第44回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年7月14日(金)16:00から17:50

場所

4号館8階 消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、河野委員、後藤準委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会 河上委員長
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、廣瀬消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型
  3. 困惑類型の追加
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 そろそろ時間となりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会第44回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用によりまして柳川委員が御欠席、山本和彦委員が遅れて御出席との連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の下部に配付資料一覧をお示ししております。不足がございましたら、事務局までお声掛けをよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型≫

○山本(敬)座長 本日もよろしくお願いいたします。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。

本専門調査会に残された時間も限られてまいりましたので、最初に進行について御相談をさせていただきたいと思います。本日は、まず議題になっています「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」と、「困惑類型の追加」とを大きく2つに分けて検討したいと思います。

その上で、各論点について消費者庁から御説明をいただいて、質疑応答については、さらに各論点において消費者庁から提案されている2つの類型をそれぞれ分けて御検討いただくこととしたいと思います。

また、「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型の論点」の資料中には、第40回において山本健司委員から御提案いただいた規定案の取扱いに関する記載がありますが、この点については消費者庁より提案された合計4つの類型を御検討いただいた後に、最後に御検討いただくという形で進行させていただければと思います。

以上のような進行について、御意見がありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

ありがとうございます。では、そのような形で進めさせていただきたいと思います。

それでは、消費者庁より資料1の御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、早速資料の御説明を差し上げたいと思います。

まず資料1の1ページからでございますけれども、「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」を記載させていただいております。

1ページ目は、前回の資料内容等をまとめたものでございます。

2ページ目の「2.検討」というところから今回の検討をお伝えしてございます。

まず(1)ということで、「消費者の不安を煽る告知」について記載しております。第40回では、「合理的な理由もなく過度に強調して」という要件を明示するということを御検討いただいたところでございますが、このような要件に照らして考えた際、どのような事例が対象となるのかという点について御指摘を頂戴していたところでございます。

2ページから3ページにかけて、その際に御検討いただいた事例を再掲してございます。

3ページで、まず事例1-2について「今やらないと後悔する」、あるいは「このままだと出遅れる」という告知によって取消しの対象となるのかということで疑問をいただいてございました。

この事例につきましては、事例1-1と同様にいわゆる就職セミナー商法の例として示したものでございまして、就職に不安を抱えた学生がターゲットとされていることが前提となっております。そのような状況において、「今やらないと後悔する」等の告知があった場合には、その告知内容は、契約を締結しなければ消費者の抱く不安が現実化するということを含意したものなるものとして捉えたものでございます。

次に、事例2-1と2-2についてでございます。これらも同種の事案として2つの例を挙げていますが、いずれも事前に頭髪診断を行っているということでありまして、その結果を告げるということが取消しの対象になるのかという御指摘をいただいていたところでございます。

確かに、実施された頭髪診断及びその結果に基づく告知というものが、一定の信頼性のある根拠、知見に基づいた結果であるという場合には取消しの対象とすべきものではないと考えられます。

しかし、当該事例における事業者について見ますと、実際に実施されていたのは頭髪診断と申し上げましても医師ではない者が頭皮を顕微鏡で拡大するといった程度にとどまるものがうかがわれます。したがいまして、「毛髪が生えなくなる」というような告知についてはこれを正当化する理由がない場合であるということを前提としたものであります。

4ページからは、そうした事例への当てはめ、切り分けも念頭に置いた上で、再度規定の在り方を検討させていただいているものでございます。

まず(ア)というところでございますが、先ほどの事例の中でも御説明させていただきましたように、一定の信頼性のある根拠、知見に基づいた分析、判断の結果であると言えるような場合は取消しの対象とするものではないということでありまして、この点は第40回でも「合理的な理由もなく過度に強調して」という要件の中で読み込んでいたところであります。

もっとも、ここで問題とされておりますのは、合理性があるかというよりも、その損害又は危険を告知するということについて、そういう場合に制度化される根拠があるのではないかということが問題点でございまして、そうであるとすればその点をより直接的に示す観点から、「正当な理由」のない場合というものを要件としてはどうかという御提案でございます。

さらに5ページでございますが、前回は合理的な理由がないということに併せて「過度に強調」という要件を示してございましたが、先ほど申し上げましたように、ここでいう「正当な理由」の中心的な内容となってまいりますのは、当該告知内容について一定の根拠があるかという問題でございまして、そうであるとすれば根拠等に照らして「過度な」告知というものについては、結局のところ、その過度な部分について制度化する根拠を欠く、理由を欠くということでございますので、この点は「正当な理由」のない場合ということで読み込めるのではないかということでございます。

他方で、「正当な理由」の有無とは別に、(イ)に書いてございますが、「告知の内容及び態様」というものも問題になろうかと考えております。

中段、「まず、1点目は」というところでございますが、事例を見ますと、当該損害又は危険の回避等、当該消費者契約の締結とが互いに強い関連があるものとして告げられているのではないかと考えております。すなわち、事例1-1のように、このままでは「一生成功しない」から契約締結が必要だと、このような告知であります。

そうしますと、ここでの告知内容としましては、損害又は危険、それ自体のみを強調して告げることというよりは、当該消費者契約を締結すること、それによって得られる契約の目的物が当該損害又は危険を回避するために必要であるという旨を強調して告げるということとした方が、そういう損害が発生する蓋然性及びそれを回避する蓋然性についての告知であるということで捉えられるのではないかということでございます。

なお、ここで言う「必要である旨」という点につきましては、必ずしも当該契約を締結する以外に他の手段がないということを明確に告げるということまでを求めるものではないと考えてございます。

また、2点目としてですが、この「不安を煽る」という行為を書き下ろしてきたのがこの要件でございますけれども、そこでは当該消費者が不安を抱いているということが当然の前提とされているものと考えられます。

例えば、事例の1-1や1-2のようなものは就職活動時の学生をターゲットにアンケートを実施していましたし、事例の2-1や2-2でもやはり事前のアンケートで容貌に関する意識等を把握していたということでございます。

そうしますと、中段辺りに書いてございますが、規定の要件としても、事業者が、消費者が当該損害又は危険に関する不安を抱いていることを知っていた場合であることを明示しておくということが考えられるのではないかということでございます。

さらに「損害又は危険」についてでございますが、事例に照らしてみましても、法益としての重要性が必ずしも高くないものを含める必要はないと考えられまして、その点を明確にする趣旨で「その生命、身体、財産、その他の重要な利益についての損害又は危険」と特定することが考えられるのではないかという提案をしてございます。

以上、まとめましたのが6ページの規定案ということでございます。

続いて、(2)の「勧誘目的で新たに構築した関係の濫用」というところでございます。こちらは第40回で「断りきれない人間関係」というものを書き下ろすという中で、7ページでございますが、「取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係」ということで検討いただきました。

しかし、この点については幅広いものが含まれてしまうのではないかという御指摘もありましたし、また一方で濫用する行為という内容についても、思わせるような言動ということでは明確性に欠けるのではないかという御議論もあったところでございます。

そして、改めまして7ページから8ページにかけ、今回想定されているような事例というものを書いてございます。事例1は今まで申し上げてまいりましたデート商法のものでございますけれども、SNSの婚活サイトで知り合ったファイナンシャルプランナーの男性から投資用マンションを勧められて契約してしまったというものでありますし、事例2は友人に紹介された男性に美顔器の話をされて、好きになったところで、その好きになった男性から「契約してくれたら付き合おう」と勧誘を受けたというものでございます。

こうした事例を念頭に置きながら、更に規定案を検討していますのが8ページ以降でございます。

まず(ア)の「関係を濫用する行為」につきましては、「思わせるような言動」としておりましたけれども、ここは「当該関係を維持することができない旨を告げること」という形で明示するということを提案してございます。

そして、中心となります「対象となる『関係』」でございますけれども、先ほど申し上げましたような取引上の社会通念に照らして契約の締結とは関わりのない関係というものでは、結局その判断基準が社会通念に委ねられているところをなかなかイメージを共有いただくのが難しかったということでございまして、今回の提案ではその「関係」の中身として通常の取引では見られないような特殊な関係というものを具体的に示すということを試みてございます。

最も不当性が高いと考えられるのは、日本語的に言えば、言わば依存してしまっているような状態ということでございますが、そのような場面を書き下ろして8ページから9ページにかけて書いてございますが、当該事業者と当該消費者との間の緊密な関係であって、それによって当該消費者の意思決定に重要な影響を与えることができる状態となったときというものを提案してございます。

このように規定を考えますと、先ほどの濫用する行為を告げることというふうに限定したことと併せて考えますと、これまで御懸念をいただいていたような営業担当者が趣味のサークルや地域活動に参加して営業活動を行っていくというものについては、それによってそのような意思決定に重要な影響を与えることができる状態となるということは考え難いと思いますし、ましてそのような状態となったからといって、事業者が契約を締結しなければ、その関係を維持することができないというようなことを告げるということも考え難いと考えてございます。

その後ろで、「なお」というところでございますが、ここはやや技術的な話でございますが、関係といいますと、ある人とある人との関係ということになりますけれども、この場合、当該事業者が法人である場合などは関係が築かれるのはその従業員、あるいは役員でございまして、その趣旨を明らかにする趣旨で「当該事業者又は当該勧誘を行わせる者」ということで規定してございます。

最後に、9ページから10ページに書いています「新たな関係の構築」というところでございますが、第40回の提案でも、新しく勧誘する目的で人間関係を築いた場合を捉えるということを包含してございましたが、規定上その点が疑義があるという御意見も頂戴しておりましたので、「新たに」という文言を明らかに加えさせていただきました。そうした内容をまとめたのが、10ページの(エ)の「規定案」というところでございます。

最後に11ページ、12ページのところで、これは後ほど御議論いただくということで先ほど御整理いただいたところかと思いますけれども、「判断力の不足に乗じた不要な契約の勧誘」ということで、第40回で山本健司委員から御提案いただいていたところでございます。

山本健司委員から御指摘、御提出いただいた資料を見ますと、この提案は大阪高裁の裁判例を念頭に置いた上で、民法の一般規定でしか救済が図られていないので一定の手当てをすべきということで御提案いただいていたものでございます。

しかし、このような問題意識については、この専門調査会でも第29回の時点で、同じ事例でございますが、事例4という形で示した大阪高裁の裁判例を基に、民法上の公序良俗違反の一般規定に委ねたものとなっているということについての手当てが検討されたところでございます。

12ページで書いていますA案というものがその検討内容でございましたが、この内容として「通常不要」というところが明確になっていないのではないかという御議論があり、それを明らかにしていくという中で第30回、31回、40回と御議論いただいたのが、先ほど御説明差し上げた困惑類型の一つとして取消しを認めていくという一つの方向性であったと考えてございます。

そうしますと、この山本健司委員の御指摘いただいたような別のアプローチというものも重要な点でございますけれども、まずはこのような困惑類型の一つとしての方向性について御検討いただくのがよろしいのではないかということで御提案させていただいたものでございます。

駆け足でございましたが、御説明としては以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、まず、「消費者の不安を煽る告知」に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 意見ということなのですけれども、まず6ページに提案されている「規定案」について一つ意見を述べたいと思います。

端的にいいますと、この提案の中にある「知りながら」というところ、これはいわゆる故意要件になると思うのですが、これは不要ではないかという意見でございます。

理由としましては、重要な法益に関連して正当な理由もなく契約の必要性を告げるという行為態様において取消しというのが基礎付けられ得るのではないかということです。すなわち、業者に当該消費者は不安を抱いていることを知らなかったという反論を許す必要はないのではないかという疑問でございます。

ここで問題となる契約というのは、そもそも損害や危険の回避に役立つものなので、消費者が不安を抱いていることを知らないというのは、それ自体が重過失とも言い得るものではないかと思いました。

ですから、例えば規定案に関してなのですけれども、「当該消費者が不安を抱く生命、身体、財産その他重要な法益について損害又は危険に関し」くらいにして、「知りながら」というところの要件というのを落としてもいいのではないかという意見でございます。

しかしながら、こういった意見は受け入れられず、コンセンサスが得られないという場合には、正当な理由なく強調しているということで、不安を抱いていることを知っているということは通常は事実上推定されるというような解釈が採れるのではないかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。それでは、他に御意見がありましたらお出しいただければと思います。

永江委員、どうぞ。

○永江委員 まず、御提案の規定の文言自体に反対するものではないということを前提にお話をさせていただきます。

ただし、前回も議論となりました事例の評価について、若干意見を述べさせていただければと思います。

事例の1-2における「今やらないと後悔する」「このままだと出遅れる」といった発言については、資料1の3ページでは不当性が認められる事案であるとされております。この事例は、3時間近く説得されたという事情も踏まえて考えれば、事業者の行為全体としては不当性を肯定できるものと考えますが、「今やらないと後悔する」「このままだと出遅れる」といった発言だけをもって不当と評価することには強く疑問を感じております。

また、資料1の6ページにおいて、事業者が就職や頭髪について不安を抱いている消費者をあえて対象としてその不安を煽っているという記載がございますが、消費者が不安を抱いているということは言い方を変えれば、その不安を解消するための商品やサービスの需要があるということでございますので、そういった消費者の需要を満たすために事業者が価値を提供しようとすること自体は事業者として真っ当な活動でございますので、その点につきましては、何ら不当性はないものと考えます。

もちろん、必要以上に不安を煽ることまで許容するべきだとは考えておりませんので、この点は勧誘の態様次第かと考えております。

ですので、具体的事案における勧誘の取消しの対象とすべきかどうかの判断において、消費者の不安そのものを過度に重視してしまうと、取消しの対象範囲が必要以上に広がってしまう恐れがございますので、報告書や逐条解説等の様々な文書において該当事例に挙げるものとしては、事業者の勧誘の態様が悪質なものに限定するような書き方にしていただければと考えております。

また、1点確認させていただきたいのですが、御提案の規定のうち、「不安を抱いていることを知りながら」とございますが、特定の個人に対する勧誘への適用を想定しているということでよろしいのでしょうか。仮に不特定多数を対象とする広告も対象になり得るとすると、先ほど申し上げたとおり、消費者の不安と需要は重なる部分がございますので、需要の見込まれる一定層に対する広告にも本規定の適用があり得ることになると思います。そのようなことは意図されていないと思いますので、特定の個人に対する勧誘であること、もしくはこの条文における勧誘には広告は該当しないことを明確にしていただければと考えます。以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、今の点について消費者庁から御説明をお願いします。

○消費者制度課担当者 先ほどの丸山委員の御意見にも関わりがあるかもしれませんが、ここで申し上げています「不安であることを知りながら」ということにつきまして、例えば広告等においてはその対象者の中にそういう不安を抱えている人もいれば、いない人もいるという状況であれば、この「知りながら」という要件を満たすということではないだろうと考えておりますので、一般的にはそういう場合は該当してこないことになるのだろうと思います。不安を知り得たか、知る状況にあったかということで判断されると思います。

○山本(敬)座長 今の点は、「当該消費者」で示されているという理解なのでしょうか。

○消費者制度課担当者 おっしゃるとおりでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○永江委員 ありがとうございます。

○山本(敬)座長 それでは、他に御意見があればと思います。

大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 基本的には、今回の規定案の方向で進めていただければと思っているのですが、先ほど丸山委員がおっしゃっていた、この「知りながら」という要件に関連するかと思いますけれども、この規定案を見たときに「正当な理由がないのに」というのを付け加えていただいた点は、私も以前にそういう趣旨のことを申し上げた記憶がありますので、この点は賛成いたしますが、要はこの類型というのは、今回の規定案ですと、もともと不安を何か感じている人に対して正当な理由がなく、この契約をしないとあなたの不安は解消されませんよということで、更に不安に陥って契約をしてしまった、要するに真っ当な判断ができなくなってしまったというニュアンスだと思うのですが、この規定案ですと、もともと不安があるということを知りながら、その人に対して正当な理由がなく、この契約をしないとこういう損害、危険が回避できませんよということを強調して告げるという場面で、もともとはこれは「不安を煽る」という類型だと思うのですが、確かに「不安を煽る」という類型になっているのですけれども、正当な理由がないのに強調することによって更に消費者が正当に真っ当な判断ができなくなってしまったということがむしろ問題なのではないかと思います。

そう考えますと、もともと消費者が不安を抱いていることを事業者が知っていたかどうかということよりは、むしろ消費者が漠然とでも何か不安を感じていて、そういう人に対して正当な理由がなく、とにかくこの契約をしないととか、あるいはこのアクセサリーを買わないととか、そういうことを言うことで、さらに消費者がパニック状態というか、買わないとこれは自分の不安は解消できないのだと感じてしまって、要は判断ができなくなったということが問題だと思いますので、その事業者が不安を抱いていることを知っていたかどうかということよりは、むしろ正当な理由がないのに強調して告げた結果、消費者が更に不安を感じてしまって判断ができなくなったということを何かしら要件として表すことはできないかという感触を持っております。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 既に御発言があったところと重なるところもございますけれども、基本的に御提案の規定案について反対するものではないという前提で発言させていただきたいと思います。

1つ目は、先ほどの「知りながら」に関連するのですけれども、若干反対の方向かもしれませんが、3ページの中頃で、事前にアンケート調査をしていたりといったことに不当性が認められるということです。これは先ほど丸山委員がおっしゃられたことも関係するのですが、基本的にその商品とか役務で利便性が上がる、あるいは不安が解消されるというものを売りたいときにそういった方々をターゲットにするというのは、基本的なマーケティングということだと思います。それ自体に不当性があるということでは恐らくないのだろうと思っておりまして、それに加えて、今の文言で言いますと「強調」し過ぎるとか、そういうのが合わさった際に不当性が出てくるというようなことなのだろうと思います。

それを前提に「知りながら」というのを取ってしまっていいのかどうかということにつきましては、残したほうがいいのではないかと思っております。理由は2つございまして、同じことかもしれませんが、通常の事業活動との切り分けの中で一つ要件があったほうがいいのではないかということと、あとは先ほど永江委員がおっしゃられたことと同じですけれども、勧誘の概念が広がる中で広告等との切り分けをどういうふうに考えるのかということを考えたときにも、残していただいたほうがいいのではないかと思っている次第でございます。

2つ目は、事例1-2についてですが、他に事例にも共通するのですけれども、検討に当たってこういった事例を念頭に考えますということはそれでいいと思っているのですが、具体的に逐条解説等で御紹介される際は、規定の適用の明確化の観点から、実際の事例をそのまま使うのではなく、書きぶりを考えていただければと思っております。以上でございます。

○山本(敬)座長 今の点はよろしいでしょうか。

(消費者庁 うなずく)

○山本(敬)座長 では、他に御意見はいかがですか。

後藤巻則座長代理。

○後藤(巻)座長代理 基本的に私はこの消費者庁の案で賛成でありまして、今、「知りながら」というところについて議論が出ておりますけれども、ここで議論している消費者庁の提案を見ますと、消費者の不安を煽る告知につきまして想定されている場面としては、就職や頭髪について不安を抱いている消費者をあえて対象としているという形で限定している。それから、当該消費者が不安を抱いていることを「知りながら」という形で限定している。知りながらその不安を煽っているという点で、事業者の悪性が強い場合を想定しているということであります。

その上で、当該消費者契約の目的となるものが「当該損害又は危険を回避するために必要である旨を正当な理由がないのに強調して告げる」という絞りを更にかけているということでありまして、これは事業者の要望というのでしょうか、こういう点が問題となるということを取り入れていただいて、かなり厳格な適用をするということでこういう案を出していただいていると理解しております。

そういう意味で、消費者側から、ここまで厳格にしなくていいというような御意見があるというふうには思いますけれども、今のお話の流れからいうと、この案であれば全体としての了承が得られるということであれば、ここで成案にする、「不安を煽る」という類型について案が見送りにならないということが大事でありますので、そういう意味で基本的に消費者庁の案に賛成というふうに考えます。

そういうことで、例えば先ほど特に丸山委員がおっしゃったところについて、「知りながら」の部分というのは重要な御指摘だと思いますけれども、ここでその点を巡って生産的な意見が出ればそちらの方向で案をまとめるということで構わないと思いますが、そこでまた反対というようなことがあるならば、次善の案というふうに言ってしまっていいのかどうか分かりませんけれども、この案で賛成していただけるということであれば、そういうふうにしていただくのがいいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見はいかがですか。

石島委員。

○石島委員 既に何名かの委員から御意見をいただいていることとかぶるところもあるのですけれども、基本的には私も今回御提案の内容に反対をするものではないのですが、事例選択のところについて少し意見を述べさせていただきます。

既に被害相談事例として就職セミナーの例が挙がっていますが、やはりこれを問題事例として取り扱うべきなのかについては引き続き疑問があります。就職活動の必要性を強調することによって奮起して納得のいく職を得るという学生もいるでしょうし、実際に救済すべき事例がどれぐらいあるのかという点は疑問に思うところです。

また、夏は受験の天王山であって、やらないと後悔しますよと言って夏季セミナーの説明会などのように一定の危機感を煽るようなコミュニケーションはかなり取られているという認識です。こういったものまでも取消しの対象になり得るということでよろしいのかというのは疑問ですし、今やらないと後悔しますよという類いの告知が、契約を締結しなければ消費者の抱く不安が現実化するということを含意すると言い切れるのかは疑問があります。

また、これも前回申し上げた事例なのですけれども、例えばデパートで化粧品を販売する店員が肌年齢チェックをして、あなたの肌年齢は実年齢よりプラス10歳ですね。放置しておくと、どんどんエイジングは進みますよというセールストークで困惑して化粧品を買ってしまいましたという場合にも取消しの可能性がかなり高くなるようになりますけれども、それでいいのかという点にもやはり疑問が残ります。

また、更に事例について申し上げると、今回の資料では霊感商法の例が挙がっていないようです。前回も申し上げたとおり、むしろ被害事例としては霊感商法の類いのほうがあるのではないかと思うところですので、こういったものも取消しの対象とすることを想定して事例選択については御判断いただければと思います。

また、この後、議論される困惑類型の追加において、当該消費者契約の締結を強引に求めるというところを要件にすることを検討されると認識しておりますけれども、こちらの類型においても同様に悪性の高さを捉える要件として、当該消費者契約の締結を強引に求めることを要件とするということを検討していただいてもいいのではないかと念のため付け加えさせていただきます。

ただし、法律に用いる用語として、「強引」という言葉が適切なのかという点については、更に検討する必要があるかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。結論としては、御提案に賛成したいと思います。率直に言えば、かなり要件の限定が効いているという気はいたしますけれども、その事業活動に支障を来さないとか、明確性の観点から、このような規定でもやむを得ないと感じております。

何人かの委員から御指摘がありました、ピックアップすべき事例の中身について検討というところは確かにそのとおりだと思いますけれども、例えば受験について夏が天王山であるということ自体、それ自体それだけの話であれば事実なので正当な理由がないとは言えないということもあろうかと思いますし、当該消費者契約における正当な理由というところに比重がかかってきて、この中でそのような勧誘の正当性とかが吟味されるということになると思うので、さほどその事業活動によって縛りになるものではないのではないかというふうに私自身は考えております。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。少しよろしいでしょうか。

今いただいている意見の状況からしますと、消費者庁からお示しいただいているこの提案に対して、明示的に反対であるという御意見は出ていないように思います。したがって、基本的には、この提案を基礎として考えていけばよいのではないかと思います。

その際に、この前半にある「不安を抱いていることを知りながら」という要件については、御異論があったところです。しかし、この点については、後藤座長代理からも御指摘がありましたけれども、これを落とすことについては反対意見があったところで、とりわけ通常の事業活動への影響、そして勧誘概念が広げられたこととの関係で、広告について疑義が生じないようにする必要があるのではないかという懸念から、なかなか一致が得られるところではないと考えられます。方向としては、丸山委員が指摘されていましたように、解釈の問題として、推認等の考え方がどれだけ実務において受けられていくかというところに委ねることが考えられるところです。

基本的な方向としては、現在出ている案で取りまとめを行うということでよいのではないか。ただ、事例選択についてはいろいろ御指摘をいただきましたので、より適切な、何が意図されているかが分かるような例として、逐条解説等において説明することを考える。

基本的な方向性はこうではないかと思われますけれども、そうではなくこうしたほうがよいという意見があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 こうしたほうがいいという、この規定案ということではないのですが、先ほどの就職セミナーの事例で問題なのは、「今やらないと後悔する」「このままだと出遅れる」というのは、予備校などでも今すぐ勉強を始めないとみたいなことを言うことはありますので、もちろん井田委員がおっしゃっていたような正当な理由があるかどうかというところで絞りきれるかどうかというのと、この事例は3時間程度説得されてということで、かなり何回もそういうふうに後悔するよと言われ続けて、それで契約してしまったということなので、もう一つの「強調して」というところの要件の読み方かと思います。単に1回だけ、今すぐやりなさいと言っただけで、もちろん取消しが認められるということではないので、逐条解説等、解釈を示すときに、この「強調して」というところも、それだけしつこく言ったというところの趣旨を書いたほうがよろしいのではないかとは思います。

といいますのは、「過度に」という要件を今回落として正当な理由の中に入れているようですけれども、これは正当な理由の中ではなくて、当然強調してとにかく何時間もかけて言っているというところが、この1-2は恐らく問題なのではないかと思いますので、そのように申し上げます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。そのような御指摘を踏まえて、今後考えるということにしていただければと思います。

それでは、先ほど私のほうで申し上げたとおり、現在消費者庁から示していただいている提案で了承を得て、これを基に取りまとめを行うということでよろしいでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、続きまして「勧誘目的で新たに構築した関係の濫用」について質疑応答を行わせていただきたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

それでは、山本健司委員。

○山本健司委員 原案に基本的に賛成という前提で、適用範囲について念のため確認させていただきたい点がございます。

資料1の7から8ページで、事例マル1マル2を典型的な被害事例として挙げていただいております。特に事例マル1の婚活サイトの被害事例などは、独身女性の弱みにつけ込んで2,000万円、3,000万円といった多額の金銭的被害をもたらす非道な事例です。ここに記載されている事例マル1マル2のような被害事例が救済できる規定として、今回の4号案が提案されているという理解で間違いないかということを、念のためにまず確認させていただきたいと思います。

次に、「当該消費者契約を締結しなければ当該関係を維持することができない旨を告げる」という要件に関する確認なのですが、実際の被害事案では、現在の関係を維持するために必要であるとか、有用であるといったことを遠回しに言うとか、暗にほのめかすといった被害事例も多いと思います。このような、言わば黙示に告げる、伝えるという場合も含んでいるという理解で間違いないかという点を確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお願いいたします。

○消費者制度課担当者 まず、前半の事例のマル1マル2につきましては、基本的にこういうものを念頭に置いているということは先ほど申し上げたとおりですが、ただ、先ほどの「不安を煽る告知」でも御指摘をいただいたとおり、その周知に当たっては、できるだけ分かりやすい事例を示していくということは考えたいと思っております。

また、後段ですけれども、「告げる」ということについて、明示か、黙示かというところは現在の不実告知とも同様で、黙示のものも含まれ得ると思いますが、ただし、「告げる」ということで評価されるということは前提となっておるかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。それでは、他に。

大澤委員。

○大澤委員 この方向で基本的には賛成いたしますが、成案を練るに当たって2点申し上げたいと思います。

1点は、今、山本健司委員がおっしゃっていたことで、「当該消費者契約を締結しなければ当該関係を維持することができない旨を告げること」というのは、例えばこの指輪を買わないと今後恋人としてはやっていけませんよということを明示的に言う事案というのは余りないのではないかと私は感じておりますので、これは解釈上、黙示にそういうことを暗に示したという場合も含むという解釈をしないと、言い換えれば、明示に告げた場合に限定しますということになると、かなり適用範囲が狭くなるのではないかという疑問を持っています。これが、1つです。

もう一つは、「当該勧誘を行わせる者」という概念です。これに関して、趣旨は大体理解しているつもりなのですが、5条との関係で、いわゆる契約締結に当たってその媒介者の概念とか、あるいは契約締結させるための代理人とか、そういう概念がありますので、それとの関係で「当該勧誘を行わせる者」というのが、その関与させる人、その人だけを指しているという限定の趣旨なのか。そうではなくて、実際にデート商法の判決などを見ていますと、例えば女性が近づいていって、女性が自分で勧誘するという場合が多いと思うのですが、そうではなくて、その女性が近づいていって喫茶店に呼び出されたら周りにもっとたくさんの人が出て来て、みんなで勧誘したという場面ももちろんあると思いますので、これはどういう趣旨で「当該勧誘を行わせる者」というのを、特に5条との関係で明確にする必要があるのではないかと思いますので質問させてください。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。1点目は、もう既に明らかになっているところと思います。

では、2点目について、消費者庁から御説明をお願いします。

○消費者制度課担当者 5条の関係では、その契約の主体としての当該事業者と、その媒介の委託を受けた第三者との関係が記述されていると思います。

ここでは、関係の主体として誰と誰との関係かということの問題ですので、それが事業者そのものであれば事業者でいいのですけれども、先ほど申し上げましたように事業者が法人とかの場合には、従業員が関係を築くこととなるため、それが事業者との関係と言えるのかというと、恐らく読めない部分があるだろうと思いますので、「当該勧誘を行った者」との関係という部分を付け加えたということであります。

○山本(敬)座長 大澤委員が挙げられた例で言うと、最初に接触をした女性も、「当該勧誘を行わせる者」に含まれるという理解でよろしいのでしょうか。

○消費者制度課担当者 その女性との間の関係ということですので、その女性は含まれるということだと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○大澤委員 はい。

○山本(敬)座長 では、他に。

増田委員。

○増田委員 1つ確認ですけれども、これはデート商法を事例に挙げていますが、例えば高齢者が依存するような関係を築くということも当然に考えられるわけなのですけれども、そういうことも含まれると考えてよいと思ってよろしいですか。

もう一点は新たな人間関係ということについてですが、私は「新たな」というのを取ってほしかったと思いますが、もし入れるとして、例えばもともと知り合いであったとか、友達関係があった、その上で密接、緊密な関係を新たに作ったというようなことも含まれるというふうに考えてよろしいのでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 まず前半で、デート商法が念頭に置かれていますけれども、この規定案で問題にしているのは別に恋愛感情だけに限定しているものではありませんので、緊密かつそういう意思決定に重要な影響を与えるような関係と言えるのであれば対象にはなってまいりますが、それを濫用した場合ということで対象にするということであります。

それから、新たな人間関係を築くということは、基本的にはやはり従前、関係がある場合は対象から外れてこようと思います。解釈上、従前の関係と全く別の関係というものが想定されるかということでありますが、少なくとも念頭に置いているのは新しく関係が築かれるというものでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。もちろん繰り返しでも結構ですが、今の点を含めまして他に御意見、あるいは御質問があればお出しいただければと思います。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。基本的に御提案に反対するものではないということを前提に発言をさせていただきたいと思います。

1つは、逐条解説で2点明記していただきたいということでございます。

1点目は、資料1の9ページの上段で「当該消費者の意思決定に重要な影響を与えることができる状態とは、客観的にそのような状態であると判断される場合をいうものである」という記載がございますが、逐条解説にその旨を明記していただきたいということでございます。

2点目は、1ページ戻っていただきまして8ページでございますけれども、「当該消費者の意思決定に重要な影響を与えることができる状態」の中身について、「消費者が事業者との関係に言わば依存をしてしまっているような状態」であるということが記載してありますが、この点につきましても逐条解説に明記していただきたいということでございます。

それから、1つ質問なのですけれども、先ほどの大澤先生の例で、座長が確認されたところとなりますが、ある女性が勧誘をしてというのを「勧誘を行わせる者」で読むとおっしゃっていたのですけれども、私は「事業者」で読むのではないかと思っておりました。どうなのでしょうかというのが質問です。

もう一つ意見と言いますか、ちょっと出口がなくて恐縮なのですけれども、私ぐらいしか言う人がいないのではないかと思って申し上げます。今の御提案だと夜の商売とか、そういったところのものが全部取消しの対象であると読めてしまう可能性があるのではないかと思っております。そういったものは取消しの対象にすべきだという考え方もあるかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。その点については、経団連の会員企業は余り関係ないのでどうしても取消し対象とならないようにしてくださいということでもないのですが、社会全体を規律する法律としてそれでいいのかという若干問題提起でございます。

○山本(敬)座長 規定案の読み方についてやや不正確だったかもしれませんので、改めて消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 まず、前半のそういう勧誘を行わせる者という点でございますけれども、その女性が自分が契約当事者となって自分が商品を売っているということであれば当該事業者そのものだと思います。

ただ、契約主体は会社であって、そこの従業員がその女性であったという場合には、関係自体はその女性と築かれているわけですが、その女性は事業者というわけではないということですので、「勧誘を行わせる者」というほうで読むということであります。

それから、後半の水商売といいますか、そういうものについては接客業といいますか、そこの事情がちょっと私もよく分かりませんが、恐らく契約がまず先にあって関係が築かれているのではないかというのが一つと、それからそういう場合においても契約を締結しなければこの関係をやめるというような形での濫用行為があるのかという点でありまして、そこに該当してこないのではないかと思っています。もう既に契約によって築かれている関係ではないかというところが大きいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、増田委員。

○増田委員 たまに御相談いただきますけれども、水商売のところに通って、そこで全くそこと関係のない商品サービスを契約させられたというようなケースもありまして、必ずしもそういう場所であるからいいのであるという話ではなくて、やはりその状況に応じて判断すべきことで当然取り消されるケースというのもあるというふうには考えます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、今の点を含めまして、他に御質問、あるいは御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 しつこくて申し訳ないのですが、この勧誘させる者ですけれども、大体趣旨はよく分かりました。例えば、事業者が法人であるときだと、確かに事業者そのものではないので、こういう文言を付ける必要はあるかと思います。

それで、ここでデート商法をとりあえず分かりやすい例として挙げますけれども、例えばその会社の従業員である女性が近づいていって、女性が自分でその男性を勧誘したという場合ですと、これで勧誘させる者ということでしっくりくるのですが、先ほど私が疑問に出したのは、女性は単に近づいていくだけであって、これも実際にあった事例で確かそうだったと思うのですけれども、女性と男性2人でしゃべっているところにまた別の人たちがいろいろ来て、みんなで取り囲んで勧誘した事案があったという記憶がありましたので、女性が勧誘とまで強くは言っていなくても、周りの人たちがどんどん近づいてきてというときには、その周りの人たちも勧誘させる者に含めるのか、すなわち、この勧誘させる者という範囲を結構広く読むというか、そういう理解でよろしいのでしょうかという趣旨です。以上です。

○山本(敬)座長 大澤委員に確認なのですが、今おっしゃっている例で、その女性なる者は事業者の従業員ないしは事業者から委託を受けた者という前提なのでしょうか。

○大澤委員 そうです。

○山本(敬)座長 では、その前提で御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 正に勧誘を行わせていると言えるかどうかということなのだろうと思いますが、従業員でその勧誘に関わらせたということであれば当たるのであろうと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、増田委員。

○増田委員 しつこいのですけれども、過去に知っていたというぐらいで、その次元とは全く違う次元の緊密な関係を作ったという場合は、それは「新たな」ということに解釈を広げていただきたいと思っています。知っていたというだけで駄目というふうにはしないでいただきたいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、お願いいたします。

○消費者制度課担当者 私が申し上げたのは、基本的に念頭に置いているところということで申し上げましたので、そこは民事ルールですので、裁判所でそのように認定できる場合として御判断いただく場合があり得るかと思いますが、先ほどは、基本的にはこの規定として念頭に置いているところを申し上げました。

○山本(敬)座長 では、他に御意見、あるいは御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

現在いただいている御意見では、消費者庁から今回提案されている規定案に関して反対の御意見はなかったと思います。したがって、個々の文言が本当にこれで法制的にうまくいくのかという問題は留保する必要があると思いますけれども、表そうとしている内容としては了解が得られたものと思います。したがいまして、この案を基に取りまとめを行うということでよろしいでしょうか。もちろん、先ほどと同じで、仮にこれが成案を得て法律になるとしますと、その中身を説明するための事例については、先ほどと同様によく考えて練り上げる必要があるだろうと思います。ありがとうございました。

≪3.困惑類型の追加≫

○山本座(敬)座長

続きまして、「困惑類型の追加」について御議論いただきたいと思いますが、最初に申し上げましたとおり、まず消費者庁から資料1を御説明いただいた後に、第1類型案についての検討と第2類型案についての検討を分けて質疑応答していただく形で進めさせていただければと思います。

それでは、まず、消費者庁より御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、「困惑類型の追加」について御説明をさせていただきます。

まず、14ページ目では前回の提案について記載をしております。

ページをめくっていただきまして15ページ目で、第1類型案についての検討をしております。

第1類型案においては、前回の提案では、消費者が意思表示をする前に事業者が履行に相当する行為を実施する。そのこと自体が不当な行為類型であると考えておりましたが、このような考え方に対しては、事業者と消費者との関係性によっては本来問題とすべきではない場合まで取消しの対象に含まれることになってしまうのではないかという御懸念が示されたところでございます。こういった御懸念は、消費者に対するサービスの一環として事業者が事前に業務の一部を先に実施することが、想定されているものと考えられるかと思います。

そこで、こういった御懸念を考慮いたしまして、より不当性が高い行為類型を捉えるという観点から、消費者契約の締結を強引に求めることといった適切な要件を加えることが考えられるかと思います。

こういった要件を加えた場合には、事業者がサービスの一環として履行に相当する行為を実施した場合であれば、通常はその行為の実施を理由として契約の締結を強引に求めるということは考え難いと思います。

また、たとえ事業者に契約成立についての期待が生じていたとしても、消費者は契約締結の義務はございませんので、契約の締結を強引に求めるということは既にサービスの一環ということではなくて、不当な行為類型と評価することができるのではないかと思います。

なお、一定期間ごとに物品の供給ですとか、役務を提供する契約が成立していたということであれば、既に消費者は意思表示をしておりますので、今回の提案の取消しの対象には含まれないというふうに考えております。

次に、前回提案では末尾のところを金銭の支払を請求をすることという要件にしておりました。ただ、この要件については、念頭に置いている相談事例に即して実際の事業者の行為を条文案として書き下ろしたというものでございます。けれども、例えば事業者が単に意思表示のみを求めたような場合には、救済すべき事例から漏れてしまうのではないかという御懸念が示されたところでございます。

改めて相談事例を検討いたしますと、事業者の意思としては、単に金銭の支払を請求するだけではなくて、金銭を受領するために契約の締結も併せて消費者に求めているということがうかがえるかと思います。また、消費者も金銭を支払うことを前提として契約を締結することを承諾しているというふうに考えられるかと思います。

また、前回提案の第2類型については、末尾のところを「意思表示を求めること」としておりましたけれども、こういった場合も事業者が契約の締結を強引に求める際に併せて消費者に意思表示を求めているというふうに考えられるかと思います。そのため、「契約の締結を強引に求めること」という要件にすることによって、事業者の不当な行為を捉えることが可能になるとともに、また相談事例の実態にも即し、より救済すべき事例を救済するという観点からも望ましいと考えております。

「規定案」のところでございますけれども、以上のことから前回提案から後半部分を変えまして、「当該行為を実施したことを理由として当該消費者契約の締結を強引に求めること」という案を提案させていただいております。

17ページ以降では、要件を変えたことによって、これまで御紹介していた相談事例はどうなるかということを検討しております。

結論から申し上げますと、事例1、事例2、事例6、こちらは契約の締結を強引に求めることという要件を満たすものと考えております。

他方で、事例4と事例7については記載の事実を見ていきますと、単に代金を請求されたというものでございますので、事業者が契約の締結を強引に求めたと言えるかは個別の事情によるかと思います。そのため、この「強引に」という要件を満たさず、取消しの対象から除外される可能性もあるかと考えております。

なお、事例5、トイレの修理の事例でございますけれども、こちらも記載された事実からしますと、修理に関する消費者の意思表示は事業者が修理を開始する前になされていたとも考えられますので、そうだとすれば取消しの対象から除外されると考えております。以上が、第1類型案についての御説明です。

次に、第2類型案でございます。こちらは、前回提案ですと、事業者が消費者のために費用や労力を特別に要したという、言わば倫理的な観点から消費者を非難して契約の締結を強引に求めることは不当であるという考えを基にしておりました。

しかしながら、消費者から事業者に対して特別な要求を行っていた場合など、消費者に言わば信義則違反というような行為があったのだとすれば、事業者が生じた費用について告げること、それ自体の不当性は必ずしも高いとまではいえないとも考えられるところでございます。

そこで、第1類型案と同様に、より不当性が高い行為類型を捉えるという観点から、損失が生じることを告げることについて事業者に正当な理由がない場合に限定するとともに、先ほどの第1類型案と同様に、契約の締結を強引に求めた場合を取消しの対象とするということが適当ではないかと考えるところでございます。

そういった場合に、仮に消費者に何らかの落ち度があったとしても、消費者に契約の締結を強引に求めるということは消費者の意思決定の自由を侵害する不当性が高い行為類型といえるかと思います。

また、こういった要件を加えることで、取消しの対象となる取引を限定することが可能となりますので、例えば事業者がこんなに頑張ったということで自己の営業努力を単にアピールしたような場合には取消しの適用対象から除外されると考えております。

なお、前回提案ですと、損失が生じることを「過度に強調」することを要件としておりましたけれども、正当な理由がない場合を要件として加えますので、「過度に」強調したことについては、この正当な理由の有無を判断する際に考慮されるかと思っております。そのため、「過度に」という要件までを加える必要はないと考えております。

以上のことから、文言の分かりやすさの観点から、多少前回より文言の移動をしておりますけれども、後半部分を先ほど申し上げたとおり「損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げ」という箇所と、「消費者契約の締結を強引に求める」という箇所を変えております。

こちらについても同様に、これまで御紹介していた相談事例について検討を加えておりまして、こちらも結論から申し上げますと、事例1と事例2、そして事例3、いずれも適用対象になるというふうには考えております。

ただ、事例3については、事業者側が契約締結を急かした際の口調や態度など、個別の事情によっては消費者契約の締結を強引に求めたといえる場合があるかと思っております。

駆け足でございますけれども、以上が御説明でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、今、御説明いただいたもののうち、第1類型案についての検討に関して質疑応答を行わせていただきたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いします。

増田委員。

○増田委員 事例4と事例7に関して対象ではない可能性があるということなのですけれども、いずれも契約せざるを得ないような状況が作られているのではないかと考えられます。このようなことをするケースでお金は払いませんと断ったときに、すんなり帰っていただけるのかどうかということを想像していただきたいと思います。

強引に何々されたとか、断ったのに何々したとかというところまで、具体的にそれがないといけないのか。それとも、こうした状況を踏まえれば、私ども相談員としては、これはもう断り切れない状況だろうというふうに推測はするのですけれども、その辺についていかがでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお答えをお願いします。

○消費者制度課担当者 より不当性の高い行為類型を捉えるという観点から、やはり「強引に」というのは必要だとは思っています。

ただ、それはあくまで個別事情にもよるとは思っています。

○山本(敬)座長 個別事情によるということですが、よろしいでしょうか。

では、丸山委員に続いて長谷川委員でお願いします。

○丸山委員 私も射程の確認です。様々な事例があり得ると思うのですが、挙がっている事例というのは、強引に迫られて怖くなるような事例、怖いという心理状態となるものが例として挙がっていると思います。しかし、例えば懇願されて同情して契約をしたような事例は、基本的には客観的な行為態様から考えていくことになると思うのですけれども、そういった事例も含まれるのか、それとも威迫を出発点として怖いと思った事例に限られているのかという点を確認をさせていただけますでしょうか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお答えをお願いします。

○消費者制度課担当者 懇願してという場合で、「強引に」というところを日本語の意味内容として考えた場合には、消費者を強制するほどではないにしても、やはり消費者の承諾の意思を無視して、その有無を判断せずに進めていくということかと思うのですけれども、懇願してというのが「強引に」という中に含まれるかどうかというのはなかなか該当するのが難しいのではないかというふうには思っております。

○山本(敬)座長 懇願の仕方によるのかもしれませんが、もう少し事例を特定しないとかみ合った議論にはなりにくいのではないかと思います。

では、続いて長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。基本的に御提案に反対するものではないという前提で、確認とお願いをさせていただければと思います。

1点目は、先ほど丸山委員がおっしゃられたことと関連するのですけれども、この「強引に求める」というのは客観的に見て強引ということだと理解していまして、そうするべきだと思っております。しかし、例えば18ページの事例7の下から数えて3行目に「消費者が怖かったと感じるほど強引に既成事実を作出して代金を請求している」という記述があります。これは、事例2の当該個別の消費者が「怖かったと感じ」たということだと思いますが、条文の解釈としてはそうではなくて、一般的・客観的に見て「怖かったと感じるほど」である必要があるという理解でよいか確認したいということです。

2点目は、先ほどの懇願と関係してしまって恐縮なのですけれども、19ページにありますような、単に営業努力をアピールしただけのようなものは入らないということについても逐条解説で明確化していただければありがたいと思います。以上でございます。

○山本(敬)座長 では、今の点につきまして消費者庁からお答えをお願いします。

○消費者制度課担当者 先ほどの客観的に見るかどうかというところは、客観的に見て強引かどうかを判断するというふうには考えております。

○山本(敬)座長 他に御質問、あるいは御意見があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

丸山委員。

○丸山委員 先ほどの増田委員の不安とも関係してなのですけれども、今回の消費者契約法の改正のところで発言すべきことではないのかもしれないのですが、こういった事例に関しては、恐らく消費者契約法に基づき取消しをしたとしても不当利得清算の話になりまして、現存利益の有無といったところで更に争いとなる可能性があると私自身は思っております。

特に世間で問題となっているような来訪要請をきっかけとする押しつけサービス類型については、特商法のネガティブオプションの亜種といった位置付けもあり得るかと思います。今回の消費者契約法改正では、違法性の比較的高い類型について広く網を掛けたとしても、さらに特定の非常に問題が多い類型については、特商法マターとして議論を続け、効果論についても手当てするといったことはあり得るのではないか。そういった個人的な意見を持っているということです。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。これは消費者契約法の問題というよりは、民法一般の問題で、いわゆる押しつけられた利得の問題につながる難問でして、この場では答えはなかなか出せないかもしれませんが、これは検討しないといけない課題であろうというのはそのとおりと思います。

他に御意見があればと思いますが、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。それでは、第1類型案につきましても、これまでのところ特に御異論はなかったと思いますので、この案を基に取りまとめを行うということでよろしいでしょうか。その上で、適切な例を逐条解説等で趣旨が分かるように示すことは、なかなか難しいことですけれども、このように了解が得られたところですので、更に検討していくということでお願いしたいと思います。

それでは、続きまして、第2類型案の検討について質疑応答を行わせていただきたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

では、大澤委員。

○大澤委員 基本的にはこの方向に賛成いたしますが、1点確認させていただきたいのですけれども、今回の要件のところで「当該事業者に損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げ」ということで、かなり絞り込まれた要件なのではないかと思っていますが、挙げられている事例1、2、3を見ますと、例えばわざわざこんな上の階まで来ているのにと言っている事例2とか、あるいは事例1もわざわざ時間を取ってやってきたのにという言い方を指すということですね。

要するに、時間を割いたのにとか、労力、体力を割いたのに、あるいは事例3ですと遠方からわざわざ来たのだというのは、こういう抽象的なわざわざやってあげたのにというような話だと思うのですけれども、損失というと例えば具体的に交通費が掛かりましたとか、具体的に他に忙しいのに時間を使ったということを一見、損失という言葉ではイメージするのですが、ここでの損失というのは具体的に交通費が幾らかかったのですとか、そんなことまで言わなくてもよくて、こういうふうにわざわざ時間を使って来たのにとか、わざわざ遠くから来たのにという程度でも足りるという理解でよろしいのでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお願いいたします。

○消費者制度課担当者 結論としては大澤委員のおっしゃっているとおりかと思っておりまして、時間や労力を掛けたという点も、その間の人件費といった何らかの損失は当然に発生しているかと思います。そういった意味で、金銭的な損害について明示的に言及していなくても、この消費者のために時間を掛けたということなどを述べていれば、それはやはり事業者に損失が生じたことを含んだ趣旨かと考えております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。では、他に御意見、あるいは御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。

井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。19ページの「規定案」のところで、「正当な理由がないのに強調して告げて、当該消費者契約の締結を求めること」という書きぶりもあろうかと思うんですけれども、この第2類型において「強引に求める」という、その強引さというものを要件に加えた理由というか、それを教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお願いいたします。

○消費者制度課担当者 こちらについては先ほど申し上げたとおり、やはり不当性の高い行為類型を捉え、通常の取引に対しての影響を与えないようにするという考え方から加えたというものでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、他に御質問、あるいは御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 原案に賛成です。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

大澤委員。

○大澤委員 先ほどの井田委員の質問は私も若干気になったところなのですが、これは「強引に」というのが、その前に「損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げ」と、これは「正当な理由がないのに」に加えて「強調して」という言葉まで付いていて、その上で「締結を強引に求める」と、「強」という字だけが2回出てくるわけですけれども、ここでの「強引に」というのはこの事例の紹介、20ページから21ページを見ると、例えば急に態度を変えて脅し口調で言ったとか、そういう怖い言い方で言ったことが強引に求めたと言えるのだと書いていますので、単純にこのままでは帰れません、これだけ時間を割いてきたのにということを殊更に言っただけではなくて、こういう怖い言い方をしたとか、そこまで要件としているという趣旨なのでしょうか。それが疑問です。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。これは、「強引に」という言葉の意味をどう理解するかという第1類型案とも共通する問題と思います。

もう一度、改めて消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 この点については「強引に」というところでどう考えるかというところでございまして、「強調して」というところが「強引」の中に実は含まれているのではないかという考え方もあろうかと思います。その点については、法制的な観点から、よりこの趣旨を表す文言を検討したいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。先ほども出ておりましたように、「強引に求める」というのは、現在のところ用例がないということでした。このような表現で立法化できるか、ないしは適当かという問題が残っていることは、先ほどの第1類型案も同様です。

ただ、意図しているところはこれで表現されているとするならば、それをどう立法上適切な形に表現するかという次の問題に移るというように御理解いただければと思います。よろしいでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 「強引に」というところの考え方というか、全体にも関係するのですけれども、先ほど来、資料もそうですし、消費者庁からの御説明もそうなのですが、不当性という言葉が出てきています。今の学問的な状況を分かっていないのですが、一般的に取消しをなぜ認めているかというと、本当の意思と違っているからということだと理解しています。他方で、不当性があれば、すなわち、事業者の行為に不当性があれば、不当な行為をした事業者として、事業者から見た取引の安全が阻害されても仕方ない、不当性があるので取消しという不利益は仕方ないということを含意しているのかもしれません。要するに意思が本当の意思じゃなくなっていて、意思形成に問題があるから駄目なのか、それとも不当性があるから駄目なのかというのはどのように捉えておられるのでしょうか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 今回の提案は困惑類型ということでございますので、そもそもこの事業者の行為によって困惑するかどうか。そこはやはり意思形成において瑕疵があるかということでございまして、この規定案で消費者の意思形成について瑕疵を生じさせている。

ただ、そうは言っても、様々な行為パターンがあるとは思うんですけれども、その中でより通常の取引についても影響を与えないという意味で行為の不当性を捉えるという観点から限定を加えているというものでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、河上委員長。

○河上委員長 私はこれで結構だと思うんですけれども、ただ、ちょっとしつこい表現が目立つので、例えば最後の「正当な理由がないのに強調して告げ」、しかも「強引に求める」というのは何か畳み掛けているようで、ここまで言う必要はないのではないかと思います。

恐らく「正当な理由がないのに」ぐらいで、「強調して告げ」は告げたか、告げなかったかというのでまた争いになるのも嫌だから、この部分はもう取ってしまっていいのではないかという提案です。これを取らないと絶対に嫌だというつもりはありません。

もう一つは、「当該事業者に損失が生じること」というのは、さっき増田委員がおっしゃっていたことは私もそうだなと思って、「損失」は例えば「負担」とか、何か別の表現も考えられるので、それはちょっと考えていただければということで、大枠というか、全体的な方向では賛成いたします。

○山本(敬)座長 少し聞き逃したのですけれども、1点目は「正当な理由が」。

○河上委員長 「正当な理由がないのに」の次の「強調して告げ」はもう要らないのではないですか。

○山本(敬)座長 「告げ」までも削除ですか。しかし、告げることがなければ、その前の部分が意味を持たないように思うのですが。

○河上委員長 そうですね。

○山本(敬)座長 「強調して」を削除するという趣旨ではないかと思ったのですが。

○河上委員長 「強調して」が削除ですね。強調したのかどうかというところが気持ちが悪かったものですから。

○山本(敬)座長 「告げる」を削除すると、意味を失ってしまいますので。

○河上委員長 「告げる」も「示す」ぐらいでもいいですね。どちらにしても「強調して」というのはもう要らない。

○山本(敬)座長 分かりました。そのような御提案だったと理解させていただきます。

増田委員。

○増田委員 繰り返しになるんですけれども、この「強引に求めること」ということについて、家に来て、家まで知られていて、なおかつこういう状況にあるということを踏まえて考えると、具体的に強引性というのが明示されていなくても消費者にとってみれば強引以外の何物でもないと考えますので、そこのところの解釈については配慮していただきたいと思います。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 私がこの「強引に」という言葉の確認をさせていただいたのは、今日、最初に検討した事例ですね。この「不安を煽る告知」のところでは、もともと「過度に強調」してという文言だったのを「正当な理由」というふうに付け加えた結果、「過度に」という要件を削除して、「正当な理由がないのに強調して告げること」ということでここの規定は終わっています。

これは6ページにそう書いていますが、ここでは「正当な理由がないのに強調して告げ」、かつ「強引に求めること」という文言がありますので、他の類型とのバランスというか、別に私は強くこの「強引に求めること」を削除してほしいということではないのですが、全体として見たときにこの第2類型案というのはかなり悪質な場面を想定しているのだろう、すなわち、他の類型と比べて、かなり悪質な場合に限定しているんだなというふうにも読めます。全体として本日の資料では「正当な理由」というところでその強引性とか過度性を読み込んでいるという案になっていますところ、22ページでは「強引に」というのが更に付いていますので、仮にこういうふうにするのであれば、なぜどこがどう違うのかとか、あるいはさっきの「強引に」の解釈については逐条解説等でこれらをしっかり書く必要があるのではないかと思います。

今回の資料全体を見てバランスを見て、ちょっと気になったので質問させていただきました。以上です。

○山本(敬)座長 今の御発言は、提案が入っていたのでしょうか。それとも、質問のみだったのでしょうか。

○大澤委員 意見です。

○山本(敬)座長 提案ではなく、意見を述べられたというように理解してよろしいのでしょうか。

○大澤委員 個人的には「強引に」までは要らないのではないかと思いますけれども、そこでまたもめてしまって時間がかかったりとか、これが落ちることは一番避けたいと思っていますので、強く提案する趣旨ではありません。

ただ、他の類型と比べたときに、ここだけ「強引に」というのがなぜ入っているのかという疑義はやはり生じるかと思いますので、「強引に」と入れるのであれば、この事案はこういう場合に限定しているんです。こういう案を、こういう事例を想定しているんですということは説明が必要かなと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。確かに「強引に求める」という要件を今回付け加えているわけで、そうすると前の部分で「正当な理由がないのに強調して告げ」と更に限定する必要があるかという点は、先ほど河上委員長とのやり取りで出てきましたように、少し検討の余地があるかもしれません。

「正当な理由がなく、告げ」という部分に加えて、後で「強引に求める」というのはやはり強調しているという趣旨を含んでいると考えざるを得ないだろうと思いますので、重複表現になっているという指摘はあり得るように思います。その意味では、少し整理をする必要があるかもしれません。この点はもう少し検討して、取りまとめる際にもう一度お考えいただければと思います。

それでは、長谷川委員。

○長谷川委員 今の点についてですけれども、確かに「強調して」と「強引に」というのは重複するところがあるようにも思います。

他方で、「強調して」という要件は、いろいろな検討の過程で言葉が出てきたもので、そもそも念頭に置いている事例として、何かやったことの代償としてというような、そういうイメージで語られてきたものを捉えようとしているものだと思っております。

ですから、これをやったのですというのを正に強調してということを何らかの形で捉える表現があったほうが、念頭に置いている事例や、これまでの検討と整合的なのではないかと感じております。

○山本(敬)座長 分かりました。ありがとうございます。今の点を含めて、もう少し詰めた上で取りまとめ案を作成するということでよいのではないかと思います。他にいかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 今の点について補足ですけれども、例えばデート商法のように、そもそもそういう関係を作って契約をするというのは一般的にはないことだということの中で規定ぶりがされていると思うのですが、事業者の立場からしますと、一定の行為をして、それに対してお支払を求めるというのは、そこの部分は基本的に通常の行為なので、そこに対しては更に絞り込みが必要だというところを事業者としては考えているところでございますので、その書きぶりをどうするかということは別として、今の中から「強引に」というところだけを取ってしまうと若干不安が残るというところでございます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、よろしいでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 今の中村委員の御意見なのですが、それは正当な理由のところでも読み込めるのではないかと思います。

例えば、現に消費者のためにそういう行為を実施した結果、現に交通費が発生していて、正当に交通費とかが請求できるということであれば、これは正当な理由がないということは言えないと思いますので、「強引に」というのはその正当な理由がないことに加えて、更にしつこく言うとか、あるいはすごく怖い言い方をするとか、どちらかと言えば行為態様のほうかと思います。意見です。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

それでは、今回消費者庁からお出しいただいている規定案につきましては、反対という意見はなかったと思いますので、基本的にはこの規定案の方向で取りまとめを行うということでよろしいでしょうか。

ただ、表現等につきましては今日、御意見をいただきましたので、それを踏まえて更に精査した上で取りまとめ案を作成することとさせていただければと思います。ありがとうございました。

それでは、「困惑類型の追加」につきましてはこの辺りとさせていただきます。

≪4.「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」に関連する検討≫

最後に、資料1の11ページに記載されています、第40回において山本健司委員から御提案をいただいた規定案の取扱いについての意見交換を行いたいと思います。説明は先ほど消費者庁から既にしていただいていますので、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

山本健司委員。

○山本(健)委員 まず、御多用のところ、当職からの提案について御検討をいただいたことに感謝申し上げます。しかし、最終的な結論として、今回の立法では見送りというのは非常に残念に思います。今回の専門調査会が組成される契機となった内閣総理大臣からの諮問には、高齢化の進展を初めとした社会経済状況への対応等の観点から、契約締結過程にかかる規律の在り方を検討することという記載部分があります。高齢化社会に対応した民事ルールの検討は、この専門調査会の重要な役割と思料いたします。

そして、第40回会議でも申し上げましたとおり、実際の被害事例には、高齢者や知的障害者の皆さんが既に合理的な判断をすることができない状況にあるということを知りながら、消費者に不必要な契約を勧誘するというタイプの不当勧誘行為が少なくありません。

この点、第1次改正でとりあえず過量契約に関する取消規定ができました。これは有用な規定であると思います。しかし、認知症の高齢者に安い商品を高く買わせた事例や、同一でない商品を次々と買わせた事例には、文言上適用されないという理解が有力であるように思われます。認知症の高齢者に同一商品を次々と買わせた事例も、異なる商品を次々買わせた事例も、安い商品を高く買わせた事例も、販売行為の問題性と被害者救済の必要性は変わらないように思います。過量契約に関する取消規定だけでは十分ではないと思われます。

規定に不十分な点があることを認識しつつ、その点を埋める規定を設けないというのは、問題のある対応だと思います。過量契約取消規定が制定された趣旨を十全たるものにするためにも、今回提案させていただきましたようなつけ込み型不当勧誘取消規定を追加して設定することが必要不可欠であると考えます。

今回の資料1の分析において、「当該消費者の生活に不必要な商品・役務を目的とする契約」という要件部分について問題があるという御指摘をいただいております。それならば、併記させていただきましたような、現代的暴利行為論を参考にした「当該消費者に過大な不利益をもたらす契約」等の要件とすればよいと思います。

前回も申し上げましたとおり、既に地方自治体の消費生活条例において、事業者の不適正な勧誘行為と位置付けられている行為類型であれば、新たに事業活動が制約されるといった位置付けでもないはずです。このような趣旨の規定を設けることには、必要性のみならず、許容性もあると思います。

今回御提案させていただきましたようなつけ込み型不当勧誘取消規定を立法すべきであると考えます。あくまで、これが第一次的な意見です。

第二次的な意見をあらかじめ申し上げておきます。もし万一残された検討時間との関係でこの専門調査会でのこれ以上の検討は時間的に無理であるということならば、報告書に、そのような事情と、高齢化社会におけるつけ込み型不当勧誘取消規定の必要性・重要性と、かかる規定の可及的速やかな立法に向けた継続検討が必要であるということと、つけ込み型不当勧誘については新たな立法ができる前段階であっても公序良俗や不法行為に該当する可能性があるということを、明記していただきたいと思います。少なくとも、そのような意見が専門調査会で強く述べられたということを明記していただきたいと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。今の点につきまして、御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 私も、大変残念に思います。

消費者委員会のワーキング・グループでも、例の成年年齢の引下げとの関係で、やはり若年消費者の未経験とか判断力不足につけ込んだ不当な利益の追求というタイプの勧誘行為に取消権を入れるということが必要ではないかということを申し上げました。もちろん、高齢者の判断力不足へのつけ込みも大きな問題ですし、障害者に対する保護というのも大きな課題になっている。

さらに、今、成年年齢の引下げに伴って、若年成人の保護ということが課題になっている今、今回の消費者契約法の中で私は最初の提案が一番良いと思いますけれども、そういう形での取消権を導入するということについては是非前向きに考えていただければと思っておりました。

なぜ、それが駄目になったのかという理由がまだ一つ腑に落ちないのです。あれだけ、多数の方々の支持がありながら、どうして「継続して検討」というところまで下がらないといけないのかというのがよく分からない。具体的にそれでは駄目だという意見が本当にあったかについては、ここに参加していていま一つ釈然としないところがございます。いま一度、考え直す余地はないのでしょうか。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。この場で、これでは駄目だという意見があったかという点につきましては、既に消費者庁から最初に御説明がありましたとおり、このような方向性での提案があり、検討したのですけれども、要件の明確性、波及する影響について懸念を示す声がたくさんあり、何とか解決の方向を見出すために変遷を重ねた結果、今日、御検討いただいた困惑に関わる規定として成文化を目指すということで一致をみたところです。反対が明確にどうあったかという点はともかくとして、やはりこのような形でしか今回はコンセンサスが得られなかったということは言えるのではないかと思います。

私自身も1990年代半ばぐらいから公序良俗の研究をずっと続けている人間でして、これは民法の90条について展開されてきた考え方ですので、民法に規定を置くことが本来は望ましいと考えてきました。しかし、御承知のとおり、民法の改正に際しても、要件の明確化が必要であり、少なくとも予測可能性が一定程度付くような形でないと影響が大き過ぎるという意見が強くて、改正案からは落ちることになりました。

私自身、非常に残念に思っているところですけれども、実際に法律に規定していくときの規定の仕方、そしてその規定が採用された場合の帰結の見通しについて、これは研究者だけではなく実務家の方々にもお願いしたいところですけれども、更に努力をして、多くの人たちから賛同が得られるような形でまとめていくための前提となる基礎的な作業が必要ではないかということを、私自身この数年の間に学んだところでして、ここでも同じことが問題になったように思います。もちろん、これで終わりというわけではなく、成案が得られるような方向で今後も更に努力を積み重ねていく必要があると思っているところです。

少し余計なことを申し上げてしまいましたけれども、他に御意見があればと思います。

では、河野委員、そして大澤委員お願いします。

○河野委員 ありがとうございます。今の山本座長の御言葉を聞いて、これ以上何か付け加えることはあるのかとも思ったところなんですけれども、私がここの専門調査会に出ていてよく分かったことは、やはり法律というのは判例とか事例を積み上げていって最終的に成立するものだということでございます。

ただ、ここで山本健司委員が御提案されたことは大変重要で、日本社会が直面している問題として超高齢化社会という社会環境の変化に対して、予測とか想定とかでしか被害を見通せないからと対応せずに私たちはただ見ていていいのだろうかという危機感を非常に覚えているところです。

法律の世界でそういった考え方が通用しないということは、私自身もよくよく分かった上で、高齢者の特に判断力に関する問題、さらには成年年齢引下げに伴うところに関する判断力の問題に関してはここにいらっしゃる有識者の先生方、それから実務家の皆さんに是非前向きな検討をお願いしたいと思っています。

今回のこの帰結は時間がないということで受け入れざるを得ないというふうには、私自身も非常に残念ですけれども、思っておりますが、報告書の中には先ほど山本健司委員がおっしゃったような形でしっかりと書き込んでいただき、必要に応じてではなくて必ずやらなければいけないという姿勢で書き込んでいただきたいと思っています。

○山本(敬)座長 では、大澤委員。

○大澤委員 今回は時間がないということですので、私も山本健司委員がおっしゃっていた第2点ですね。報告書等で今後の継続課題として必ず検討するということは、個人的には書いてほしいと強く考えております。

個人的なことになりますが、私はこの点につきましては今フランス法を勉強しているところですけれども、外国のことだとおっしゃるかもしれませんが、フランスではぜい弱性の濫用、消費者の弱い部分を濫用したという場合には刑事罰が科されているという規定が設けられています。

それに加えまして、この種の規定が民法の中に昨年の改正で入りました。そのような状況にありまして、先ほど座長からもありましたけれども、日本では民法でも暴利行為についてなかなか成案が得られなかったということもありますし、消費者契約法においても成案が得られなかったというのは非常に問題があると個人的には思っています。

とりわけ、既に何名の委員からも出ているような、現に高齢者問題などが起きている状況であるにもかかわらず、この成案が得られなかったというのは残念に思っています。

ただ、一方で11ページ、12ページにも書かれていますが、ではフランスでこの案がすんなり通ったかというと全くそんなことはなくて、例えば山本健司委員の案の中で言いますと、過大な不利益をもたらす関与をした場合に要件を絞るべきなのか、それとも不必要なというので足りるのかというのはかなり議論されました。民法に規定が設けられるときにも、この点をめぐって案が二転三転しておりまして、この案を成案するに当たってはかなりの議論が必要であると個人的には強く思っています。

ですので、必要性は十分あるということで、海外でも既にこれを消費者契約法だけではなくて民法で規定化しているというところは皆さんに分かっていただきたいのですが、ただ、今後議論をするに当たっては今、言ったような要件、とりわけ公序良俗との関係でかなりの議論が必要だと考えます。

ですから、結論としては今回は見送らざるを得ないかと思いますが、今後この議論は続けていきたいと思いますし、個人的にも微力ながらこの点を海外の案を参考に検討していきたいと思っております。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

磯辺委員。

○磯辺委員 山本健司委員の提案が実現できるといいなと思って議論に参加していましたので、今回非常に残念なんですけれども、同時にこの専門調査会に諮問された内容が高齢化社会の対応なんだといったときに、こういう年齢や障害による判断力の不足に乗じてというふうな既に置かれた状況を濫用、利用して契約させるという類型に今回なかなか手が付かなかったということは、宿題をやり残したという認識は必要なのだろうと思うわけです。

そういう意味では、12ページの表現のように「今後の課題として、必要に応じて更に検討すべきもの」というふうな緩やかな表現ではなくて、宿題としてやり残したので早急に引き続き成案が得られるように検討する場というのを、それがどういう場なのかはまた別ですけれども、持つ必要があるというふうな強調した取りまとめの仕方ということが具体的に求められるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、増田委員。

○増田委員 私どもの相談室においても、例えば羽毛の肌掛け、上掛け、そして敷布団、トルマリンの入った敷きパット、ムートンシーツ、それらを併せて300万円程度の契約をしたというような相談が入ります。そうしたときに、何枚かずついろいろな種類を契約をするとなると過量なのかどうかという判断が難しかったり、使ってしまったものの清算とか解決に時間がかかります。

それから、20歳そこそこの女性が1年間で200万円のエステティックの契約をしたなどの相談はいまだに普通に入ってまいります。

それぞれの生活に通常必要とされないということが条件となって、解決しやすくなるということになれば、非常に消費生活相談の現場では効果があると考えますので、是非とも次回のときには取り上げていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。今回、この論点について検討がなかなか進まない理由というのは、消費者庁から示された資料に書いてあるとおりなのではないかと思っております。外から見て、今の生活の状況等に照らして不必要かどうかというのはなかなか分かりにくいということなのだろうと思っております。

その上で2点ございます。1点目は、今、高齢者の話と若年層の話が出ておりましたが、データを見ると若年層の消費者被害は減っておりますので、データを踏まえて検討したほうがいいのではないかとということです。

2点目は、高齢者、とりわけ60歳ぐらいまでは消費者被害が増えていないと思いますけれども、70歳代を超えてからは増えているというような形になっているかと思います。その点については、御指摘のとおり、消費者契約法であるかどうかは別にして、対応すべき課題があるのだろうと思います。ただ、取引の安全性との関係でそういった消費者を保護していく制度としては成年後見という制度もあると思っております。省庁がまたがってしまうので、「霞ヶ関の論理」としては検討が進みにくいのかもしれませんけれども、そういったいろいろな諸制度全体を視野に検討していくべき課題だろうと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 ありがとうございます。今の長谷川委員の御意見とかぶるところがあるんですけれども、高齢者の被害事例というのがあって、それに対して対応を考えていかなければいけないということについては異論が特にあるわけではないですが、やはり生活に不必要な商品、あるいは過大な商品といったものに関しては、一般的にも消費者というのは不必要なものを買う場合は得てしてあるのだと思います。

ですから、そこはその程度をどう見るかということになってくるかと思いますので、その価値判断を事業者が必ずしなければいけないということについては、いろいろな課題があるということで、なかなかそこの部分の判断を明文化するのはいろいろ課題があるんだと思います。

それと、今、長谷川委員からありましたように、それを消費者契約法で対応して、取消しという形での解決がいいのか、特商法のような形での記述がいいのか、あるいは高齢者保護の何らかの別の方法がいいのか。成年後見人という制度では若干不安があるということかもしれないんですけれども、他方でやはり高齢者としての自由な生活の権利といいますか、私だっていいものを買いたいのよという人もいらっしゃるでしょうし、例えば70代で活躍されている方もたくさんいらっしゃるわけなので、そういったことも考えた上で、あるべき高齢者の被害の予防の在り方というのは総合的に考えていくべきと考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、この11ページ以下の山本健司委員からの提案に関しましては、表現はともかくとしまして、今回の改正案に取り入れるということはしない。しかし、今後の重要な課題であることは間違いありませんので、その点についてどのようにまとめるかは次の問題ですが、報告書の中で次につながるような形で明記するということでお願いできればと思います。以上でよろしいでしょうか。

それでは、以上で、本日の検討すべき課題の検討は終わったということとさせていただきます。御協力、本当にありがとうございました。

最後に、事務局より事務連絡をお願いいたします。


≪5.閉会≫

○丸山参事官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、来週7月21日金曜日15時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 毎週、毎週、本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以 上