第15回 消費者契約法に関する調査作業チーム会合 議事要旨

日時

2013年3月18日(月)9:30~12:00

場所

消費者委員会委員室

出席者

 河上正二消費者委員会委員長、
 大澤彩准教授、沖野眞已教授、鹿野菜穂子教授、北村純子弁護士、角田美穂子准教授、
 千葉恵美子教授、中田邦博教授、平尾嘉晃弁護士、丸山絵美子教授、山本健司弁護士
 【事務局】 山田茂樹委嘱調査員(司法書士)、戸上真語政策調査員

議題

 消費者信用における論点整理

議事要旨

(1)消費者信用における論点整理

<報告>

  • 現在、消費者信用取引は、規制が強化された「個別信用購入あっせん」から規制が緩い「包括信用購入あっせん」へ利用形態がシフトしてきている。また、電子化された多様な決済システムが、物やサービスの利用代金の支払手段として利用されている。
    第三者与信型の取引の発展によって、異なる法主体が与信業務と販売業務を担うことになったが、電子化した決済システムが第三者与信型の取引と結びつくことによって、与信主体の業務の一層の分業化が進んでいる。クレジットカード取引の場合には、カード発行業務を行う主体(イシュア:ISS)と加盟店管理業務を行う主体(アクワイアラ:ACQ)に分化したnon-on-us 取引が基本型となっており、さらに、決済代行業者のようにACQの加盟店管理業務の一部を担う法主体が登場している。
  • 各法主体は契約によって結びついているが、機能分化に伴う分業化によってもたらされたものであり、複数の契約は相互に独立した主体間の契約ではある。しかし、同時に、各契約は全体として一つのシステムを形成しており、各契約をシステムの構成要素として捉える視点が必要となる。
    non-on-us 型のクレジット取引の場合には、「第三者与信型取引」と「電子化した決済システム」という2つのシステムが結合しており、消費者が物の購入やサービスの提供を受ける際に、決済ネットワークを利用して代金が決済されるという点に着目する必要があり、個々の契約の成立や効力だけでなく、現行のシステムが、全体として、すべての利害関係者にとって効率的で公正なシステムとして機能しているのかという視点から、契約を全体システムとの関係でも観察することが必要である。
  • 決済システムは、支払人(ISS)と受取人(ACQ)が需要者として登場し、決済システムの所有・運営主体(クレジットカードの場合、国内取引では決済ネットワーク提供会社、クロス・ボーダー取引では国際ブランド)が供給者として決済システム(プラットホーム)を提供する関係にある。消費者信用取引において問題となっている紛争は、決済システムの観点からみると、ある需要者の行動が他の需要者に影響を与えることになる(ネットワークの外部性の問題?)。B2C の取引を広く包含する決済システムについては、原因関係にあたる売上債権に関する情報と決済にかかる情報が一致したときに初めて取引の承認が行われることから、有因性を一定の範囲で認める必要がある。しかし、債権法改正中間試案における「三面更改」では、この点が考慮されていない。
  • B2C の取引を広く包含する決済システムは、ユニバーサル・サービスの一つであり、例えばチャージ・バックルールを決済システム内に導入するなど、消費者の権利行使の障害となっている事態を解決することが必要である。B2C の取引を広く包含する決済システムについては特別法を制定することが必要であり、消費者取引について電子商取引が拡大する現状からは、消費者契約法に決済システムについて規定を置いた上で、各種の決済手段の特色に応じて、割賦販売法・資金決済法などによって規律するという方向性が考えられる。

<主なディスカッション>

  • 決済システムと消費者信用システムが結びついているところに近時の問題の根源がある。消費者にとって安心して利用できる決済システムを保障しつつ、最終的にはクレジット会社が最終的な責任を負うというシステムにすることが、消費者にとって必要なのではないだろうか。そのための方法の1 つとして、例えばチャージ・バックルールを決済システムに導入することを法律で強制し、抗弁の接続についても両方の契約の効力を同時に失わせるという手当をなすことがありうる。
  • 決済手段は多様化しているため(電子マネーなど)、法の隙間を作らないためにも、決済制度全体を視野に入れた立法が必要である。
  • 民法改正中間試案における三面更改については、民法典の中で抗弁の切断を積極的に認めることになってしまうことには慎重でなければならない。
  • 消費者契約法5条では委託を受けた第三者の行為についての認識は事業者側に対する要件として課されていないが、デート商法に関する平成23年最高裁判決(最判平成23・10・25民集65巻7号3114頁)では信販会社が販売業者の行為について認識しているか否かが密接関連性を判断する上での要件となっており、公序良俗違反行為の場合の方が要件が加重されているように思われるが、この問題については割賦販売法で対応することが考えられる。
  • また、消費者契約法5条で決済システムの複雑化に対応できるかについては、現実の決済システムをふまえると実質的に4 者間取引になっているため、現行法では限界がある。
  • 消費者契約法においては、一定の範囲で抗弁の切断が認められない場合があるという大原則のみを定め、個別の決済手段と消費者取引の結びつきをふまえたルールは割賦販売法などの特別法で対処することが望ましい。

(2)団体訴訟における論点整理【報告のみ】

<報告>

  • 消費者契約法実体法においては、個別救済のための民事ルールの規定の充実が目指されなければならない。
     適格消費者団体による差止請求の対象類型とするとの点を持ち出すあまり、民事ルールの規定の範囲が狭められることとなっては本末転倒である。
  • 消費者団体訴訟制度における問題は、本研究会の場ではなく、しかるべき検討の場で検討されるべきことである。

以上