第154回本会議・第9回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議 議事録

日時

2014年4月22日(火)12:15~14:20

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【消費者委員会委員】
河上委員長、石戸谷委員長代理、阿久澤委員、岩田委員、齋藤委員、高橋委員、夏目委員、橋本委員、山本委員、唯根委員
【専門調査会委員】
小早川座長、白石座長代理、鹿野委員、川出委員、長田委員、増田委員、宮城委員
【説明者】
消費者庁 菅久審議官、黒田課徴金制度検討室長、加納消費者制度室長
【オブザーバー】
国民生活センター 丹野理事
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官、稲生参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 要件・手続きに関する検討(3)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまから、「消費者委員会第154回本会議・第9回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議」を開催します。
本日は、所用により本会議委員の岩田委員がおくれての出席との御連絡をいただいております。
本日の配布資料ですけれども、資料1と資料2が消費者庁提出資料でございます。御確認ください。
それでは、小早川座長に議事進行をお願いいたします。

○小早川座長 では、本日も皆様よろしくお願いいたします。
議事に入ります前に、前回委員から出された意見について事務局から確認をお願いします。

○稲生参事官補佐 資料1といたしまして、前回御議論いただきました被害回復のあり方について委員の皆様から出された主な意見を整理しておりますので、御確認をお願いいたします。
以上です。

≪2.要件・手続きに関する検討(3)≫

○小早川座長 それでは、本日は先般の中間整理で引き続き検討を要するとしていた論点としまして、対象行為のうちで不実証広告規制に係る表示を対象とするかどうかという論点と、主観的要素に関する論点がございました。この2点について議論し、検討したいと思います。
前回、被害回復のあり方について議論をし、今回引き続き検討するということにしておりましたが、これにつきましては、前回の議論を踏まえて、消費者庁で資料等の準備をしていただき後日改めて議論するということにしたいと思います。
本日は、要件・手続に関してこれまで議論しました内容と、それから中間整理を踏まえて、先ほどの点につきましての消費者庁からの資料の提出をいただいていますので、それについての説明をお願いします。説明時間は15分程度でよろしくお願いします。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 消費者庁参事官の黒田でございます。
では、お手元の資料に基づいて説明させていただきたいと思います。
1枚めくっていただきまして、2ページに目次がございます。
本日は大きく言うと2つの話、それをさらに割ると全部で3つの話について説明させていただきます。不実証広告規制について今回の課徴金の対象とするのかどうかについての論点。あと主観的要件については、主観的要素を入れた場合の注意義務の内容、また要件の表示の主体をどこまでとすべきか。そういった3点でございます。
まず、では不実証広告についてですが、3ページについては第5回の会議で我々がお配りした資料でございまして、対象とすることの論点についての考え方でございまして、これは省略させていただきます。
さらに1枚めくりまして、4ページはいわゆる不実証広告の適用が前回とかなり更新されていまして、これは3月27日に、二酸化塩素を利用した空間除菌を標榜するグッズ販売業者17社に対する措置命令を反映しておりまして、全体で優良誤認110件のうち30件がこの不実証広告規制による措置命令だということになっております。
中間整理における議論を抜粋しているのが5ページでございます。5ページに中間整理という四角の中でいろいろこれまでにいただいた御意見を再現しておりますが、中間整理のまとめを簡単に言うと、不実証広告規制に係る表示を対象とするかについては、これを積極的に否定する意見は見られなかったが、種々の議論がなされたということで、その種々の議論についてここにいろいろ書いております。
下の○にありますけれども、経済的不利益の賦課処分に当たって、これを立証するということを必要とした場合には、その要件等を踏まえると賦課処分が困難となるということから、不当表示規制の実効性を確保する観点から、賦課処分に係る立証の負担軽減を図る必要があるのではないかというような観点で、これまでの議論を踏まえつつ、では不実証広告規制の実効性を確保するというのであれば、幾つか案として考えられるのは6ページのI案、II案ではないかと。
まず、一番左のピンク、赤っぽい四角の意味は、不実証広告規制に係る表示を今の4条2項の規定をそのまま変えずに課徴金を課す。不実証広告での規制について課徴金を課すということについての検討を下の四角のほうで書かせていただいています。不実証広告という場合に、この不当表示の疑いがある場合、事業者に不当表示でないことを立証させるということだけではなく、その時点から不当表示とみなされるということでありますので、それ以後は立証ができなくなるという、証拠の制限といった効果が生じるものと考えられるということであります。
それと下の○とセットになるのですけれども、そういう処分の内容が措置命令というような将来にわたる差しとめをする処分ではなくて、経済的不利益の賦課という暫定的な意味合いを持たない形で不利益処分となることについてこのままでいいのかということなのですけれども、要するに不実証広告規制の場合は、後から合理的な根拠というのが見つかった場合は、その措置命令という命令したこと自体が消えはしないのですけれども、その後、同じような表示をそのまま続けたとしてもそれ自体は命令違反にはならないということになるのです。ということで、将来にわたっては実質的には命令で出されたとしても、表示自体については、そこでそのまま表示は後で合理的根拠が見つかった場合にはその後に表示しても差し支えなくなるというような効果がある。そういう暫定的な意味合いがあるのですけれども、過去に1回措置命令を行っているということ自体に対して課徴金を課すというようなことになりますと、措置命令自体は消えないものですから、後で合理的な証拠というものが見つかったとしても、では課徴金はそこをどうするのだということが問題になると言いたいということなのです。
その場合にI案、II案と考えるのは、I案については、では、いっそその辺どうなるのだという部分についての場合、新しく不当表示の類型を第4条第1項に追加して、いわゆる不実証広告規制といいますか、そもそも、その場合に合理的な資料を持たないで効果・性能に関する表示行ったこと自体を不当表示とみなすというような、行為自体を不当表示の類型として追加するというような考え方がひとつあろうかと思います。ただ、その場合は、新しく不当表示の類型に追加するということですので、それ自体、立法事実といいますか、そういったものをしっかり検証していく必要があるのではないかと考えられます。
また、優良誤認の場合と資料がなかったという場合は、規制が重なってしまう部分もあったりしますので、その辺はどうするのかという議論が新しい論点として出てくるということでありますし、措置命令との関係では、さらに合理的な資料を持たないということを立証するために別の作業も出てくるのではないかということが考えられます。
そういうこともありますので、2案というのは、また折衷的といいますか違う案ですけれども、先ほど申し上げた暫定的な部分とそうでない部分といいますか、そこの部分についてある程度手立てを講じるということで、訴訟時にさかのぼって合理的な資料を提出するといったことでもって、賦課処分を受けること自体については争えるようにするということをするということにすれば、最初に申し述べたような問題点というのがなくなるのではないかというような案でございます。
そういうことであれば、例えば今実際に措置命令の部分について現行の不実証広告規制を変更する必要もありませんし、また現行の手続と比べて事業者にとって過重な負担を新たに負わせるものではないと考えられないかということでございます。
そして、行政の立証の負担というのも、そこは軽減する対象というのは、ここはその場合には効果・性能に関する表示とするように範囲を決めるということも考えられるのではないかということでありまして、そういった不実証広告を対象とする場合ということなのですけれども、考えられる案というのがこの2つぐらいあるかなと考えております。
続いて、今日の申し上げる3つのうちの2つ目ですけれども、主観的要素の要否についてどうするのかということであります。これも第5回に我々が配布した資料ですので、7ページの説明については省略させていただきたいと思います。
議論の模様については8ページですけれども、主観的要素についてどういう議論があったのかということについて中間整理によりますと、不当表示の抑止という目的に照らして主観的要素が必要であるとの基本的な認識に立ちつつも、不当表示がなされた場合においては、原則として主観的要素を満たしているものとし、例外的に主観的要素を欠くことが証明された場合については対象から除外するというのが比較的多く見られた意見だということでございますが、その場合に、では、この議論の中でも前のページでいうとB案をどちらからスタートするのかということについて結果的には大した違いはないのかもしれませんけれども、原則をどちらで考えるのかということによって、どこまで注意義務を尽くしたということを立証するかということによって、例外的に主観的要素を必要としない場合、つまり前のページでいうとA案に限りなく近くなったりとか、むしろC案に限りなく近くなってしまったりとかということで、注意義務を尽くした場合というのをどういうように証明する、誰が証明するかということを考えないといけないということになると思います。
9ページの案は、これも以前お示しした例です。あるセレクトショップが輸入したときにどこまでそれを注意しなければいけなかったかということについての判例でございますが、考え方については10ページに整理してあるのですけれども、いろいろ書いてありますが、ここで言いたいことは、形式的な形で管理体制を構築しているからといって、表示に関する注意義務が尽くされたということは言えないのではないかということであります。
ただ、表示についてはそもそも事案によってさまざまでありまして、では、どこまで注意義務を尽くしたかということについては、残念ながら画一的な基準を設けるというのは難しいのではないか。言ってみればケース・バイ・ケースにならざるを得ないということだとは思うのですけれども、考え方としては先ほど申し上げたように形式的なところを整えていれば良いということにならず、一定の努力はしてほしいということなのですけれども、特に表示がまさにそのものずばりで誘引しているというような、主たる説明を負っている部分と、あとはいろいろな付随事項的な説明の部分ではそれぞれ注意義務のあり方というのは一般的に一般消費者に与える影響といいますか、そういった選択をさせることへの影響ということに鑑みて、必ずしも全部同じようでなければいけないということはないのだと思うのですけれども、より商品の選択に重要な部分についてはしっかり注意はしてほしいというような考え方ぐらいしかこの段階ではなかなか言えないのですけれども、そういった注意の仕方が考えられるのではないかということでございます。
最後に、3つ目、表示の主体ということでございますが、これは時間もないので一番最後のページにあります。11ページに複数の者が表示主体として認定された事案というような形で書いてありますけれども、誰を表示主体と考えるべきかについては、景表法の解釈はそもそも複数の者を表示主体とすることも認められるということでありますので、表示主体が単独であるかといいますか、複数であるかということにかかわらず、表示主体が複数にわたっているということであればそれぞれに「やり得」ということは存在するということで、二重取りとなるものはないのではないかということで考えまして、複数の者についても賦課をすべきではないかという考え方を提示させていただいております。
以上で説明を終わります。

○小早川座長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関して御意見をいただき、検討を深めたいと思います。最初に不実証広告の点、2番目は主観的要件のうち注意義務の内容にかかわる点、3番目は、同じく主観的要件のうちの表示主体の問題、この3つに分けて議論したいと思います。
まず、最初の不実証広告規制に係る表示を対象とするか、どういう意味で対象とするのかという点です。資料でいうと今の3~5ページの、その辺の部分であります。
時間は13時15分ぐらいをめどに考えております。
それでは、この点、御意見のある方はどうぞお願いいたします。
宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 意見というか、まずは質問ないし確認ですが、6ページの3つの考え方についてきちんと再確認しておきたいと思うのですが、これまでの考え方は不実証広告規制に係る表示をそのまま対象とするということですから、今ある不実証広告4条2項のものをそのまま措置命令と同じ範囲で課徴金も単純に課してしまうという、今のつくりのままでそのようにしてしまうというのがこれまでの考え方で、それについてI案というのは、従来の考え方だと、その後、合理的根拠が出てきた場合どうするのだということが問題になってしまうから、I案というのはこれを合理的根拠がないまま不当表示、合理的根拠を持たないまま表示するということ自体を不当表示の類型として追加するということですね。そうすると、I案というのはある意味すっきりしているとは思うのですが、そういう理解でいいですね。
第II案というのは、一応とりあえず不当表示で合理的根拠を持たずに、出てこない場合にはとりあえず課徴金納付命令を出すけれども、その後、手続的にそれを覆す、取り消し訴訟などで覆す余地を認める。確認ですが、そのような考え方として理解しておけばおおむね大丈夫でしょうか。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 はい。そのような理解で結構です。

○宮城委員 そうすると、I案について確認ですが、I案はすっきりしているのですけれども、対象が優良誤認表示ということですから、時には専門技術的な事柄が対象となってくるということで、これは注意義務違反、過失の考え方、主観的要件等のことともかかわってくるかと思うのですけれども、中間的事業者のような場合には、I案でもしいった場合には、例えば中間的事業者で余り規模が大きくなくて、そのような専門的知見について余り知識がないと、専門的知見は持っていないと。そして、上流の事業者から、これはこれこれこのような性能・品質を持っていますよといったこと、契約書、説明書などをそのまま、あるいは取引のときの説明などをそのままうのみにして、それは主観的要件次第ということになるのですか。
考えながらしゃべっているので、ごめんなさい。I案でいくと、合理的根拠を持たないで、上流の事業者の説明書などがある場合には合理的根拠を一応持っているということになるけれども、ただ、それをちょっと確認してみればわかったはずだみたいな中間事業者については、主観的要件の定め方次第で、中間的な余り専門的知見を持っていないような中間事業者が責任を負うか負わないかというのは変わってくる、そんなことになるのですか。

○小早川座長 では、消費者庁。

○消費者庁菅久審議官 多分注意義務があるかないかの話だとこれとは別かなと思っておりまして、左から順番に違いは、まず一番左は、今のやり方そのままで課徴金を課そうということでございますので、合理的根拠を出せと言って一定期間に出せなければ措置命令を出し、合理的根拠を出せなかったということで措置命令は確定する。その確定した措置命令に基づいて課徴金を課すということになれば、後で実は根拠があったのだとなっても課徴金として支払ったお金は返ってこない。だけれども、今の法律でみなすといって措置命令が確定して、あと自動的に課徴金が課されるという仕組みが法的にいいのかという議論がありましたので、I案のほうは最初からそういう合理的根拠を持たないで変な表示をするということを不当表示としてしまおう。そうすると、全て法的にはすっきりするだろうということであります。
ただ、そうすると後で課徴金を争えないということについては変わらないということになるかなと思いますが、そこが問題だということに対してII案のほうは、措置命令を出すというところまでは今までと同じように合理的根拠がなければ措置命令を出して表示をやめろということは言い、それに基づいて課徴金を課すのですが、その課徴金については後で争える。つまり、後で根拠があるということになれば、お金、課徴金については、合理的根拠がないとしたのが実は間違っていたとなればお金が返ってくるという手続を入れたらどうかというのがII案であります。

○小早川座長 I案は、新しい不当表示類型をつくるという表現になっていますが、ということは、言いかえれば、優良誤認、有利誤認という要件は外して、不実証広告という不当表示の類型をつくるということですね。だから、優良誤認でないということを幾ら立証しても、不実証広告に係る課徴金を免れることにはならないというところが、I案のみそですね。宮城委員が提起されたのは、では、そのときに、独立の要件としての不実証広告該当性があるかどうかというところで、川上のほうでしっかり言っているのだからそれは実証されていると見るのか。そうであれば、それは不実証広告に該当するかどうかの実体的な話ですね。それに対し、川上の事業者がそう言っていたのでそのとおり表示した、そして、川上で言っていたということだけでは客観的には実証があったとは言えないと、事後的には見られるけれども、でも、そのときの関係からして実証されていると信じて仕方なかったのかどうかとなると、それは、不実証広告という行為についての主観的要素の問題になるのではないか。整理になったかどうかわかりませんが、そういうことかなと思いました。宮城委員、その上で、いかがですか。

○宮城委員 整理していただいてありがとうございます。大体そのとおりです。つまり、I案の場合の合理的な根拠資料というのが、ただ上流の事業者から提供された資料をそのまま信じましたよということだけで足りるのか、それとも合理的根拠資料をよく調べればわかったはずではないですかという技術的な問題についても責任を負うことになるのか、それでどうなるのかという質問です。

○消費者庁菅久審議官 そこは今と余り大きく変わったことは考えておりませんで、今の4条2項の考え方でも合理的な根拠というのはいろんなものが考えられて、自分で実証したものもあれば専門家がかなり確立された見解というのもありますし、取引先のほうからの資料というのも、それはまさに意味のある実証された資料というのもあるでしょうし、どう見てもおかしいというものもあるでしょうし、それは今のまさに不実証広告規制のガイドラインに書いているような考え方というのは特に変えて案を提示したというつもりではありません。

○小早川座長 川出委員、どうぞ。

○川出委員 第II案の内容についての確認ですが、ここには、不実証広告規制の趣旨を踏まえた新たな手続規定を設けるとされていますが、それは、課徴金の対象はあくまで優良誤認表示であるという前提で、優良誤認表示に当たるかどうかの立証責任を事業者側に転換させるための手段として、現在の不実証広告規制の仕組みを使うものであるという理解でよろしいでしょうか。要するに、事業者側に一定期間内に合理的な資料を提示することを求めたうえで、提示しない場合には、その表示が優良誤認表示だといわば推定されるような形にして、課徴金納付命令を行い,その後、取消訴訟で争いになったときには、事業者側が優良誤認表示ではなかったことを立証しないと、課徴金納付命令が取り消されることなく確定する、そのような仕組みと考えてよろしいですか。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 そういう仕組みです。

○川出委員 そうしますと、この第2案は、不実証広告規制に係る表示を課徴金の対象とするのではなく、その対象はあくまで優良誤認表示であるという前提で特別な手続的規定を設けるという位置づけになります。その上でI案かII案かということですが、不実証広告規制に係る表示を課徴金の対象とするか否かという議論の出発点は、効果とか性能に関する表示については、それが優良誤認表示にあたることの立証が困難な部分があって、その立証に時間がかかるため、効果的に処分を行うことが困難となることが考えられ、そのことは措置命令の場合と程度の違いはあるにしろ、課徴金を課す場合にも同様に当てはまるという点にあったと思います。つまり、そこでは、優良誤認表示にどう対処するかが問題なのだということが議論の前提であったわけです。そうだとしますと、効果や性能に関する表示について優良誤認表示にあたることの立証が困難であるという問題が解消できるのであれば、あえてI案のように不当表示類型を追加するまでの必要はないように思います。もちろん、一歩進んで、合理的な資料のない表示自体を規制すべき直接の対象とするという点につき、合意ができているということであれば、それも1つの選択肢ですが、そこまでは難しい気がします。
そのうえで、1点気になる点は、仮にII案のような形をとった場合に、事業者に合理的な資料の提出を求めたけれども提出がなされなかったということで課徴金の納付命令が出されたけれども、その後、取消訴訟の段階で合理的資料が提出された場合、課徴金納付命令は取り消されることになるわけですが、それは行政法的にはどのような説明になるのでしょうか。この場合も、もともとの課徴金納付命令は違法だったので取り消されるという整理でよろしいのでしょうか。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 そこについては、また別途考えなければいけないのだと思います。

○小早川座長 命令が違法だったのかどうかというのは、学者は非常に関心を持つところです。実際上の意味としては、命令が取り消されると結局は課徴金をとられないで済む、あるいは返されるということかと思いますが、行政法学者である山本委員、いかがですか。

○山本委員 説明をどうするかということですけれども、基本的に推定ということであるとすると、それが後で覆されたという場合には、違法というように言わざるを得ないのではないかと思う。ただ、それは行政機関の側に何か注意義務違反があるということではもちろんないけれども、客観的には違法だということになるのではないかと思います。

○小早川座長 では、ほかにいかがでしょうか。
齊藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 私はこの2項、不実証広告のところについては、もともと優良誤認であるかどうかが当局のほうがなかなか示しにくいので証明しなさいということで入れられたものですから、課徴金をかけるということになると、普通ゼロからスタートして考えれば、それで妥当な表示であるかどうか、適切な表示であるかどうかということをその段階で争って、争って負けたら課徴金をかけるとかというような審判に似たような制度が設計される可能性があると思っています。
現在の法規制を前提としたときに、消費者庁がどのような判断基準、物差しを持っているかということが特に新しいビジネス、新製品についてはわかりにくい部分があると思っていまして、これが示されずに適切でないと判断することについての是非が問われる可能性があるのではないかと思っているのですが、そこはどのように設計される予定でしょうか。

○消費者庁菅久審議官 この手のお話、これまでも何度かあったような気がするのですけれども、景品表示法ですので、その基本は実際の内容と表示の内容が異なっているかどうかでございまして、それを一番御存じなのは、むしろ商品を売っている方ということでございます。ですので、個々の商品ごとに、例えば表示ごとにこれが正しいか、正しくないかを示すというのは、およそ不可能というか、そういうことは想定していない法律でございまして、一方、不実証広告規制の4条2項ができたときにガイドラインというのは詳細にできておりまして、どういう考え方のものを用意すればいいのか、しなければいけないのか。例えば体験談と言って何人かだけ出してもだめですよとか、そういうことをきちんと書いておりますので、ここの判断として何か新しいもの、もちろん将来的に改定する必要があるとかそういうのは出てくるかもしれませんが、今のところ特にそういうことがあるとは思っていないのです。

○小早川座長 先ほどの論点ともかかわるかと思いますけれども、ここで問題になっているのは、不実証かどうかの判断基準であって、優良誤認かどうかの判断基準ではないですね。齋藤委員、そういう趣旨でよろしいですか。

○齋藤委員 私の質問したのは今の座長の趣旨でありまして、特に最近STAP細胞とか証明されているかどうかというような、あれは極めて先端的な科学レベルの話ですけれども、それと似たようなことが起きると困るなと、そこはどう手当てされる予定かということです。

○消費者庁菅久審議官 しっかりと確立したものであれば、それに基づいてしっかりと表示をして消費者にアピールしていただければというのがこの分野ですが、これに限らずあらゆるものがそうなのだと思います。確立していない不確かなものについて確立しているかのように表示をすれば、そもそも表示上の問題が起きるということではないかと思います。

○小早川座長 鉛筆倒したらこうなりましたということではだめなのですね。だけれども、実験したらこうなりましたと言われても、その実験が本当の正しい手続を経た実験なのかどうかという問題はある。その辺は微妙なところはあるでしょうね。
ほかにいかがでしようか。どうぞ。

○宮城委員 今のところ個人的には第II案が座りがいいのではないかという気がして、後から客観的な科学的知見としてそのような効果・効能があったのねというようなところが出てきたら、それでも課徴金を課するのはどうなのかという気もしないではないので、今のところ私見としてはII案かなという感じがしております。
ただ、その場合、ごめんなさい、論点を広げるつもりはないのですけれども、前回議論した自主返金との関係でどうなるのかなと考えてしまって、課徴金納付命令の段階で資料が出てこなくてということで、自主返金をしながら、その後、取り消し訴訟で争った。そうしたら、合理的根拠が出てきて覆ってしまった、その自主返金の処理はどうなるのかなと、そこはそれで大丈夫なのかなというところが危惧されたというだけです。

○小早川座長 いかがでしょうか。こんがらがったケースですけれども。

○消費者庁菅久審議官 あくまで課徴金を課したところについて多分争いということになるのだと思います。自主返金はまさに自主でございますので、ある意味、調査に入られたけれども、別に表示はおかしくない、根拠もある。例えば今持っていなくても、調査すれば根拠は出てくると自信を持っていれば多分自主返金もしないと思いますし、そういう自主返金をしたところについてどうするかというのは、これを離れて民事上の話というのはあるかもしれませんけれども、そちらのほうだと考えればいいのではないかと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 補足いたしますと、議論している最中にこういうことを言うのも何なのですけれども、今までの不実証広告の例で言って、後から合理的な証拠が出てきたというのは今までの例ではとりあえず把握しておりません。事実として申し上げます。

○消費者庁菅久審議官 さらに追加させていただきますと、念のためですが、あくまでこれは表示と実際の性能が合っているかどうかですから、例えば一番最近有名になった空間除菌の話で言いますと、成分である二酸化塩素に効果があるというのはそのとおりでございまして、それについては何ら問題にしているわけではなくて、二酸化塩素に効果があると書いていても何の問題もないのですけれども、あれはそうではなくて二酸化塩素を使った商品を生活空間で使ってもばたばたと菌がとれますよというようなことを言っているので、それは根拠がないということでございます。表示との関係でございますので、そういう意味で科学的真理を追究するという話とは一歩離れた話になろうかと思います。

○小早川座長 それでは、齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 今の議論の前提になる一番初めの実態がこうでありますという説明があったところに関する質問ですが、4ページに表があります。この中に不実証広告、合計第1号で優良誤認110件のうち30件が不実証広告ということでありますが、平成25年度にそのうちの3分の2である22件が取り締まられているわけですが、これは何か摘発の方針が変更されたとかというようなことがあるのでしょうか。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁菅久審議官 たびたびで済みません。事件の数というのはそもそも変動があるので、そういう意味でちょっと動くのですけれども、25年については先ほどもお話がありましたとおり、まさに最近の空間除菌グッズ、あれが17社に対して措置命令を出しましたので、その17というのが加わっておりますものですから、25年が多くなっているということでございます。そういう事件があるとぱっとふえるという、見かけが大きくなるというのはあります。ただ、それはほかの優良誤認表示のところでも同じようなことですので、全体を平均すればそこは薄まってくるのだと思います。

○小早川座長 いかがでしょうか。今日の議論は、資料でいいますと6ページのI案とII案が提示されているわけで、それについてどう考えるかというところがポイントかと思います。今までの御発言からすると、基本は優良誤認ということで、不実証による措置命令についての現行法のたてつけもそうなわけですが、それと似た形での、優良誤認をベースにした不実証広告の取扱いの仕組みということでしょうか。実体としては優良誤認の問題であり、それについて不実証の場合も一応課徴金はかけられるようにしよう、だけれども、それが後ほど優良誤認でないことが証明されれば課徴金はなしという、II案はそういうことなのかと思いますが、どちらかというとそちらのほうの御意見が多い感じがする。というか、I案を積極的に推す御意見はありますか。
河上委員長、どうぞ。

○河上委員長 実は記者会見等で委員長の個人的意見はいかがですかということを何度か聞かれたことがありまして、そのときには、むしろ取引社会における企業の行為規範としては、みずから表示したところについては、それなりの合理的根拠を持っているべきである。合理的根拠を持っているのであれば、要求されればすぐに出せる状態であるはずなので、もし、そのようなことのない形で無責任に表示をしたという行為があったときには、それは許されない行為と考えるべきではないかと思いますと個人的には申してまいりました。
ただ、I案をとる場合であっても、II案をとる場合であっても、監督官庁としては優良誤認の疑いがあるということはある程度説明しないといけないはずであって、結果的にII案の場合にもそれを覆すということは事実上ほとんどないだろうという先ほどの参事官のお話もありましたから、ここはもう政治的な判断として決めても構わないのかなという気はしております。ただ、ここにいう合理的資料を示さないというときの合理的資料というのがどの程度のものを考えるのかというあたりが、恐らくI案をとったときに事業者の方は大変心配だろうと思うのです。常識的に考えれば、合理的資料というのは通常の社会通念に従えばそのような表示をしてもおかしくないというところが言えればいいわけで、厳密に真実であるかどうかということの実証まで要求しているわけではない。その点について了解さえすれば、I案でも事業者の方は安心していけるのではないかと個人的には思います。
ですから、ここまでの議論を混ぜっ返すつもりはないのですけれども、I案にもそれなりの合理性はあるのかなと個人的には考えているところでありまして、II案も政策的にはありかなという感じがしております。

○小早川座長 橋本委員、どうぞ。

○橋本委員 今さら消費者の立場ということで言っていいのか、かなりいろいろな法律的な立場からのお話があったのですけれども、今、委員長がおっしゃったように、消費者はその商品やサービスを選ぶときに、それについてきちんと業者が把握しているからこういう表示をするのだと思って買うわけですので、その合理的な根拠がないままにそれを表示しているとは考えずに買っている場合が多いと思います。ただ、いろいろ伺っていると、いろいろな法律的なところで考えなければいけないところはたくさんあるのだろうなと思いますけれども、もともとの不実証広告、根拠のないものを表示してほしくないという消費者としての意思というところを非常に考えて法律をつくっていただければと思います。
今さらながらということなのですけれども、一応ここら辺は確認させていただきたいなと思って発言させていただきました。

○小早川座長 私から言うことなのかどうかわかりませんが、先ほどから話があるように、行政側に優良誤認であることの証明をさせて、それで初めて課徴金をかけるのと、優良であることの実証がされていないということで課徴金をとにかく一応かけられるというのとでは、恐らく事業者にとっては雲泥の差だと思うのです。それを、II案もそこまでは踏み切っているわけなのですが、それがなぜ妥当なのかといえば、その根底には、不実証広告で営業することは許されないことである、実証していないだけなのになぜこんなひどい目に遭うのですかということは言わせませんよという思想が、II案の場合にもあるのだろうと思います。
岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 おくれまして済みません。不実証広告については、経団連の御意見も読ませていただいたのですけれども、今日配布されている資料の4ページを拝見しますと、不実証広告というのは措置命令事案の中でも相当の件数を占めているということがございますし、下の実際の実例で美容機器とダイエット食品の事例を見ましても、こういうことが世の中あってはいけないと非常に強く思います。
そこで、I案、II案ございますけれども、II案であれば産業界の方にも御納得いただいて、II案でいくことはいたし方ないというのか、II案でいくべきではないかなと思います。その場合に、誠実にやっている企業は必要なデータを収集して、そして説明をしようと試みると思いますので、この説明資料ですと、行政処分の後でも実証することは可能であるとなっていますけれども、実際に課徴金を課すタイミングなどについては、企業が誠実にデータを集めて説明をするだけの時間をしっかり配慮していただいて、その上で証明し切れないということであれば根拠のない広告であるとして課徴金を課すのもいたし方ないかと思いますので、もしII案でいく場合には、運用に当たってそういう企業側の情報の収集、整理、説明のための準備の時間の配慮を十分する必要があるのかなと思いました。

○小早川座長 私から一言。今の点は、I案とII案の違いではあるだろうとも思いますが、いずれにしても、ある時期不実証であったから課徴金をかけていいということにはならないのでしょうね。それは、課徴金納付命令の処分をする時点で不実証状態が続いているということは必要なのだろうと思います。だとすると、あとは、処分に至る事前手続の段階で、このように説明しているのになぜ不実証なのですかというやりとりをして、これで実証されたことにならないのなら別の実験結果を追加しますとか、そういうやり方が可能にはなるし、それが事前手続の中で期待されているということにもなる。しかし、それを余りやっていると事前手続に時間がかかってしまうので、そこはほどほどのところで行政執行していくということになるのかなと思うのです。
消費者庁のほうから何か。

○消費者庁菅久審議官 直接の話ではないかもしれないのですけれども、もちろん表示をする、特にお客様に訴えかける表示をするときには根拠を持ってやるというのが当たり前でありまして、根拠を持って普通多くの事業者の方は当然にやっていると思います。産地を書いたり、どこどこから仕入れましたと書くときは、ちゃんとそこから仕入れたということを確認して書いているのだと思います。
ただ、不実証広告規制は、ここに効果・性能という言葉が何度も出てまいりますけれども、あくまで違反に問うためには実際と表示が違うということを立証しなければいけない。そのときに例えば原産地の表示であれば取引先からの書類でありますとか、現にあるものを調べていけば違反の立証はできるわけです。それに対して、効果・性能については、何か書類があるというものでは基本的にはないわけです。つまり、その商品について性能があるかどうかでありますので、そうすると、事業者がその根拠を持っていなくても、結局性能が本当にあるかどうかを明らかにするためには検査したり監査したり専門家に鑑定したりいろんなことをしなければいけないということで、立証負担が非常に高い。したがって、優良誤認としての立証負担が普通の優良誤認の立証負担よりも物すごく高いのでそれを下げたというのが実は執行しているほうの意識でありまして、そういう意味ではまさに優良誤認という枠の中の先ほど御指摘がありましたような、実はやっているほうから見れば一番ひどい表示がこの分野、世界でありまして、そういうものが白ということにならないために立証負担を普通のレベルまで下げるための方法としてこの規定が入っているとむしろ意識して執行しています。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 ですから、追加しますと、我々の持っている考え方としては、そもそも言われてから証拠を集めなければいけないようなというのが間違いだというのは根底にございますので、そういう意味では時間と岩田委員はおっしゃいましたけれども、本来はそんなものは売っているときには当然持っていなければいけないものだということは考え方としてはございます。

○小早川座長 では、先ほどお手が挙がっていたので、山本委員。その後、先ほどの御質問の続きで岩田委員、そして、夏目委員。

○山本委員 では、手短に申しますと、I案の場合には、合理的な資料なく表示をしたということそのものに対して課徴金を課すということですけれども、そういう行為、合理的な資料なく表示を行うという行為がある意味で違法であるということは言えるわけで、だからこそ措置命令等もそれでかけてしまうことができるわけですね。ただ、ここでの問題は、課徴金を課す根拠としてその行為そのものを課徴金の賦課の根拠にできるかというところで、それが少し難しい、あるいは今まで考えられてきた違法行為による「やり得」を計算の基礎にして、計算の中に入れてとる課徴金とは、もし課徴金の制度をつくるにしてもかなり性格が違ったものになってしまうのではないかということだと思います。
ただ、先ほど言った合理的な資料なく表示してはいけないということは、先ほど座長の御指摘にございましたけれども、II案の中で言わば証明の負担、責任の問題として取り入れているということなのではないかと思います。ですから、恐らくそれで後で証明できるというのはかなりハードルが高いので、実際上の違いは余りないのではないか。そうだとすれば、筋として説明がなかなかしにくいI案よりはII案のほうがよろしいのではないかと私も思います。

○小早川座長 一般的なレベルでの話と、他方、岩田委員が先ほど言われたのは、具体的な案件の処理の過程でちゃんと公平、公正、フェアネスが保たれるかということだと思いますが、岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 事務局に御説明いただいたので、そのまま聞き流すと納得したと思われるといけませんのでもう一度だけ。
もちろん考え方としてはそのとおりだと思うのです。合理的な説明もできないような、データもないようなものを広告で売るというのはあってはならないことだと思いますけれども、でも、措置命令がかけられて、その後、いよいよ課徴金がかかるかどうかということになると、企業はそれはそれは真剣にどうやって説得材料を集めるかという作業はするはずですから、そこに資料がなければすぐということには多分運用上ならないはずだと思いますので、一般論としてですけれども、お願いしたいと思います。

○小早川座長 増田委員、どうぞ。

○増田委員 お話しさせていただかないわけにはいかないかと思いまして発言いたしますが、基本的にフライングをして販売をすることによって、それによって「やり得」があるというのは事実だと思います。後から反証するということに余り時間をとるということはあってはならないと思うし、基本的に「やり得」があったということは、ほかの企業が検証にすごく時間をかけてまだ踏み切らないでいるときに先に販売するという利益は少なくともあるはずなので、その部分というのは「やり得」と判断されるべきではないかと思います。その時点ですでに措置命令であれ、課徴金であれ課されること自体は何ら問題がない。ただ、反証するという道筋を残すというのであれば、それは非常に短時間であるべきだと私は思います。

○小早川座長 今の短時間という点は、恐らく、課徴金納付命令をどれだけの時間で出すかということと、それに不服があれば不服申し立てなり取消訴訟なりできるわけですが、課徴金納付命令には執行力があるので、差し当たりは払わなければならない、しかし、訴訟で何年かたってから取り返すということはあり得る。時間の問題というのは、そういういろんなところはあるかと思います。
  夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 ありがとうございます。私は当初II案かなと思ってはいたのですけれども、先ほどの委員長の御説明でI案も全くゼロではないというお話と、先ほどI案について山本委員の御説明がありました。I案とII案を比べましたときに消費者庁が出された資料ですけれども、I案について消費者庁は消極的かなとこの文章からは読みとれないわけではないなと思うのですけれども、立法事実の存在についてI案の場合ですと検証する必要があるというようにお書きになっていらっしゃいますけれども、4のデータでもって110件中30件の不実証広告の事実があると。22件というのは17引けば5件プラス1件ですから6件になりますか。そうすると、そんなに多くはない。
そうしますと、消費者庁としてはI案をこうして出されたときの立法事実の存在についての検証というのはどの程度お考えかなということをお聞かせいただければと思った次第です。

○消費者庁加納消費者制度課長 I案は新たな不当表示類型を追加するということになりますので、優良誤認、有利誤認プラス新たな類型ということになりますから、当然それ自体を規制するということの説明は必要だと。今の夏目委員のお話だと、例えば4ページの表でどうかということだと思いますけれども、これも必要だと思いますし、それ以外にも例えば表示をする際にどの程度根拠を持ってやっているのか、やっていないのかとか、そういった実態的な調査も場合によっては必要になってくるのではないかと思います。

○小早川座長 長田委員、どうぞ。

○長田委員 このI案の一番下の※印に書いてあるところですけれども、措置命令というか排除命令、広告をやめさせるに当たっては、4条2項は非常に効果的な武器だと思うのですけれども、このI案になると、これは4条2項というのはなくなる、なくさなければいけないということなのでしょうか。4条2項と不当表示類型は両者両立できるのか。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこはまだいろいろ検討の余地があると思いますけれども、I案は根拠なく効果・性能について表示する場合についてはずばり不当表示だとしてしまうという発想に基づいておりますので、その規律の対象とする事柄が現行の4条2項で記述しようとしていることとかなりかぶってくるところが出てくるのではないかと思われますから、そういった場合には先ほどの立法事実とも関係するかと思いますが、どこまでを新たな類型でやるのかということは当然整理しなければいけない。場合によったら、規律がかぶってくるとどこかを整理するということも出てくるのではないかという趣旨でございます。

○小早川座長 では、宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 消費者庁は不実証広告に関しては平成15年に運用指針を出されていると思うのですけれども、それによると先ほどから出ている期間の話については、措置命令との関係では調査に入ってから15日間に出さなければいけないということになっていますね。その点は期間の関係では、課徴金納付命令についてもこれと同じになるよという話であるのか、それともこれを伸ばしたり、あるいは課徴金納付命令との関係ではまた別の期間を設けるというようなことが考えられるのか、そのあたりはいかがでしょう。

○消費者庁菅久審議官 正直なところ、前の表にありました流れ図、措置命令とか課徴金納付命令の間にどれだけ時間がかかるかというのは、まだ厳密に実は考えているわけではありませんけれども、今、御指摘がありました14日間は、今の4条2項の運用で合理的根拠を出してくださいというお願いをして、基本的に14日間ぐらいで出してくださいということにしています。それは措置命令をする前提としての手続ですけれども、それではなぜ14日ぐらいになっているかというと、そもそも持っているでしょうということなのです。ですから、持っているものを出してくださいなのでそのぐらいの期間。つまり、そこで新たに実験をするなどということはそもそもあり得ない、考えていないということですので14日間ぐらいで運用しているということであります。
ですので、課徴金納付命令について例えば消費者庁の調査に入ってから、これまで何もしていなかったのだけれども、改めて実験をして検証するということを認めるなどという前提に立てば相当な期間が要るでしょうし、そうではなく、ごく普通に手続を進めていくということであれば、そんなに長い時間ではなく、間に合うのだったらどうぞという運用になるということかもしれません。

○小早川座長 丹野さん、どうぞ。

○国民生活センター丹野理事 前回、課徴金を実効足らしめるためには事業者の資金の担保というお話をさせていただいたときに、加納課長から、迅速な執行を持って考えますという趣旨の御発言があったと思いますが、不実証広告に関しては、相談の実態から言いましても本当に課徴金を払ってくれるようなちゃんと資力のある業者さんではない場合もあるように見受けられますので、一定程度の時間というのは、長い時間を置くと効果がないことになるのではないかと思っております

○小早川座長 実証資料を出す期間の問題ですが、処分をする前提としてどれだけをいつまでに出してくださいと言っているのにそれが出なければ課徴金の処分はできるというたてつけと、処分後に、それこそ、新しく実験したら前のデータでよかったのですというようなことを言って裁判所で争えるかということは、これはまた別で、後のほうは、第II案ではできるということだと思うのです。
先ほどから、消費者の立場というのが俄然強く出されてきたようなところもあるのですが、いかがでしょうか。ここは全体がII案でまとまったというところまではいかないように思いますけれども、ただ、他方でI案については、これが行為規範違反の問題であることは確かなのだけれども、ほかの優良誤認についての課徴金、優良誤認に基づく「やり得」を前提にした課徴金と性質がかなり違うのではないかといった基本的な疑念は出されている、というあたりかと思うのです。
はい、どうぞ。

○宮城委員 申しわけないのですが、今の言われたのは私の理解はどうなのかなと思われたのは、後から実験というのはいけないのではないでしょうか。やはり課徴金納付命令が出る時点で、少なくとも客観的なエビデンスが論文などは専門文献などは存在して、ただ、それが見つからなかったということならわかるけれども、後から実験などということを認めるなどということを始めると、例えばこの問題はよくあるだろうなと思うのは健康食品などで、その実態としては販売事業者の設営している研究所がにわかに論文をつくって出してきているみたいなのがこの業界はあったりするので、そういったことを考えると、後から自分のところがやっている研究所に論文をつくらせてみたいな実験をやらせると、つくらせることは頻繁に起こりそうで、そういうことを認めていると面倒になるのではないかという気がするのです。やはり客観的な専門文献というのは、その時点で存在していなければいけないのではないでしょうか。

○小早川座長 そこは、このI案とII案の意味自体にかかわるところですけれども、消費者庁のほうでは、この案をお出しになったときの考え方はどうですか。

○消費者庁菅久審議官 II案は基本的には今までの考え方、これまでの考え方という一番左側とII案の違いは、むしろ後で裁判で争えるかどうかというところが違うと考えていますから、基本的には措置命令を行う前に、例えば合理的根拠を出してくださいと、まさに効果・性能についての不当な表示があるという場合に、措置命令を行う前の段階でまず合理的根拠を出してくださいといって、出せなければ措置命令を出すわけですね。措置命令は確定しますから、そこで確定したら措置命令に基づいて課徴金納付命令を出すというところまで行ってしまうのだと当然思っておりました。
ただし、これまでの考え方がI案ですと、その後、もう二度と争えないということになりますから、そうではなくて実は後から実験というのは別に課徴金納付命令の前までにやらなければいけないとかということではなくて、訴訟の段階で出して争うのだったらどうぞ争ってくださいという、そういうような対応を考えていたのです。

○小早川座長 川出委員、どうぞ。

○川出委員 表示の根拠を見つけるために後から実験するといった対応を事業者がすべきではないというのはその通りだと思いますが、しかし、第I案と違って、第II案は、課徴金の対象はあくまで優良誤認表示だという前提ですから、事後に実験をして、表示をした時点においてそれが客観的に優良誤認表示ではなかったということを立証できたのであれば、それは反証として認めざるを得ないのではないでしょうか。後から実験して資料を出すことがだめだということにすると、結局、それはI案にならざるを得ないように思います。

○小早川座長 資料をお出しになった消費者庁の認識は先ほど菅久さんが言われたとおりであるとして、この会議ではいろいろな御発言があり、先ほど私はそれについてまとめてみたのですが、宮城委員の御発言があったので、その部分はちょっと私の認識を修正しなければならないかもしれません。
この件について、この程度でよろしいですか。

○河上委員長 全体としての意向は、表示をしている段階で事業者がそれにふさわしい合理的根拠は持っているべきであるという行為規範は動かないとするもののように見受けられます。これはI案をとってもII案をとっても言えることだというあたりについても皆さんの意見の一致があると思います。
では、さらに真実と表示とが後から一致していたことが判明したときに、課徴金を課したという行為についてもう一度見直すチャンスを制度的に持っておくかどうかというあたりが問題です。実際に覆る可能性は非常に小さいけれども、罰金というか、課徴金を課す以上は制度の上でもう一遍覆すチャンスを置いておいたほうが事業者としては安心ではないかという配慮がある程度はあるのだろうという気がいたします。
ただ、そうは言っても消費者庁、監督官庁が実際にこれを運用しようとするときは、恐らく不実証広告として課徴金の対象になるのではないかと疑う時点で、ある程度合理的根拠もないしにこういう表示をしているのではないかということを疑わせるだけの間接事実は入手しているはずで、しかも措置命令を出す前提で合理的な根拠を出してくださいと言ってなお出せなかったというような状況にまで進んでいるわけですから、どこかでこれはもうみなしてしまうという段階をつくっておかないと、なかなか後々いつまでも覆されるという状態にするのは望ましくはないのではないかと思われます。ですから、今はわからないけれども、これは効くのだというような言い方をしても、それはだめだということでしょう。
今日の会議の場でI案、II案のどちらがいいかというのを決めてしまうのはまだ難しいかなという感じがいたしますので、もう少し考える時間を持って、どこかで決断したら良いと思いますけれども、いかがでしょうか。

○小早川座長 一番最後に言われたところは私も同感なのですが、これは事務局に伺うのか、委員長に伺うのか、時間的にはどうでしょうか。さらにもう少しこの点について検討を続けるという余裕があるかどうかです。

○稲生参事官補佐 事務局から申し上げます。
時間的にはかなりタイトではございますが、もう一度議論する機会を設けることはできるとは思います。十分に時間がとれるかどうかというところは難しいかもしれませんけれども、時間をとること自体は可能かと思っています。

○小早川座長 はい。それでは、山本委員、手短にお願いします。

○山本委員 手短に申しますと、これは制度の問題というより運用の問題になってしまうのかもしれませんけれども、II案で言った場合に例えば訴訟の段階で反証を認めるということにはなるのですけれども、その場合にも当然事業者は広告をした時点でちゃんと資料を持っていなくてはいけない、本来持っていなくてはいけないということが前提となって手続が進められると思いますので、そこで反証のための長い時間を手続の中で保障しなくてはいけないということではなくて、あくまでもう既に事業者のほうは十分持っていなくてはいけないはずだということを前提にして、手続は迅速に進めていただくということになるのではないかと思います。

○小早川座長 そこは裁判官の心証の問題ということになるのかもしれません。
それでは、とことん議論をしたいという気はするのですけれども、そこは、今日のところは御容赦いただいて、私は先ほどまとめかけましたけれども、それに加えて後の御意見もあったということで、さらにもう一度検討の機会をつくっていただきたいと思います。
事務局あるいは消費者庁で、今日出された論点についてさらに整理をし、できるだけ効率的に議論が進むように準備していただければと思います。
どうぞ。

○消費者庁菅久審議官 これから考えていくために御参考として、先ほど委員長から話がありましたが、実際にどうやって調査をしているかという話です。措置命令が最後に不実証広告規制の4条2項を使ってやった事件が出ているのです。当然ですが、まず最初から証拠を出せという命令をするわけではなくて、まず表示を集め調査に入り、どう見てもこの表示と中身とは違いそうだなとなったら、場合によっては、その段階である程度専門家の意見も聞いて、それで実際上は事業者のほうに任意で、例えば、根拠はありますかという調査から入ります。通常は多くの事業者の場合はこういうのですよと出してくれますから、そうすると、それ自体である程度目星がつきます。そこで思ったのと違って、実際ある程度ある場合もあります。そうすると、それはもう調査はおしまい。そこでないということになって、その段階でまた必要に応じて専門家の意見などを聞いた上で、あとは手続が必要ですので、もう一度、実際に正式に合理的根拠を出してくださいという手続を踏んで、出てこないか、または出してきたものについて根拠になるかどうかを確認した上で、ならないとなると次の弁明の機会の付与という手続に入り措置命令に行くという流れです。
したがいまして、むやみに合理的根拠の提出を求めるわけではありませんし、実際措置命令というものがとられているものでは相当早い段階で消費者庁としては根拠がないということがわかった上で手続を順番に進めていっているというのが実際であります。

(2)主観的要素について
1) 主観的要素(注意義務の内容)について

○小早川座長 それでは、大分予定の時間を過ぎてしまいました。次のところへ進みたいと思います。主観的要素のうちの注意義務の内容に関する点でありまして、資料では7~10ページまでに当たります。時間はあと15分ぐらいでお願いできればと思いますが、御意見等おありの方は御発言をお願いします。
宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 この点に関しては大きな筋道としてはB案がいいのではないかということで何となく集約してきたのではないかと、私の認識としてはそうなっております。私としてもB案あたりが穏当なところで、原則このB案の理解ですが、不当表示があったということで一応それは基本的にその認識もあったであろう、あるいは過失があったであろうという前提に立ちつつ一定の例外的にそれを除外するということではないかと思いますので、ただ、これも前から議論が出ているとおり、現実的にはその例外要件は何をもって例外とするのがということの定め方によって、どなたか御意見言われていたとおり、A案に近づくのか、C案近づくのかということになってくるので、議論の焦点としては、このB案で例外要件を具体的にどういうつくりにするのか、そこが大事なところかなと考えております。今のところ、そんなところです。

○小早川座長 資料でいうと10ページに、何を調査すべきか、何をどこまで調査すべきかということについての整理が書かれておりますが、ほかにいかがでしょうか。
長田委員、どうぞ。

○長田委員 10ページに書かれている、結局は画一的な基準というのが難しく、それぞれの場合に応じた考え方になるけれども、基本的な物の考え方というのが例えば9ページの裁判例みたいなものということであれば妥当なのではないかなと思います。

○小早川座長 裁判例は、特定のケースが出てきて、これはどうだという判断になるのですが、恐らく事業者側の立場からすると、その前に一般的な物差しが欲しいということかもしれません。いかがでしょうか。
齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 先ほどありましたように、B案は考え方というか、事例の積み上げによってA案に触れるか、C案に触れるかということなので、AとCを対立的に考えると、私はC案だろうと思っています。その中でBに近づけるものが何かあるということだと思うのです。
何回も今まで出てきていますけれども、普通の事業者はコンプライアンス確保のために社内にルールを決めています。これは大企業であれ、中小企業であれ、みんな一緒だと思います。特にルールを徹底しやすいのはむしろ小規模のほうでして、そこの社長が目を光らせていれば全部届く範囲にありますから、なかなかやりにくいという面もあります。
その上で、その自主ルールを破って行われた法律違反に課徴金をかけるということになるわけなので、ルールはあるけれども、運用がずさんでよかったということにはならないわけであって、当然適切に運用されていたかというのは問われるはずなのです。その問われるレベルがどこまでなのかというと、いろいろこれはあるので事前に示されれば一番いいと私は思っているのですけれども、例えばISO9000のレベル、認証を取得するというレベルなのか。その中に当然表示に関するルールがきちんと組み込まれているというものがあるわけですが、そういうことを前提として、そういうルールを求める水準にするのか、あるいはほかの水準があり得るのかということを具体的にやっていけば、そう違和感なしにコンプライアンス確保の体制ということについては合意が得られるのではないかと思っております。
9ページの東京高裁の判決を書いておりますが、これは最後の2行目、括弧の中に明朝体で書かれていますけれども、これらの義務は容易に履行できるものであって、原告に困難を強いるものではなく、また時間や費用がかかるものではない。これは判決の中に多分このまま書かれているのだと思います。後ろのほうにかぎ括弧がありますから。だとすれば、合理的な努力がなされれば、それについては認めるよという判決ではないかと思った次第です。

○小早川座長 岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 私も齋藤さんと同じ意見ですけれども、AかCかと言えば、基本はCだと思うのです。これは日本のほかの課徴金制度と比較しても、そもそもカルテルとか悪意を持ってやるということが明らかなものとか、公認会計士法の課徴金の対象者も主観的要素を入れておりますから、日本国内の課徴金制度は、主観的な要素が実質全て入っていると私は理解しました。もし違っていれば先生方から御指摘いただきたいと思うのです。
諸外国の課徴金制度もいただいた資料で見ましたけれども、行政機関が直接に課徴金を課すケースは、韓国は主観的要素のところがバーになっているのでどういうようになっているのかよくわかりませんが、それ以外の国には主観的な要素があります。行政機関が直接に課徴金を課すのではなくて、裁判所に請求するようなケースについては主観的要素はないのですが、それは裁判所の裁判の中での裁量で処理されているのではないかと思います。ですから、諸外国の法制を見ても主観的な要素を課すというのが通常の考え方かなと思います。
立証責任を転嫁するということの必要性というのは、C案にしたときの行政効率の問題かなと思いますので、それがC案でいけるのであればC案でということだと思いますけれども、今の行政体制ではC案は非常に難しいということであれば、実質的にはC案に近いレベルになるように。ですから、B案としていく場合であっても客観的な要件としてハードルを高くするとA案になってしまいますので、実質的にC案に近いものであれば行政効率上の必要があって、どうしてもC案が難しいということでしたら、そういうこともあり得るかなと思います。
以上です。

○小早川座長 ほかはいかがでしょうか。
宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 たびたび済みません。この10ページの注意義務についての一応の考え方について、具体的にどう理解すればいいのかなというところが自分の中で余り理解できていないのですが、私の感覚だと、事業者の規模であるとか、あるいは流通過程のどこに位置するのかによって具体的な注意義務のレベルもかなり違ってくるのかなという感じがしております。
つまり、例えば事業者の中でも、前から言っているのですが、町の小売商店であるとか、その辺のコンビニエンスストアであるとか、そのあたりの経営主体、個人商店みたいなところで確認能力というのは、例えば大手事業者が製造販売しているパッケージ商品のようなものについては、消費者と同じレベルの注意能力しかないのではないかなという気がしておりまして、そのあたりについて余り厳しくしてしまうとそれも問題かなと。そこをどう考えればいいのかというのは非常に悩ましいと思っているのです。基本的にはそのようなパッケージ製品だとか、あるいは家電製品であるとか、パッケージとして確立した製品については、基本的にはそれは製造販売元がそううたっているときに、それよりずっと下流の小規模事業者、ごく小規模事業者が小売販売するようなところが、それを注意できるのかなという疑問がその点はあります。
だから、どう考えるのか考えがまとまっていないのですが、そのあたり、もしこんなような処理になるのだよというようなことが、消費者庁が10ページの案で運用が実際問題どういうことになってくるのかなというのは想像できないので、ごめんなさい、漠とした質問です。御説明いただけるとありがたいのです。

○小早川座長 消費者庁、いかがでしょうか。

○消費者庁菅久審議官 10ページの資料の下から5行目あたりのところから「個々の事案における事情(不当表示の態様等が一般消費者に与える影響の大小や、調査確認義務の負担の大小)」と書いておりますけれども、いろんな要素があると思いますが、今おっしゃったような、1つは店の種類というのが多分あるのだと思います。この前のページにある高裁判決ですと、ここがセレクトショップということを銘打っているところなのだからこのぐらいのことをやったらという言い方をしていますので、そういう店の種類もあると思いますし、「不当表示の態様等が一般消費者に与える影響の大小」と書いたところは、これは景品表示法の表示ですので、どういう表示をしているのか。つまり、すごくアピールして訴えてキャンペーンでどんと出すような表示だったら、それに相応する注意義務、そうした注意をしなければいけないでしょう。そうではなくて、そういうものではないものだと、例えば、単に値札のほうにちょこっと書いていることだったら違うかもしれないとか、少なくともここに出ている例でいきますと、どういう表示をしているのをするのかというのと、そのお店がどういうものなのかとか、そういうことによって変わってくるところはあるだろう。だけれども、先ほど齋藤委員からもありましたとおり、まさにそういうことを踏まえた上で合理的な注意義務をいたしているかどうかということになるのかなということで書きました。違えば補足していただいていいですか。

○小早川座長 いかがでしょうか。今の点は確かに重要な点で、結局はそこが問題なのかなと思います。C案とB案の違いということにもなりますね。C案というのは、これも先ほどの話と同じで、行政処分段階で主観的要素を要件とする、それを行政としてもきっちり認定した上で処分をする、しかし、その先で裁判所に行ったら、裁判所ではまたそれをもう一度やり直してみるわけですね。そこには、多分、特にどういうところを見ろという指示はなくて、一般条項が置かれるというだけの話かなと。
B案はそれと違う。そういうように結局何でも問題にしますよということではなく、何か一定の立証事項を定めて、それを事業者側がきちんと出せればそのときは免除しますよという話ではないかと思うのです。したがって、立法の仕方として、B案の場合には、ここでもやはりケース・バイ・ケースですというだけではB案にはならないのではないかなという気もするのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 今の座長の問題提起でありますけれども、どの程度の注意事務を見るか。今はかなり難しい問題ではないかと今のところ私どもとしては思っておりまして、10ページで問題提起から幾つかペーパーで書いておりますのは、もともと主観要素の問題が出てきましたのは、課徴金を課すに際しても、事業者としては結果的に不当表示であったとしても、その不当表示をすることについてやむを得ないといいますか、帰責性がないような場合もあり得るので、そういった場合にまで一律に課徴金を課すというのは酷ではないというような問題意識から検討してきた。
その際に、できるだけ客観的に何らかの指標があればいいですねということで、当初は管理体制みたいな話があって、ずさんなものなのか、それともきっちりやっていたけれども、避けられなかったのかというようなところを1つメルクマールにするということもあり得るかと、ペーパーもそんな感じで書いてみたのです。
管理体制については、いかに立派な管理体制を装っていても、実質が伴わない場合には意味がないのではないかというような御指摘も委員の中からありましたので、そこでいろいろ裁判例とかももう一回読み直してみて、私どもなりに考えてみたところ、実質をある程度見ざるを得ないのではないかというようなことで現時点の検討はそこまでということになるわけですが、やはり一定の調査確認義務と書いておりますけれども、そういう実質を見る。その実質は先ほど宮城先生もおっしゃっていましたけれども、かなり個別の事案によっていろいろ認定は左右されるのではないかなというような気がいたしておりまして、そこももう少し明確にすべきだという御意見があれば、それはそれで御意見として承りますし、あとは例えば判断メルクマールとしてこういうところを着眼すべきではないかというような御意見等をいただきましたら、それも踏まえてまた検討させていただくということになろうかと思っております。

○小早川座長 いかがでしょうか。
宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 今の加納さんからの御説明ですが、質問ですけれども、今のはコンプライアンス体制のことは客観的な視点というのはやめておこうということであるのか、どうなのかということなのです。私の意見としては、何もそちらも捨てる必要はなくて、それだけで決めてはいけないということではないかと。つまり、この10ページの基準によるにしても、さまざまな事情を考慮するということにしても、やはり前提として表示に対するコンプライアンス体制というのはきちっととった上で、さらに進んで実質をそれに加えて判断していく、総合評価していくということなのではないでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 結論としては、今の宮城先生のおっしゃったこととそう大して変わらない認識でおりますけれども、管理体制の構築というのは1つの考慮要素にはなるのではないかと思いますが、最終的に帰着するところはどういうような調査確認をしたのかというところで実質を見る。その際に、管理体制の構築の度合いでありますとか、その他の諸般の事情もいろいろ見るというようなことになるのではないかと思います。

○小早川座長 法律に書く場合に、例えば、表示と実質が違っていることについて認識できなかったことにやむを得ない事由がある場合とか、そういうことなのですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこは最終的には何らかの形で条文に書かざるを得ないとは思いまして、そこは書きようをいろいろ工夫するということになるのだろうと思いますが、明確にこれだと列記をできればそれに越したことはないのでしょうけれども、現時点ではなかなか難しいのかなという印象を持っておりますので、座長がおっしゃったように、何かやむを得ないとか、正当な理由がないとか、そんなことで読み込んでいくというのが1つの形としてはあるのではないかというような気がいたします。

○小早川座長 先が見えなかったものですから、その辺なのかなと思ってよけいなことを申し上げて今の答弁をしてもらったのですが、いかがでしょうか。ここでは、そのような議論がされて、それで大勢としてはB案かと。B案が何を言っているのかということも必ずしも単純明快ではなく、いろいろ理解はあるかと思いますけれども、皆さんのご意見は、この提示された考え方の中では、大筋、B案ぐらいでやむを得ないかということかなとは思うのですが。
どうぞ。

○齋藤委員 B案と言われますと、最初に私が申し上げたように、相当A案に近いB案もあるでしょうし、C案に近いB案もあり得るので、今、私が聞いた範囲ではC案を外さないと、その上でB案がどこまでできるかというようなことに私は感じましたけれども、いかがでしょうか。

○小早川座長 増田委員、どうぞ。

○増田委員 私はA案をもとにしたB案という意見もあるということをお伝えしておきます。基本的に、景表法ですので、どういう事情があれ誤認して被害をこうむるのは消費者であるわけで、その誤認させた理由が何なのかということを考慮する必要はあるかと思うのですけれども、やはり現実的に理由がどうであれ間違った表示を見て購入してしまったという事実はあるわけですから、私はA案をもとにしたB案と考えております。

○小早川座長 純粋なA案でもないし、純粋なB案、純粋なC案ということでもない。純粋なC案というのは何かわかりませんが、故意または過失といった社会的非難に値するようなものが特にそこになければ、結果が間違っていてもそれはしようがないということだとしますと、そういうものではないだろう。その意味で、A案でもC案でもない中間だということかと思います。それでもどちらに近いかというのはありますが、先ほどのような条文にそれをあらわすこともなかなか難しいのではないか、そうなると、あとは具体的な運用の場面でということになってしまうかもしれません。ただ、制度論としては、A案でもなくC案でもない中間の線で考えてはどうかということで、今のところはその辺でしめておきたいと思いますが。
どうぞ。

○齋藤委員 表示が間違っていれば改めろと、これは確かだと思います。ただ、課徴金をとるかどうかということになると、少し違った側面があるだろうと思うわけです。

○小早川座長 石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 中間整理のところで議論したことなのであれだと思いますけれども、ヒアリングをやりましたので、金商法も独禁法も主観的要件は要らないということで、そこは確認されていると思います。
主観的要素を入れるということになってくると、ほかの課徴金の算定方法だとかいろんなところにも関連してきてしまう。公認会計士法のほうは故意、相当の注意を怠ったという主観的要件を入れているのですけれども、そこは故意の場合は監査報酬相当額の1.5倍ということですので、そのような悪質なものを中心に組み立てるということだとすると、主観的要件を入れた場合に売上全体というような算定方法になってくるし、そういうものをつくろうとしているというわけではないというのが中間整理だと思いますので、そうだとすると、ほかの独禁法、金商法みたいに主観的要件が要らないとしながらも、表示ということの特性をいろいろ考えると全く要らないというわけにもいかぬだろうということで、公認会計士法の表現でいえば相当の注意を怠らなかったのだけれども、わからなかったという場合については除くみたいな話で来ているのではないかと思いますので、だからB案で例外については注意義務の違反とは言えない場合というまとめでいいのではないかなと思います。

○小早川座長 では、山本委員、手短にお願いします。

○山本委員 手短に申しますと、A案から出発するか、C案から出発するかという問題はあるのですが、重要なことは、最初に宮城委員が言われたかと思いますけれども、要は事業所の側には景表法違反をしないようにかなり高い注意義務が課されているのであるということでそこのところについて大体のコンセンサスが得られれば、Aから出発しているのか、Cから出発しているのかというのはそれほど大きな違いはないのではないかという気がいたします。
形としては、先ほど座長が言われましたけれども、恐らく原則例外の関係を明確にするためにやむを得ない事由の場合に例外を認める等々の一般条項を定めるというような形に形としてはなるのではないかと思います。

○小早川座長 それでは、この点、一応の議論は尽くしたと考えたいと思います。

2)  主観的要素(表示主体)について

○小早川座長 最後の点ですが、主観的要素のうちの表示主体の点、これは資料の11ページ、12ページです。残された時間は余りございませんが、御意見のある方はどうぞお願いします。
宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 この表示主体の問題については、私の感覚だと課徴金等の関係では、ある程度狭めることも考えていいのではないかという方向と、逆に広げてはどうかという方向、2つの感覚を持っています。
まず、限定も考えられるのではないかというのは先ほどから申し上げている問題でありまして、この11ページの東京公判とか、その下の百貨店、小売業者に対する排除命令、このあたりになると、流通過程の全ての業者が対象になるのだということになっておるのですけれども、確かに条文のつくりではそうなっているのかもしれませんけれども、どうなのかなという感覚がどうしてもあって、規模基準で切ればいいのかなというところもあるのですが、比較的小規模の、それは注意能力でも切れるのかなという感じもするのですが、場合によっては、先ほどから言っているパッケージ商品みたいなもの、何の疑問もなく上から流れてきたチラシやパンフレットを使っているというようなものに関してどうなのだろうなというところはあります。ただ、そこは実際の運用で規模基準であるとか、注意義務の程度の問題でコントロールできるのだと消費者庁がおっしゃるのなら、それはそれでということかもわかりません。それが1つの疑問であります。
それから、逆に前々回の申し上げた、広げることも考えてはいいのではないかというところですが、それは前々回に申し上げた楽天のネットモールの問題でありますが、あのケースはまだ調査中ということだと思うのですけれども、だから、事実未確認ですけれども、一般論として、そのことに限らず、現行景表法の条文では確かに自社製品の販売する場合の広告表示でなければならないという枠がかかっていると思うのですけれども、その関与形態によっては特にネット取引というのが従来の状況を大きく変えてしまっていて、現在の景表法のつくりというのがネット取引が特に問題だと思うのですけれども、その取引形態に、現実の実態に追いつけていないのではないかという感じを強く持っております。例えばネットモールの問題でありますと、ネット広告を行うための不可欠の共通プラットフォームを持っている事業者であって、かつ不当表示の内容について事実上指示しているとか強制しているとか、そういった程度の関与が認められる場合については、場合によっては共通プラットフォームを提供しているところのネットモールみたいなところについても課徴金を課す可能性も検討されていいのではないかと、とりあえずそういうように思っています。
ネット取引の関係ではほかの問題もありまして、例えばネットオークションというようなものについては、これはC to Cの取引と一応は理論的には整理されると思うのですけれども、実態としましては、隠れ事業者みたいなところもありまして、それについては経産省の電子商取引のガイドライン準則などでは、100件以上取引を年間に行っているとかではなかったかと思うのですけれども、事実上事業者と見られるようなものについては特商法の関係で対象となるとか、そんなようなことも考えられていて、そういった隠れ事業者、ネットオークションにおける隠れ事業者みたいなものはどうするのかというところであるとか、あるいはこれもまさにC to Cの問題ですけれども、いわゆるアフィリエート広告で、これは製造元事業者がやらせているアフィリエート広告というものもあると思うのですけれども、あるいは製造販売事業者ではなくてアフィリエート広告を一括してASPがやらせているというような場合、そのようなASPがそのアフィリエート広告、製造業者ないしはASPのようなところがアフィリエート広告の内容をある程度指導してやらせているというようなところについては、その背後の製造業者はASPなどについても課徴金を課されるというような可能性も検討されていいのではないかなと。今のところはそういった漠とした考え方なのですが、要するにネット広告の実態に合わせて課徴金対象も考えなければいけない時期なのではないかという意見を持っています。

○小早川座長 消費者庁、菅久さん、どうぞ。

○消費者庁菅久審議官 幾つか現状のことについて申し上げますと、まず流通経路全体が対象になるということはまずないと思っておりまして、というのは、そもそも事業者が自己の商品について消費者に対する表示をした人が対象でございますので、消費者に対する表示をしていない人はそもそも対象ではないということになります。
ですから、例えばスーパーマーケットが自分の売る商品についてチラシをつくって宣伝すれば、そのチラシの中に変な表示があればスーパーマーケットが違反ですし、商品そのものをメーカーがつくって包装もして、そのまま流して小売店は店に並べただけで売っていれば、その表示に不当な表示があれば、当然メーカーが消費者向けの表示をしたということになります。ですので、ここで11ページの下で出ているのはある意味では特殊な例でして、百貨店と小売業者がある意味では共同で販売し、共同で表示をしているみたいに思えるものについては両方のものが対象になり得るといことでありまして、基本的には自己の供給する商品と言えるか、また表示を決めているのかというところで結局判断するということになろうかと思います。
ネットモールについては確かに新しい話なのですが、似たようなことは既に過去からいろいろあるかと思っておりまして、例えば百貨店内の店舗とか、ショッピングセンターでもアウトレットモールでも皆さんそうでありまして、そういうときに例えば百貨店内の店舗が自分の供給する商品について不当な表示をしたときに百貨店に対して課徴金がかかるのかという話ですが、これは先ほどからの議論の一つと同じように、注意義務を課しようがない。百貨店は注意義務をいちいち商品全部にやりようがないということにもなるでしょうし、そこはなかなか難しいかなと思っております。
ですので、先ほどのネットの関係で言いますと、いわゆる共同販売をするために共同で表示をしているみたいに認定できれば、通常はモールの運営者というのは景表法の対象にはないと言っておりますが、そういう共同販売で共同で表示してキャンペーンしているみたいなことがもちろん事実関係として認定できれば、両方とも景表法の対象になり得るとなろうかと思っております。

○小早川座長 今のお話は、現行法の解釈運用でできるところは一部あるということだと思います。ただ、宮城委員の御発言の中には、もう少し深いところもあるわけですが、この段階で景表法の名宛人を広げるというのはなかなか大変なことかとは思います。それと、宮城委員が最初に言われた、現行法でとにかく網にかかる範囲の事業者であって、しかし、パッケージ商品でこれはしようがないねというのは、おそらく、主体として外れるのではなくて、先ほどの意味での主観的要素の面で外れるという部分が多いのではないかという気もします。
時間が、ぎりぎり14時15分になってしまいました。2~3分の延長は許されるかと思いますが、どなたか。
どうぞ。

○河上委員長 これはどういう性格のものかということについて確認をしておきたいのですけれども、消費者側に損害が発生して、それに対応する形で不当な収益があってそれを吐き出させるのだというような話で課徴金が出てきているのですけれども、損害の填補という話を前面に押し出すと、複数の不正な表示を作出した加担者がいた場合には、不真正の連帯債務という形になって、両者に請求はするけれども、請求額は変わらないぞという方向に行きそうな気がするのです。そうではなくて、今回複数の人間にそれぞれ同じように課徴金を課すのは、むしろやってはいけないことをやっているのだということに対する制裁を加え、今後そのような表示をしないようにという抑止へのインセンティブを考えるというほうに傾いているのかとも思われます。考え方としては後者なのでしょうか。

○小早川座長 加納さん、どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこはこの課徴金をどう見るかというところに立ち返りずつよく考えるということだと思いますけれども、従来型の課徴金を少なくとも念頭に置く限りは、今、河上先生がおっしゃった後のほうの発想にこのペーパーの考え方はなじむだろうと思っております。
まず、複数主体が登場するという場合に、それぞれが表示主体となるかどうかという話がまずありまして、これは景表法の実体法の問題ですから、先ほど審議官が申し上げましたように、現行法の解釈の当てはめの問題である。場合によったら複数主体が表示主体としてなるということはありますので、現行法でもそれぞれが措置命令の対象になることはありますよということです。その場合には、やはりそれぞれが不当表示をしているわけですから、抑止する必要は当然あると思いますので、そうしますと、それぞれについて抑止を働かせるために賦課していくというような発想があり得るのではないか。
ただ、河上先生がおっしゃったように、連帯債務のように見るかどうかというのは別にしまして、実質的に「やり得」である。その「やり得」というのは実は民事上の請求権に引きつけて考えるという発想もなくはないとは思いますけれども、そうしますと、その場合には課徴金も調整するとかというような発想もあるかもしれないというような、発想としてはあるかもしれないと思いますけれども、従来の課徴金の考え方とはやや離れてくるのではないかという気がしますので、ここが比較的シンプルな考え方でそう書いている。
ただ、被害回復の関係で※印でちょっとだけ書かせておりますけれども、被害回復の場合では調整を考える必要は出てくるかもしれないなとは問題意識としては持っております。

○小早川座長 今の、一番最後の※印のところは、制度設計のかなり玄人っぽい話になるのかなと思いますが、それはともかくとして、主体の関連では今日の資料の12ページの考え方自体についてはさほどの異論はないということでしょうか。その先をもっと考えるべきであるという宮城委員の御発言はありましたけれども、ここに書かれていることは、これはこれでいいのかと。よろしいでしょうか。
司会の不手際でというか、議論がおもしろいものでつい長引いたところもあり、また、全体の時間配分にも問題があったかもしれません。お詫び申し上げます。
本日の議事は以上といたします。

≪3.閉会≫

○小早川座長 事務局から何か連絡事項がありましたら。

○金児企画官 本日も熱心な御議論ありがとうございました。
次回の日程については、追って御案内させていただきます。また、本会議の委員の皆様は、この後15時30分から本会議を開催いたしますので、時間になりましたら再度お集まりください。
以上です。

○小早川座長 それでは、本日はこれで閉会といたします。
お忙しいところ、皆様どうもありがとうございました。

(以上)