査に求められる属性」でございますけれども、独立性、公正性、網羅性、専門性といった属性が必要であるという御指摘をいただいております。
更に「事故調査と刑事手続との関係」でございますけれども、双方が支障なく行われるための調整・環境整備が必要であるということでございます。具体的に申しますと、例えば事故調査の中でなされた事故の関与者の口述、証言などが刑事責任のきっかけとなったり、あるいは、刑事手続において事故に不利な証拠として利用されるといった場合には、事故調査のためであっても口述をためらうということが起こる可能性がございますので、事故調査に支障を来さないための環境整備の必要性を検討すべき、といった御指摘をいただいたということでございます。
それから、「再発防止のための事故調査」という点でございます。この点は事故調査の実務面を主に検討していただいたパートですけれども、情報の収集・分析の体制等の充実、専門家のネットワークの構築とその活用等による高度な調査能力の確保、行政調査としての権限の整備等が必要という御指摘をいただいております。
更に「被害者等に向き合う事故調査」ということでございますけれども、これは、被害者や被害者遺族の方が疎外感を感じることのないように、被害者等への積極的な情報提供・説明等が事故調査機関において求められるのではないか、という御指摘をいただいております。更に被害者等による事故調査・再調査の申出を受けとめまして、必要な調査につなげる仕組みが必要だということでございます。被害者等の視点を事故調査に生かすべきという御指摘をいただいております。
以上を踏まえまして、「事故調査機関の在り方」でございます。まず、専門分野ごとの事故調査の機能、すき間事故の事故調査の機能、これらの事故調査を評価・チェックを行う機能、その3つが必要であるという御指摘をいただいております。その中で特にすき間事故調査を行う「消費者事故等調査機関」(仮称)と、更に、評価チェック機関である「消費者事故等調査評価会議」(仮称)の整備を目指すべきということでございます。
以上のような取りまとめをいただきまして、私ども消費者庁としてどのような取り組みを当面行うかというのが最後の段に出ております。消費者庁といたしましては、消費者基本計画に具体的な施策としてまず盛り込みをさせていただきまして、更に予算ですとか、機構・定員の要求、関連法整備の準備をできる限り速やかに進めてまいりたいと考えております。
説明は以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
別途、4-2をお渡ししているはずですけれども、ここの部分についてQ2からQ5まで御回答ください。

○消費者庁坂田消費者安全課長 問1(消費者庁における「事故調査機関の在り方に関する検討会」の議論結果について説明されたい。)は、今、御説明をしたとおりでございます。
問2(特に、NITE、国民生活センター、FAMIC等との関係はどうなるのか。)でございますけれども、既存の関連機関の権限、位置づけ、それから、有識者の専門的な知見などを生かしつつ、関連機関との関係を整理いたしまして、連携やネットワークづくりを進めていく必要があると考えております。
問3の国民生活センターのタスクフォースとの関係についてでございますけれども、国民生活センターの商品テスト機能をどのように新たな事故調査機関に生かしていくかという点で、当然、関係しているというふうに認識しております。
問4の「取りまとめ結果を実現するための予算・人員規模は」という点でございますけれども、どのような分野で何件程度の事故調査が必要とされるのか。これまでの事故情報の通知ですとか収集の状況等を踏まえながら、必要と考えられる予算・人員規模を早急に積み上げまして、来年度概算要求に盛り込むなどの準備を進めてまいりたいと考えております。
問5、新組織を構築するためのスケジュールということでございますが、今ほども御説明したとおりでございまして、今後、関係省庁・機関等の協力も引き続き得ながら消費者庁として検討を集中的に行いまして、まずは見直しの作業中である消費者基本計画に必要な施策を盛り込むということでございます。その上で、それらの施策のために必要となる予算・人員等を来年度の概算要求に盛り込むなどの準備を進めるとともに、次期通常国会に向けて関連法制度の検討を進めてまいりたいと思っております。
以上でございます。

○松本委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 この後のイメージが今の説明だけではわかりにくいのですが、報告書の37ページに概ね書かれていることをもう少しわかりやすく説明していただきたいと思います。今、すき間事故に関しては、予算付けをして早急に第一歩を踏み出そうとしておられるのはわかったのですが、37ページにあるように、製品、食品、昇降機を含む施設、こういうものの原因究明機関が、いつごろどうなっていくのか。ここが余り説明がないようですし、その下にNITE、保健所、消防、いろいろなネットワークづくりとありますが、これもどういうものを想定されているのか。37ページの文章を例えばポンチ絵風にするとこうですとか、今回、組織の図面が付いていないですね。4月15日時点での検討会では何か図面が出ていたようですが、最終報告には図面もなくて、この辺の37ページの説明が国民にはわかりにくいので、今、申し上げたような諸分野等との関係をもう少し説明していただきたいのですが。

○消費者庁坂田消費者安全課長 では、補足的に説明させていただきます。この検討会の場におきましては、すき間事故という定義はまず一つ目は、現状では全く調査機関がない分野ということでございます。それ以外に、現状では何らかの調査の体制はあるけれども、消費者保護の観点から十分な事故調査が困難な分野ですとか、統一的な視点での調査が困難な分野について幅広く対象として調査を行うべき、という御提言をいただいたということでございます。
そうした観点からしますと、対象分野は製品、食品、施設、役務など幅広い消費者事故に及ぶと考えられるわけですけれども、その際、現状におきまして何らかの調査の体制がある分野につきましては、関係省庁・機関との整理・調整が不可欠となるということで、そのような整理・調整を早急に行っていくということでございます。その調整を行いながら消費者庁としての成案を得ていきたいと思っております。

○中村委員長代理 そうすると、昇降機とかそういうものも全部、消費者庁の中に何らかの位置づけがなされるということですか。

○消費者庁坂田消費者安全課長 その辺りも国土交通省と、今後、調整をしていきたいと思っております。

○松本委員長 ほかにございませんか。
では、私から1点。「消費者事故等調査機関」と「消費者事故等調査評価会議」と2つ組織として構想されていて、後者の評価会議は第三者機関と位置づけられているわけですが、前者の調査機関は第三者機関ではなく、消費者庁の中の一部局のようなイメージで構想されているという理解でよろしいですか。

○消費者庁坂田消費者安全課長 私どもの方でこの取りまとめをいただいた後、その辺りも含めて検討をしていきたいと思います。この報告書でも、公正性、独立性という点を事故調査機関の必要な条件だと御指摘いただいておりますので、第三者機関としての事故調査機関をつくる必要性があるかどうかについても検討していきたいと思っております。

○松本委員長 佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 どうもイメージがわかないのです。第5章辺りまでは大体わかりますが、肝心の事故調査機関の在り方になるとグッとわからなくなってしまう。今も質問があったように、消費者事故等調査評価会議というある意味での第三者機関は、上下と言ったら変な形になるかもしれませんけれども、それは消費者庁の中に入っても第三者と言えるのか。私は、消費者庁の外、例えば内閣府の中に置く方が第三者として消費者にはわかりやすいのかなと思います。
それから、ネットワーク、連携というのは、言葉とか文章ではすごくきれいに聞こえますけれども、一体どういう形で連携されるのかというのをもう少し詳しく教えていただきたい。例えばここに書いてある、一番身近なNITEや保健所。食品関係は保健所だけで調査機関とは言えない、もっと別な機関が必要ではないかと思いますけれども、どういう形をイメージされているのか。もうちょっと詳しく教えてください。

○消費者庁坂田消費者安全課長資料5-3の「取りまとめ」をご覧いただきたいと思います。27ページなどがそれに当たるわけですが、下から2行目に「高度な調査能力の確保」とありまして、「各分野の専門家による協力を得るためのネットワークを構築することは、事故調査機関・制度が高度な調査能力を確保する上で有効な手段である」。更に、「既存の関係行政機関だけでなく、大学や民間団体との研究機関との連携・協力体制を構築することも必要であろう」ということです。そういった専門家のネットワークをつくりまして、特定の分野の事故が起きたときには、その分野の専門家を集めて速やかに事故調査がなされる仕組みを事前につくっておくということも一つあろうかと思います。更に、既存の関係機関と連携・協力関係をあらかじめ結んでおいて、事故調査に必要なさまざまなテスト等があろうかと思いますが、そういった場合に協力をいただくことも考えられると思っております。
それが後者の御質問の方でございます。
評価会議は外部に置くべきではないかという御指摘の点でございますけれども、この辺りも、実は取りまとめの中でも御意見が分かれている部分だと理解しております。特に消費者委員会で評価・監視という事務を担当されていることもありますので、事故調査機関ですとか、事故調査の評価というのは、そういった意味では消費者委員会の業務との関係整理が必要ではないかというふうに私どもは思っておりますので、その辺りもこれから御相談をさせていただきたいと考えております。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 刑事訴訟法との調整が必要になると思うんですね。要するに事故が起こった場合に、唯一の事故の証拠類を警察が押収してしまいますと、こういう事故調査の委員会の方には証拠がない。逆に、こっちが優先してしまうと刑事捜査も進まない。他方、アメリカのように刑事免責ということでやった方が、事故の調査あるいは再発防止のための施策については寄与できると。これは、御巣鷹山の事故のときからずっと議論されている問題ですが、報告書を見ていると、その辺について当たらずさわらずの報告になっているような感じなのですが、これは、法務省とも調整して何らかの結論をいつまでに出すという具体的な目途があるのかどうか。それについてお聞きします。

○消費者庁坂田消費者安全課長 先ほども若干御紹介いたしましたけれども、委員御指摘の部分、18ページ以下に「『証拠物』『客観的なデータ』について」ということで取り上げられているわけであります。概要のA4横長の方ですと、3ページの3、最初のポツで、「客観的な証拠物は、代替性がないのであるから、事故調査と刑事手続の双方にとって必要である場合には、相互に必要な時期に利用可能となるよう調整すべき」という御指摘をいただいております。更に、その次のポツですけれども、「個別の事案ごとに、刑事手続で収集された証拠の事故調査への利用の可否について検討が求められる」といったところも御指摘をいただいております。
いずれにしましても、こういったところは事故調査を円滑に行うために刑事手続との関係調整が不可欠であるということで、今後、法務省、警察庁と調整を進めていきたいと思っております。

○山口委員 それはいつごろまでにどうするつもりなのか。特にこれは刑事訴訟法の改正も含みますから。

○消費者庁坂田消費者安全課長 まさしく事故調査機関を立ち上げる、それにできるだけ間に合う形で関係省庁と調整を進めていきたいと思っております。

○松本委員長 よろしいでしょうか。
施策13番には、「消費者委員会による調査審議を踏まえながら、最も効果的に機能する仕組みを構築します」ということになっているわけで、消費者庁サイドの検討会としては一定の方向性が出されたわけですが、事故調査機関そのものの中身の方がまだはっきりしない感じもございます。消費者委員会として、そういったところについて積極的な意見を述べていくのは基本計画上の義務になっていると思いますので、消費者庁として、この検討会の報告書の取りまとめを実現する方向に向けて積極的に努力していただくとともに、消費者委員会としても意見をまとめて早急に消費者庁の方にお伝えしたいと思います。

○消費者庁坂田消費者安全課長 一点、補足させていただきます。刑事訴訟法の改正等の御指摘がございましたけれども、報告書の20ページをご覧いただきますと、「(2)事故関与者の『口述』について」の部分の4つ目の段落ですが、「刑事訴訟法等既存の法制度を変更することには限界があると言わざるを得ない」という御指摘。それから刑事免責等の点についても、それは我が国の状況から見てどうか、という御指摘もいただいております。そういう意味では、速やかに刑事訴訟法を改正するといった地合いにはないというふうに理解しておりますので、法制度を変えずに可能な範囲で我々は何ができるのかということを、関係省庁ともよく相談して検討していきたいと考えております。

○山口委員 刑事訴訟法は改正しないでこの事故調査のシステムをつくっていこうと、こういう前提でいるということですか。

○消費者庁坂田消費者安全課長 はい。

○松本委員長 ありがとうございました。そういった点も含めて、消費者委員会として、この報告書について検討をして一定の意見をまとめたいと思います。
本日は、消費者庁におかれましては、当委員会の審議に御協力をいただきまして、ありがとうございました。
続きまして、15番の施策についてですが、本日は、関係省庁として国土交通省においでいただいております。
それでは、御説明をお願いいたします。

○国土交通省石崎住宅局建築指導課昇降機等事故調査室長 国土交通省の建築指導課昇降機等事故調査室長をしております石崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもが提出している資料は資料6-1でございます。ちょっと小さい字で恐縮でございますが、昇降機等事故調査の現状につきまして御説明させていただきます。
まず、「昇降機や遊戯施設の事故調査を継続的に実施し」という部分についてでございますが、昇降機、遊戯施設の事故に関しまして、現在、社会資本整備審議会の中に「昇降機等事故調査部会」というのを設けまして、そこにおいて調査を行っております。部会におきましては、事故が発生しますと担当の委員を決めていただきまして、その委員が基本的にはその現場に行って調査をしていただく。そういう形で調査を進めてございます。20年度~21年度に関しては、その前身の委員会でございましたが、6件、22年度には8件、こういう形の調査を進め、調査が完了したものにつきまして順次報告書を出してきている。そういう形で進めさせていただいてございます。引き続き、こうした取り組みを進めてまいりたいと考えております。
2つ目、「昇降機事故等に係る国の調査権限を法的に規定し、これを検討」ということでございます。これに関しましては、現在、建築基準法を初めとする建築法体系全般について、本当にこれでいいのか、見直すべきかということで、建築法体系見直しのための勉強会を開催してございます。この中で、昇降機も含めた安全性に関してどういう体制をつくり、法律も含めてどういうふうにするべきなのかという根本的な議論をしてございます。その検討の中で、当然、検討資料の中に、こういう事故も発生しています、これについてどうします、というのを含めての議論ということでお願いしているところでございます。この中で引き続き検討を進めてまいりたいと考えてございます。
また、「事故に係る調査体制の充実を図り」ということでございますが、調査体制につきまして、まず、社会資本整備審議会の中でございますが、資料6-1の資料を1ページめくっていただけますでしょうか。資料6-2「昇降機等事故調査部会の設置について」というものがございます。従前、昇降機等事故調査に関しましては、社会資本整備審議会の建築分科会の中の事故災害対策部会の更に下に対策委員会を設けて、そこで調査をしてまいりました。これに関しまして、「趣旨」に書いてございますが、建築物だけではなく、例えば道路の中に設けられる昇降機とか、鉄道構内の駅のプラットフォームにあるエレベーター、こういうものを含めて対象にしようと。
また、その報告書の内容につきまして、審議会の報告書とした場合には、法律に基づく関係行政機関の意見ということになりますので、そういう形にしようということで、審議会の直下に昇降機等事故調査部会というのを昨年の12月に設けてございます。ここで、事故情報・不具合情報の分析、原因究明に関する調査、それに対する検討・意見具申、こういうものをやっていこうというものでございます。こういうものをつくりまして、従前、昇降機等事故対策委員会は14名でございましたが、更に、実際に現場に行っていただく、専門で見ていただく方を増員しまして、現在、18名の体制でこの審議会をお願いしてございます。
事務局体制につきましても、昨年の10月に3人の専任の事務局員を置きまして、今年4月から、私がおりますこの室を新設し、さらに2名増員し、現在5名体制でやってございます。更に今年10月には2名を増員して、計7名の体制で事故調査の事務局を支えようと考えてございます。
私からは以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、どうぞ。中村委員。

○中村委員長代理 先ほどの消費者庁の事故調査機関の在り方の報告も、後ろで聞いておられたと思います。それぞれの関係も端的に聞きたいのですが、消費者庁の37ページでも紹介しましたが、明らかに「施設(昇降機等を含む)」というものを、消費者庁がイメージしている事故調の対象分野として位置づけておられるのですが、これと、そちらで検討しておられる問題との関係は、協議、すり合わせをされているのかどうか。それが一つ。
それから、同じ37ページに福知山線の調査報告書があって、その中に、今、消費者庁が構想している事故調の問題も触れられております。部門が違うのかもしれませんけれども、今年の4月15日付の報告書というのが国交省の関連で出ていて、その中では、国交省が従来やっている専門性のあるものは、それはそれで別途でいいと。網羅的に全部ざっくりとカバーするような事故調でなくてもいいのではないかと、概略そのようなニュアンスの御意見があるのですが、国交省としてはやはり昇降機についてもそういうお考えなのか。その辺を併せてお聞きしたいと思います。

○国土交通省石崎住宅局建築指導課昇降機等事故調査室長 まず、後ろの方の御質問です。基本的には消費者庁の委員会は、私はいつも後ろで聞いている立場でございましたが、運輸安全委員会についてはここの中にもはっきりと別書きされているように、これは少し別のものではないか。昇降機等に関しましては、運輸安全委員会と別の議論なのではないかという御提言になっているかと思います。そういう形で議論されているというふうに認識してございます。
端的に申し上げまして、我々は勿論、この昇降機という形のものが名指しされて議論されているのは認識してございましたが、我々としては、今、どういうような全体としての事故調査機関をつくるのかという、総論の議論をされているというふうに認識しております。まさしくこれから、ここに書いていますように、各論として具体的に昇降機などについてどうするのかというのを消費者庁と一緒になって検討させていただく、そういう段階なのだろうというふうに認識してございます。

○松本委員長 ほかに、御意見、御質問ございませんか。よろしいでしょうか。
お話を聞いておりますと、スタッフも順調に増員されて一定の充実した調査機関になると期待しておりますので、今後とも鋭意整備を進めていっていただきたいと思います。
国土交通省におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。
本日の議題は以上でございますが、5月16日に委員会の下部組織である「食品表示部会」の第9回会合が開催されております。本日は、食品表示部会設置・運営規程第8条第2項の規程に基づき、その審議結果の報告をいただきたいと思います。
それでは、田島部会長からよろしくお願いいたします。

○田島委員 食品表示部会部会長の田島でございます。
5月16日に開催いたしました食品表示部会における2件の議決について、食品表示部会設置・運営規程第8条に基づき、委員長の同意を得て委員会の議決とし、6月2日付で内閣総理大臣へ答申を行いました。
まず、1件目です。めん類等用つゆ品質表示基準について、平成16年のしょうゆ品質表示基準の全面改正により、醸造方式の用語が変更になったこととも整合性を図って、原材料名の記載方法について文言を統一し、また、加工食品品質表示基準の原材料名の記載方法と整合性を図り、原材料名を重量順に記載することの検討を行ったところです。
本日は、同条第2項の規程に基づき決定事項を委員会に御報告するものです。資料7-1の答申書をご覧ください。今回の部会では、平成22年9月30日付け消食表第330号をもって諮問のあっためん類等用つゆ品質表示基準の改正について、審議の結果、別添資料のとおり改正することが適当であるとされました。
続きまして、2点目ですが、平成23年7月から米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律、いわゆる米トレーサビリティ法でございますが、これに基づき、米及び米加工品を対象に消費者への産地情報の伝達が義務化されますが、玄米及び精米品質表示基準では、農産物検査法に定める検査を受けていない玄米を原料とした精米などには、これまで都道府県名等の産地標準ができませんでしたが、米トレーサビリティ法に基づき都道府県名等の産地表示が伝達されることに伴い、都道府県名等が表示できるようにみなすことの検討を行ったところでございます。
資料7-2の答申書をご覧ください。今回の部会では、平成23年1月24日付け消食表第18号をもって諮問のあった玄米及び精米品質表示基準の改正について、審議の結果、別添資料のとおり改正することが適当であるとされました。
なお、当該表示基準の施行に当たっては当部会の委員より、消費者及び事業者に以下の点を周知することを徹底すべきであるとの要望がありましたので、つけ加えさせていただきます。
第1点として、当該表示方法について、消費者に対して当該表示基準の表現の意味が伝わるように普及啓発を進めること。第2点として、当該表示方法について、事業者に対しては、当該表示基準の表現の意味が正確に消費者に伝わるように枠外に追加説明を記載する等を指導すること。
消費者庁におかれましては、このような意見を踏まえ、実施していただくことをお願いしたいと思います。
私からの報告は以上になります。

○松本委員長 ありがとうございました。
最後に、事務局より、今後の予定について御説明をお願いいたします。

≪5.閉会≫

○原事務局長 次回の委員会ですけれども、来週の6月10日(金曜日)15時から行う予定です。
議題につきましては、本日に引き続きまして、「消費者基本計画の検証・評価・監視及び見直しについて」を予定しております。
以上です。

○松本委員長 それでは、本日は予定の時間より若干延長しておりますけれども、これにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)