第153回本会議・第8回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議 議事録

日時

2014年4月16日(水)10:00~12:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【消費者委員会委員】
河上委員長、石戸谷委員長代理、阿久澤委員、岩田委員、齋藤委員、高橋委員、夏目委員、橋本委員、山本委員、唯根委員
【専門調査会委員】
小早川座長、白石座長代理、鹿野委員、川出委員、長田委員、増田委員、宮城委員
【説明者】
消費者庁 川口審議官、菅久審議官、黒田課徴金制度検討室長、加納消費者制度課長
【オブザーバー】
国民生活センター 丹野理事
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官、稲生参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 今後の調査審議のスケジュールについて
  3. 被害回復の在り方について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会第153回本会議・第8回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議」を開催します。

本日は、所用により河上委員長がおくれて御出席との御連絡をいただいております。

本日の配布資料の確認ですけれども、資料1-1が中間整理の概要、資料1-2が中間整理、資料2が今後の調査審議のスケジュール(案)、資料3が「被害回復」等に関する課徴金制度の制度設計(消費者庁提出資料)でございます。御確認をお願いいたします。

それでは、小早川座長に議事進行をお願いいたします。

○小早川座長 それでは、皆さん、今日もよろしくお願いいたします。

前回は、これまでに出された各委員の意見等の中間的な整理について議論いただきまして、今、御説明ありました資料1-2のとおりの中間整理として、公表しました。本日は、この中間整理を踏まえて、今後の調査審議のスケジュールについて、まず確認をしたいと思います。その点につきまして事務局から説明をお願いします。


≪2.今後の調査審議のスケジュールについて≫

○稲生参事官補佐 今後の調査スケジュールの案が資料2にございますので、こちらについて御説明いたします。

これまでで課徴金制度導入に関する論点について一当たりの検討を行ったということで、先般中間整理をいたしました。中間整理の中で、被害回復の在り方については、制度の趣旨・目的をどのように考えるかということと関連する論点として、改めて検討の機会を設けて十分な審議を行うということにされましたので、まず本日は、被害回復の在り方について御議論いただきたいと思います。

また、中間整理では、要件・手続に関しても引き続き検討を要するとされた論点がございましたが、これらにつきましては次回、本日、被害回復の在り方について議論し切れなかった部分がありましたらそれも含めて、議論を行っていただくことを予定しております。

その後、5月に事業者からのヒアリングを再度実施し、これを踏まえて取りまとめ案について議論いただき、最終的には6月に取りまとめとするスケジュールを想定しております。

なお、本日御議論いただきたい被害回復の在り方につきましては、事務局のほうから消費者庁に検討状況についての資料作成を依頼しておりますので、後ほどの詳細な説明は消費者庁にお願いしたいと思います。

以上です。

○小早川座長 それでは、今、事務局から説明のありましたスケジュール(案)ですが、何か御意見ございますか。よろしいでしょうか。

それでは、今のような感じでこれから進めていきたいと思います。

≪3.被害回復の在り方について≫

○小早川座長 そこで本日は、ただいまも御説明ありましたように、被害回復の在り方というところについて議論をしたいと思います。本日だけではなくて、次回も、引き続き検討を要する論点があれば議論するという予定でおりますので、本日、結論なり一定の方向性を出さなければならないものでは必ずしもないとお考えいただければ結構だと思います。

それでは消費者庁のほうから時間は15分ぐらいで御説明をお願いいたします。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 資料3に基づいて説明させていただきたいと思います。

まず、1枚おめくりいただきまして目次をごらんになっていただければと思います。被害回復の観点の検討ということについての現時点での私どものアイデアについて、今日は説明させていただきたいと思います。消費者に対して、いわゆる「やり得」の部分を何とか還元できないかという手法を今、検討しております。そこで、検討の過程でさまざまな論点が浮かび上がってきておりますので、ぜひ論点について、それぞれ御議論いただきたいということで、今回、資料を用意いたしました。

まず、検討の必要性ということでございます。1ページですけれども、不当表示事案では、いわゆる「やり得」という部分について、個々の消費者が実際にどの程度の損害をこうむったのかを算出することが困難な場合が多いと考えられますし、また算出できたとしても、その金額が少ない可能性もありますので、民事訴訟になじまない場合が多いのではないかということが考えられます。先ごろ消費者裁判手続特例法というのも成立いたしましたけれども、そういった手法でもなかなか対応できない場合があるのではないかと考えております。

そこで、1枚めくっていただきまして、かといって、今回の一つの目的である不当表示への抑止力は維持したいということを考えております。そういったことで、違反行為者が消費者に対して返金等を行うことで「やり得」を還元した場合に、課徴金の賦課に当たって考慮することをすれば、不当表示への抑止力は維持しつつ、被害回復を促進できるのではないかと考えております。

この場合、手法については、今のところ大きく2つあるのではないかと考えております。まず1つは、課徴金として1回国庫に納めてから消費者に返すというパターンと、課徴金として徴収する、賦課する前に、企業自身による自主的な返金・還元というものを促進するという、大きく言えば2つのやり方があるのではないかと思います。

では、その検討をするに当たって、まず国が分配する方法ということで、3ページに図で示しております。図のとおり、1回国庫に納付してから消費者に対して分配する。

ただ、この場合に1つありますのが、5ページに飛ぼうとすると、間に4ページがありまして、そこには参考として、犯罪被害財産等による被害回復給付金制度というものがあります。これは、一度、没収した財産を分配するのに、こういった類似の制度があることはあるのですけれども、今、我々が考えている問題点としては、この課徴金という部分と民事訴訟というのは基本的に同時並行で成り立ち得ますので、二重払いが生じる可能性があるということです。そうすると、課徴金を先に取ってしまうと、返金したくても返金できなくなることも考えられるということです。

また、実際に返すべき人を特定するのが困難だという部分。あと、事務負担をどうするのかという問題点があるので、これは理論的には当然考え得るのですけれども、現実にワークする仕組みとしてはなかなか難しいのではないかということで、もう一つの手法について検討している、頭の体操の過程を記したのが6ページ以降でございます。

考え方としては、課徴金制度の主目的というのは、「やり得」の剥奪による不当表示の抑止ということですけれども、自主的に戻せば、その「やり得」というのは手元に残らないということですから、実質的に課徴金制度をとったのと同じような機能を果たすことができるのではないかということでございます。これは、特に事業者の方のヒアリングの意見でも、その自主的に戻したものを何とか考慮してほしいという御議論がございますけれども、そういったことにも対応できるのではないかと考えております。

その手法としては、7ページです。国庫に納付する前に還元する手法としては、課徴金金額から自主的返金等の対応をとった場合の金額を控除するという制度が考えられるのではないかということです。そういうことをすれば、いわゆる二重払いとか事務負担の問題、誰に返すのか、国が見つけるのは困難ということについては解決するのですけれども、それはそれで、議論しなきゃいけない問題が増えるのではないかというのが8ページ以降でございます。

今、申し上げた制度のイメージを図であらわしたのが8ページでございます。こういった形で、最終的に自主的に対応するのは、そんなことはやっていられないという場合においては、課徴金をそのまま納付していただいて、それを国庫に納付することになりますけれども、その途中で何らかのやり方ができるのではないかということです。

我々は、今の段階では、9ページの4つの論点があるのではないかと思っています。まず、そもそもこの論点だけでいいのかという点も含めて御議論いただければと思います。では、具体的にどういう制度なのかということです。自主的に返すと言っても、支払の適正をどういうふうに見ればいいのか。どういう支払が行われていることが適正な返金とみなせるのかどうかという論点でございます。あと、それを払ったという部分をどういうふうに認定するのか。あとは金額をどうするかといった論点でございます。

まず最初の論点については、返し方としては、実際に対象商品・役務を購入した消費者に返金ということですが、ここで関係する消費者というのは全部で3種類ぐらいあるのではないかと思っていまして、違反、つまり著しく優良な誤認を生じさせるような表示を見て、実際に商品を買った人と、別にそれに惑わされた人じゃないけれども、その商品を買った人も当然いると思います。別に違反行為にかかわらず、その商品を購入している。

だけれども、商品としては、売り上げとしては立っていますし、最近ですと、ネットで購入すれば、何を見て買ったというのはかなりトレースできるようなこともあるのかもしれませんけれども、通常の場合は、その違反した表示を見て買ったのか、そうじゃないのか、なかなか区別がつかない場合が多いのではないかと思います。あとは、どっちでもない、一般の消費者という3種類いる場合に、自主的返金の相手としてはどこまで考えればいいのかというのが1つ論点としてあり得ると思います。

前回の平成20年改正案の仕組みからも、後づけ的になるかもしれませんが、考えれば、広告を見たか、見ていないかはさすがに区別していなくて、商品の売り上げ掛ける率なので、購入した人から基本的には「やり得」ということでみなしているということじゃないかと思います。

あとは、それも特定できないという場合には、広く一般消費者に還元する。還元すれば、当然そのどこかには買った人もいるだろうという考え方もできるのではないかということです。つまり、国民の全員が消費者になり得るわけですけれども、その中でそもそも自分のところの商品を誰が買ったかわからないという場合には、特定できないので、全部消費者に還元するというのも一つの考え方としてあり得るのではないかと思います。

次に、返すという場合に、直接返せない場合には、一般に消費者に対して寄附するということを最後申し上げたのですけれども、それについてどうなのかという議論がございます。10ページですけれども、返そうと思ってもできない。その思いを遂げる遂げ方としては、「やり得」を剥奪して被害回復をするという政策目的からすれば、そもそも課徴金制度というのは、反社会的・反道徳的行為に対する制裁とは違う。表示が著しく優良だったということから得た「やり得」を吐き出してもらうということなので、相手が特定されない場合には、広く一般の消費者に寄附でもって還元することも許容されるのではないかと我々は考えておりますが、この辺が妥当かどうかということでございます。

ただ、寄附も、さすがにどこにでもすればいいということではないだろうと考えております。あと、どういうところにすればいいのかということについては、幾つか論点があると思います。

まず、法人格が必要なのかどうかということ。あと、法人格にもいろいろ種類がございます。そういったものを限定すべきかどうかということです。あとは、団体が実際、どういう活動をしているのか、もしくは活動の目的等がはっきりちゃんとしている団体に限るのかどうかといった論点があると思います。

次に、12ページからは、自主的な返金の対応として認める支払はどういうものかということですけれども、対象についてということです。我々が例えば措置命令を出す場合には、認定できた期間はどうしてもありますけれども、実際には裏がとれなかったのだけれども、限りなく黒に近いとか、事業者自身は認識しているので、措置命令では認識できなかった以上に返金する場合だってあると思います。つまり、措置命令の行った対象期間、我々がこの期間に行われていた表示が景表法違反だと認定した期間と、実際に返金が行われている商品等の売り上げの期間が、対象となる消費者がずれていた場合にどう考えるのかということであります。

金額については、後でまた検討いたします。

手段については、現金以外の場合もございます。クーポン券とかプリペイドカード等もありますし、最近ですとポイントをつけておきますというのもあると思います。

自主的といった場合に、その自主性の部分にかかわってくると思うのですけれども、最初、私、飛ばしましたけれども、裁判で負けて払った部分は自主的返金とは言えないだろうと考えています。あくまで企業自身、事業者自身のイニシアチブで行われた返金ということですけれども、いつまでにそれをやればいいのかということになります。これは、措置命令と課徴金納付命令の間に1クッション、8ページの図だとございますけれども、この間の期間がどのぐらいなのかということとも、この期間というのは関係してくると思います。

次に14ページですけれども、手続をしっかり決めておかないと、そこに時間がかかるとか、そこがしっかり組めていないと、うまく認定ができないというと、制度の趣旨をしっかり実施できないことになろうかと思います。ここでは、リコールについてのさまざまな例について、いろいろな法律に書いてある義務とかを例示として挙げさせていただいております。

最後に、16ページでございますけれども、控除の額ということでありまして、事業者が消費者に自主的に返金を行った額を勘案するということですけれども、さまざまな対応になっているということです。実際に返したお金が、計算された課徴金額が上回ることもあり得ます。そういった場合に金額をどうすればいいかのということも、議論しなくてはならない論点だと認識しております。

駆け足でございますが、私からの説明は以上でございます。

○小早川座長 ありがとうございました。

それでは、今の御説明に関して検討していきたいと思います。今回、新たに控除という仕組みの提案もありましたが、もう一つは、最初に言われた、国が徴収した課徴金を国の側からさらに分配するという方法と、その2つが考えられるという前提でのお話でした。両者を含めてですが、特に控除の制度について詳しいお考えの説明がありましたので、それが中心になるかと思います。被害回復の在り方というか、課徴金制度の設計において被害回復の観点をどう位置づけるか、どう反映させるのかといったことだと思いますが、それについて、皆様の御意見、御発言をお願いいたします。

はい、宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 今回の御提案を見させていただいて、感想としては、前からお話の出ているところではあるのですが、制度としては、これがもし実現するとすれば、非常に価値のある制度になり得るかもしれないと思っております。確かに課徴金制度というのは事前抑止の制度、被害が発生する前に不当表示を抑止してしまおうという制度であるのですが、恐らくこれが入っても、間違いなく、その網をくぐり抜けて不当表示が行われてしまって消費者被害が起こってしまうというのは、課徴金制度が執行された後でも必ず起きてくることは予測されるところであります。

そういったときに、こういった制度で自主返金という格好で、課徴金を課されるよりは、事業者さんとしても企業イメージの点で課徴金納付命令を回避できるという点でメリットがありますし、消費者としても被害者としても、それによって全部ではないかもしれませんが、ある程度の被害回復が受けられるという、相互にメリットがあるところで、合理的ではないかと思われます。それが見た感じの感想です。

ただ、これを実現するとすれば、それをどのように認定するか、そして、その後、効果の点でどのように整理していくのか、ぱっと見た限り、幾つかの論点はあるのかなと。今すぐ、ここがどうだということは言いにくいのですけれども、論点はありそうだという感じはしております。

ちょっと気になったのが、8ページの還元の手法について、大体御説明いただいたのですけれども、この流れでいくと、控除制度のイメージで、最初、不当表示があるということを消費者庁のほうで関知して、それに対して調査に入るという段階があって、それから告知・聴聞の手続があって、措置命令、課徴金納付命令の認定手続が行われると思うのですが、このつくりで言うと、納付命令までに第1次的に返金し、努力し、そしてそれがうまくできないという部分が残ってしまったことについては、寄附するというところであるのかなと思うのです。

そうすると、納付命令がおりる前の段階で課徴金を徹底して争うのか、それとも自主返金ないし寄附の対応で課徴金、納付命令はどうなるかわからないけれども、告知・聴聞の段階でこれはおりてしまいそうだということは大体わかるのかな。その段階で、それを回避したい、それが濃厚になりそうだというときに、自主返金及び寄附をして、それを回避するという格好になるのかなと思われます。大体そんな理解でよろしいのですかね。

○小早川座長 8ページのコンセプトについての御質問ということですが、制度的には、返金等で課徴金納付命令が変わってくるということにはなるわけですね。おっしゃられたような、タイミングとか、プロセスの中でどの段階になるかというのは、実際上、事業者側の行動パターンや行政側の進め方がどういうことになるか、実際の運用と対応がどうなるかという見通しにも関わる問題かと思いますが、いかがでしょうか。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 基本的な考え方としては、いわゆる「やり得」を消費者に還元するというのが原則の考え方ですけれども、実際には1次対応的にやるのは難しいだろうという中で、いかにそれに近い形に持っていけるかというのを考えたのがこの図です。そういうことですから、まだ完全に前後のタイミングをどうすればいいのかというのは、まさにこれから検討するところなのです。

もう一つは、議論が出ていますように、企業として企業イメージの回復ということをみずからやる余地を何とかうまく取り込めるというのも両立させるということで、一番大きいダメージは、実際には金額よりも措置命令が報道された段階で既に負っているという御議論もいただいていますので、その辺のあたりをうまく両立させるにはどうすればいいかということでございますから、措置命令を受けた場合には課徴金を賦課される対象にはなり得るのですけれども、それまでにいろいろうまくやれば課徴金納付命令まではいかないということも考えられると思うのですけれどもね。

さっき申し上げたように、認定とか、時間が余りかかり過ぎても、抑止力という部分についても別途必要だということもありますので、自主的対応と、命令までかかり過ぎると、例えば措置命令は未来に対して表示を直してくださいというのはぱっとやって、過去の「やり得」はどうするのだとしたときに、それが確定するまでに1年も2年もかけているのではしようがないということだと思います。ですから、そこはある程度期間を短くしなきゃいけない。

意外に、措置命令に行くまでには、実際に我々が端緒情報を得てから命令までの時間がある程度かかることが多いということがありますし、企業ともやりとりしていますので、事業者にとっては、これはやられるかもしれないというのは随分前からわかっております。ですから、当然命令の前から自主的な対応をやろうと思えば、それには着手できるということもあります。そういうことを全体で考えて、今、基本的な考え方の部分をいかに制度に落としていくか。ただ、当然、それぞれ両立しない場合があると思いますので、その中でどこの部分を優先させて制度を仕組んでいくのかということが、まさにこれからの検討ではないかと思います。その辺もぜひ御議論いただければと思います。

○小早川座長 宮城委員、いかがでしょうか。

○宮城委員 現段階では、大体わかりました。

○小早川座長 私からついでに関連してですが、課徴金制度が自主的返金を促す機能を持つようにするということもあるわけですね。そうすると、自主的返金がされるかされないかが、そもそもの措置命令権限の行使に影響するというか、そこでカウントされるということは、考え方としてあるのですか。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 考え方としては、違反であれば措置命令をまずはするということだと思います。実際にお金が戻ってくるかどうかということよりも、まずは違反状態を変えさせるというのは迅速にやらなきゃいけないことだと思います。

○小早川座長 わかりました。

川出委員、どうぞ。

○川出委員 今の点に関連して、自主的返金と寄附をあわせて課徴金から控除することにより、課徴金を納付しなくてもよい形にすることが。企業にとってもメリットだということですが、そうだとすると、企業として、当該違反について本来であれば幾らの課徴金を払わなければならないのかということがわからないと、どのような対応をするのかを決定するのが難しい場面が出てくると思います。運用のあり方として、措置命令を出した後、課徴金はこれくらいの額になるということを、消費者庁側から企業に対して情報提供するということは考えられるのでしょうか。

○消費者庁菅久審議官 基本的な発想として、別に課徴金納付命令の額だけ返さなきゃいけないということではなくて、返すのは幾ら返していただいてもいいわけですね。そこは、別に連動する必要はないのではないかと思います。つまり、まさに企業の方が自主的に、今回の秋からの事案でありましても、別に課徴金がなくても企業の方は返金されている方もいらっしゃるわけですね。そういうまさにコンプライアンス的な対応を、最終的に課徴金納付命令を出すときに、その分減らそうという発想ですから、それはむしろわからなくても構わないのではないかと私は思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 補足しますと、本来であれば、いわゆる幾ら「やり得」だったかというのは、我々消費者庁が調べるよりも、企業のほうが実際にはよく知っているだろうというのが背景にはあります。

○消費者庁菅久審議官 さらにつけ加えれば、どういう課徴金の仕組みになるかによりますが、この流れでは、措置命令が出れば、どういう期間のどういう不当表示だというのが出ますから、その時点で事業者の方はある程度わかるはずだと考えます。

○川出委員 なぜこのようなことをお聞きしたかといいますと、配付資料の10ページで、控除の対象に自主的返金以外に寄附を認める根拠の2番目に、自主的返金が完全に履行できない場合には課徴金を納付しなければならなくなり、そうすると、事業者の自主的取り組みのインセンティブを削ぐことになると書かれています。そうだとしますと、事業者側で、本来の課徴金の額がいくらで,自主的返金のほかに,あとどれくらい寄附をすれば課徴金がゼロになるのかという予測が立たないと、こういう議論は成り立たないだろうと思ったのですが、その点については、消費者庁から伝えなくとも、事業者がわかるはずだということであれば、それで結構だと思います。

○小早川座長 白石座長代理、どうぞ。

○白石座長代理 今の点の補足ですけれども、独禁法でもそうですし、今度の景表法の中間整理にも書いてありますが、命令の前に事前手続をすることになっていて、独禁法の場合だと課徴金納付命令前に事前通知をして、事前手続をして、それが1カ月とか、事案によって2カ月とかかかります。そして、事前通知のときに課徴金納付命令書案というのを名宛人に送るのです。

ですから、景表法の場合に事前手続がどれくらいの期間かかるかわかりませんけれども、1カ月だとしたら、1カ月前には消費者庁から課徴金納付命令書案が届くということになると思います。わかりませんが、現実問題としては、返金というのはその1カ月の間になされる可能性があるのではないか。それから、消費者庁が最終的に額を確定して命令することになるのではないかと想像いたしました。

○小早川座長 手続のやや細かい話にもなりますけれども、事前に課徴金額も含めた案を相手に知らせるというのは、もともとは手続保障の意味ですね。課徴金という処分の事前手続として、それがあるべきだという話でしょう。ところが、今のお話にあるように、そのことが事業者に、行動選択の余地と、そのための猶予期間を与えることになるわけで、そうすると、実際の運用としても、どっちにウエートを置くかで違ってくるということですかね。

○白石座長代理 御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおりで、理念としては、小早川座長がおっしゃったように、事前手続は手続保障のためのものです。そして、手続保障のために実際上、川出委員が問題提起をされた情報提供は一定程度においてなされるということではないかということを申し上げました。

○小早川座長 今の関係で何か消費者庁のほうから。

○消費者庁菅久審議官 もちろん細かい制度設計を既に固めているわけではございませんが、ある程度考えていたのは、措置命令が出れば、次は課徴金納付命令が行くわけですので、そのときにいつまでの期間という問題がありますが、措置命令が出て以降、いつまでの対応の分については課徴金の額に反映させますよということを決めて、そこまでの自主的対応額が出てきたのを見た上で納付命令額を決めるようになるのかなと思っておりました。ですから、自主的対応の金額というのも含めて、事前通知というものが行われるということかなと実は思っていたのです。

もちろん、今のはオプションの一例でございまして、課徴金額を一旦出した上で、さらに自主的返納額を確定させるオプションもあり得るかとは思います。ただ、そうすると事前手続をもう一回しなきゃいけないかもしれませんけれども、そういうやり方ももちろんあり得るかもしれません。

○小早川座長 今の関連では、ほかにどなたか御発言は。

それでは、ほかの論点でも結構ですが、いかがでしょうか。では、まず、長田委員。

○長田委員 ありがとうございます。

まず、この控除の制度というのは、ぜひつくるべきではないかと思っています。

1つは、議論の中にもずっと出てきていますけれども、実際に排除命令が出ているようなケースにおいても、かつその契約をした消費者が特定されているケースでも、返金がされていないというのはいろいろと事例があるのではないかと思います。広告表示を変えましたというところで終わってしまっているというものがあると思いますので、本来、返せるものであれば返していくというのを促していく制度の一つとして、あり得るだろうと。

それから、返したくても、相手先が特定できないというところで困っていらっしゃる企業の皆さんにとっては、寄附先というのがきちんとあるということになれば、それはいい制度になるのではないかと思いますし、国に課徴金で入れてしまって、その後、それを被害回復などに使うということは、制度としてなかなか難しいのではないかと素人なりに想像しておりまして、それを実現するためにもこの控除の制度が実現すればいいなと思っています。

その上で、寄附先についてですが、1つは、鹿野先生がやっていらっしゃる消費者支援基金というところも1つ候補に挙がるのではないかと思っておりまして、その辺はぜひちょっと御紹介いただければいいのではないかなと思っています。

○小早川座長 では、お名前が出ましたので、鹿野委員、いかがですか。

○鹿野委員 消費者支援基金へということは、私の口からは申し上げられません。ただ、寄附先を考えたときに、特定の消費者団体へ寄附するということになると、なぜここだけなのかという問題も生じうると思いますので、特定の消費者団体ではなく、何らかの基金のようなところを寄附先にするということは、一つの選択肢として考えられると思います。

消費者支援基金について若干紹介いたしますと、この基金は、それ自体が直接的に消費者団体的な活動をしているわけではありません。一方で、事業者から消費者支援という趣旨を踏まえた上での寄附を受け、他方で、その受けたお金については、消費者の利益のための活動を行う団体等からの申請を受けて、一定の基準に基づき審査をした上で、適切と判断されたものに支出するということを行ってきました。従来ですと、例えば、適格消費者団体が、不当条項等の差止請求制度に基づき、具体的に一定の差止訴訟を提起しようとしているというような場合に、そのために一定の費用が必要だということで申請があり、審査の上で基準に基づいて一定の額をそこから支弁するというようなことを行ってきました。

具体的にどこの組織がよいということは申し上げられませんが、イメージとしては、消費者団体的な活動から一歩離れて、より中立的とでもいいましょうか、そういうところに寄附金をプールし、それがさらには、消費者団体等の活動を通して消費者全体の利益に役立てられるというような仕組みを作るのも一つかと思いますし、長田委員がおっしゃったのもそのようなことだろうと認識しております。

○小早川座長 行政法的に言えば、一種、指定法人みたいなものを指定して、そこに寄附するのであれば全体が円滑に運びますよという仕組みにしておくということですかね。

○鹿野委員 そうですね。幅広く寄附先を設けてそのどこでもよいということになると、それは本当に消費者の利益のために寄附したといえるのか、なかなかその判定が難しいということにもなりましょうから、今、小早川座長がおっしゃったように、必ず1つというわけではないとしても、一種の指定法人のようなところを寄附先にするという仕組みが考えられると思います。

○小早川座長 では橋本委員。今の関連でしたら、どうぞ。

○橋本委員 関連ですけれども、今あったように、私も今回の提案というのは非常にいいなと思っておりますし、消費者団体にいろいろな形で資金の援助をというのも消費者団体から出ているので、寄附というのも基本的には賛成です。

ただ、今の議論の中で、どの消費者団体に寄附するのかというところで、多分いろいろな考え方が出てくると思います。この中では、例えば全国的なものであれば、ある程度大きな全国規模の消費者団体と考えられるのですけれども、今までのいろいろな措置を見ておりますと、地域限定のものというのもあるのではないかなと思います。そういった場合、エリアをどういうふうに考えるのか。私もまだはっきりとは言えないのですけれども、そういった場合の考慮というのも必要ではないかなと考えております。これは意見として出させていただきます。

○小早川座長 では、関連して、白石座長代理。

○白石座長代理 ありがとうございます。関連した発言です。私も、今回の返金の枠組みは大変魅力的なもので、よい方向で実現できればよいのではないかと考えています。

それで、今、寄附先について御発言等ありましたので、関連して私の考えを補足したいと思います。消費者団体も有力な寄附先だと思いますけれども、消費者庁提出資料の11ページにもございますが、景表法の課徴金ですので、景表法のエンフォースメントを補足している公正取引協議会というものも当然候補として考えられるのではないかと思います。ただ、この公正取引協議会も業界ごとにたくさんありまして、特定のものだけということになりますと、先ほどの議論と同じような、特定の団体に恣意的に寄附が集中するという問題も出てくるのではないかと思いますので、その点を工夫する必要はあろうかと思いますけれども、景表法のエンフォースメントをしっかりやっているところを補助するという意味では、一定の意義があるのではないかと思います。

○小早川座長 関連して、岩田委員。

○岩田委員 この被害回復の今、御提案の仕組みができることになると、本当にこれは画期的なことだと思うのですね。日本のほかの課徴金制度にはありませんし、それから先ほど御紹介いただいた犯罪被害財産等の仕組みは、これはちょっと似て非なるものだと思うのです。これは、被害に遭った財産を取り返して被害者に返すということなので、今、議論しているものとはちょっと違うと思うのですね。

それから、諸外国について事務局からいただいた情報を見ても、これに該当するようなものはないと思います。アメリカのdisgorgementが少し似ている感じがしますけれども、これは裁判所に請求して、裁判所が金額を確定して分配するということですから、企業の自主的な返済を促進することとは違うと思いますので、いわば世界で初めての仕組みを導入することになると、私は実現できれば非常にすばらしいと思います。これは、何よりも被害者の救済と企業の自主的な返済によって、一旦大きく傷ついた企業イメージを少しは回復することができると、冒頭、黒田さんがおっしゃいましたけれども、この両方が両立できることかなと思うのですね。

ここまではすごくポジティブに申し上げましたけれども、この後ですが、企業が被害者をなるべく特定する努力をして、自主返金をするということは、私は大賛成ですが、寄附については消極的です。その意見をちょっと申し上げたいと思うのです。というのは、これまでも、あるいはこれから自主返金すれば課徴金から控除されるという仕組みになれば、なおさらのこと、企業は自主返金に非常に熱心になると思うのです。

ですけれども、これは想像するだけでも手間暇が非常にかかって、まず企業は新聞等で企業広告をして、購買した消費者から申し出を待つと思うのですけれども、そのための広報の努力をしっかりすると思うのです。あるいは、もしカードで決済していたり、ポイントを付与していたりすると、会社が持っているIT関連のデータの中からお客様を割り出すこともできると思うのですが、それを誠実にやってくれることを促進することになるので、いいと思うのです。

一方、これを寄附でいいということにしますと、多分、企業はそういう手間暇はかけないで、金額をぽんとどこかに出してしまうということで、それは本来の被害に遭った個別の被害者を救済するということからすると、むしろ逆効果が出るということもちょっと懸念したほうがいいのではないかという感じがいたします。それで、被害者を救済するという本来からずれて寄附を認めると、課徴金を逃れたいからというだけの目的で寄附を選択するという、課徴金か寄附かという選択になると、被害者救済の枠組みからだんだんずれていくような感じもいたします。

それから、今、各委員の皆様がおっしゃるように、仮に寄附を認めるとすると、線引きがなかなか難しいというのもあると思いますので、明確に反対するということを申し上げていることではないのですけれども、寄附について、私は少し消極的に、慎重に考えたほうがいいのではないか。自主返金は大賛成で、それを何とか促すような仕組みがビルトインできれば、これは世界に自慢できる、本当にすばらしい仕組みになると思います。

以上です。

○小早川座長 今のは寄附というコンセプトそのものについての御意見ですが、その点で、どなたか。では、阿久澤委員、それから高橋委員。

○阿久澤委員 関連もあるのですが、岩田委員の前の話に若干戻る形になってしまうと思うのですけれども、よろしいでしょうか。

○小早川座長 では、次に御発言いただきますので、高橋委員はいかかですか。

○高橋委員 措置命令が出た後の企業のビヘイビアというのは、大企業なのか、中小企業なのか、課徴金の額がどのぐらいかによって、かなり違うと思います。そういう意味で、少し頭の体操をしてみたのですけれども、企業はそもそも、今、岩田委員が御発言されましたように、いろいろなイメージ化のための企業努力をすることは間違いないですけれども、金銭的なものを考えたときに、例えば先ほどからどの消費者団体にとか、寄附先のお話が出ていますけれども、例えば公益法人に寄附した場合と、そうじゃない場合で会計上の処理が違ったりするわけですね。

そういうことを含めまして、例えば課徴金の金額が大きくなったというケースの、上場企業で考えれば、当然ながら、例えば証券取引所のディスクロージャーをどうするのかから始まって、有価証券報告書の注記をどうするのだという話とか、株主総会対策としてどういうふうにしておくのか、そういうことをいろいろ考えて行動すると思います。だとすれば、できれば、これは提案なのですけれども、公認会計士さん、あるいは監査法人さんに、課徴金特別損失、どういうケースでどうなるのかということを私たちも少し勉強した上で、企業がどういう行動をするのか。それがいい形を促すような方向に議論することも必要ではないかなと思います。

○小早川座長 今の点は、消費者庁は。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 ちょっと直接の話にならないかもしれませんけれども、何度も申し上げますように、「やり得」を実際に被害をこうむった人に返すということが基本なのですけれども、それが実際にはなかなか難しいので、ある種擬制する。つまり、それに近い形にどれだけ持っていくかというのを制度で仕組もうとしているというのが、今、我々がやろうとしていることでございまして、あとはどれだけ凝ったものとするのかということじゃないかと思います。つまり、どういうふうに仕組んだところで、全部が満足することはできないので、ある程度メリット、デメリットを考えた上で、最後は決めていくことになろうかと思います。

それで、一つの考え方としては、先ほど返金がメインで、寄附すると、そっちが逆に削がれるのではないかという議論もあったと思いますけれども、むしろ故意にという例は余りないのではないかということを前提にしつつ、どこかうまくいかなくて景表法違反を犯してしまったときに、オプションが3つぐらいあるということだと思います。

そんなもの、やってしまったから、面倒くさいから課徴金をとりあえず潔く納めるという企業行動をとることを消費者に見せるとか、もしくはあくまで努力し続けるというところを見せる。逆に言うと、寄附をすぐすることで、あそこは余り努力していないのではないかというデメリットは当然あるのだけれども、全体のトータルのコストを考えるとさっさと寄附したほうがいいと考えるか。そこも含めて、企業、事業者自身が考えられるような仕組みになるのではないかという意味で、いわば「大人の制度」をつくろうとしているという感じじゃないかというのが、我々の提案の趣旨だと御理解いただければと思います。

○小早川座長 話がどんどん先へ進みますので、順番を指定してもなかなかそのとおりにいきませんが。まずは鹿野委員。

○鹿野委員 先ほどの岩田委員の御発言に対して一言申し上げたいと思います。確かに、さっさと寄附してしまうことで課徴金逃れに使われるのはまずいというのは、そのとおりだと思います。ですが、これは高橋委員がおっしゃったことにも関係すると思いますけれども、企業のイメージを回復しようと本当に思っている企業であれば、何がしかの形で、被害に遭ったお客様は申し出てくださいというようなことを、報道等を通してアピールするという行動に出るのではないかと思います。

また、もう一方で、被害者に申し出てくださいと呼びかけたとしても、表示の問題ですから、具体的に真の被害者が誰かということを全て把握することは難しい場合が多いと思います。取引先の数や業態によっては顧客を把握できるような場合もあるでしょうけれども、そうでない場合も少なくないでしょうから、結局、被害者に対して返金するということにも限界があるように思います。

そのようなことを考えると、寄附という手段を残すことにはそれなりに意味があるのではないかと私は思います。

それから、もう一つ、先ほど指摘された期間に関する問題について申し上げます。寄附ということになると、それなりに早く実行できると思うのですが、被害者に返金するということになると結構時間がかかる可能性が出てきそうに思われます。そこで、どれぐらいのタイミングで課徴金納付命令を出すのか、そこまでの期間をどれだけとるのかということについては、返金に要するであろう期間ということも考慮に入れて設定する必要があるかと思います。あるいは、そういう自主的対応に着手している場合には、一定、命令を発することを猶予するというような措置も必要なのかもしれないとも思いました。

○小早川座長 いかがでしょうか、すぐに簡明なお答えがあるのであれば。そうでなければ、検討していただくということでも。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 済みません、先ほど1点申し上げ忘れたのですけれども、あくまで控除制度の目的は被害回復ということですので、寄附についても、どこに、誰にということよりも、被害回復に当たるような活動をしているところは、どういう活動なのだろうかというのを考えなきゃいけないというのがまず第1だろうと思っております。そういう活動に対して寄附すれば、被害回復したことがより擬制されるのではないかという意味で、寄附というのもオプションとして考えているということでございます。

時期については、これから検討するということです。

○消費者庁菅久審議官 今、鹿野先生からのお話ですけれども、自主的対応について1点だけですが、措置命令が出されてから初めて自主的対応をするというのは想定していません。自主的対応というのは、その前から当然やるものだという前提で考えていますので、調査に入って、調査を受けている以上、わかったら対応するだろうということですので、そういう意味では時間は比較的あるという前提で考えています。

○小早川座長 たくさん手が挙がっているのですが、司会者として少し踏み出して今までのところの御意見の方向性をあえて探すとすれば、返金のシステムを組み込むのは結構なことであろう、それに比べると、寄附というのは趣旨からするとその次かなと。その場合、制度設計としては、汗をかいて返金するよりも安直に寄附で済ませてしまえという方向に流れないような仕組みが何か必要だろうというあたりでしょうか。その辺で、今までの御発言はレベルがそろうのではないかという気はするのですが、その上でさらに今の論点について何か。

宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 消費者庁の資料の9ページには、先ほどからおっしゃられているように、真ん中あたりに対象商品・役務の購入をした消費者への返金が原則とされていて、その例外として寄附ということに位置づけられているので、先ほどからお話が出ているような、面倒くさいから寄附してしまえという話には恐らくならなくて、まず最大限の返金の努力をしなさいと。そして、その上で、むしろ寄附というのは救済措置と位置づけられているのではないか。

被害者が全部特定できなくて、返そうにも返す先がわからない、あるいは認定が非常に困難であるというときに初めて寄附を検討するという立てつけではないか。これは、消費者庁に対する質問でもあるのですけれども、恐らくそういうお考えではないかと理解しているのです。そうだとすれば、寄附を安直にしてしまうという懸念は初めからないのではないかと考えます。そのあたり、制度のつくりをどうするかというところもあるかと思います。

それから、返金と寄附の話。関連した限りでよろしいでしょうか。

○小早川座長 どうぞ。

○宮城委員 ということになると、対象事業者が返金をきちんとするということの確認が消費者庁としては必要になってくるはずで、そうすると、措置命令なり課徴金納付命令の調査の手続の段階で当然されると思うのですけれども、念のため申し上げておくと、事業者が所持している限りの顧客はこの範囲ですということは、言わなくてもちゃんとされると思うのですが、顧客はこの範囲であるということの情報を対象事業者から入手して、ちゃんと返金をやりましたというチェックは手続的には必要になってくるのかなと、聞いていて思いました。

それから、寄附先については、これは少し前に鹿野先生だったか、お話があったとおり、合理的に考えると、1カ所に集めて、それから一定の。要するに、対象事業者がどの団体でも寄附をやればよろしいということになると、それは偏りができたり、適切なところに行くのかというところがありますので、まず前提として、その寄附を受けられるような団体、何らかの消費者庁なりが関与した認定寄付先みたいなものはできないのかと、聞いていてちょっと思いました。その範囲をまず認定で絞れないかということと。

あと、合理的に考えると、寄附先は1カ所に集めて、その認定されている団体がそれに対して申し込みをするみたいなことで補助を受けるというつくりが考えられるのではないかと思いました。そうなると、認定との関係で、寄附されたお金をちゃんと消費者全体のため、あるいは被害回復のために使っているのかということのチェックが必要になってくるので、その認定を受けたような、寄附を受けられる団体については、その使途のコントロールが消費者庁としては必要になるのではないかと思われ、その点のチェックも必要になるのではないかと聞いていて思いました。

以上です。

○小早川座長 それでは、今の論点、返金と寄附の仕組み、その基本的考え方、あるいはそれを担保するための仕組みというレベルでの御発言は。唯根委員、夏目委員、高橋委員。

○唯根委員 ありがとうございます。

今の宮城委員の発言と同様ですが、私もこの寄附制度については、大手の事業者ではなくて中小企業の方々が違反したときには、消費者を特定して返金するという原則はしなければいけないのですが、それのための経費や人手何かがかかるので、そういった部分を補うことでも寄附制度というのを使っていけるのではないかと思うので、9ページの2番はそういう理解で、この制度の導入には賛成です。

それから、寄附先というのは余り多く、複数にするよりは、1つにして中立的な機関で取りまとめをして、あらゆる業種で起きる可能性があるので集約したほうがいいと思っております。

以上です。

○小早川座長 続いて、夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 ありがとうございます。

私も基本的には、消費者庁が御提示いただきました9ページにあるものが、対象商品・役務を購入等をした消費者への返金があくまでも原則ですよ。その上で、さらに、こういった寄附という行為もできますという選択肢が残されていたほうがよろしいかなと思います。さまざまな御懸念があるかと思いますけれども、それはこれから運用の議論で少しずつ解決していけばよろしいかと思います。

その寄附先であったり、例えば課徴金の命令が出て国庫に納めた後、どうするか、使い道をどうするかというときには、今まで鹿野委員と宮城委員が御発言されたように、1カ所に公正中立な組織体のようなものをつくって、それから、さらに景品表示法にかかわる業務を行っている団体に申請なり、その辺のやり方をどうするかということはありますけれども、そういうところに配分し、消費者全体の救済のために使っていくという方法は、一つの方法として仕組みができるのではないかと思っております。

以上でございます。

○小早川座長 高橋委員。

○高橋委員 先ほどの意見を少し補足させていただきます。私自身も被害回復のための返金、及びそれが難しい場合あるいは上乗せの場合は寄附という制度については賛成でございます。

ただ、先ほど意見を申し上げましたのは、企業に対してオプションがあること。そのこと自体は賛成ですけれども、そのオプションが本当に消費者のために働くかどうかというところを私たちは見ていかなくてはいけないので、そのために企業会計などについても、我々がもう少し知識を持った上で判断したほうがいいのではないかということを申し上げました。と申しますのは、先ほど上場企業の例を挙げましたけれども、上場企業の場合は消費者だけを見ているわけではなくて、さまざまなステークホルダーがいるわけですから、そこのバランスを考えながら、財務上のダメージも含めて、そのオプションを検討することになるのだろうと思うのですね。

ですので、例えば寄附をすればかなり有利になるということであれば、先ほどの手間暇の問題、そちらをかけるより、こっちのほうが早く済むし、公表の仕方によっては非常にイメージがよくなるから、そっちを選んでしまいましょうということにもなりかねないので、オプションがあることはいいのですが、それと企業行動との関係をもう少し私たちは検討した上で、その寄付先をまとめたほうがいいのかとか、どういうところがあるのかという議論をしていくべきではないかと、そういうふうに申し上げたいと思います。

○小早川座長 この件はそろそろ切り上げたいのですが、山本委員、まだ御発言されていないので、どうぞ。

○山本委員 一言だけ申し上げますと、先ほど室長から、寄附の制度は大人の制度であるということが出た後で、子どものようなことを言うのは非常に気が引けるところがあるのですけれども、寄附の制度、私もちょっと慎重に考えたほうがよろしいのではないかという気がしています。その点は、団体にお金が行くことについて慎重にすべきだというのではなくて、むしろ事業者が選択できるということについて、かなり問題があるのではないかという気がしています。つまり、まず課徴金を納めるのか、諸団体の活動のためのお金にするのか。どっちのオプションをとるかということを決める。

さらに、先ほど指定機関のような制度も考えられるということですけれども、仮にそれを考えないとすると、さらにどの団体に対して寄附するかということも決められる。資料の中で、制裁ではないから寄附も認められるのではないかという記述がたしかあったと思います。ただ、違反行為をした人が違反行為をしたがゆえに納めるお金であるということは動かないので、そういうものについて、普通の租税特別措置と同じように考えていいのかという点について、ちょっと私は疑問を持っています。制度をもしつくるとすれば、事業者の寄附の選択肢、あるいは寄附の選択の余地がなるべく狭まるようにしておかないと、ちょっと問題があるかなという気がします。

○小早川座長 では、石戸谷委員。

○石戸谷委員長代理 原理原則的に考えたときに、課徴金をどうするかというのは2つの流れから来ていると思います。従来の課徴金は、競争秩序とか取引秩序なので公益目的ですから、それをどう使うということは全然ないのですけれども、今度、消費者庁のほうの所管になって消費者法の体系に来たというところで、消費者分野では被害回復も大事だということで、これまで継続的に検討が行われてきたという流れになっていると思います。そのときに、被害者のものは被害者へという流れは、御紹介があった被害回復給付金支給制度とか振り込め詐欺救済法という流れがあって、それを踏まえた上で、戻すベき被害者というのは何かということを考えていくという手順だと思うのです。

そのときに、被害が非常に拡散しているところをどう考えるかというので、行政手法研究会のほうもいろいろ検討されているし、集合訴訟のときに消費者法学会のほうでも集団的消費者被害というのは何かというのを深く掘り下げていたことがあるのですけれども、大体一致していると思うのですよ。

類型として、消費者が損害をこうむっているということは抽象的には観念できるけれども、特定できないとか、損害が立証できないとか、因果関係が立証できないという類型が1つと。仮にそれが特定できたとしても、非常に軽微なのでコスト倒れになるというので、権利行使できないというのが2つ目の類型。最後の類型で、主体と損害が確定できて、権利行使ができないわけではないという類型が出てきて、この場合は直接返金というのはよく当てはまるのですけれども、第1と第2の類型が表示の問題の集団的消費者被害のほうの特徴であるわけです。だから、返金が原則で、極めて例外的にそのほかの第1や第2の手当てをというのでは、ちょっと狭いかなと。

その場合にどう考えるのかということですけれども、こういう希薄化した消費者被害をどこに戻すのが適当かというときに、一つの考え方としては、表示の違反というのは景表法ができて50年ぐらい繰り返し起こっているということからすると、希薄化して、1つ目の類型、2つ目の類型で生じた消費者被害というものが、再び将来、また起こるということは十分あるわけだけれども、それを起こさないことによる集団的消費者利益というものが観念できるわけでして、それのために使うというので、大きく見ると拡散した集団的消費者被害と相殺されていくという考えが成り立つと思います。

私としては、寄附というのは何か一方的に何もないところにお金というイメージがありますけれども、決してそうではないと考えると、むしろ返金と並立的なものでいいのではないかと考えております。

○小早川座長 いろいろ御意見はありますが、基本的に、調和というか、まとめることもできそうな気はするのです。まず、返金のほうが原則であるということ。今の御意見ですと、そういうケースは余りないのではないかということですが、それでも、原則はできるときはそうするということで、できないときの救済といいますか、やり方として、寄附という仕組みを用意しておく。それが実際はたくさん使われることになるのかもしれません。そして、その際に、もう一つは、先ほどから御意見があるように、事業者の自由な経営判断でいろいろできるというのではなくて、課徴金のかわりであり、自主的返金ができない場合のとるべき方法だということで、ある程度きちんとした道筋を制度的に決めておいて、こういう道を最後はとってもいいですよと。そういう感じの全体の制度設計ができれば、皆さんのいろいろな御意見にそれほど違わないのではないかという気もしますが、今日のところはこの程度にして、さらに御検討いただければと思います。

ブレーキがかからないまま議論がどんどん展開してしまいました。少しもとに戻して、大分前にいろいろお手が挙がったのですが、阿久澤委員は。

○阿久澤委員 私が1つ前と言ったのは、岩田委員の1つ前の鹿野委員の発言ということで、その後、皆さんから意見がありましたので、解決しております。

○小早川座長 そうですか。ありがとうございます。それでは、阿久澤委員も今の議論の流れで御自分の御意見と合っているという理解でよろしいでしょうか。

○阿久澤委員 はい。

○小早川座長 そうすると、さらに戻りまして、齋藤委員ですね。どうぞ。

○齋藤委員 最初に戻していただいて、ありがとうございます。

言いたかったことは今までの議論でも出ているのですけれども、原点のところを整理する必要があるだろうと思っています。最後に、課徴金を誰に請求するかという、名宛て人のところと関係してきますけれども、どのような状況があるかを認識した上で、この課徴金制度をつくるべきだと思っています。

例を幾つか挙げます。1つは、例えば中古市場があります。環境省の調査では、少し前の4年ぐらい前の調査ですけれども、そのときに3兆円から4兆円のマーケットがある。それが、ネット拡大に伴って大きくなっていますから、今はもっと大きいと思うのですが、個人・法人を含めて複数の当事者の間を転々とする場合に、どこに、どれだけの課徴金の対象になるやり得が残っていると認識するのかという問題があります。制度をつくるときにはそれをはっきりしておかないと、課徴金をかけられる者が「身に覚えがない」という可能性がある。

もう一つの例ですが、ネット販売や通販で個人がまとめ買いをして、大きなサークルのメンバーなどに再販売などをすることがあります。このとき、どこに、どれだけの「やり得」が残っていると認識するのかという問題がある。

それから、3点目。最近ちょっとトーンが下がりましたけれども、サケ弁当やシシャモの呼び方がこれでいいのかという問題がありました。マーケットの中でかなりのウエートでそういう不当表示がなされている場合は、市場競争で余り不当な利益を得る余地がない可能性がある。そういうときには、どういうことになるのだろうか。これは、消費者庁のガイドラインの決め方によると思うのですけれども、そこを厳格にやる必要があると思うのです。

それから、払い戻しについて。先ほど払い戻すことを前提にお話されていましたけれども、戻し方にも金額面で大きく2種類あると思います。払い戻すときに、全額払い戻すことが結構あります。ところが、課徴金のこの制度を入れるときには、全額寄こせとは多分なりにくいので、「やり得」は幾らだと、ある程度認定するようになると思うのです。それは法律で決めることになりますが、全額とは差が出るわけですね。これをどういうふうに考えたらいいのだろうかということ。

それから、払い戻す対象者です。買っていないのにお金をちょうだいという消費者の方はたくさんいるのです。代表的なのは、西友の例です。輸入肉を国産として売ったが、それが発覚したので払い戻しをした。レシートは持っていないだろうとして自己申告にしたが、3日目までに販売高の数倍を払い、そこで支払をストップした。最後は暴れる人も出て、警察が出動した。これは、札幌だけではなく、埼玉でも生じたわけで、消費者行動、社会心理はそうなる。そうすると、お金をいただいた、返金された人と、買ったけれどももらいに行かない、要は自分で被害を認識していない人の違いをどう整理するのかという問題があります。

今いろいろ申しましたけれども、確実には判定できないわけです。この場合はこうだという制度も多分できないでしょうから、制度・仕組みの中で政策的にルールを決めることしかないと思うのです。そのときに納得がいく仕組みが要る。

私は、「やり得」の返し方は、基本的には市場に任せたい。事業者が「やり得」があったら払い戻すということをして自浄作用を高めるのは、大いに結構。その上で、課徴金には副次的な効果として、本来返すべき人に返すという機能があると思うのです。課徴金納付命令を出して、課徴金をたくさん取るには、納付命令までにしばらく時間を置けば置くほど売り上げが上がるから、お金をたくさん取れる。けれども、それは社会が許さないだろうと思います。基本的には、表示ですから、見せたら誰の目にもわかる状態になるので、すぐに気がついて、あしたやめろと指導し、売り上げが立たない、というのが理想だと思います。

○小早川座長 ありがとうございました。

最初のほうの、誰に「やり得」があって課徴金の名宛人になるべきかというのは、これは課徴金納付命令自体の要件の問題で、問題はあると思いますが、次回にもし必要があれば議論していただくということだと思います。

それから、返金の関係については、消費者庁のほうでお答えがあればですが、誰にどれだけ返すかというのは、これは事業者が決めることですね。それで、事業者が判断して実行したことを、制度としてどう評価して、控除に反映させるかという、その辺の制度設計の話になるのではないか。それから、買っていない人が手を挙げたのに対して返金してしまった、返金の空振りみたいなものですが、これを課徴金との関係でどう評価するか。基本的には空振りで消費者のためになっていないので、控除はおかしいのではないかという気もします。ただ、その辺も制度的な割り切りをどうするかという制度設計の話になるかという気はしましたけれども、何かありますか。

○消費者庁加納消費者制度課長 齋藤委員の御指摘は、いずれも制度設計のスキームできちんと詰めて検討しなければいけない点だと考えております。

今、座長が前半のほうで、もう既にお答えいただいているところですけれども、冒頭の複数当事者が関与しているような場合について、課徴金納付のあり方をどうするかというのも一つの論点になってくるだろうと思いますので、また整理させていただきたいと思っております。

基本的には、複数主体が関与している。例えば個人が再販売している場合というのも齋藤委員から問題提起がございましたけれども、そういった場合において、表示主体が誰なのかというのを個別に認定していくのが基本になるのではないかという気がしておりまして、課徴金の場合も当然問題になるのですけれども、現行、措置命令をする際に、同じようなケースがあって、それをやめさせる場合にどこに命令をかけていくのかというところでは、既にある問題ではないかという気がいたしますので、現行法の景表法の考え方を整理する中で、課徴金に当てはめるとこうなるという考え方になるのではないかという気がいたします。

それから、先ほど座長からいろいろと考え方を示していただいた、払い戻し方の具体的な対応でありますとか、それを自主返金の控除とするためにどういうふうに課徴金額に反映させるのかといったことについては、まさに制度の本来の部分でありまして、本日、私どもからお示しさせていただいた資料の中では、課徴金制度をめぐる論点ということで、具体的には12ページ以下のところで、いろいろ細かい論点があると書かせていただいているところであります。

買っていない人が来たと、西友のケースをお示しになったように、本当は買っていないのだけれども、よくわからない人が混じっていた場合にどうするかといった場合には、12ページの(1)に書いておりますのは、基本的には当該商品を購入した者と考えるのが素直ではないか。ですから、本当に購入していない人が入ってきた場合には、その人に対する返金というのは除くと考えていくのが筋ではないかと思います。

ただ、それを個別に認定するという手続は、これは深みにはまりますと結構大変になりますねということが想定されるわけです。ですので、そこはこの課徴金を一定の期間内に迅速に、機動的に発令しなきゃいけないという要請が別途ありますので、そこはまた委員の皆様の御意見などを踏まえながら検討していくことになるかなという気がしております。先ほど石戸谷先生から、そういうふうな問題があるので、自主返金というのが困難なケースが多いのではないかという御指摘であったと、話をお聞きしていて思いました。

実は、自主返金というのは、企業にとって非常にメリットがあるはずだと私も思っておりますし、被害の回復ということで消費者にとってもメリットがあるということで、消費者、事業者双方にとってメリットがある制度として、うまく考えていきたいなと思っておるのですけれども、自主返金をどういうふうに認定するのか、企業がどういうふうに対応していただくのかということを具体的に考えますと、実務においては相当困難なことが多いのではないか。

高橋委員の御指摘も、そういうところで企業は非常に悩むのではないかという御指摘ではないかと私は伺いましたけれども、ということがありますので、自主返金を実際に具体的にどうするかというのをよく踏まえないと、結局制度としては物にならないということになるのではないかという気がしておりますので、12ページ以下はそういう観点で書かせていただいている。

ですので、後半戦はここを中心に議論いただければと思っておりますけれども、1つは、商品を購入していない人が来た場合の返金というのは、これは座長がおっしゃったとおりでありますけれども、12ページの(1)で書いていますように、限定するのが筋かなと一応書いているところであります。これは、絶対的にこうでなきゃならないという趣旨ではありません。先ほど申し上げたように別の要素もありますので、それを勘案した上で割り切るという選択肢もあるのではないかというところは、しっかりと検討しなければならないのではないかと思います。

もう一つ、返す場合、全額返してしまうことが多いのではないかということもありました。例えば不当表示があって、商品を購入して、1,000円とか2,000円の商品である場合に、当該企業が返金しますということで返金する場合の金額は、1,000円、2,000円全部返すという選択を企業がとられることもあるだろうと思うわけでありますが、課徴金納付金額は、1,000円なら1,000円を売り上げて、売り上げが幾らかということの合計金額掛ける3%を取るといたしますと、企業が自主的に返金する額というのは、控除との関係でいいますと、仮に算定率を3%としますと、本当は3%でもいいかもしれないわけです。

ところが、そういうことを企業がわざわざするか。1,000円の3%、30円返すのか。返さないわけです。そういうのはばかばかしくてやらないという話になりますので、企業が実際にどういうふうにインセンティブを持つのだろうかということも踏まえながら考えないといけないのではないかと考えております。このペーパーで申し上げますと、16ページで、その総額との関係が出てくるのではないかということを考えております。

ですので、繰り返し申し上げますと、ここのところはまさに制度設計の本質にかかわるところだろうと思っておりますので、本来の筋と課徴金の機動性をどうやって確保するか、あるいは企業のインセンティブをどういうふうに持たせるか。それが消費者にとって被害回復として本当に意味のあることになっているのかという観点を踏まえて、見ていただく必要があるのではないかと思っております。

○小早川座長 それでは、大分白熱した議論が続きましたので、少し休憩をしたいと思います。10分程度、11時40分に再開といたします。よろしくお願いします。

(休憩)

○小早川座長 それでは、再開します。

今日、12時半ぐらいまでということで予定しておりますが、ほかの論点についても、一通り御意見を出していただいて、必要があれば消費者庁のほうもさらに詰めていただき、私どものほうも次回、さらに詰めた議論をすることにしたいと思います。

岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 質問ですけれども、余り件数が多いとは思われないのですけれども、民事訴訟が並行して起こされることもあると思うのですね。それで、もし裁判になって、企業のほうが和解するとか、あるいは敗訴するということで被害者に支払いをするときには、この控除の対象になるのでしょうかということです。今日の答弁の途中で審議官のほうから、それは自主的ではないから控除しないのだと言われたような気が。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 私が言いました。

○岩田委員 そうでしたか。質問ですけれども、今、企業の自主返済を促そうという仕組みとは若干違うかもしれませんけれども、課徴金で「やり得」になったものを吐き出させるということだとすると、課徴金は支払った後かもしれませんけれども、別途、裁判を通じて決着して、そこで被害者の救済がなされたといったときには、調整してもいいのではないかと思うのですが、そこをちょっと質問したいと思います。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 岩田委員の御指摘の点は、本日のペーパーの7ページにちょっと書かせていただいております。民事訴訟が別途並行して起こされることもあるのではないかと。その場合に、訴訟手続において返金がされた場合に、それを加味すべきではないかという御指摘であり、「やり得」の剥奪ということからしますと、「やり得」はなくなっているとも見れますので、そういう考え方も一理あると思っております。

ただ、私どもがここに書かせていただいておりますのは、今回の制度、自主返金による課徴金額からの控除というのを入れるという政策的な目的としましては、企業に自主的な対応を促していくということでありまして、自主的な取り組みということからしますと、訴訟で争って敗訴判決が確定して支払ったというのは、自主的な取り組みとはちょっと遠いのかなという気がいたしまして、事業者としては争うことはもちろん可能なわけでありますけれども、争って敗訴して支払い命令が出て支払ったという場合と、自主的に返金するということで、早期に消費者に対する被害回復を働きかけていく場合とで、そこには違いがあるのではないかと考えて、このペーパーとしてはこういうふうに書かせていただいているところであります。

ただし、そうは言っても、「やり得」がなくなっているということを重視すべきではないかという判断もあるかもしれません。他方で、民事訴訟で判決確定まで至るのでありますと、例えば最高裁まで行っている場合ですと二、三年かかりますが、そこまで待つのかということもあるかもしれませんので、そういった観点から御議論いただければ、また検討させていただきたいと思います。

○小早川座長 岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 ぜひ法律の専門家といいましょうか、先生とか弁護士の方とかの御意見をお伺いしたいと思います。

○小早川座長 今のは民訴との関係ですが、措置命令との関係では、先ほど、措置命令後に恐れ入りましたと言って支払うのはだめですよという御発言がありましたね。それも、考え方としてはつながってくるのではないかと思いますが。

○消費者庁菅久審議官 8ページでは、措置命令を出した後、一定期間、いつまでの対応の分はマイナス、減額として見ますよという仕組みを考えていて、そのマイナス分と課徴金を計算した額を合わせて額を確定させるというのが想定されるかなと思っています。

もう一つは、現実的に申しますと、先ほど課長のほうからも最後ちょっとありましたが、訴訟の期間と現実に景表法違反で調査して命令が出る期間を考えますと、かなり後者のほうが早いですので、例えば措置命令が出てから訴訟したら、完全に納付命令のほうが早いですから、反映させるという話にむしろならないのではないかという気がしています。調査を開始してから措置命令までは多少時間がかかるかもしれませんけれども、訴訟が終わるまでという期間を考えると、課徴金納付命令までの期間とは大分ずれがあるのではないかと思っております。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 関連して言いますと、自主返金をしたからといって措置命令自体をとめることは考えていませんけれども、逆に措置命令の後に行った返金を自主返金で一切認めないということは、私どもは今の段階では全然考えておりません。

○小早川座長 宮城委員。

○宮城委員 まず、一般論として課徴金と民事上の損害賠償との関係では、白石先生がよく御存じだと思うのですけれども、独禁法上の関係では課徴金と民事訴訟法は、制度や目的を全然異にするので、それは別ですよということで、あくまでこの制度は課徴金納付するに対して、それを自主返金したら課徴金を減免してあげますよということであるので、その理屈を援用するとすれば、それは民事訴訟の損害賠償とは関係ありませんよという話になろうかという気がしております。

また、現実問題としては、今、消費者庁の調査が入って、それから訴訟を起こすのだったら、消費者庁がおっしゃるとおり、全く非現実的な話であって、問題があり得るとすれば、先に判決が確定していて、それから消費者庁の調査が入ったということは考えがたいなと思っているのですけれども、そういったことなら問題になるかというところであります。

もう一つあり得るとしたら、例えばこれから始まる集団的消費者の訴訟をどこかの特定適格消費者団体が起こしていて、その訴訟が続いている間に課徴金と消費者庁の調査が入ったとなったら、それは当然消費者庁のほうが早いので、適格消費者団体は、それはそれでいいのかなということにはなろうかと思います。言おうとしたことを忘れてしまったのですけれどもね。だから、感想としては、両者の関係が緊張関係に立つことは、ケースとしてはそんなにないのではなかろうかという気がしております。

○小早川座長 どうぞ、河上委員長。

○河上委員長 前半、おくれて参りましたので、話がもう出ているかもしれないと思いながら伺っていたのですけれども、この課徴金という制度を導入するかの議論に当たって、基本的には事業者が上げた不当な収益を吐き出せ、不当な表示を抑止する必要があるということからスタートしました。不当収益の原資は何かというと、消費者が払ったお金の中の一部ということになりますので、消費者の出捐が利得に対する損失という形で位置づけられているのだろうと思います。

そうだとすると、民事で言えば不当利得の返還というものが一方で成り立つし、場合によっては損害賠償請求権が成り立ち得るところではあるけれども、実際には何が損失かということや被害者が誰かということが技術的には非常に確定しづらいということがあって、通常の民事の損害回復のルールにはなじまないという形で議論がどんどん積み重ねられてきた。となると、本日の議論の最初の部分ですけれども、「返金が原則である」というのは、これは単に理念であって、具体的、実体的目的にはなり得ないものではないかと思われます。

ですから、消費者のところに戻すことを理念とするとしても、課徴金制度の中にがっちりと組み込むのではなくて、民事訴訟で確定した債権が存在したのであれば、この課徴金とそれとは同じところから取ってしまったことになりますから、どちらかが優先するという優先要件を決めておけばよく、私は不当利得の返還請求権なり損害賠償請求権なりが額として確定すれば、その限りで優先権を持つとか先取特権を持つことは明らかにしてお互いにかぶらないようにしておく工夫が必要かという気がします。

ただ、そこまで行く前に考えていくと、両者は全く別の問題として動かしていったほうがいいし、それから返金制度というものを余り大きく位置づけていくことには、私は慎重であったほうがいいという気がします。実際に返金した。誰にやったか。それから、例えば寄附をした。何のために、誰に幾らやったか。それが果たして妥当なものであったかということの確定のためのコストが大き過ぎて、恐らく執行庁にはそれをやり遂げるだけのことは難しいのではないかと思われます。したがって、例外的に民事訴訟などで確定された場合以外は、余り考慮すべきではないのではないかと個人的には思いました。厳密な実体的問題と言うよりも、あとは、政策的な判断かも知れません。

話をもう一遍混ぜ返してしまったのでしたら大変申しわけないのですが、若干疑問がございましたので発言させていただきました。

○小早川座長 川出委員。
ですね

○川出委員 民事訴訟で敗訴して支払いをした場合にも課徴金から控除するかという問題についてですが、今回導入を考えている課徴金についても、その目的は違反行為の抑止であり、「やり得」を剥奪するというのはそのための手段であって、直接の目的ではないわけです。このように、違反行為を事前に抑止するというその前提からすれば、違反を行った企業が、事後的に、損害を回復する行為を行い、結果的に「やり得」がなくなったので、課徴金を課さなくてよいということにはならないということになると思います。その意味で、課徴金を課すかどうかと、損害回復がなされたかというのは、本来別の問題であるのですが、今回提案されている制度は、そのことを前提に、自主的返金を促すことによって損害を回復させるという政策的な意図から、例外を設けようという枠組みと位置づけられるものです。そうしますと、民事訴訟で敗訴して損害分を支払ったという場合は、返さなければならないものを返したというだけのことであって、その分を課徴金から控除する仕組みを作っても、損害回復を促進する効果を持ちませんので、それは考慮しないというのが筋だろうと思います。

○齋藤委員 それに関連して。

○小早川座長 はい、齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 私、国民生活センターでADR委員をやっているのですけれども、多数の者を相手に取引・売買した事例で、事業者が特定の人と特定の話はできないので裁判所でやりましょう、ということがたまにあります。それも一つの筋だと思います。そのかわり事業者名を公表しても結構ですと言われたこともあります。この辺をどう位置づけるかということも考える必要があると思います。

○小早川座長 白石座長代理。

○白石座長代理 先ほどの損害賠償との調整の問題について発言したいと思います。

独禁法の課徴金について複数の委員から御示唆があったのですけれども、独禁法の課徴金は、今回検討しているような被害回復という気のきいた制度が全くありませんので、そこで、民事の請求権とは全く関係ないという整理になっているというのだと思います。今回は、裁判外で自主的に返金したら課徴金を控除することになっています。他方で、私の理解するところでは、不当利得返還請求訴訟が起きたときに裁判外で返したお金があれば、それは当然民事の裁判でも控除されるのだろうと思います。

そういうことが複雑に絡み合うと、民事訴訟で確定したものはおよそ課徴金から控除できないとかいうのも変な感じがしますし、それから裁判外で自主的に返金したら、課徴金も不当利得も両方ダブル控除になるのかとか、さまざまなことを整理しないといけなくなってきまして、なかなかそう簡単にはいかない、整理が必要な問題なのではないかと感じております。

○小早川座長 今の関連でしょうか、増田委員。

○増田委員 先ほどから自主的返金ということについて、いろいろ御意見いただいていますが、私は自主的返金については非常に難しいと思っておりまして、発言できないでいたのです。実際に返してほしいという御相談があったときには、一番最初に黒田さんのほうでお話がありましたように、何を見て買ったのか、何も見ないで買ったのかという人の確認を消費生活センターでもしています。どの広告を見ましたか。いつ見ましたか。あなたが買うときの意思決定はどこでしましたかということを聞いて、利用した期間とか、その商品を利用したかということまで聞いた上で、返金を求める話し合いを進めているのが現状なのです。

そういう意味から言うと、どの範囲を返金と認めるのかというのが非常に難しいと思っています。事業者が全額返しましたというのは、勝手に返すことであるわけで、それによって本当に救われる人が救われないケースもあるわけです。正しく返金したということを消費者庁が決めることになると、また大変なことになろうかと思います。ですから、返金と寄附と、裁判による損害賠償請求ということの位置づけは、私自身、今、はっきりわかりませんが、石戸谷先生おっしゃったように、返金と寄附というのは同列という考え方もあろうと思っております。その辺を整理していただきたいなと思っております。

○小早川座長 長田委員、どうぞ。

○長田委員 先ほどの岩田委員からのお話で言えば、事業者はその方と争っているわけですね。争っているケースで敗訴した。争っているということは、自分のところの表示が不当ではないということで争っておられたのだと思いますので、そこで結果的に敗訴して返金したものは、決して自主的返金という整理にはならないだろうと思いました。

○小早川座長 ほかにいかがでしょう。一審敗訴で、上訴はしたけれども、旗色が悪いから返金しますというのはどうですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 それも自主的と見るかどうかというところではないかと思います。今の時点でこうだというのがあるわけではないのですけれども、白石先生がおっしゃるとおり、自主返金による控除という、従来型の課徴金と違う要素を組み込もうとしておりますので、そこは従来の課徴金よりもさらに「やり得」剥奪というのが前面に出てきている制度に、もし仮にこういうものを入れるとすると、なるということだと思います。

他方で、自主返金という形で消費者にとってメリットがある、かつ事業者にとってもメリットがあるということを促していくのが、政策的にはいのかなと。がんがん争って敗訴したときに、結果的にはそれは敗訴しましたから払うということまで含めるかどうかというのは、検討する必要があるのかなということで、その悩みをこの7ページに記載してみたということであります。

○消費者庁菅久審議官 今のようなケースを現実的に考えますと、先ほどちょっと同じようなことを申しましたが、消費者庁が調査を始めて、措置命令があって、返金の期間を見るという期限までに、今のような状態には至らないと思いますので、現実的にはそういう悩みは生じないのではないかと思っております。

それから、これはあくまで不当表示をなくす、かつ抑止するというのが目的で、後でお金を返すための仕組みじゃないので、命令を出して何年もたった後にお金を払ったらどうするかということは、まず考えなくていいというほうが素直じゃないかなと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 さらに、ちょっと概念的な部分をつけ加えますと、ここにはっきりとは書いていないのですけれども、制度をつくる上での我々の思想としてのプライオリティーは、機動性というものを1つ考えたいと思っておりまして、時間を、特に措置命令から課徴金納付命令までの期間というのは、余りだらだらやるということは今のところは考えていない。じゃ、どのぐらいの期間がふさわしいかというのは、今ちょっと検討しているところでございますけれども、逆にそこを何年も置くということはあり得ないということで、機動性というのを1つのキーワードで考えているところでございます。

○小早川座長 さっきからいろいろな面から議論がある、自主的返金なのかどうかというところもあり、一番狭く考えれば、発覚前に自分で反省して返金した場合だけを認めますよという、自首減軽みたいなものが考えられますけれども、今、提示されているのは、それよりは広いわけですね。だから、あとは程度の問題、どこで線引きするかということになるかと思います。

他方で、河上委員長が言われたように、こういうことは民事で決めるべきものであって、それと違う手続で控除に使うということで理屈が通るのかという問題があります。それでは、行政として司法判断に匹敵するような認定をした上で控除するということにしたらどうか。しかし、そうなると、機動性の要請には反することになるだろうと思いますね。その辺はどうですか。自主的対応を促すという政策目的のために、これは有効だということで、何とか制度化しようというお考えですか。

○消費者庁菅久審議官 御議論の対象だと思いますけれども、一つの考え方としては、あくまでこれは不当表示を抑止するために課す課徴金の額をどうやって決めるかという話でございますので、個々人に対して損害額を確定するという目的でやるものでは多分ないと思います。ただ、事業者の方に自主的対応を促すという政策目的を持ってやろうということでございますが、その中でどの程度のものをつくっていくかということかなと考えられると思います。

○小早川座長 白石さん、どうぞ。

○白石座長代理 少し違う問題になるかもしれませんが、民事裁判の関係でも、争う権利というものとの調整を考える必要があるだろうと思いますが、民事裁判の問題から離れても、自主的取り組みを促す、命令する前に返金をしていないとだめとか、あるいは措置命令の後、課徴金の事前手続に入る前でないとだめという雰囲気の御発言もございますが、争う権利とのバランスも考えないとぐあいが悪いのではないかと思います。

例えば、措置命令が確定した後だったら、争う権利は少し割り引いてもいいのではないかという見方もあるかもしれませんけれども、景表法違反を認めたとしても、課徴金の額には不服であるということがあり得るわけですね。そういったことも争う権利は、当然認められるべきであり、その点への配慮も十分必要なのではないかと思います。

○小早川座長 御心配は、この制度全体が、自主返金ということを何となく強制する、そういうほうに強く誘導するシステムではないか、それにあらがえないのではないかということですかね。

○白石座長代理 そうですね。立入検査に入られたら、もう違反と認めよという雰囲気が、ご説明を前提とすれば、制度全体に感じられる。今、言われているものを前提とすればということですけれども、そういうことが感じられなくもないということかと思います。

また別の言い方をしますと、あらかじめ払ってしまったものは、多分、後で返してくれとは言えなくなってしまうと思いますので、例えば10億円の課徴金と言われそうだけれども、争ったら4億円ぐらいになりそうだという人は、自主的対応などせずに争うほうを選ぶというのも、企業としては合理的な選択になってくるのではないかと思いますので、余り自主的と言うと、かえって望ましい結果が得られない可能性もあるのではと思います。

○小早川座長 菅久さん、どうぞ。

○消費者庁菅久審議官 ここで考えました経緯は、自主的対応のほうから来たというか、むしろ事業者の方々が現実に自主的に返金している人たちがいる。返金した人もしない人も課徴金の額が変わらないというのはどうかという御意見もございまして、そういうものを踏まえて、それは確かにそうだと。だから、その分は見ましょうということですので、そういう意味では、先生がおっしゃるように全く返金しなくて、そもそも違反がないと思えば民事裁判とか、全部争うでしょうから、そういうことも当然ある前提なのですけれども、そうじゃない方もいらっしゃって、その方にはそれなりのベネフィットを与えてあげてもいいのではないかというということで考えているところでございます。

○白石座長代理 既に自主的に払っているのだから助けてくれという人を助けるという御趣旨はよくわかるのですけれども、それに伴う副作用というか、そういうものが出てくるのではないかということを先ほど申し上げました。もともとこういう要望があるので応えようという御趣旨は、よく理解しているつもりです。

○小早川座長 そうなると、事業者がつらい立場に立たされる。具体的には、不当表示であることは認めるけれども、どれだけの返金をすべきなのか、そこが、できるだけ安全サイドで行かないと危ないということで、そちらの方向へ押し込まれる。そこに問題があるのだとすると、自主返金をするに当たっても、その段階で執行当局と協議し、すり合わせをした上で返金するという仕組みが、例えば考えられる。そういう方向の議論になるのですかね。

○白石座長代理 今の小早川座長の御提案を私が全部理解できたかどうかわかりませんけれども、景表法違反の不当表示であることを認めたとしても、現在の中間整理のベースでは、違反行為に係る商品・役務の売上額の何%ということになっているのですが、違反行為に係る商品・役務の売上額というものが、多分相当な争いの対象になり得ると思うのです。そこで、事案によっては、かなり大きな額の違いが出てくる可能性がありますので、そこのところを争う前に自主的対応を求められるということになりはしないかというのが、心配しているところでございます。

○小早川座長 済みません、座長が余りしゃべるのも何ですけれども、交通反則金とか税の犯則通告処分とかだと、あなたは今から刑事訴追されるところですがこれこれの金額を払ったらそうはなりませんよということを、執行側から具体的に提案するわけですね。それに乗ればそこで終わりになる。乗るか乗らないかの選択はできるけれども、シナリオは提示されている。それに比べて、こっちのほうはそこが出てこないので、一体どれだけのことをやれば消費者庁はどれだけカウントしてくれるのかがわからない。そこが違うところだとは言えるかなと思います。

○白石座長代理 そうですね。今回の制度は、かなり新しいもので複雑ですので、小早川座長の問題提起にきちんとお答えするのは、私にとっては簡単でないのですけれども、今おっしゃったように、既存の制度とはちょっと違うところがあって、その辺を十分整理した上で導入しなければならないのではないかと思っております。

○小早川座長 委員長、どうぞ。

○河上委員長 1点確認ですけれども、これは当初の課徴金の額を決めるときの議論なのか、それとも課徴金としてはこれで立つのだけれども、その後の減算措置をとるときの議論として、こういうことを考えるという整理なのですか。

○小早川座長 それも含めて、では、消費者庁はどうですか。

○消費者庁菅久審議官 8ページの景品表示法に基づく課徴金納付命令の金額を決める方法ということで考えておりまして、つまり、先ほどの売上額の何%というたぐいの課徴金額の決め方となれば、それで一定額が出ます。それと、実質的対応によるマイナス分という、つまり、一定額とマイナス分というのを確定させて、それで命令するということを発想しております。したがいまして、確定額のほうでも争われる可能性がありますし、マイナス分でも争われる可能性は当然あるという、両方争われる可能性があるということで考えております。

もう一つ申し上げたいのは、当たり前のことを繰り返しているだけかもしれませんが、課徴金納付命令で命じる額というのは、被害額の総額でも何でもございませんので、それは一定の決まった額でございまして、自主的対応は、別に課徴金納付命令が出ようが出まいが、やっていただいて全然構わない。被害額というのは、それが多い場合も少ない場合もあるわけですから、そこは課徴金納付命令の額を見ないと企業が対応できないというのは、むしろこの制度の本来の趣旨に合わないのではないかと考えております。

○消費者庁加納消費者制度課長 自主返金としてどこまで含めるのか、それから自主返金強制のような結果に陥ってはいけないというのは、私ども、きちんと検討しないといけないと、先ほど来の議論をお聞きして思いました。

それから、河上先生から不当利得との関係とか、いろいろと御指摘もありまして、増田委員からも、どこまで認めるかというのは結構難しい場合が多いのではないかという御指摘もあり、それはそれぞれごもっともな御指摘だと思いますけれども、今回の自主的対応というのは、アバウトではありますけれども、被害の早期回復ということと、企業にとっての企業イメージの向上といいますか、不当表示してしまったのはしようがないのだけれども、こういう対応をとることのインセンティブを与えて、企業にとってもメリットのあるような制度にしていきたいという基本的な発想がありまして、そこはまさに政策目的としてそういうことをやりたいと。

その場合、自主的対応というものとして、どこまでとるかというのは、これも政策的に最後はある程度決めてしまうという話になるのではないかと思っておりまして、先ほど齋藤委員から、額が違う場合どうかという、結構ラフなこともあるのではないかと申し上げましたけれども、こういう制度を仮に入れるとすれば、厳密な民事訴訟の返還請求権とは離れて、割り切ってしまうことにならざるを得ないのではないか。厳密にやり始めますと、本当にその額が適正なのかという判断を行政がしなければならないので、民事訴訟をやるのと全く同じ結論に至ると思います。そうしますと、座長が御指摘のとおり、機動性を全く欠く制度になりまして、何をやっているか、よくわからないという話になりかねません。

そうではなくて、ある程度割り切って、さっさとやってしまうと。企業と消費者との間での自主的な対応、一種の合意形成をしていくことになるのではないかと個人的には思いますけれども、そういうことで紛争も解決するし、企業イメージの向上の余地も残しつつ、消費者の被害回復も図るということで考えているということで、自主的対応の枠組みとしては、アバウトかもしれませんけれども、どこかで線を引いてしまうことになるのではないかという気がいたしております。

○小早川座長 川出委員。

○川出委員 今の点に関連して、12ページの論点マル4の対象と金額についてですが、まず、対象の話は先ほどから出ていますように、本当に被害に遭った人かどうかを消費者庁側が確定するのは無理でしょうから、結局は、企業が返金をした人全体を対象に考えざるを得ないだろうと思います。

それから、措置命令で認定された対象範囲外へ行った自主的返金をどう考えるかという点ですが、ここはどちらの考え方もあり得るところだと思いますで。つまり、もともと対象となる期間内に商品を購入した人とか、役務の提供を受けた人も、本当に不当表示を契機として購入等をしたかどうかはわからないわけで、そこで一種の擬制をするのですから、そうだとすれば、同じ不当表示であれば、措置命令の対象期間外に購入した人への返金を含む形で対象を広げるというのも十分あり得る話だと思います。ただ、その場合は、線をどこで引くかという問題がさらに生じますので、そこを明確に決められるかという問題があろうかと思います。

次に、金額ですが、理屈としては、自主的に返金すべき額というのは、消費者が受けた損害に対応する額ということになります。本来は、その分を返せばよいはずなのですが、ただ、それを厳密に確定することが難しいということもあって、全額返金するということが行われるのだろうと思います。そうしますと、先ほどの話で、自主返金額が課徴金額よりも上回る場合が出てきます。

そこで、そうした場合に、返金した額をそのまま課徴金金額から控除するかという問題が出てくるわけですが、事業者側から見れば、これで「やり得」がなくなるわけですから、それでいいということになるのかもしれません。他方で、資料の最後のページにも書かれていますように、それを認めますと、ある消費者に対しては返金がなされたが、他の消費者には返金がなされないままに終わってしまうということも起きかねません。なるべく多くの消費者への返金を促すという観点からは、返金額全額ではなくて、損害にあたる額だけを差し引くという方法もあり得ると思います。この場合は、一種の擬制になりますが、損害額を課徴金の額を算出すのと同じように、売上額に一定の率をかけるかたちで算出して、実際の返金額がいくらであっても、そのようにして出された金額を限度として差し引くというかたちになろうかと思います。

○小早川座長 そのほかいかがでしょうか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 私の考えが余りまとまっているわけではございませんけれども、2ページに消費者が民事請求権を行使して被害を回復しようとしても、課徴金で全部持っていかれることになると、現実にそういうことがどれだけあるかわかりませんが、残っている財産がなくなってしまっていて、救済が実際には得られないということが可能性としては出てくるのではないか、とあります。

それから、先ほど河上委員長がおっしゃった先取特権とか、その辺の債権相互の間の関係の問題、取り合いの問題ということかと思いますが、仮にそこを重視して考えていくと、自主的返金というよりは、損害賠償請求権を履行したとか不当利得返還請求権を履行した場合について調整を設けることになる。

この場合には、課徴金納付命令が出た前か後かにかかわらず、あるいは自主的かどうかにかかわらず、徹底して言えば清算することになるのではないかと思いますし、私もそういう制度はあり得るのではないかと思いますが、ここでは課徴金納付制度と不当利得返還請求等の民事上の請求権とは別だという前提で、ただ、この課徴金全体の制度が抑止のための制度であるとすると、いわばインセンティブを政策的に与えるための制度として、自主的な返金であれば、それをカウントしますということかと思います。

ただ、政策的だからといって何でもできるかというと、そうでもなくて、実際に民事訴訟が起きている場合とのバランスとか何かを考えると、要件を明確に限定しておかないと、逆にほかの場合とのバランスが悪いのではないかという議論が出てきてしまう可能性があるかなという気がいたしまして、川出さんが今、ある程度金額を限定すべきじゃないかということを言われましたけれども、政策的にそこは決めると意思決定するかどうかということだと思いますけれども、やる場合にもほかのケースとのバランスをよく考えないといけないという気がいたします。

○小早川座長 最悪のケースを考えれば、自主返金の形をとってそれで財産の分散隠匿を図るということにすらなり得るわけで、そういうものはだめなのでしょうけれども、後の集団訴訟等の民事訴訟で回復されるべきものを、その原資を、自主返金で分配してしまっているというのはどうか。そういうことをしてはいけないとまで言えるかどうかですね。それは、事業経営者の判断の問題で、違法でなければ財産はどういうふうに使ってもいいわけなので、それを全部凍結させてしまうという制度は、ちょっと無理があるかなという気もしますね。

河上委員長、いかがですか。

○河上委員長 事業者の判断として、自主返金で企業イメージを守るということはありだと思います。しかし、それをストレートに課徴金の額に反映させることは難しいのではないでしょうか。先ほど、これは課徴金の額を決める問題なのか、それとも加算・減算の問題なのかというのは、一括してそこは考えて、幾ら課すかという問題の中でやってしまうのだという話のように伺ったのですけれども、場合によっては、課徴金の算定の問題と切り離して、減額請求権のようなものを事業者に与えて、自分はこういう活動をして、こういう形で対応したのだから、その部分について減額してほしいと証拠を出して請求したときに、それを一定範囲で認めるという仕掛けにしておくことは考えられませんか。ある種の政策的判断でしょうが、課徴金の額の問題と自主返金の問題は切り離して議論するということが仮に可能であれば、そういう方法もあるのかなという気がしたのです。

あとは、山本委員が先ほど言ってくださったことで、まさに私もそのことも言いたかったことであります。

それから、時間がないので大変恐縮ですけれども、さっき齋藤委員から、どんどんと人の間を流れてきて、どこに言えばいいのかとか、複数の人間がいるときにどういうふうになるのかについてどうなのかという話がありましたけれども、民法の立場でお答えしますと、実は求償権を持っていること自体、一つの利得だと判断されますので、一番最後に表示した人間が責任を負うのだとしても不都合はありません。製造物責任の問題にしても、そういう形ですることは不可能ではないということです。それをここでどうするかは、また別問題ですけれども。

○小早川座長 そろそろ時間ですので、必要があれば消費者庁にもう一度整理していただいて、続きは次回にさらに議論することにしたいと思いますが、座長の権限濫用で、今のことにちょっとつけ加えたい点があります。
1つは、自主返金で特定の被害者に返金がされたということであれば、その特定の被害者との関係では、後の民訴で、これはカウントされるわけですね。そういうことでの調整は、これは民訴との関係では行われる。それから、事業者の側でこれだけ自主返金したのですということで、課徴金に対して何か言えるか。民事の関係と課徴金の関係とは別だということではありますけれども、課徴金の前提として、「やり得」がどれだけあるかということはある、それの何%とかいう話になるわけですね。その「やり得」部分がもうすでに減っていますということは、これは言えるだろう。だから、課徴金からそれだけ引いてくれという直接の権利にはならないかもしれないけれども、算定に当たって、それは反映される場合はあり得るのかなという気がしました。

それから、白石さんがその前に言われた、結局、救済の仕組みなしに返金を強制されることにならないかという点については、これはあくまでも自主返金を促すための政策的な制度設計の問題であり、その趣旨を踏み出さないようにということで検討するとのお話でしたので、そういうふうに理解したいと思います。

ちょっと余計なことも申しましたけれども、今日のところは、議論は次回につながるということでお許しいただいて、この程度にしたいと思いますが、何か特に御発言ありますでしょうか。

○宮城委員 意見ではなくて、論点の指摘だけなのですが、こういう論点が出てくるのではないかということで、ほかの論点との関係で考えたのは、ほかの加算事由とか減算事由とか、それは次回の議論かと思いますけれども、それを入れるとしたら、今回の自主返金との関係をどう整理するのかということは、いずれ考えなければいけないのではないかということが1つ。

2つ目に、措置命令が出ました。しかし、違反事業者のほうが消費者庁の言うことを聞かなかったということで、不当表示を継続した場合の対応はどうなるのかという問題は出てくるのかなと。それは、自分の表示が正しいのだと考えて取消訴訟をやる場合と、そうではなくて、単に言うことを聞かないで続ける場合。その場合は、つまり自主返金を受けられる人の範囲の問題と、金額としてどこまでになるのかというところ。措置命令後の継続ケースは、どういう扱いになるのかなというところがちょっと気になりました。

それから、1つ考えたほうがいいのではないかと思ったのが、自主返金の対象者とか、あるいは事後報告で自主返金や寄附をきちんとやりましたよということを報告したけれども、それが虚偽であったということもあり得ることで、それについては虚偽報告をした場合には何らかの制裁の規定などは必要ではないのかなと考えました。

以上です。

○小早川座長 自主返金の仕組みを入れるからには、報告なり届出なりの規定が入るわけで、そこで、悪いことをすれば、当然何かあると思います。

丹野さん、どうぞ。

○国民生活センター丹野理事 論点まで熟しているかどうかわかりませんが、今までは措置命令のときは、将来に向かって広告をやめるというので済みましたが、今度、課徴金制度を入れられれば、事業者は金銭で賄わなくてはいけないということになります。私ども消費者相談の現場では、実際に金銭を賄えるような資力が本当にある事業者なのかという点、不当表示をする事業者さんに関しては、そういうことも非常にありまして、そこの部分、課徴金を課すときの事業者側の資力の担保という観点はどうなさるのかという点が、このペーパーにもありませんでしたので、そこの部分の御検討をいただければと思います。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 丹野理事の御指摘は重要な御指摘でありますので、何らか考えないといけないかなと思いますけれども、できるだけ早期に相手方事業者を捕捉して運用するということが、他の課徴金制度の運用に関してもそういうことでやっているのかなと思います。

○齋藤委員 先ほどの宮城委員の流れで、ちょっと追加で一言。

○小早川座長 どうぞ。

○齋藤委員 措置命令から課徴金納付命令までに至るプロセスですけれども、いきなり措置命令がぼんと出て来るのか、指導とか警告など、事案のランクに応じたステップを踏んで出るのか、という全体像を1回示していただきたいと思います。

○消費者庁菅久審議官 そこは、今と変わらないつもりでおります。措置命令を出す前に警告しなきゃいけないというルールもございませんので、そこは今と全く同じと考えております。

○小早川座長 返金との関係でその辺の運用が何か意味を持つかどうか、ちょっと御検討いただき、何かあれば、次回に。

それでは、まだあるかと思うのですが、時間も過ぎておりますので、本日の議事は以上とさせていただきます。

≪4.閉会≫

○小早川座長 事務局から連絡事項がありましたら。

○金児企画官 次回ですけれども、4月22日火曜日の12時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○小早川座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。皆様、お忙しいところをどうもありがとうございました。

(以上)