第30回 消費者委員会 議事録

日時

2010年7月16日(金)15:15~16:55

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 松本委員長、中村委員長代理、川戸委員、櫻井委員、佐野委員、下谷内委員、
 田島委員、日和佐委員、山口委員

【説明者】
 消費者庁 野村消費者安全課長

【事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.こんにゃく入りゼリー事故について
 ○食品SOS対応プロジェクト会合について
  (説明者:消費者庁 野村消費者安全課長)
 ○討議
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:13KB)
【資料1】 食品SOS対応プロジェクト報告(消費者庁提供資料) (PDF形式:294KB)

≪1.開 会≫

○原事務局長 大変長い間、お待たせして申し訳ございませんでした。おわび申し上げます。
ただいまから、第30回「消費者委員会」を開催したいと思います。
それでは、委員長、よろしくお願いいたします。

≪2.こんにゃく入りゼリー事故について≫

○松本委員長 それでは、議題に入りたいと思います。本日の議題は「こんにゃく入りゼリー事故について」です。
こんにゃく入りゼリー事故につきましては、これまでに、6月4日、25日、7月9日の消費者委員会におきまして、関係省庁からのヒアリング及び委員間の議論を行ってまいりました。本日は消費者庁においでいただいておりますので、本日午前に行われました「食品SOS対応プロジェクト」会合の結果等についてヒアリングを行い、その後、委員間で議論をしていきたいと思います。

○原事務局長 お手元、「食品SOS対応プロジェクト報告-こんにゃく入りゼリーを含む食品等による窒息事故リスクの低減に向けて-」(PDF形式:13KB)という5枚、それから後ろに資料を付けているものを、資料としてよろしくお願いいたします。

○松本委員長 報道の皆様から、テレビのビデオ撮りについてフルオープンにしていただきたいという申し出がございました。まだ委員間でコンセンサスがとれておりませんので、申し訳ありませんが、本日も冒頭のみにさせていただきたいと思います。カメラにつきましては、これでお引き取りを願います。

(報道関係者退室)

○松本委員長 それでは、野村課長、お願いいたします。

○野村消費者安全課長 では、資料の御説明をさせていただきます。
消費者庁におきましては本年初から、こんにゃく入りゼリーを含む窒息事故の多い食品のリスク低減に向けての検討をしてきたところでございます。食品安全委員会によるリスク評価結果も踏まえつつ検討してまいりました。
食品安全委員会での答申におきましては、食品における窒息事故リスクというのは人側の要因と食品側の要因が複雑に絡んでいて、今後、データの蓄積が必要だという整理でございました。ただ、こんにゃく入りゼリーにつきましては、かみ切りにくさ、表面が滑りやすいこと、ミニカップに入っているという構造、こういうものが特有なリスクではないかという指摘がなされておりました。いずれにせよ、さらなる科学的知見が必要だとされております。具体的には、食塊の物性に関する調査研究、食品の物性の比較研究、年齢別の事故、食品別の事故、そういう症例の収集等が課題として指摘されてございました。SOS対応プロジェクトでは、こうした指摘も念頭に置きながら検討を進めてきたところでございます。
検討内容の概要でございますが、大きくは3つの検討作業をいたしました。
一つには、窒息事故の詳細分析ということで、消防の御協力をいただきまして、窒息事故による救命搬送の事案の分析をいたしました。その結果、窒息事故が件数として多いものと、件数の中で、特に重症以上の被害につながりやすい傾向のある食品があるのではないかということを分析いたしました。特に子どもが被害者であるケースの場合、重症以上の被害が発生する食品として、こんにゃく入りゼリー、カップ入りゼリー、あめ等、製品としてはスーパーボールなどが抽出されました。また、こんにゃく入りゼリーの事故の場合は、集めたデータの範囲ではすべて重症以上であったということが確認されました。
また、救命救急の内容から、バイスタンダーで応急措置をとれば回復できるのかというところに関しましては、そうではない食品もあるということ。こんにゃく入りゼリーの場合でも、バイスタンダーがいた状況であったにもかかわらず重症以上になってしまった事案が複数確認されました。
2つ目の作業としては、窒息事故の再現実験をいたしました。信州大学に委嘱して、窒息事故の発生過程を解析するという実験をしていただきました。この実験の結果、かみ切りやすさという問題に関しては、多くのこんにゃく入りゼリー、もち、こんにゃく、だんご等でかみ切りにくさが観測されました。また、口の中での滑りやすさを見る試験では、こんにゃく入りゼリー、カップ入りゼリー、豆腐、プリンなどで滑りやすい傾向があること。のどへの詰まりやすさということで、多くのこんにゃく入りゼリー、もち、一部のカップゼリーなどで一たん閉塞状況に至った場合、強い気道閉塞が観察されるという結果を得ました。
また、定性的な考え方の整理ということで、事故情報分析タスクフォースの先生方から御助言をいただいたところでございます。製品の設計開発の場では、これは食品ではない意味での製品ということですが、安全への考慮が前提としてかなり入っていることを参考にするべきではないか。リスクがあるのであれば、販売形態、消費形態、さらに設計開発へと段階的に改善に踏み込むべきではないか。そういう改善というのはメーカーの自主的な改善を期待するべきところがあって、詳しい情報を関係者の間で共有することによって、そうした方向に誘導していくといったアプローチが有効ではないかといった御示唆をいただきました。
これらの検討結果を踏まえて、改めて食品のリスク要因の整理を試みたところでございます。これは人の側のリスク要因もございますので、そこの難しさというのは食安委の答申どおりなのでございますけれども、ここでは重篤な窒息事故、かつ、子どもの事故といったところを中心にリスク要因の抽出を試みたところであります。
大きくは3つございます。大きさに関しましては、子どもの気道(内径約1㎝)から口腔の大きさ(約5.5㎝)に至るまで窒息事故リスクは存在しますけれども、十分にそしゃくされなくても食道へ運ばれるおそれのあるもの、また、口の中に入って弾力性に富んでいて気道の大きさに変形し得る食品、こういうものはリスクが高くなるというリスク要因の抽出が可能なのではないかと整理をいたしました。
物性に関しましては、再現実験に基づいて、一つには、表面が滑りやすいものは吸引時の変形・破断を経ずに気道に移動する場合があること。また、弾力性や硬さが大きい場合、砕けにくくかみ切りにくいことで、気道に移動して完全閉塞が生じやすいと考えられること。完全閉塞に至った場合には吸気による解除は不可能である、といった考え方を整理いたしたところであります。
構造に関しましては、一口サイズで、吸い込んで食べるような構造、こういうものはリスクが高くなると考えられるのではないかという整理をしたところでございます。
こういう問題点を整理した上での取り組みといたしまして、形状・物性に関しましては、本プロジェクトの検討結果からは、多くのこんにゃく入りゼリーについては、重篤な窒息事故につながり得るリスク要因を、複数有していると指摘することが可能という知見が得られたのではないかと整理をしております。
もちろん、この検討結果の解釈につきましては、データ数が限られていること、一定の前提実験の下での試験であることに留意しなければならないと考えております。ただ、先ほどのタスクフォースの考え方でも御示唆いただきましたように、得られた知見の範囲内ではありますけれども、窒息事故、リスク低減を図るには、警告表示や注意喚起にとどまるという従来の取り組みにとどまってはいけないのではないか。商品の形状・物性等に踏み込んだ改善を講ずることが望ましいのではないかと、このプロジェクトでは判断したところであります。
理由としては、一口サイズで、十分にそしゃくしなくても食道へ運ばれる大きさであること、吸い込んで食べるような構造であること、口腔内での滑りやすさ、かみ切りにくさ、崩れにくさ、こうした物性を併せ持っているという特徴があると考えたからであります。
消費者庁としては、早急に、関連する事業者、事業者団体等に対して、上記のようなリスク要因の軽減につながる具体的な改善を促していきたいと考えております。
また、こんにゃく入りゼリーという言い方をしてございますが、こんにゃく入りゼリーの中にも、かみ切りにくさや崩れにくさ等、物性が同じように備わっているわけではない商品も確認できたところでございます。一方で、こんにゃくが入っていないタイプのゼリーであっても、これら特性を兼ね備えているタイプのゼリーも存在しているという認識がございましたところから、今後、こうした物性を併せ持つといった同種・類似の属性を有する新規食品が設計開発されることを考慮して、関連し得る事業者、事業者団体に対しても、広く注意喚起をしていく必要があろうというふうに考え方を整理してございます。
こういう改善要請、注意喚起につきまして、ただ一方的に申し述べるということではなく、関連する専門家の方々、事業者、行政機関等の連携協力が必要だという認識の下、消費者庁におきまして、関係機関・関係者により構成される研究会を設置し、速やかに形状・物性等の改善につながり得る「参考指標」の作成等について、年内を目途に方向性を得るよう検討に着手をすると考えているところであります。
そのほか、注意喚起・啓発におきましても、単なる注意ということではなく、窒息のメカニズム等を詳しく伝えていく、そういう注意喚起を展開していくこと、関係省庁の協力、あるいは地方自治体の協力も得ながら、注意喚起の徹底、あるいは、販売方法の監視等を進めていくという方針を整理・確認をしたところでございます。
別紙といたしまして、詳細分析、救命救急にいただいたデータを整理した概要を付けさせていただいております。重症以上の窒息事故が起きやすいタイプの製品の指摘が可能ではないか、という内容を示したのが別紙1でございます。別紙2は、再現実験の概要を示したものでございまして、吸引試験で崩れにくい性質、破断試験でかみ切りにくい性質、滑動試験で滑りやすい性質、閉塞試験で完全閉塞を生じさせやすい性質、そういう傾向を抽出するために作業をした概要をお付けしているところでございます。
以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの食品SOS対応プロジェクトの報告につきまして、御意見、御質問がございましたら、お出しください。
山口委員、どうぞ。

○山口委員 前回もお聞きしましたし、どうしても納得できない部分があるのですが、それは、消費者安全法の18条の要件につきましては、重大事故の発生、被害拡大が急迫であること、消費安全性を欠いているかどうかという判断の中で、どうも、被害拡大が急迫であることに該当しないという解釈をなさっているように聞こえるのですが、そういう解釈をなさっているのかどうかが一つです。
ただ、17条は、「重大事故等が発生した場合の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除く」というのですけれども、重大事故等が発生した場合において、重大事故被害の発生拡大の防止を図るために必要があると認めるときは、当該商品等を供給、提供、あるいは利用に供する事業者に対し、端的に言えば勧告なり命令なりを出すことができる、こういう条文があります。ここでは、重大事故等が発生した場合ということで、重大事故に限定せずに「等」となっているわけです。そして施行令では、重大事故等という場合には、2条に「当該商品等又は当該役務の使用等において、消費者に窒息その他、その生命又は身体に対する著しい危険が生じたこと」という定めになっています。
そうしますと、私は食品衛生法の改正が早急になされるべきだと思いますが、それまでの応急措置として、どうしてこの17条に基づく勧告がなされないのか。今、お聞きしていますと、これは勧告ではないですね。勧告でなく、事実上の要請のようなものにとどめておられるようですが、どうしてそこにとどまってしまうのか。そこを御説明いただけないでしょうか。

○野村消費者安全課長 17条、18条のお話でございますが、先生の御指摘のとおりの条文の構造でございまして、重大事故が発生して拡大する急迫した可能性があるか否かということに関しては、昨年の9月以降、重大事故が発生して拡大の急迫した可能性があるという事実は、把握していないということがございます。
「重大事故等」という部分で読み切れないかという部分に関しても、先生の施行規則の引用のとおりでございます。安全基準に反しているとか、窒息事故が発生したとか、そういう事実の認定を要するという要件の定め方になっているものですから、昨年の9月以降、こんにゃく入りゼリーに関して、重大事故につながるような窒息事故が起こったという事実認定の問題のところで、情報を得ているというふうに申し上げるのは難しいと思っております。
ただ、今回のSOS対応プロジェクトの判断、方向性というのは、安全法の適用可能性を視野に入れてということではありますけれども、事故が起こっている、起こっていないということは、いつか事故というのは起こる可能性があるわけですから、消費安全性を欠いている可能性が高いということであれば、形状や物性の改善を強く促していく。ですから、発動しているや否やと言われれば、発動しているとは申し上げられないのですけれども、それを背景といたしまして、強い形で形状・物性の改善を働きかけていく。事実上、17条を意識した取り組みを今後していくべきというふうに整理をいただいたと思っております。

○松本委員長 確認ですけれども、17条、18条いずれも、昨年の9月1日以降に重大事故等が発生したという要件を欠いているから、その入り口のところで17条も18条も適用できないということを踏まえた上で、しかし、事実上いろいろ要請をしているということですね。

○野村消費者安全課長 はい。

○松本委員長 どうぞ。

○山口委員 条文ではそう読めないと思います。17条は「重大事故等が発生した場合」とあって、その重大事故等とは何かという場合には、窒息、その他、身体に対する著しい危険が生じたということであるわけです。そうすると、2つあって、平成7年からこれまで現実に22件の死亡事故が起こっている。これをもって重大事故が起こったとは言えないのか。露骨に言えば、これからあと1人死んだら発動する余地があるけれども、死ぬまでは発動しませんと。これでは「何が消費者庁だ」と言いたいぐらいの運用であって、これはおかしいのではないか。これが一つです。
もう一つは、現実にPIO-NETの危害情報の中で、幸い命にまで至らなかったけれども、子どもさんののどにこんにゃく入りゼリーが詰まって大変な事態になったということで、ヒヤリハットの情報が現実に出ています。それは、施行令5条の2号の、著しい危険が生じた、その他の著しく異常な事態が生じたというふうになぜ解釈されないのか。繰り返し言いますが、私は、食品衛生法の改正で抜本的に改善するべきだと思いますが、緊急の措置、それまでの間の措置として、なぜそういうことがとれないのかが全くわからないです。どうしてもそこはそういう解釈になるのでしょうか。

○野村消費者安全課長 そこは、立法時の整理としてはそういう整理だと思っております。一方で、憲法上の営業の自由ということがございますものですから、こんにゃく入りゼリーで窒息事故が起こるであろうという推測の中で強い権限を発動することは、要件としてはかなり狭めた要件の置き方だと。現に重大事故が発生したという事実認定は、要件としては必要だろうと思っております。ただ、法律の執行ということでありますと、要件を充足しているかどうかというのは、厳密に当てはめの作業は必要にならざるを得ないと思っております。
大事なことは、法律に当てはまっているかどうかというふうに考えるのではなく、いかにして再発を避けるか、こういう考え方の整理があります。もちろん、消費者庁ができたタイミング、消費者安全法が施行されたタイミングというのは、あるタイミングのとき以降かもしれないけれども、過去にこれだけの事故が起こっていたことも勘案して、こういう制度ができたということを考えて、それを意識しながら事業者に対して強い態度で改善を促していく、そういう御整理・議論をちょうだいしたと思っております。

○松本委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 確認ですが、本日のプロジェクト報告の1ページ、検討経過のところに、「我が国においては、食品等による窒息事故を行政上の課題として取り上げて、必要に応じて規制等を講ずるための制度は存在しておらず、このため、この事案は『すき間事案』という性格を持つものとしても問題点の指摘がなされてきた」と。ここの書き出し部分と、その後に、消費者庁、消費者安全法ができたから云々というのが入っていますが、消費者安全法ができるまでは既存の我が国の法制度上はこんにゃく入りゼリーに対する規制はできなかった、こういう理解でよろしいか、念のために確認したいのですが。

○野村消費者安全課長 そういうふうに理解しております。

○中村委員長代理 そうすると、例えば食品衛生法も含めて既存の法制度はこんにゃく入りゼリーには対応できなかったという解釈は、今でもそのとおりでよろしいのですか。

○野村消費者安全課長 はい、そういうふうに理解しております。

○中村委員長代理 消費者安全法はそういう意味では国会の審議でも、このこんにゃく入りゼリーはすき間事案の大変象徴的な例として議論されて、そのためにすき間を埋める法律として消費者安全法ができた。そうすると、この事案について、国民の健康・生命を守るために対応できる法制度をつくったということなのではないですか。

○野村消費者安全課長 そういうことを目的にした法律だと思っております。

○中村委員長代理 今、山口委員が質問されたのはその先の話だったと思いますが、今回の結論では、消費者庁としては現在ではまだ消費者安全法の適用も難しい、そういう理解でよろしいですか。

○野村消費者安全課長 はい。

○中村委員長代理 今後、先ほど言われた業界関係者等と検討して研究会等を設置するということですが、この研究会ではどういうことをやろうとしているのですか。

○野村消費者安全課長 これまでの警告表示、注意喚起といった取り組みにとどまっていてはいけないというのが判断であります。ですから、形状・物性、そういうものも改善していくべきだという立場をとりましたので、それを促していく。具体的にどういう形状にしたらいいか、どういう物性にしたらリスクが下がるかということはこれからですけれども、それを検討していくことを考えております。

○中村委員長代理 この研究会というのは法の在り方も検討するのですか。

○野村消費者安全課長 いえ、技術論だと思っております。

○中村委員長代理 わかりました。

○松本委員長 櫻井委員、どうぞ。

○櫻井委員 山口委員の質問に関連しているのですが、消費者安全法の17条、18条について、何か使えないだろうかという問題意識での御質問だったかと思いますが、これは罰則もついておりますので、法律制定後のことで対応しなければ、もしそういうことを含めた上で行政措置をとったとすると、相手方が訴訟を起こせばそれは行政が完全に負けてしまう。言い訳する余地がないと考えられますので、議論としてはそんなところで突っぱるのはあまり意味がないといいますか、法律論として成り立たないと考えられますので、そこから出発していただきたいというふうに思っております。
それで、少し頭の体操も含めてなのですが、立法論としては、例えば17条、18条のようなものは、たとえ罰則を外して完全に行政処分だけの世界にしたとして、そういう場合には、遡及的に使われることについて一切認められないと考える必然性は恐らくないだろうと思っております。要件設定のところで、状態的な危険といいますか、危険な状態が継続して存在しているというところを前提としてある種の措置ができるようにすることは、実はあり得るのではないかというふうに思うのです。特に、あまりいい議論ではないけれども、昔の議論ですと、行政刑罰の場合には構成要件が白地でもいいというか、そういう立法例も実際に存在していたわけです。
それがいいかどうかというのはわかりませんけれども、そこのところは、通常の刑法の理論と、通常の法律による行政の原理から来る予測可能性を確保するというところも、リジッドに語られ過ぎているところもあるようで、理論的にも、例えば、これは制度上の勧告ということになりますが、勧告にとどめるならもう少しやりやすいかもわからないし、場合によっては命令みたいなことはあり得るのかもしれない。あるいは、具体的な措置もあり得るかもしれないということを、ちょっと頭の体操で考えているということで、もしコメントをいただければありがたいということでございます。

○野村消費者安全課長 ありがとうございます。立法当時の議論としましては、要件の定め方として15条と17条・18条を差をつけるという議論だったと記憶しております。15条は罰則はついておりません。15条は1項・2項の通知、その他、消費者事故情報を知り得たときに注意喚起をしていくということになっておりまして、これは発生したときというふうにしてございませんので、昨年の9月より前の事故情報であっても遡及することができると考えております。
ただ、15条と17条・18条の間で罰則等とのリンクをとる、とらないということで差をつけたというところはありますものですから、刑罰がぶら下がっているからといっても、そこの中でまた質的な差がつき得るかどうかというところは、済みません、私の理解ではそれ以上のコメントは申し上げられないのですが。

○櫻井委員 先ほどの中村先生の御質問に関連しますが、すき間事案かどうかということの言葉の使い方としましては、ここでは作用法上の公権力の行使を念頭に、すき間事案であるということで一応セットされているという理解でよろしいのでしょうか。「必要に応じて規制等を講ずる」ということで「等」が入っていますが、これは何が入るのでしょうか。

○野村消費者安全課長 前段はそのとおりでございます。個別作用法に基づく権限の行使ということです。設置法で読むということになりますと、すき間はあいていないというのが建前だと思いますので、個別作用法に基づく措置ということだと思います。
措置等の「等」は、済みません、ちょっと失念いたしまして、確認して、もう一度御報告させていただければと思います。

○松本委員長 先ほどの櫻井委員の御指摘だと、17条に基づく勧告は、これに従わなくても罰則がないから、少し遡及的適用をしても耐えられるのではないか。従わないからといって命令まで出してしまうとだめだけれどもと、そういうことですか。

○櫻井委員 いえ、現行法についてそういう趣旨で述べたのではありません、あくまでも立法論というか、アイデアの次元です。新しい時代になって新しい発想で考えるなどということはなかったと思います。あくまでも現行法の勧告はそういう使い方はできないという前提でつくられているという理解でございます。

○松本委員長 どうぞ、山口委員。

○山口委員 今の櫻井さんの考え方は間違っていると思います。罰則についてはそうです。遡及処罰はできないのは当たり前ですが、行政的な17条の勧告をするについては処罰規定はないわけです。現実に消費者庁の責務として事故の防止はあるわけで、しかも、先ほど申し上げた施行令の5条の2号では、実際に死亡事故が起こらなくても、著しい危険が生じた場合には「重大事故等に当たる」という規定があるわけです。
私はなぜそれにこだわるかというと、昨年の5月22日の参議院の「消費者問題に関する特別委員会」の質疑でも、石井みどりさんが、ミニカップについて発売が続行されるのかどうなのかという質問をされたのに対して、当時の増原内閣府副大臣が、現実にこの条文に基づいて発動しますと。正確に言いますと、具体的には、「消費者安全法の15条でありますれば、まずは情報収集したものを注意喚起情報として公表する。さらには、事業者に対する勧告というのが17条にありまして、注意喚起表示を添付する、添付する仕方までこちらが指示をするということになると思います」と、現実に国会答弁でもそういうのがあるわけです。
だから、なぜそういう形で消費者庁ができる前に議論されたことがないがしろにされるのか。そこが私は全く理解できないし、櫻井委員がおっしゃっているような解釈がなされるならばそれは間違いだと思いますが、その辺はどうですか。勧告は過去の問題についても十分なされる余地があるし、現実にヒヤリハット情報でのどに詰まったという通報があるわけですから、過去にさかのぼらなくても現実にあったということで、勧告にするということは十分あり得ると思います。にもかかわらず、なぜなされないのか、全く納得できないです。

○野村消費者安全課長 重大事故だけではなくて「重大事故等」ということですので、著しく危険な窒息に至らしめるような事実の認定ができれば、それは、要件としては該当しているという解釈は可能だと思います。いわゆるヒヤリハットという情報の取り扱いの難しさということかと思いますけれども、要件に該当しているという事実認定ができているかというと、事実認定ができていないということだと思いますが、事実認定ができれば発動することに何らちゅうちょすべきではないと思います。

○松本委員長 どうぞ。

○櫻井委員 あまりよく理解できていないかもしれないのですが、間違っていると言われると困るわけで、まず、罪刑法定主義だけではなくて、罪刑法定主義を包含するより大きな原理原則として「法律による行政の原理」があります。そこでは、法律が制定された後でなければ当該法律は遡及的に適用されないというのは大原則であり、これは自由主義の問題ですから、憲法論ということになります。
17条と18条に関して、あと、施行令の5条の2号とおっしゃいましたが、これは重大事故等に該当することとなる要件の話であって、17条、18条の発動要件は「重大事故等が発生した場合において」ということですから、これは特段矛盾しているわけではない。その後どうなるのかということが権限発動の要件としてセットされているということなので、どこが間違っているのかよくわかりませんし、もし、おっしゃるような解釈を施行令についてどなたかがされているのだとしますと、そもそも施行令がこの法律に反しているということになりましょうし、誤った法解釈はそちらではないかなというふうに思います。

○松本委員長 ほかに、御意見、御質問ございませんか。
下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 ちょっとお伺いしたいのですが、先ほど、重大事故等の中にはヒヤリハットも含まれるということをおっしゃられたかと思いますが、違いますか。そのように私は受け取ったのですけれども、私の解釈の違いでしょうか。

○野村消費者安全課長 被害が現実化していない状況であっても、読み得る範囲を入れているという部分が重大事故等の「等」というところです。その等というところは施行規則で定義がありますけれども、事実関係として安全基準に違反しているとか、著しく危険な状況が発生したという事実認定ができた場合には、被害が現実化していなくてもという形になっております。

○下谷内委員 先ほど、事実認定ができていないというような判断でしたが、例えばPIO-NETに入っておりました1件につきましては、後追いすれば事実認定ができるのではないかと思います。先日の会議のときも農水省はそういう事案については御存じないということで、連携をお願いしたのですけれども、その後にヒヤリハットでも「等」に考えられると思ったものに対して、事実認定の仕方をどんなふうにされるのでしょうか。お伺いします。事実認定されていなかったのだろうなと思ったものですから。

○野村消費者安全課長 現在、消費者安全法に基づく通知情報のうちの重大事故情報に関しましては、通知元に御協力いただいて事実確認をする、追跡確認をするということをやっております。ただ、それだけでなかなか大変な件数が職員数に比してというところがありますので、おっしゃられますように重大事故等の部分、あるいは被害の程度の低い消費者事故、さらに消費者事故等の部分、そういうところの事実確認の追跡をする、深掘りをすることができていますかという意味では、そこはできていないです。ですから、御指摘の事案、ヒヤリハット情報というのをよくよく状況を分析してみて、これは重大事故等と解釈し得る可能性があるのではないかという推測をもって現地に行ってみるとか、その御家族に話を聞きに行くとか、そういうことをしたとすれば、事実認定が可能性としてないかという意味では、それは可能性としてはあるかもしれません。

○下谷内委員 しつこいようで申し訳ないですが、こんにゃく入りゼリーということでの案件だったと思います。そういたしますと、これだけ死亡事故があったという前提と、安全法ができまして9月以降の案件ということで、普通だったらば、これは重大事故につながるかもしれないということでもう少し事実認定をされるのではないかと私たちは思っているわけです。ですから、そこのところがよくわからない。
例えば現在消費者庁安全課に事故情報について申請いたしましたときに、商品名がわかるとか、メーカーさんがわかるとか、機械になりますと、家電製品などは型番も全部調べなくてはいけないと、非常に難しい。最初からそれらを出さないと、重大事故として受け取ってもらえないところもあるやに伺っています。そういたしますと、御相談を受けた時点でそれらをすべて伝えるというのは、御相談者の方もできないと思うのです。ですから、後からもう一度事実認定の確認についてはするということを前提に、もう少し広くお考えいただければ、このこんにゃく入りゼリーの1件についても対応できたのではないかというふうに考えます。

○野村消費者安全課長 釈迦に説法かもしれませんが、PIO-NETは非公表の情報であります。ただ、非公表でない、公表できる範囲内でということで、PIO-NETの方から、消費生活センターの所在自体も特定できない形で、PIO-NET情報のうちの危害・危険情報を事故情報データバンクに転載させていただいているという状況であります。それが4月に確認できているヒヤリハット情報の1件ということですので、私どもとしては、その情報は何県で起こったヒヤリハット情報かということは特定できないものですから、その事実関係をなぜ特定化しないのかというところは、そこはそういう前提での情報であります。それを、よりよいシステムに変えていくこともとても重要な議論なのではないかと思いますけれども、現在なぜできていないかというのは、情報の取り扱いに関して、消費生活センターの理解なり御協力をいただいている関係が、そういう関係性の中での情報のやり取りだからということであります。

○佐野委員 今、食品SOSで、こんにゃく入りゼリーを含む食品等ということでずっと検討してきて、ヒヤリハットでこんにゃく入りゼリーの情報が1件入ったにもかかわらず、要するに確認は何もしていないということなのですか。

○野村消費者安全課長 はい。

○下谷内委員 細かいことで申し訳ないのですけれども、少なくとも端末は見られますね。そうすると、どこから上がってきている案件かというのはわかるのではないかと思いますけれども、そういうことがわからないような端末をごらんになっていらっしゃるのでしょうか。

○野村消費者安全課長 私どものところにもPIO-NETの端末は置いていただいていますので、閲覧することは可能ですし、突き合わせることによって情報をさらに追いかけることは取っかかりとしてはございます。
ただ、その情報を特定化して、そういうことがあったということを情報として使えない状態なのであれば、それ以上特定化することにエネルギーを割いても、「要件が満たされている、なぜならば、どこどこでこういう情報があったから」ということが、対外的に使えない情報であれば存在しないのと同じですので、そこのところは、相談情報を外に出さないでというところの一線を越えることは今の段階では難しいかと思っています。

○松本委員長 ただいまのやり取りの前提となることの確認です。消費者安全法の17条・18条の発動要件であるところの重大事故等が、法律の施行後に発生したという1つ目の要件を満たすものとして、例えば現実の死亡事故とか、全治1か月以上の治療の必要のある事故とか、そういうのが発生した場合に限定されずに、ヒヤリハット、つまり、のどに詰まったけれども本人が頑張って吐き出したとか、周りの人が何かして助かったというようなケースが確認できれば、この17条・18条の1つ目の要件はクリアーできたということでよろしいですか。

○野村消費者安全課長 はい。

○松本委員長 わかりました。

田島委員、どうぞ。

○田島委員 一つ、お伺いしたいのですけれども、年内に研究会を立ち上げて検討するとなっておりまして、このメンバーの話でございますが、私の考えでは、日本に窒息事故の専門家というのは一人もいないのではないかなと思うのです。食品の物性の専門家はいますし、口腔外科の専門家はいます。しかし、その両方がわかる専門家というのはいないというふうに私は思います。
そうすると、この研究会を立ち上げてもやたら先延ばしをするだけで、こう言っては何ですけれども、あたかも食品安全委員会の無意味な調査報告の二の舞になるのではないか。食品安全委員会が食品の事故について結論を出したものに対して、いろいろなところから非常に批判があるというのは、結局、安全委員会の中にも専門家がいなかったからあんな結論の報告書になったのだと思います。ですから、本当に年内に結論が出せるのかどうかというのを危惧しているのですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

○野村消費者安全課長 それは、SOSでいろいろ御参加いただいて御助言をいただいた先生方からも、日本で窒息というものをトータルに見ている専門家はいないということ、窒息学というような学問は日本には存在しないというお話はお伺いしております。口の部分の御専門、のどの部分の御専門、のどの部分も気道の部分、食道の部分、声帯の部分等ございます。それらの御知見をつなぎ合わせていく努力をすべしというふうに報告書では書かれてございますけれども、それが簡単な課題なのであれば、もうすでにそれは取り組まれていることだと思いますので、容易なことではないのではないかというのは先生がおっしゃられるとおりかと思います。それにトライするようにという高次の御判断ということですけれども、成算があるのかというところは、最大限努力をいたしたいというところまででございます。

○松本委員長 田島委員、どうぞ。

○田島委員 予想されたお答えでございますが、ということで、消費者庁だけでこの問題を解決するのはやはり無理がある。全日本的といいますか、厚労省、文科省、農水省など、総力を上げてプロジェクトを組み上げて対処していくぐらいの意気込みでないと、なかなか解決できないのではないかというふうに私自身は考えております。コメントです。

○松本委員長 日和佐委員、どうぞ。

○日和佐委員 1ページの検討経過の最初に「必要に応じて規制等を講ずる」と。窒息事故が行政上の課題として取り上げられたことがなかった、それは要するに規制等を講ずるための制度が存在していないからだ、ということが明確に書いてあります。それと、いろいろな調査の結果、窒息事故の中でもこんにゃく入りゼリーのケースは重症になる割合が高いという結果が出たわけです。それに対して5ページ等では、「物性等に踏み込んだ改善を講ずることが望ましいと判断される」というふうに書いてあるわけです。では、その低減策はどうするのかということになると、研究会ということと、その後、(3)で書かれてあるように、今までのさまざまなことの徹底とか要請ということに結論づけていっているわけです。この全体の枠組みを見ると、何らかの窒息事故全体に対して提言をしていくようなルール、規制等については、何も考えていらっしゃらないのかどうか。具体的に言えば、食品衛生法の改正だとか、消費者安全法の運用の拡大や解釈とかについては、一切議論もされなかったのかどうなのかを一つ伺いたいと思います。
要するに要請だとか、研究会に利用者も呼び込んで自主的に改善が図られることが、まさに期待されているのではないかと思われるわけですが、そういうやり方を今までもやってきたわけですね。国センの調査によりますと、農水省の指導にもかかわらず、棚にきちんと表示されていないケースだとか、ドラッグストア等では、きちんと大人用の食べ物という形での分け方がされていないで、子どもが手の届く、子どものお菓子というような形でいまだに売られているということで、行政指導がきちんと徹底されていない、守られていないという現実があるわけです。そういうことがあるにもかかわらず、なおかつ要請や研究会でやっていこうという方針をお持ちになられたということはどういう意味合いがあるのか、私はちょっと理解ができないわけです。もう少し踏み込んで、何らかのルール等について必要であるという判断をされなかった理由を教えていただきたい。
それから、この研究会ですけれども、参照指標と書いてあるのはいわゆるガイドラインをつくるということでしょうか。ガイドラインをつくって業界等で自主的にそれを守っていこうという考え方なのかどうなのか、そこを確認したいのですが。

○野村消費者安全課長 まず、1点目の制度的な検討、立法論をこのプロジェクトで取り上げたかというところは、そこはプロジェクトの射程の外というふうに整理してございます。現行、消費者安全法ですき間事案に対して要件を満たせば権限を発動できると、そういう権能がありますので、その権限を背景としつつ、すき間事案と言われるこんにゃく入りゼリーの問題に関して、今、何ができるかということで検討したというのがプロジェクトの検討の範囲でございます。
2点目の、物性改善のための研究会をやる、それから、販売方法の注意喚起をということの今までと何が違うのかという点であります。まず、1点目の物性の改善に関しましては、これまでも確かに農水省なりは、物性の改善の検討をされたしという行政指導をされていたかと思いますし、それに対応した事業者もあらわれたと思います。
ただ、今回、このプロジェクトで得られたと思っております知見は、食品物性の検討と窒息の現象の結びつけをしていかないといけないと。少しやわらかくしてみました、少し弾力性を落としてみましたということだけではなく、弾力性を落としたときに強い閉塞が発生するのかどうかというのを追試してみる。そういうやり取りを関係者の間でやっていくことで、このぐらいまで成分の比率を落とすとこういう物性になる、だから、のどに詰まってもこういうふうに崩れるというようなやり取りをしていただく中で、今までの物性改善よりも、よりリスクの低減につながる物性改善にまで踏み込めないかということを期待したいと考えているところです。
販売方法につきましても、守らない人は守らないではないかというのは、それはそのとおりかもしれませんけれども、ここでは末尾に書いてございますように、「消費者安全法第23条に基づく権限委任」、これは立ち入り調査等の権限ですけれども、今、自治体の方に権限委任を進めております。これは代表的なすき間事案であって、我々は安全法を背景にしながらこういう取り組みをやっていくので、権限委任をした地方自治体にも、販売状況等の監視に関して御協力をお願いしたいと思っております。要請自体は強制力はありませんし、それに従わない場合に何か手当ができる術があるわけではありませんけれども、実際に監視をすることによって、実効性のある形での要請にしていきたいというふうに考えております。

○松本委員長 日和佐委員。

○日和佐委員 物性や形状については改善していくということをおっしゃっていらっしゃいましたが、それはあくまでも自主的な形でやっていくということで、要するにルール化はしない。ルールがないから、窒息事故全般について低減策がなかったという冒頭の書き出しではありますけれども、それはそれでおいといて、現実にはガイドライン等でやっていくという結論なのですか。

○野村消費者安全課長 ガイドラインをつくるのかという御質問にお答えせず、申し訳ありません。ガイドラインというふうには書いておりません。

○日和佐委員 参照指標というのは、ガイドラインのことではないのかなと理解したのですが。

○野村消費者安全課長 このぐらいの物性であればこういう窒息が起こる、このぐらいの物性であればこの程度の窒息で済む、そういうことを何か参照にできるものをつくり出していきたいということを目的に、この研究会を掲げてスタートするということであります。ただ、このぐらいの物性であればという「このぐらい」のところが、専門家の方々に伺ってわかりましたことは、相当難しい課題、テーマであると現状認識としてはおります。
例えば再現実験の中では、弾力性というものを持ってきて、こういう弾力性のものはこういう気道閉塞を起こすということを再現実験していただいたのですが、弾力性という物差しが、日本国内で決まった物差しがあるわけではないそうです。とがったもので押せば深くへこみますし、平たいもので押せばそれほど深くはへこみませんし、弾力性の物差しがないというところから始まってどういうふうに基準をつくるのかというのは、なかなか容易な課題ではないと思っております。最初から基準をつくる、あるいは、その一歩手前のガイドラインをつくるというところまでは掲げておりませんけれども、ただ、そこにつながっていく、何らかの参照し得るようなものをつくれないかというところをターゲットにしているところであります。

○日和佐委員 日本は窒息事故が多いわけですね。食品安全委員会の調査でも、年間ほぼ5,000名に達するような窒息事故が起きている。窒息事故全体について低減策が一切とられてこなかったのは、規制等ルールがなかったからだという認識が最初に書いてあります。書いてあるにもかかわらず、ルールの創設について何も触れられなかった理由を知りたい。何も触れていないですね。今のような行政指導とか、自主的な基準をつくる形での規制にとどめてしまった理由を知りたい。
それから、3ページの(3)のマル4でも「窒息事故は事件性がないためリスク低減のための検討がなされていない」。これは、こんにゃく事故に限らず窒息事故全体について言及していると思います。したがって、消費者庁がそこを積極的にやらなければいけないという記述になっています。こんにゃく入りゼリーに関して、今までも行政指導等では一定やられてきたわけですけれども、それが功を奏していたとは言いがたいわけです。なおかつ、窒息事故全体を低減するには規則がないということを明確におっしゃっていながら、結論的にはそこについては何も触れられていないわけです。新しい何らかのルールをつくる、法制度を改正する、食品衛生法を改正することについては何も触れられていない。それはどうしてなのでしょうかということです。

○野村消費者安全課長 このプロジェクトで取り組みましたのは、こんにゃく入りゼリーをはじめとする窒息事故のリスク低減策を具体的に検討してみようということで、検討をいたしました。いろいろな窒息事故の事例を集める、実験をするという中で、食品側の因子として、特に高いリスク要因を帯びているという指摘ができ得る食品、物性・形状、構造があるのではないかという結論を得ました。ですから、食品の中には、消費安全性を欠いていると疑われる食品が存在しているのではないかというところまでたどり着いたというのが、このプロジェクトの結論です。もしそうであるとすれば、そこから先は当然、議論としてあり得ることだと思います。
翻って窒息事故に関しまして、何ら行政上の課題として取り上げられてこなかったという現状は、それは、取り上げる必要がないという認識の上に立っていたからだと思います。窒息というのは食品の側の因子と人の側の因子が複雑に絡み合うということですので、基本的には食育の問題、気をつけて食べる、そういった問題として今まで取り上げられてきたのではないかという推測が成り立つかと思います。気をつけて食べる、よくかんで食べる食べ方を小さいときからしつけるという問題であるとすれば、それは規制を講じる云々という問題ではない、という位置づけだったのではないかと思っております。
ただ、このプロジェクトを通じて食品側の因子を解析したときに、安全性を欠いている、そこはもう一段、つくる側で考えてもらわないといけない。そういう要因を取り出し得るのではないかという知見を得たことは、先生おっしゃっていただきますように、それならばそういうところの取り出しをして、どうするかという制度論も、今後は視野に入れていかなければいけない課題になるだろうと思っております。

○松本委員長 どうぞ、川戸委員。

○川戸委員 ここのところちょっとお休みをしていたので、確認させていただきたいのですけれども、すき間事案というのがそもそもあって、これが非常に問題になっていた。だから消費者安全法ができた、ということですね。そうすると今回の件は、新法をつくるとか、食品安全法を改正するとか、または食品衛生法の改正とか、そういうことは一切考えていないで、先ほど山口委員がおっしゃったように、この範囲の中でできる、そのままでやると、消費者庁としては考えていらっしゃるのでしょうか。

○野村消費者安全課長 まずは消費者安全法という新しい権限を創設して、ミッションとして担っておりますので、それを発動すべきときには直ちに発動するということですし、発動の要件を満たしていなくても、それを意識して少しでもリスク低減をするための取り組みを推進していくということだと思います。それ以上に、先ほどの日和佐先生のお話にもありますように、さらにもう少し大きいスコープを持っての議論は、今後、視野に入れていかなければいけない御議論かとは思いますけれども、このプロジェクトでそこまでしたのですかという御質問に関しては、そこまではまだ、なかなか力が及んでいないというのが正直なところであります。

○松本委員長 先ほどのお答えの中で、日本には弾力性の基準がないということをおっしゃいました。これは、食品についてはないということなのか、食品以外の工業製品、例えばプラスチックといったものについても、弾力性については日本には一切ないという御趣旨ですか。どちらですか。

○野村消費者安全課長 正確にお答えできるかどうかあれですが、世の中に全く参考にし得るものがないという状況ではないと思います。一定の面積当たりに、重力との対比で掛けた加重で率のようなものを出す単位は世の中に存在していると思いますので、およそ世の中に参考にできるものがないとは思っておりませんけれども、食品のこの物差しの当てはめに関しては、関係者の方々から、もう少し何かしないと、これでは理解が得られないというコメントはいただいております。

○松本委員長 こういうことをお聞きした趣旨は、食品の世界だけで窒息の問題を見ていると答えが出てこないのではないかと考えているからです。この報告書の2ページでも、12歳以下の子どもが被害者である場合のケースとして、食品以外に、製品としては「スーパーボール等」と挙げられているわけです。スーパーボールは食品ではなくておもちゃです。
そして、4ページではアメリカのことが引用してあって、アメリカのCPSC(消費者製品安全委員会)というのが出てまいります。これは食品の安全を担当している役所ではなくて、日本で言えば経済産業省の製品安全ユニットに当たるわけで、今は消費者庁も一部入っておりますけれども、製品の安全確保を任務とする役所です。食品も製品ではないかと言われると困りますが、食品ではないところの製品についての安全確保の基準をつくっているところで、アメリカでも食品についてはFDA(食品医薬品局)が一義的な責任を負っているわけですが、こんにゃく入りゼリーの輸入禁止の措置をとったときには、FDAとしては自分たちだけで十分な判断を下すだけの知見の蓄積がなかったようで、このCPSCの協力を得て一定の基準をつくった上で輸入禁止にしたと聞いております。
ということは、従来の食品の世界だけで考えていると答えが出てこない。よくかんで食べましょうとか、注意深くとか、親がきちんと見ていればいいでしょうという次元に還元されてしまうケースが多いわけですが、そうでないところのおもちゃ等の世界で考えれば、必ずしも「よく注意して」というだけでは終わっていないということです。日本にはおもちゃの部品のサイズについての強制的な基準はありませんが、国際的には、アメリカとか、ISOでいくつか基準をつくっているようであります。サイズ等について、子どもののどに入らないぐらい大きくするか、入ったとしても胃袋まで落ちてしまうぐらいに小さくするか、構造上どちらにもできない場合については、万一のどに詰まったとしても気道確保ができるような穴をあけるとか、そういった基準があると聞いております。
おもちゃ等の製品についてのそういう知見を、今後、こんにゃく入りゼリーについての参照指標をつくる際にも十分に取り入れていただきたい。つまり、食品の専門家だけを集めるのではなくて、おもちゃ等の製品安全の専門家も入れて考えるべきではないか。極端なことを言えば、こんにゃく入りゼリーの形をしたおもちゃ、そういうスーパーボールのようなものができたとして、弾力性も同じぐらいだし、その他、のどに入ったときにペタッと粘着するのも全く同じだとして、それはもともと食品ではないから、口の中に入れるというのは本来の用途ではない。口の中に入ること自体、メーカー側としては意図しない用途だけれども、それでも子どもはそういうことをしがちなんだという大前提で、そうなっても危険にならないような製品開発をしなければならないということで世の中動いているわけです。そういう考え方を食品の中にも取り入れる観点から、参照指標づくりを積極的にやっていただきたいと思います。これは、強制力のない基準なので、それを各事業者が参照して使ってくれることを期待するしかないわけですけれども、何もないよりははるかにいいわけですから、いろいろな知見を動員して、多くの人が納得できるものをぜひつくっていただきたいと思います。
ほかに、御意見、御質問はございませんか。

○櫻井委員 コメントのような感じになりますが、消費者安全法自体はなかなかおもしろい法律で、いろいろな意味で興味深いのですが、いわゆるすき間事案的なものがあって、そういうことについて安全法で一定手当をしたということだと思います。事案が発生して、どういうふうに対応するかというところについての事後的な対応について、安全法で各省庁の権限を前提としつつ、消費者庁でも対応できるようにしたものだと思いますが、問題は、事前規制のところでなおすき間的なところがあって、そこを引き受ける法律もないし、規定が欠けている部分がある。それから、どういう省庁がやるのかということで、多分そこの問題が顕在化していると思うのです。
そういう場合、法的にどうやって対応するのかということを考えたときに、食品衛生法の話ばかり出ているのですが、いきなりそちらに飛びつくのもどうかと私は思っておりまして、事務局でつくっていただいた外国法の資料をざっと見てみますと、基本的には包括規定のようなところから入っていて、それでアドホックに対応できるところがあるのかなというふうに理解しています。そうしますと、単に物性とか形状という形で決め打ちでやるということも、もちろん、結果としてはあるけれども、足りないのは食品安全法のようなもので、事前規制のすき間を埋めるような一般的な規定を持っている法律が多分ないということが問題なのです。食品安全基本法というのがありますけれども、これがなかなか名前と合っていないところがあって、その辺りの対応が可能性としては考えられてよろしいのではないかというふうに思います。
それから、新しい組織をつくるとかいうとまた大ごとになりますけれども、もし本気でそういうことをやるのであれば、そういうところに最終的に集約する形で、体制整備も含めて対応していくことはあり得る選択肢なのではないかと思いますが、何か消費者庁でそんな問題意識をお持ちかどうか。伺ってもしょうがないかなという気がするので、持たれたらよろしいのではないでしょうかということで意見とさせていただきます。

○松本委員長 ほかに、御意見、御質問はございませんか。

○中村委員長代理 今回のSOSプロジェクトの報告書を読みますと、大変丁寧に危険性を調べられて、読めば読むほど複数のリスク要因がいっぱいあって、今の形状、今の物性のままでは、通常有すべき安全性を欠いているという判断がこれだったらできるのではないかと思います。今、適用法令のことで忸怩(じくじ)たるものはあるかもしれないけれども、当面、今の形状・物性の製品はいっぺんやめていただいて、その上で、今言われている研究会での検討をやるという方法はとれないものでしょうか。これを読んでいると、私たちも実際に自分で口に入れてみてその危険性は実感するわけですけれども、大人でも怖い。そういうもので、通常有すべき安全性は欠いていると言えるレベルに現在では達していると思います。
そういう意味で、当面、「業界の皆さん、今の形状・物性のものはやめて、その上で研究会でさらなる製品改善を検討されてはいかがでしょうか」ぐらいは言えないのでしょうか。そうしないと、明日にでもまた同じ事故が発生する。ヒヤリハットの報告がすでに事故情報データバンクに入っているとおっしゃっていますが、今はまだ1件かもしれないけれども、どんどん増えるかもしれない。そういう状態で、「現在のミニカップ入りこんにゃくゼリーの形状・物性のものは、皆さん、いっぺんちょっとやめていただけませんか」と。ほかの形態のものは全然構わないわけです。事故が起こっているこういう形式のものはいっぺんやめて、その上でみんなで検討しませんか、ということは言えないのでしょうか。

○野村消費者安全課長 先生に改めて申し上げるまでもないかもしれませんけれども、消費安全性の判断といたしましては、商品の特性、通常予見される使用方法、その他、商品の特性を考慮して、それでもって通常有すべき安全性を欠いているや否やという判断の仕方だと思います。このこんにゃく入りゼリーという食品が、成分なり何なり、ダイエットや健康食品として非常に人気があって、それをだれが食するかというと、主として比較的若い成人が前提になっている中で、食事の仕方もありますけれども、子どもや御老人が窒息を起こすという現象が起こっている状況だと理解しております。当該食品の通常予見される食され方の範囲内において、安全性を欠いているとまで言えるのかどうかというところは、判断としてはなかなか難しいものがあるかと思いますが、我々としては消費安全性を欠いている可能性がかなり高いという方向性は得たと思っています。
ただ、この製品は欠陥製品であると消費者庁として認定したのかというと、そこは、子どもが食べられないような形にすればいいのかもしれませんし、こういう物性、こういうもちもち感というのを、およそ世の中から排除しなければいけないというところまでの判断には至ってはおりません。かなりの程度、消費安全性を欠いている可能性があるという考えに基づいて、形状や物性の改善まで踏み込むよう促していきたいと考えております。

○中村委員長代理 先ほども説明されたように、警告表示で対応できる問題ではないという認識はもう出たわけですね、言われたように。では、子どもが食べないようにするというのはどういう方法でやるか。今、子どもや老人に食べさせるなという表示は確かにあります。だけど、基本的にこれはお菓子なんですね。一番お菓子を食べる子どもや老人にお菓子を食べるなと言うのは、お菓子を売っておいて言うことではないと思うのです。車を売っておいて、この車は危険だから運転しないでくださいと言うのと同じなのです、言っていることは。そこを、法的になかなか言いにくいかもしれないけれども、行政指導的に一たん、今の形状・物性のものはやめた上で、製品の改善を業界の皆さん検討してくれませんかと、こういうメッセージにどうしてできないのかと思うのですが。

○野村消費者安全課長 そこは、通常有すべき安全性の判断の難しさということはありますけれども、消費者庁としては安全の立場に立って解釈なり運用に努めるべきだと思いますので、物性なり形状の改善に踏み込むところまで、事業者なりにテーブルに着かせる努力をこれからしていきたいと思っております。現在、販売してはいけない、このタイプの商品は市場に流通させてはいけないという権限を発動することは、限られた知見の範囲では困難だと思っていますけれども、得られた知見の範囲内では、消費安全性を欠いている可能性が相当程度あるというふうに判断いたしましたので、実質的な改善につながる取り組みをスピード感を持ってやっていくということだと思っております。

○佐野委員 今、「通常予見される」という言葉が出たのですが、これが食品ではなくて消費生活用製品だった場合、もう22人の方が亡くなって、それ以上の件数の事故があるということは、すでに通常予見される誤使用と言えると思います。そのときには、きちんと危険性を取り除くことが当たり前だと思っています。先ほど委員長もおっしゃったように、食品だけれども、今回の場合は製品という他の視点からものを見ていかないと、この問題は解決できない。
私は、中村委員がおっしゃったとおりだと思っていまして、これをこのまま続けて今年の暮れにどんな結果が出るのですか。今の状態を続けていくこと自体に何も疑問を感じないということに、非常に疑問を感じます。そして、これから何が起こるかわからないということに関しては非常に危惧を持っております。それをわかっていながら、なぜできないのか。今、この瞬間に事故が起きるかもしれない製品を、市場に置いておくということはあり得ない。例えば新しい硬さなり大きさなり、何か基準ができるならば、それまでの間はやはり販売をやめていただきたい。それが、消費者のために本来行政がやるべきことではないかと私は考えています。その辺りをぜひ検討していただきたい。
今年の暮れまで研究を進めるとのこと。私は、この研究自体もどんどん迷路に入っていくような気がするんです。そうではなく、消費者のためにどうしたらいいのか。子どもと高齢者、特に配慮しなければならない人たちなのに、その部分だけ取り除いて、若い人たちだけおいしく食べればいいんですと、そういう社会を望んでいないと思うのです。配慮しなければならない方たちのことを中心に考えた社会をつくるということに関して、やはりきちんとそれを検討していただきたい。この硬さがだめだったら、クラッシュタイプも、ほかの形もあるわけですから、それがどうしてできないのか。私は再度聞きたいのですけれども、答えはわかっていますから、日和佐さんに発言をお渡しします。しかし、そこをもう一度じっくり検討していただきたいと思います。

○松本委員長 日和佐委員、どうぞ。

○日和佐委員 できないのも、それから、問題視されていながら事業者が売り続けているのも、やはり根拠法がないからであるということに結局は行き着くのではないのかなと思っています。ですから、やはり根拠法をつくっていかなければ無理だなということが一つ言えるのではないかと思います。
ただし、食品衛生法の改正であろうと、新しい法律であろうと、新しいルールであろうと、つくるには時間がかかるわけです。その間、事故が起こらないように消費者庁は万全の努力をしていただきたいということと、全く別の視点から見ますと、この業界の実態は、聞くところによりますと、お菓子メーカーはこんにゃく入りゼリーの分野から撤退した。そして、こんにゃく入りゼリーの7割を占めているのは1つの事業者であると。その事業者がクラッシュタイプも出しているわけですけれども、なぜ全部クラッシュタイプにしないのかというと、クラッシュタイプの方が価格が高いわけです。消費者は簡単に買えない。要するに全部クラッシュタイプにすると売りにくいわけです。業界の実態を見れば、そういう事情があってやり続けていると私は思っています。
そういうことを思うと、これはある意味では事業者の経営姿勢の問題でもあると思います。ですから、これは外からは強制できないわけです。消費者が言うよりほかないわけですけれども、いわゆるコンプライアンス経営、あるいは社会的な責任ということに関して、きちんとそれを経営の中に取り入れているかということが問われるわけで、それは一切ないとしか言えないわけです。ですから、事業者の経営の在り方が非常に問題になってくるわけで、そこは業界として何とか自覚をしてほしい。事業者もしっかり自覚をしてほしい。コンプライアンス経営、CSR経営にのっとった経営をしなくてはいけない。要するに、ルールがないからいいではないかという経営をしているということです。そういうことは社会的にも問われるべきだと、これはルールとか何とか、今までの議論とは全く別の視点で考えればそういうことも言えると思います。

○松本委員長 今の日和佐委員のお考えだと、このゼリーをクラッシュまでしないにしろ、例えばあらかじめ4等分に分割して入れておけば、あわてて飲み込んでも今のような形でまるまる詰まることにはならない可能性の方が大きいですね。ただ、4等分した形でミニカップに入れるとなると、その分の生産ラインは相当複雑になってコストがかかるから、それよりは単純な方が安く生産できるとメーカー側としては考えがちである、そういう御指摘ですか。

○日和佐委員 そうです。

○松本委員長 どうぞ、下谷内委員。

○下谷内委員 ちょっと教えていただきたいのですが、私の解釈が間違っているのか、そこまではできないということなのかもしれませんが、4ページのところで、「本プロジェクトの検討結果からは、多くのこんにゃく入りゼリーについては、重篤な窒息事故につながり得るリスク要因を複数有していると指摘することが可能との知見が得られた」、ここの文言を18条のここに当てはめることはできないのでしょうか。「その原因を同じくする重大事故等が発生する急迫した危険がある」と。3つの要件の中の1つですけれども、ここの中に入れるということは、実際に起こった事故ではないから、テスト結果だけだから、これはできないのですか。無理に読み込めばできるのではないか。なぜこういう試験をしたかというのは、明らかに事故が起きているか、危険性があるからで、それの裏付けをするということで出されたものだと。そうすると、ここに読み込めないのかなというふうに単純に考えたのですけれども、いかがでしょうか。

○野村消費者安全課長 御指摘の要件の部分は、拡大可能性のところにかかっている要件だと思います。被害が拡大する急迫する危険性があるということですので、そこの解釈としては、例えば特定の領域でプロが使うものとして流通している製品というようなことであれば、危険性が高い製品であっても、流通に関して、停止あるいは改善措置ということは当てはまらないと思いますけれども、一般に広く流通しているものであれば、拡大に関して急迫した危険性があるという解釈になると思っております。
ここの御引用いただいた部分に関しましては、3つの要件のうちでは消費安全性の解釈の部分にかかわると思います。可能性があると指摘し得る知見という回りくどい言い方をしていますのは、御指摘のように限られたデータだからということですが、消費安全性を欠いている可能性が相当程度高いのではないかという解釈に関しては、ここの部分は、おっしゃられるように該当している可能性があるのではないかと思っています。

○松本委員長 どうぞ。

○下谷内委員 今の該当している可能性が高いということで、可能性が高いと言われたら何とも言えないのですけれども、可能性の問題としてこれをされたのだと思います。そうなれば、この18条をもう少し柔軟に解釈できないのかなというふうに思ったものですから。

○松本委員長 先ほどの確認ですが、施行後に重大事故が発生したか、あるいはヒヤリハットでもいいということでしたから、死亡等には至らなかったけれども、窒息事故が起こって助かっていたという事実の確認ができていれば、入り口の1つ目の要件は満たします。ところが、現段階ではヒヤリハットはデータとしては上がっているけれども、確認はできていない。そもそも入り口のところの第1要件をクリアーできていないから、第2要件、第3要件を議論するまでもなく、この条文は適用できないということだと思います。ですから、ヒヤリハット等のデータをきちんと確認して、こういう状況でこうなったんだということが明らかになれば、1つ目の要件はひょっとしたらクリアーできるかもしれないので、その次の段階の拡大可能性があるかどうかという点の評価に入っていくのだろうと思います。

○下谷内委員 確かに3つの要件がこの法律の中では必要であることはわかっておりますが、このテストをされたものからいきますと、もう少し解釈を柔軟にできないかなというふうに思ったわけです。

○松本委員長 どうぞ。

○佐野委員 事故情報のことですが、私は何回も申し上げていますけれども、食品の事故情報の収集の仕方をきちんと構築してください。それから、ヒヤリハットのこの1件、PIO-NETに上がっている事故ですけれども、その事実確認をしていないと聞いて私はびっくりしました。最初に山口委員がおっしゃったし、今、下谷内さんがおっしゃっているようなことで、入り口から入れない。事実確認さえしていないのに、入り口から入れませんというのはあまりにもひどい。きちんと事実確認できるような体制を整えてください。
それから、PIO-NETは、どこで起きた事故なのか、その情報が入りませんとおっしゃっておられましたけれども、今、SOSでこんにゃく入りゼリーを扱っているのだったら、この情報がほしいのだときちんと説明して、自分たちで行き着けるところまで行き着く、そこまでやっていただきたい。もしできないのだったら、できなかった、ここまででしたということならわかりますけれども、最初の御報告にあったように、これはどこであったかわかりませんと。それではだれも納得できないと思います。ぜひ、食品の事故情報に関してはきちんと情報収集をして、対応していただきたいと思います。

○野村消費者安全課長 説明が足らなかったようであれば、済みません。事実確認をしたくない、さぼっているということではありませんで、相談情報の取り扱いが現在そういう状況になっている。相談者の個人の特定なり何なりにつながらないようにという取り扱いになっているものですから、あの手この手で調べに行って、聞きに行ってということはできなくはないのですが、その情報の存在を「存在している」というふうに言えない情報であれば、確認をしても要件の当てはめのために使えない情報ですから、そこの壁は乗り越えることができないのが現状だということであります。
ただ、全体のお話としての食品の事故の収集にもっと力を入れるべきではないかということは、誠に重要な御指摘だと思いますので、よく受けとめて持ち帰りたいと思います。

○佐野委員 PIO-NETの情報というのは、行政機関の間では一般よりも詳しく見られるはずだと思います。その辺りも、もう一度確認していただきたいと思います。

○松本委員長 1点、5ページの最後の部分について確認ですが、「販売方法の監視・改善要請」というタイトルで、「消費者安全法第23条に基づく権限委任を進めている地方自治体等の協力を得ながら、販売方法の監視を実施、必要に応じてさらなる改善を要請」と書いてあります。この安全法第23条による自治体への権限の委任の中で、販売方法の監視とかいうのはそもそも入っているのですか。なぜ23条がここに出てくるのか、よくわからないのです。自治体に対して協力をお願いするのはいいことだと思いますが、消費者安全法上の根拠がありますか。

○野村消費者安全課長 直接ではないと思います。立ち入り調査等の権限をすき間事案に関して自治体の方に委任してございますので、すき間事案であって何らかの措置を消費者庁でとるときに、それに自治体の御協力をいただくというのが23条の権限委任ということで、先ほど来のお話のように17条等の権限を発動しないという状況において、直接的に自治体の方は23条でやっているということにはならない。ただ、すき間事案に関する立ち入り調査等の権限はすでに自治体はお持ちですので、「その権限を背景として」と、そういう意味合いにとどまると思っております。

○松本委員長 「背景として」ということですと、消費者庁も17条・18条を背景として、法律上のことではないけれども、こういう要請をしているということになるわけですね。

○野村消費者安全課長 そういうことであります。

○松本委員長 わかりました。
ほかに、御意見はございませんでしょうか。
委員の皆様の御意見として、特にSOS対応プロジェクトの最終的な報告について、ここが反対だとかいうような御意見はほとんどなかったと思います。むしろ、ここに書かれていることをもっと積極的に進めてほしいという趣旨だったと思います。その積極的にということの中には、例えば参照指標について、つくるのは難しいかもしれないけれども、いろいろな知見を動員して、特に製品安全の知見も使ってぜひ実現していただきたいということ。それから、形状・物性等の改善を促するということの中に、もう少し事業者のCSR的観点を取り入れて具体的な形で指導ができないかという御意見。
それから、最後の監視等に絡んでくるのでしょうが、事故情報をきちんと収集して追跡調査をする体制を、特にこの点では地方公共団体の協力は大変重要だと思いますから、そういったネットワークをうまく使って、本当に事故がないのか、実はあるのか等について、今後ともきちんと情報の収集、分析を続けていっていただきたい。この報告に対してさらにこういう点にも配慮して実行するようお願いするという御意見があった、というふうにまとめさせていただきたいと思います。
それでは、消費者庁におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。消費者委員会といたしましては、引き続きこの問題について議論をしていきたいと思います。

≪3.閉 会≫

○松本委員長 最後に、事務局より次回の日程について御説明をお願いします。

○原事務局長 次回ですけれども、次回の委員会は7月23日金曜日の15時からになります。議題については改めて御案内を差し上げたいと思っております。
なお、当日、それから、その次の消費者委員会では、委員会の終了後に消費者団体などとの意見交換会を行う予定にしております。
事務局からは以上です。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)