第3回 原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会 議事録

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日時

2011年4月7日(木)15:30~17:38

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 田島座長、阿久澤委員、阿南委員、立石委員、日和佐委員、山浦委員、山本委員
【説明者】
 日本植物油協会 神村専務、田口理事、横溝表示部会長
 全日本菓子協会 奥野専務、藪氏、槇島氏
 神山弁護士
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.原料原産地表示に関するヒアリング
 ・社団法人日本植物油協会
 ・全日本菓子協会
 ・弁護士 神山美智子氏
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:10KB)
【資料1】 植物油の原材料と表示(社団法人日本植物油協会提出資料)(PDF形式:162KB)
【資料2-1】 菓子の原産地表示について(全日本菓子協会提出資料)(PDF形式:335KB)
【資料2-2】 消費者委員会「原料原産地表示」拡大の進め方に関する調査会への提出意見(全日本菓子協会提出資料)(PDF形式:71KB)
【資料3】 原料原産地表示について(神山弁護士提出資料)(PDF形式:11KB)
【参考資料1】 ダイオキシン類緊急対策第二次提言抜粋(神山弁護士提出資料)(PDF形式:15KB)
【参考資料2】 食品表示法案要綱案(神山弁護士提出資料)(PDF形式:20KB)
【参考資料3】 原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会のスケジュール(案)(PDF形式:9KB)


≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、お待たせをいたしました。始めさせていただきたいと思います。
 本日は、皆様お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会食品表示部会原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会」の第3回会合を開催いたします。
 本日は、迫委員から所用により御欠席との御連絡をいただいております。
 それでは、議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 配付資料ですけれども、議事次第の裏面に配付資料一覧を掲載しております。
 資料1、社団法人日本植物油協会に御提出いただいた資料。
 資料2の関連として、全日本菓子協会から御提出いただきました資料。
 資料3、神山美智子弁護士から御提出いただいている資料。神山弁護士からは、参考資料1と2ということで、関連する資料を御提出していただいております。
 参考資料3といたしまして、調査会の今後のスケジュールを(案)でお示ししております。
 不足がございましたら、事務局までお申し出をいただければと思います。
 それでは、田島座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○田島座長 本日は、消費者委員会事務局から、原事務局長のほか、齊藤審議官を含め、消費者庁からも御出席をいただいております。
 本日は、原料原産地表示拡大の進め方に関して、2回予定しておりますヒアリングの第2回目ということになります。原料原産地表示の義務対象品目を選定する際の基本的な考え方や対象品目の候補の選定方法などについて検討を行う上で、原料原産地表示についての現場の実態、原料原産地表示の進め方、問題点の抽出及び課題の整理を行ってまいりたいと存じます。
 なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録についても、後ほど公開することにしております。
 それでは、議事次第の議題に入ります。

≪2.原料原産地表示に関するヒアリング≫

○田島座長 まず、原料原産地表示についての現場の実態等について、日本植物油協会様、全日本菓子協会様、その後、原料原産地表示の進め方について、弁護士の神山様からそれぞれ各15分で御説明をいただき、今後の進め方について各委員より御質問、御意見をいただければと思います。
 それでは、日本植物油協会の神村専務様より御説明をお願いいたします。神村様、よろしくお願いします。

(1)社団法人日本植物油協会

○神村専務 済みません、風邪気味で声が悪いかもしれません。日本植物油協会の神村でございます。今日は、この席で私どもの考え方を述べる機会をちょうだいいたしまして、大変ありがとうございます。
 私の右側にいますのは、当協会の表示部会長をしております横溝でございます。
 左側にいますのは、当協会の技術担当をしております田口でございます。
 簡単なメモを配付させていただきました。これは、私ども日本植物油協会に参加いたします21会員の総意として申し上げるものであります。
 1枚目には、私どもの基本姿勢を書いています。ざっとお読みいただければ結構でございます。要するに、厳密でなければいけない。間違っていてはいけないということが基本だと考えております。
 2つ目に、この委員の先生方は既に御承知のことかとは存じますけれども、少し私どもの思うところを整理してあります。当然、この会合はJAS法に基づく表示の会合と伺っておりますが、現在、JAS法で「原材料」という言葉が非常に無定見に使われているということがあります。実は2つの「原材料」というものが存在しておりまして、1つの言葉で2つの概念が存在しているということが非常に大きな問題であると考えております。
 1つは、起原となる農林水産物を示す場合と、もう一つは、食品を構成する成分を示す場合。2つの概念が混沌とした状況であるというのが現在のJAS法であります。
 もともとJAS法というのは、製品の規格と品質表示基準は表裏一体のものでありましたので、表示基準である原材料はそのまま規格の原材料を示しておりまして、非常にわかりやすかったわけでありますが、昭和40年代半ばのJAS法改正でジュースの表示が少しゆがんだ形になったと考えております。
 この時期、本来「原材料」という一般規定を設けるべきだったのでしょうけれども、この時点ではまだ規格と品質表示基準が表裏一体でありましたので、そのまま据え置かれたと感じます。
 その後、JAS法は一般表示基準になりまして、表示全体を規定する制度になりましたが、そういたしますと、当然ながら「原材料」というものに対する一般規定が必要になるわけです。その作業が行われていないということでありますが、原材料を「起原農林水産物」とするのか、あるいは「製品を構成する成分」とするのか。こういうところに対して一般規定をきちんと整理する必要があると考えております。
 具体的に申し上げますと、4ページに書いております。
 例えばストレートのリンゴジュースでございますと、原材料名はリンゴであります。これは起原農産物です。ところが、果糖のジュース、例えばレモンジュースになりますと、原材料名が起原農産物のレモンと砂糖という構成成分の2つの概念が混沌としているわけであります。
 ビスケットになりますと、これはすべて構成成分であります。つまり、1枚のビスケットはこういうものでできているということであります。こういう概念整理ができていないということが、現在の混沌の理由の1つであろうと考えております。
 かつてジュースの原材料は「果汁」と書いていました。これは果汁以外のものは使用していない。リンゴの種も入っていない、へたも入っていない、皮も入っていないという意味になりますね。例えばアメリカの表示もこういう考え方でありまして、原則的に構成成分で書く。世界の潮流としては、いろんな国それぞれの事情がありますけれども、こういうものが主流であったということであります。
 原材料の表示がどういう効果を持つかということです。
 これは申すまでもありませんけれども、起原となる原材料作物を書いた場合には、これは何からできたという議論であります。どの部分を使っているのかということは不明瞭な状態になります。
 食品の構成成分とする場合には、最終製品に含まれる成分であることということです。
 小さい文字で書いているのは、私の個人的問題でありますが、うまみ調味料の原材料を「○○産サトウキビ」と書かれると、私は困るんです。「グルタミン酸ナトリウム」と書いていただかないと、私の食生活は狂ってしまうということになります。
 そういうことからすると、私どもは、原材料表示は、起原農林水産物ではなく、構成成分というものを原則として、どうしてもそれが表し難い場合、起源農林水産物もやむを得ないという一般原則をつくるべきだろうと考えております。
 具体的には、6ページに書いています。
 大豆を原材料農産物とする食品が並んでおりますが、起原農産物はいずれも大豆であります。
 原材料名表示は、真ん中のようになっております。
 最後、具体的に人は何を食べているのか。味噌、納豆というのは、最終的に食べるものと原材料も同じであります。起原農産物と同じですから、原材料名が起原農産物であっても何らおかしくはないと言っておりますが、困るのは豆腐と醤油でしょうね。豆腐は豆乳を固めたものでありますし、醤油は発酵によって生成された新しい成分です。これはそういうものを非常に表しにくいものに該当するだろうと思います。油につきましては、まさに抜き出した油分だけを食べているということなので、厳密性から言うと「大豆油」という表示でいいのだろうかと考えるということであります。
 以上、原材料表示に関する我々の基本的な考え方であります。
 次に、植物油製造業につきまして簡単に整理をしてございます。
 製造業の実態をよく御認識いただかないと、表示論というのはできないと思います。多くの皆様方は製油工場の製造工程の入り口から菜種が入れば、出口からボトルに入った油が出てくるとお考えかもしれませんが、それは大きな誤謬であります。植物油製造業というのは、搾油業と精製業の2つに分かれます。英語で言えば「Crusher」と「Refiner」という呼び方をいたしております。
 この搾油というのは非常に重要なものでありまして、世界の油生産量という場合は、この数字が出ます。多くの主要国では、原材料産地あるいは原材料の集積地に搾油だけをやる工場を持っています。ここで日がな同じものをどんどん製造しているわけです。そして、消費地に近いところに精製工場があって、粗油を買って精製をしているという状態であります。
 日本の場合はなぜ誤解を生むかというと、原材料の集積地が港であります。港の近くに大消費地があります。したがいまして、2つの工場が併設して建てられておりますが、この間は全く途切れた状態であります。したがいまして、製油業というのは、搾油という一次加工業と精製という二次加工業の2つから成立しているということをまず御承知おきいただきたいと思います。
 8ページは、それを図で書いたものでありますので、説明は省略させていただきます。
 原産国との関係でありますが、油の定義はCodexでこのように定義されておりまして、食品の中では、結晶体である塩、砂糖に次いでピュアなものであります。作物による油の差はありますが、同じ作物であればどこでつくろうと全く同じものが出てまいります。
 これは非常に重要な要件でありまして、例えば後で申し上げますが、国産菜種油というものに我々の油を混ぜても、だれも区分がつきません。こういうものを義務化すると、行政庁は監視をする義務が出てまいります。分析してもわからないということは、何も摘発ができないということなんです。これは行政庁の義務として発生するわけであります。これは非常に重要なモーメントであると思いますけれども、そういう性格のものでありますので、原産地による差は全く生じないということであります。
 10ページは、適当にごらんいただきたいと思います。
 現在、私どもの搾っている原材料、元の農産物では米糠が唯一国産であります。無論、統計数字に表れない菜種、落花生がございます。統計数字に表れないというのは、1,000トンに満たないということであります。
 11ページは、日本の植物油供給です。ちょっと時点が古くて恐縮です。2010年はまだ整理されていないので、2009年です。
 「国内で搾油」と書いてあるのが原材料農産物を買ってきて、日本で搾ったものであります。そのほかに粗油の形で輸入をされた油がありまして、250万トン程度の国内マーケットであります。
 このうち表示を必要とする家庭用の数量というのは35万トンぐらいかなと思います。全体の17~18%だと思います。
 12ページです。例えば一般的なサラダ油というのはこういうふうにつくられます。アメリカ産大豆、ブラジル産大豆、カナダ産菜種、豪州産菜種でこのようにつくられているわけであります。最大入ると、これに例えば輸入油というのが入ってくる可能性がありますが、そういたしますと、これを原産地表示しようというとなかなか難しい。どういう組み合わせが生まれてくるのかということがありまして、端的に言えば、この国の数だけの順列だけ表示が存在するということになります。事実上なかなか困難でありますが、より困難なものは、14ページのごまであります。
 「ごま油の悩み」と書かせていただきましたが、これは供給する国が全く安定しておりません。過去10年間にわたります延べ輸入先国というのは48か国に上ります。1年間の平均輸入国数は25か国ですが、2009年は少し減っています。だんだん日本には売らないという国が出てきたということであるかもしれませんし、たまたまそうなったのかもしれません。非常に多くの国から少量ずつ買い集めることによって、ようやくごま油が供給できているということであります。
 なお、この数字は製油用だけではなくて、すりごまでありますとか、練りごまでありますとか、炒りごま用の原料というものを含めた数字であります。
 15ページにありますように、ごま油の会社は、概念的に言うとこういうふうにタンクに製品が入っていて、これを混ぜるわけですが、このように明快に把握できるかどうかというのはなかなか難しい点があります。申し遅れましたけれども、先どの大豆は1年間に大体60隻の船が入ってまいります。菜種ですと100隻近い船が入ってまいります。ところがごまは1月にそれぐらいの船が入ってきます。小さなコンテナで運んでまいりますので、さまざまな物資と一緒に相積みでまいりまして、1つのコンテナは大体20トンですから、そういう単位で次から次へ入ってくる。朝昼晩ずっとちょこちょこ入ってくるというわけであります。それを次々と搾っていって、この模式図的にタンクの中にはいろんな国から来た油が入っているということです。これを組み合わせてつくるわけですから、これを適正に組み合わせた表示というのは、事実上不可能であります。
 申し遅れましたけれども、JASの表示は原材料の多い順番に書くということになっています。したがって、これを間違えると表示違反で回収義務が生じます。ラベルというのは数か月前から準備をいたしますので、数か月後のことをすべて見込んだ上でラベルを用意するのは神業であります。私の名前は神様ですけれども、私もできません。
 ということで、これを実行されるとごま油が製造できなくなると思っています。ごま油業界はみんなお手上げになると考えていただいて結構かと思います。
 具体的にいろいろあるんでしょうけれども、こういう事例を挙げてみようかということで整理したのが17ページであります。例えば一般的なサラダ油、菜種油が60%ぐらい、大豆が40%ぐらいという構成をしています。現在の表示は「菜種油」「大豆油」です。正確には「食用」と入ります。
 利用者は、菜種油が主たる製品であるということが一目瞭然でわかるわけですけれども、原材料表示を起原農産物表示にいたしますと、大豆がトップに出てきます。当然ながら歩留りの差がありますので、大豆が圧倒的に多くなります。こういうふうになるわけです。ただ「中国産大豆油」と書いてありますが、中国が原料供給国の内訳を教えてくれるかどうかはわかりません。
 これは一体どんな油ですかということになるかと思いますし、その次に、ごま油を混ぜた天ぷら油という事例を挙げてみました。現在だと、菜種、大豆、ごま、大豆とごまは入れ替わるかもしれませんが、こういうものが入っているなということになるんですけれども、元の原材料で原産地を付けてやるとこういうふうになるわけです。ごまのところは、多分スペースが足りなくなると思います。しかも、これが多い順に並んでなければいけませんので、書けるかどうか疑問であります。
 あとは事務局がよく御存じだと思いますけれども、仮にこういうものを実行する場合、油というのは食品の中でも最も国際流通性の高い商品であります。生産量のうち、貿易量の占める割合が非常に高い製品でございますので、国際ルールと相入れないローカルルールをつくる場合、大変困難な問題が出てまいります。私どもは、例えば中国でも、アルゼンチンでもいいですから、その国から大豆油を買ったときに、これはどこの大豆でできていますかということに対し、彼らは多分答えない。これは契約でできる話ではないですね。彼らが同意しなければ契約というのはできませんし、やはり国際ルールの範囲でしか契約ができないということになります。ですから、こういうことを行政庁としては義務として発生するという問題があります。
 なお、TPPが発足しますと、すべて意味のないことになろうかと思います。
 ということで、まとめを書いていますが、これは今まで申し上げたことを再度整理したものでありますので、お目通しをいただければと思います。
 最後にちょっとへんてこなものを付けたんですが、最近こういう主張があるので、これは困ったものだと思っています。国産表示がないために国産菜種が衰退したんだということをおっしゃっている方がおられるんですが、これは歴史の的確な検証を欠いた事実無根の誤謬であります。菜種の輸入が自由化されたのは1971年であります。それ以前は国家の手厚い保護がありました。しかし、それにもかかわらず菜種が減ってしまいまして、当時、我々は輸入の菜種1粒たりとも買うことはできませんでした。その結果、何が生じたかといいますと、全国に散在しておりました1,000に余る小さな製油工場が全部廃業の憂き目に遭いました。これは日本の製油市場で日本農業から受けた受難の歴史の最たるものであります。
 余談ながら、このとき廃業した企業に対して、現在、我々の会員たちが金を出し合って、当時で6,500万円の廃業見舞いを出しましたけれども、農業側からも政府側からも一銭のお金も出なかったわけであります。別に、だからどうということはないのですが、そういう受難の歴史があったということであります。
 なお、先日、私は近くのデパートの食品売り場で国産菜種油というものを見てまいりましたけれども、450gが税込1,890円。100gが420円であります。1年ぐらい前にある県に出張しまして、物産館に行きまして、やはり菜種油が売っていまして、150gが630円。判で押したように100gが420円でございました。私どもがお売りしています油というのは、最近ちょっと上がってきたと思いますが、1kgで400円割っていると思います。明らかにこれは商品が違うものです。国産菜種油というのは、富裕層を対象にした商品です。私は家で天ぷらを揚げますときに、1回で大体700gの油を使います。国産菜種油を使うと約3,000円の油代になります。ですから、これは商品として全く競合するものではないということです。
 ですから、現在においても、表示によって国産と輸入品が競合するということはあり得ないと考えております。
 最後に余計な話を付け加えましたけれども、これで説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○田島座長 日本植物油協会様、どうもありがとうございました。
 それでは、続けて、全日本菓子協会の奥野専務様よりご説明をお願いいたします。奥野様、よろしくお願いします。

(2)全日本菓子協会

○奥野専務 全日本菓子協会の専務理事の奥野でございます。本日は、このような機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
 私どもの協会は、お菓子の製造メーカー及びお菓子の製造メーカーで組織する団体が構成メンバーになった団体でございます。会員はお菓子に関係する全国団体18団体と57企業がメンバーになっています。末端のお菓子の製造小売りのメーカー等も入れますと、私どもの傘下で大体2万2,000~2万3,000企業のお菓子メーカーがいるということでございます。ただ、全国には大体商業統計でも製造小売りも含めますと5万軒ぐらいは事業者がおりますので、組織率としては半分弱という感じでございます。
 本日は、私どもの協会の中に食品表示衛生委員会というものがございまして、その委員2名が参加させていただいて、説明をさせていただくということでございます。私の隣が食品表示衛生委員の槇島でございます。その隣が同じく食品表示衛生委員の藪委員でございます。藪委員は、私どもの会員団体の1つであります全国和菓子協会の専務理事をしております。
 まず、槇島委員の方から、菓子関係の表示の現状なり、私ども全日本菓子協会としての考え方について、全体的な説明をさせていただきたいと思います。藪委員の方からは、特に中小製造事業者の実態なり、考え方について御説明させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○槇島氏 それでは、槇島がお手元の「菓子の原産地表示について==わかりやすい表示の作成==」という資料を使って、菓子の原産地表示について御説明申し上げます。
 2ページでは、菓子の表示について御説明いたします。
 例示してございますものは、市販されているキャラメルです。左上に表面、左下に裏面をコピーしておりますが、幅4.5cm、高さ7cm、厚さ2cmと非常に形が小さく、表示面積が少ないことがわかります。この裏面を右側に大きく書いてみましたが、原材料が15種類、そして、原材料はすべて中間加工品でございます。この中でも砂糖、小麦粉、油脂等は多くの菓子に主原材料として使用されております。また、一括表示以外にも、お問い合わせ先のフリーダイヤル、お取換え表示、主要栄養成分、ホームページアドレスが記載してございます。いずれもお客様にとって必要な情報でございます。
 3ページでは、菓子に共通で用いられる原材料について、砂糖と小麦粉を例に説明します。
 まず砂糖ですが、ここでは黒糖には触れません。砂糖は熱帯で栽培されるサトウキビからつくられるものと寒い地方で栽培されるビートからつくるものがあります。サトウキビからのものは、まず現地で原料糖がつくられ、それが各国に運ばれて精製糖がつくられます。精製糖の工場では、原料糖の国際的な需給能力等により、いろいろな産地のものを使います。また、ビート糖は1つの工場で精製糖まで仕上げています。砂糖は高度に精製されたスクロースとかサッカロースと呼ばれる物質のことであり、精製度や結晶の形が大切でございます。家庭でも料理には上白糖、梅酒づくりには氷砂糖と使い分けていますが、菓子工場でも菓子の特性に応じて砂糖を使い分けます。しかしながら、サトウキビかビートか、オーストラリアのサトウキビか、タイのサトウキビかという使い分けはいたしません。
 次に小麦粉でございます。中段に書いてございますが、小麦は国産小麦と輸入先としては、アメリカ、カナダ、オーストラリアの小麦がほとんどで、小麦の品質というものは硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦などがあります。これらが製粉工場でたくさんの工程を経て小麦粉に仕上がります。強力粉や薄力粉という種類があります。いろいろな小麦をブレンドしてつくります。家庭でお菓子づくりをするときには、お菓子の本には、ケーキには薄力粉を使う、パンには強力粉を使うなどと書いてありますが、オーストラリア産の小麦粉を使うなどということは書いてはございません。菓子工場でも、菓子製品の特性に応じて強力粉か薄力粉かといった小麦粉の使い分けをします。しかしながら、アメリカかオーストラリアかという使い分けはいたしません。
 これらをまとめれば、菓子の品質には中間加工品の品質が重要であり、農産物、中間加工品の産地は菓子の品質には影響しません。
 原料農産物や中間加工品は世界各国で生産され、需給等により産地は変更されます。
 中間加工品は極めて長い工程を経て高度に加工されています。
 中間加工品メーカーにより品質は保証されています。
 更に付け加えるならば、菓子の原材料産地といったときに中間加工品の産地の表示なのか、農産物、要するに小麦粉の原料の小麦、砂糖の原料のサトウキビ、水あめの原料のトウモロコシといった産地の表示なのか、物の考え方を整理して議論していただきたいところでございます。農産物にしても、中間加工品の産地表示にしても、原材料はいろいろな産地を使うため、表示作成は複雑で実質不可能であります。
 4ページでは、表示の切り替え手順について説明をします。
 もし原材料の産地表示を行うようになって、その産地が変更になる場合のシミュレーションでございまして、現実にはとても対応できるようなものではございませんが、書いてみました。
 産地変更の情報が正しく、時間の余裕を持って原材料メーカーから伝達されることが大前提でございます。明日から変わりますよという話では、とても対応できません。この変更には数か月は必要でございます。まず連絡があれば、我々の製品の何に使われているのか確認し、また、変更内容を入手し、その内容を確認し、原材料メーカーから規格書類を入手します。それに従い、新しい表示を作成します。表示確認をして、印刷に回します。工場に原材料の変更連絡をし、新原材料と新包装材料を用意し、旧原材料や旧包装材料の在庫管理を厳密に行いながら、新しい原材料、包装材料で生産に入ります。一定量在庫をつくる必要があります。
 一方で営業部門は、流通業へ変更の案内をします。また、切替時点で残った旧原材料や旧表示包装材料は廃棄することになり、環境保護上好ましくありません。菓子業界全体で考えれば、同じ原材料を使用しているメーカーもいろいろありますから、一度に数百、数千の製品に影響が及びます。仮にホームページの表示の変更でも数週間は必要となり、膨大な作業と費用が発生するのは同じことでございます。当然、表示ミスのリスクも高まります。中間加工品産地表示でも、農産物産地表示と同じように、膨大な作業と費用と廃棄物が発生します。
 1つの原料の変更でも、このように膨大な作業と費用と廃棄物が発生するのですから、たくさんの原材料を使用している菓子では、この作業が原材料の数だけ起こる可能性があり、天文学的な作業と費用と廃棄物が生じるということになります。
 5ページです。ここまでで菓子に原産地表示は非常に困難であるということを御説明したと思いますが、それでも原産地表示を試みてみました。
 一番上の段は、私が菓子に多く用いる原材料などを使ってつくった配合でございます。
 2段目は、左側が今、使っている農産物の産地、右側が中間加工品の産地、つまり砂糖でいえば、左側はサトウキビとビートの産地、右側は砂糖の産地です。
 3段目は、大くくり表示、外国か日本かということですが、左側がサトウキビとビートの産地なので、外国、日本、右側なら砂糖の産地なので日本となります。
 更に一番下の段は、可能性のある国すべてを記載しています。砂糖からサトウキビとビートの産地のうちで精製糖会社が使用する可能性のある国すべて、右側は菓子メーカーが精製糖を使用する可能性のある国すべてを記載しています。砂糖という原材料表示にもサトウキビ産地を書く、あるいは精製糖工場の所在地を書くというのは、どちらを書いても誤解のもとになるとも思います。
 さて、これらを見ていくと、農産物もしくは中間加工品産地表示をすると記載量が一気に増えて、大くくり表示でも極めてわかりづらい表示となることがわかります。
 アレルゲンを含む原材料など重要な表示を見落とすおそれが発生します。つまり、健康被害の引き金にもなりかねないということです。実際これで健康被害が起こったなら、だれが責任をとるのでしょうか。
 JASはチョコレートやマヨネーズといった複合原材料等の表示も認めていますが、これらの原産地表示はどうするのでしょうか。また、私は不勉強ですが、諸外国において、原料原産地表示制度はないと聞いておりますし、見たこともありません。輸入品にも同様の対応が可能なのでしょうか。更に、当然重量順に変更しなければなりませんから、重量順の変更も膨大であります。重量順の変更ミスも表示違反になり、回収、廃棄となります。
 また「または」表示には、国産が含まれる場合は優良誤認となるということでございますので、国産を含む「または」表示は認められていません。そのため「または」表示は実行上不可能であります。
 このように産地表示作成は不可能ですし、非常にわかりづらいし、意味がないということでございます。
 6ページは、私の最後のスライドになります。菓子には最初のところで御紹介しましたように、小さな包装形態の菓子が多いということでございます。先ほどはキャラメルを御紹介いたしましたけれども、チューインガム、キャンデー、チョコレートなど、コンビニエンスストアーや駅のキオスクで見ていただければ、小さな包装のものはたくさんございます。
 2番目に、菓子には多くの原材料を使用するということで、最初のキャラメルは15原材料でしたが、39原材料などというものもございます。
 更に、輸入製品は製品原産国を表示するということがJAS法で定められております。要するに、これが輸入品であれば、例えばシンガポールでつくったものなら、原産国はシンガポールと記載することになっていて、極めて合理的な制度でございます。
 最後に、原料原産地に関するお問い合わせですけれども、菓子メーカー4社の2年間のお問い合わせのうち、原料原産地に関するものは0.02~0.23%でございました。どの会社へのお問い合わせでも、原産国に関する質問は極めて少ないです。主たるお問い合わせはどの店で売っているのかという取扱店に関するもの、あるいはキャンペーンに関するもの、工場見学に関するものなどです。
 以上をまとめれば、菓子の原料原産地表示は、農産物産地は勿論のこと、中間加工品産地表示も実質的に不可能であるばかりでなく、表示が極めてわかりにくくなります。現在のJAS法の原料原産地に関する考え方と対象品目は極めて適切かつ十分であると考えています。
 では、藪委員、お願いします。

○藪氏 全国和菓子協会、全日本菓子協会の食品表示衛生委員会の藪でございます。よろしくお願いします。私の方からは、特に菓子業界の中における中小零細事業者の立場に立って意見を申し上げます。ちょっと抽象的になる部分もございますので、お含みを願いたいと存じます。
 原料原産地表示を行うことが困難な理由ということにつきましては、ただいま同僚委員の槇島委員が陳述したとおりでございまして、私も同意見でございます。
 菓子業界におきまして、中小零細事業者は、和菓子、洋菓子はもとより、チョコレート、ビスケット、米菓、飴菓子、油菓子、その他広範囲に存在いたしまして、生産者数はおおよそ5万件に及び、生産金額は和洋菓子のみに限っても約7,690億円になります。これにチョコレート、ビスケット、米菓、その他を加えますと多額な生産金額になり、その中で表示義務対象商品は約8割を占めると思われます。
 日本の食産業は菓子産業だけではなくて、佃煮、豆腐、惣菜など、他業種が地域と密着して営業され、商品を供給している事実がございまして、それらの事業者を含めると大変な数の小零細事業者が存在しているということを冒頭に申し上げておきたいと思います。
 まず、原材料の仕入れでありますが、大企業が困難であることは、今、槇島委員が申したとおりでありますが、小零細事業者におきましては、小零細事業者であるがゆえに倉庫施設などが不十分であります。したがって、仕入れは少量単位で、しかも多品種の原材料を仕入れることになります。そのため、原材料の原産地等が変化することも頻繁に発生することになり、原料原産地表示には極めて煩雑な事務を要するため、実行は不可能であると考えます。
 また、小零細事業者は家族労動力を中心として営業されており、従事している者の数が少なく、そのほとんどが製造と販売に携わっている現状でございまして、原料原産地表示を正しく行うために人手を割くことは難しい状況にあり、現状では原料原産地表示は不可能と思われます。
 次に、原料原産地表示を推進するという考え方に立つ方々からは、表示スペースに限りがあることなどから、ホームページなどを活用した表示をするという案があることも仄聞しておりますが、JAS法でいうところの表示は、商品選択に資するためのものでございますから、商品を手に取った際に確認することができないホームページによる表示は単なる宣伝行為にすぎず、義務表示としての意味をなさず、不適当であると思います。
 このことは5万件に及ぶ中小零細事業者において、自店のホームページを有している事業者は、全国和菓子協会の会員調査では約9.2%、全国菓子工業組合連合会の調査では約6.6%しかおりませんで、全体を推定しても約8%程度と見られ、その点から考えても、ホームページによる表示は不可能であると思われます。
 以上は意見として提出しているものですが、ほかに二、三意見を申し上げたいと思います。
 1つ目は、槇島委員も簡単に触れていましたが、外国から輸入される加工商品には、原料原産地表示を求めることは不可能であるということです。そもそも製造年月日表示であったものを期限表示に移行したことの理由の1つに、鮮度重視を招く製造年月日表示が非関税輸入障壁に当たるとする外圧によるものがあったことを考え合わせますと、再びそうした問題になる可能性が少なくありません。その結果、輸入される外国産の加工食品は義務表示から除外されるとすれば、国内産の製造業者だけにそれを求めることは著しく公平性を欠いたものになり、かつ諸外国もそうした国内の表示事情を非関税輸入商品としてとらえるであろうことは当然考えられ、原料原産地表示の義務化というのは不適切であると思うわけであります。
 次いで申し上げたいことは、消費者委員会による議論を見ていますと、消費者の知る権利、選択の権利ということが一部の委員において声高に論じられておりますが、権利には必ず常識的な消費者であるための義務が生じるということを、同時に合わせて申し上げたいと思うわけであります。
 例えば現在、東日本大震災に伴う福島原発の事故により、農産物や水産物が大変な風評被害に遭っているのは御承知のとおりです。毎日のように1年中食べ続けても安心という報道があれだけなされているにもかかわらず、福島県産、茨城県産というだけで買う人がいなくなっています。これが正しい選択権利の行使でしょうか。原産地表示がもたらす問題を感じないわけにはいきません。
 次元は変わりますけれども、スーパーマーケットで食品を購入する現場をチェックしますと、たとえ今日食べる食品でも、棚の奥の方から賞味期限の長いものを引き出して買うという行為がよく目立ちます。果たしてこれが選択権利の行使でしょうか。考えさせられる問題だと思います。
 メーカーサイドにも表示偽装などを行うような不心得な者がいて、そのことは誠に申し訳ないことでございますけれども、それを声高に言うのならば、消費者と称する人たちにも同じように不心得な人がいるという事実を言わないのは、偏った意見であります。このところ増え続けている悪質クレーマーなどの存在もこれに当たると思います。多くの善良な消費者の方々から言えば、それは例外的なことであると思います。しかし、それならば、製造メーカーのその大半は善良に安全な食品を提供する努力を続けていることに留意されてしかるべきだと思います。
 こうしたことについては、結局のところ人間の問題であろうかと思います。そうしたことから言えば、消費者庁、消費者委員会は、現在、製造メーカーなどに求めるさまざまなことと同じような熱意を持って、消費者教育を積極的に行うことが大切なのではないかと思われますし、それこそが正しい消費者庁としての在り方だと感じるところであります。
 少し長くなりますが、もう一点言わせていただきたいと思います。
 しきりに消費者の声、消費者の権利と言われ、ややもすると消費者という特別な人種が存在しているような考え方がありますけれども、消費者とは社会の構造や産業界などと対立して向こう側に存在するものではないはずなんです。私は、和菓子に関して言えば供給する側の立場でありますけれども、その他の食品やすべてのものに対しては消費者であります。その意味で私の知っている消費者の声は、権利の主張だけを行うことは決してありません。むしろ○○が製造しているから安心だとか、○○で買えば安心だという生産者や販売者との間の信頼関係が成立していることが強く感じられます。それが本来の社会の姿ではないかと思うわけであります。商品を製造し、提供する者と消費者は、ある意味で一体のものではないかと思わずにはいられません。
 その意味で、表示などについて必要以上に複雑なものを求め、産業界に困難を求めるのは、結局のところ、消費者の皆さんにも、たとえば商品の価格が高くなるとか、表示の文字が小さくなって大切な表示を見逃してしまうとか、あるいは原料原産地表示など、選択条件の広がりがかえって選択を難しくするなど、さまざまな意味で不利益をもたらすものではないかと思いまして、原料原産地表示については不適切であると考えているところでございます。
 以上でございます。

○田島座長 どうもありがとうございました。ただいまのは、全日本菓子協会様からの御説明でございます。
 続きまして、弁護士の神山様より、御説明をお願いいたします。

(3)弁護士 神山美智子氏

○神山弁護士 本日はお招きいただきましてありがとうございました。弁護士の神山でございます。
 今、2つの団体の方から、原料原産地表示は非常に難しいという御意見がありましたけれども、消費者の権利という問題について、一言述べさせていただきたいと思います。
 御存じだとは思いますけれども、食品安全基本法という法律がBSE問題を受けてできましたが、食品安全基本法の中には「消費者の権利」という言葉が書き込まれておりません。消費者基本法には、基本理念として尊重されなければならないということで「消費者の権利」という言葉がありますけれども、少なくとも普通に使える法律の中に「消費者の権利」という言葉はありません。日本の食品安全基本法よりも後からできた韓国の食品安全基本法には「消費者の権利と義務」という言葉が入っております。「義務」が入ってもいいと思いますが、少なくとも法律の明文として「消費者の権利」という言葉を入れなければいけない。それが基本にあるということをまず踏まえていただきたいと思います。
 原料原産地表示を拡大する調査会だと思いますけれども、目的なき拡大は無意味だと思っています。消費者の知る権利、選択の権利を保障するための表示という意味で、まず原則としてすべて表示するという表示の原則を立てる。どこまで表示できるか、表示のできるところから拡大していくというのではなく、原則表示義務があるけれども、そこの中で表示ができないとか困難だとか、あるいは要らないというものを落としていくという、向かっていく姿勢が大切なのではないかと思っています。
 この調査会の議論は、当然JAS法に基づいて、つまり品質表示ということでなされているわけですけれども、参考資料2を見ていただきたいと思います。これは食品表示法案要綱案です。食品表示を一本化して、食品表示法という法律をつくるべきであるということで、食の安全・監視市民委員会と主婦連の合同でこの案を先日消費者庁にお出ししてきました。消費者庁の方も消費者基本計画の中に表示法の一本化ということは入っておりますし、いずれ法案を提出しなければならないということもスケジュールの中に入っているわけですから、JAS法の品質だけにこだわるのではなくて、表示法が一本化されるのだという意味で、この表示の目的を絞らないでやっていただきたいと思います。
 表示法案要綱案に「1 目的」が書いてありますけれども「消費者の安全を確保し、自主的で合理的な商品選択が確保されるようにするため」「もって消費者の権利を確保することを目的とする」という法律をつくってくださいということを提言しております。
 ついでに、先ほどの風評被害のこともありますので申し上げたいのですけれども、現実に今、出荷制限などが起きている放射能の問題です。参考資料1に、1999年7月に「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」、現在はNPO法人になっておりまして、私も理事をしておりますが、このダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議がダイオキシン類緊急対策第二次提言というものを出したときに、消費者の知る権利の保障、選択の権利の保障ということをうたっております。長いので4.の部分だけ抜粋してプリントしていただきました。
 最後のページに「産地名として都道府県ではなく、市町村などさらに詳しい地域の表示が求められます」ということで、ダイオキシンのとき、1999年の時点から、私たちは食品の原料原産地の表示を県単位ではなく市町村単位のような細かいものにするべきではないかということを言ってまいりました。それを県単位にしていたために、結局茨城県産のホウレンソウは全部だめとかいうことになっているやにも思いますので、もう少し細かい表示があるべきではないかと思いました。
 もう一つ、これは食品衛生法の表示ですけれども、製造所固有記号というものがあって、現在、この大震災の特例として、製造所固有記号が違っていてもいいという通知が出ておりますけれども、これは私どもの食品表示法案の中では製造所固有記号はやめるべきであり、製造所の住所と製造所名を表示させるべきだと言っております。そして、この表示を一本化したときには、JAS法は要らない。JASの中のJAS規格はともかくとして、表示基準は要らないと思いますので、JAS法、食品衛生法、健康増進法、酒税法、米のトレーサビリティー法といった食品の表示に関するそのほかの法律を全部廃止するということをうたっております。
 前に三田共用会議所で原料原産地表示の意見交換会なるものがあったときに、漬物業者の方が言っておられたのですが、漬物業界だけなぜこういう義務表示を課するのかと。漬物でできることはほかの業者でもできるはずだから、漬物と同じようにほかの事業者の方にもちゃんと表示を義務付けてほしいということを漬物業界の方がおっしゃっていたというのは、非常に興味のあるお話でした。
 今までやってきた、例えば加工食品の原料原産地、刺身の1つは生鮮食品だけれども、盛り合わせになると加工食品だから生鮮食品としての原産地表示が要らないとか、児戯に類するようなことを今までやってきたのではないかという気がいたします。
 これも事業者の方から聞いた話ですけれども、今は中小零細の方がどうか、私はよくわかりませんが、コンピュータで管理している時代で原料の調達先というのも当然データに入っているはずだから、それが表示できないということはないはずだと。コストがかかるということもないはずだということを言っておられる事業者の方もいらっしゃいました。仮にコストがかかるとか、先ほどのお話のように、捨てなければならないから環境問題にもなるということがあるとすれば、そういうことをきちんと公表して、だからこうなんだという具体的なお話をここの調査会でもやっていただきたいと思います。物によっては、国際価格を見ながら安いところから調達しているという場合もあるのではないかと思いますが、そういうものであれば、そのコストは当然事業者が負担するべきではないかと思っております。
 対象品目の選定の方法として、どういうことからやっていくかという点については、具体的に個別に広げていくということではなくて、消費者の知る権利や選択の権利を保障するためにやるのだという原則をまず立てて、その原則に従って対象品目を決めていくという方法をとっていただきたいと思います。特にいろんな方の御意見を伺いますと、対象品目としてほしいと言っておられるのは、遺伝子組換え食品の表示が免除されている油とか醤油のようなものについては、優先的に原料原産地の表示をしてほしいと言っておられました。
 それから、弁当とか惣菜。お弁当の業者の方がコンビニで見ていても、弁当をひっくり返して見ている人はいなかったとおっしゃったことがあるのでが、弁当をひっくり返したら商品になりませんので、弁当や惣菜のようにひっくり返して見られないというものは、是非表に書いていただきたいと思います。
 日本弁護士連合会で昨年、韓国に食品の調査に行ったものですから、事務局の方から韓国のことを少し紹介してほしいと言われたのですが、実は表示の調査に行ったわけではなくて、先ほど申し上げましたように、韓国には消費者の権利と義務を明示した食品安全基本法があるので、それがどのように実行されているかということを調査に行きました。私が一番驚いたのは、韓国で会う行政担当のいろんな方たちが、消費者の権利を確保するために自分たちは仕事をしているとおっしゃったということが非常に印象的で、日本との違いだと思いました。これは加工食品の原料原産地ではありませんが、牛肉の原産地はレストランでも表示することになっているというので、メニューを見せていただきまして、ビーフ・ドメスティックと書いてあるものを現実に見せていただきました。
 消費者が本当にそんなものを知りたがっているのかというお話もありましたけれども、やはり表示というのは消費者が情報を入手できる第一番目の手段。次はホームページだと思いますが、第一番目の手段なのですから、その第一番目の手段でできるだけの情報を消費者に与えようという姿勢にまずなっていただきたい。消費者という言い方がおかしければ、御商売の方にとってはお客様なわけですから、お客様に自分たちの情報を伝えたいという努力をしてくださる業者の方たちは生き残っていくのではないかと思っております。
 現在の風評被害の問題についても、あれは風評被害ではないと思います。そもそも、これは食べ続けても直ちに健康被害が生ずるおそれはないという意見の方がよほど風評だと思っておりまして、それは内部被爆と外部被爆を間違えて説明していたり、今、直ちに健康に影響が及ばないということは、今、食べたとしても直ちにがんにならないと言っているのと同じことですから、そんな説明を幾らしても消費者は信じない。消費者に正しい情報を与えない限り、風評被害はなくならないということを是非考えていただきたいと思います。
 以上です。

○田島座長 どうもありがとうございました。お三方から御説明をいただきました。
 それでは、委員の方から、お三方の御説明に対しまして、御質問がございましたら、まずお聞きしたいと思います。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 神村さんにお伺いしたいんですけれども、資料の7ページと11ページとの関係です。
 油においては、なかなか流通が複雑で、こういった原料原産地といった問題になじまないという説明をお話の中でしていただいたと思うんですが、搾油業と精製業に分かれているんだとおっしゃったわけですが、11ページの方を見ますと、菜種油については、日本においては国内で搾油をするのが92万トン、輸入したものが1.4万トンであると書いてありますし、大豆においては47.7万トンが国内で搾油、輸入が3.6万トン、コーン油については8.6万トンが国内で搾油、輸入がゼロということがありまして、逆にパーム油についてはほとんど輸入だと。そういうデータを示されているわけですけれども、こういった状況を見ますと、搾油業と精製業との分離というものが普遍的であるということにはどうもならないのではないかと考えます。
 ですから、消費者としては、例えば油については、今、神山さんがおっしゃったように、遺伝子組換えの原料といったものについて非常に気にしていると思うんですが、搾油の際にどの国からの、そしてどういった大豆あるいは菜種であるかということについての情報がわかるということであれば、これは是非義務表示の対象にするべきではないかと考えるんですが、特にこの点についてだけ質問をさせていただきたいと思います。

○田島座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○神村専務 要するに、説明をお聞きになっていなかったということだけでありますけれども、搾油業と精製業というのは全く違うものです。油の生産量というのは、粗油の量で表します。つまり、その先の精製になるといろんな方が精製しますので、追いかけられないんです。だから、世界中で搾油とリファインというのは完全に分かれております。それが1つです。
 この輸入した油というのも、ほとんど粗油です。だから、国内に入ってだれかが精製をしています。精製しなくていい油があります。オリーブ油です。これは精製いたしませんけれども、それを除きますと、まずほぼ全量が粗油で、精製業がこれを引き受けて、それを販売するということになります。
 もう一つは、遺伝子組換えの問題でありますが、現在の食品衛生法あるいはJAS法を詳しく読んでいただければわかるんですけれども、暫定的になっているんです。つまり、油というのは最終商品において真偽が確認できない。これは先ほど申し上げたように義務化ということをすると、行政庁はときどき抜き取りをやって、これを確認しなければいけない。確認もしないで工場に査察に入ることは、行政庁としてはできない。仮にやれば、それは警察権力の横暴ということになります。
 このJAS法あるいは食品衛生法の遺伝子組換えの表示を決めるときに、そういう技術ができれば、そのときは義務の対象にしますということがきちんと書かれている。今、まだその時期が来ないということであります。
 ただ、ここで申し上げれば、私どもが売っている油は、ほぼ全量遺伝子組換え原料と考えていただいて結構であります。我々は分離したものを買っておりませんので、ほぼ全量と御理解をいただいて結構であります。一部食品は義務表示されておりますけれども、あれも抜き取り調査をすると全部組換え遺伝子が発見されます。5%未満の混入であればいいということなので、結果としてあれは5%未満であったということで全部収まるわけです。あれでも調べれば出るけれども、パーセンデージまでは正確にはわからないという問題もありますが、ああいうふうにこれは由来が何であるかということが最終商品で確認されるようになれば、それは表示の対象にするということわりがちゃんとあるんです。なぜそういうことになるかというと、まさに偽装表示の防止であります。
 私どもの会員会社は社会的信用を大事にしますから、そういうことはやりませんけれども、例えば海外から遺伝子組換えではありませんという油が入ってきたときに、だれもそれを確かめることはできない。そういう不当表示を排除するというのが表示の中では非常に重要な要素なんです。これは行政庁が責任を負わなければいけない。多分この技術はまだない。ただ、今、いろいろ研究されています。わかるようになってきたという説もあります。そういう段階になれば、表示という問題は必ず出てくると考えております。あくまでも経過的な措置であるということです。
 もう一つ、私が先ほど申しておりましたように、どうも原材料の概念がおかしい。全日本菓子協会の方は、農産物のことをおっしゃらなかった。ですから、原材料が何だということを考えたときに、どこからスタートするかということが非常に重要なことなんです。ほとんどの加工食品が構成成分です。ビスケット1枚にいろんなものが入っている。これはこの順番で、この1枚のビスケットに含まれているということです。でも、例えばジュース(りんご)と書いてあると、りんごの何を使ったのかわからない。例えば果肉入りジュースというが非常にわかりやすいんですけれども、これはりんご果汁とりんご果肉と書けば正確になるわけです。種や皮は入っておりませんと言っていることになるわけです。
 私が言っている厳密性というのは、そういう意味なんです。今、自分は何を食べているのか。何からつくったということではなくて、今、自分が食べている物質が何であるかという方がはるかに重要な問題であるし、私個人にすれば、原材料がサトウキビと書かれるよりは、グルタミン酸ナトリウムと書いていただかないと、私の健康に影響するわけです。
 お答えになったかどうかわかりませんけれども、搾油と精製というのはそういうものです。

○田島座長 では、山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 まだ11ページのところは合点がいかないんですけれども、今の御説明ですと「国内で搾油」と書かれていますが、そこには粗油を使った何かの工程があるということでしょうか。
 それから、いろいろと御説明をいただきましたが、ごま油の場合にはいろいろな材料が入り組んでいるといったことがわかりましたが、それに比べて菜種と大豆、コーン油の場合はどうも違うのではないかという印象を持っているんですが、もう一度御説明をいただけますか。

○神村専務 11ページの表は、国内で搾油した粗油の量がそれだけだと。国内に輸入した農産物あるいは国産の米ぬかを搾って取れた粗油がそれだけの量であるということで、申し上げたように、油の生産量というのは世界的に粗油で表されるということです。これが更に精製されて、最終商品になります。ですから、最終商品の量とは違うわけです。精製所の歩留りが出てまいりますので、これより3%とか5%少ない量が出てくるでしょうけれども、そこまではわからない。いろんな方が精製をしておられますから、国でもそこをすべて追いかけることはできないということです。これが11ページの表の問題であります。
 ごまと菜種、大豆の問題は、おっしゃるとおりかもしれません。ただ、油全体としてどう考えるのかという問題であって、もう一つは、必ず多いものから順に書けということについて、どこまでそれが担保できるかというのはわからない。先ほど申し上げたように、菜種の船は年間100隻、一月に8隻ぐらい入ってきますから、そういうものは次々変わっていくわけです。それを必ず順番どおり追いかけられるかどうかということについてなかなか難しい。皆さん方にもこれはやはり知っていただきたい。
 ラベルをつくるというのは、実は大変なことなんです。数か月前から発注しなければいけない。それを必ず予定調和するように、最終の製品と合わせられるかどうかというのは、大豆と菜種をこれぐらいの比率で入れるということはわかるけれども、この国のものをどの割合で入れるということは完全に予定調和させることはできないわけです。
 私は、我々は厳密性を重視したいと申し上げました。率直に申し上げて、知らせたくないなんて一つも思っていない。ただ、知らせる上において間違いが生じれば、義務化された限りは刑事罰を伴うんです。そこがきちんと担保できるかどうかということについて、私どもは自信がない。まして起原農産物、構成成分、そこの基本的論議が全くできていない。これは皆さん方の責任ではなくて、そもそもJAS法を変えるときにいい加減にしておいた問題であると思いますので、消費者庁ができたんだから、この際、神山さんがおっしゃったように表示法をつくられるのも1つの考え方だと思います。ただ、どういう法律ができようと、表示の仕方には余り大きな変化がないし、その表示の仕方が可能であるか、つまり刑事罰を伴うような罰を受けないで、うまくきちんと正しい情報を知らせられるものであるかどうか。そういうことの方が圧倒的に大きな問題であります。というのが私の意見というか、21会員の総意としての意見です。

○田島座長 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 私の認識を申し上げたいと思いますので、是非議事録にとどめていただきたいと思います。
 菜種油と大豆油については、やはり港で実際に種の状態で入ってきて、それが国内に運ばれて、そこで搾取、搾油されているという状況が多いと思うんです。それが実際に、例えばカルタヘナ法における遺伝子組換えの交雑の問題といったことも、今、実際に起きているわけです。ですから、粗油で入れてくるというのは、ごま油ではそうかもしれませんが、そうではないものもあるということで、これについてはやはり原料原産地表示について、消費者が関心を持っているものについて表示は可能であるということを申し上げておきたいと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 阿南委員、どうぞ。

○阿南委員 ありがとうございました。植物油協会さんと菓子協会さんにお尋ねしたいと思います。
 非常に興味深い資料でして、21ページに、日本農業の変質によって、菜種生産が輸入自由化の前から急変をして、精油工場が廃業になっていったとありますけれども、これはどのような農業の変質とお考えでしょうか。
 菓子協会さんには、本当に中小のお菓子屋さんがこのようにしてやっているのは大変なことだろうと思っておりますが、そのとき、例えば原材料にどうも問題があるということが疑われたときに、その検証はどのようにされていますか。何年か前に、中国製のあんこの問題がありましたが、そういったものは果たしてさかのぼって調べることができるのかということを教えていただきたいと思います。

○田島座長 それでは、植物油協会さんからお願いします。

○神村専務 ありがとうございます。話せば長くなるんですけれども、日本の菜種生産最盛期というのは、昭和30年前後であったと思います。このころ、統計では30万トンと言っていますが、現実に商品として流通できたのは25~26万トンだろうと思います。
 我々当時の製油業界は、国産、輸入を問わず、すべて国から割当を受けます。このころは、1,000トンぐらいは入っていたと思いますが、輸入はほぼゼロでありました。ところが、農業政策の議論になりますけれども、このころから米の作付の時期が非常に早くなりました。それまで菜種というのは水田の裏作でつくられておりまして、菜種を刈り取った後に田植えをした。ところが、田植えの時期が今や4月。東北の被災地は、本来はもう植えなければいけない時期なんですけれども、そうなりますと菜種が穫れなくなる。菜種をつくっていると、お米がつくれない。それが技術上の一番大きな問題だと思います。
 もう一つは、やはりお米に比べれば非常に価格も安いし、収益性も乏しいからということで、ちょうどそういう新しい農業技術が出てきた昭和30年代半ばをもって、菜種は急速に減っていきます。1971年の時点では、たしか1万トンぐらいの菜種になっていたと思います。やむなく政府も、減っていく最初のころは輸入をしてくれなかったんですが、それから輸入ライセンスを与えるようになって、国産菜種の減った分に見合うだけの輸入が認められたということであります。
 そのころ、季節産業的に菜種が穫れるときだけ搾油をするという工場が全国に1,000余りございました。私が子どものころ、自分の家の前が農協の菜種油工場でありましたけれども、そういうものがみんなつぶれざるを得なかったわけです。外国産の菜種はどうしても港に着きますから、そういう小規模な方々がそこまで取りに来ることはできないということで、廃業の憂き目に遭ったわけであります。
 そのとき、比較的大きな企業であった我々というか、我々の先輩たちが、当時にして6,500万ぐらいのお金を積み立てて、廃業のお見舞い金として出したという歴史がありましたが、これは同業者がお互いに助け合うという当時の精神だったものと考えています。農業の変質といいますか、農業自体が昭和36年の農業基本法を境に大きく変わりまして、実は本当はそのときに選択的拡大、つまり消費の伸びる農産物の生産を増やすということだったので、当時、油の消費は非常に増えると見込まれておりましたから、当時の製油業界は、菜種生産が増えると、みんな楽しみにしていたわけです。現実は裏切られたというか、農家の方にそんなに責任があるわけではないですけれども、業種として見た場合に、やはり日本の農業の変質によって、日本の菜種産業がほぼ壊滅状態になった。現在は、1,000トンぐらいの菜種がつくられまして、工場数は私もわからないんですけれども、十数工場が動いていると思いますが、私どもの会員ではないということで、余り内容は存じ上げません。
 以上でございます。

○阿南委員 ありがとうございました。

○田島座長 菓子協会さん、お願いいたします。

○藪氏 小零細企業におけるトレーサビリティーのことかと思いますが、その前に申し上げますが、先ほど、私どもの専務が申し上げましたけれども、菓子協会における小零細企業というのは、約5万軒と言われておりますが、そのうち会員として登録されておりますのは、和菓子協会、洋菓子協会、洋菓子工業会、全国菓子工業組合連合会等々合わせましても、約2万5,000軒。したがって、アウトサイダーがおりますので、一概に全部このとおりであるかどうかということはちょっとわからないところもあるということをお含み願いたいと思います。
 まず、小零細事業者では、コンピュータ等で仕入れたものを全部管理するということは、事実上できていないと申し上げてよろしいかと思います。単純に言いますと、今、米トレーサビリティー法というのができて、米のトレーサビリティーをきちんとしなければいけないということに当たりまして、農水省などともよく話し合いを行いまして、私どもとしても、仕入れたものがトレースできるということはいいことだと思っておりますので、どのようにしたらできるかということに尽きるわけであります。結局、現状からいいますと、仕入れ伝票を保存するということでしか対応できないという結論になっております。
 したがって、トレーサビリティー法では、仕入れ伝票に必要事項を全部記載してもらうということを条件付けておりまして、その必要事項が記載してあるものをとっておくことによって、いつごろつくったものはどうだねという形でトレースしていくということになろうかと思います。
 中国産の加糖あんが入ったときに、一部おかしなものがあったということについては、新聞報道などで承知をしております。大体中国製の加糖あんを消費している割合というのは、今、全体に消費しているあん全てのもののうちの約2割に当たろうかと思います。その2割ぐらいに当たるわけですけれども、今、私どもが申し上げております小零細事業者といいますのは、比較的製造小売りと称する事業者であります。言ってみれば、自分のところで製造して、自分の家で売ると。例えば大きな和菓子屋でいえば、虎屋とか榮太樓とかと言えばおわかりだと思いますが、彼らは比較的大規模で企業になっておりますが、自分のところでつくったものしか売らない。仕入れたものは売らないということをするわけです。小さい町の和菓子屋にしろ、洋菓子屋にしろ、みんな店舗の後ろでつくって、製造したものを店で売るという形になっています。
 一方、そういうところにおいては、比較的そういったような加糖あんは使わずに、小豆から加工してつくっていくというものが比較的多いございます。そういう意味でいうと、製造卸というのが菓子業界の中でまたあるわけですけれども、そういう部分では、例えば観光地の駅で売っている土産品のお菓子ですとか、あるいは旅館に山積みされているようなお菓子ですとか、いろいろあると思いますが、そういったようなものについては原価意識が非常に高くて、そういうものが入ってくるというところがあると思います。そういうところは比較的原料については、一定の安いルートというものを確立しておりますから、かえってある程度固まっているかもしれません。小零細事業者の方がかえって仕入れ価格の乱高化によって揺れているのではないかと思います。よろしゅうございますか。

○阿南委員 ありがとうございました。

○田島座長 立石委員の方が先ですね。立石委員、どうぞ。

○立石委員 日本植物油協会さんの21ページの「日本農業の変質」というところですけれども、重要な論点が抜けています。先ほどのお話では、生産者が悪いといったように聞こえるわけですが、1962年、昭和36年というのは、大豆が自由化になった年です。大豆が自由化された年ということは、ここから急激に輸入大豆が入ってきたわけです。そのおかげで、当然のように大豆と菜種というのは代替関係がありますから、油の原料価格は当然下がりますね。そういったところで再生産価格が償えない中で、多くの農家が離脱していったということです。そこのところを、あたかも日本の生産者が悪いという表現は訂正いただきたいと思っております。
 昭和36年の大豆の自由化はなぜかというと、アメリカからの強い要求と、業界からの強い要望があったと聞いております。業界から是非自由化しろといった要望の中で、大豆の自由化がなったという点をまずは確認をしたいと思っております。
 あと、分析ができないから云々という話はありましたけれども、これもいかがなものかと思います。ルールが決まれば、今や問題が発覚するのは内部告発です。きちんとやれないことに対して、確かに問題の分析手法というのはありますが、ルールどおりにやっていないということに対して、周りの目も含めて、内部告発で大方が発覚しています。そういった点をまず御理解というか、そこの認識をいただきたいと思います。
 それから、両団体にお聞きしたいですけれども、現行の加工食品の品質表示基準でいいますと、主原料に対して重量の重い順に2つ、それ以外のものは「その他」と記載していいとなっております。この基準に基づいて、もし今、そういったことで、今回の米トレーサビリティーでもそうですね。米トレーサビリティー法で、今回のだんごもその対象になりますね。そういったことでいいますと、菓子協会さんも関係が深い。そうすると、原材料の原産地が3つのうち重い順に2つ、残りは「その他」と記載してもいいというルールがもしあった場合には、今、できないとさまざま述べられた点については、クリアーできるのではないかと思っています。
 中小について申し上げますと、例えば先ほどの神山弁護士からの結論のとおり、漬物業界も非常に小さい業界です。65%が20名以下、90%が50名以下の小規模事業者でございます。そこの中小の中で、今おやりになっている。この点についても、先ほどから言われている点においては、やや首をかしげる点がございます。両団体から、先ほど2つの現行ルールですね。今の加工食品の品質表示基準の部分についての見解をお聞きしたいと思います。

○田島座長 お願いいたします。

○神村専務 私は別に農家が悪いと言った覚えは全くないです。事実関係を述べただけであります。おっしゃったように、昭和36年に大豆は自由化されておりますけれども、大豆と菜種の用途というのは違うわけでありますし、この時点においても農安法による価格補てんもほぼ行われていた。ですから、保護も行われていたのになぜ減ったのかということを考えていくならば、それは一番大きなのは農業技術上の問題であるし、農業基本法の実施というものが大きく影響しただろうと思うわけであります。
 現在もごらんになってわかりますように、菜種油の方が圧倒的に人気があるんです。その点はよく御了解をいただきたいと思います。別に私も長い間農業に関わってきたし、農家が悪いなんて言っていません。あくまでも日本農業の変質によるということを言っているんです。ただ、精油業界にとって受難であったということは事実としてあるし、今、いるメンバーは生き残ったから受難ではないんですが、辞める方々にとっては大変な受難であったろうと考えるところであります。

○田島座長 では、菓子協会様からお願いいたします。

○藪氏 立石委員の御質問について、ちょっと理解のできなかったところがあったんですけれども、だんごに関していいますと、だんごは確かに米トレーサビリティー法で言う、使っている原材料の原産地を表示しなければいけないということなんですが、私どもの立場からいいますと、だんごというのは無包装で売っているものが多いものですから、今、基本的には表示義務がないんです。ただ、それでもトレーサビリティー法では表示しなさいと言っておりまして、あれはポスターで表示するなり、店頭で説明することを許すと言っております。ですから、店頭で書いたもので表示をするという形にしているのが、製造小売りのものは圧倒的に多いと思います。
 そういったようなものについては対応できると思います。なぜならば、基本的にはだんごというと、月見だんごを含めて、だんごと砂糖だけなんです。ですから、使っているものも非常に少ないんです。しかも、あれは「国産」という表示でいいんです。そうすると、宮城県産の米でひいた粉、新潟県産の米でひいた粉といった国産のものが入ってきていれば、当店のだんごは国産米粉を使ってつくっていますという表示をすればいいわけなんです。それは可能だと思います。
 ただ、いろんなものを複雑に混ぜ合わせてつくるといったようなものについては、非常に難しくなってまいりますし、例えばだんごのように包装がないものだったらいいんですけれども、もなかのように包装しなければならない。最中は、皮には米粉を使い、あんにはこういうものを使い、あんの中にまた求肥を入れたり、あるいは栗を入れたりとなってきますと、非常に困難が伴ってくる。そういうことを申し上げたんです。よろしいでしょうか。

○立石委員 質問の真意が十分に伝わっていなくて申し訳ないです。今のルールでは50%以上、当然義務化になっているし、食品については重量の重い順に2つ記載ということになっております。今のルールで行くと、重量の一番重い順で2つということになると極めて特定されて、そういった場合は記載できるのではないですかという質問です。

○藪氏 重量の重い順に2つ記載してというのは、どういう意味なのでしょうか。

○立石委員 22食品群に関してのことです。

○藪氏 22食品群に関してということでありますと、これ自体が和菓子の業界あるいは菓子の業界で使われているものは余りありません。

○立石委員 それと同じルールを適用できますかということを言っています。その場合は何か主張がございますかという質問です。

○藪氏 失礼しました。

○田島座長 日本植物油協会からどうぞ。

○神村専務 あと一つ言おうとしていたんですけれども、例えばここにおられる菓子協会と我々のどこが違うかというと、我々の工場は約320日間連続操業いたします。次から次へ切れ目なく物が入ってくるんです。バッチ式であれば、ここまでというのができますけれども、次から次へ物が入ってくる。だから、大豆はしょせん大豆、菜種はしょせん菜種にすぎない。次々前にあるものは押し出していくことによって、パイプの中を流れるわけですので、どこまでがどれという区切りは非常に難しい。無論、大豆と菜種はラインを分けていますから、その整理はできます。
 ですから、それぞれ現在の産業形態を否定するようなことになると、我々としては、やりたくてもできないということになります。ホームページがいいのか何がいいのか、私どもは自分たちの扱っているものは遺伝子組換えですということは、どこにも隠しておりません。ただ、表示というのはさっき申し上げたように、法的義務を伴うものに対して、行政庁がどう判断されるかという問題です。私どもは一切隠し事はしていないつもりであります。
 安全性の問題とこれとは全く議論が違うし、カルタヘナの問題とも全く問題が違うものであります。端的に言えば、1つ、2つ、内陸部の工場がございますけれども、ほとんどの工場は海岸に自分のサイロを持っていますので、まずこぼれ落ちる心配はありませんし、問題になった時期から我々は完全に密封したトラックを使っている。トラックというか、特殊な車両で運んでおりますので、こぼれ落ちることは全くありません。
 先ほどの連続操業というのが要するに何かわからないというのは、どこからオーストラリアであり、どこからカナダでありというのは、切れ目がないという産業的特質があるということです。産業的特質を考えることも非常に重要なことだと私は思っています。米トレーサビリティー法は、政府の全量管理下にあるという米の特殊性に由来する法であると考えます。したがって、他の食品も同様にできると敷衍することは妥当でないと考えます。

○田島座長 菓子協会、どうぞ。

○奥野専務 立石委員のお話は、表示が2つまで書いて、3つで少なくなるから、やりやすくなるのではないかということですね。ただ、私どもは仮にそういうふうになったとしても、難しさは変わらないと思います。お菓子の原料はほとんど中間加工品でございますので、例えば砂糖にしても、その砂糖の元のサトウキビの原産はどこかというのはほとんど関係ありませんし、水あめは水あめでありまして、その原料のトウモロコシがどこの国かとか、そういうことは品質にはほとんど関係ない話ですので、そのデータ自体の入手の難しさということがあろうかと思います。
 仮に3つであろうが、それを変える場合には、先ほど説明をしましたような、数か月前から正確な情報を入手して、そういう作業に入らなければいけないという煩雑さはそう変わらないと認識します。

○田島座長 それでは、山本委員。

○山本委員 こういう調査会ですので、原料原産地について、実際に消費者がどれだけ注目しているかということも当然必要だと思います。例えば、政策金融公庫みたいなところが調査をして報告しています。それを見てみましても、賞味期限とか消費期限については当然見ているけれども原料原産地についてはほとんど見ていないという調査結果だったと思います。ときどき社会的に問題が起きて、そういうときだけ当然関心度が上がる。これは皆さんもよく御存じだと思いますけれども、そういうことがあります。
 実際に原料原産地について聞かれれば「確認する」と答えるかもしれないけれども、ほとんどの消費者が実際の購買活動において確認を余りしていないという中で、どこまで原料原産地を必要とするのかということは、よく検討しなければいけないことだと思います。
 菓子協会のお二人の方にお聞きしたいのですけれども、問い合わせ総件数に占める原料原産地表示の問い合わせ件数が0.02%~0.23%しかないと、非常に少ないですけれども、あることはある。そういうわずかなお客様に対して、どのようなお答えができるのか。それは実際にはトレースしているから答えられるのでしょうけれども、そうしますと、「国産です」とか、「どこどこ産を使っています」というお答えをして、すぐに納得していただけているのかということですね。ここら辺はいかがでしょうか。
 和菓子の方ですと、特に名物とか特産という和菓子は結構ありますね。当然それは原料にこだわっている場合もあります。そうすると、表示を必要とするならば、強調表示といいますか、そういったやり方を今までされてきているところも結構あると思います。それをすることのデメリットと言うか、それをすることはつらいといいますか、そういった事実はあるのでしょうか。

○田島座長 では、菓子協会から。

○藪氏 私の方からお答えいたします。今おっしゃった強調表示によって商品をつくっているケースは、勿論その商品を使わなければ、その原材料を使わなければ成り立たないわけですから、これは当然その原材料を購入するためにあらゆる努力をして、それでつくるわけです。従って表示は可能です。
 端的に言いますと、そのことによっていろいろな問題があるかとおっしゃいましたけれども、例えば北海道産の小豆を使った特性のまんじゅうです、あるいはようかんですと言った場合に、北海道産小豆というのは御承知のように、価格は非常に乱高下をいたします。つい5年ほど前には1俵60kgで5万円代になります。その昔は1俵60kgで9万円代というような値段が付いたことがある。通常では2万7,000~2万8,000円で販売されるものです。
 そういったようなものであっても、強調表示である以上は、その材料を使わなければいけないということで、それは非常に困難なところに立ち向かってやっている。勿論、長くそういう価格で仕入れなければならないとすれば、当然、販売価格も変えて行うということになろうかと思います。そういう意味では、強調商品の場合には、必ずそれは履行するという形になろうかと思います。よろしいでしょうか。

○槇島氏 原産地に関するお問い合わせというのを、もう一度数字を申し上げますと、2009年、2010年度の2月まで、ついこの間まで、4社で、年間大体0.02~0.23%の原産地に関するお問い合わせがあるという統計資料でございます。
 この中には、例えば小学生が夏休みの宿題とかで、一般的にカカオ豆というのはどこで採れるんですかとか、そういう御質問も入っているということです。
 先ほどから申しておりますように、サトウキビの産地に何か意味があるのかということがございますから、そういうことはそういうふうにお答えするということです。御納得いただくまでお話はさせていただきます。

○山本委員 詳しく教えろというような問い合わせはあるのか。例えば、「国内産」、あるいは「中国産」とか「何とか産の原料をときどきに応じて使っている」という答えで、「そうですか」で終わってしまう問い合わせなのかということなんです。

○槇島氏 とことんということではなく、説明すればわかっていただけるということです。

○田島座長 菓子協会さん、どうぞ。

○藪氏 済みません。先ほどの御質問にお答えするのを忘れました。和菓子業界、洋菓子業界においても、お客様が店頭で原材料等について聞くことはございます。どちらかというと、お宅のあんこはどこの豆ですか。北海道産ですか。やはりそうですね。という程度でございまして、それを突き詰めて北海道のどこどこ産なのかというところまで突っ込んでの質問は少ないと思います。

○山本委員 ありがとうございました。
 神山弁護士に御質問したいのですが、都道府県名だけではなくて市町村名を記載すべきだということを、以前から言われたということですけれども、例えば今の放射能問題にしても、都道府県名ではなくて市町村名を書いたとしても、要は市場に出ているものは安全という大前提がある中で、どこを書こうが、何とか県とか、何とか市とか、何とか町とか書くだけでも風評被害につながっていくものではないかと個人的に思うわけで、風評被害とエリアの表示は問題が違うでしょうというのが私の意見であります。
 質問は、韓国において何らかの法律があるのでしょうけれど、年間5,000件を優に超えるような膨大な摘発件数になっているそうです。つまり、それは、韓国の業者が悪いことばかりしているというわけではなくて、ルール自体に無理があるのではないかと思います。これをもって、日本にも適用しようと言われても、その法自体に無理がある限りまねはできないと思いますけれども、この辺はいかがでしょうか。

○田島座長 神山弁護士、どうぞ。

○神山弁護士 それは法自体がうまく機能していないのかどうかということの前提がわかりませんので、何もお答えできないのですけれども、むしろ私が韓国に行ったときに非常に関心を持ちましたのは、事業者の方がショートメールシステムでKFDAという韓国の食品医薬品安全庁に登録しておいて、何か事故があったらショートメールで全部通知するというシステムがあって、この方たちが7割ぐらい加入しているとか。それから、それが学校の現場に関わるようなことだと、学校早期警戒システムというのがあって、それを学校に流す仕組みがあるとか、あるいはお互いにいろいろな団体とKFDAが合意の覚書のようなものを、メモ・ランダム・オブ・アンダースタンディングとか言っていましたけれども、そういうものをつくってやっているとか、あるいは消費者監視委員という人たちを養成して任命しているとか、そういったさまざまなことを組み合わせてやっているから、いろいろな違反が見つかってくるということもあるのではないかという気がしました。それは表示の問題というよりももっと安全性に関わることもあるわけですけれども、通報制度だとか、課徴金だとか、報奨金だとか、いろいろなものが重なって摘発件数が多くなっているということではないかと思っていますので、法律が機能してないからそうなっているというふうには一概に言えないのではないか。ただ、私も事実を確認してないのでわかりません。
 ちょっと一点よろしいでしょうか。順位を間違えると回収になって廃棄するというお話がありましたけれども、私たちの提案した食品表示法案の中で、回収は場合によって命ずることができるとしておりまして、順位を間違えたぐらいで回収して廃棄するなんていうことはおかしいことだと思っております。

○田島座長 阿久澤委員、どうぞ。

○阿久澤委員 今日は3者の方々、貴重な情報をありがとうございます。1点、植物油協会さんに、搾油と精油の段階における原産地と風味ということでの視点で質問させていただきます。9ページに品質に関わることが書かれておりまして、最後に嗜好性に即した精製を行うとありますが、このことは、その精製の段階で風味を変えられると取ってよろしいでしょうか。
 ということは、搾油の段階では品質、風味に全く変化がなく製造されたものを精製の段階で風味を変えると受け取れるのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

○田島座長 お願いします。

○神村専務 ちょっと言葉が足りなかったと思います。粗油というのはCrude oilというように、どろどろの状態のものでありまして、非常に強いにおいとすさまじい色が付いているということであります。風味を変えるというか、結局精製の程度をどういうふうに調整するかによって風味が変わってくるということです。
 具体的に申し上げますと、日本の場合には素材の味を生かすというのが料理の基本でございますので、油に余計な風味があっては困るというのが原則でございました。最近は風味を好むということでオリーブオイルが増えてきたり、ごま油の需要が増えることになるんですけれども、菜種油とか大豆油につきましては、そもそもとても嫌なにおいがいたします。私も小さいころ、先ほど申し上げました菜種工場へ菜種を持って行って油をもらってくるんですけれども、これで揚げ物をすると頭がくらくらする。ですから、においと色を取るというのが日本の原則なんです。
 ところが、中国へ行くと、それぐらいのにおいと色がなければ油ではないと。ですから、その精製の程度によって、風味という言い方がよろしくないですね。においなり色の度合いが変わってくると御理解いただいた方がいいと思います。
 それから、先ほどから原産国というのが非常に抽象的に語られているんですけれども、国際的なルールだと、あるものが劇的に変わったところが原産国なんです。ですから、油の場合は大豆や菜種という固体が液体に劇的に変わる、そこが原産国なんです。これが国際ルールなんです。実は、先ほどからおっしゃっている議論を原産国とは何ぞやというのを国内ルールだけで孤立国としてつくるのか、国際ルールに準拠するのか、そういうところが非常に重要だと感じます。

○阿久澤委員 そうしますと、精製すればするほど原産国にかかわらず成分、風味は変わらないということになりますね。

○横溝表示部会長 私どもで、例えばアメリカ産大豆を原料にした大豆油、ブラジル産大豆を原料とした大豆油、油ができた段階で味・風味の差はございません。品質上も差はございません。例えばカナダ産の菜種とオーストラリア産の菜種を原料として使っても、最終製品においては差がないということになります。
 あともう一つ、私どもオリーブ油を取り扱っているんですが、オリーブ油はむしろ国というよりもオリーブの木の品種によってかなり風味が違ってくるということでありまして、もう一つ、EUという全体のまとまりからいきますと、実は国境を超えて果実を持って来て、搾ってもらって、それをまた別の国に持って来る、ただそれはEUの中ですけれども、かなり頻繁に行われています。
 ですから、イタリアでボトリングされた油がイタリア産という形になるんですが、実はスペイン産のオリーブ油が結構入っているとか、ギリシャ産のオリーブ油が結構入っているということも実態としてございます。彼らは、どちらかというと地中海の対岸のチュニジアとかのオリーブ油を排除しようと思っていて、彼らは原料原産国はEUだという表示をしたいようなことを言っているメーカーもございます。御参考までです。

○阿久澤委員 どうもありがとうございました。

○田島座長 立石委員、どうぞ。

○立石委員 今回の福島原発の放射能汚染の問題については、私どもでも生産者の福島と茨城の人たちが苦しんでおられるんですけれども、非常に多くの教訓があると思います。生鮮品については、既に平成12年に原産地表示が義務化になっているということで、選択するときに消費者の方がわかる。これは両面ありまして、風評被害というところもありますけれども、逆に今、応援という言葉も出ております。だから、福島、茨城を応援しようという中で、それは表示の中で原産地がはっきりわかるわけです。
 これが今、国内で起こっていることであるのですけれども、例えば我が国でないところで起こった場合にどうなのかということを考えた場合に、やはり表示、どこのものかということを知りたいと思いますし、当然加工食品といえども知らせるべきだと思います。現行、極めて質問が少ないというのは、今の表示が非常にわかりづらいし、実は加工食品品質表示基準に関するQ&A集を見ていただければわかるんですけれども、あれを見ただけでもどれだけ矛盾があるか、おかしい点がさまざまQ&A集の中に載っているわけです。
 何度も申し訳ありませんが、野菜で言えばカット野菜にドレッシングをかけただけで生鮮食品ではなくて加工食品になって、表示の義務は必要ないとか、ではドレッシングをかけたものと生のカットのミックスはどう違うのかわからないです。こういった矛盾だらけです。だから、一本化する必要があるという面では、神山弁護士がおっしゃられているところは非常に共鳴するところでありまして、韓国などはその点では非常にわかりやすい。原材料の1番、2番だけを重量順に必ず記載しろというルールがあるわけです。今も22品目については、そういった重量順に1番、2番、それ以外はその他でいいというのが、今の加工品質表示基準の中にあるわけですから、それを実際に業界に適用した場合にどうなのか。そういったところを先ほどお聞きした点ですけれども、菓子協会さんからも植物油協会さんからも明確な答えをいただけてないので、再度お聞きしたいと思います。
 いわゆる1番、2番ということであれば、別に問題はないのではないかというところですね。確かにずっと回転し続けるもので難しいかもしれませんが、実は米なんかも同じなのです。精米などもずっと回転して精米機の中に入っていくわけですね。そうすると、どうしても粒が残るんです。これは5%まで認められているわけです。DNA検定をして、5粒まではしようがないということで認められているんですが、そういった業界の特殊性は同じでございます。そういう面では、私は可能だと思っています。当然、事前にスペックは決まっている。それから、事前に別のタンクに置いてある。そこに原産地が明確にあるわけですから、そうするとナンバー1、ナンバー2の重い順に書くことぐらいは可能だと思っています。
 御意見をいただきたいと思います。

○田島座長 植物油協会さんから、どうぞ。

○神村専務 私は今、申し上げたように原産国とは何ぞやという議論をその前にしていただきたい。つまり、国際的ルールでは原型が完全に変わったところが原産国なんです。大豆という固体が液体に変わる。サナギがチョウになるようなものですね。そこを原産国と言う考え方が基本的にある。だから、その原産国という概念をどうするのかということは非常に重要な問題なので、そこの議論を抜きに、あるいは日本だけが国際的に孤立した国でいいという選択をするのであれば、あるいはしないのか、そこが非常に重要な問題なんです。
 我々は、率直に申し上げましてアメリカの大豆を使おうが、カナダの菜種を使おうが、自分たちの搾った油は国産だと思っております。自分たちの手でものを選択して、自分たちの手で搾って、自分たちのスペックに仕上げていく、これは自分たちの国産品である。国際ルールからしてもそのとおりであります。
 だから、まずそこの議論をきちんとしたい。私はあえて今日、大変失礼だけれども原材料とは何ぞやということを持ち出したのも、あるいは原産とは何ぞやという話をするのも、そういうことなんです。そこの議論がずっとこの委員会だけではなくて、過去においてもずっといいかげんなままできている。この委員会にそれを負わせるということは、そもそも違うということになるかもしれませんけれども、そこが明快にならない段階でやれるのかどうかということが一つです。
 それから、1番目、2番目というのは、書けなくはないかもしれないと思う。もし原産国を、基の種を持って来た国とするのであれば、だけれども例えば輸入した油については何もわからない。それから、ごま油のようなものは何が1番か2番かわからない。例えば大豆であれば、もう現実にそこで使ったものはわからない。だから、1年間の輸入でアメリカのものが多いからアメリカが先だと。2番目がブラジルだと。そういう割り切り方でいいのであれば、それは可能かもしれない。ただそのときに、さっきから原産国とは何ぞやという議論をもう一度しなければいけないわけです。だから、かなりおおざっぱなものになってくる。
 もう一つは、恐らく原産地表示というものが議論されたのは、それによって国産品が有利になるのではないかというのも一方にある。油の場合は、まず国産品というのは米油以外に基本的にないと考えていただいていいし、菜種油のように、先ほど申し上げましたとおり、100gが240円という油、我々の油が鉄とすれば金の油です。ダイヤモンドと石ころを比べているようなものです。これは全く選択性という概念の中には入ってこない。
 あともう一つは、ではカナダの菜種とオーストラリアの菜種で、皆様方は何を選択しないのか。アメリカの大豆とブラジルの大豆において、こちらを取りたいという選択権があるのかどうか。そういう議論をきちんと踏まえていただきたいと考えております。

○田島座長 続いて、菓子協会さん、どうぞ。

○奥野専務 今、植物油協会の専務理事のおっしゃった問題意識は私どもも同じでございまして、槇島委員の資料の5ページに表示を試みておりますけれども、この左側が基の農産物の原産国を表示するケースで、右側が中間加工品の産地を表示するケースで、そこを明確に議論しておく必要があるということは同様の考え方でございます。
 それと原料について、1位、2位の原産国を書いて3番目はその他でいいではないかというお話ですが、最初の資料のキャラメルですら15種類の中間加工品を使っておりますし、資料が漏れて最後に白黒で配られましたお菓子も39の中間加工品の原材料を使っておりますので、それぞれについて3とおりの原産国を書くとすれば、どこか1つでも変わったらこれを変えなければいけないということではないですか。それはとてもできることではないということを申し上げておきたいと思います。

○田島座長 ほかに御意見はございませんか。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 神山さんにお伺いしたいんですけれども、参考資料で配付されました食品表示法の要綱ということで、私も非常にこれはいいなと思っております。今回のような原料原産地の拡大をするに当たっての歴史を考えてみますと、消費者のいろいろな運動の中で食品公害と言われていたさまざまな問題、あるいは最近の食品偽装といった問題で、消費者がずっと被害を受けてきたという状況があったと思うんです。それに対して食べたくないものを、自分たちはしっかりと選択できるような権利が欲しいという運動が背景にあって、こういったことが議論されてきて、その結果、消費者委員会においてもこういった議論が今、行われていると思うんです。1つはこれまでのJAS法、食衛法、不正競争防止法とか、さまざまな法律が縦割りでわかりにくかったという点を統一したものにして、その中で消費者の権利をしっかりと確認していくという作業が、これから必要だとおっしゃられていると受け取っていますが、そういう認識でよろしいか。
 それから、権利と言われていますけれども、具体的にどういうふうな権利を提案されているのか。この中に書かれていると思うんですが、その辺を少し説明していただきたいと思います。

○田島座長 神山弁護士、お願いいたします。

○神山弁護士 例えば食品の表示に関する法律というのはいっぱいありますし、食品だけではなくて家庭用品品質表示法みたいな法律もあって、今まではそれが各省庁ばらばらに使っていたわけです。その法律の中でもかなり中身が違っていて、経産省系の法律です消費者の申出権が入っていたり、JAS法にも入っていると思いますが、そういうものが厚生労働省系の食品衛生法などにはないわけです。権利と言うからには陳情に行けるというのではなくて、申出をする。この表示はおかしいのではないかとか、表示がないというようなものについてきちんと申出ができて、その申出が真実である場合には担当大臣が調査をしなければならないというような申出制度が必要ではないか。申出制度というものを権利の行使として入れてくださいということで入れてあります。
 そのほかに、例えばいろんな健康食品でおかしな広告が氾濫しているんですけれども、こういうおかしな広告を差止めしたいという制度がありません。消費者契約法に基づく団体訴権として差止めというのはありますが、違法な広告、薬事法違反の広告なんていうのはいっぱいあるんですけれども、薬事法違反だというだけで差止めをすることができるという制度になっていませんので、これも消費者の団体訴訟制度として差止めができるというふうに、第9のところに入れております。
 損害賠償責任というのも、偽装表示によって損害賠償をできるというような制度もあった方がいいのではないかということで、第7というところに入れております。これをすべてこの法律でやっていくというのは大変難しいと思いますので、第8に今の公正競争に寄与するような適正表示規約という制度を設けて、これがアウトサイダーにも1つの規範として適用できるようなものとしてつくっていくということも、ここに入れております。
 結局、権利の保障がないということは、何かを言っていったとしても聞き置かれるだけで、それに対する行政側の対応が義務化されていないというところに、一番大きな権利性がないという問題があるのではないかと思っています。

○田島座長 ほかにございますでしょうか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 こういう場以外で言うときがないので、ちょっと私の意見ですが、消費者の知る権利という話はよく出てきますけれども、権利を保護するというのは何となくわからんでもないんですが、権利を保証するというのはどうなんだろうという気がします。
 ただ、我々が原料原産地表示の在り方を考えるときに、原料原産地を表示することで間違っても○○産のものは取りたくない、例えば、チャイナフリーの問題とかありましたですね。ああいうようなことで、「○○産はいやだ、だから原料原産地が必要なんだ」という考え方にならないようにしていきたいと思います。『○○産が欲しい。だから原産地が知りたいんだ』と、少なくとも知る権利というのは、それを知ったら購買活動につながるとか、手に取って購入するということになるような原料原産地表示、そちらの方向でこの原料原産地表示について、考えていきたいと思っております。
 意見です。

○田島座長 ありがとうございました。それでは、そろそろ時間でございますので、特に発言はございませんか。

○立石委員 今の意見に同感でございます。前回のこの調査会の中でもあった話ですけれども、消費者の保護というのは公正な競争という視点です。公正な競争という視点で私の方から申し上げたいのは優良誤認という点で、国産に見えるカモフラージュに隠れて優良誤認されているという、そういった選択がなされている点については、私どもとしては修正をしてほしいということです。
 業界によっては当然そういったものはほとんどないとか、輸入がストップしているものもあります。ただ、優良誤認という点は今の表示制度の中ではどうしても発生しているといった認識で、先ほど申し上げた1番、2番の特に原材料の重量順の先ほどの原産国というところについて原材料が固まっていないとのご意見もありましたけれども、やはり原材料というのは決まっているわけです。どこの国で採れたかという点、ここの部分は変え難いものであります。そういったところは明確にきちんと表示の中で、特に主原料に当たるものは表示すべきだというのが私の考え方です。

○田島座長 ありがとうございました。
 それでは、議論も尽きませんが、本日、日本植物油協会様、全国菓子協会様、神山弁護士様、ヒアリングに御協力いただきましてありがとうございました。本日の議事は以上でございます。
 参考資料3で今後のスケジュールを確認しておきたいと思いますので、参考資料3をごらんください。本日第3回まで終了しまして、5月に現地調査を予定しておりますが、東日本大震災の影響がありまして、まだ流動的でございますので、本日は明確なスケジュールの発表はちょっとできません。
 第4回は5月16日に予定しておりまして、論点整理マル1となっておりますが、ここでは委員の皆様から自由な発言で一定の議論をしたいと思っております。ヒアリングをするに当たってのヒアリング項目というものを第1回のときにお示ししましたけれども、それに沿って例えば中間加工品の表示はどうあるべきかとか、大くくり表示の在り方はどうあるべきか、50%ルールの見直しはあるのかといったことを論点にして、委員の皆様から意見発表をしていただきたいと思っております。その結果につきまして第6回でもってとりまとめを行いたいと考えております。
 事務局の方から、連絡事項などございますでしょうか。

○原事務局長 今日はどうも長時間ありがとうございました。御協力をいただきました。大変参考になりました。
 次回は今、座長からお話があったとおりで、5月16日月曜日の17時半からということで、論点整理の第1回目ということで、委員間による意見交換を予定しておりますので、引き続き委員の方々にはどうぞよろしくお願いいたします。
 どうも本日はありがとうございました。

○田島座長 それでは、本日はこれにて閉会をさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

≪3.閉 会≫

(以上)