第6回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年3月6日(金)17:00~19:05

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【参考人】
法務省 筒井民事法制管理官
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長、山田取引対策課長
【事務局】
黒木事務局長、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 民法(債権関係)の改正について
  3. 委員からのプレゼンテーション(河野康子委員・後藤準委員)
  4. 意見交換
  5. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第6回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により、柳川委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

資料1は、前回の専門調査会において出された主な意見の概要です。

資料2は、法務省からの提出資料で、資料2-1と資料2-2がございます。

資料3は、後藤準委員からの提出資料です。

資料4は、河野委員からの提出資料です。

もし不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

なお、昨日から、特定商取引法の見直しにつきまして、消費者委員会のもとで特定商取引法専門調査会での審議が始まっております。こちらの消費者契約法専門調査会との関係について一言申し上げたいと思いますけれども、消費者契約法専門調査会については、次回以降は個別論点の検討を進め、本年夏ごろの取りまとめを想定しております。他方、特定商取引法専門調査会については、今後の審議の進め方を後藤座長に御相談させていただいているところでございます。両専門調査会は、いずれも消費者委員会本会議のもとに置かれる会議でありますことから、今後の審議状況を踏まえ、必要に応じ、効率的に連携を図っていきたいと事務局として考えているところでございます。
それでは、ここから山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.民法(債権関係)の改正について≫

○山本(敬)座長 それでは、始めたいと思います。本日もよろしくお願いしたいと思います。

まず初めに、先ほども資料の確認がありましたが、前回、委員から出されました御意見について、事務局から確認をお願いいたします。

○事務局 資料1をごらんください。

前回の専門調査会では、大澤委員と古閑委員からそれぞれプレゼンテーションを行っていただきました。

その後の御議論の中では、大澤委員のプレゼンテーション内容をもとに、10条の後段要件の考慮要素に関する規定を設ける場合に、その規定の考慮要素として、取引敢行や契約締結過程の事情というものをどのように考えるか、含めるかどうかという点についてや、中心条項規制等に関する御意見を出していただき、さらに不当条項リストについても、リストを規定することの効果等についての意見を出していただきました。

また、古閑委員のプレゼンテーションに関しては、消費者契約法等の民事ルールの充実が、行政的な事前規制の緩和を支えるという視点についての意見などを出していただいております。

このような御意見の概要につきまして、この資料1で整理させていただいておりますので、御確認をお願いいたします。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、今後の会議の運営について、最初に私から一言申し上げたいことがございます。

前回の会議で、具体的な資料については、できる限り萎縮せずにお出しいただいて、議論に寄与していただければということを申し上げました。この点に関しては、本専門調査会の設置・運営規程によりますと、会議を非公開とすることも可能とされておりますので、必要があれば、例えば会議の一部について非公開にするなどの方法も活用して、できる限り有用な説明や資料提出を行っていただけるような形で運用していきたいと思っておりますので、今後も積極的に資料を御提出いただき、充実した御議論を行っていただきますようお願いいたしたいと思います。

また、これは前回申し上げたことですけれども、ヒアリング等で事業者等の意見を伺う場合に、個別の事業者の対応に焦点を当てて御議論いただくのは、法改正に向けた検討に直接結びつくわけではありませんし、リアクションを恐れて意見表明を差し控えようということにもなりかねません。委員の皆様におかれましては、本専門調査会の審議の趣旨を踏まえて、全体的な視点で御議論いただきますよう、改めてお願い申し上げたいと思います。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。

本日は、まず民法(債権関係)の改正について取り扱いたいと思います。民法(債権関係)の改正については、法制審議会の民法(債権関係)部会において5年余りにわたり審議が重ねられた結果、本年2月10日に要綱案が取りまとめられ、さらに2月24日の法制審議会総会で要綱が決定されたところです。

本日は、このような民法改正の審議の経過や、決定された要綱の内容に関して、参考人として出席していただいている法務省の筒井民事法制管理官から御説明をいただくことにしたいと思います。お忙しいところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

御説明の後に若干の質疑応答の時間を設けたいと思いますが、本日は時間も限られておりますので、御説明内容を踏まえた上での御議論は今後の個別論点の検討の中で行っていただくことにして、本日は御説明について確認しておきたい点を御質問いただきますようお願いしたいと思います。

それでは、法務省のほうから御説明をお願いいたします。

○法務省筒井民事法制管理官 ただいま山本座長から御紹介いただきました法務省の筒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

お手元に資料2の枝番号1と2をお配りさせていただいております。資料2-1がカラーの裏表印刷になっているもので、資料2-2は先ほど山本座長から御紹介がありましたように、法制審議会の総会で先月2月24日に決定されました「民法(債権関係)の改正に関する要綱」の全文でございます。

まず、カラーの資料2-1に沿いまして、これまでの検討経緯等について御説明いたします。

今回の改正の対象となりました民法(財産編)は、明治29年(1896年)の制定以来すでに約120年が経過しておりますけれども、このうち特に債権関係の規定につきましては、これまでほとんど改正が行われてまいりませんでした。この間、120年の間に、社会・経済は言うまでもなく大きく変化しておりまして、この債権関係の規定についても見直しの必要があるとの指摘を受けていた規定が少なくありませんでした。また、この120年の間に解釈論の積み重ねで対応してきた関係で、条文の外に膨大な判例法理が形成され、条文そのものからは基本的なルールが見えない状況になっておりました。

こういった問題意識を背景として、平成21年10月、法制審議会に対して、民法(債権関係)の見直しに関する諮問が行われております。その諮問の全文を資料に掲載しておりますけれども、ここでは、見直しの対象は、民法のうち債権関係の規定とされております。民法第3編債権の規定を中心といたしますけれども、民法総則に配置されている法律行為、消滅時効等の債権とのかかわりの深い規定もあわせて検討対象とするという趣旨です。そして、そのうち、契約に関する規定を中心に見直しを行うとされております。債権の発生原因の中でも、不法行為等については主たる検討対象とせず、主に契約に関する規定を対象として検討を行うという趣旨です。

また、この見直しの趣旨・目的として、2つのことが書かれております。1つは、民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図るということです。もう一つが、民法を国民一般にわかりやすいものとするということです。このわかりやすさの追求においては、先ほど申しましたように、基本的なルールが見えないという状況を改善するために、判例あるいは一般的な解釈として確立しているものを適切に条文化することによって、必ずしも法律の専門家でない方にとっても、容易に基本的なルールを知ることができるようにすることが目指されているわけです。

こういったことを踏まえまして、社会・経済の変化への対応、それから国民一般にわかりやすい民法とするという2つの観点から、検討対象となっている債権関係の規定の見直しについて、これまで検討を重ねてまいりました。

資料2-1の裏面の説明に入ります。

このような諮問を受けて、法制審議会に民法(債権関係)部会という専門部会が設置されました。この部会には、民法のほか、民事手続法、労働法、商法を専門とする学者のみならず、弁護士会や裁判所の法律実務家の方、経団連、日商、全銀協といった経済団体の方、労働団体の方、それから消費者の代表の方、こういった実務界の代表に議論に参画していただき、合計99回の部会全体会議と18回の分科会を開催してまいりました。

審議の経過といたしましては、最初のステージで検討対象となっている範囲の論点の整理を行い、平成23年4月に中間論点整理という成果物の取りまとめを行いまして、これについて第1回目のパブリックコメントの手続を実施いたしました。そして、このパブリックコメントの結果を踏まえて、論点の取捨選択を行うとともに具体的な成案を得るための審議を行い、平成25年2月に中間試案の取りまとめを行いました。この中間試案について、2回目となるパブリックコメントの手続を実施しております。

こういった審議経過を経て、最終的な合意形成の可能性を考慮しながら審議を重ね、昨年8月に要綱仮案というものを決定いたしました。これは、最終的な要綱案の決定に先立って、この段階で実質的な改正内容について部会メンバーの間で合意を形成することを目的としたものでございます。ここで実質を固めて、その後、法務省当局における条文化の作業を進め、その過程で見つかった問題を改めて部会にフィードバックして、最終的な要綱案の決定を行うというプロセスがとられたものです。

昨年8月の要綱仮案の段階におきましては、定型約款という項目に関しまして、なお部会メンバーの間での合意形成に至らず、引き続き検討することになりましたけれども、それ以外の項目については、この段階で合意が形成されました。この資料2-1には、改正項目数を概数で書いておりますけれども、中間論点整理の段階で約500を超える項目がありましたものが、中間試案で約260に絞り込まれ、要綱仮案では約200に絞り込まれております。

最終的には平成27年2月10日の民法(債権関係)部会におきまして、基本的には要綱仮案の内容のとおり、それに加えて定型約款についても、その後の調整を踏まえた成案が盛り込まれまして、要綱案の決定が行われました。この要綱案については、2月24日開催の法制審議会の総会に報告され、その内容のとおり要綱として採択され、直ちに法務大臣への答申が行われております。

以上が法制審議会における審議経過です。

このように法制審議会で決定されました改正要綱が資料2-2ですけれども、その概略をかいつまんで御説明したいと思います。

資料2-2の本文1ページを開いていただきますと、例えば「第2 意思能力」で、意思能力に関する規定を新設するという項目がございます。これは、確立した判例法理を明文化するという趣旨のものです。

また、「第3 意思表示」におきましても、確立した判例や一般的な解釈をできる限り適切に明文化する趣旨で、幾つかの改正項目が挙がっております。例えば「2 錯誤」におきましては、錯誤については消費者相談の現場などでもしばしば活用される規定であると聞いておりますけれども、民法の条文には「要素の錯誤」という難解な言葉で要件が書かれているだけで、それについての具体的な判断基準を読み取ることが困難でした。そこで、判例、一般的な解釈を明文化する趣旨で、いわゆる動機の錯誤を2(1)イのように明文化するなどの改正が盛り込まれております。

これらは、先ほど申しました、国民一般にわかりやすい民法とするという観点からの改正項目です。このほかにも、例えば「売買」では、売主の担保責任に関して、現在の規定は「瑕疵」という言葉がわかりにくいだけでなく、その具体的な適用関係について理解が分かれていて、非常に不明確な状態にあると言われておりましたので、この点についてルールの明確化を図ることにしております。また、国民生活とかかわりの深い「賃貸借」に関しましても、これは新聞報道などでもよく取り上げられておりますけれども、現在は賃貸借が終了した場合の原状回復義務に関する規定がありませんし、敷金に関する具体的な規律を定めた条文もありませんので、判例や一般的な解釈を踏まえて明文規定を設けることにしております。こういった改正は、消費者にとって容易にルールを知ることができ、トラブルの防止に役立つというメリットがあると指摘されているところだと思います。

他方、もう一つの柱である社会・経済の変化への対応という観点からは、2点ほど御紹介したいと思いますが、まず、保証人保護に関する方策が何点か盛り込まれております。資料2-2の26ページを開いていただきますと、「根保証」に関する規定の見直しがございます。これは、平成16年の民法改正で、それまではいわゆる包括根保証も何ら制限されていなかったところを、貸金等債務が含まれる根保証に限ってですけれども、極度額を定めなければ契約を無効とする等の規制を設けたところですが、今般、貸金等債務を含まない根保証一般について、その規律の適用対象を広げるかどうかということが議論されてまいりました。

この点については、例えば「5 根保証」(1)極度額のところで、貸金等債務が含まれていない個人の根保証一般について、今後は極度額を定めなければ契約が無効となるというルールが導入されることとなっております。これによりまして、賃貸借の根保証などにつきましても、今後は、個人を保証人とする場合には極度額を定めなければならないことになるわけです。

また、保証に関しましては、資料2-2の28ページですが、「6 保証人保護の方策の拡充」というところで何点か新たな制度を導入することにしております。このうち6(1)の「個人保証の制限」におきましては、経営者保証を除いた第三者の保証を対象として、公証人による厳格な意思確認の手続を経ていなければ保証契約が無効となるというルールを新たに導入することにしております。また、資料2-2の30ページですが、契約締結時の情報提供義務や、保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務といった規定を新たに設けることにしております。こういった点が保証に関する改正項目です。

さらに、先ほど申しましたように、昨年8月の要綱仮案の段階では保留とされておりました約款に関する規律につきましても、資料2-2の47ページですが、「第28 定型約款」という形で最終的に盛り込まれております。定型約款に関する規律としては、第28の1で規律の対象とする定型約款を定義し、2で、この定型約款が契約の内容となるための要件、いわゆる組入要件について規定しております。また、3では定型約款の内容の表示に関する規律を置き、4で定型約款の変更に関する規定を設けることとしております。

最初の定型約款の定義のところをごらんいただきますと、民法上の規律の対象とするものを定型約款という名称で定義することとしております。ここでは、「定型取引」において契約の内容とすることを目的として、特定の者により準備された条項の総体という形で定義し、その「定型取引」という文言については、不特定多数のものを相手方とするという点と、その内容が画一的であることが当事者の双方にとって合理的なものという形で定義することにしております。これは、約款として一般的に理解されている電車、バスの乗車契約などについて今回の定型約款のルールが適用されるようにする一方で、事業者間の取引で一般に使われているような契約書ひな形などが適用対象とならないようにする観点から検討された要件です。

そして、2の「定型約款についてのみなし合意」のところでは、定型約款が契約内容になるための組入要件について定めていますが、そのうちの(2)におきまして、不当条項を排除するルールを取り上げ、相手方の利益を一方的に害するような条項であって、信義則に反するものについては契約内容とはならない旨を明記することにしております。

また、4では定型約款の変更についてのルールを設けることといたしまして、相手方の一般の利益に適合する場合か、あるいは諸般の事情に照らして定型約款を変更することが合理的であると認められる場合でなければ、定型約款の変更をすることができないというルールを盛り込むことにしております。これらが社会・経済の変化への対応といった観点からの改正項目でございます。

雑駁な説明でしたけれども、今般、法制審議会で決定されました民法(債権関係)の改正に関する要綱について御紹介をさせていただきました。私からの説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの法務省からの御説明の内容を受けまして、質疑応答を行わせていただきたいと思います。先ほども申し上げましたけれども、本日は時間の関係上、今、説明いただいた内容で不明な点についての御質問ということでお願いしたいと思います。

では、御質問のある方、御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 御報告をいただきまして、ありがとうございました。

定型約款の部分について、2点、御質問をさせていただきたいと思います。

まず1点目は、「第28,1」の定型約款の定義がなかなか難しい内容になっていますけれども、基本的に付随条項と呼ばれるものを念頭に置いているという理解でいいのか、それとの関係で、「第28,4」の定型約款の変更規定も基本的に付随条項の変更を念頭に置いているという理解でいいのか、という質問でございます。

2点目は、「第28,2(2)」の「相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」という規定と、消費者契約法10条との適用関係に関する質問です。消費者契約約款の不当条項については、この「第28、2(2)」に基づく効力否定の主張と、消費者契約法10条に基づく効力否定の主張を、選択的に主張することになるのであろうと思っているのですけれども、消費者契約法10条に基づく無効主張に対して、定型約款の準備者の方からの反論として、「第28、2(2)」に基づく「そもそも契約内容になっていない」といった主張を認める必要性も合理性もない気がいたします。「第28、2(2)」は、定型約款準備者に上記のような主張を認めるような規定内容ではないという理解でいいのかという点について、質問させていただきたいと思います。

よろしくお願い致します。

○山本(敬)座長 筒井管理官。

○法務省筒井民事法制管理官 ありがとうございます。御質問があった要綱は法制審議会が決定したものですので、私の立場からどの程度の発言をするのが適当なのか、やや迷いながらになりますけれども、私の現時点での理解ということでお話しさせていただきます。

山本健司先生から御質問がありました1点目は、定型約款の定義に関して、これは主に付随的な条項を念頭に置いたものと考えるべきなのかどうかということだったと思います。その点については、解釈に委ねられている部分であろうかと思いますが、基本的には、付随的か、あるいはその対になるものとして中心的という言葉を使うのが適当かどうかわかりませんけれども、そういう区別を持ち込んで定義をしているわけではないと思います。したがって、変更できるかどうかに関しても、付随的かどうかという区別によって変更の可否を直接に定めているものではないと思います。

ただ、付随的でない条項についての変更は、往々にして相手方の利益に適合するという要件に該当しにくいと思いますし、また合理性という要件から見ても疑問がある場合が多いだろうと思います。とはいえ、繰り返しになりますが、付随的な条項かどうかということを直接に判断基準として持ち込んでいるわけではないということだと思います。

2点目のお尋ねは、第28の2(2)の不当条項の排除ルールと消費者契約法10条との適用関係ですが、その点については、山本健司先生からお示しいただいた理解のとおりであろうと私も思います。それらの主張は選択的なものでありまして、消費者契約法10条に該当するという主張に対して、それはそもそも契約内容となっていないという形で、その主張を否定する関係にはならないと理解しております。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 どうもありがとうございました。本当に御苦労さまでございます。

幾つかあって、消費者関係で気になることだけ御質問させていただきたいのですが、1つは、前々から暴利行為という言葉が出ておりまして、この暴利行為について90条に入ってくるのではないかという議論があったのですが、それは落ちているのですけれども、その辺の理由がどういうところにあったのかというのが第1点です。

第2点は、債権法だけではなくて、時効のところも少しかかわってくるのだという話があって、特に短期消滅時効のところが整理されているということになりますけれども、御承知のように、短期消滅時効ではレシートなどの保管が非常に難しいようなものについて、これを短期で消滅時効にかかわらして法律関係を確定するということを言われておりましたけれども、もし消費者が買い主になってレシートを長い間保管しないで放っておくと、誰かちょっとたちの悪い方が債権を集めて消費者に請求していったときに、レシートがないじゃないかということで、逆に法律関係が消費者にとって不安定にならないかという疑問が前々から出ておりました。

逆に、銀行預金のように長い間預けてくださいと言っていたものなのに、5年ほどで消えてしまうという可能性が出てくる。今回の方針そのものについて、私は今、どうこうと言うつもりはないのですが、こういう特殊な要請に対して、どういうふうな議論があったのかというあたり、もし明らかにしていただければありがたいと思います。

約款を付随的条件に限るべきであるという話は、今、山本健司委員から質問があったので、省略いたします。

○山本(敬)座長 筒井管理官。

○法務省筒井民事法制管理官 河上委員長から御質問がありました1点目は、暴利行為に関する明文規定を設けるかどうかという論点が中間試案まではあって、昨年8月の要綱仮案に盛り込まれずに見送ることになったことに関するお尋ねだと思います。暴利行為に関しましては、これまで長い時間をかけて議論してまいりましたけれども、そういった法理が存在することについては多くの意見が一致していた反面、それを具体的にどのように明文化するのかということに関しては、幾つかの立場からの異論がございました。

例えば、暴利行為の規定を設けることが濫用的な主張につながるのではないかといった観点からの疑問を提起する意見もありましたし、他方、現段階において暴利行為を明文化することが、今後の解釈論の発展を阻害する方向に作用するのではないかといった観点からの異論もありました。そういった幾つかの異論がある中で、適切な言葉を選んで明文化を図る方向での合意形成が困難であると考えられましたことから、その点については要綱には盛り込まれなかったのだと私は理解しております。

それから、もう一点、職業別の短期消滅時効の規定の削除に関連するお尋ねがございました。この点については、とりわけ短い期間の短期の消滅時効が、一定の場面で消費者を救済する方向に作用することもあったのではないかといった御指摘もあり、注意深く議論がされてきたところだと思います。銀行預金に関しては、それがどのような形で消滅時効にかかるのかという前提問題がまた別途あろうかと思いますので、やや言及しにくいところがありますけれども、消滅時効のさまざまな適用場面を想定したときに、それぞれメリット、デメリットがある中での総合的な判断として、短期消滅時効は一律に廃止して、合意形成の可能なラインでできる限りシンプルな時効制度に改めるのが適当であるという結論に至ったものと私は理解しております。

○山本(敬)座長 河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 申しわけございません。1つ忘れておりました。約款の件で「不特定多数」という言葉を使われました。これは、特定多数の場合も、特に消費者取引などでは出てまいりますけれども、特定多数の場合の定型約款というのは想定されていなかったのですか。

○法務省筒井民事法制管理官 特定多数を対象とする取引が入るか入らないかという議論の立て方でお答えをするのは、やや難しい感じもいたしますが、現時点で「不特定多数」という5文字の言葉を選んでおりますのは、相手方の個性が問題とならない取引を抽出することを意図しております。それをワンワードの「不特定多数」で表現しようとしております。したがいまして、相手方の個性が問題となるような取引は、この要件を満たさないので定型取引に当たらず、したがって定型約款の適用対象にならないという形で、この言葉を機能させようとしております。個別の問題については今後まだ議論が必要なところかも知れませんが、現時点では以上のように理解しております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御質問ありますでしょうか。

私が質問することではないのかもしれませんが、今後のこちらでの議論にかかわることですので、確認だけをさせていただければと思います。定型約款で,このように1で定義して、2つの観点から絞りをかけ,そのように定義された定型約款についてのルールをこのように整備したということは、先ほど御説明いただいたとおりと思います。ただ、そうしますと、これまで「約款」と呼んできたもののうちの、その一部がここに規定されているということになります。そうしますと、これまで「約款」と呼ばれてきたものではあるけれども、この定型約款に当たらないものはどうなるかという点については、少なくともこの中には規定はない。したがって、今後もその問題については解釈に委ねられているという理解でよろしいわけでしょうか。

○法務省筒井民事法制管理官 おっしゃるとおりだろうと思います。ですので、定型約款の定義に該当しない部分については、この要綱は触れておらず、これまでの解釈論について何らかのメッセージを発しているわけではありませんので、今後も解釈論の発展に委ねられているという理解で結構かと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに質問等がありましたら。恐らく今後、このような形でお聞きする機会はないだろうと思いますので、もしあればということですけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、筒井管理官にはお時間をおとりいただいて御説明いただき、ありがとうございました。本日御説明いただいた内容を踏まえた上で、今後のこちらでの個別の検討を進めさせていただければと思います。法務省におかれましては、審議に協力いただき、まことにありがとうございました。今後とも御協力のほど、どうかよろしくお願いしたいと思います。

○法務省筒井民事法制管理官 どうもありがとうございました。

(法務省筒井管理官退席)

≪3.委員からのプレゼンテーション≫

(1)後藤準委員からのプレゼンテーション

○山本(敬)座長 続きまして、委員からのプレゼンテーションに入りたいと思います。本日もお二人の委員からのプレゼンテーションを予定しておりますが、前半と後半に分けて、まず後藤準委員からのプレゼンテーションと、その内容についての意見交換を行わせていただき,その後に河野委員からのプレゼンテーションと、その内容についての意見交換を行わせていただきたいと思います。

それでは、後藤準委員からプレゼンテーションをお願いいたします。

○後藤(準)委員 それでは、私のほうから。私どもの団体は、中小企業を主体とした団体でございますので、特に小規模、企業規模の小さな企業の意見ということでプレゼンをさせていただきたいと思います。

まず最初に、経済活動の根幹を支える中小・小規模事業者に配慮した議論の必要性。委員の皆さん方にはちょっと違和感があるかもしれませんけれども、真ん中の箱をごらんいただきたいと思います。これは、皆さん御承知かもしれませんが、我が国の企業数、全体で平成21年度は421万社。これが3年後の平成24年度になりますと368万社。3年間で35万社減少した。その下の箱を見ていただきますと、全体、平成24年度の386万社の内数で、中小・小規模企業はどのぐらいあるのか。皆さん御承知のように、99.7%の385万社ですけれども、さらに企業規模の小さなもの。小規模事業者という概念はなかなか御理解いただけないかもしれません。

小規模事業者というのは、注書きに書かせていただいておりますけれども、商業・サービス業の場合は従業員が5人以下、製造業その他については従業員が20人以下と、極めて小さな規模のものですが、これが全体の86.5%を占めております。334万社。日本の企業というのは、大企業はわずか1万社でございまして、その総体はほとんど小さな企業である。まず、こういうことを御理解いただきたいと思っております。

ページをあけていただきまして、そういうことを前提で、もう少し規模の話をさせていただきますと、私どもの会員、年々減少しているのですが、現在84万の事業者が会員になっております。その中で従業員がゼロ人、いわゆる従業員なしの家族と事業主で事業をやっているのが全体の41.6%。さらに、従業員が1人から2人、ほとんど家族経営に近い状態のものが26.3%。全体で見ますと7割弱が、こういった極めて小さな事業体であるということであります。

こういった事業体の特徴というのは何かといいますと、地域密着型になっていまして、2014年に中小企業白書、これは国がまとめたものでありますけれども、小規模事業者の81%。この人たちは、地域内の需要を志向している。つまり、自分の地区内、もしくは隣接の地区、同一の都道府県を市場としているということであります。

皆さん御承知だと思うのですが、限界集落とか、いろいろなことが昨今ニュースで出てきておりますけれども、小規模事業者というのは地域密着型でございますので、日々の事業活動のほかに地域のコミュニティを維持する活動にも関与しているという実態があります。当然のことですが、地域内でみずから事業をやっていくということになると、フェース・ツー・フェース、顔の見える商売をしていかないと商売ができない。ですから、顧客と事業主は長年のコミュニケーションを通じて信用を培ってきまして、それに基づいた事業経営をやっている。

私どもの主張というのは、実際に被害を受けた消費者を救済するという観点は極めて重要だということは非常に認識しておりますけれども、こういった小さな企業も、商品・サービスの内容とか顧客に説明を十分しているのですけれども、それにもかかわらず、仮に消費者に被害を与えてしまったという場合が当然生じるわけでありますけれども、こういった場合も地域密着型という形態があるものですから、その中で事業を継続しようとすると、どうしても顧客の信頼を損なうようなことはできない。経営者は、みずからの責任において顧客にどう対応するか。その顧客の意向を酌みながら、物によっては返品をしたり、返金をしたりという対応をとって事業を実施している。これが実態でございます。

一方で、社会問題化している消費者被害をもたらすような事業者は、全体から見れば非常に少数であると我々、理解しているのですが、その実態というのは、我々の認識では、最初から消費者を欺罔するという意思を持って、詐欺的行為に及ぶといった事業者ではないか。こういった事業者を本当に事業者と言っていいのかどうかと、我々は疑念を持っているのですけれども、こういう悪質なものを市場から排除することについて、何ら異論はない。むしろ、こういった事業者については、刑事罰等の一層の厳罰化というもので対応すべきではないかと考えています。

こういった悪質な事業者に焦点を当てて、私どものような小さな事業者に対しても一般の契約、民事上のルールが適用されているわけですが、それが強化されてまいりますと、小規模事業者は資金的にも、いろいろな面でなかなか対応が難しい。場合によっては、高齢化してきている事業者も少なくありませんので、面倒なことになるのだったら事業も畳んでしまおうかという実態にもなりかねない。事実、高齢者であるがゆえに、地域のためにしばらく頑張っているところでも、だんだん事業を廃業していくというのも実態上ございますので、この辺も十分御理解いただいた上で対策を講じていただくというのが必要ではないかなと思っています。

特に地方のほうですと、独居老人などがふえてまいりまして、商店が廃業に追い込まれますと、いわゆる買い物難民という言葉が最近よく出ていますけれども、こういった人たちが出てきて、かえって結果としては余り好ましい状況とは言えなくなるのではないかということも考えております。

もう一方、事業者のほうから考えますと、今般、景表法の一部改正で課徴金の導入とか、いろいろな新しい改正が行われたりするわけですけれども、その都度、改正された内容がみずからの商売に一体どういう影響が出てくるのか。事業者にとって、その全ての内容を理解するというのは非常に難しいのが実態であります。我々がお願いしたいのは、まず関連法規の改正内容をそれぞれの事業者がしっかりと理解できるような環境づくりを進めていただかないと、実態に合った対応がなかなかできない。

もう一点は、それぞれ改正が行われているのですが、本当に効果が上がっているのかどうか。その部分も十分に精査した上で、必要な対応を検討していただくということが重要なのではないかということでございます。

2つ目は、現場の実態を踏まえた検討の必要性というのも、これも似たような話で恐縮ですが、実は小規模事業者の90.9%は個人事業主とか組織化されていない法人だと、これも中小企業白書の中で言われております。このような事業者というのは、法務を専門に担当している事業者は皆無であると言っていいということでございまして、こういった現場の実態を十分に把握した上での具体的な議論を行っていただきたいということでございます。

次のページをめくっていただいて、これはグレーリストの話になるかもしれませんけれども、特に個々の事業者にとって判断が非常に難しいような規定を設けられますと、それぞれの事業者がどうしていいのかわからない。どういう取り組みをしたらいいのかわからないので、新しい取り組みは控えるといった結果にもなりかねない。これは、前回のプレゼンのときも出ましたけれども、事業者の創意工夫に基づく事業活動に大きな支障を及ぼすのではないかということを懸念しているということであります。

あと、消費者契約法が各個別法のガイドラインとして機能するよう不当条項の明確化を盛り込むべきであるという意見は、我々も十分承知しているのですけれども、事業者が実際に企業を経営していく上でとるべき対応と、法が定める規制の内容、抑止、このバランスがうまくとれないと現実的な対応はなかなか難しいと我々は思っております。この点に十分に配慮していただきたい。そういうふうに考えますと、これからより具体的な内容について、今後慎重な検討がなされていくということを我々は期待したいと思っております。

それから、これも繰り返しになりますけれども、我々小規模事業者というのは、実は消費者契約法に違反しているのではないかという疑念を抱かれるだけでも、地元で信用を失ってしまう。ですから、そういった規制の対象の拡大ということには、ぜひとも慎重に御判断していただきたいと思っております。

それから、これは総論、最後になるのですが、消費者教育の充実と推進の重要性ということで、消費者教育の推進に関する法律というのができていて、これに基づいて関係諸団体が連携して、いろいろな消費者教育の推進が進められていると思っておりますし、それで平成25年6月には基本方針というのが閣議決定されている。こういったことは、消費者教育の必要性が高まっていることのあらわれだと我々は考えております。

一方で、国で起業大国の実現に向けて創業スクールを全国で開催するという動きが今、出ております。これも初等教育の段階から、企業の社会的責任に重きを置いた企業マインドの醸成が必要だということで、こういった対応をとっていると思っております。すなわち、自立した消費者の育成と健全な事業者の創出、これは双方がかみ合わないとなかなかうまくいかない。我々事業者団体としても、こうした課題に積極的に取り組んでいくつもりでいるということでございます。

各論のほうは、私も8項目について、ここで意見を述べさせていただいていますが、これ以外は意見がないのかというわけではなくて、その都度、具体的な内容が出てきた時点で、また意見を述べさせていただきたいと思っておりますが、きょうは一応、8項目だけについて意見を述べさせていただきたいと思っております。

まず1つ目、消費者概念の拡張については反対だと。規模が小さいと、どうしても消費者側と一緒じゃないかというお話もあるかもしれませんけれども、消費者と事業者の線引きというのが不明確になると、いろいろな事業活動に支障が出てくる。あるときは消費者として取引をして、あるときは事業者として取引をするのか。小さな企業は、全部消費者としての取引になってしまうということになると、実際、自分の営んでいる事業がどういうふうになるのかということがよくわからない。今までの取引で、我々事業者にとってそんなに不都合があると感じておりませんので、我々事業者と消費者という概念はきちんと分けておいていただきたい。

特に心配しておりますのは、小規模な企業が消費者と同等だということになりますと、中堅以上の企業から面倒だから取引するのをやめようかと言われてしまいますと、死活問題になってしまいます。こういったことも考えますと、消費者概念の拡張については、私どもとしては反対せざるを得ない状況です。

2つ目、事業者の情報提供の法的義務ということですが、これはできれば努力義務ということで現状にとどめていただきたい。これも、通常影響を及ぼすとか、誰もが知っているような情報というものは、その範囲がどういうものなのかということがよくわからないというのが私どもの実感でございます。その辺のところも十分に考えていただきたい。

仮に、全て書かなければいけないということになると、事業者は誰かに頼って、そういうものをつくるのでしょうけれども、全てを書いて、結局、消費者側には何を伝えたいのかということがわからなくなるのではないか。逆に、消費者にとっても利便を損なうのではないかという気もいたしておりますので、そのあたりは十分御検討いただきたいと思っております。

それから、3ページの「勧誘」の要件のあり方です。勧誘要件というのは、私どもとしては削除する必要はないのではないか。実際、広告による働きかけを勧誘に含めるかどうかについては、これは極めて慎重に議論していただきたい。例えば、チラシなどにもそういった細かいところまで、重要事項、不利益事実を記載するということになると、実際どういうチラシをつくっていいのか、現実にわからない。チラシそのものがいけないということではないと思いますし、どういう形の対応になるのかというのが、我々も実は想像ができない。

広告というのは、今、いろいろな訴求手段がありまして、多様化していると思いますので、そういったものを一律に投網をかけるような形でできるのかどうかといった疑問もあります。今、行われている広告等でどういうところがまずいのか。そこのところをもう少し煮詰めた議論をしていく必要があるのではないかと感じています。

それから、4つ目には、不利益事実の不告知の問題ですけれども、これは先行行為要件及び故意要件、いずれも維持すべきであると思っています。契約の取消権が簡単に行使できるようになると、安全な取引が本当にできるのかどうか。事業者は、しょっちゅう取消権を行使される不安定な状況になりますと、事業が非常にしづらくなる。取引の安定性の確保、この辺がどういう兼ね合いになるのかということも慎重に議論いただきたい。特に、我々が一番問題にしていますのは、ささいなミスでも取消しの対象になるということになると、小さな事業所にとっては本当に大変なことになってしまう。その辺の議論をぜひお願いしたいと思っています。

それと、5番目に、「重要事項」の要件のあり方の中で、動機を重要事項に含むべきかどうかというのがあると思うのですが、これも含むということについては、私どもは反対である。動機というのは、多分これまでも議論されているかと思いますけれども、消費者のそれぞれの方によってさまざまでございます。それを一々契約時に確認するという作業は、できなくはないと思いますけれども、結構大変なことになって、適正な事業活動という観点から、本当にここまで必要なのかどうなのか。特殊なものについては、特殊な対応を別途すべきかなということでありまして、一般的に動機までを重要事項に含むべきではないのではないかと思います。

それから、6番の消費者の判断能力と知識不足を利用する行為と、不招請勧誘に関する規律について、これも双方とも導入するというのは避けていただきたいと思っております。消費者の判断能力、知識がどの程度あるかということを、事業者が相手の消費者のことを一々そんたくするということは、余り現実的ではない。また、事業者がこういったことを不当に利用して契約を締結させるという、この「不当」というのはどの程度のものなのかも、よくイメージできません。

それから、不招請勧誘についても、実は小規模な事業者というのは資源、リソースも限られていますから、適切なタイミングで消費者にいろいろな働きかけをしていくことが必要でありますので、そこまで禁止されることになると、なかなか厳しいものがある。

それから、8番目のグレーリストの創設ですが、これについても反対でございます。実は、グレーリストという位置づけですが、グレーリストに入るかどうか、やってみないと結果がわからないということになってしまいますと、事業者はそういった行為は行わない。もし、グレーリストとして挙げられるようなことがあるのであれば、結果としては事業者側にとってはブラックリストと同等の扱いになってしまう。ですから、そういったことでブラックリストの範囲がどんどん広がるという認識になってしまう可能性もありますので、そこはぜひとも慎重に御検討いただきたい。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの後藤準委員からのプレゼンテーションの内容を受けまして、意見交換を行っていただきたいと思います。ただ、今、いただいたプレゼンテーションの内容のうち、各論部分でお話しされたような具体的な問題については、これからさらに検討していくことですので、これに個別に反論していくというよりは、本日、後藤準委員からお考えを示していただきましたので、そのお考えの趣旨についてお互いが理解を深めるという観点を中心に議論いただければと思います。そのほうが今後の議論のためになるのではないかと思います。

そのようなお願いをした上で、御意見、御質問ある方、御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょう。大澤委員。

○大澤委員 貴重な御報告、どうもありがとうございました。済みません、ちょっとかぜを引いておりますので、声が聞き苦しくて申しわけございません。

質問というか、最初は感想になりますけれども、今回の消費者契約法改正をどのようなものとして捉えているのかというところが非常に気になりました。規制の対象を拡大するというのは避けていただきたいといったニュアンスの発言もありましたし、例えば法律専門家が、とりわけ中小企業の場合はいないことがあるので、対応が難しい場合があるというお話が出ておりましたので、それを伺っていて非常に気になったわけです。これは私個人の認識ですけれども、今回の改正というのは、今の消費者契約法ではその要件が非常に曖昧なままになっているとか、あるいは不当条項の部分で言うと、10条の一般条項に大部分委ねられている。そういう曖昧なところをむしろ明確にしていくものであると個人的には考えています。

その観点から、ルールを明確にしていくことによって、むしろ企業のほうで、今の10条ですと、例えば10条に該当して条項が不当と言えるかどうかというのを、それこそ法律の知識にある程度精通している人がいないと判断できないという状況になっているのではないかと思いますが、そういう状況を今後なるべく避けていくために、例えばブラックリストとかグレーリストを設けていって、より明確な要件をもって、こういう条項は不当になり得るということを示していく。これが今回の改正の主な目的なのではないかと考えております。その観点からいきますと、むしろ今のほうが曖昧なままで、中小の企業にとっては、どういうふうにすれば法律に引っかからないのかの対応が難しい状況になっているのではないかと個人的には感じました。

そのことと関連いたしまして、そうすると、規制の対象を今回の消費者契約法でどれぐらい拡大することになるのかというところも疑問を持っておりまして、例えば不当条項規制について言いましても、今も現に消費者契約法10条では、実に多種多様な条項の不当性が裁判所で判断されています。そういうふうに、今も10条でされているようなことを、今後、不当条項リストなどで明確にしていくということだとすれば、例えば今まで以上に紛争になる数がふえるということはならないのではないかと考えています。

ここからは質問になりますけれども、そうだとすれば、今後、法律専門家がいないような中小企業でも対応できるようにしてもらいたいということであれば、例えば今後、不当条項規制の条文をつくるにしても、要件はなるべく細かくしたほうがよいということになるのでしょうかということです。グレーリストにも反対だということが出ておりまして、個別の論点ですので差し控えたいと思っているわけですけれども、お話を伺っていますと、グレーリスト自体が問題なのか、それともグレーリストに規定があることによって、その要件が曖昧なものになってしまうということに懸念を抱いているのかということが、ちょっとわからなかったというか、気になりました。

そうだとすれば、例えばグレーリストだとしても、要件をなるべく細かくして、その対応ができるようなものであれば、それでいいということなのか、お話を伺っていると、その要件が曖昧な今のほうが、よほどその対応が非常に難しくなるのではないかという印象を持ちましたので、今後、消費者契約法の改正をする上で、なるべくその要件をわかりやすく、今、判例とかで行われているようなことを細かく要件化していくということにしていく方向で、それで問題はないのか。それでもやはり困るということなのでしょうかということを、ちょっと抽象的な質問で恐縮ですが、伺わせていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 ありがとうございました。

要するに、実際に法律の改正が行われたときに、どういう事務手続がふえたりするのか、減ったりするのか。その辺の具体的な内容が明らかにならないと、なかなかお答えしにくいのですけれども、私どもが申し上げているのは、企業規模が小さいがゆえに、いろいろな手続がふえたり、煩雑になったりするということは、ぜひとも避けていただきたいということが第1点です。

それと、グレーリストのお話ですけれども、我々がグレーと言っているのは、そのグレーリストそのものが曖昧ではないかという認識なのです。グレーリストを細かくされようが、されまいが、グレーリストであるということには変わりはないのではないか。グレーそのものが我々は曖昧だという認識で捉えていますので、それが違うということであれば、またそこは我々の認識も変えていかなければいけないのですけれども、私どもとしてはグレーリストというのは曖昧なもの。要するに、やってみないと、結果としてわからない。限りなく黒になる可能性もあるし、白になる可能性もある。そういうものだと、事業をやっていくほうは、グレーリストという定義がちょっとよくわからない。

ブラックというのは、それをやったらいけませんよというお話なので、これははっきりしているわけですから、それまでだめだと言っているわけではない。それは、はっきりしていただければ、それにこしたことはないのですが、ブラックと言われる分野、グレーかブラックに言われる分野をどんどんふやされても対応が困ると。そこのところは、我々としては少し明確にしてもらいたいという話なのですけれども、ちょっと違いますでしょうか。我々としてはそういうことです。

○山本(敬)座長 以前に大澤委員からのプレゼンテーションにもありましたとおりで、そこでも議論したことですけれども、グレーリストという表現がやや誤解を呼ぶものでして、基本的にはこのような条項は無効である。ただし、この条項を定めることに合理的ないし正当な理由があるときは、それは無効にはしない。そのようないわばただし書きがついているもの,つまり例外的に有効になり得る可能性を開いているものが、グレーリストであるということが以前の大澤委員のプレゼンテーションで示されたところでした。それでも曖昧ということでしょうか。

○後藤(準)委員 その条件がどういうものになるか、具体的に示されないと、事業者のほうはなかなか理解できない。そういう抽象的なお話は幾らでもわかるのですが、現場の事業者になりますと、具体的にどういうところが救済できて、どういうところが救済できないのか、そこが一番肝心なところになる。

○山本(敬)座長 これは、今後、具体的な検討を進めていく中で、さらに共通了解をつくっていければと思うところですけれども、余りグレーリストという言葉は使わないほうがよいのではないかという気がしているところです。

ほかに質問、御意見あれば。山本健司委員。

○山本(健)委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。御報告内容に関して、コメントと質問をさせていただきたいと思います。

第1に、総論部分での経済活動の萎縮への御懸念に対する意見でございます。消費者被害の救済の促進と、経済活動への悪影響の回避は両立できると思います。要は、どのような要件、効果の規定にするかという規定の定め方の問題であると思います。

第2に、総論部分での個人事業主が多い、法務担当者がいる事業者が少ないという御報告に対する意見でございます。事業者サイドにとっても、何が不当条項で、何が不当勧誘行為なのかがわかりやすい消費者契約法であることが大切であるということだと思います。そうであれば、具体的な不当条項のリストや、損害賠償義務を帰結する行為類型を含めた具体的な不当勧誘行為に関する定めを消費者契約法に明定する方向での法改正のほうが、むしろ望ましいのではないかと思います。

第3に、各論部分の情報提供義務やつけ込み型不当勧誘のところで述べていただいております、要件や適用範囲の不明確さへの御懸念に対する意見でございます。現行法のように、民法の公序良俗、不法行為、信義則といった抽象的な一般条項に問題の解決を委ねている状況のほうが、要件や適用範囲はより不明確であると思います。言いかえれば、消費者にとっても、事業者にとっても、不親切な法制度であると思います。弁護士に判例や解釈論を聞かなくとも、個別事案で要件該当性や結論が判断できるような、ユーザーに優しい消費者契約法にすべきであると思います。

最後に、各論部分5ページの消費者概念の拡張部分の御意見に関する質問でございます。反対という御意見は、いささか意外でございました。消費者概念の拡張という論点は、一般消費者と同視できるような団体や小規模の事業者については、一定の要件のもとで消費者と同様に保護してあげないとかわいそうではないかという問題意識に基づく議論だと思います。現に、電話機リースやホームページリース案件などで厳しい事態に陥っていらっしゃる小規模な事業者は少なくないと思います。日弁連では、そのような小規模な事業者の利益の保護という観点から、消費者概念の拡張、消費者的事業者への準用といった立法提案をしております。

全国商工会連合会の会内において、この論点については小規模な事業者を保護しようという提案内容なのだから賛成しようという御意見はなかったのでしょうか。本日の御意見に至る会内の議論の状況について、お聞かせいただけましたら幸いです。

よろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 かなり御意見にわたるところがありましたけれども、後藤準委員からお答えいただける範囲でお願いいたします。

○後藤(準)委員 最初の、改正によって、より明確になるというお話でございましたが、具体的にどういう形になるかがまだ示されていない状況で、果たしてそうなるのかどうか、我々もこれからの経緯を注視してまいりたいと思っております。先ほど私どもも総論の中で申し上げておりますように、きちんと機能するような法制度ができることについて、反対するものでは全くない。これは御理解いただきたい。ただ、例えば過度な負担がかかるような形になるのか、ならないのかというのは、具体的な提案がなされないと、我々としても意見が述べにくい。これは、ぜひ御理解いただきたい。

それから、いろいろ各論のほうでも御意見が出されておりましたけれども、これも同じですが、これから具体的な内容を議論していく中で、我々としても意見を述べさせていただきたい。

それと、消費者概念の拡張の問題について、意外だというお話がございましたけれども、これは実態的な商取引の現場でどういう対応になるか、これが一番問題です。規模が小さいから、消費者のような被害者として事業者が扱われるから、かえってハッピーじゃないかという御意見のように我々、とったのですけれども、事業活動をやっていく上では、規模の問題はありますけれども、B to Bの世界できちんとした商取引慣行の中で規定されていかないと、商売というのはなかなかいかないわけです。

あるときは消費者対事業者、あるときは事業者対事業者という使い分けというのは、事業をやっている中ではしにくいというのが実態でございます。その辺の兼ね合いというものを十分見据えた上で、どうするかということが必要だと思っておりますが、現時点でこの概念を拡張して、小規模なものを消費者と同じような扱いにすべきでないかということについて、すぐに賛成できる状況には我々はありません。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、丸山委員。

○丸山委員 プレゼンをありがとうございました。

各論部分につきましては、今後の議論ということで、恐らく反対の理由の中には誤解に基づくものがあると思うのですけれども、この辺は今後、議論させていただければと思います。

1つ教えていただきたいのは、さまざまな懸念を示されているわけですが、既に事業者は、消費者契約法の制定を経験済みだと思います。そうした消費者契約法の制定が行われたときに、ここで示されているような懸念というものが、何か具体的に実現して困ったような例など、そういった経験に基づいて具体的に示されている例というのがありましたら、教えていただければと思いました。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 現在、ここで具体的に御紹介できるような事例というのは、調査しているわけでもありませんので、お答えできないのですけれども、実態的にここの中でも私ども、述べさせていただいておりますけれども、法律ができたりするときに、法律の内容、先ほどの3ページの中ぐらいにありますように、個々の事業者がちゃんと理解できるような環境が本当にできているのかどうか。

要するに、法律ができれば、それは読んでいないほうが悪いと言うのは簡単ですけれども、小規模な事業者がちゃんと理解できるような説明会を開催したり、そういうことがきちんと行われていかないと、実態上、法の遵守というのは難しいと我々は考えておりますので、そういったことをこれから丁寧に、法律の改正がある都度、やっていく必要があるのではないかということを申し上げているわけでして、何も法律を理解していないということを言っているわけではなくて、法律を強化することがいけないと言っているわけでもない。そういうふうにきちんと守れるような環境が実態上、あるのかどうか。

それから、何度も申し上げておりますけれども、現実に難しいお話を幾ら書いたところで、事業者自体がそれに対応できなければ、絵に描いた餅になってしまう。だから、そのあたりをうまく調整しながら、実態に即した形の対応が必要だということを申し上げたいと思っているところでございます。

○山本(敬)座長 次に、増田委員。

○増田委員 現在の小規模事業者さんたちの対応の仕方というのは、まさしく商いの中での正しいやり方だと、この報告からは思います。大量生産・大量消費の中から消費者トラブルが起こっていて、そういう中で小規模な事業者さんがみずからの生産するものを熟知して、それは何を使って、どういうふうにつくったから、こういうものですよということが説明できて、それで経営を破綻させないように責任を取るということがなされているのであれば、それが一番正しいことで、消費者契約法に反するようなことは全然ないのではないかと考えます。そういう中で懸念されているということがちょっと考えにくいなと感想としては思うので、意見としてお伝えします。

もう一つは、実際にはB to Bの契約、継続・反復した事業を行っている方との契約ということになりますと、幾ら小規模でもB to Bという扱いになるということは当然だと思うのですけれども、消費生活センターのほうには、小規模の事業者さんからの御相談というのはたくさん入ってきておりまして、センターではあっせんはできないということはお伝えしています。でも、こういう考え方で、こういう交渉方法をされたらどうですかというところの助言というのは、常にしております。ですから、そういう意味で言うと、消費者契約法の中でB to B、小規模な事業者さんを含めるということがどうかということはあるかと思いますが、小規模事業者さんの立場からは反対するという理由は余りないのかなという感想があります。

○山本(敬)座長 御意見ということでよろしいでしょうか。

それでは、阿部委員、お願いいたします。

○阿部委員 これからの議論になるかと思うのですが、例えば消費者契約法の特定の条項については、中小企業を適用除外にする、例えば不招請勧誘規制が仮に入ったとしたら、地域のみで商売をしているようなところは適用除外にするようなことがあり得るかということについては、どうお考えでしょうか。大企業と中小企業を分けて考えてしまうということは、あり得ると思いますか。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 可能性としては、私どもはあり得ると理解しております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、井田委員。

○井田委員 御報告ありがとうございました。

質問ですが、例えば3ページで景品表示法で課徴金制度導入というところがございまして、全国商工会連合会において、課徴金制度の内容が難しいという話と、実際にそういう問題が生じたときにどこに相談に行けばいいかという、2つのレベルの問題があると思います。商工会として、例えば相談窓口をどこかに設置してほしいとか、そういう御要望をされたことがあるのかということをお伺いしたいと思います。本日のプレゼンの中でも、対応できないという言葉の中には、ルールが難しくてわからないというのと、実際にそのルールに基づいて何か主張されたときに、どこに相談に行ったらいいのかわからない、2つのレベルの問題があると思います。例えば課徴金の問題で、そういう具体的な動きがあれば教えていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 課徴金だけの話で申し上げますと、件数もなかなか少ないということで、小規模事業者で課徴金を受けるような事業者が出てくるかどうかというのは、ちょっとさておき。私ども、例として挙げたのは、いろいろな法律改正が行われる。その都度、私ども、パンフレットを配ったり、いろいろなことをやるのですが、それにも限界がある。これは費用も手間もかかる話でございますし、こういうものを国として、消費者側の問題もありますけれども、事業者側に対しての改正の内容のPR、周知といったことも必要ではないか。

それから、これは何度か私どものほうも申し上げているのですが、相談する場合に、相談窓口をもっとまめに、いろいろな形でつくっていただきたい。現在、県に1つぐらい、事業者向けの相談窓口があるとお伺いもしていますけれども、それで足りるのかどうか。電話で足りてしまうものは、それで十分だと思うのですが、足を運ぶということになりますと、県庁所在地に1つぐらいですと、小さな事業所が1時間とか2時間もかけて、1日仕事、半日仕事になるような相談に行けるかというと、そうでもない。もう少し拠点を細かくつくっていただいたりする必要性があるのではないかというお話をさせていただいています。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 時間が限られていると思いますが、消費者教育の推進というところについて、もう少しお聞かせいただきたいと思いました。地方で小さな店でお買い物とか、私、子どものころ、よくやっていましたので、きょう、冒頭に出た家族企業というか、小規模事業者が地域の人の中でコミュニケーションを培って商売しているというのは、雰囲気としては非常によくわかるのですけれども、この消費者教育の推進というところで言いますと、例えば今、高校とか中学校の教科書を見ていましても、消費者契約法に関するルールが書いてあったり、恐らく昔よりも消費者契約に関する法規定の知識というのが、消費者教育を推進していけばしていくほど、特に中学生、高校生など一般市民に浸透していくことになると思うのですね。

そうすると、今までは、何となく地域のお店で対話で商売をやっていたことが、例えば今後はあくまで可能性ですけれども、法律でこの広告のやり方はおかしいのではないかという苦情などが来ることがふえるのではないかと個人的には思っているのですが、そういうときに備えてというか、そういうことを考えると、今後、その法律の規定を明確にしていく必要はあるのではないかと思いましたので、消費者教育の推進というところが4ページにありますが、どういう趣旨でおっしゃっているのかというのをもう少しお聞かせいただきたいということです。

あと、今、ずっと議論していますけれども、小規模事業者というイメージがいろいろあるのではないかという感想を持ちました。いわゆる古きよき、地域のお客さんとしゃべりながらやっているような企業というのが、恐らく御報告で念頭に置かれている小規模事業者かなと思っていたのですが、インターネットの発達などで、事業者は1人しかいないけれども、インターネット上で取引をしていてという事業者もふえていますので、今後、ここで議論するときに小規模事業者という話をするときには、いろいろな事業者が昔よりふえているということは念頭に置いたほうがいいのではないかという感想を持ちました。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 ありがとうございました。

4ページの3番の消費者教育というところは、賢い消費者を育てていくというのが国策としても重要なことだと思っています。そのことによって、何か不都合が生じるということは我々としては考えていない。一方で、事業者もみずからきちんとした健全な事業者を育成するということから、初等教育からやっていただくのはお互いに必要なことだと我々も理解しております。要するに、訴訟に持ち込まれる件数がふえるとか、ふえないという次元の問題ではなくて、国としての政策の方針として、そういうことをやっていくことは当然だろうということを私どもは申し上げたいということでございます。

あと、もう一点、小規模事業者の概念ですけれども、これは多種多様なものが、この時代の変遷とともに当然出てくるわけですけれども、規模概念というのはどこまで行ってもあって、リソースという言い方をしていますけれども、資源という意味では、大企業に比べればはるかに脆弱な経営基盤なのです。そういうことを前提とした企業の中でやれる範囲というのは、当然あるわけで、それはネットだから、1人だから別じゃないかという話をしているわけではないです。規模要件、要するに小規模企業というのは、一定の規模より小さいということから派生するいろいろな問題を抱えている事業者だと。

我々の会員の多くがリアル店舗で商売をやっているということもありますので、我々の団体の主張ですから、そういうふうに認識されているかもしれませんが、別の経営体のものに対して理解がないとか、そういうことではありません。

○山本(敬)座長 河野委員。

○河野委員 御報告ありがとうございました。総論に関しまして、ほとんど感想に近い意見を申し上げたいと思っております。

中小事業者の方が大変な状況にあるということは理解できますし、それから、地域において顧客との信頼関係を大切にしながら営業されていらっしゃる事業者さんが多いということは、おっしゃるとおりだと思います。そのような実情があるからこそ、先般導入されました景品表示法への課徴金制度なのですけれども、不当表示をした個別商品について、3年以内に5,000万円以上の売り上げがなければ課徴金が負荷されないという制度になったと理解しております。

ただ、企業規模が大きくても小さくても、いわゆる商品・サービスを世に売り出すというか、それを提供するのは、社会的に有用で安全な商品・サービスを開発したり、提供したりして、消費者や顧客の満足と信頼を獲得するという社会の中での事業者の役割というのは、企業の規模には関係がないと思っております。

今回、私たちが検討している消費者契約法についても、これは行政の規制法ではなく民事法であって、消費者と紛争になった場合の解決の基準を定める性格のものですね。それで、消費者紛争の実態に照らして、より明確な規定となったほうが、事業者・消費者双方にとってよいと私は考えています。より明確になった規定にのっとった消費者からの正当な請求には、ぜひ誠実に対応していただく必要がありますし、一方、不当な要求をする消費者に対応するためにも、明確な規定というのは逆に有効だと考えております。消費者紛争の実態に照らして、より明確な解決基準をぜひ一緒に考えていくとしていただければと思っております。

それから、確かに法的な情報が、中小、特に小規模事業者に届きにくいという御発言でした。都道府県にも窓口はあるとおっしゃっていました。その不備な実態をよく御存じで、そのあたりの対応として全国商工会連合会様等がイニシアチブをとって、窓口の設置とか相談の充実などを考えられて、それを行政が支援する。消費者に対しても行政はいろいろ支援してくれていますけれども、そういったところにも行政が支援するという政策的な対応というのも、また検討されるべきだと思います。そういうことがいろいろ見えてくると、先ほどから表明されている不安というのも解消されていくのかなと感じました。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 1つだけ。小規模だから安心・安全でないものに対して許されるという理解なのかどうか、そこは逆にお聞きしたいのですが、我々、小規模事業者であっても、安全・安心なものはずっと提供し続けているわけですね。ただ、問題なのは、そういうものを提供していく際に、売る行為、商行為の中で、例えばいろいろな資料を出してください、これをやってくださいといわれると、事務負担がふえますよと。そこは、小規模であるがゆえに軽減していただけませんか。実態上、小規模だから、何も安全・安心じゃないものをつくっていいということにはなっていませんし、実際の企業活動も安心・安全なものをつくって提供しているわけですね。

ただ、それに伴って商行為を行うときに、いろいろな負担が出てくるということになると、それはそれで事業活動にいろいろ支障が出るので、そこは最小限にしていただけませんかというお願いをしたいということでして、小規模であるがゆえに安心・安全な品物を提供する上での特別な扱いをしろということを言っているわけではございませんので、そこをぜひとも御理解していただきたいということです。

○山本(敬)座長 最後に、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 今のやりとりとも若干関係するのですけれども、先ほども大規模事業者と中小零細・小規模とで異なったルールの適用もあり得るということをおっしゃいました。今もそれに近いことをおっしゃったわけですが、例えば普通の小売店で同じ説明をされて契約をした。しかし、適用されるルールが違って、大規模な量販店であれば契約を取り消して代金を返してもらえるような内容の説明であった。しかし、小規模事業者の場合には取消しができないのだというルールになった場合に、消費者の志向として、安全策として、そういう小さなお店は避けて、量販店に行けば、何か問題があったら契約がキャンセルできるかなとなってしまって、むしろマイナスじゃないかと思うのです。

説明すべきことはきちんと両方で同じルールであるべきだし、問題があれば同じように救済されるべきだと思います。中小だから、ここは困るという主張よりも、事業者共通にこれは困るということであれば、それはそれで十分理解できるのですが。

○山本(敬)座長 後藤準委員。

○後藤(準)委員 プレゼン資料の2ページに、そこはちゃんと書いてありまして、我々は商売をやっているときに、地域密着型と先ほど申し上げましたように、何かトラブルがあれば事業者がきちんと対応しているというのが現実の問題としてあるわけです。今、おっしゃっているような松本さんの御意見ですと、規模が小さいがゆえに、あたかもそれに私どもが対応しないようなお話をされていたので、そこはぜひ御訂正いただきたい。

○国民生活センター松本理事長 対応しないと言っているわけじゃなくて、そういう差をつける法律のルールが万一実現した場合に、変な話になるのではないかということです。現実において、特に地域密着型の企業さんがきちんと対応されているというのは、そのとおりでございます。そこは全く否定いたしておりません。

○後藤(準)委員 私どもが申し上げている中小・小規模企業についての特例というのは、書類等の話でして、こういった商品の価値を毀損している状況の話をしているわけではございませんので、手続上、大企業に比べて簡素化していただけないか、そういうお話をしているということでして、何も小規模だから、大企業とは別のルールでやるということが、全く違ったものという認識ではありません。同じものをやるのですが、例えば申請書類といったもので簡略化できるものは簡略化できないのでしょうかというお話をさせていただいている。

○国民生活センター松本理事長 よく理解できましたが、消費者契約法はそういう申請書類がどうのこうのという法律ではありません。

○後藤(準)委員 申請書類というのは例でございますけれども、商取引上の契約の中でも、書類上、簡素化できるものは簡素化していただくような対応ができないだろうか。ここは、いろいろ個別具体的な話になると思うのですけれども、今の段階で何をどうしていいかというのは、私どもも意見を述べることはできないのですが。

○山本(敬)座長 このあたりは、次回以降、具体的な論点について、具体的なルールが検討対象になったときに、本当に例外ルールを設けることが可能かということが見えてくると思いますので、そのときに改めて議論していただければと思います。

後藤巻則座長代理。

○後藤(巻)座長代理 感想ですけれども、きょうは各論の部分については立ち入らないということですから、お話しするのを控えますが、各論の部分を見ていくと、先ほど河野委員から、一緒に考えていく、というお話がありましたが、各論のそれぞれの問題というのは、ここにお書きになっているような内容だけではなくて、例えば私からも、これはこういうことですね、ですから、こういう考え方もあるのではないですか、ということでお話できる部分がたくさんあるように思います。

そういうことから言いますと、3ページの最初の行あたりで、「小規模事業者の経済活動を著しく萎縮させることになりかねず」とか、「現行法より規制の対象が著しく拡大されることになれば」、という表現を使っていらっしゃいますけれども、おっしゃるような、経済活動を著しく萎縮させるような規定をつくるなどということは考えていません。

要件も、これはもちろん法律の規定ですから、全く何の疑いもないような形で書くことは難しいですけれども、お互いに、この程度だったらわかりやすく、使いやすい、というものを目指す。そういう方向で、現在の消費者契約法よりもわかりやすく、使いやすいものを一緒につくっていくということが大事だと思います。

(2)河野康子委員からのプレゼンテーション

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、時間も押しておりますので、次に進ませていただきます。

続きまして、河野委員からのプレゼンテーションを行っていただきたいと思います。こちらもプレゼンテーションの後、意見交換を行いたいと思います。それでは、河野委員、お願いいたします。

○河野委員 お手元の資料4の内容を皆様に御説明したいと思います。今回の消費者契約法専門調査会が始まったときに、消費者の現状というのを、私たちが消費者団体としてしっかりと把握して、今後の議論に何とか役立てていただきたいと申し上げました。このたび皆様のお手元にある「消費者契約に関する意識調査」という形でまとめさせていただきました。

調査の概要です。

目的は、今、申し上げたとおりです。

それから、調査対象・調査方法ですけれども、そこにあるとおり、日本生活協同組合連合会に「くらしと商品に関するインターネットアンケートモニター」という制度がございます。そこに対しまして、本年2月19日から2月24日の期間にeメールでアンケート用サイトのURLを送信して、記入後に戻してもらうというインターネットアンケート方式で行いました。

回収状況です。1,927人に配信し、締切日までに1,680件の回答がございました。回答率87%でございます。

調査実施体制ですけれども、質問項目は全国消費者団体事務局で作成いたしました。アンケート調査になれておりませんので、項目の修正等を多少行って実施したところでございます。

下に書いてございますが、この概要報告には、参考としまして2002年6月に内閣府が「契約等に関する消費者の意識調査」というのを行っています。それは、ちょうど消費者契約法施行1年後という時期に、消費者の実態を調べるために内閣府国民生活局が行ったアンケート調査がございました。今回、それから既に十数年たっておりますけれども、改めて現状の消費者の意識ということで、規模的にもほぼ同じぐらいの母数になりますので、ここと対比するような形で幾つか項目設定をしてございます。

では、中をあけてください。

回答者のプロフィールです。20代から70代まで、ほぼ全世代から。

地域分布は、北海道から九州まで全国を網羅しています。

性別は、多少女性に偏っているところがございます。

調査結果を報告させていただきます。2ページからごらんくださいませ。設問の1番は、商品購入、サービス利用の際、契約書の内容を読むかどうかという問いかけです。これは、2002年の先ほど紹介しました内閣府の意識調査との比較のために実施しました。2002年の内閣府調査では、「ほとんど読まない」との回答が年代を追うに従ってふえる傾向が見られましたけれども、今回の調査では、逆に高齢層のほうがよく読み、若年層のほうが読まないという傾向になってございます。

次のページでは、その読まない理由というのを聞いております。3ページをごらんください。読まない理由ですけれども、「内容が難しく読みづらいから」、「分量が多いから」というのが大勢を占めています。これは、2002年時の内容とほぼ同じ。下が参考でつけてありますけれども、契約書に関しましては、13年前とほぼ同じ理由で、みんな読めないという結果になってございます。

4ページをごらんください。「契約内容を理解できているかどうか」を尋ねました。7割以上の方が「理解できない場合が多い」とお答えくださっています。

理解できない場合が多い理由を尋ねたところ、自身の知識不足が理由として最も多く挙げられましたけれども、「業者からの説明が無かったから」というのも2割に上っています。

具体的な記述をいただいていますけれども、下の自由記入欄の最初の四角で50代の女性。「理解はしているが、必ずしもすべてサービス内容を説明されていたのではなかったと、後でわかる」とか、その下の四角、一番上、「業者側の説明が、専門用語の羅列で早口、分かりにくい上に考える隙を与えない事が多い」。それから、3番目、「大抵緊張していたり落ち着かない環境だったりするから」。その下、「説明してもらって納得して契約したが、何かのきっかけで契約変更や解除などの転機の際に理解できていなかった内容があったことに気付く」、こんな自由回答をいただいています。

5ページをごらんください。5問目では、契約書の内容をよく理解していると感じている消費者に、消費者に不利な条項の事例を示し、記憶にあるものを挙げていただきました。「契約内容を事業者が一方的に変更・決定できる」条項は、2割近くの方が「あった」と回答する等、こうした条項が広く使われている実態が見受けられます。第10条の一般条項は、抽象的で消費者には判断が難しいのが実情でございますが、不当条項リストとして、ぜひ今回、充実していただき、消費者と事業者が判断しやすくしていくべきだと思います。

次、6ページをごらんください。6問目は、契約前の説明や契約書の事前交付について尋ねました。商品・サービスが高度化し新しいものが登場する中で、消費者が適切な判断をするために、勧誘時や契約締結前の説明が従来にも増して重要になっていますが、「契約前の説明」、「契約書の事前交付」、この項目に対して、ともに2割前後の方々が「当てはまらないことが多い」と答えています。情報提供をぜひ義務規定としていただきまして、取消しなどの法的効果を与えることが検討されるべきではないかと思います。

次、7ページをごらんください。7問目は、販売方法、契約行為への不満の有無を尋ねました。2002年の調査よりも、全体として不満が高まっています。先ほど1問目で御報告しました契約書の閲覧度でクロス集計しましたところ、契約内容をよく理解しようとする人の不満が高いことがわかりました。わかりたいと思う人ほど、不満があるということでございます。

8ページをごらんください。8問目と9問目は、苦情の申し出の有無を尋ねました。

8問目では、75%の方がこのグラフでは「申し出なかった」と答え、消費者の間では相変わらず泣き寝入りしている状況というのがうかがえます。

苦情の申し出先ですけれども、「契約相手の事業者」というのが圧倒的で、行政等の相談窓口は1割にとどまりました。

続いて、9ページをごらんください。10問目から13問目は、インターネット通販を利用した契約について尋ねました。

若年層を中心に利用が広がっていますが、理解したとおりの契約・購入ではなかったと感じている人が全体の1割あり、その1割の中の8割の方から、そのサイト上の情報のみで内容を確認していたというお答えをいただいています。

10ページの一番下の箱の中に、その具体例を幾つか書きました。例えば20代の女性、「過剰な期待をさせるような情報だった」。それから、一番下の20代の女性、パソコンの購入なのですけれども、当然ついているものだと思っていた、ここに書いてある名前を言っていいか。Windowsのパスコードがついていないパソコンを購入したのだけれども、インターネットの商品説明には「新品同様Windowsパソコン」と記載していたということで、このあたり、不実告知違反を疑わせる内容だと感じております。

次、11ページの説明をさせてください。動機の錯誤による契約について尋ねました。自宅の水道水が汚れているという説明を受けて、浄水器を購入した。購入後になって、実は何の問題もないことがわかった。浄水器の性能そのものに問題はありませんが、購入の動機となった説明に偽りがあったことになります。このような場合、あなたはどうしますかという設問をさせていただいたところ、85%以上の方が不当と感じ、浄水器には何の問題もないのにもかかわらず、契約を取消したいという希望を持っています。

次、12ページに参ります。問15と16では、繰り返し勧誘について尋ねました。約1割の人にその経験があり、そのうち約半数が何度も何度も勧誘されることによって、「面倒になって」、または「怖くなって」契約しているという回答をいただきました。現行第4条だけでは救済できない事例も多く、不実告知の重要事項の範囲や、威迫・困惑類型について、被害事例に照らして、ぜひ広げるべきだと感じたところです。

次は、13ページに行きます。設問17から19は、不招請勧誘について尋ねました。ほとんど全ての人が迷惑と感じています。その理由を記述式で尋ねましたところ、必須回答としなかったにもかかわらず、まず、17のグラフを見ていただければわかるのですけれども、母数1,680に対して、96.3%の方、1,617名が「迷惑と感じる」という回答をされ、そのうちの95.2%に当たる1,540名が、なぜそういうふうに感じたかの具体的個別に記入をいただきました。私の手元にそれを全てプリントアウトした資料がございますが、この厚さのものが手元に戻ってきました。不招請勧誘に関しては、本当に消費者側の苛立ちが感じられる回答となりました。

14ページには、1,540の中から幾つか抜粋して、そこに書かせていただきましたけれども、消費者側は必要なものは自分で調べて、情報を得ている。必要のないものに関して時間をとられるし、非常に不愉快だ。身元不明の人と話をしたくない。電話にしろ、訪問にしろ、勧誘されることは迷惑にしか感じませんと書いていますし、こちらの無知をいいことに、言葉巧みに勧誘することに腹立ちや苛立ちを感じるという、代表例を幾つか挙げましたけれども、こういった形で1,540名の回答をいただいております。

次は、15ページに参ります。設問20から23、つけ込み型の不当勧誘について尋ねました。高齢社会の進展により、具体的な被害を身近に経験し、不安を感じている人が多いということがわかりました。しかも、取消権の権利行使期間は半年なのですけれども、半年以内に周囲の人がこの不当な契約に気がついたかどうかということを伺ったのですけれども、気がついた人は6割にとどまっている。そのほかの事例は、ほとんどが泣き寝入りの状態になってしまうという状況になっています。これが16ページまでのまとめです。

最後、17ページをごらんください。さまざま今回の消費者契約法の改正の検討について、消費者の実態をありのままに調べようということで、先ほどのようなアンケートをさせていただきました。最後の設問、自由回答にしました。消費者の契約に関して、何かお気づきの点がありましたら自由にお書きください。必須にはしておりませんが、1,600人のうちの523人の方が個々具体的に書いてくださいました。

あと、これは今後の個別課題の検討のときに、事例として私どものほうでしっかりとまとめて提出したいと思っておりますが、個々読んでみますと、皆さん、契約に対してさまざまな不安や不満というのを持っている。かなり具体的に書かれておりますので、このような実態があることを御理解いただいて、今後の検討を進めていただければと思っております。

私からの報告は以上になります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

私の不手際で時間が余りなくなっておりますが、ただいまの河野委員からのプレゼンテーションの内容を受けまして、残りの時間で意見交換を行いたいと思います。御質問、御意見がある方は御発言をお願いします。丸山委員。

○丸山委員 プレゼンありがとうございます。確認させていただきたい点が2点あります。

1つは、4ページの設問ですけれども、「商品・サービスの内容について十分理解して契約することができていますか」という質問で、具体例を幾つか挙げているのですけれども、これはある種の誘導とかバイアスになってしまうような気もするのですが、消費者が何を念頭にわからないと回答しているのか、表の読み方が少々わからなくなってしまったので、この表から言えることというのは結局何なのかというのが質問の第1点。

あと、6ページですけれども、ここでの設問に関しましても、契約書や約款が用意されている場面での説明、情報提供を問題としているのですが、こういった契約書が用意されている場面に限定して、説明の不十分さについて伺っているのはなぜか。この質問の意図について、少々教えていただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 河野委員。

○河野委員 御質問ありがとうございます。

私ども、アンケート調査をするに当たって、どのような項目でお聞きするのが一番適切で、バイアスがかかった設問にならないか、誘導尋問にならないかということは、鋭意努力はしましたが、日常的にこういったアンケート調査になれていないものですから、回答してくださる方がふだんの自分の生活の中で、ああ、こういった場面があるな、こういったことは確かにあるなという形で想像できるというか、そういった形で設問を組み立てたというのは間違いないところです。

ですから、例えば4ページで言いますと、これは「携帯電話やスマートフォンの契約、不動産の契約、投資信託や株式などの金融商品の契約」と、ありがちかといえば、携帯やスマートフォンは結構あると思いますが、後半のほうはそれほど日常的ではないので、設問とすると適切だったかどうかというのは、そもそもの入り口のところで私たちも確信がないところです。それに対して特徴的な記述として、こんな具体例を出しましたので、このあたりは、今、私が申し上げたような説明に基づいて、こんな具体的な記述があったと。ですから、物すごく因果関係があるというよりは、それぞれの回答者の方が自分の個々結ばれた契約を念頭に置いて、それに対して出てきた答えだということなので、その程度の資料だとお読み取りいただければと思います。

それから、6ページは、事前に丁寧な説明をいただいたかということ。契約の内容について、消費者が自分が購入する商品とかサービスの中身について、説明を受ける機会がしっかりと記憶の中に残っていたのかどうかという確認で、この設問を出しました。ですから、ここも基本的には契約する以前に契約書の説明をされることは当然だと思いますし、それから契約書が事前に示されるということも当然なのですけれども、消費者側が当てはまらないことが多いと答えているということは、十分に説明があったのかどうかというところが不確かかもしれないという確認の意味で、これは出させていただきました。

済みません、不十分な回答だと思いますが、そんなふうに御理解ください。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに。古閑委員。

○古閑委員 こちらの資料の中で内閣府さんの2002年の意識調査と対比されているところがあると思いますけれども、ここに書いていただいている属性を比べましても、男女比が相当違うとか、回答者の年代も結構偏りがある。一般的にこういった政府がやる意識調査というのは、そもそも属性が偏らないように相当気を使ってやっているのだと思うのですけれども、今回のものは日本生活協同組合連合会さんが募集したモニターだということで、どの程度属性が偏らないようにということが意識されていたのか、ちょっとわからないですけれども、 仮にこれを対比するということで、今後、立法事実の観点で不満が多いということを比べる資料にするのであれば、こういった属性の違いがあったとしても、対比するに当たって有意性があるといえるのかどうかというのは、リサーチの専門家とかにもちゃんと聞いた上でやっていく必要があるかと思います。もし、今後、データとして使う場合には、そういった点の検証が必要になるかなと思いましたので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 よろしいですか。

それでは、ほかに質問、御意見あれば。大澤委員。

○大澤委員 今のお話ともちょっと関係するかもしれませんが、確認させていただきたいのは、聞き漏らしかもしれないのですけれども、「くらしと商品に関するインターネットアンケートモニター」と書いていますが、これは半年とか1年の契約というか、そういう期間を限定して、この期間の間で随時アンケートとかを送りますので、答えてくださいという形であらかじめ募集していた人に、この5日ぐらいにわたってアンケートしていただいたということなのかなと思ったのです。そうだとすれば、回答率は当然これだけ高くなるのだろうという印象は持ちましたし、恐らくこういうモニターに登録している方というのは、多分非常に意識の高い方だと思います。

そういう意識の高い方から見ても、例えば3ページで「契約書の内容がわかりづらい」という感想を持っているということは、これは結構書面を読むような方から見てもわかりづらいという事実かあるのだなという意味では非常に参考になりましたし、あるいは事前の説明についても、恐らくそういう説明を聞こうという意識がもともと強い方が多分多いだろうなと思いますので、そういう方から見ても説明が余りなかったのではないかという感想があるというのも、これも非常に興味深いと思いました。

あと、5ページの変更・決定できる条項があったということを2割ぐらいの人が記憶していたということで、こういうことをちゃんと覚えているということ自体が、意識をある程度持って契約しているのだなと思いますけれども、そういう方から見て、約5分の1の人があったと記憶していますということなので、そういう意味では、これはすごく参考になる資料なのではないかと思います。

個別のパーセンテージが2割とか8割だというのは、これは数字の捉え方がいろいろあり得る話ですので、その数字で2割しかないとか、2割もあるという捉え方は慎重にやらなきゃいけないことだと思いますので、それに関して、今後、十分検証する必要があると思いますが、内容に関しては、契約に対する意識が割と高い方が恐らく答えているのだろうということを考えれば、非常に内容は参考になるところがあるなと感じました。

以上です。

○山本(敬)座長 モニターの属性については、先ほどのような御指摘でよかったのでしょうか。

○河野委員 御指摘いただいたとおりです。今、大澤委員がおっしゃってくださったように、回答してくれたモニターの皆さんは、一般の消費者に比べても、恐らく知識も意識も高い方だと思います。短期間5日間でかなりの回答が戻ってきたということで、私たち、ほかに手段がなかったものですから、直近で生データがとれるということで、こういう方法を使わせていただきました。数字の読み方というのは、今後、個別の議論をするときに、ぜひ皆様のところで公平な見方をしていただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御質問、御意見はあるでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、時間も参りましたので、本日の意見交換はこのあたりにさせていただきます。

本日の意見交換につきましても、事務方のほうで整理をしていただいて、今後の検討に生かしていきたいと思います。

次回以降の審議についてですが、第2回、そして第3回の会議でお示ししていましたように、具体的な検討資料をお出しいただいた上で、個別論点の検討に入っていきたいと思います。次回の議題としては、消費者契約法の総則部分、つまり消費者契約法2条及び3条関連の論点を取り上げる予定にしております。委員の皆様におかれましては、引き続きよろしく御検討のほど、お願い申し上げます。


≪4.閉会≫

○山本(敬)座長 最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○金児企画官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、3月17日火曜日13時からの開催を予定しております。

なお、資料の案は、これまでどおり1週間前をめどに、委員、オブザーバーの皆様にお送りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上