第9回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年4月24日(金)16:00~19:15

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、柳川委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長、山田取引対策課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 不当勧誘に関する規律(2)
    不当勧誘行為に関するその他の類型、第三者による不当勧誘、取消権の行使期間
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第9回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により、山本和彦委員が御欠席との御連絡をいただいております。

配付資料の確認をさせていただきます。

資料1は、消費者庁からの提出資料で、本日御議論いただく不当勧誘に関する規律に関する論点の検討資料です。また、資料1に関連する消費者庁提出資料として、参考資料1から3を配付してございます。

資料2は、山本健司委員からの提出資料です。

配付資料は以上です。不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、ここからは山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.不当勧誘に関する規律(2)≫

(1)不当勧誘行為に関するその他の類型
(1)-1 事業者の行為により自由な意思決定がゆがめられる類型

○山本(敬)座長 本日もよろしくお願いいたします。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。

本日は、前回に続きまして、消費者契約法の不当勧誘に関する規律について御議論いただきたいと思います。消費者庁から各論点の検討のための資料として、資料1及び参考資料1から3を御提出いただいています。

資料1の表紙の目次にありますとおり、枝番を含めますと4つの論点が示されていますので、それぞれの論点ごとに区切って、消費者庁からの御説明と委員の皆様による御議論をお願いしたいと思います。

それでは、まず1つ目の論点、「不当勧誘に関するその他の類型」のうち、「事業者の行為により自由な意思決定がゆがめられる類型」について検討したいと思います。消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、御説明いたします。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

資料1の1ページからでありますが、1-1としまして「事業者の行為により自由な意思決定がゆがめられる類型」ということで書いております。また、例によりまして事例を幾つか御紹介いたしまして、御説明するというふうにしております。

3ページをごらんいただきますと、「現行法の規定」のということで書いております。現行法は、消費者契約法4条3項で、いわゆる不退去・監禁による取消しというのを認めております。条文につきましては、18ページに書いております。いずれにしましても、退去してくれない、あるいは退去させてくれないという物理的な拘束関係にある状況から脱するために契約してしまったというものを想定しているわけであります。3ページの(イ)に書いておりますように、具体的には4ページの「例えば」というあたりに書いていますが、そういった物理的な状況じゃないものも見られるところでございます。

2ページに戻っていただきまして、事例1-1及び1-2がそうでありまして、端的に申し上げますと、電話でありますが、勧誘をしつこくされて、しかも断ったにもかかわらず、何度も、というのが1-1、1-2の共通点であります。そういうことで、しようがないから契約してしまったというものがございます。これについて、どう見るかというものが問題意識でございます。

それから、4ページです。「他にも」という段落がございますけれども、民法の強迫では害悪の告知というものが必要だと。単に脅かしているだけではなくて、具体的に何らかの危害を加えますよという告知が要件として必要と考えられておりますが、それはないのだけれども、威迫的、また粗野・乱暴な言動を用いる場合ということであります。

2ページに戻っていただきますと、事案1-3、1-4がそうであります。例えば1-3でありますと、電話でありますけれども、怒鳴られて怖くなったということでありますが、害悪の告知は必ずしもないということであります。1-4は電話でありますけれども、口調が突然居丈高になったというものでありまして、必ずしも害悪の告知はないと見られる事案であります。怖くなって契約してしまったというのは、よく見られるわけですけれども、民法上の強迫では拾いにくいと思われるところであります。

事例1-5は、ちょっと毛色が違うのですが、最近の相談事例で非常によくあるということで、後ろのほうにも最近の国民生活センターの公表資料、19ページに書いてございます。パソコンの警告表示が突然出まして、このパソコンは危ないですよと言われて、それでセキュリティーソフトを購入してしまったという事例が非常にふえているというケースでございます。怒鳴られたりというものと同視できるかどうかというのは、よく検討する必要がありますけれども、最近の相談事例ということで挙げております。

4ページに戻っていただきますと、そういった現行法の不退去・監禁あるいは強迫行為では必ずしも拾えないのではないか。ただ、昔からよくある被害事例でありまして、そういったところについてどう見るかというところでございます。

それで、4ページの「イ 考え方」の「現行法の考え方」としましては、不退去・監禁など取消しを認めた経緯について書いておりますが、5ページの「(イ)検討」の「マル1執拗な電話勧誘」というところであります。1-1、1-2のような、物理的な自由が奪われているわけではないのだけれども、電話をかけないでくださいといったことを言ったにもかかわらず、しつこくかけられて契約したというところです。

1段落目の下から6行目から書いてあるところですけれども、そういった執拗な電話勧誘は、消費者が契約を締結しなければその勧誘行為を継続的に受けることになるのだと思って、困惑して契約に及んでしまうという点で、不退去・監禁と共通しているとも考えられるということでありまして、そういう点に着目すれば、不退去・監禁並びの困惑類型として、新たな取消事由としていくことが考えられるのではないかと書かせていただいております。

さらに一歩進みまして、「また」というところでありますけれども、本質的な要素として、要するにそれ以上は勧誘をしないでください、勧誘の継続を希望しない旨を伝えたにもかかわらず、継続するということで困惑させるということであれば、そこにむしろ着目して一般的な規定にするというのも考えられるのではないかと書いております。

6ページに「そこで」ということで、甲案、乙案と書いておりますが、甲案としましては、現行法の4条3項1号、2号という形で不退去・監禁とあるところに、例えば3号、4号という形で、電話とかをつけ加えることを検討してはどうかどういうことでありまして、具体的には「例えば」と書いてありますけれども、事業者に対して、「消費者が、電話による勧誘を中止すべき旨の意思を示したにもかかわらず、勧誘を継続する」という書き方をしてはどうかということであります。

他方、乙案は、一般的な規定にすることも考えられるところでありまして、例えば、消費者が当該消費者契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続したことにより困惑したときは、取り消すことができるという形で一般的にしていくこともあり得るということで書いております。

以上がマル1の執拗な勧誘というところであります。

引き続きまして、マル2の威迫でありますが、先ほど申し上げましたように、害悪の告知があるわけじゃないというところでは、民法の強迫では拾いにくいところであります。こういったものについて、威迫による困惑という考え方もあるところでありまして、7ページに書いてあります。例えば特商法においては、威迫による困惑が行為規制として禁止されているというものもございます。

他方で、ちょっと毛色が変わりますけれども、暴力団の不当な行為の防止等に関する法律においては、粗野・乱暴・迷惑を覚えさせる行為を禁止するというのもありますので、そういったところを踏まえますと、例えば甲案という形で、威迫したことにより困惑した場合には、取り消すことができるという規定を設けることも考えられると思いますし、乙案で、具体的なその行為の内容を書きおろしていく。粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又は迷惑を覚えせるような方法で勧誘したことにより困惑しという書き方もあり得るのではないかということで書いております。

いずれにしましても、それらの行為によって困惑して意思表示したということが当然必要になってくる。それによって意識がゆがめられたということを前提に取消事由にするということでありますので、単に大声を出すとか威迫したというところだけを民事の規定で着目するというものではございません。

次に、(2)の「不招請勧誘」でございます。こういった不退去・監禁、さらには電話勧誘といったものにつきましては、類似の規律としまして、いわゆる不招請勧誘。7ページの「この点に関連して」という行の最後のほうの括弧に書いておりますが、「消費者からの要請がないにもかかわらず事業者が一方的に行う勧誘」に関する規律を設けるべきではないかという指摘は従前からいただいているところであります。

現行制度としましては、主に金融商品の分野で、まず導入され、それがじわじわと広がりを見せてきている。商品先物取引法でありますとか、そういうところに広がってきている。

8ページでありますけれども、特商法においては、訪問購入に関して一部導入されているところかと思います。ただ、いわゆる不招請勧誘に関する苦情相談は非常に多いところでありまして、2段落目ぐらいから書いているところですが、訪問販売や電話勧誘に関してというところでありますけれども、一定数の相談があるということで、参考でもつけておりますが、従前からよく見られる相談であるということを書いております。

それから、不招請勧誘の問題性といいますか、それの分析としまして、8ページの下の段落あたりですが、「消費者に対する攻撃性」、「情報の不足」、「判断能力の不足」、それから私生活も含めた消費者に対して大きな影響を与える可能性があるという指摘を紹介しております。

9ページの「また」という段落の上から4行目ぐらいの「更には」ということでありますが、こういった訪問販売・電話勧誘というのは、勧誘員が断れない消費者に出会う確率は低い。そうしますと、応じてくれた人をターゲットとして何回も狙っていくということで、いわゆるカモリストみたいな話もそれに相通ずると思いますけれども、そういう人に集中していくという性質が内在しているのではないかという分析もございます。そういう観点から、不招請勧誘に関する規律、典型的には訪問販売・電話勧誘に見られることが多いと思いますけれども、消費者契約において指摘されるさまざまな問題点を生じさせる原因として見ることもできるのではないかということでありまして、消費者契約法において何らかの規律を設けることが考えられないかということであります。

9ページの「そこで」ということで、3つ案をお示ししております。

まず、甲案ということで、そういったさまざまな問題の抑止を図るという観点から、行為規制を設けて、それを適格団体による差止め対象とするという考え方をお示ししております。これは、例えば特商法にしても、金融商品取引法にしましても、行政法の分野でありましたら端的に行政規制を設けて、それを処分の対象にする。それで抑止を図っていくということだと思いますけれども、消費者契約法の世界でもし受けるとすれば、これは適格団体の差止め制度というものが符合するのではないかということであります。

それに対して、乙案は、不招請勧誘によって消費者が迷惑をこうむる。具体的には私生活の平穏を脅かされるとか、そういった何らかの損害をこうむることもありますので、そうした場合の損害賠償規定を設けるということも考えられると思います。

さらには、丙案という形でさらに一歩進みまして、契約の取消権へつなげていくという考え方もあるとは思います。

ただし、注意しなければならない点もあると思っておりますので、9ページの「なお」というところで書いております。

1つは、甲案、乙案、丙案、いずれにしましても、消費者契約法の中で設けるのが適当かどうかというところは、よく検討する必要があるだろうと思うところでありまして、消費者契約法はあらゆる消費者契約に適用されるということでありますので、不招請勧誘に関する規律を設けるのになじむのかという点は、よく検討する必要があるだろうと思います。

また、乙案のように損害賠償ということを考えた場合、その損害の内容は何かということになりますと、典型的には生活の平穏に対する侵害というと、慰謝料が一番わかりやすいのではないかと思われるところでありますが、そのほかにもいろいろな出捐を考えるということにしますと、多様なものが入り得るということでありまして、むしろ民法その他の一般法の規定の適用に委ねるということも考えられると思います。

また、取消権の規定を設けることにつきましては、威迫にしても、電話の執拗な勧誘にしても、あくまでも困惑し、意思表示したというのが前提ですと先ほど申し上げましたが、そういった意思形成のゆがみというところが、結局、取消権の発生事由であると考えるのであれば、むしろ困惑類型の拡張によって対処していくことのほうが適切とも考えられるところでありますので、そういった点も踏まえて、もし丙案を考えるのであれば検討する必要があるのではないかということで書かせていただきました。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方、御発言をお願いします。阿部委員。

○阿部委員  最初に、基本的な考え方でありますけれども、ここに出ている事例ですが、果たしていわゆる消費者契約一般に拡張して考えるべきものなのか、あるいは特定商取引法のターゲットとして、むしろそちらのほうで議論すべきものなのか、ここをよく詰めていきたいと思います。

その上で、特に電話勧誘とか不招請勧誘というものを消費者契約法一般の規制として置くことにどこまでの意味があるのか。むしろ来週の特商法の議論で不招請勧誘はかなり議論になりますけれども、そちらでしっかりと詰めたほうがいいのではないかということを前提に、今回の具体的な案でありますが、まず執拗な電話勧誘について申し上げます。先ほど申しましたとおり、これはあくまでも電話勧誘ということであれば、特商法で対応すれば足りるわけでありまして、現状の特商法の対応で足りないところがあれば、むしろ特商法の改正に持っていくべきであるということを主張したいと思います。 それから、7ページ目の威迫類型について。ここもいろいろな議論があるかと思うのですが、今の特商法の6条3項のような書きぶりを一つのモデルとして考えていってはどうかと思います。それ以上に、例えば乙案が法律としてきちんとターゲットを絞り切れるかというと、疑問があるかなと思います。

不招請勧誘は、先ほど申しましたとおり、そもそもこれは特商法で議論できればいいかなと思っております。その上で足りない点があれば、特商法をまず改正して、それと全く同じ規律を消費者契約法に持ってくるということであれば反対はいたしません。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。山本健司委員。

○山本(健)委員 詳細な御報告をいただきまして、ありがとうございました。本日、資料2というペーパーを配付させていただいております。これを引用しながら意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、「困惑類型の拡張の是非」について、困惑取消の対象となる類型を追加することに賛成いたします。

理由です。事業者の不当な勧誘行為で消費者が困惑して契約を締結してしまったという事案は、事業者に不退去・退去妨害が存在した事案に限られません。例えば、事業者が消費者の自宅や職場への執拗な電話勧誘や訪問勧誘を繰り返す、強迫まがいの威迫的な言動を行う、霊感商法など殊さらに不安や恐怖心をあおるなどの方法で、消費者を困惑させて契約を締結させるといった被害事例が多々見受けられます。したがって、困惑類型の取消の対象類型として、不退去・退去妨害以外の困惑惹起行為を追加することに賛成いたします。

次に、「(1)執拗な電話勧誘」という題名で問題設定していただいている論点につきましては、乙案に賛成いたします。

理由です。事業者の執拗な勧誘によって消費者が困惑して契約を締結してしまったという事例は、電話勧誘の事案が確かに代表例ですが、それに限られません。例えば、執拗に自宅や職場への訪問を繰り返す事案も存在します。したがって、執拗な勧誘の手段を電話勧誘に限定しない考え方(乙案)に賛成いたします。

次に、「(2)の威迫等による困惑」という題名で問題設定していただいている論点につきましては、乙案に賛成いたします。そのうえで、「迷惑を覚えさせるような方法で」の前に「(心理的)不安や」という字句を付加することを提案いたします。

理由です。事業者の不当勧誘行為で消費者が困惑して契約を締結してしまったという事案には、「不退去・退去妨害」、「執拗な勧誘」以外に、強迫まがいの威迫的な言動が行われたという事案があります。この点、困惑惹起行為に「威迫」や「粗野・粗暴な言動」を付加することには賛成です。

しかし、上記のような事例以外にも、例えば、パソコンに一方的に「脅威にさらされている」等の警告を表示するといった事案(消費者庁の資料1の事例1-5で御紹介されているような事案)、霊感商法のように「子供に将来不幸が起きる」など殊さらに不安や恐怖心をあおるといった方法で、消費者の不安や動揺を駆り立てて困惑させ、契約を締結させるという不当勧誘行為も類型的に存在いたします。

したがって、困惑惹起行為を「威迫」や「粗野・乱暴な言動」に限定せず、「迷惑を覚えさせるような方法」をも含む考え方(乙案)に賛成いたします。

そのうえで、上述した霊感商法も含まれるということをより明確にするために、「迷惑を覚えさせるような方法で」という部分を「(心理的)不安や迷惑を覚えさせるような方法で」という字句とすることを提案いたします。

次に、「不招請勧誘に関する規律」については、乙案に賛成いたします。

理由です。消費者の意向を無視した自宅や職場への電話勧誘や訪問勧誘、パソコンや携帯電話への勧誘メール(迷惑メール)の送付といった勧誘方法(いわゆる不招請勧誘)は、消費者契約被害の温床となっているという側面に加え、それ自体が消費者の私生活の平穏を侵害する類型的な不当勧誘行為であると思われます。

かかる不招請勧誘について、消費者契約法において、私法上も違法な行為であることを明らかにし、消費者に救済手段を与える必要性は高いと考えます。

具体的な法規範のあり方としては、契約締結前の段階であっても私生活の平穏を侵害している点において民事上も違法な勧誘行為であることを明らかにする必要がある、個々の被害者に救済手段を与える必要があるという観点から、損害賠償義務を規定するあり方(乙案)に賛成いたします。

なお、困惑取消しとのすみ分けは、不招請勧誘が困惑惹起行為に至ったと評価できる場合には困惑取消しが適用される余地があるという整理で図り得ると思います。

最後に、特商法との関係ですけれども、特商法に不招請勧誘に関する行政規制を規定することは有益であると考えます。しかし、その一方において、消費者契約法に不招請勧誘に関する民事効の規定を定めることも有益であると考えます。むしろ、2つの規定は不招請勧誘に関する法規制として車の両輪であると考えます。したがって、特商法に不招請勧誘に関する規定を設ければ消費者契約法では不要であるという考え方にはならないものと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ほかに。古閑委員。

○古閑委員 まず、執拗な電話勧誘についてですけれども、これは特商法でクーリングオフの制度とかもあると思うのですけれども、これだけではどうして救済として不十分なのかという点が、まだ腑に落ちておりません。

それから、執拗な電話勧誘ということの定義が非常に不明確になってしまうと、これはそのときの気持ち次第で変わることもあり得て、事後的に、そういえばあれは執拗だったということで取消しをしてきたりということも考えられると思うので、そういった不安定さも出てきてしまうのではないかと思います。

今回、私、事業者サイドの委員という言われ方をすることがあるので、そうであればいろいろな事業者に意見を聞かなければいけないと思って、少しでも多くの事業者さんにお話を聞こうと思って、いろいろ聞いてきたのですけれども、これはかなり反対が強くて、例えば甲案に関して言うと、今、お話していたとおり、執拗かどうかというのは相当個人差があるのではないかとか、将来の取消権の留保みたいな形になってしまうのではないかということで、不安を感じていらっしゃる事業者が多かったように思います。

それから、乙案に関して言うと、甲案よりもさらに外延が不明確な規定になってしまうということで、これは正常なビジネス活動を著しく阻害するおそれもあるのではないかという意見が出てきました。事業者の行為と消費者の意思がゆがめられたこととの間に、直接的な因果関係が必要というところをしっかりやっていかないと、ちょっと混乱が起きるのではないかと思います。

それから、威迫等による困惑のところですけれども、こちらはそもそも威迫の意味が不明確だということは、消費者契約法の立法過程でも議論されていたところでありまして、その事情というのは変わらないと思っています。そういう意味で甲案に反対ですし、乙案に関して言うと、粗野、乱暴な言動とか迷惑を覚えさせるような方法というのは、これは消費者の主観で変わり得るものであって、なかなか不明確な形になってしまうことがあり得るということを懸念しています。例えば顧客1名に対して2名で訪問しただけの場合に、それを威迫だと感じる方もいらっしゃると思いますし、方言等を粗野だと感じるケースもあり得る。それから、夕飯時に訪問されたということで、これを迷惑だと主張するケースなども考えられるのではないかということでした。

それから、パソコンの画面に一方的に警告を表示させるという行為態様という1例のみを示して、迷惑を覚えさせるような方法でと網をかけてしまうというのも、ちょっと広過ぎると思いますので、ここも慎重な議論が必要であろうと考えています。

それから、不招請勧誘に関しては、これは消費者にアクセスすることすら、実質許されないものにもなりかねず、あらゆる業種の企業活動を制約し、新規ビジネスを阻害し、事業者に甚大な影響を及ぼすことになろうと思われます。そういう意味では憲法上、保証されている営業の自由にかかわる問題にもなりかねないのではないかと思っておりまして、ここは憲法学者などの意見も聞くべきであろうと考えています。

それから、金商法や商品先物取引法等において、販売態様や商品類型を限定して規制対象とされていますが、例えば金商法38条においても不招請勧誘の規制が適用される商品類型として、外国為替証拠金取引による被害が社会問題化したこと等を受けて、丁寧な検討を重ねた上で、普通の一般の消費者の人はアクセスしないほうがいいという商品に限定して適用する趣旨で定めています。

これ自体は、2006年の国会審議の際にも、例えば岩原参考人などから「金融商品を利用したい人が実際上なかなか利用できなくなるという面、それから、業者サイドからしますと、営業の自由の制限と申しますか、本来、商取引活動は自由にやれるところが、事実上それが封じられるという側面もございます。したがいまして、不招請勧誘のルールを適用する場合というのは、私は、ある面慎重に考える必要がある。若干でも危険があったら常に不招請勧誘のルールを全面的に適用すべきかというとそうではなくて、本当にこういう取引というのはかなり危険性が高くて、例えば本来なるべく普通の一般の消費者の人なんかはアクセスしないほうがいいという商品に限って不招請勧誘を導入するのがよろしい」という意見も述べられているところであります。

そういった細かい議論が必要になる部分であろうと思います。

それから、今は高齢化が進んで、都道府県、市区町村で地域社会における見守り活動の充実が図られており、訪問販売・勧誘活動を行う事業者との連携なども推進されているところでございますので、こういった活動も阻害する要因になりかねないと思いますので、ここも慎重な議論が必要であろうと思われ、不招請勧誘についても反対したいところでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ほかにいかがでしょうか。丸山委員。

○丸山委員 まず、4条3項の改正の方向性という提案について、述べたいと思います。

クーリングオフなどがあるから拡大の必要はないのではないかという意見があったところでございますけれども、4条3項は一定の不当勧誘行為というものがあった場合に、消費者が困惑して、すなわち意思表示に瑕疵があって契約締結の意思表示をしてしまっている。したがって、取消しを認めるというものであり、退去・不退去に限らず、困惑が惹起される事態はあり得ますので、やはり拡張の必要というのはあるのではないかと出発点としては考えております。

その上で、提案されているマル1の執拗な勧誘のほうですけれども、こちらの方向性については、乙案の方向で考えてはどうかという意見を持っております。甲案だけですと、やはり漏れてくる事例があるのではないかと思います。たとえば、しつこいつきまとい行為によって契約するみたいなものを、後から何号という形で追加していくという立法のあり方よりも、ここで問題とされる行為を捉えられるようなやり方で立法というのを考えるべきではないかという意見を持っております。

他方で、マル2の威迫等による勧誘による契約締結については、幾つか詰めなければいけない点があると思います。これも既に指摘されたことですが、「威迫」という言葉の定義、あるいは「迷惑を覚えさせるような方法」というのが何を意味しているのかというのを、これは少し詰める必要があるのではないかと思います。とりわけ迷惑を覚えさせるような方法でと言った場合は、私はマル1の執拗な勧誘というのも、この迷惑を覚えるような方法に含まれると考えておりましたので、そういった相互の関係というのを明らかにする必要があるのではないかと考えております。

さらに、日弁連の山本委員から指摘があったところですが、確かに威迫など粗暴的な言動だけに着目すると、不安を覚えるような勧誘というのが漏れてしまうのではないかというのは御指摘のとおりだとは思います。他方で不安を覚えて契約するというのは、保険契約などの場面を考えると、余りにも緩い要件にしてしまうと広過ぎるという問題が出てくると思いますので、これも不相当に不安をあおるといった、絞りこめる要件を考えたほうがよいのではないか、こういった意見を持っております。

最後に不招請勧誘についてですけれども、不招請勧誘を消費者契約法に設けるという提案については、私自身は少し慎重に考える必要があるのではないかという意見を持っております。

丙案の取消規定については、御指摘がありましたように、むしろ意思表示の瑕疵に関する4条の拡張のほうで受けとめるべきではないかと考えております。

乙案の損害賠償規定については、保護法益が何になるのか、また生活の平穏を害されるという場合には、損害額をどう考えるのかといった議論を詰める必要があります。

そして、甲案などを考えると、そもそも不招請勧誘全般について、このように考えてよいのかということは少し慎重に考える必要があるのではないかという意見を持っております。特商法、その他の法律で細かく見たほうがよいのではないかという意見には共感できる部分がありますので、詳細を詰めて考える必要があるのではないかといった意見を持っております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 今、多くの先生方から御意見、出ておりますので、それと若干重なるところもありますし、違うところを申し上げたいと思います。

まず、1の(1)、(2)と、執拗な電話勧誘と威迫等による勧誘というのを分けて提案がされていますが、これは果たして分けることが妥当なのかというのはちょっと疑問を持っておりまして、もし分けるということであれば、あえて言うと、私は(1)ですと乙案に近い考え方を持っています。

その上で、分けないほうがいいのではないかという意見を個人的に持っておりますのは、およそ一般ルールとして、事業者が消費者契約の締結を勧誘するに際し、威迫または困惑などをしたことによって契約の申し込みなどをしたときはという、一般条項というか、一般的な規定を設けた上で、例えばその中に現行法の不退去とか監禁とか、あるいは執拗な電話勧誘、あとは粗野若しくは乱暴な言動を交えてという具体的なやり方を列挙するほうがいいのではないかと思っています。執拗な電話勧誘というのと、いわゆる粗野若しくは乱暴な言動を交えてという、それを包括するような一般的な条項を入れた上で、例示列挙として執拗な電話勧誘等を並べて書くほうがいいのではないかという印象を個人的には持っております。

その上で、先ほど山本健司先生から出ておりました不安をあおるという点について、私はちょっと疑問を持っているところがございますのは、例えばあなたはこのままだと不幸になるからと言って、印鑑を売りつけたという場合に、それが不安になって契約したというのは事実なのですが、果たしていわゆる困惑なのかという疑問を持っておりまして、むしろ民法の今までの話で言うと、動機の部分に近いのかなと思います。

つまり、本当は別に不幸になるかどうかわからないのに、不幸になると思ったので印鑑を買ってしまったということになるときに、今の消費者契約法4条3項で想定されている困惑とか威迫というよりは、むしろそういう不適切な動機が形成されたということによって意思表示したということであるとすれば、この不安感をあおってというものにつきましては、今、丸山先生が要件が漠然とし過ぎているのではないかというお話がありまして、それに私も大変共感しているのですが、それとともに、そもそもこれを威迫・困惑のところに入れることが妥当なのかどうかというのは、個人的には疑問を持っております。

現に霊感商法とか、そういう不安をあおるような商法があって、それでいろいろ被害が生じているというのは重々承知しているのですが、これを困惑類型に入れるためにはもうちょっと検討が必要なのではないかと思っています。むしろ、不必要なものを買わされたというか、そういう動機形成にゆがみがあったという、そちらのような気がしておりますので、ほかの困惑・威迫類型とは若干違うのではないかという気持ちを持っております。

不招請勧誘につきましては、私も消費者契約法におよそ消費者契約一般に適用できる形で条文に入れるというのは、個人的にはかなり慎重な気持ちを持っております。というのも、不招請勧誘というのが問題になる場面というのは、基本的には家に呼んでもいないのに突然人が来るとか、あるいは要りもしない電話がかかってくるとか、要りもしないメールが来るという状況であって、例えば消費者契約法というのは、もちろんそれ以外の店舗販売というか、店舗での対面の取引なども念頭に置いておりますので、不招請勧誘といっても、結局は特商法で扱っているような、例えば訪問販売とか電話勧誘の場面、中身に限定されるのかという気もしております。ですので、果たしてこれを取引一般に、しかも消費者契約法に入れることが適切なのかどうなのかというのは、若干疑問を持っております。

さらに気になりますのは、不招請勧誘を受けて契約に至ってしまったという場合に、受けたくもない勧誘を受けて契約したので取消したいというときには、例えば受けたくもない勧誘のやり方がすごく困惑を覚えるようなものであったということであれば、まだ4条3項のほうで解消できるかもしれませんが、問題はそれによって契約締結に至らなかった場合だと思います。嫌な勧誘ばかり受けて、別に契約はしなかったのだけれども、非常に不愉快な気持ちになったというときに、恐らくこの場合は精神的損害しか発生していないということになると思うのです。

そうすると、その精神的損害の算定も非常に難しいですし、そもそもどのようにして算定するのかという問題がありますので、個人的には、特に契約締結に至らなかった場合について、不招請勧誘の規定を設けて、それで例えば損害賠償を認めるというのを、およそ取引を限定せずに消費者契約法に設けることには、個人的には慎重な気持ちを持っております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それではほかに。では、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 ただいま阿部委員、古閑委員、丸山委員、大澤委員から、不招請勧誘について消費者契約法で規定を設けることについて慎重に考えるべきだというお話がありまして、その点については私も同感です。

まず、不招請勧誘とはどういうものなのかということについての理解ということが出発点になりますけれども、規制の仕方が幾つか考えられるわけでありまして、原則勧誘禁止として、同意があれば例外的に勧誘してもよいというオプトイン規制のほか、原則勧誘可能とし、拒絶の意思があれば勧誘を禁止するというオプトアウト規制があります。また、そのオプトアウト規制の場合でも、拒絶の意思につきまして勧誘一般も受けないという意思とするか、それとも特定の事業者からの勧誘を受けないとする意思にするのか、あるいは当該契約について勧誘を受けないという意思にするのかといったところが問題となりますので、出発点として不招請勧誘を議論する場合、どういう態様の行為を対象にするのかということが、まず決められる必要があるのではないかと思います。

それから、先ほどから出ておりますように、他の特別法で、金融商品取引法とか商品先物取引法とか特定商取引法などで不招請勧誘規制にかかわる規定がありますので、これらの規定に加えて、消費者契約一般に適用される消費者契約法に不招請勧誘についての規定を置く必要性がどれだけあるのか、被害実態はどうかということが重要になってくると思います。

仮に消費者契約法に不招請勧誘に関する規定を置くとすると、資料にも示していただいたように、差止請求とか損害賠償請求とか取消権といった民事的効果を規定するということが考えられると思いますけれども、不招請勧誘を受けた場合の消費者の保護法益を私生活の平穏と考えますと、これは困惑類型の保護法益と重なる部分が出てくるということでありまして、そうであるならば、困惑類型を拡張するという形で取消権を考えるということがあり得ると思います。

それから、損害賠償との関係で不招請勧誘による被害が契約を締結しない場合にも生じているということから、不招請勧誘によって、そういう場合も含めて損害賠償請求をすると考えますと、人格権の侵害ということが考えられると思いますが、これは不法行為の一般的な考え方で請求するということの可能性もあるわけでありまして、不招請勧誘による損害賠償を消費者契約法に定めることによって、その不法行為の違法性の認定がしやすくなるという側面はあると思いますけれども、そういうような意味づけで消費者契約法に置く必要があるのかどうかということが問題になってくると思います。

それから、差止請求でありますけれども、ここでも他の法律、特商法でも差止めということがありますので、消費者契約法で不招請勧誘についての差止めを認めるだけの実際上の必要性がどの程度あるのか。あるいは、担い手が適格消費者団体になるということでありますので、適格消費者団体自体に困難性はないのかという問題も出てくるのではないかと思います。

そういうふうに考えますと、行政ルール以外に民事ルールを置くということが消費者契約法に不招請勧誘を規定することの一つのメリットだとは思いますけれども、それぞれ差止請求、損害賠償請求、取消しを考えた場合に、どこまで必要性があるかということが、少なくとも私はそうはっきり認識できないということでありまして、立法するということでありますと、そこについての被害実態が、より積極的に示される必要があるのではないかと思います。

1つ、不招請勧誘の禁止ということを消費者契約法に規定するとするならば、民事ルールという効果を伴わない行為規範的なものとして規定するということが考えられると思いますけれども、それ以上積極的に民事ルールとして置くということに関しては、被害実態、必要性という部分について、どこまであるのかということを精査する必要があるのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見は。では、後藤委員。

○後藤(準)委員 私も小規模企業の代表という立場での意見を言わせていただきますと、執拗な電話勧誘という意味では阿部委員と全く同じでして、特商法で定められている中身でなぜ不十分なのか。現実問題として、かなり細かい部分まで特商法の委員会のほうで検討されているようにお伺いしているのですけれども、具体的にこれ以外で、例えば問題になるような話は一体どんな分野なのかということを、ぜひ教えていただきたいと思っております。

それから、威迫の関係ですけれども、威迫というのはどういう形で威迫と認識されるのか、我々は全くわからないのですけれども、これはハラスメント系の話で、同じ理屈になるのかどうかわかりませんけれども、その当事者が感じると、それが既にハラスメントだという解釈に今はなっている。そうすると、事業者の対応が全く同じものでも、消費者本人がそう感じた場合には、全てこれは威迫だという評価になるのかどうか。この判断は一体誰がするのだろう。これは、消費者の個々の感じでそういうことが行われるということになると、これは商取引としてはかなり不安定な状況になってしまう。その辺のところをぜひお考えいただきたいと思っております。

それから、不招請勧誘について、これは先ほど古閑委員からもありましたけれども、勧誘というのは商売の基本で、地方のほうへ行きますと普通に御用聞きみたいなこともやられているのです。それは、先ほど来ありますように、人によっても、そういうものが来てほしいという人もいれば、要らないという人もいる。そのときの線引きをどうするかという非常に具体的な話で議論していただいたほうがよくて、一般的な話をいろいろと言っても、ビジネス上の話で我々は考えますと、事業者は一体どういうことをやったらいいのか。例えば勧誘全般がいけないという話をしているのか、その辺のより具体的な中身を議論しないと、実態では混乱が生じるということだと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

先ほどから何度か、威迫の意味のほか、乙案で言いますと、粗野若しくは乱暴な言動、あるいは迷惑を覚えさせるような方法でというのがどのように判断されるのかという点について不安があるという御指摘があったわけですけれども、消費者庁のほうから、この点については御説明いただくようなことはあるでしょうか。判断の仕方・基準がどのようなものかという御指摘だったと思います。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、威迫でありますが、今、後藤委員からもわからないという御指摘があり、古閑委員からも冒頭、そのような御指摘があって、内容がよくわからないということだと思います。ここで威迫と書いておりますのは、ペーパーで言いますと、7ページに特商法の現行の6条3項の威迫というのを意識しておりますという趣旨で書いております。その特商法における威迫は何かといいますと、解説書を見ますと、強迫に満たない程度の人に不安を生じせしめるような行為を言うということであります。

具体的にどういう場合が当たるかというと、買ってくれないと困ると声を荒らげて、誰もいないのでどうしていいかわからなくなり、早く帰ってもらいたくて契約した場合とか、勧誘の際に殊さらに入れ墨を見せられ、怖くなって話を切り上げられなくなってしまったという例が指摘されておるところでございまして、大体そういうものが念頭に置かれていると。威迫と言っただけで、本人が主観的に威迫だと思ったからといって威迫になるのだということでは、恐らくないのだと思います。これは、行政規制として導入されており、罰則などの規定もかかっている、概念としてはそれなりに安定した概念ではないかと思いますが、そういうものを念頭に置いて、7ページの甲案に威迫と書いているところでございます。

ただ、取消事由として、消費者契約法の現行、不退去・監禁というのは、こういう状況にあって退去させてくださいという意思を示したにもかかわらず、退去させてくれないでありますとか、退去してください、出ていってくださいと言ったにもかかわらず、出ていってくれないという形で、比較的その中身を書きおろすというアプローチをとっておりますので、消費者契約法の今までのそういう規定ぶりに倣うのであれば、その中身を書いていくというのが1つ、当然あり得る。

その際、威迫というものに対して、どういうふうに書いていくかというので、一つの案としてお示ししたのが乙案の考え方でありまして、例えば粗野というので、方言が粗野に当たるかということに関して言いますと、そこはまた詳細を詰めたいと思いますが、これも刑事罰などの対象になるところから引っ張ってきておりますので、方言だから直ちに粗野というよりは、その他のいろいろな言動を勘案した上で、これに該当するということが判断されているのではないかと思います。ただ、ここはより精査させていただきたいと思います。

以上でよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それ以外に先ほどから何度か出ていたのは、1つ目の執拗な電話勧誘に関して…。今の点ですか、別の御意見ですか。

○国民生活センター松本理事長 今の流れで。

○山本(敬)座長 では、松本理事長、どうぞ。

○国民生活センター松本理事長 2点申し上げたいのですけれども、1-1と1-2に分けて議論していて、1-2は多分これから議論をやるのでしょうけれども、1-1だけを切り離してやっているから、今のような話になるのではないかという印象を持っております。すなわち、勧誘の態様のところだけで押さえようとするから基準が曖昧になるという話になってくるので、私は1-2の合理的な判断をすることができない状況に一定の作為で追い込むというところにこそ、問題があるのだと思っています。

1-2は、恐らく事業者が一定の言動によって消費者を合理的な判断をすることができない状況に追い込んで、それを利用して契約するというタイプと、事業者は作為をしない、先行行為がないのだけれども、消費者が客観的におかれている状況につけ込むタイプと、両方あると思うのです。先ほど言った事業者が一定の言動において消費者を困惑させて、当惑させて正常な判断ができない状況にして、普通の人だったらこんな契約しないというのをするという場合が、まさに取消対象になるだろうと思います。

ただ、それは恐らくかなり一般条項的な言い方になってきます。それで加納課長がおっしゃったような、現行法はその中から定型的に、合理的判断ができない状況になったかどうかの具体的な判断をしなくても、外形的な部分だけで取消権を認められるようなものに限って定めているのだということなると思います。それを広げていく場合に、外形的なところだけでどんどん広げていくと限界がはっきりしないという批判が当然出てくるので、消費者の側が主観的に追い込まれるという要件の部分を加えないと、私はだめじゃないかなと考えています。それが1つ目です。

もう一点は、9ページの甲案の発想です。この案が出てきて大変驚いたのです。これは、今までの消費者契約法の議論から全然外れているじゃないかと。すなわち、本来、消費者契約法というのは民事ルールとしてつくられたものである。取消しとか無効とか。それが平成18年の改正によって、消費者団体の差止訴訟が後から入ってきたわけです。民事効果の後から差止めが入ってきた。消費者団体による差止訴訟というのは、主務官庁による行政規制を消費者団体が代行するという一種の行政規制の民営化なわけで、民事ルールの後から行政規制っぽい規定が、同じ構成要件の上に乗って入ってきたところがあるわけです。

9ページの甲案はその発想を大胆にも否定して、民事効果と関係のない行為規制、すなわち一種の行政規制を消費者契約法に入れて、その執行を適格消費者団体にやらせようという発想なので、ある意味でおもしろいと思うのです。従来の発想の転換を迫る提案だと。ただ、ここの不招請勧誘だけで、この転換を図るというのはちょっとおかしいのではないか。転換を図るなら不招請勧誘だけじゃなくて、消費者契約法全体をがらりと変える必要がある。

どう変えるかというと、ヨーロッパの不公正取引慣行指令、ほかの訳もありますけれども、と訳されている法律がありますが、あれはミスリーディングなプラクティクス、誤認を惹起するような勧誘のやり方、それからアグレッシブなプラクティクス、攻撃的、ここで言う困惑させるというタイプの勧誘のやり方について、まずだめだという一般条項を置いた上で、具体的にこういうタイプのものはミスリーディング、こういうタイプはアグレッシブであるというのを全部でたしか三十幾つか挙げていたと思います。これは、規制当局として、そういうものをきちんと取り締まるという趣旨の規定です。わが国で言えば消費者庁として行政的に規制しろという趣旨の規制なのですが、民事的な効果をそれにつけること自体は各国の判断に任されているという形になっております。

アメリカも全く同じでありまして、統一欺瞞的取引慣行法とか、幾つか州の統一法があるのですけれども、これらの統一法においても、こういう行為をしてはいけないという禁止規定が並んでいて、それに民事効果等を、あるいは刑事罰もつけ加えるというやり方をしております。したがって、この点は大変おもしろいと思うのですが、いわば消費者契約法のあり方、民事ルールなのか、そうではないのかというところにかかわってくるので、これをやるとすれば大変大きな議論をまずやらなきゃならないのではないかという気がしております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

不招請勧誘に関しては、先ほどから多くの委員の方々から、消費者契約法に定めるということ自体については慎重に考える必要があるという御意見が繰り返し出ていたように思います。不招請勧誘に関しては、御指摘もありましたとおり、特商法のほうで規律をどうするかということも、一つの立法課題になっているところでして、この調査会と並行して進められる調査会においても検討事項になっているだろうと思います。そちらでも、恐らく議論していただけることになるだろうと思います。

そうしますと、そこでどうなるかということを少し踏まえませんと、本当にここでもろもろの問題があるにしても、進める必要があるのかどうかということも左右されてくるところでもありますので、差し当たりいただいた御意見を踏まえて、特商法改正に関する動向も見据えて、次回以降、ここで取り上げるかどうかということを含めて改めて考えるということでいかがでしょうか。

石戸谷委員長代理、どうぞ。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 特商法については、特商法の専門調査会で、今後、勧誘のあり方について議論されると思うのですけれども、それはそのとおりだと思うのですが、今の状態で行きますと、確かに対象商品の関係からいきますと、指定権利制が撤廃されると権利全般ということなので、商品・役務の権利ですき間がなくなるという意味では横断的に適用されることになるので、あたかも全取引に適用されるかのようなイメージを持ちがちですけれども、特商法の26条で幅広く適用除外の規定があります。

他の法律がある場合に、合計51分野の適用を除外しておりまして、先ほど来、話が出ておりますようなマンションの宅地建物取引業法なども、当然にこれは適用除外になっておりますので、特商法が電話・訪問勧誘にかかわる全ての消費者取引に適用されるものでは全くないということで、まず誤解のないようにお願いしたいということがあります。

それと、2006年の国会審議の話が出ていまして、それはそのとおりだと思うのですけれども、当時、外国為替証拠金取引というのはせいぜい数万口座ぐらいの話であったのですが、その後、不招請勧誘が禁止されて登録制をとって取引が非常に健全化されたということで、多くの顧客がみずから取引に入ってきて、今は500万口座を超えているはずです。その結果、逆に非常に発展したということがあるので、その事実も見ていただきたいということですね。

それと、来てほしいという要請があるときに違反にならないというのは、これは当然の話。

それと、見守りの話も出ましたけれども、見守りというのは継続的顧客との関係の話でありまして、信頼関係がもともとあるわけなので、新たに勧誘していいかというのと、これは全く別の話であると思います。見守りは見守りで、私も重要だと思います。

ということなので、特商法の議論の経過を見ていただくというのは、そのとおりだと思いますけれども、消費者契約法のほうでも、先ほど行為規範として、それ自体としては民事効を直接的なものとしては入れないで打ち立てるという案も出ていましたけれども、損害賠償の規定を消費者契約法の中に入れるのだとすると、実務的には損害賠償は取消しの場合と違って、いろいろな違法要素を一体として総合判断して違法性があるかないかとやっていますので、そのような勧誘全体の違法性の判断の一つの要素として位置づけられ得るということであれば、それはそれなりに意味があると思いますので、その点も付言しておきたいと思います。

○山本(敬)座長 補足いただきまして、どうもありがとうございました。

不招請勧誘の問題は非常に難しい問題でして、今御指摘いただいた問題を踏まえて、さらに検討しなければならないところだろうと思います。規制を設けるとするならば、それはどの法律であれ、御指摘もありましたように、経済活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。そこをどう評価するかということも、さらに考えないといけない点だろうと思います。

この点は、柳川委員のご専門に関わるところですが、いかがでしょうか。

では、まず後藤委員、その後で柳川委員からお願いします。

○後藤(準)委員 今の特商法の適用除外の話ですけれども、それは適用除外をする理由が多分にあって適用除外にしているのではないか。例えば新聞については、通常の株式会社が発行している新聞については、これは規制対象。一方で、政治活動とか宗教活動は憲法に保障されているから、そういうものは適用除外にする。そういう形で、ある程度具体的に議論した上で適用除外という形になっているのではないかと、私は全般がわかっているわけではないのですが、私どもの理解はそういうものだと。

一方で、特商法と今回の消費者契約法の整合性という形では一体どうなるのか。特商法では、そういった個別具体的な判断をしながら規制対象の網をかける。一方で、消費者契約法との整合はどうとっていくのか。我々事業者からすると、こっちの法律ではこれで定めています。一方で、こっちの法律では、また別の物差しですよということになってしまうと、どうしたらいいのですかという、具体的にそういう話になるわけです。だから、そこは、我々は議論ではなくて、具体的に法を執行する段階でどういう問題が起きるか。それに対処して円滑に行くような対応をぜひお願いしたいということを言っているわけです。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、柳川委員。

○柳川委員 欠席が多くて申しわけございません。

今、座長のほうからお話いただいたように、これは経済活動なので、何となく消費者の利益、事業者の利益という対立関係の議論がどうしても出てきてしまうのですけれども、本来はそれは両方同じ方向を向いている話でありまして、事業者があまり経済活動ができなくなると正常な商取引が行われなくなるのは、結局は消費者が不利益をこうむるということなので、ここで出されたような問題点がいろいろあって、その問題点があるのであれば、的確な網をかけないといけない。

ただ、漏れをなくすようにという形で網をどんどん広くしてしまって本来の事業活動が萎縮してしまってはいけないだろうと思う。そういう観点から見たときに、問題行為だけを潰して、問題行為じゃないところはオーケーになるような形の条文のつくり方を工夫するということが、この話の一番のポイントなのだろうと思います。

それで思いますと、このマル1の(1)に関して言うと、案が出ているわけですけれども、先ほどから御議論が出てきたように、執拗な電話勧誘とか、威迫の話、粗野・乱暴な言動に関しての定義づけの話は多少気になる。先ほど消費者庁のほうからお話いただいたように、定義の話はある意味で明確にするようにすれば、どういう意味かというのはわかる。ここで1つはクリアできる。

ただ、ここでのポイントは、それが消費者の側の主観的な気持ち、感覚にかなり依拠した形で判断がされる格好になっているというところが、恐らく何人かの委員の方が気にされたところだろうと思います。もともとのつくり方は、監禁と不退去というところで、これだけが本当は問題だったのではないのだと思いますけれども、客観的に判断がしやすい。監禁している、不退去だということは、客観的に明白に見られるところで、そこで網をかけましょうということだったわけなので、この話も消費者が主観的にどう思っていたことに余り依拠しないような形で書けるのであれば、そういう工夫をちょっとしていただくのがいいかなという気がいたします。

何人かの方が少し懸念されていたように、本当にその段階での気分がどうだったのか、どう思ったのかというのが証拠で残しておければいいのかもしれないですけれども、後から、実はあのときにはこう思っていましたとか、そう思っていませんでしたということになると、これはかなり事業者という方々がおっしゃっていたような不安が出てくるのは、これは定義の問題とは少し別な次元の話だと思いますので、そういうところに余り依拠しないところで工夫できるのであれば、できるだけ考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

今の御指摘とも少しかかわるのですが、最初の執拗な電話勧誘に関しては、執拗な電話勧誘に限るのであれば、特商法の規制に委ねればよいではないかという御意見が一方であり、他方では、困惑を生じさせている場合は、必ずしも執拗な電話勧誘の場合に限られない場合もあるという御指摘もあったところで、このあたりをどう評価するか。一般的に網をかけるという方法によるべきだという考え方が一方にあり、他方では、それは事業者側の経済活動の自由を制約するという面が強くなるというご指摘もあります。そこをどうバランスをとるか。もちろん、そのような難しい問題であるということが明らかになっても、ではどうすればよいかという次の問題についてすぐに答えが出るわけではありません。

その際に、1つだけ確認しておきたいのは、特商法の規制に委ねればよいという場合に、ここでは困惑による取消しが提案されているのですけれども、そのような取消しを認めるべきであるという意見に対しては、どう答えたことになっているのでしょうか。阿部委員。

○阿部委員 特商法の規定を前提として、9ページの甲案が妥当なところだと思います。

○山本(敬)座長 9ページの甲案のようなものを特商法において定めるのが、むしろ筋ではないかということでしょうか。

○阿部委員 特商法で行政規定としての不招請勧誘の規定を踏まえて、その同じような要件で差止めまではあるかなと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございました。

今の点はよろしいでしょうか。

○沖野委員 それは、取消しは一切認められないということでしょうか。

○山本(敬)座長 取消しを認めないということですか。

○阿部委員 取消しは、まだ議論が必要だと思います。

○山本(敬)座長 そういうことですか。わかりました。

今の点、御意見ありますか。どうぞ、沖野委員。

○沖野委員 阿部委員がおっしゃったのは、9ページの不招請勧誘についてです。座長のご質問は電話勧誘についてだったように思うのですが。

○山本(敬)座長 不招請勧誘の話をひとまず終えた上で、残っている問題として執拗な電話勧誘について質問したつもりでしたが。

○沖野委員 阿部委員が言及なさった9ページは不招請勧誘についてのものです。お答えも不招請勧誘についてだったので、お答えが対応しているのかどうか確認させていただけたらと思います。済みません、横から。

○山本(敬)座長 御指摘いただいてありがとうございます。

○阿部委員 電話勧誘については6ページのほうでありますが、甲案を特に執拗なということについて具体化する必要があると思います。乙案ですと、対象範囲が非常に広過ぎて、これは受けとめ切れないです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

増田委員。

○増田委員 特商法をよく使っている相談現場から一言言わせていただきたいと思います。

特商法ではカバーし切れない相談というのが多数ございまして、例えばきっかけが電話勧誘であったとしても、執拗な電話を断るために会いに行って契約に至ることもございます。それがまた訪問販売に該当するかどうかという要件の確認が必要です。先ほど石戸谷先生のほうから御指摘ありましたように、適用除外が多数あり、その中でも宅建業法に関するトラブルは多数発生しています。通信サービスに関しましても、今、総務省のほうで電気通信事業法の改正を進めていますけれども、解決がすぐさまできるものではないですし、元に戻すためには費用が発生するなどの問題があります。

いろいろな法律があって消費者保護が図られているという理由によって適用除外されていますけれども、実際にはクーリングオフとか取消しとか、そこまでの手当てがなされていないわけですから、それによって現状、消費者保護が図られているというものではないと考えております。

それから、不招請勧誘に関しましては、以前、河野さんが出されたアンケート調査によりますと、九十何%の人が迷惑と感じていると回答がありますし、国民生活センターのアンケート調査によっても、九十何%の人が迷惑と思っている。そこを乗り越えて勧誘するということについては相当な注意をしていただく必要があります。営業の自由と平穏な生活を守るという人権の問題とどちらが大事なのかということを考えていただきたいと考えております。

また、先ほど見守りの問題が出ましたけれども、信頼関係のない、いきなり訪問してきた方に見守っていただきたくないというのが本音だと思いますので、お伝えしておきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 不招請勧誘につきましては、座長がお取りまとめいただきましたように、特商法の議論も踏まえた上で、さらにどうするかというのを考えてまいりたいと思います。

マル1、マル2の執拗な電話勧誘と威迫の問題につきましては、その概念が明確でなきゃならないという御指摘がございましたので、ここはしっかりと私どものほうで詰めた上で検討をさせていただきたいと思います。

それで、1点、先ほどの座長と阿部委員とのやりとりで、沖野先生がちょっと口を挟まれたようなところがありまして、私、理解がちょっとついていけなかったところがあるのですが、座長の御指摘は、今回、私どもが示している事案は、いずれも電話による困惑の事案でありまして、電話による不実告知の事案ではありません。電話による不実告知は、既に特商法で取消しがあります。電話による困惑の取消しというのは、今は特商法にはございません。それをどうするかということでありまして、その取消しを設けるということについてはどうなのですかという座長の問いかけに対する答えとして、ちょっとずれているのではないかという沖野委員の御指摘があり、阿部委員の御発言の趣旨が何だったのかというところを、ちょっと確認させていただければと思います。

○山本(敬)座長 お願いします。

○阿部委員 電話勧誘について、特商法での議論を踏まえた上で、同じような規律であれば取消しがあり得ると思います。

○山本(敬)座長 電話による困惑について、あり得るということですか。

○阿部委員 はい。

○山本(敬)座長 消費者庁も、それでよろしいでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 はい。

○山本(敬)座長 このほか、執拗な電話勧誘、威迫の意味、粗野・乱暴な言動、迷惑を覚えさせるという点については、先ほど柳川委員から御指摘ありましたように、定義として明確にすることとともに、受け手の主観的な感覚によって左右されるような意味なのか、それともそうでないのかという問題があります。最初のほうに私が消費者庁に御意見を求めたときには、客観的に判断されるということをおっしゃっていたように思いますけれども、それは本当に十分に客観性が担保されているのかということも、あわせてさらに詰めないといけない点ではないかと思いました。

さらにこの後、検討しなければならない点がたくさん残っていますので、非常にジレンマを感じているところですが、この段階でさらに意見を述べておかなければならないという点がありましたら、お出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 大変難しい問題だなと思いながら伺っていたのですけれども、不退去・監禁という特定の行為以外に顧客が困惑する場面があるということは、もうみんなわかっていたのだと思うのです。ただ、実際に要件を出していくときに、現行法では明確な形で確定できるものだけに限定するという方針で最初は出発したわけで、現時点でこの不退去・監禁というのがある種の例示なのだということを前提に、さらに明確な基準が加えられるのであれば、その全体をそれによって困惑したという形で受けることは、恐らく議論としては可能なことではないかと思っております。ですから、そこは表現ぶりのところをもう少し精査していただくということを、個人的にはぜひお願いしたいと思います。

もう一点、この議論の中で評価余地のある概念が入ってくると、曖昧だからやめようという議論がよくあります。ただ、実際には判例で具体的にそれを確定していかなくちゃいけないような概念というのは、立法の場合、入ってくることは避けられません。例えば、ここに「信義則」という言葉を直ちに入れてはまずかろうとは思うのですけれども、正直なところ、その他信義則に反するような勧誘行為をして困惑してということが言えれば一番いいわけで、そこから先を裁判所によって具体化してもらうという道だって、必ずしも否定しなくてもいいのではないかと思われます。ですから、そこをワーディングを含めて考えていただきたいというのが1点。

次に、不招請勧誘に関しては、さっき増田委員からお話がありましたように、大多数の消費者は、請うてもいないのに、つまり来てくれと言ってもいないのに、自分の私的な生活領域の中に突然入り込んでくるような勧誘の仕方はやめてほしいという意思を持っている。これは、アンケートなどを見ても確かなことです。

ですから、それを考えると、契約一般でそれをやってしまうのは、行き過ぎになるおそれもあるので問題ですけれども、特商法の、例えば訪販と電話勧誘だけで問題が尽きているかというあたりを、その規制態様を含めて特商法のほうで考えていただいたほうがいいのかも知れません。あるいはここでもまだ少しペンディングの部分を残しておいて、特商法で尽きていなければ消費者契約法でも考える余地はあるのではないかということで、この辺ももう少し精査していただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 先ほどから消契法と特商法の関係、対比の議論がいろいろ出ています。私が先ほど言ったこととも絡みますが、特商法というのは行政規制のほうからスタートしてきて、ある時点で消費者契約法に倣った民事ルールがたくさん入ったというところがあるわけです。他方で消費者契約法は民事ルールとして発足して、ある時点で行政規制の代替としての消費者団体による差止訴訟制度が入ってきたという関係にあります。

今、議論しているさまざまなタイプの不当な勧誘をどうすべきなのかということを考える場合に、民事ルールとして個別の不当勧誘ごとに取り消せるという規定がいきなり入れられるか、そういうものがやりやすい法律なのかというと、なかなか難しいのではないか。一般条項としてさまざまな事情を考慮しながら運用していきましょうというのは、大変民事ルール的なのですが、ターゲットを絞って民事ルールの要件を立てようとすると、現在の消費者契約法のような非常に狭いものになる。

他方で、行政規制のほうが先行したほうがやりやすいところもあると思います。行政規制に違反する一部の行為については、民事的にも救済しましょうと。これがまさに特商法のやり方であって、特商法違反が全て取消しじゃないのです。

というふうに考えていくと、今の特商法の適用対象が狭いのじゃないかという議論がありますから、そこをもう少し広げる。あるいは、景表法にも民事ルールを入れるとか、そういう行政規制の法律がもっと広く民事ルールを拾っていくというやり方を考えるべきという気がいたします。消費者契約法は、民事ルールとして一般条項的なものを入れられれば、入れたほうがいいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、古閑委員。

○古閑委員 不招請勧誘につきまして、今日のこの場での議論をお聞きしていると、ちょっとよくわからなくなってしまったのですけれども、要請されていないものが不招請勧誘だということなのだとすると、例えばいつも取引がある事業者であっても、今度、新しい商品が出ましたとか、新しいサービスが出ましたと言って勧誘した場合に、消費者において「それは別に私は要らないから」という場合は不招請勧誘になるのかと思っていましたが、今の議論を聞いていて、よくわからないなと思いました。

仮に、既に取引があるところについては不招請勧誘に当たらないのだということなのだとすると、既に取引がある既存の事業者か、もしくは新規に参入しようとする事業者かということで区別されることになってしまうので、例えば新規に事業を起こして起業しようみたいな、C向けのサービスとかC向けの商品というものをやろうとする事業者が、新たに参入するときは普通は営業活動から始めることになるわけですが、それができないとなると、新たな企業家の参入はもうさせませんと言っているのと等しいのかなと思うのですけれども、その辺をどう理解したらいいのかというところが、ちょっとよくわからなくなりました。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに。沖野委員。

○沖野委員 2点ですけれども、1点は、今、古閑委員のおっしゃった不招請勧誘とは何かというところで、想定される勧誘行為の態様というのがかなり幅があるのだと思うのです。例えば河上委員長は、生活領域に勧誘してくるという話をされました。勧誘というのであれば、チラシを入れることも勧誘ですかといった話になりますけれども、恐らくそういうことは考えていないだろうと思います。それから要請を受けていないのに勧誘をするというのは、店舗を歩いていて呼びとめられて、勧められるというものも入るのかというと、そういうことは考えていないのだと思います。

ところが、資料の7ページには、不招請勧誘は「いわゆる不招請勧誘」という表現になっていて、「要請がないにもかかわらず、一方的に行う勧誘」と定義されています。しかも「勧誘」というのは、かなり幅広いのではないかということを情報提供の箇所では論じているということがありますので、それをも踏まえると、定義としては非常に広くなります。しかし、考えているところはもう少し絞り込みがあるのではないかと思われますので、規律のあり方とともに、ここで問題視している類型なり態様なりがどうかということを、もう少し要素を出していくことで、今の古閑委員の御指摘などにも答えられるものがあるのではないかと思います。不招請勧誘とは何かを明らかにする必要は、既に指摘されているのですけれども、それに加えて具体的にそういう問題意識もあるかと思います。それが1点目です。

2点目は、執拗な電話勧誘のところですけれども、私はこの位置づけをどうしたらいいのかというのは、まだなおわからないところがあります。と言いますのは、現行法の困惑類型が不退去・退去妨害というのを規律しているのは、一方では、もう要らないというのに対して、なお勧誘を続ける。それによって困惑するということですし、そういう意に反した勧誘の継続を捉えているという面があるのですけれども、それだけを捉えるとこれ以上は要らないと言っているのに勧誘されるという話になって、不招請勧誘と似たようなところ共通的なところが一方で出てくるように思います。

他方で、現行法は、それとともに、そういう状況から逃れられないという事情、生活領域、これは職場も含めた中でですが、帰ってくれない、自分のほうが出ていくわけにもいかない、あるいは、自分を出してもらえないといった面での、逃れられない状況ということが1つあり、電話勧誘にはまさにそういった面もあります。自宅であれ、職場であれ、切っても切ってもかかってくる、そこから逃れられないということがありますので、そういった状況を捉えていくのか、それともそういった状況ではなく、店舗でも同じであって、度を超えた繰り返しの勧誘というのは非常に迷惑を覚えるような話であり、それを捉えていくのか。ただ、そうすると、大澤委員がおっしゃったような、むしろ威迫による勧誘類型に関する乙案のほうに出てくるような話ではないかという問題になってくるかと思います。

さらには、度を超えたというところ自体が評価の余地があるのですけれども、その部分を捉えるとすると、逆に(1)の乙案で、一旦断っているにもかかわらず、継続した。それによって困惑するということだとすると、度を超えたといった問題があるというところを受けるとすると、しかも逃れられない状況ではないということも含めていくと、そこを受けるのは困惑という概念だと思うのです。そうすると、逆に困惑というものをかなり絞り込む形になり、他方で、ほかのところでは困惑というのはもう少しいろいろなものが入り得ると思いますので、規律によって困惑概念はかなり変わってくることにならないかという気がしています。

結局、それは、別のところで少し絞り込みの必要があることかと思いますけれども、そういう観点も電話勧誘のところについてはあるように思いますので、考慮要素として指摘したいと思います。

○山本(敬)座長 構成としては、どうすればよいということでしょうか。問題点の御指摘は大変ありがたかったのですが。

○沖野委員 ありがとうございます。

私自身は、執拗な電話勧誘ということの問題については、事前にはむしろ甲案型で捉えているものが1つかなと思っておりました。ただ、それ以外に乙案で捉えるべきようなものがどこまであるかということについて、本日のご検討の中で、つきまといというタイプと、それから電話勧誘がきっかけとなる場合、つまり、電話は1回切りなのだけれども、それを契機として別の方法で勧誘が繰り返される。外の場所に呼び出し、そこからなかなか断り切れないようなタイプが出されましたので、繰り返しの電話勧誘に尽きない場面があることがわかりました。

ただ、今のようなケースの場合には、逃れられない、それが困難な状況下という話とはさらに別のものであるのか、そこで捉えられているものは何かというのを考えていく必要があるのだと思います。この場で指摘された類型としては、それに尽きない2つのものが出されたと思うのですが、それをどう捉えるかという点があって、そこを捉えるとすると、乙案なのか、むしろ(2)の乙案型をもう少しブラッシュアップしていくというところかと思っています。

(1)-2 合理的な判断をすることができない事情を利用する類型

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

先ほど松本理事長からおしかりを受けまして、1つ目の論点と次の論点を分けたので議論しにくくなったということがありましたけれども、差し当たり第1点目につきましては以上のとおりとさせていただいた上で、続いて、(1)-2「合理的な判断をすることができない事情を利用する類型」の検討に移りたいと思います。もちろん、両者は連動したところがありますので、その点も含めて御議論いただければと思います。

まず、資料について、消費者庁のほうから御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、1-2は資料の11ページ以下でございますけれども、事例1-7から幾つか事例を掲げております。

例えば事例1-7でありましたら、高齢の女性に対して不必要と思われるような着物・商品を購入させたという事例とか、事例1-8は、うつ病とか認知症の女性に対して、たくさんの商品を買わせた。

1-9は、独居のお年寄りということで、不動産に関して専門性がないときに売却させたという事例であります。

それから、事例1-10は、これは前回ぐらいだったと思いますけれども、断定的判断の提供の対象にするかどうかという議論をしていただいた際に事例として御紹介した裁判例のケースでありまして、断定的判断の提供による取消しを認めた一審に対して、二審では断定的判断の提供は認めず、公序良俗無効で処理しましたという事例であります。中身を見ますと、夫がお亡くなりになって精神的に非常につらい状況のときに、あなたの夫が亡くなったのはあなたのせいであるとかいうことを言いつつ、印鑑を買うと運命がよくなるよという勧誘をしたといった事例でございます。

13ページ以下に具体的な問題点を書いてございますが、ここでは高齢者とか判断能力が不十分な認知症と言われる方々に対する状況につけ込んだような形での不必要な商品の購入といった事例は、従前から非常にたくさん見られるところであります。消費者被害の中でも非常に悪質性が高いと思われるようなものではないかと考えるわけですが、これにつきまして、「イ 現行法における対応」というところでありますが、基本的には民法の公序良俗無効によって何とか対応しているというのが現状ではないかと思います。

先ほど御紹介しました事例1-7、1-8、1-9は、結論としては下級審レベルでありますけれども、いずれも公序良俗による処理というので救済を図っているところでございます。

14ページで、ただ、その裁判例をどう見るかということですが、「(2)具体的な対応方法」のアの民法改正がどうのと書いているところです。いわゆる公序良俗無効の中の暴利行為につきましては、大審以来の判例法理がほぼ確定しているところだと思いますけれども、マル1の他人の窮迫、軽率又は無経験を利用するという、いわゆる主観的要素と、マル2の著しく過当な利益の獲得を目的とする客観的要素、このマル1とマル2の双方の要件を満たすという場合に無効で処理するというのが、いわゆる暴利行為論だと思われます。

そうしますと、この暴利行為論が消費者問題に対してどこまで対処できるかということでありますが、14ページから15ページまで幾つか書いておりますけれども、15ページの「その際には」と書いている客観的要素というところであります。著しく過当ということからしますと、対価性を非常に欠くというのが典型的には前提とされているということでありますが、事例1-7でありますと、着物や宝石の対価がどうかということは見る必要があるのですが、必ずしも「著しく過当」とは言えないケースでどうかということが問題性として残っていると思います。裁判例は、そういうところでいろいろ工夫しながら、徐々に適用範囲を拡張してきているということではないかと思います。

そこで、民法改正の中の議論では、そういった公序良俗無効の裁判例の処理の状況を見据えまして、途中まででありますけれども、こういった客観的要素について勘案し、「著しく過当」というのではなく、下から4行目あたりですが、「不当な利益」を得させるということで、暴利行為の現代化を図るという提案がされてきたところであります。ただ、最終的には、法制審議会におきまして、要件の明確性の問題とか、こういった問題を民法で対処することが妥当かどうかといった議論などを踏まえて、民法改正の中では盛り込まれなかったところであります。それが一方の民法の議論の影響というところであります。

他方で、16ページのウの取消しまたは解除とするという考え方のところでありますが、消費者契約におきまして、そういった判断能力が十分でない人の状況につけ込んだような形での被害というものについて、どう受けるかということであります。真ん中あたりに書いておりますけれども、特定商取引法におきましては既に一定の対処がされておりまして、参考9に書いておりますが、いわゆる過量販売の解除権というものが規定されております。これは、日常生活において必要とされる分量を著しく超えるような過剰な取引をしている場合には、それをもって解除の対象とするということであります。

そういった考え方を踏まえますと、消費者契約法において、さらにそれを発展させたような形で、取消権または解除の対象として救済を図っていくことが考えられないかということで書いておりまして、「その場合には」という段落の真ん中あたり、「具体的には」ということでありますが、特商法は、主観的要素というのは度外視したような規定を設けておりますけれども、民法の考え方も反映して、主観的要素について一定の認識を求めつつ、マル2の客観的要素については、「著しく」というところまでは求めないけれども、日常生活において通常必要とされる分量を超えるような場合には、取消しまたは解除の対象にすることが考えられないかということで書いております。

以上が考え方の整理ということで、甲案、乙案であります。甲案は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、民法の公序良俗無効で処理されていたところ。特に暴利行為論をアレンジいたしまして、とりわけ客観的要素というところを適用範囲を広げるということを念頭に、一定の規律を消費者契約法の中で設けることを検討してはどうかという案であります。

他方、乙案は、先ほどの特商法における過量販売解除権というものに着想を得まして、他方で主観的要素については、消費者契約法の中では盛り込みつつ、不必要な商品の購入などをした場合には取消解除を認めるという考え方でございます。

こういった考え方につきましては、事業者からしますと、適用範囲の予測可能性とか明確性というところが当然問題となってこようと思います。甲案は、どちらかというと民法の規定を参考にということでありますけれども、乙案においては、相手方の認識可能性というのは要件としつつ、できるだけ客観的な要件を盛り込んでいくということを考えてみたつもりでございます。

それから、17ページ、最後の「エ 適合性原則に関する規律」というところでありますけれども、こういった判断能力が十分でない人に対する商品の販売という事例につきましては、いわゆる適合性原則の議論があったところでございます。適合性原則につきましては、狭義の適合性原則、広義の適合性原則と言われておりますが、おおむね言われているところは、特に狭義の適合性原則については、ある特定の消費者に対しては、いかに説明を尽くしても商品の販売などを行ってはいけない。広義の適合性原則は、やるのであればということでありますけれども、業者が利用者の知識・経験などに適合した形で販売しなくちゃならないというものでありまして、金融商品取引法など、一定の分野には既に規律が設けられているところであります。

こういったものを参考に、消費者契約法においてもこういった考え方を盛り込んでいくということは、一つの考え方としてあり得るところでありますが、適合性原則は行政規制として発展してきたものでありまして、その違反について、どういうふうに捉えるか。情報提供義務についても似たような議論がされましたが、情報提供義務については取消しに直結するのではなく、損害賠償の義務規定という形で検討してはどうかということで御提案させていただいたところでございまして、そういった提案をする際に適合性原則の考え方も加味して検討するというのがあり得るのではないかと思っておりまして、その際に引き続き検討するのではどうかということを書いております。

これは、例えば情報提供義務のときに御紹介いたしました金融商品販売法においては、既に情報提供義務違反による損害賠償請求権の規定を設けつつ、その中で適合性原則の規定を設けるという処理がされているところでありますので、類例としては、そういうことが参考になると考えているところでございます。

説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問ある方は御発言をお願いいたします。阿部委員。

○阿部委員 暴利行為につきましては、民法(債権法)改正の中で随分議論になりまして、最終的には取り入れなかった。なぜ取り入れなかったかというのは、まず要件が非常に不明確であるという理由が挙げられたと思いますが、ここも同じだと思います。現行の民法90条、709条で何が足りないのか、それにつけ足して何か明確な法律的な要件を加えられるか、これがまだ非常に疑問だと思っております。そういう意味では、甲案・乙案、ともに反対でありまして、もう少し判例の集積を待ってから議論すべきだと思います。

○山本(敬)座長 では、大澤委員。

○大澤委員 私は、甲案・乙案、どちらにもちょっと疑問がありますので、ここで今、どちらがいいということを申し上げることはできません。と申しますのは、問題意識としては2つございます。

まず、1つ目ですけれども、「事業者が、消費者の判断力の不足、知識の不足、経験の不足、抑圧状態、従属関係その他」と列挙されております。これは、恐らく暴利行為の困窮、経験不足といったものを頭に置かれているのかなと思ったのですが、ここで列挙されているもののレベルに若干違いがあるのではないかと思っています。

例えば抑圧状態というのは、先ほどまで議論していた困惑類型とどういう違いがあるのかということですし、あと従属関係というのは、例えば従業員と使用者ということであればある程度明確ですが、あるいは相手の判断力不足というのは、思うには高齢の方とか病気があるといった状況なのでしょうけれども、ここに並んでいる5つの要素が、どれもレベルとして、果たしてこれを全部並べていいものなのかというところをまず疑問に思っておりますので、これを整理して要件立てを考えていかなきゃいけないのではないかと思っております。それが1つです。

甲案・乙案、両方ともまだ賛成できないもう一つの理由としては、これは暴利行為というのを念頭に置いていると思いますし、恐らくは今までいろいろなところで提案されていた消費者公序のようなものを考えているのかなと私は理解したのです。その理解というのは、もしかしたら間違っているのかもしれないですが。と言いますのは、甲案・乙案、ともに暴利行為の客観的要件である過大な利益を得るとか、逆に消費者に不当な不利益を与えるという、暴利行為で言う客観的要件のところが入っております。

そうだとすると、従来の暴利行為とか消費者公序に近いと思うのですが、これと別に考えるとすれば、例えば海外などで見られるものですと、従属関係を利用して契約を締結させたときには、これも同様に経済的な強迫があったものと考えるということで、取消しを認めるという規定などが民法改正などで提案されていますが、ここではその利益が過大であるといったことは何ら要求されていなくて、従属関係ゆえに、本来だったらやるはずがなかった契約という言い方をされていますが、その利益の過大性は問うておりません。

そういうことを考えますと、ここで提案されているのが、いわゆる消費者公序とか、あるいは従来の暴利行為の消費者契約版だということであれば、それはそれで別途議論はあり得ると思うのですが、ここで念頭に置かれているのはそういうことなのだろうかということが気になりますので、現段階でどちらがいいというのは判断できません。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかには。では、山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

資料2の4ページ以下を引用しながら意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、意見です。民法上の「暴利行為」とは別に、消費者契約に特有の取消規定(または無効規定)を消費者契約法に定める考え方(乙案の考え方)に賛成いたします。

もっとも、消費者庁の資料1における乙案の具体的な条文案骨子(以下「乙1案」と言います)は、主観的要件を「認識」としてはどうかという点は高く評価できますものの、「当該消費者契約の目的物が、日常生活において通常必要とされる分量を超える場合」を要件としている点において、いわゆる過量販売の事例しか該当しないかのような条文案であることから、賛成できません。

「つけ込み型不当勧誘」事案における救済規定の具体的なあり方については、認知症の高齢者の判断能力の減退など「消費者に合理的判断ができない事情があることにつけ込んで事業者が当該消費者に不必要な契約を締結させた場合」であれば、「著しく過当な利益」まで認められなくとも、当該消費者に当該契約の取消(又は無効)の主張を認める内容で立法化を検討すべきであると考えます。以下では、これを「乙2案」と言わせていただきます。具体的には、下記のような条文案を検討すべきと考えます。

「消費者は、事業者が、当該消費者の困窮、経験の不足、知識の不足、判断力の不足その他の当該消費者が消費者契約を締結するかどうかを合理的に判断することができない事情があることを不当に利用して、当該消費者に消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をさせたときは、これを取り消すことができる」。

以下、理由です。

「つけ込み型不当勧誘」に関する救済規定の必要性でございますけれども、今日の我が国では、加齢や病気による判断能力の減退等の事情で消費者が契約を締結するかどうかについて合理的な判断ができない状況にあることにつけ込んで事業者が契約を締結させるという消費者被害が多発しています。特に高齢化社会の進展に伴って上記のような被害実例は増加している現状にあります。

一方、現行の消費者契約法には、上記のような事案に対応した消費者保護規定が存在せず、被害救済のために現場で使用しております公序良俗や不法行為といった民法の一般規定は適用要件が極めて不明確です。

消費者契約法において、上記のような「つけ込み型不当勧誘」事案に対応した新たな救済規定を設けることは必要不可欠と考えます。

具体的な法規定のあり方を考える際に、民法の公序良俗規定の考え方や裁判例は参考になると思います。

しかし、公序良俗違反の1類型である「暴利行為」という考え方は、先進的な研究者の皆様のお考えはそうではありませんが、民法改正論議の際の法制審議会民法(債権関係)部会における暴利行為の明文化の是非に関する議論の内容や「中間試案」の内容を見ます限り、残念ながら、まだ社会的には大審院判例の暴利行為準則にある「著しく過当な利益」やそれに準じた事由を契約無効の不可欠の要件とする考え方が根強いように思われます。すなわち、「暴利行為の明文化」というアプローチ(甲案)をとると、「著しく過当な利益」やそれに準じた理由が不可欠の要件とされるのではないか、それにより「つけ込み型不当勧誘」事案のうちの一部(過量販売に該当するような事例)しか救済できないかのような法規範になってしまうのではないか、ということを危惧します。

むしろ、「つけ込み型不当勧誘」事案に対処する法規範については、民法の暴利行為準則とは別に、実際の被害の実例やそれを救済した裁判例の内容に即した法規範(要件・効果)を消費者契約法で新たに規定するというアプローチ(乙案の考え方)に賛成いたします。

もっとも、消費者庁資料における乙案の具体的な条文案骨子(乙1案)は、先ほど申し上げましたとおり、主観的要件の部分については「認識」としてはどうかという点は評価できますものの、後段要件が過量販売の事例しか該当しないかのような条文案であることから、賛成できません。

「つけ込み型不当勧誘」事案における救済規定の具体的なあり方については、認知症の高齢者の判断能力の減退など「消費者に合理的判断ができない事情があることにつけ込んで事業者が当該消費者に不必要な契約をさせたと評価できる場合」であれば、当該事業者に「著しく過当な利益」まで認められなくとも当該契約による利益さえあれば、当該消費者に当該契約の取消(または無効)の主張を認める規定、言いかえれば、いわゆる「現代的暴利行為論」の前段要件(主観的要件)を満たす事業者の不当勧誘行為があれば消費者に取消ないし無効(相対的無効)の主張を認める規定内容で、立法化を検討すべきであると考えます。

実際の裁判例においても、認知症の高齢者の判断能力の低下に乗じてなされた不公正な土地の売買の事案、より具体的には単発契約で適正価格の6割に満たない金額での土地売買という事案について、当該売買契約の法的効力を否定して高齢者を救済した大阪高判平成21年8月25日判時2073号36ページは、詳細な事実認定のもと「このような事情を総合考慮すれば、本件売買は、被控訴人(高齢者)の判断能力の低い状態に乗じてなされた、被控訴人にとって客観的な必要性の全くない(むしろ被控訴人に不利かつ有害)な取引と言えるから、公序良俗に反し無効であると考えるべきである」と判示しております。

すなわち、「暴利行為」といった字句を使わず、「著しく過当な利益」の存否も要件とせず、「判断能力の低い状態に乗じてなされた、客観的な必要性のない取引」なので、「公序良俗に反し無効」と判示しております。

このように、「つけ込み型不当勧誘」の被害事例には過量販売とまで言えるのか疑義のある事案もあることを考えれば、「つけ込み型不当勧誘」事案に対処する法規範については、「著しく過当な利益」やそれに準じた事由を要件とせず、「消費者に合理的判断ができない事情があることにつけ込んで事業者が当該消費者に不必要な契約を締結させたと評価できる場合」であれば、当該消費者に当該契約の取消(または無効)の主張を認める規定内容、具体的には、先ほど申し上げたな条文案を検討すべきであると考えます。

なお、適合性原則に関する規律については、他の論点についての議論を踏まえて引き続き検討するということに賛成でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。

2点、さらに御説明いただきたい点があります。

1つは、今日の資料の乙案において、判断力の不足等の事情がある場合について、その事情があることを認識したという点は高く評価すると一方で書いておられるのですが、実際に乙2案として御提案されているところでは、つけ込む、あるいは不当に利用するという提案がされていました。この2つの関係はどう理解すればよいのかというのが1つ目の点です。

もう一つは、御説明の中では、本来ならば必要のなかった契約をしたということが要件になるようなことを言及されていたと思うのですが、御提案の乙2案には必ずしもそのようなことが書かれていないというのは、どう理解すればよいのでしょうか。

以上の2点について、さらに御説明いただけますでしょうか。

○山本(健)委員 御質問いただきまして、ありがとうございます。

まず、「認識」という部分につきましては、今回、消費者庁の資料1で御提案いただいて、なるほど検討に値するご提案内容だと評価させて頂くものの、現時点での意見内容は乙2案であるということでございます。

後者の点につきましては、つけ込み型不当勧誘を受けた消費者が不必要な契約を締結したということを当然の前提としております。乙2案の条文案からその要件が読み取りにくいというのは、それはワーディングの問題、条文案のつくり方の上手い、下手の問題でございます。

○山本(敬)座長 わかりました。御説明、どうもありがとうございました。

それでは、ほかに御意見は。では、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 私は、基本的には甲案に賛成しますけれども、幾つかの修正が必要であると考えています。

まず、乙案への疑問ですけれども、通常必要とされる量を超えるという部分は、山本健司委員が御指摘のように、過量販売の場合しか妥当しないかのような印象がありますことから賛成できません。ただし、山本健司委員とか日弁連の案では、いわゆる現代的暴利行為論の前段要件のみで消費者に取消権ないし相対的無効という言い方をしていますが、その主張を認めるとしており、つけ込み型の契約を締結したことのみを要件としているように見える点には疑問があります。

つまり、先ほど大澤委員からも、外国の例で客観的な要件のところは問題にしないものもあるというお話がありまして、それから、先ほどの山本座長から山本健司委員への2番目の質問ですが、それにも関係するところでありますが、主観的要件のみで取消しあるいは相対的無効ということを認めるのかどうかということにかかわることであります。確かに、例えば民法上詐欺とか強迫という場合に、意思表示に瑕疵があったということを理由に取消しを認めるということですけれども、ここで問題としている場面がそういう場面なのかどうかということについては疑問がありまして、むしろ意思表示の瑕疵という問題を超えて、締結された契約の内容をも考慮するという場面になってくるのではないかと思います。

そうだとしますと、つけ込み型の契約の結果、当該つけ込みがなければ消費者が契約しなかったと客観的に評価できるような不必要な契約が締結されたとか、あるいは不当に不利な内容の契約が締結されたということも要件にする必要があるのではないかと思います。それを要件としているということで甲案が支持されるということです。乙案もそこの部分については言及なさっておりますけれども、先ほどの過量販売との関係で疑問があるということです。

こういうことで、基本的に甲案に賛成ということなのですけれども、修正も必要ということでして、まず、甲案・乙案、両方に関係するところですけれども、11ページの1-2の四角で囲んだところの冒頭で「事業者が、消費者の判断力の不足、知識の不足、経験の不足、抑圧状態、従属関係その他の当該消費者が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があること」という例示を出しておりますけれども、具体的に甲案・乙案で括弧書きして「例えば」と出されているところには、「消費者の困窮、経験の不足、知識の不足その他」という例がありまして、むしろ冒頭で書いてあります判断力の不足とか抑圧状態というのが、具体例で「例えば」という中には見られないと思います。

これについて、結局、甲案・乙案でも合理的に判断することができない状況を問題としておりますから、判断力の不足ということは入れなくてもいいという印象もあるかもしれませんけれども、むしろ高齢者の消費者被害ということを問題とするならば、判断力不足こそ例示として入れなければいけないと思います。

それから、抑圧状態ということでありますけれども、これも消費者被害に限りませんけれども、消費者被害に多く見られる状況でありまして、まさに先ほどから出ております執拗な勧誘が行われるという状況であると、この抑圧状態が問題となるということでありまして、これも消費者契約において特に特徴的だということで、例示の中に入れる必要があると考えます。そういうことでありまして、そういう例示を補う必要があるということ。

それから、甲案だと無効ということになっておりますけれども、これを取消しとする余地がないかということを検討する必要があるのではないかと思います。これは、今日も取消権の期間制限ということで、どのぐらいにするかを扱うということでありますけれども、取消権がそれなりに現在よりも長くなるということであれば、第三者の保護ということも考えますと、取消しにするということも1つ考えられると思います。

取消しにするということがもしできるとするならば、無効としておくより大きなメリットと言うのでしょうか、利点があると思いまして、これはまさに甲案をとった場合、暴利行為論を緩和したものだという印象になりますので、そうすると、それを消費者契約法に規定することの意味を考える必要がありまして、消費者契約法にこういう規定を入れるということがどう受け取られるのかということを考えますと、場合によっては、消費者契約法だから、特別こういうものが入るのだ、民法では入らないことを消費者契約法では入れたのだという印象が出てくる可能性があるのではないかと思います。

そういうことから、規定の仕方に注意する必要があると思いますが、無効としておくよりは取消しとしたほうが、民法の側での暴利行為論の進展ということを阻害することにはならないだろうと思います。

それから、先ほど言い忘れたのですけれども、客観的要件とか契約内容の部分でありますけれども、それを入れておくことの重要性というのは、場面として契約締結と契約内容の両方にまたがるような問題がここでは出てきているのだということ以外に、実際につけ込みがあったかどうかという認定の場面で客観的な要件のところがないと、認定しづらいのではないかと思います。客観的な要件があれば、例えば客観的に見て不必要な契約が締結されているとか、あるいは不相当な内容の契約が締結されたということがあれば、つけ込みがあったということを認定する有力な手段になると考えます。

そういう意味から、日弁連のように主観的要件だけで足りるというのも一つの立場だと思いますけれども、むしろそういう客観的な要件を緩和された形で入れるというほうが、実際の運用はしやすいのではないかと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、井田委員、お願いいたします。

○井田委員 まず、暴利行為準則とは別に乙案のような規定を定めることには賛成であります。特に判断力の不足という点で、高齢者の消費者被害の件数がふえているということは、事例として実際にあると思います。複数の委員からもありましたように、要件立てとして、これで十分かということはもちろん議論としてありますし、効果として取消しか、解除か、無効かというのはあると思うのですけれども、いわゆる合理的な判断をすることができない事情を利用する消費者被害契約類型というのは現に存するということなので、乙案のような新たな規定を設けるということは賛成であります。

ただ、最終的に乙案というものの要件を決めていった中で、甲・乙という書き方をされていますけれども、乙案のような規定が入った場合に、甲案が要らないのか、甲案を全く規定しなくてもいいのかというのは、僕は別の考え方があると思います。もちろん、甲案についても、このような要件で消費者契約に定めることの是非は当然あると思うのですけれども、乙案の冒頭に示していただいているように、甲と乙というのは別々に検討対象になり得る規定であると思いますので、どちらかということよりも、どちらもあり得るということで理解していいのではないか。済みません、適切な要件立てというのはもちろんありますけれども、うまく切り分けることは可能じゃないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに。では、丸山委員、お願いします。

○丸山委員 今回の規定について、意見としましては、消費者契約というものの特性を反映している、暴利行為には類似するけれども、それとは異なる、90条とは切り離した法制として消費者契約法の中に、消費者の一定の状況というものを不当に利用して不当な内容、もしくは本来、不要な契約というものを締結した場合に対応するような規定を設ける必要があるのではないか。現在の相談事例とかにもかんがみて、そのような立法を行う必要があるのではないかと考えています。

そういった発想から見ますと、例えば甲案のたたき台、11ページの四角枠で囲まれているところですけれども、これを見ましたときに気になる点が2点ございます。

1つは、消費者の事情がいろいろ並んでいて、これで足りるのかというのは、もちろん御指摘のように検討しなければいけないのですけれども、こういった事情があることを「利用して」という言葉になっておりますが、果たして利用してということだけでよいのか。不当に利用するということが必要なのではないかというのが少し気になりました。

これは、「利用して」ということの定義にもかかわるのですけれども、1つ事例を考えてみますと、買い物依存症とか、冷静さを失って異性に貢いでいる人が店舗で買い物をしている。しかし、お店の人は積極的に勧誘していないという場合、大量に買い物をしている顧客に対し、お店側はとめる義務まではないと思うのですが。そうなると、そういった状況を不当に利用して、本来要らない契約とか不当な内容の契約を締結しているということが必要なのではないかといった感想を持ちました。

他方で、事業者に不当な利益を得させ、また消費者に不当な不利益を与えるという要件については、解説を読みますと、これは本来要らなかったものを買う、本来しなかった契約をする場合も含むのだと書いているのですが、表現の問題ですけれども、果たしてこの言葉の使い方で、そういった不要な契約をしてしまったという場合も含むと読み取れるのかという点が、気になった点でございます。

私からは以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、古閑委員、その後、柳川委員。

○古閑委員 判断力とか知識の不足というのは、すごくレベル感があって、1かゼロかではないものなので、それをもって合理的に判断することができていたのかどうかというのを、実際、現場で判断できるかというと、相当難しいと思います。ここに挙げられている事例で、確かに救済したほうがいいものはあると思うのですけれども、とはいえ、今のこの案ですと客観的な基準にはなっていないので、混乱ばかりが大きくなってしまって、本当に救いたいところだけを救うという形にはならないのではないかと思っています。

あと、今、丸山委員からもありましたけれども、「利用して」とか「認識した上で」という言葉だけでも、絞り方としては不当に広くなってしまう可能性が高いと思っていまして、私もこの文言は再検討が必要だと思っています。

○山本(敬)座長 それでは、柳川委員。

○柳川委員 今、お話があったことと少しかぶることですけれども、まず判断力の不足、知識の不足、経験の不足等の事情があるというところは、もう少し明確にする必要があるだろう。ここで挙げられている事例のような問題が起きていることは事実だと思います。そこに関しては、高齢者の認知症を患っていらっしゃる方につけ込み型の、問題があるような言い方をしていることは事実だと思いますけれども、そのことがこの文言でうまくつかまえられているかというと、そこはかなり疑問があります。

逆に、乙案を見ると、それを認識した事業者が売っているということですけれども、合理的に判断することができると認識している事情というのはあり得るのかというと、例えば経済学者に何か物を売っているとしても、合理的に判断できる経済学者など、本当はいないのではないかと思うぐらいでございまして、そのように考えてしまうと、ほとんどの人に対して、実は合理的に判断できない可能性がある消費者だと認識せざるを得ない。

こんな感じでざっくりとした条文になっていると、なりかねない。合理的でない可能性を認識していましたねと言われると、確かにそうですと言わざるを得ないような事業者ばかりになってしまうと、本来のものではないので、ここは少なくとも意味内容とワーディングと両方の点でもう少し絞り込みが必要ではないかというのが乙案に関する懸念です。

甲案に関して言うと、暴利行為論は確かに民法90条にあるのですけれども、そことは切り離してというお話は私もそうだと思います。ただ、経済学者として考えると、何が暴利かというのはかなり難しい話だろうと思います。それから、不当な利益とか不当な不利益というのも、何をもって不当かというのもかなり難しい問題だと思います。コストがほとんどかかっていないにもかかわらず、物すごく設けたというケースは、例えば最近のようなインターネット関係の話で考えると、いろいろなものがあるわけですね。コストの何百倍、何千倍ともうけているというケースは幾らでもあるのですけれども、これが不当な利益か、暴利かというと、必ずしもそうではないということがいっぱいあるわけなので、そうやって考えるとこれはかなり難しい。

そうすると、先ほど後藤先生のほうからお話があったように、つけ込みになっているという客観的な要件をどこかに入れておかないと、これだけでつくっていくのはなかなか難しいのかな。そこのところに、そういう問題点に関しての契約というのが本当に絞り込めるかというところがポイントかなと思います。本当にここで懸念として、問題点として例示されているような方々の契約とか取引を守るということからするのであれば、ここはむしろ次のページにある狭義の適合性原則のほうが、守りたいのであれば、そのほうがむしろフィットするのかなという気がいたします。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 済みません、最初に申し上げた発言をちょっと訂正させていただきたい。私の説明の仕方がよくなかったというのがわかったのです。

まず、1点目ですけれども、海外で従属状態などにつけ込んで取消しを認めようとしている民法改正があると申し上げましたが、そのときに客観的要件は全くないということではなくて、申し上げたように、もしその状態がなければ契約しなかったであろう契約をした場合にはという形で、このペーパーで出ているもので言うと、要は不必要な契約をしたということであればという要件はありますので、その従属状態などにつけ込んだというだけの主観的要件ではないということをもう一度申し上げたいと思います。それが1点目です。

もう一つは、この甲案と乙案の関係が私はよくわからなかったので、どちらにも賛成しかねるということだったのですが、もちろん要件のブラッシュアップは必要だと思いますが、仮に甲案が暴利行為を消費者契約バージョンにすると、それに加えて、乙案のような一定の状況を濫用したような、海外ですと状況の濫用型とよく言われますが、そういうものを利用した場合に取消しを認めるということで併記されているという、さっき井田委員がおっしゃっていたようなことであれば、まだ理解できるのですが、資料の書き方が甲か乙かどちらか1つという形に見えました。

そうだとすると、この甲のほうは、こういう問題は全て消費者公序というか、暴利行為に解消するという提案に読めましたので、現時点でそういう態度決定をすることが果たして適切なのかということを疑問に思いましたので、冒頭の発言をさせていただきました。この甲案と乙案の関係は、もちろん暴利行為とは別にと書いていますので、並べてと理解していいのかもしれないのですが、恐らく今後の審議で予定されているのだと思うのですが、いわゆる消費者公序とかの関係はどうなっているのかということを伺いたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 今の点は消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 いわゆる消費者公序というものについて、何もって消費者公序と言うのかというのがよくわからないところがございまして、私どもの受けとめとしては、あえて言うならば甲案というものが消費者公序というものであろうと思っております。それで、この甲案の位置づけは、要するに暴利行為として処理されてきた。その暴利行為の従来の定式からすると、若干外れてきているような事例で裁判所が判断してきている、救済を図ってきていると見られることを踏まえまして、それでこういった定式の、消費者契約の世界においては一定の修正を図ったらどうでしょうかというものでございまして、かつて法制審で一時議論されておりましたのは、90条の明確化というものに当たるものだろうと思います。

ただ、こういったものをそもそも消費者契約法にあえてする必要があるのかというところは、よく検討しないといけないと思われるところでありまして、それは民法の規定に委ねればいいじゃないかと言われれば、そういう考え方もあろうかと思いますので、そうであれば、甲案のような考え方をとる必要はないということになろうかと思います。

乙案は、それとは全く別の切り口から、政策的にといいましょうか、念頭に置かれている事案は甲案とほぼ重なるというか、結局同じ事案ということなので、ずっとさかのぼっていくと同じところにたどり着くのかもしれませんけれども、現在ある誤認類型・困惑類型とはまた別途の取消しないし解除の事由として設けることを検討してはどうか。それは、現に特商法で一部措置が講じられておりますので、それをヒントに検討してはどうかというものでございます。

○山本(敬)座長 それでは、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 2つあるのですけれども、1つは、民法の暴利行為の消費者契約法版をつくるということの是非については、これは前に特別法との関係で議論しましたけれども、民法で必ずしも明確でない部分をはっきりと書く。場合によっては、それを補完した形で要件を明らかにして書いて、90条の消費者契約法版を書き込んで無効とするというやり方は、これはありだろうと思うのです。昭和9年でしたか、暴利行為についての他人の窮迫とか軽率、無経験を利用してという判例法理。これは、もうほとんど動かない判例法理ですから、その部分を具体的に消費者契約に落とし込んで書いてみる甲案のやり方というのは、それなりに意味があると思います。

ただ、後藤代理がおっしゃったみたいに、これが民法に反射的に影響して、民法の暴利行為論というものの否定につながっていくようなことになったのではまずかろうという意見も、確かにそうかなという気はいたしました。

もう一つ、この乙案もそうなのですけれども、ここにある判断力不足、知識の不足、経験不足という表現ですが、これは全部未成年者や制限能力者の特性との関係でよく語られることばかりなのです。つまり、意思能力といいますか、あるものを見たときに、これが本当に自分に必要な契約なのかどうかという判断が十分できないような人間から契約を取り付けているという場合の規律に親和性があることが判ります。民法で意思能力がない状態で契約した場合は、これは無効になる。今回の改正案では無効という言葉さえ出てきましたけれども、そういうふうに効力が否定される。

ここで問題になっているのは、意思能力が全くないほどではないけれども、この契約をすべきなのかどうかという判断力が非常に弱い人に対して、保護してやろうということだとすると、プラスアルファして、相手方がそのことを認識していたとか、あるいはそのことについてつけ込んだという主観的要素を加える。そのかわりと言っては何ですけれども、暴利かどうかということは考える必要がなくて、そもそも必要のない契約を、対価的に相当であったとしても締結させられたのであれば、その契約に関しては取消せるという形で効果を調整していくという道は十分あり得るだろうと思います。

そのことからすると、暴利行為とは一線を画して、むしろこれまでの特別法の中で過量販売などの規律をいわば消費者契約法に少し純化した要件として書き込む乙案は、大変魅力的な案であろうという感じがしました。問題をちょっと整理して暴利行為論に余り引きずられないほうがいいのかなということであります。

○山本(敬)座長 では、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 甲案については、賛成できないです。河上委員長がおっしゃったのと同じことですが、不当な価格でなければこういうふうにつけ込んで売ってもいいのかということです。相当価格であれば、インチキをやって売ってもいいということを合法化しかねないルールなので、甲案はだめだと思うのです。

乙案に関しては、過量販売だけがだめなのか。1個ならいいのかというと、そこもちょっと引っかかるのです。ただ、必要なものを必要な量だけであれば、こういう売り方でも構いませんというコンセンサスができるなら、それでもいいかなとは思います。河上委員長はそういう判断をされたと思うのですね。

民法の成年被後見人の取消権の規定を見ますと、成年被後見人だから判断力がほとんどなくて、取り消せるのだけれども、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については取り消せないと書いてあるわけで、この乙案が日用品の購入とか日常生活に関する行為的なものを想定しているのであれば、成年被後見人においてすらそうなのだから、判断力が少々不足しているぐらいじゃ取り消せないという評価はできるかなと思いますけれども、事業者の作為が伴う場合にこれでいいのかという引っかかりがちょっとございます。

たまたまオランダ民法の状況の濫用の規定を見ておりますと、これは法制審議会で配られた資料ですけれども、つけ込みをもう少し具体化して、相手方の事情から契約を思いとどまるべきであった者が、逆に契約を促した場合はという書き方をされているので、消費者契約法的に置きかえれば、恐らく一定のシチュエーションにある事業者としては、相手方消費者の置かれている状況について認識できているのであれば、一定の情報提供をしたり、助言したりすべき義務が発生するにもかかわらず、そうしないで、逆にそれにつけ込んだ場合というのを想定しているのではないかと思われます。

先ほど言ったことですが、そのような相手方の状況に事業者が追い込んでおいて、それを悪用するというのは、まさに許されないので、それは当然取り消せるとしてもいいと思いますけれども、そうでないタイプの場合には一定の要件の縛りがあったほうがいいのではないかという気がいたします。したがって、1個か2個かという問題に限定するのは賛成できません。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見はいかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 適合性原則のほうにもかかわってくるかと思うのですけれども、例えば母子家庭で収入がアルバイト収入の4万円ぐらいしかないような学生で就職活動をしているような状況で、40万円ぐらいの契約をしたときに、一般的には高額ではないわけですけれども、その人にとっては非常に支払いが困難な状況にあるということもあります。過大な契約とか暴利行為の内容とか、それから過量販売ということの問題にかかわってくるかと思いますのでこういうことも含めて御検討いただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかはいかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 先ほど私は甲案に基本的には賛成するということで、でも幾つかの修正が必要というお話をしました。その後、乙案がいいというお話も何人かの方から出ておりますので、私の考えは、先ほど甲案から出発するということを言いましたけれども、乙案にも近いといいましょうか、消費者に不必要な契約が締結された場合も含め、無効でなく取消しを考えるという点で、むしろ甲案を修正して乙案に近くなっているという感じもするのです。そういう意味から言うと、乙案を修正するという方向であっても特に反対するものではなく、私が先ほど言ったような意図が達せられれば、甲案でも乙案でも、それはどちらでもよろしいと考えております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

御意見がたくさん出ていて、まとめるのがなかなか難しいといいますか、まとめられないように思いますけれども、少なくとも民法では、従来から判例法により認められていた暴利行為の準則があって、消費者契約法で規定するのであれば、それをそのまま具体化して規定するというのとは少し違う考え方で考える必要があるという点は、多くの方々が御指摘しておられたところではないかと思います。

もちろん、その際に、内容の不当性がどうしても必要になってくるのではないかという御意見もありましたけれども、他方では、内容にかかわる要素、あるいは客観的要素と言われていたものが全くなくてよいとまで言われる方がいたかどうかは定かではありませんが、少なくともそのような事業者側の行為がなければ、通常するはずのなかった契約をさせられることになっているという意味での客観的に見ても不必要と考えられる契約が行われたということは、最低限要件になるということも、何人かの方が御指摘されていたところではないかと思います。

しかし、他方で、前段の主観的な要素に関しては、「判断力の不足、知識の不足、経験の不足、抑圧状態、従属関係その他の」ということが挙がっていますけれども、これらで本当に適切な絞り込みが行われているのか、あるいは逆にこれらでは足りないのではないかという御意見もあったように思いますし、「合理的に判断することができない事情」というのは、「合理的」の意味によるわけですけれども、基準として明確に立てられているのかどうかも疑問があるという御指摘もあったところです。

それらの御意見を踏まえて、さらにどうするかというのが次の課題になってくるわけですが、甲案を修正すれば、乙案を修正すれば、だんだんと収れんしていくかもしれないという後藤委員の御指摘もありましたけれども、甲案か乙案かというよりは、今日お出しいただいたさまざまな問題点を考慮して、さらに要件あるいは要素に当たるものをより適切に絞り込むような案ができるかどうかが問題で、もしできるのであれば、次回、それをお出しいただいて、改めて、それで本当に問題がないかどうかを詰めていただくということにならざるを得ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 どうもありがとうございました。

この問題は、私どもの問題意識としましては、繰り返しになりますけれども、つけ込み型といいますか、その商品の必要性について十分検討した上で意思決定するというのが、本来の契約の姿だと思いますけれども、そこが十分判断できないような状況を利用したような形で商品を購入させるという、昔からある消費者被害の実例に対し、不実もない、困惑もない、対価的な不均衡もないときには、恐らく現行の規制では穴になっているのではないかというのが問題意識でございまして、裁判所は苦労しながら公序良俗無効を、従来の判例法理の定式をややずらしたような形で処理してきているのではないかと見られるというのが問題意識でございました。

ただ、他方で、お示しした甲案にしろ、乙案にしろ、まだ練れておらないと思いまして、書き方によっては不必要に網をかけ過ぎるのではないかというおそれがあるというのは、御指摘のとおりだと思いますので、そこはもう少しよく精査してみた上で、さらに御相談させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

この問題に関しては、資料でも御紹介がありましたように、民法の改正の過程でかなり最後のほうの段階まで、暴利行為と言われてきた準則を現在の公序良俗の規定に並べる形で明文化することができないかということで、相当詰めた議論を行いました。最終的には明文化することができなかったところです。ただ、問題点は阿部委員から御指摘いただいたところではあるのですけれども、これは実務家、とりわけ裁判官の意識ないしは理解の問題なのですが、公序良俗あるいは暴利行為のイメージが非常にハードルの高いものであったとみることができます。特に、昭和9年判決でも、「著しく過当な」というかなりハードルの高いものが要求されてきた。これは、契約自由の思想からしますと正当な考え方だったのかもしれませんけれども、現実のさまざまな紛争を目の前にしますと、本当にそれで足りるのかということが裁判の場では問題視され、90条を少し広げるような形で救済を行う裁判例がたくさん出てきました。

それにしても、もとのイメージが相当ハードルの高いものですので、本来ならば救済が得られてもおかしくないところで、契約は有効である、したがって責任が課せられることがどうしても出てくる。そこをどう評価するかというのが今の問題です。私自身、強く関心を持ってきた問題ですますけれども、この点についてはたくさんの問題点を指摘していただきましたので、以上の議論を踏まえて、次回また改めて議論させていただければと思います。

(2)第三者による不当勧誘

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

あと2つ論点が残っていまして、既に6時半であるということを踏まえるとどうすればよいかという問題はあるのですが、差し当たり、次の「第三者による不当勧誘」についての検討に移りたいと思います。

それでは、資料につきまして、消費者庁のほうから御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 できるだけ簡潔に御説明したいと思います。42ページでございますが、「第三者による不当勧誘」というところでございます。

事例としまして2-1を掲げておりまして、47ページに参考となる図を国民生活センターの公表資料から引用しておりますが、いわゆる劇場型勧誘と言われるようなものでありまして、勧誘したのはA社であります。ただ、契約締結はB社との間でしているということで、A社とB社の関係はよくわからないということでありまして、民法上の詐欺の問題と捉えますと、第三者詐欺ということで処理されるという事案であります。

消費者契約法でこういった第三者の不当な行為による契約の取消しがどうなっているかということでございますけれども、ちょっと戻っていただきまして45ページに現行の5条を載せておりますが、契約の締結の媒介の委託を受けた第三者が不実告知等の不当な勧誘をした場合に、消費者は取り消すことができる。民法との違いとしましては、そういった一定の媒介の委託関係というのがあることを前提にしております。他方で、民法の規定、現行の96条2項では、その事実を相手方が知っていた、悪意というものを要件としておりますが、消費者契約法においてはこの悪意という要件はありません。

なお、この民法につきましては、45ページの下のほうに書いておりますが、今回の改正においては、その相手方の認識については、「事実を知り、又は知ることができた」という悪意有過失という形で広げているというところでございます。

42ページに戻っていただきまして、事例の御紹介と、それから現行法の御紹介は今、申し上げたとおりでございます。

43ページの「消費者被害」で、第三者の行為による契約がされたときに、現行の消費者契約法は媒介の委託という一定の関係を求めているわけですが、先ほど申し上げました、いわゆる劇場型勧誘というものを踏まえますと、契約の相手方と第三者との間の委託関係については、消費者の立場から裏づけることはなかなか難しいのではないかと思われるところであります。

民法で第三者詐欺というのがあるわけでありますけれども、その民法が今般、改正されようとしていることも踏まえまして、44ページの「考え方」でありますが、そういった第三者の不当な行為による契約の締結といった場合に、相手方、この場合には事業者になりますが、事業者の悪意または有過失ということを前提に契約の取消しをすることについて、どのように考えるかということで書かせていただきました。

これにつきましては、現行の委託関係というものにつきましては、事業者がその第三者に委託して、つまり自分がそれで第三者を活用して事業活動を展開して利益を獲得するというところに着目いたしまして、そうであれば、その第三者の不当な行為による責任もある程度引き受けるという発想だと思いますので、その発想を前提としますと、第三者に広げることについては慎重であるべきという考え方も理解できるところでありますが、他方で、先ほど申し上げましたような、第三者が関係ないと言いさえすれば難しいというところも消費者被害の中にはございますので、そこをどう考えるかということで、一つの案としては、民法の案を踏まえまして消費者契約法で考えてはどうかということで書いてみたものでございます。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いします。阿部委員。

○阿部委員 端的に申しまして、勧誘の概念が今と同じであるならば、このような考え方に賛成いたします。ただし、勧誘の拡張が行われるのであれば、その時点であわせて考え直させてください。

○山本(敬)座長 どうもございました。

ほかに御意見は。山本健司委員。

○山本(健)委員 資料1の42ページに提示されているような考え方に賛成いたします。

消費者が第三者の不当勧誘行為によって意思表示をしたという事案についても、詐欺の場合に民法96条2項が想定している事案と同様に、表意者保護と相手方保護のバランスをとるという観点は妥当するように思います。むしろ、表意者が情報交渉力の劣る消費者である分、より要保護性が高いのではないかと考えます。

さらに、事業者においても「第三者の不当勧誘行為に起因する誤認等に陥った状態で当該消費者が意思表示をしようとしている」という事実経緯を全て認識している、または認識してしかるべき場合には、消費者の誤認や困惑を払拭する機会が存在していたわけであり、それにもかかわらず当該消費者との契約に至ったという事案については、むしろ消費者の誤認・困惑等に乗じて契約したとも評価できるように思われます。すなわち、契約取消を認めても、不合理な結論ではないと思います。よって、消費者が第三者による不当勧誘行為を知り、または知り得た場合に取消しを認める規定を明文化するという考え方について賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ほかに。古閑委員。

○古閑委員 阿部委員の意見と重なりますけれども、ここにも書いていただいているとおり、勧誘とは何かというところと密接にかかわってくる問題だと思っております。特定の事業者との契約締結に向けたものに限定されるのであれば、まだいいと思うのですけれども、そうではなくて、広く、例えばクチコミとか芸能人のテレビでのコメントといったものまで入ってくるということになるのだとすると、それは広過ぎると思います。

仮に特定の事業者との契約締結に向けたものであっても、それをネット上のクチコミとかに書かれていて、知れる可能性はあると思うのですけれども、それをモニタリングとかをして本当に知れるかというと、現実問題としては難しいと思いますし、仮に知ることができたとても、例えば全国展開しているような小売店とかで、こういうクチコミもありましたけれども、これはそうじゃありませんからというのを、販売するごとにお客さんに伝えられるかというと、そういうのも難しいと思いますので、どこまでのことを言っているのかなというのがよくわからなかったのですけれども、そういうことまで想定されているのだとすると、広過ぎると思います。

それから、民法96条2項の比較という話もありましたけれども、こちらは違法な欺罔行為があったときに適用されるものなので、それと直ちに横並びということでもないのだろうと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、沖野委員。

○沖野委員 済みません、内容の確認になるかと思うのですけれども、42ページあるいは44ページの囲みもそうですけれども、書かれているところは、「第三者が不当勧誘行為を行った場合において、事業者がその事実を知っていたとき」で、「その事実」というのが、この記載を見ると「不当勧誘行為を行った場合」を受けています。そうすると、「不当勧誘行為を行った場合」というのが、一方で意思表示の瑕疵を理由とする取消しなどにおいては、事業者の一定の勧誘行為があって、意思表示のゆがみが生じ、そして取消しに至るとか、1つ前の提案では誤認・困惑は要件ではないのでそういったものもありうるかと思いますけれども、いったん措きまして、不当勧誘行為による誤認・困惑の類型についてみますと、このままですと、事業者がそういう行為を行ったということだけを知っていれば、あるいはそれを知ることができたということで要件を充足すると読まれかねないと思います。

そういたしますと、勧誘行為の類型が広がるときには、民法のような故意の欺罔行為ではなくて、故意も過失も問わなくて、事実と異なる情報を提供したという場合、その情報提供がされているということを知っていれば、あるいは知ることができたら、これに当たるのかという古閑委員が今おっしゃったような問題が出てくると思います。

しかし、資料の解説のところでは、44ページですが、「この点については」という3段落目ですけれども、「事業者が、当該第三者の不当勧誘行為に起因する誤認・困惑によって消費者が意思表示をしていることを知っている又は知ることが」できたとありまして、詐欺取消しに関する注釈民法の解説が引かれています。むしろこの記述から見ますと、そういう情報が例えばネットのサイトで出されているということだけではなくて、それによって誤認しているということがわかっているか、さまざまな状況から、それはわかるはずだっただろうという場面となると思われます。

そうだとしますと、勧誘の部分が広がったとしても、かなり絞りがかかっているということになるのではないかと思います。それであれば、勧誘が広がってもいいのかなと思うのですけれども、その事実を知っていたというのがどこまでを要求するのかというのを、ここでは検討していく必要があるかと思います。書き方の問題もあると思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見は。では、柳川委員。

○柳川委員 今、沖野委員がおっしゃったところは私も気になりましたので、何を知っていたかというところは少し明確にしたほうがいいと思うのと。

それから、知ることができるというのは何を意味するのかということ。その上に解説があるような、それを払拭する機会があるというのも、これが何を、どの程度のことを意味するのか。結局、どのくらいの時間と労力とコストをかけて、これらをやるのかということに現実問題としてはなってくると思うのですけれども、物すごく労力をかければ知ることができる、物すごく労力をかければ払拭することができるということであるとすると、先ほどの勧誘概念の話に関係すると思いますけれども、現実的にはなかなか難しいことになるので、これは書きぶりの問題になるだろうと思いますけれども、そのあたりは少し気になるところでございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 先ほどの古閑委員の御指摘が一番気になっています。例えばネットのクチコミとか書き込みで、赤の他人が全くでたらめな情報を書き込んでいて、しかもそれを信頼したお客さんが自分のところに来ているということがわかったときにどうするかという話が1つあると思います。しかし、実際に赤の他人がそんなことをすることがあるのだろうかという気もしまして、むしろ例えばネット上のクチコミなどで、お金を払って、そういうことを書かせているという、いわば勧誘補助者みたいな人がいて、そういう人が行動をとっているときは、いわば自分が頼んでいるのだけれども、そのことを立証するのは非常に難しいという状況で、勧誘補助者がやった、そういうネット上のクチコミ行為に関して責任を負うのが筋じゃないかという気がするのです。

ですから、もし分かれる線があるとすれば、全く赤の他人がそういうクチコミや書き込み行為をしたことが、知ろうと思えば知ることができたかも知れないが、そのまま取引してしまったような場合を、もうそれはしようがないとするか、あるいはそこに重大な過失があるから、その部分についてはいわば第三者詐欺に近いような形で取消権を認めてやるかというあたりのところだと思います。私は赤の他人がやった場合は、軽過失あたりであれば、もうしようがないという感じがしないではないですけれども、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 いかがでしょう。では、松本理事長、続いて大澤委員。

○国民生活センター松本理事長 沖野委員の最後の御指摘の部分から考えると、結局、あるシチュエーションにおいて、事業者として消費者が誤解しているということがわかっている、あるいは通常の事業者ならわかるべき場合に、その誤解を解いてあげる情報提供義務なり助言義務なり、積極的に何か告知すべき義務が生ずるという話に換言されるのではないかと思います。そういう趣旨のルールの必要性は前から何回も出てきたと思うので、私はそういうルールをここに入れるのではなくて、一般的なルールとして入れるべきであると考えます。消費者の誤解の原因をつくったのが事業者であれば、これは不実告知の話だし、第三者に委託しているとか、関係のある第三者であることがはっきりしていれば、それは事業者本人がやったのと同じに扱えばいいと思う。

だけれども、そのことが立証できない場合にどうしますかという話が残るわけです。となると、結局、一般的な助言義務的な、誤解を解いてあげる義務の射程でカバーするしかないのだろうと思います。消費者が誤解をしているということがわからない、そういう発言を一切しないで、これをくださいと言ってきた場合で、かつ、その消費者の情報源が事業者と特別の関係があるということが立証されない場合においては、ちょっと救済のしようがないのではないかと思います。

○山本(敬)座長 それでは、大澤委員。

○大澤委員 私は、この「第三者」という言葉で、果たして要件として大丈夫なのかというのが実は気になっております。もちろん現行法の委託がある、媒介することの委託をした第三者に限定するというのは適切じゃないというのは、そのとおりだと思いまして、それは何らか広げていく必要があるとは思うのですが、だからといって、これを「第三者」という3文字で大丈夫なのかというのが心配になっております。恐らくこのペーパーで想定されている、こういう場面というのは、劇場型勧誘というのが現に引かれていると思うので、これは第三者と言っても、要はある程度関係している人たちですよね。

47ページの図で言うと、A社、B社。委託関係があるかどうかはよくわからないけれども、複数の人が寄ってきてやっているという状況ですので、そういうのを想定して第三者と書いているのだと思います。ただ、第三者という言葉だけですと、さっき古閑委員がおっしゃっていたように、全く自分たちと関係ない人がどこかでビラを勝手につくって配っているというものも入ってしまうのではないかという懸念が出るのは、それはもっともな気がします。

だとすれば、先ほど河上委員長がおっしゃっておりましたけれども、勧誘補助というか、どういう言葉が適切なのか、私も代案があるわけでは全くないのですが、イメージとしてはさっきの劇場型勧誘のようなものは、民法だと例えば共同不法行為のような、共同して、そういう取引をさせているというイメージに近いのかなと思いますので、例えばお互いに関連性があるとか共同性があるとか、そういうことを言うと、また抽象的過ぎるという批判があるのは承知していますけれども、私が申し上げたいのは「第三者」という3文字だけで果たして大丈夫なのかという心配をしております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見はいかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 私も大澤委員と同じ感じがしていまして、民法96条2項の第三者というのは、確かに教科書的には制限が特に加わっているような書き方になっていないと思うのですけれども、実際に適用される場面というのは、詐欺をした人と意思表示の相手方がある程度関係がある場合なのではないかと思います。そういうことから見たときに、96条2項が文言上は何ら第三者を制限していない規定になっていますので、96条2項のようなルールを消費者契約法に入れるとなると、河上委員長がおっしゃったように、あるいは古閑委員が心配なさっているように、赤の他人のネット上のクチコミについても取消しが認められるということになりかねなくなりまして、そこについては慎重に考える必要があるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

いかがでしょうか。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 議論の仕方をちょっと整理したほうがいいと思います。

1つは、消費者契約法の現在の媒介の委託という言葉から、一定の関係にあるということが証拠として出せるにもかかわらず、この概念から落ちる場合があるから、もう少し広げようという議論があります。もう一つは、両者の関係が立証できない。どういう関係にあるのかが立証し切れない場合に、なお消費者を救済するとすれば、どういうことが考えられるのかという2つに分けて議論しないと、非常に混乱すると思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

今のような整理の上で、さらに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 私も媒介概念が今までちょっと狭過ぎたという感じがしないでもないです。今後、媒介の概念をもう少し拡張して、さまざまなものが捉えられるようにするということは大切だと思います。

それから、実際の相手方との関係を、いわば履行補助者とか、そういう形で捉え切れないような関係にあるようなものも、これは実は山本座長のオリジナルなのですが、先ほどの「勧誘補助者」という言葉で括って、そういう関係にある人もいわば本人に準ずる形で捉えられるようにしようという両方向から概念を整理していく必要があるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ただ、松本理事長の御指摘は、赤の他人の場合というよりは、むしろ勧誘補助者に当たることが立証し切れないような場合について、なお受け皿的な規定を置く必要があるかということだったように思いましたが、この点はいかがでしょうか。このような問題提起に対して、どう答えるかという観点から、もし御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、その際には、沖野委員から指摘がありましたように、何を知り、または知ることができたかという点も絞り込みが必要である。仮に絞り込んだとして、それでも規定する必要はないのか、あるいは規定するとすれば、本当に問題が生じないのか。この点はいかがでしょうか。そこを詰めないと、なかなか次の提案がし切れないかもしれません。いかがでしょうか。

河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 これは、さっき松本理事長がお話しされたように、相手が間違って他人の言説を信じて、ここに来ているのだということがわかった時点で、それをただしてやる。つまり、助言してやるということが義務づけられるのであれば、そこまで書き込んでいいのだろうと思うのですが、現時点でそこまで書き込むのは難しいような気がします。

○山本(敬)座長 民法の錯誤の規定は、今回、改正案が出ているところですけれども、現行法の解釈としてもさまざまな考え方が主張されていまして、少なくとも一時期の通説は、錯誤したことを相手方が認識していれば、つまり錯誤をしているのを相手方が知っていた、ないしは知ることができたときには、動機錯誤でも無効の主張を認めてもよいのではないかという考え方がありました。

これは、相手方も、表意者が錯誤していることを知っていたのだったら、あるいは知ることができたのだったら、錯誤していることを指摘してあげるべきだったのに、それをせずに契約した。そうすると、後で無効だと言われても仕方がない。その意味では、松本理事長のおっしゃった考え方と相通ずるところがあるかもしれません。そのような考え方を消費者契約法においてとる余地があるのか、ないのかという問題提起でもあったと思います。

阿部委員。

○阿部委員 まさに第三者の行う不当勧誘の勧誘の中身が今の消費者契約法の定義と同じであれば、そういう議論はあり得ると思いますが、ここはまず勧誘概念がどうなるかを先に決めていただかないと、それ以上の判断はできないところだと思います。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 ここは阿部委員がおっしゃるとおり、さまざまな論点が絡むところでございまして、勧誘の意義がどうなるか、重要事項の範囲がどうなるかといった要素も踏まえつつ、第三者にしても、裸の第三者まで含めるのか、あるいは一定の関係があるところを、今は媒介の委託と絞っておりますけれども、そこを契約締結の媒介に限らないけれども、一定の関係があるところまで広げるのかという、幾つかの要素が絡み合うことによって、最終的にどこまでが適用範囲になってくるのかということになりますので、もう一度整理させていただきたいと思います。

他方で、古閑委員などが従前からおっしゃっていますように、自分と全く関係ない人がやるときにまで責任をとらされるということについては、ちょっと行き過ぎじゃないかということについては、私どももそれはそういう側面はあるのではないかと思っておりましたし、今日の議論でもそこまではやり過ぎじゃないかという御意見が比較的多く見られたように思いますので、その辺は意識しながら、整理させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、増田委員。

○増田委員 私も古閑委員の御指摘はそのとおりで、消費生活センターに既にそういう御相談は入っておりますが、それについては対応ができないという回答をしております。

それとは別に、例えば何か契約した人が、それはいいものだ、よかったなどと言って、知り合いを呼んで契約させる。それについては何ら報酬がない、連鎖でもなければ、何のメリットもないということを表明するというケースもあります。また、婚活サイトから投資用マンションを買うなどのという問題も残っていると思います。この第三者という意味づけがありますけれども、この点については広く解釈するような形にしていただきたいと思います。

(3)取消権の行使期間

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、この問題点につきましては、先ほど消費者庁のほうからおまとめいただいたような方向で、さらに他の論点も見据えながら問題の射程を見きわめて、もう一度ここで御検討いただくことにさせていただければと思います。

もう6時55分になっていますが、もう少しということでもありますので、「取消権の行使期間」について、差し当たり御説明をいただいて、御議論がさらに続くようであれば、また改めて検討する機会を設けるということでよろしいでしょうか。では、消費者庁のほうから「取消権の行使期間」について御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 では、ごく簡単に御紹介いたします。

現行の消費者契約法における取消権の行使期間につきましては、資料の50ページに整理しておりますが、短期・長期、それぞれ6カ月と5年となっております。これに対しましては、特に短期の6カ月についてはちょっと短いのではないかという指摘が従前からあるところでございまして、事例3-1、3-2で御紹介しておりますけれども、例えば相談に訪れた消費者がいたとして、既に経過していたという事例が見受けられるところでございます。

他方、民法は、この短期・長期の期間としては5年、20年としておりまして、これにつきまして民法改正の中でも短くするかどうかという観点から検討されたところでありますが、結論としましては現行の規定が維持されているところでございます。

では、どれぐらいの期間が適当なのかについては、さまざまな考え方があるところだと思いますので、52ページ以下で幾つかの類例を御紹介しているところであります。

また、53ページでは、一種のアンケートの結果を御紹介しているところでございます。

こういったことを踏まえまして、取消権の行使期間について、まず現行の規定、6カ月と5年について、どう捉えるか。延ばす必要があるのであれば、さらに検討していただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある簡単は御発言をお願いします。では、阿部委員。

○阿部委員 端的に意見ですが、現行より長期化することについては、取引の安定を著しく損なうことになると考えますので、絶対に反対いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

それでは、ほかに。では、山本健司委員。

○山本(健)委員 結論として、取消権の行使期間を伸長すべきという考え方に賛成いたします。

消費者庁の資料1でも紹介されておりますように、相談現場におきましては、6カ月たってしまっていた、5年以上たってしまっていたという事案が少なからずございます。

また、消費者契約をめぐる法律関係については、手形・小切手関係や身分関係のように、消費者の被害救済を犠牲にしてまで法律関係の早期安定化の要請が特に強く働く法律関係とも思われません。

したがって、現行法の取消権の行使期間については、伸長すべきであると考えます。この点、民法の取消権と同視まではできないという現行法の考え方を尊重するとしても、せめて「短期3年、長期10年」には伸長されるべきであると考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見はいかがでしょうか。井田委員。

○井田委員 取消権の行使期間を伸張すべきというのは、賛成します。案ですけれども、長期はともかくとしても、短期につきまして、私は疑問として民法と同じではいけないのか。丙案に当たるのですが、そういう意見を持っております。

50ページには、短い理由として、マル1、マル2ということを挙げられておりますけれども、マル1につきましては、正直、これは消費者契約であっても、事業者間契約であっても同じことではないか。つまり、反復継続性、迅速処理というのは、何も消費者契約だけに求められるものではないはずだと思います。実際、事業者間取引で詐欺・強迫があった場合は、5年、20年ということになりますので、特に消費者契約で差を設ける必要はないのではないか。実際、民法改定のときにも短くするという意見もありましたけれども、結局、現行法が維持されているという観点からすると、あながち消費者契約だからということが十分な理由になっているのかという点は、ちょっと疑問があります。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

では、増田委員。

○増田委員 相談の現場では、6カ月経過しているということは普通のことです。消費生活相談に来たときに初めて、その契約の中身を十分に理解して、自分にとっては不必要であった、あるいは不実告知であったことがわかったということから、そのときから6カ月と消費生活相談員としては全員が考えているという状況です。

それから、5年に関しましても、例えば20歳ぐらいで契約して、その後、社会人になっていろいろなことを理解して、初めて不当であったことがわかったとか。特に住宅などの契約については、きちんとした事業者とやりとりができる状況にありますので、そういう中で話し合いを続けていて5年が経過しているというケースもあります。ですから、私も3年、10年という形にしていただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見は、いかがでしょうか。大きく分けますと、現行法のうち、特に短期について6カ月という限定が立法時にされたわけですが、これを今後もなお本当に維持すべきかどうかという点について御意見が出ているところです。仮に今よりも長くしてよいと考えるにしても、では、何年にするかというのが次の問題で、その際の一つのポイントは、民法で5年とされているのと消費者契約とではどこが違うのか、違うことに本当に理由をつけられるのかという点です。これらの点について、もし御意見があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。あるいは、その他の問題点に関しても御指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 立法時ですけれども、もともとは民法の規定に合わせて取消権の寿命を考えましょうという案が一方であったのですけれども、他方で消費者契約法の取消しの要件が民法の場合よりも拡張された。そのこととバランスをとる上では、その寿命について少し短くしませんかという話で両者バランスをとって、今の数字が出たと記憶しています。数字に理論的根拠も何もありません。そこはもう決め事になるのだろうという感じがするのです。

ただ、6カ月というのは確かに短かったようで、当初想定したよりもうまくいっていなかったのだと思います。ですから、実際問題としては1年でも厳しいことが多くて、民法との関係で中をとって半分、2.5年と10年で、3年、10年ぐらいがいいのかなという感じがしますけれども、これはえいやっと決めるほかないと思います。決まらなければ民法に合わせるのがスジでしょう。

○山本(敬)座長 民法との違いを考える上で重要な点は、取消しの原因ないし要件に当たるものが民法と消費者契約法とで違っていて、民法と比べれば消費者契約法のほうが取消しが認められる可能性が広がっているということが期間制限に影響すると考えて本当によいのかという点だろうと思います。

期間制限を考える際には、これは今回の民法の改正のときもかなり検討したことですけれども、客観的起算点は権利を行使することができる時、主観的起算点は権利を行使することができるのを知った時ですが、取消権の場合は、追認することができることを知ったという要素がすでに入っていますので、基本的には権利行使できることが知った時から一体どれぐらいの期間を与えておけば権利行使ができるだろうかという観点から、民法では5年となっている。消費者契約の場合については、それより短くてよいということが取消しの要件を緩和したことからどこまで言えるかということが改めて問題になっているということです。

もし御意見があるならば。後藤委員。

○後藤(準)委員 我々事業者からすれば、これは短期にしていただいたほうが事業活動・経済活動から言ってもありがたい。経済活動が阻害されるということは、できるだけ我々としては避けてもらいたい。

ただ問題は、今いろいろな委員の方からもお話が出ましたけれども、その特殊な分野について、多少短期でも、今の6カ月でどうしても問題が多いという分野があるのでしたら、そこの分野だけ抜き出して若干延長するということはあり得るのではないか。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

少し補足しますと、今回の民法の改正では、新聞報道でも出ていましたように、明治時代にできた現在の民法では、1年、2年、3年という短期の時効期間がさまざまな職業別の債権について規定されています。それを全て廃止して、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年に統一する。そうすることによって、どの場合に何年かというのがプロでもなかなか判断しづらくなっているような複雑な状況をやめて、時効管理が簡明にできるようにする。これは、事業者にとっても恐らくメリットがあることではないかと思います。そのようなことも含めて御検討いただければと思います。論点ばかりふやして申しわけありません。

もし御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。古閑委員。

○古閑委員 今、現行のままだと短い事例があるという御紹介もあったので、ここは事例が3つしかないですけれども、できればもうちょっと拝見できたらと思いますので、可能であればそれも参考に適切な期間を決められるといいかなと思いました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 今、座長がおっしゃっていた短期消滅時効の廃止の件ともちょっと関係するかもしれないのですけれども、短期消滅時効がもともとあった趣旨の一つとして、恐らく日常的に頻繁に発生する取引はなるべく短期で消滅させたほうがいいという趣旨だったと思いますが、それを今回の民法改正で廃止することになったということの意味を考える必要があるかなと思うのです。

仮に消費者取引に関しては、民法よりも短期でいいという理由が1つあるとすれば、さっき河上委員長がおっしゃった要件とはまた別に、消費者取引で発生する債権というものが、普通の民法の一般的なB to Bも含めた取引よりも金額的にも非常に安かったり、あるいは日常的に頻繁に発生するものである可能性が高いというのが1つ、理由としてあり得るかもしれないのですが、その理由が今、本当に成り立つのかということだと思います。

仮にそれが成り立たないというのであれば、今、消費者取引でも、例えば過量販売に見られるように非常に金額が高いものもたくさん出ているとか、そういうことを考えるとすると、以上の理由も成り立たないわけなので、そうすると民法と消費者契約とで本当に取消権の期間を分ける必要を説明する理由があるのかということは、かなり疑わしくなるのかなと思いました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

いかがでしょうか。少額の取引ですと、むしろ債務者の側が実際に支払ったのだけれども、領収書もとらないことが多いので、本当に支払ったという証明が難しくなってしまう。そこで、権利は短い期間で時効消滅するようにするというのがもともとの制度趣旨だったと思います。消費者契約の場合はどうなのかというのが、今の大澤委員の御指摘だったのだろうと思います。

よろしいでしょうか。次回、御議論を踏まえて新たに案を出す際に手がかりになるようなことがありましたら、今、お出しいただく必要があると思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。毎回、私の不手際で時間延長してしまいまして、大変申しわけありません。本日の議論はこのあたりにさせていただきます。

次回は、現行の不当条項に関する規律のあり方について議論を行うことを予定しております。そして、今回、本来取り扱うべきだったのですが、法定追認の適用除外や不当勧誘の効果の論点についても次回以降に取り上げたいと考えております。引き続きよろしくお願いしたいと思います。


≪3.閉会≫

○山本(敬)座長 最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○金児企画官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、5月15日金曜日16時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上