食品ワーキング・グループ(第1回)

日時

平成26年4月22日(火)9:30~

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
阿久澤座長、夏目座長代理、唯根委員
【オブザーバー】
立石委員
【参考人】
鈴鹿医療科学大学 中村客員教授
主婦連合会 山根会長
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、大貫参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価」について
  3. その他
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○大貫参事官 出席予定の方はおそろいです。井内は遅れて来ると聞いております。

本日は皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会食品ワーキング・グループ」第1回会合を開催します。

議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は配付資料一覧のとおりでございます。不足の資料がありましたら、事務局までお申しつけください。

本日も多くの傍聴の方がお越しいただいておりますので、御発言の際はマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。

それでは、阿久澤座長に議事進行をお願いいたします。

○阿久澤座長 おはようございます。本日の会議は公開で行います。議事録についても後日、公開することといたします。

それでは、本日の議題に入ります。まず、この食品ワーキング・グループの構成と目的について述べさせていただきます。

食品ワーキング・グループは、本年3月25日の消費者委員会本会議において、皆さんお手元の資料1にありますが、消費者委員会ワーキング・グループ設置・運営規程の決定により設置されました。この資料1の別紙にありますように、食品ワーキング・グループの目的は、食品の安全、表示等について検討することであり、構成員は私と夏目委員、唯根委員の消費者委員会委員であります。

当面の検討事項として、トランス脂肪酸の安全、表示等について、飽和脂肪酸との関係なども含めて取り上げることとします。

第5条第4項の規定によりまして、座長は必要により臨時委員または専門委員をオブザーバーとして会議に出席させ、関係事項について説明を求めることができる。このことから本日は、食品表示部会に参加されている立石臨時委員にオブザーバーとして御出席いただいております。

また、第5条第5項の規定により、座長は必要により当該審議事項に関して識見を有する者を参考人として会議に出席させ、関係事項について説明を求めることができる。このことから本日は消費者庁食品表示一元化検討会に参加されていました中村様、山根様に参考人として御出席いただいております。よろしくお願いいたします。

≪2.「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価」について≫

○阿久澤座長 最初に、トランス脂肪酸の安全表示等検討課題に取り上げることになった経緯について説明します。

本年3月12日に開催された食品表示部会栄養表示に関する調査会に、立石臨時委員がオブザーバーとしてトランス脂肪酸の表示に関して意見書を提出されました。その折りに私から、栄養表示に関する調査会ではたくさんの検討事項が残っていることもあり、消費者委員会に検討の場を設けることを御提案し、立石臨時委員の提出資料については引き取らせていただいたところです。

その後、3月26日の食品表示部会におきまして、立石臨時委員より意見書を提出いただき、今度はメンバーとして意見をいただいたところですが、このワーキング・グループで時間をかけて検討することとさせていただきました。

トランス脂肪酸の安全性については食品表示だけの枠組みではなく、より広い安全性評価や、食育なども含めた枠組みで検討することが必要であると考えています。食品表示基準についての議論をしている食品表示部会では、このことを十分な審議を行うことができないと考え、表示の枠を超えて安全、表示等を目的とするワーキング・グループとしたわけです。

食品の安全性評価については食品安全委員会、食品の規制等については農林水産省や厚生労働省、そして食品の表示については消費者庁の協力を求めながら、今後、必要な審議を行っていきたいと考えております。

なお、消費者基本計画では、施策番号20に食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項、これは24年6月に改定されたものですが、それに基づいて食品の安全性の確保のために必要な措置を講じますとされており、消費者委員会の行う消費者基本計画の検証、評価、監視につなげていきたいと考えております。

それでは、最初に立石臨時委員から資料について御説明をお願いいたします。15分程度でお願いしたいと思います。

○立石委員 おはようございます。

本日はこのような場を設定ただきましたことについて、まず阿久澤座長、夏目座長代理、消費者委員会の方々に対して、まず感謝を申し上げたいと思います。

最初に申し上げたいことは、私の提出致しました意見書についてさまざまな御意見、御批判があることは承知しております。ただ、中には私の所属する団体に直接抗議をされているものまであります。この意見書はあくまでも私個人、委員の立場で提出するもので、私の所属する団体での内部手続をとっているわけではありません。また、私が所属する団体を代表する意見でもございません。あくまでも委員、立石幸一としての意見であることを申し述べたいと思います。

この問題の根幹は、ここにあるようにさまざまな利害が絡む組織の立場で考えるのではなく、トランス脂肪酸について広く多くの方に知っていただいて、国民一人一人がみずから消費者の立場で考えていく必要があるのではないかと思っています。

そのために情報は正確に公開、開示されるべきですし、その情報に基づいて各々が考え、識者が集まり、フェアな議論をこういった公開の場で行うべきです。民主的なプロセスに沿って今後の方向性を決めていくということが非常に大事ではないかと思っています。

もし私の認識や意見書の中で間違った部分があれば、素直にお詫びをしたいと思います。ただし、後でも述べますが、世間で流布されているようなねつ造と言われるのは心外でありますし、その根拠は後で申し述べたいと思います。

それでは、まず私の出しましたペーパーに基づいて、意見要旨ということで述べさせていただきたいと思います。

まず意見書提出の経緯ということであります。これは3月26日の食品表示部会の中で申し上げましたが、トランス脂肪酸については多くの国で表示が義務化されております。アメリカでは禁止に向けて動き出しているという中で、この議論さえ避ける風潮への疑問がまずありました。栄養表示については、これは昨年6月に食品表示法が成立しまして、義務化になったわけです。ここで初めて義務化ということが決まりました。今まで任意だったものが義務化になったということです。この5年先を決める重要なテーマを、少数の調査会委員が多数決で強引に決定しようとしているということから疑問が生じました。

資料に出ていますけれども、表示成分の義務項目数は日本は5つなのです。アメリカ、カナダは14、韓国は9、EUは7です。このときの調査会の資料においても、栄養表示を義務化している国のほとんどがトランス脂肪酸の表示は義務となっていると記載されております。こういった中で議論もさせていただけない。議事録をもう一度お読みいただきたいと思います。これが本当にフェアな議論なのか。たまたまその調査会のときに阿久澤部会長が出席されていたので、そのときの雰囲気はよくおわかりになり、そういうことでこういう場の設置につながったわけですけれども、もしそうでなかったら、あの雰囲気はわからないと思います。あのようなことが本当にこの国で行われるのか。なぜこのように民主的な議論をさせていただけないのかというのが私は不思議で仕方がないのです。4番に書いてございますが、トランス脂肪酸の健康リスクは科学的に証明されています。特に若年層の摂取が高いにもかかわらず、多くの国民の方がこのトランス脂肪酸の存在すら知りません。だからここに問題があると思います。

2つ目でトランス脂肪酸に関する情報は一般消費者に伝わっていないということで、これは平成24年3月8日に食品安全委員会から健康影響評価が出されました。これは、私は知りませんでした。残念ながら私は最初からこの食品表示部会の委員を務めています。ですけれども、もしこれは勉強不足だと言われればそうかもしれませんけれども、私はこんなことを知りませんでした。この評価が出ていることも知りませんでした。情けない話です。

トランス脂肪酸の情報は、ほとんど知られていないということです。パブリックコメントはたった17通です。資料に添付していますが、これを見ていただきたいのですけれども、パブリックコメント17通です。表紙の後につけていますこの資料、めくっていただきまして別紙1です。1番から見ていただいたとおり、極めてこのパブリックコメントも、低年齢ほどトランス脂肪酸の摂取は高いだとか、我が国の子供や青年たちのトランス脂肪酸摂取量は決して少なくありません。厳密に調査を行った上での評価を求めますということがありますし、2番でも同じようなことが出ています。1,000人に1人でも健康に影響が出る可能性があるのであれば、国民に十分注意喚起をする義務があるように思いますが、いかがでしょうかという意見です。これに対してこういうふうにさらっと答えがなされています。

22番なんかも見ていただきたいのですけれども、このパブリックコメントの内容は全部読んでいただきたいのですが、代表的なことを言います。ここでは個々の食品に対する含有量の表示については、あれば選択の目安になると思います。今の段階ではトランス脂肪酸について、まず国民に広く知ってもらうことが必要に思いますというふうに書いてありますし、要はマーガリンを毎日食べていることに不安を覚えています。

23番はパンのことを書かれています。毎日食べると健康への影響がすごく心配です。トランス脂肪酸の含有量をメーカー側に表示されるべきです。これについて表示に関していただいた御意見については消費者庁にお伝えしますと回答がなされています。いわゆるここでの役割分担は、食品安全委員会の見解は表示について決めることについては、実は食品表示部会なり違うところで決めていく中であるということを言われているのです。

私は実はこのトランス脂肪酸の議論についてまともに議論したことはこれまでありません。消費者基本計画にもきちんと書かれていますが、一度もこのことについてまともに消費者委員会食品表示部会で議論したことがないということをまず申し上げたい。

26番では、摂取量の平均値をもとに議論すべきではないということも書かれています。いわゆるこの意見に対して、脂質に偏った食事をしていることは個人において留意が必要と判断しましたということで、これを認めているわけです。

31番なんかは特に強烈です。日本の政府は世界から孤立している。世界が間違っていて日本だけが正しいというなら、世界中が間違っていると胸を張って世界一の科学雑誌に次々と論文を発表すべき。公共団体との共同研究で聞いた内情では、世界の政府と反対の情報でした。世界の政府では国民の健康が第一、どこかの国ではとあり、これに対して御意見ありがとうございましたと回答が書かれています。こういうことなのです。ここに私は非常に問題がある。このことを今回は金科玉条のこどくパブリックコメントを経て、こういうことで評価書がまとまったと言われています。でも、このパブリックコメント、たった17通です。そのうち10通が問題視しているわけです。これでもって決定したということが言えるのかということです。

もっと驚いたことは、次に平成25年4月16日、日本動脈硬化学会からの要望書です。これは別紙2を見ていただきたいと思います。私はこのことを実はこの土日に知ったのです。実はある方がこのことを私に教えていただきました。私も情けない話です。日本動脈硬化学会から、安倍総理大臣と阿南長官宛てに文書を出されています。このことに非常に極めて重要な提言がされています。特に冒頭の一番最後から3行目のところで「26ショック」ということで、沖縄が平成12年に26位になったという26ショックが書かれています。我が国に押し寄せている食の欧米化からいかに日本人を守るのか、危機感をもって知らしめられた出来事であるというふうに紹介されています。

それとグローバル化した社会生活の中で、我々がいかなる成分の食物を食し、その内容と身体に及ぼす影響並びに影響を知ることは当然の権利であり、まさに生活習慣病から自己を守るための義務でもあると書かれています。これは全部読んでいたら時間がありませんので、次の3ページ目を見ていただきたいのですけれども、脂肪には多くの種類があり、それをひとまとめにして総体としての脂肪摂取を低減することを目的とし、表示することは十分でないと思います。こうしたことから脂質の表示に加えて、動脈硬化性疾患症のリスクとなるコレステロール、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の栄養表示を直ちに行うことを要望することを表明します。

次に書いてあるのは、我が国は貿易立国である。食品を輸出している企業は会社の規模のいかんを問わず、脂質の表示に加え、少なくとも飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の表示を実行しているわけです。我が国においても国民の健康を守る目的で早急な措置の実施を希望する次第です。

それから、最後のところです。工業製品としてのトランス脂肪酸は、たばこと同様にゼロにすることが目的ですと、ここまで書かれています。たばこと同様ですとまで言われているのです。これをこの下に書かれたとおり、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本小児科学会、日本腎臓学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会、連名で出されている。この文章がいっこうに表に出てこないのです。これは阿南長官が握りつぶしたのかどうかわかりませんけれども、要はこういった要望、それから、もちろん栄養表示を検討するときにこういったものが出されているという前提において議論すべきではないでしょうか、このように普通であるべきことが。そのことが丸っきりなされない。私は理解できなかったです。だからこのことを本当に皆さん一人一人考えていただきたいと思います。この専門家、いわゆる医者の方がこういった警鐘を鳴らしていることが表に出てこないというのは、どういうことなのだろうかということをまず考えていただきたいと思います。

次に、平成25年11月7日、昨年の暮れですね。FDAがリリースしております。これはそのままつけていますけれども、これはまさに翻訳機にかけただけですから、ぜひお読みいただきたいと思います。こういった既にアメリカは20年前からトランス脂肪酸の摂取量は減っていても、まだリスクについて極めて危険だということで、こういった動きをしているということ、これは皆さんそれぞれ読んでいただきたいと思います。英語をつけたのは、ねつ造だと言われるのは困るので、これはこういうことでアメリカのFDAはニュースリリースしているということを事実として受けとめていただきたいと思います。

3番です。消費者基本計画と食品表示法に基づく対応が必要ということです。この消費者基本計画、これは何度も私は申し上げています。私が昨年11月に国会の消費者問題特別委員会にも呼ばれたときにも陳述しました。いわゆる新しい消費者行政は、行政のあり方は事業者優先から国民一人一人の立場に転換していくことが重要ですと、ここに書かれているのです。国民一人一人の立場というのはどういうことかということをよく考えていただきたい。要は平均値で議論をして、全体に問題がないというのか、要は困っている方がいるのに対してスポットを当てるのかということなのです。

それから、今度の新しい食品表示法は消費者の安全と消費者の自主的な選択の機会が確保され、必要な情報が提供されることが消費者の権利と新たな目的が明確にされたということです。ですから必要な情報が提供されることが消費者の権利ということで、トランス脂肪酸の情報は当然のこどく知らされる権利があると私は考えるのですけれども、そこについてのこういった考え方に沿って本来は動くべきでしょうということです。

4番目です。自主的な選択の機会が確保され、リスク回避は可能なのかということです。実は平成23年2月にトランス脂肪酸の情報開示に関する指針が公表されております。トランス脂肪酸は栄養成分と同様に枠内に記載するとありますが、そのような商品を私は見たことがありません。実際にそういった選択のときにトランス脂肪酸が多いのか少ないのかが、実際に消費者が判断できる材料はどこにも提供されておりません。

2番に、これはちなみにある会社のホームページを見てみますと、含有量についてきちんと公開されています。例えばメロンパンを1個食べると、実はトランス脂肪酸の含有量は1.1グラムになります。それにチョコドーナツを1個食べると1.4グラム、この2つを食べると合計で2.5グラムになります。1日当たりの総エネルギー摂取量、日本人は平均1,900kcalと言われていますが、この場合、計算上WHOの勧告、目標基準、総エネルギー基準1%未満に相当するトランス脂肪酸は2グラムなのです。ですから要はメロンパンとチョコドーナツは食べただけで超えてしまうのです。大幅に超えてしまう。この事実を一体どれだけの消費者が知っているのかということです。

ですからトランス脂肪酸のリスクについてはこの後、科学的見地の中で今、議論していけばいいわけなのですけれども、これだけトランス脂肪酸が海外で義務表示されている。この周辺の中国にしても台湾にしても香港にしても韓国にしても、皆さん表示されている中で、アメリカは禁止に向けて動こうとしている中で、この情報を知らない多くの消費者がみずからの健康を守る術を知らないわけです。表示されないわけですし、この情報自体がオープンにされていません。先ほど言いましたように日本動脈硬化学会のこういった要望書が丸っきり報道もされません。私はここに非常に不信感を持ったのです。まして議論もさせていただけないということで、これは何かがおかしいぞ。どこかがおかしいのではないかというのが私の問題意識の発端です。

ですからこの問題については利害の枠を超えて、一人一人がこの問題について真摯に向き合って、トランス脂肪酸についての情報をきちんと把握した上で、その上で方向性を決めるということが、本来のこの消費者委員会もしくはこういった公的な場で議論として決めていく役割ではないかと思っています。

以上です。

○阿久澤座長

ありがとうございました。

それでは、次に消費者委員会事務局から、食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の概要を説明いただきます。同じく15分以内でお願いいたします。

○大貫参事官 本来であれば、食品安全委員会事務局が概要を説明すべきところでございますけれども、食品安全委員会に御出席をお願いしたのですが、以下の理由によって出席できませんというお返事をいただいております。この理由についても申し上げて構わないということですので、御紹介させていただきます。

我が国においてトランス脂肪酸に関する科学的な評価は終了しており、消費者委員会においては食品健康影響評価を前提として、講ずべき施策等に関する議論が行われるべきであると考えていること。食品ワーキング・グループにおいて食品健康影響評価の科学的内容の是非等に関する議論を行うべきでないこと等、ワーキング・グループにおける議論の進め方について基本的な認識合わせができていないため、食品安全委員会としては出席することができないものである。

以上が食品安全委員会からいただいた理由でございます。

そのため、必ずしも十分な知識がない消費者委員会の事務局から、食品に関するトランス脂肪酸の食品健康影響評価の概要について説明をさせていただくわけですが、そういう事情がございますので、誤り等があれば御容赦あるいは御指摘いただければと思います。

お手元の資料3をごらんいただきたいと思います。この資料3は立石委員が先ほどの3月12日と26日に提出された資料に関しまして、幾つかここに書いてありますように食品健康影響書の一部を恣意的に抜粋するとともに、評価書にない文言が加筆されている。これは消費者を初めとした国民に、トランス脂肪酸のヒトの健康への影響に関して誤った情報を与えるものであり、極めて遺憾であるということで、食品安全委員会のほうで科学的に行った食品健康影響評価を御説明する資料を改めて取りまとめたということで、1ポツのところに概要、2ポツのところに立石委員の提出資料についての食品安全委員会の見解というものが記されております。

本日、立石委員からの御説明で、本日の資料2-1にございました御提出資料に関する御説明は特にございませんでしたので、そこについての反論については後でお読みいただくことにいたしまして、2枚ほどめくっていただきまして要約という部分がございますので、これを読み上げるような形で、食品健康影響評価書の内容について御説明をさせていただきたいと思います。

要約でございますけれども、食品安全委員会において自らの判断で行う食品健康影響評価として、食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価を行った。

評価に用いた資料は、ヒトにおける疫学調査結果、食品中のトランス脂肪酸含有量調査結果、トランス脂肪酸摂取量推計等である。

トランス脂肪酸には多くの種類が存在し、個々のトランス脂肪酸について食品健康影響評価を行うには知見が足りないため、トランス脂肪酸全体として評価を行った。

平均的な日本人より多いトランス脂肪酸摂取量を基にした諸外国における研究結果によれば、トランス脂肪酸の摂取により、冠動脈疾患の発症については増加する可能性が高いと考えられた。また、肥満、アレルギー性疾患についても関連が認められたが、その他の疾患については、その関連を結論できなかった。さらに、妊産婦、胎児等に対しては健康への影響が考えられた。しかしながら、現時点の平均的な日本人の摂取量において、これらの疾病罷患リスク等と関連があるかは明らかでない。

トランス脂肪酸の摂取量について、日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる。しかしながら、脂質に偏った食事をしている個人においては、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要がある。

トランス脂肪酸はヒトに不可欠なものではないことから、できるだけ摂取を少なくすることが望まれる。しかし、脂質は重要な栄養素であることから、脂質全体の摂取バランスにも配慮した、栄養バランスのよい食事を心がけることが必要と考える。

食品中のトランス脂肪酸含有量については、全体として近年減少傾向にあるが、一部製品においては10%を超える製品もあることから、食品事業者においては、引き続き食品中のトランス脂肪酸含有量の低減に努める必要があると考える。

リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾病罹患リスク等に係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である。

なお、食品中のトランス脂肪酸低減に伴い、含有量の増加傾向が認められた飽和脂肪酸については、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」での目標量の上限を超える性・年齢階級があることから、今後とも留意が必要である。

以上が要約でございます。

この要約の全体を均等に万遍なく眺めて、これ全体が食品健康影響評価であるという理解をすべきであると、食品安全委員会の見解を見ながら私ども事務局では考えているところでございます。

つまり、一部分だけを抜き出して、それがこの食品健康影響評価の概要であるということは、考え方として間違っているのであろう。

次の別添2に、食品健康影響評価書の中に掲載されているものではないと思うのですけれども、事務局のほうでまとめられた概要が割とわかりやすさを重視してつくられたものかと思いますが、書いてございますので御紹介したいと思います。

一番上のところに評価の経緯というものがございまして、次の四角で諸外国における研究結果ということで、トランス脂肪酸の過剰摂取が3種類のものについて書いてございまして、その3種類の疾患はそれぞれ程度が違うということで、一番上のものについては増加させる可能性が高い。2番目のものは関連が認められた。3番目のものは報告されているということですので、私ども事務局で読むと一番上はかなり確度が高くて、下のものになるほど確度が少し低いのかなと。ただ、諸外国における研究結果では、こうした過剰摂取による影響のエビデンスがあるのだなと読めるわけでございます。

重要なのは、ただし、これらは平均的な日本人よりトランス脂肪酸の摂取量が多いケースの研究であるということでございまして、その下に日本人のトランス脂肪酸の摂取実態と健康影響として先ほど読んだ中身、日本人の大多数はWHOの目標を下回っていて、通常の食生活では健康の影響は小さいことと同時に、これだけではなくて、ただし、脂質に偏った食事をしている人は留意する必要がある。また、脂質は重要な栄養素であって、バランスのよい食事を心がけることが必要。この枠内3つセットで考えなければいけないのだろうと考えております。

その下に表があるのですけれども、日本人のトランス脂肪酸摂取量の95%タイル値というものの表があるのですが、これは先ほど読み上げた要約の中には含まれていなかった部分でございます。なぜ事務局でこの概要にこの表をつけられているのかということを推測したのですけれども、この評価書の最後の書きぶりをどういうふうにしていくかということについては、食品安全委員会の新開発食品専門調査会の恐らく79回の会合の議事録というものが公開されておりまして、この中で読み手の誤解が生じないような、健康影響評価書を出したことによって悪影響がかえって生じてしまうのではないかということをかなり懸念して、書き方に非常に気をつかって書かれているということがわかります。これは今回この批判をいただきました一部の部分だけを抜き出して、わかりやすい簡単な、単純な結果を出してもらったのでは、それは科学的なこととは言えないということ。あるいは例えば脂質に偏った食事をしている人は留意する必要があるといいますと、必須な栄養源である脂質までもとらないほうがいいのだろうというふうに勘違いする方がいるのではないか。そういう議論もあって、こういう非常に慎重な書き方でこの健康影響評価書が書かれたということが書かれております。

この議事録の第79回ですけれども、25ページを見ていただきますと、なぜこの95%タイル値の表が出ているかということが非常によく理解できるところでございます。これはこの95%タイル値でエネルギー比1%を超える性・年齢階級はなかった。これが仮に事実だとすれば、日本人の中で5%の人のみがエネルギー比1%を超える可能性がある。そのくらい平均だけではなくて全体的に日本人の中でこの危険な量を摂取している人は非常に少ないんだということを示す表になっているわけでございます。この表があるとこの結果の評価が非常にわかりやすいというふうに恐らく事務局で考えられたのだと思いますけれども、この概要というものを、この要旨にないものを搭載されているのだと私どもは思っております。

一方で、この表の根拠になった推計については、この健康影響評価書の24ページから36ページの中で詳しくやり方あるいは問題点、限界等について記述がございます。この健康影響評価書の36ページをごらんいただきますと、この数字が考慮すべき点という形でいろいろな制約があるということを挙げてございます。この36ページにa~eということで、この数字を使うときに注意すべき要因を5つ挙げてございますけれども、例えばcというものを見ますと、これは一部だけ読んでそれが全体であるというふうに勘違いされるとまた批判されることになってしまいますので注意が必要だと思いますが、国民健康栄養調査対象者の集団代表性に関する問題ということで、別の調査研究であるが、調査に応じた者と応じなかった者の10年後の死亡率は、調査に応じなかった者が高いという報告があることから、国民健康栄養調査に応じた対象者の生活習慣が国民全体の生活習慣よりも好ましい可能性があり、その1つとしてトランス脂肪酸摂取量が少ないということがあれば、国民の代表値を過少に見積もることになるという限界があるということが、健康影響評価書の中には書いてあるということでございます。

私どもから見ると、この概要の中にこの表を掲載するのであれば、こうした注意事項についても同様に掲載していただくのが科学的なのではないかと思うところですが、この概要では特にそういう記載はされていないということでございます。

また、先ほど立石委員の報告の中でドーナツとかパンのようなものを食べたときに、2.5グラムになるというような報告があったわけですけれども、その部分についての記述はこの概要の下にもございますように、食品事業者においては食品中のトランス脂肪酸含有量は近年減少傾向にあるが、一部製品は高いものが見られる。引き続きその低減に努める必要がある。あるいはそのリスク管理機関においては今後とも日本人の摂取量について注視し、知見の収集や適切な情報提供が必要であるとされています。つまり、食品健康影響評価は終了したというふうに食品安全委員会の事務局ではおっしゃっているわけですけれども、一方でリスク管理機関のほうに今後とも日本人の摂取量について注視をすること、あるいは知見を収集すること、その後、新しい知見がないかということを集めるようなことだと思いますけれども、あるいは国民に対して適切な情報提供をすることというのを、この健康影響評価の中で求めているということだと思います。

私からの説明は以上でございます。

○阿久澤座長 どうもありがとうございました。

それでは、食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について、立石臨時委員及びお二人の参考人から御質問あるいは御意見等いただきたいと思います。中村教授、どうぞ。

○鈴鹿医療科学大学中村客員教授 鈴鹿医療科学大学の中村です。

今回は非常に急なお話だったので、なかなか私も勉強する時間がなかったわけですが、日曜日を使って食品安全委員会の新開発食品評価書の2012年3月に出されたものを勉強させていただいて、ここで勉強させていただいた結果、わからないところが多々あったので、お教えいただきたいという形でメモを書かせていただきました。これを全部やっていると時間がないので簡単なところからいこうと思うのです。1つは私の書いた6ポツですけれども、評価書の24ページの3行目に供給量から摂取量推定も同時に行われており、平成18年度の食品加工油脂の国内生産量から推定すると、平均1.3グラム、エネルギー比0.6となると書いてあるのですけれども、平成18年度版の報告書版というのは食品分析センターさんのおつくりになった平成19年3月、内閣府食品安全委員会平成18年度食品安全確保総合調査ということでお出しになっている。そこを見ると表4にはトランス脂肪酸供給量が1.347であって、トランス脂肪酸摂取量が0.881と記載されているので、供給量からの摂取量の推定値を持ってくるとすれば、1.3ではなくて0.881とここに記載される必要があるのではないか。これは簡単な話です。

また少し飛んでいくと、次のページの12ポツですけれども、例えば評価書の39ページの下から、評価書は多分、皆さんの手元にあると思うのですが、4行です。トランス脂肪酸の相関係数が0.5と書いてあって、0.5と相関しないことが示された。待ってくれよと。相関係数はここに書きましたように、0.4から0.7の場合は、普通はかなり相関があると私たちは教えているわけでして、相関係数が0.5であったにもかかわらず、相関しないという結論に至ったのであれば、例えばP値がどうだったとか、あるいはt検定をやってどうだったとかということで、P値とかt検定の値から、それはそうではない。相関係数は0.5であるけれども、相関しないんだということになれば、そこを書かないと、0.5からだったら相関しているわけですから、あれと思ったのです。

次に飛んで、例えば14ポツですけれども、普通、オッズ比の信頼区間、オッズ比を書く場合、オッズ比だけ書いたらだめであって、すなわち信頼区間を求めて、その上でオッズ比に1があるかないかです。すなわち例えばあるものを食べて影響を受けた人、あるものを食べなくて影響を受けなかった人、これは2×2の表ができるわけですが、そこからオッズ比を求めて、そのときにオッズ比はそういうものですから、したがって1があれば関係ないわけです。だから区間推定をやって1が入っているかどうかというのを普通やるわけです。1が入っていても、しかしながら云々かんぬんということで方向性をそこで議論するのであったらわかるのですけれども、信頼区間を書かずに書かれているというのは、本当に原著論文でそうだったのかということを私もチェックできていないので、そこは疑問だったです。

15ポツを書きましたが、相対危険ということ。多分ランセットの中の論文だと思うのですけれども、ランセットの論文であれば多分relative riskですね。相対危険度と翻訳するわけで、多くの場合、相対危険度と翻訳されていて、相対危険と訳しているのは余り見かけないのでどうかなと。しかも信頼区間の中に1が入っている場合があるので、そのことをどう検討されたのか。こんなことで非常に単純なところで日曜日読んでいて疑問に感じたのです。

もっと大きな疑問は、では摂取量が分析されている、例えば平成18年版で分析されていて、この後、大した変化というのか、大幅な変化もないわけなので、両者を見比べながら見ていくわけですが、1番へ戻っていただいて、では試験法はどうだったのかなと。私はもともと食品系の会社で三十数年やっていたので、自分たちが開発した食品添加物が実際にどの程度使われているかということを、食品から分析したりする仕事をしてきたわけです。

そうすると添加回収実験等々をやっていくわけですけれども、幾つかのやり方があるわけで、ここでは評価書の11ページにGC法とか、基準分析法があるけれども、そうではなくてAOACのオフィシャルメソッドでやったということが書かれていて、では実際どう処理したのかなと。それで平成18年版を見なければいけないなと思って、試験法を見ていたのです。そうすると一番問題なのは何かというと、試験をやるときに、2つポイントがあるのですけれども、内部標準でエライジン酸エステルを入れていると思うのですが、それをどの段階で入れるかなのです。回収率が高いと書かれているが、入れているところがかなり後ろの方で入れているのです。標準品を。内部標準を。そうすると内部標準を平成18年版の報告書は、後で御確認いただくとわかると思うのですが、このフローチャートが3ページから4ページに書かれていて、換算を内標に入れているわけですが、この内標を後ろのほうで入れているのです。

そうではなくて例えば内部標準自身も、これはパンなのです。食べるために買ってきたのではなくて、このパンを分析しようとしたら、このパンの抽出液からずっと操作してきて、後ろに入れるのではなくて、パンそのものに内部標準も入れないと相殺できない。行程中でも減っていくわけですから、そこがあれなので、できるだけ早めに入れるべきです。

添加回収実験をやるときに、私たちは食品関係ですから2つやるのです。必ず前添加と後添加をやるわけで、ここでおやりになっているのは私たちが言う後添加だけなのです。前添加というのは一番好ましいのは、魔法の力でトランス脂肪酸をパンの中へきっちりと入れる。このマトリックスの中に魔法の力でなかったら入れられないですけれども、入れればそれで回収率がきっちり出てくるわけです。

しかし、そうはいかないので私たちも多くの場合はもう少し前、例えばドウをつくるときに、ドウの中に油脂を入れるのであれば、油脂に添加する。しかしながら、油脂自身の中のトランス脂肪酸が変化するのであれば、トランス脂肪酸とよく似た分配係数、物性がよく似た、後工程でずっと見ていくとヘキサンで抽出しますから、ヘキサンに対する分配率がよく似たというのか、物性がよく似たものをトランス脂肪酸のかわりに使って、実際にこのパンのドウをつくったところから最終的に分析するところまで来たときに、いわゆる私たちが言う前添加ですが、そこでやったときにどうだったのかという回収率を出すわけです。

その2つの回収率は多分大きく違っていて、実際は魔法の力でパンの中にトランス脂肪酸を入れ込んで、そこから分析したのが真の値に近いわけです。そういうことを考えると、今回というのか、一連の分析されているのは、回収率が出ていますけれども、こんな回収率ではなくて、多分もっと回収率が低いのだろう。例えばこの方法で仮に、私は実験していませんから仮にですけれども、9割、90%であったとしたら0.9ですね。そうすると0.9で割り算をする。しかし、真の回収率が0.7であったとしたら0.7で割るわけで、だからここに公表されているデータよりは3割程度摂取量が多くなるわけです。

そのように実際の摂取量を求めようとしたとしたら、この試験方法そのものがこれでいいのかという検討がなされないといけない。すなわち、食品分析センターさんのようなところに、これは分析するのが仕事ですから、分析することだけで、これを分析してくれということで出すだけでは問題で、例えば国の機関である国立医薬品・食品衛生研究所とか農林水産省の昔、食総研といって今は名前が変わっていますけれども、農研機構とか、あるいは消費者庁であれば国民生活センターとか、そういうところで実際の摂取量に近い値が、真の値に近い値が出るような試験方法をまずは検討して、それからやってもらうのが普通ではないかというのが、私はこれを読ませてもらったわけです。

ではどうするかというと、私たちは添加物でよくやってきたのが、マーケットバスケット方式で分析していくという方法と、実際に販売されている供給量から見ていくわけです。そうすると多くの場合は供給量のほうが多くて、これは当然なのですけれども、分析から求めた摂取量のほうがいつも小さくなるのです。そうすると、リスク管理していく上ではどの数字を使っていくのかという話になるわけです。

それから、供給量といったときには、今、考慮しなければならないのは、多分、エネルギー比で見て4割ぐらいということが言われているし、輸入食品が随分多くなって我が国は食品が完全に空洞化しているわけです。中間品まで中国やベトナムやどこかから来ているわけですから、国内におけるトランス脂肪酸の生産量を見るだけではなくて、輸入量がどうなのか。輸入品の中に入っているものはどうか。輸出量をそこから差し引かないといけないわけですが、それは多分少ないでしょうから、したがって、そこのところがどうかということが1つ思います。

さらに実際の供給量から見た場合、あるいは分析していく場合もそうなのですけれども、食べられている食品が随分量が違うわけで、サンプルをとってきて分析されたわけですけれども、実際の消費を本当に反映しているかなと思うわけで、選ばれたというか、サンプルにされた試料がもし普通、許されるのであれば、日本食品標準分析表でやっている1,878品目というものをやっているわけですから、これで見て、一方ではそれぞれ国民が食べている量というのはわかるわけだから、それで推計していくというような、お金がかかるのでしょうけれども、そういうようなことをしていただいて、摂取量が本当にここで言っている量かなということで、もう少しリスク、どういう疾病があるとか、そういうお話の前に実際にどうなのかというところで、もう少し力を入れてやっていただきたいというのがとりあえず前段です。また後で疾病のリスク等々について議論があれば参加させていただきたいと思います。

○阿久澤座長 ありがとうございました。

山根さん、お願いします。

○主婦連合会山根会長 主婦連合会の山根です。きょうはありがとうございます。

このワーキングに出席することになって意見をまとめようとしたときに、食品安全委員会の立石委員の意見に対する公表というものがあったということを知りまして、大変驚きまして、それへの抗議が中心の意見書になってしまいました。

読んでいただければと思うのですが、丁寧に資料や議事録等を読み込んだ立石委員が問題意識を持って意見として提起をしたことについて、なぜ非難をされてああいう形、政府機関がホームページのトップページで個人名を挙げて非難するというやり方で応対をされたのか。大変驚きと憤りを感じています。

先ほどのきょうのワーキングに欠席ということの説明でも、大変威圧的というか、驚きました。評価は終了している。中身の議論はしてはいけないという言い方でありますし、大変本当に驚きました。

当然、最新の知見とか社会的情勢に基づいてきちんとした議論が今、なされるべきであって、そこに対して適切な助言等を行うというのならともかく、議論をさせないという立場はとんでもないというふうに思います。

食品安全委員会の調査会で行われたトランス脂肪酸の議論の中で出てきたさまざまな発言や資料等から受けとめたことを今、行っている議論、審議会の議論に生かそうとするのは当然でありますし、個人の受けとめ方についてホームページ上でいきなり名前を挙げて、悪人のように非難するというやり方は許されないと思います。

私は立石委員ほどきちんと評価書や議事録を全て読み込んでということはできておりませんけれども、例えば79回の議事録、食品安全委員会の調査会の議事録をざっと見ましたが、結論部分の書き方、評価書の最終まとめのあり方等を議論されています。そこで平均的に見れば今はトランス脂肪酸の影響は少ないけれども、ただし、懸念があるという、そこをどのような注意喚起の文章とするのがよいだろうかというやりとりがあるのですけれども、摂取量が多い層もいるということを重視する議論が、やりとりが続く中で事務局側の発言として95%タイルでエネルギー比1%を超える階級はなかったというのが事実でございますという説明が間に入りまして、つまり議事録を読んだ印象としましては、事務局が強い注意喚起の表現を抑えるような発言をし、そして、それを委員が受け入れたという感じを私は受けました。私も非難をされそうですけれども、それが感じたことです。

リスク評価ですけれども、そのリスク評価のもとになった数値は、アメリカなど外国人での影響を調べたものということですが、そのデータがあって、そこから判断をされているというわけですけれども、そもそもそのデータというのが示しているのは、低い摂取量であれば安全だということを示したものではないと思いますし、日本人のデータは存在していませんし、閾値のようなものがあるのであれば、それ以下なら安全云々ということが言えるけれども、それはないわけで、数字の根拠がはっきりしないということであれば、リスクがあると判断をして被害予防の観点から対応すべきと考えます。

日本人対象のそういった科学的なデータが不足だということは、ずっと以前から指摘をされていて、今後進めるということだったと思いますが、それが今どうなっているのかということも伺いたいと思いました。

トランス脂肪酸の使用量が企業努力で相当減っているということは事実だとしても、一部であるとも思われますし、数値を公表しているところも多くはありません。また、製品によるばらつきも指摘されています。このあたりの実情を消費者庁等できちんと調査しているというようなことも聞こえてはきておりません。多くをとっている層がこの間、減ってきているということは考えにくい。また、この先減っていくということも考えにくいと思います。

5年後の栄養表示の義務化に向けて今、検討されているわけですけれども、5年先、さらに10年先、そのあり方を考えるときに、トランス脂肪酸の影響を軽く見てよいとは思いません。今、こういった検討がされているわけですから、そこで義務化の方向性を打ち出す必要はあると思います。十分な議論を尽くしていただきたいと思います。

将来の懸念とかリスクの将来ということに関して、摂取の低減は望ましいはずです。しかし、表示がなければ消費者が注意のしようがないというのが現状ですし、どの食品にどれぐらいのトランス脂肪酸が入っているのかを知りたい。含有量を表示してほしいという声に応える必要があると考えます。幼い子供たちや若い女性が多くとっているという現状を重視せずに、企業努力のみに任せていいとは思いません。やっとここで栄養表示の義務化ということが始まるわけですから、そこでわかりやすい表示で理解されて、消費者に利用されるということを目指して議論が進んでいるはずですので、食生活の改善と病気の予防にもきちんと役立つように、トランス脂肪酸も表示をさせて、脂肪酸の少ないものを選びましょうというふうに言うべきではないでしょうか。そう考えます。

以上です。

○阿久澤座長 ありがとうございました。

先ほど中村先生から質問というか疑問という形で御発言がありましたが、大貫参事官、どうぞ。

○大貫参事官 中村先生の意見書を読ませていただいて、事務局で何かできることがないかなと思って調べたことがございますので、食品安全委員会事務局ではございませんので正式な回答にはならないのですけれども、申し上げたいと思います。

1つはいただいた資料4の6ポツです。摂取推定量の記載の齟齬についてということで、この文章を読ませていただいて、最初、趣旨がよくわからなかったのですが、お電話で確認させていただいたらば、平成18年度報告書の中では供給量が1.347グラムで、それにある比率をかけて摂取量0.881というふうに計算をされていて、この18年度報告書では摂取量0.881というものが文書の中で記載をされているということでございました。

それに対しまして評価書の24ページ3行目には、確かに平均1.3g/日という本来だったらば供給量のほうの数字が記載をされているということで、ここは素人の目から見ても明らかに写し間違い、誤記があったのではないかと推定いたしました。1


1日本食品分析センター「食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書」P13の表4「食用加工油脂からのトランス脂肪酸摂取量の推計」では、「トランス酸脂肪酸(ママ)供給量(g/day) 1.347 トランス脂肪酸摂取量(g/day) 0.881」とされており、この発言の推定はこの数値に基づくものであった。P14表5「積み上げ方式と生産量からの推計方式(g/day)」では、「食用加工油脂 0.881」に食用植物油、乳類、牛肉・内臓の数値を加えて「合計 1.312(g/day)」を算出している。食品安全委員会評価書記載の数値はこの合計に基づくものであるので、誤記との推定は誤りであることが会議終了後、判明した。


ただ、ここの部分の記述は必ずしも健康影響評価書全体について結論を変えるに至るようなものではないと思いますので、たとえこういう誤記、ミスがあったとしても食品安全委員会の健康影響評価書の結論が動くものでは恐らくないのではないかという印象を持ったところでございます。

先ほど立石委員から、パブリックコメントの数が非常に少なかったという御指摘があったのですけれども、このパブリックコメントを受けてかなり事実関係についての訂正等もされていますので、より多くの目でこの評価書が見られていれば、まさに中村先生がその時点でごらんいただいて、こういう指摘をいただいていれば、こうした単純な誤記については訂正された形で恐らく公開されたのではないかと考えられます。

もう一つ調べてみましたのが、12ポツの相関係数についてでございます。これも私も0.5と相関しないことが示されたというのが、本当にそうなのかなというのがわからないくらい科学的な知識が足りなかったのですけれども、各食品安全委員会の新開発食品専門調査会で各回ごとに事務局から食品に含まれるトランス脂肪酸の評価書の案というものが出されておりまして、それが最初の部分で見ると「相関係数は0.5と比較的高い」というふうにきちんと書いてあるのです。それがどの段階でこの「0.5と相関しない」という何かおかしな表現に変わってしまったのだろうかというのをフォローしてみたのですが、この新開発食品専門調査会では8月23日に第79回の会議をしておりまして、そこで評価書の概要をかためております。その後、パブリックコメントに入ってしばらく時間を置いて、最後にこの調査会としての結論を出したのが83回。この間、別のことについて審議をしているので回数も大分飛んでいるわけですけれども、これが2012年の2月21日ということになります。この間で表現が大きく変わっているということがわかりました。

つまり、79回の資料で読み上げますと、「相関係数は0.5と比較的高いが、一致しないことが示された」というふうに記述されていたのが、この2月21日の83回資料のときに、「相関係数は0.5と相関しないことが示された」というふうになっております。

この第83回のときに新旧対照表というものが出ていまして、評価書の中の表現を全体的に見直して、どこが変わりましたよというのが変わったところを事務局から説明をしているのですが、なぜかここの表現の変化については新旧対照表に入っていなかったということでございます。非常に軽微な変更であると恐らく事務局が認識をして、それで新旧対照表にも含めずに、委員にも御説明しないままこの表現が変わったのではないか。もしそういう経緯であるとすれば、0.5が相関しないというのは専門家の委員の御意見ではなくて、事務局が何となく「比較的高いが一致しない」というのはわかりにくいよねということで「0.5と相関しない」と書いたほうがいいのではないかという、余り科学的でないかもしれない、そこはよくわかりませんけれども、判断において表現の修正がなされてしまって、それが専門家の説明もなかったものですから、専門家の目をくぐり抜けて最終的な結果になってしまったのではないかと想像されるということでございます。

これはあくまで想像でございまして、実際どういう経緯だったのかというのは食品安全委員会でなければ答えられないところですので、御参考までに公開されている資料から確認できることということで御説明させていただきました。

○鈴鹿医療科学大学中村客員教授 どうもありがとうございます。

意図は食品安全委員会でこれでやりなさいということだったら、もう少しちゃんとそういうことのないようにしてよと。相関があるのかないのかというのは全く反対なので、それがそんな形で出されてしまうと、せっかくのこの評価書をもってリスク管理していくことにならないでしょうということで幾つかポイントを挙げさせていただいた。特に摂取量のところがどういう数字になるか、どう見込むかというところがリスク管理のところにおいて随分大きく影響するので、私たち長年分析してきましたから、分析法がいかに問題が多いかということ。やってきた立場から言うとよくわかるのです。多くの場合に少なく見積もってしまうのです。そこが問題だから、2つの供給量と分析量をいつも比較しながら、リスク管理をやるのであれば多いほうでやらざるを得ない。そうなるとこの評価書の結論ではいけないのではないかと思ったので、まずは御指摘させていただいたところです。

後段のほうで幾つか、私自身もほかに疑問を感じているところが幾つかあって、後ろのほうで少し書かせていただいたのですけれども、例えば18ポツで疑問点と書いてあるのが、冠動脈疾患の主な危険因子におけるトランス脂肪酸摂取という話があって、評価書の71ページに日本人で喫煙、糖尿病、高血圧などの主要な危険因子と比較すると、トランス脂肪酸による冠動脈疾患リスクはかなり少ないと考えられたという記載があるのですが、私はそういう論文を見たことがないし、あの中には参考文献は書いていなかった。評価書には書いていないわけで、なぜこういうふうに、これは大事な文言なのです。

だから喫煙とか糖尿病とか、確かにそういった危険因子はたくさんあるわけですけれども、冠動脈疾患よりは少なかったと考えられた根拠となるような論文等々が、報告書に引用する形で原著論文が紹介されてこないといけないのではないかと思ったわけですし、それから、こういう研究というのか報告書をまとめる場合、13ポツに書いたのですけれども、方向が正の相関があった、負の相関があったとか、いろいろな研究の報告書とかレビューとかいっぱいあったときに、いわゆるメタアナリシスというものをやって、それでもって全体を眺めてみるということをバイアスも含めて考えるというのが普通、薬関係ではそういうやり方をしているわけです。

そういうことを考えますと、事務局というのか内閣府の安全委員会でおまとめになるときに、みずからが公表された論文でメタアナリシスが可能なわけですから、方向が違うようなものはたくさんあったときに、なぜやられなかったのかなという疑問も出てきまして、そのようなことで新開発食品評価書については、まずはおっしゃっておられることに私はトランス脂肪酸の専門家ではないわけですけれども、普通に見たときに疑問がまずはある。

その疑問があることを横に置いたとしても、ここで言われていること等々から考えると、リスクがどうあるかということを考えたときに、先ほども申し上げたように分析法が完璧ではないわけですし、特に低濃度に含有されているものを分析していく場合はND、検出されずになってしまう場合が多いわけです。そんな食品が山ほどあったとすると、実はそれはトータルして見れば、そこそこ摂取しているのだけれども、分析結果から言えばみんなND、ND、NDとなってしまっていて、結局ゼロになってしまっているわけです。

だから実際との違いがそこではあるわけですから、特に低濃度に入っている食品が本当にどれだけあるのかとか、先ほど申し上げたように日本食品成分分析表というものは、トランス脂肪酸は書いていないわけです。すなわちこれは文科省がおつくりなのですけれども、飽和脂肪酸とかその他は書いてあるわけです。一価不飽和とか、飽和脂肪酸とかコレステロールとかいうあたりは記載されている。これにトランス脂肪酸というものを全部埋めてもらえば、低濃度に入っているものまで認識できるわけだし、自分たち国民が食べるときにわかるわけではないかと思います。

最後に、もう一つだけ申し上げたいのは、例えば私たち薬学で薬剤師になっていく人たちに指導していくわけですけれども、例えばニトログリセリンの製剤みたいなものを投与されているという患者であれば、循環器系の疾患を患っておられることはすぐわかるわけですから、栄養指導というのか、そういうことをしなければいけないわけです。

しかし、患者にとってもそうですし、医師にとってもそうですし、薬剤師にとってもそうですけれども、今は食品に何も表示されていないので、トランス脂肪酸を含んだものをあなたの疾患から考えたら、ちょっとおやめになったほうがいいよというような栄養指導も現状ではできないわけです。だからそういう点から言うと、ぜひとも表示のほうへ持っていってほしいと思うし、さらにいろんな医学部の先生方が疾患との関係を御研究されているものを、幾つかの報告を見るわけですが、対象となった患者がどれだけのトランス脂肪酸を摂取しているかということは、医師も正確にはわからないわけです。

だからあなた何を食べたかということをいろいろ聞いたとしても、患者もこれを食べました、あれを食べましたと言っても、それぞれの食品には記載されていないので、その疾患とトランス脂肪酸との研究をやる上でも、今の状況は支障になっているわけです。そういった本当にトランス脂肪酸が、逆に言えばトランス脂肪酸の影響はないかもしれないわけです。だからトランス脂肪酸による影響が本当にどうなのかということを医学的にも御研究いただくためには、やはり食品に表示してもらわないと、そういった研究もできないのではないかと一方では思っています。だから今の研究そのものが非常に曖昧なことでやっているのではないかと私は思います。

以上です。

○阿久澤座長 どうもありがとうございます。

大貫参事官、どうぞ。

○大貫参事官 今の中村先生の18ポツの御指摘についてコメントをさせていただきますと、私自身もトランス脂肪酸についてごく短期間勉強させていただいて、こういうリスク要因を示す文献というのは私は見させていただきました。たしか公的な報告書だったと思うのですが、今、資料名をすぐに申し上げるわけにはいかないのですけれども、この冠動脈疾患のリスク要因というものが過去からどのように変化をしていくかということで、喫煙が最もそのリスク要因として主要なのですけれども、そのリスク要因の程度もどんどん落ちてきているという状況だったと思います。

確かにこういった評価書等の報告書の中で参考文献等として挙げられていれば、それはそれで非常にいい話なのですけれども、トランス脂肪酸について科学的な見地から検討したいということであれば、少しお調べいただいて、こういう基礎的な部分については共通の知見に立って、その上で議論を進める必要があるのではないかと思った次第でございます。

○阿久澤座長 ありがとうございます。

そうしたら、1つ中村先生、先ほどの発言の中で表示を前提にした発言だったと思いますが、トランス脂肪酸も成分表のところに記載をすべきだという御発言ですが、トランス脂肪酸そのものにも多くの種類があって、中には確かに水素添加の仕方が、これは乳脂肪ですけれども、水素添加の仕方によっては1つはエライジン酸になる。あるいは動物の胃の中の微生物でイソメラーゼのような酵素によって添加されれば、それは逆に健康に対してはプラスの影響をもたらすものも含めて、非常に多様であるということで、それを1つトランス脂肪酸というくくりですることはどうなのかなと私自身あるのですが、その点についていかがでしょうか。

○鈴鹿医療科学大学中村客員教授 実際に分析されますと、分析においてもそうですけれども、いろいろなものが確かに、クロマトグラフを見ていても出てくるわけです。それを集めて、これをトランス脂肪酸と定義するということでやっているわけですので、ある意味で共通の土台で、成分表は文科省ですし、食品安全委員会でおやりになっているのは内閣府でしょうし、栄養の指導をやっているのは厚労省でしょうから。しかし少なくとも定義だけ、デフィニションだけはお互いに決めて、ターゲットとするトランス脂肪酸とはこういうものだということを決めて一緒にやらないと、先生が今、御指摘のようなことに当然なってしまうと思います。まずその辺もやらなければいけないことであると思います。

○阿久澤座長 どうもありがとうございます。

そのほかにも中村先生から多くの質問をいただいておりますけれども、ここに質問する相手、回答する方がいないので、この件につきましてはどのようにしたらよろしいのでしょうか。申し送りしておくということなのでしょうか。どういうふうにしたらよろしいのでしょう。ご質問の一部は、大貫参事官から御回答いただきましたが。

○大貫参事官 中村先生からの御質問の多くが平成18年報告書、いわゆる食品分析センターでやられている内容についてのものですので、これは分析をやられた方でなければ恐らくお答えが難しいのではないかと思っております。食品安全委員会に今から問い合わせても、私どものほうでもわからないというふうに対応されるのではないかと危惧しているところでございます。

今回かなり、2年前の報告書についての御質問事項でございますので、残念ながらタイミング的には御回答をもらうための条件は整っていないのかなという感じがいたします。あとは例えば個人的に直接お問い合わせいただくとか、そういう手段によるしかないのかなと考えておるのですが。

○阿久澤座長 中村先生、そういうことでよろしいでしょうか。

○立石委員 私からもう一度申し上げたいのは、私の作成した意見書の中の記述は最終評価書だけでつくったものではありません。プロセスのところ、先ほど出ていた議事録だとか、そういった中で議論されている中身、それから、その前段の食品分析センターの評価書含めて、その中で最終的にはああいう形でまとまっておりますけれども、先ほど山根さんが言われたとおり、このプロセスのところを見ていただきたいのです。議事録、私はこれを全部読みました。読んだところで非常に不安に覚えたのです。

こういういわゆる事務局がつくった案に対して極めて先生方が右往左往しながら、これは不安を与えるとか言いながら、現時点ではとか、それは平均だとか、いわゆる本当にリスクがあるにもかかわらず、不安を与えないような記述に持っていこうとする、このニュアンスがここに込められている。ですから、皆さん自分でもお読みいただきたいと思います。私を批判する前に、みずから皆さんがこの議事録を読んでどんなふうに感じられたのかというところをぜひ、その点を判断していただきたいと思います。

それで私が申し上げたいのは、先ほど中村先生から貴重なお話がありましたけれども、海外との比較で、先ほど学会の意見で出ていますが、要は日本から輸出するときはきちんと表示をしないといけないわけです。台湾にしても香港にしても、そういった規制がかかっているわけですから。ところが、相手から日本へ持ってくるときに要らないのです。必要ない。要はそれぞれの国でトランス脂肪酸について困っているものは全部日本に出してしまえということについて、我々は何も防御できないわけです。我が国がきちんと表示に規制をかけなければ。

要は何を言いたいかというと、企業の努力だけでこのことはできないということです。きちんと国でこのことについてリスク管理をしていかなければいけないということをまず申し上げたい。その上で守っていかなければいけないのは誰なのか。我々の世代ではないのです。次世代なのです。若い人たちなのです。ここを私は本当によく考えていただきたいと思うのです。影響が出るのかよくわからない。不明だとこの議事録に盛んに書いてあるわけです。現時点ではと盛んに言っているのです。ということは、この後、いろんな知見が出てきたりしたときに、わからない。ただ、今時点ではこうですと言う。

過去をよく振り返ってください。あらゆる化学的物質というのは後でひっくり返っているのです。今は当然安全ですよといいつつ、であれば今から将来の世代のためにきちんとかじを切っていくんだということをやるべきだと思いますし、その議論をフェアにやるべきです。密室で決めたことをそこでもって決定です、終わりですとするこの食品安全委員会のこのコメントはいかがなものかと思うのです。パブリックコメントを経て結論を導いた科学的評価は終了しており、これを基本に議論を行うべきである。パブリックコメントにあれだけ書かれているわけです。いろんな疑問が出されています。あれをぜひ読んでいただきたい。

その上で出された結論は、私をここまで批判するだけの文章を国の機関が出してくるということが、私は本当に今、この国が正常な姿で動いているのかということについて非常に疑問を持つわけなのです。やはり多くの人間が知見を共有し合いながら、議論でもって正しい方向に導いていくということがあって初めて、これはよりよき方向に行くわけでありまして、少数の人間が握りつぶすような、私に意見を言わせてもらえない、議論にも参加させていただけない、そういったあのような不合理で非民主的な調査会でもって決定していく。それでもって5年先の栄養表示を決めていく、義務の項目をたった5つでやりますよということをここで決めていいんですかということを私は言いたいのです。

各国の国際的な動向ということで見ていただいたらわかりますけれども、日本だけがこんなに少ないのです。少ないということは外国から持ってくるのは先ほど言ったように全然規制がかからないということです。そのことも含めてよくよくこの議論はもう一度振り出しでやるべきだということを表示部会の中でも申し上げましたし、調査会の中でも強くこういうことを述べたということであります。

○阿久澤座長 ありがとうございます。

山根さん、お願いします。

○主婦連合会山根会長 ありがとうございます。

よくトランス脂肪酸ばかりに注目していると、一方の飽和脂肪酸の数値が上がってしまうよということを言われますけれども、アメリカにおいては、FDAは飽和脂肪酸と比較した上でトランス脂肪酸禁止案を出している。そこにも注目すべきだと思います。

FDAは、全米科学アカデミー医学研究所のような専門家集団によるきちんとした協議会の発言、トランス脂肪酸は飽和脂肪酸よりも冠動脈性心疾患リスクについてより強い影響を与えるという意見に同意しますという文書を提示しているそうですので、注目すべきだと思います。日本ではこのあたりの分析ができているのかできていないのか知らないのですが、まずはトランス脂肪酸の低減を進めるべきです。

指摘があるように、世界的なトランス脂肪酸の使用規制や表示の義務化という流れから見て、日本は大きく立ちおくれていると思います。脂質に偏った食事をしている人は留意すべきと言われても、表示がなければどのように留意をすればいいかということもございますし、使用制限がないためにトランス脂肪酸の含有量がとても高いものも流通していると思います。

今後も外食やコンビニ、冷凍食品等への依存度というのは必ず高くなる傾向は続くと思いますので、当然トランス脂肪酸に多くの人がさらされる危険度というのは高くなると考えざるを得ないと思っています。ですので日本においてもきちんと法的規制等を進めるべきだと考えます。

○阿久澤座長 ありがとうございます。

夏目委員、どうぞ。

○夏目座長代理 トランス脂肪酸の議論そのものにかかわることではないのですけれども、立石議員が意見書を提出された動機でもありますが、栄養表示の調査会の運営方法について御批判をたびたびされています。

確かに食品表示部会でこの調査会を設けて審議をするというときに移りましたときに、短期間のうちに調査会開始になりましたので、進め方、オブザーバーの発言の権利、それから、提出資料について混乱があったことは事実でございますけれども、その辺について事務局からきちんと説明をいただかないと、調査会の討議の仕方が批判を招き続けることになりますので、私はそこのところは事務局から説明をいただきたいと思っておりますので、お願いします。座長いかがでしょうか。

○阿久澤座長 大貫参事官、よろしくお願いします。

○大貫参事官 調査会の運営についてでございますけれども、まず委員の人選をするときに、部会の委員の何人かを調査会に所属していただくという形をとったのですが、全ての調査会に全ての部会の委員が属しますと非常に大変なことになるということで、人数を絞らせていただくというプロセスがございました。その過程でオブザーバーとしていつでも御参加いただけますし、また、御自由に御発言いただけますよということを事務局でお約束した経緯がございました。

それにもかかわらず、調査会の運営のときに座長への御説明が十分されていなくて、その点が十分徹底していなかった運営の会が何回かあったということでございまして、そのときに議事の混乱があったということでございます。これについては座長と部会長、部会長代理にお集まりいただきまして、運営についてオブザーバーがきちんと発言できること、また、委員提出の資料についても十分御利用いただくことということでコンセンサスをつくって、その会合以降の運営については正常化をしていると事務局でも認識しておるところでございます。

○阿久澤座長 立石委員、どうぞ。

○立石委員 最も大事な日本の栄養表示の義務化をするかどうかというのは、これは初めて昨年の食品表示法が通って、そこで初めて義務化ということが決まったわけです。ですから今は任意。これが義務化に向けて表示をどうするかというのは、これは大変な大きなテーマだと思います。

先ほどの資料を見ているとおり、日本は極めておくれているのです。たった5つ。先ほど言ったカナダ、米国は14、韓国は9、要は多くの国でトランス脂肪酸は義務になっているということを踏まえながら、やはりどうするのですか。

5年先のことを決めるためのものさしは、まず1つは消費者の必要性、2つ目が事業者の実行可能性と来ているわけです。3つ目が国際整合性。この3つがそろったものを義務化しましょうという中で強引に決められたということです。本当にこの大事な議論、この場が一番重要なテーマで、そのときたった4人の委員と座長と座長代理の6人。これが日本の食品表示の大きな姿を描くのに、私はそのときに確認したのです。まさかこんなお粗末な資料で、この説明の中で決まっていくのかというのはとても思えなかったので、これは枠組みだけの話ですねという確認をしていました。そうすると、座長はそうですと。それで安心してたら決定なのです。決定ですよ。このことについては不十分な議論、10分、20分もしていませんかね、10分もしていませんかね、それも石川委員だとかほかの委員の方も極めておかしいという論調、そのことは議事録を読んでいただいたらわかりますが、そういった意見もありながら、それでもって決定に持っていったということは、極めてバイアスがかかっているとかしか言いようがないのです。

私はそのことであの1回だけが特別だと思っています。ですから事務局なりどなたの意思かもわかりませんけれども、どうしてもトランス脂肪酸の議論をさせたくないという強い思いが私には感じます。私は実はその日までそんなに強く思っていなかったのです。トランス脂肪酸のことは。ですからそのことが私をここまでトランス脂肪酸を調べさせて、調べていって、なぜかおかしいということをこういうことで意見書を出したという経緯なのです。

ですからあのような議事がなければ、私はあのとき出席していなければ、このようなことになっていないのです。要はあれで決定されて、要はこの国の表示はあれで決まったのです。栄養表示は。それで本当にいいですかということです、私が言いたいのは。やはりもっとオープンに情報開示して、先ほどの学会の資料だとかああいう意見書が出ている。このことも全くオープンにされていないわけです。そんな中でこのことを決めていって、それが表示を決めるのがあの場ですから。食品安全委員会ではないのです。そういう中で決定されていくことについては今でも私は不満に思っていますし、ですから再三申し上げているとおりです。何度も言って申しわけないのですけれども。

○阿久澤座長 立石委員よろしいですかね。せっかくトランス脂肪酸のワーキング・グループでのことですから、それはまたということで。

時間も迫っておりますので、どうぞ手短に1つお願いいたします。

○鈴鹿医療科学大学中村客員教授 1つだけですけれども、規制の違いがあるとよくないわけです。例えば私たちは昔、調味料をやっていたのですが、例えばEUの規制が厳しくなる。我が国からEUに対して調味料は輸出できない。厚生労働省から認証が出ない時期が一時期あったわけです。そういうことになると日本の事業者もよくないというか、世界で競争できなくなっていくわけです。御承知のように今、部分水素添加油脂についてアメリカはGRASから外そうかと現に検討されていて、もしそうなっていくと表示にとどまらず、実際に日本から輸出するものについても、今、アメリカもFSMAということをやっていますから、Food Safety Modernization Act、H.R.2751という法律で非常に厳しく食品安全についてやってきているわけです。

したがって、そういう中で我が国からアメリカに対して輸出するものも、アメリカの規制がかかってくるわけです。世界の流れに我が国の事業者の方々もついていってもらわないと、事業者も国際競争力を失っていくわけですから、これはきょうお出しいただいた資料を見させていただくと、少なくとも表示が大体義務の方向で、いただいたカラーのものを見ると義務の方向で動いているわけですから、よく似た並びで我が国もやっていってもらうことが消費者にとどまらず、事業者の方々にとってもいいのではないかと私は感じたところです。

○阿久澤座長 ありがとうございます。

大貫参事官、どうぞ。

○大貫参事官 時間がない中で恐縮なのですが、立石委員が先ほどこういう中で決まっていくとおっしゃったのですが、事務局の認識としては調査会の議決は部会の議決にならない。部会ではまだ議決はされていないと認識しておりますので、その点だけコメントさせていただきます。

○主婦連合会山根会長 済みません、短く。

1つは、今回のきょうの出席要請にも応えないという食品安全委員会の対応について、必ず消費者委員会から抗議をしていただきたいと思います。あと、今後のワーキング等のスケジュール、このトランス脂肪酸の栄養表示についての検討はどうなっていくのか教えていただけますでしょうか。

○阿久澤座長 それにつきましては、また後で事務局から報告等あるかと思いますので、よろしいでしょうか。

それでは、時間ですので、きょうはお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。御意見、御質問等伺い、私の感想ですがトランス脂肪酸の問題につきましては、そのリスク管理、リスクコミュニケーションの議論が不足しているのではないかという感じもしております。

また、脂質全体のバランスで見なくてはならないところ、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、コレステロールなどの議論については消費者の関心が薄いと思います。

こういった全体の脂質の中のそれぞれのものですけれども、コレステロールについては比較的多くの消費者がわかっていて、例えばコレステロールでもHDLとLDLの役割もわかっているような感じかと思います。それと同じようにトランス脂肪酸につきましても、先ほど言いましたが、中にはいいものもあるということについては全くわかっていない消費者のほうが多いのかなとも思います。

飽和脂肪酸につきましては、フレンチパラドックスと言われ脂肪の摂取量においてフランス人はアメリカ人より10%ぐらい、不正確ですが、多いと思います。しかし、心疾患はアメリカ人より少ないというのは、ある意味飽和脂肪酸をとっているのにもかかわらず、その疾患は少ないということです。これは説によると赤ワインのポリフェノールがそれを軽減していると言われています。要するにそういった食文化的な背景もあるし、このような現象も見ていかなければいけないのかなとも感じております。

そんな中で、立石臨時委員の提出資料について食品安全委員会の評価書に御指摘があることについては、私も承知しております。今後のこの食品ワーキング・グループの議論については、立石臨時委員の問題提起の思いは受けとめつつ、科学的評価としては食品安全委員会の評価書、これを出発点としたいと思います。

評価書からこの意見の中にもあったかと思いますが、もう既に2年が経過しているということで、その評価書自身においてリスク管理官庁においては最新の状況をフォローしていく必要について記載されているところです。その後に明らかになった科学的知見、先ほど立石委員からもあったかと思いますが、日本動脈硬化学会から提出されている意見との関係などについて、関係者からのヒアリングを中心に次回以降、検討を進めていきたいと考えております。

本日は立石臨時委員、中村参考人、そして山根参考人におかれましては、ありがとうございました。

本日の議事は以上です。最後に次回の日程につきまして事務から説明をお願いいたします。

≪3.その他≫

○大貫参事官 どうもありがとうございました。

先ほど山根委員から今後どうなるんだというお話があったのですが、実のところまだ全く白紙でございまして、3委員と御相談をしながら次回の日程について改めて御連絡をさせていただくことになるかと思います。

○阿久澤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

≪4.閉会≫