第12回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年7月7日(木)9:30~12:15

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、窪田委員、
 黒沼委員、後藤委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 池田委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  小林参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 原事務局長

議事次第

1.開会
2.論点整理3(二段階目の手続関係)
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:51KB)
【資料1】 本日検討する論点について(消費者庁提出資料)(PDF形式:266KB)
(参考資料1) 専門調査会で出された意見等の整理(消費者庁提出資料)(PDF形式:151KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会 今後のスケジュールについて(案)(PDF形式:66KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。時間がまいりましたので始めさせていただきたいと思います。朝早くからお越しいただきまして、委員の皆様方におかれましては大変ありがとうございます。
 ただいまから、第12回「集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 なお、本日は沖野委員、消費者委員会の下谷内委員が欠席となっております。
 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいのですが、座席表の次に資料の1といたしまして、本日検討する論点についてという資料を用意しております。
 参考資料1といたしまして、これまで専門調査会で出された意見の整理。
 参考資料2といたしまして、今後のスケジュールについての案をお示ししております。
 不足、途中またございましたら、おっしゃっていただければと思います。
 それでは、伊藤座長に議事進行をどうぞよろしくお願いします。

○伊藤座長 おはようございます。議事に入ります前に今後のスケジュールについて加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 参考資料2をごらんいただきたいと思います。
 裏の方ですけれども、本日第12回としまして「論点整理3(二段階目の手続関係)」ということで御審議をいただければと思っておりますが、第13回以降につきまして、ここに書いてあるような感じで進めさせていただければと思ってございます。
 次回「論点整理4」としております。今まで、いろいろな論点について御審議いただいたところですが、対象事案を始めとしまして大きな論点についてまだ整理がつけていないところが残っておりますので、そういったところについてまとめて第13回で取り上げさせていただきたいと思っております。
 その関係で日程の追加をお願いしたいと思っておりまして、第15回としまして8月19日にお盆中で大変恐縮ですけれどもお時間をいただければ大変ありがたいと思っております。
 以上でございます。

○伊藤座長 ただいまの説明に関しまして、何か御質問等ございますか。
 よろしければ説明ございましたとおり調査会のスケジュールを変更したいと存じますので、よろしくお願いいたします。

≪2.論点整理3 (二段階目の手続関係)≫

○伊藤座長 早速ですが本日の議題を取り上げたいと思います。今回は、論点整理の3回目になりますけれども、「二段階目の手続関係」について検討したいと存じます。
 まず資料1のうちで、「第1 二段階目の手続の概要について」加納さんからの説明をお願いします。

○加納企画官 資料1の1ページでございます。
 第1としまして、二段回目の手続の概要ということで、現時点で考えられるものとしまして事務局の方で整理しまして、お示ししているものでございます。1~10ページまでございますので、ポイントだけかいつまんで御説明したいと思います。
 まず、1ページの「1.簡易な手続の開始」というところですが、(1)にありますように一段階目の手続で原告となった適格団体が開始の申立てをするという制度にし、(3)のように「開始決定」という形で裁判所が開始する旨を決定する。
 (3)の3段落目にありますように、開始決定と同時に裁判所は対象消費者が有する請求権の届出をすべき時間を定めるとしまして手続の開始時期を明確化し、その届出期間も明確にするという形で建付けてはどうかということで書いてございます。
 2ページの「2.二段階目の手続への加入を促すための通知・公告」であります。
 今回の制度は、いわゆる二段階型の手続と考えておりますが、できるだけ紛争の一回的解決を図るという観点から、この通知・公告を充実させる必要があるのではないか。その通知・公告を、だれが、どのような手法で行うのか。それから、その通知・公告をより実効的なものとするために情報提供などの制度を設けてはどうかということで書いております。
 (1)方法のところでありますけれども、マル1に書いてありますように、申立団体が二段階手続への加入を促すために原則として知れたる対象消費者に対し、相当な方法により個別通知をすることとすると書いております。
 この辺、また第二の方で詳しく検討させていただければと思っておりますが、適格団体が主体となる。原則として、知れたる対象消費者に対しては個別通知をするとしまして、通知・公告をより実効的に行うとしたらどうかと考えております。
 マル2ですが、更にインターネットを利用するなど、相当な方法により公告をすることとするということで、通知に合わせて公告もするということで、できるだけ広く消費者に対して加入を呼びかけるとしたらどうかと書いております。
 マル3に行きます前にちょっと飛ばして恐縮なのですが「(3)通知・公告を実行的なものとするための情報提供等」という形で書いております。後ほど詳しく第三において検討いただければと思っておりますけれども、この通知・公告を実効的なものとするために一定の情報提供等の制度を設けてはどうかと。
 マル1ですが、その通知に必要な対象消費者の情報の提供、これはいわゆる顧客名簿というような形で事業者側にストックされているものを基本的には想定しておりますが、そういった対象消費者の情報の提供を裁判所が命ずることとする。
 ただ、事業者側でも一定の場合には情報提供をすることが難しいということもあると思いますので、※印のところですが、ただし書きにあるような場合には例外とするということでどうかと。
 裁判所の命令につきまして申立団体の申立てに基づくこととするか、あるいは裁判所が職権と行うこととするか、更にその命令に対する不服申立をどうするかということについては、更に検討をしていきたいと思っておりますが、大枠としてはこのようにしてはどうか。
 マル2ですが、その事業者が情報提供できないという場合には、それに代わる措置としまして、申立団体は相手方事業者に対し申立団体が行う公告、これは(1)のマル2でインターネットを利用するなどの公告と書かせていただきましたけれども、それを事業者のウェブサイト等に掲載するなど、個別通知に代わり得る方法による公告を求めることができることとするとしてはどうかと書いてございます。
 (4)ですが、その費用負担につきましては、事情に応じて相手側事業者に負担させることができることとするとしてはどうかと書いております。
 (1)の方に戻らせていただきまして、先ほど飛ばしましたマル3のところですが、事業者が対象消費者に関する情報提供できない場合には個別通知に代わる措置としましての公告を求めることができることとすると。
 最後マル4ですが、今まで申し上げました情報提供命令でありますとか、個別通知に代わり得る方法としての公告を事業者が行わないという場合は、申立団体が自ら相当な方法による公告を行うことができるとするとともに、その費用を事業者に対して請求できるというようにして実効性を確保するようにしてはどうかと考えております。
 次に4ページの方ですが「3.二段階目の手続への対象消費者の加入等」ということです。
 (1)ということでありますけれども、基本的に対象消費者からの授権を受け、申立団体が債権に関する一覧表のようなものを作成して裁判所に届け出るということで手続を初めてはどうかと書いてございます。
 詳しいことは、また5ページの4.のところで御説明したいと思いますが、ここでポイントとして書いておりますのは2段落目のところでありますけれども、その加入の方法としましては対象消費者自らが直接裁判所に申し立てるということはできないこととし、申立団体に授権をして加入することとするとしてはどうかと考えております。
 この点はまた第4において詳しく御検討いただければと思っておりますが、この場合、大量の消費者が入ってくるという可能性のある手続ですので、それを簡易・迅速にかつ効率的に処理するということを可能とする観点からは、対象消費者が個別に入るというよりは、申立団体が一括をして整理をして裁判所に対する行為などをする方が望ましいのではないかと考えておりまして、このような形で書いてございます。
 そうしますと、対象消費者が必ずこの手続に入れるかどうかというところが問題になるのではないかという点は今回の専門調査会でも御指摘いだいたところでありまして、※印ですが、正当な理由がない限り、適格団体は授権を拒否できないこととしてはどうかと。
 その正当な理由としましては、ここに書いてありますように書類を提出しないとか、裁判所に納付するような手数料を想定しておりますけれども、そういったものを一切負担しないといったケース的な理由に限るとしてはどうかと。
 それ以外の場合は、基本的には授権を受けることとすると。対象消費者がどうかちょっとよくわからないかもしれないという場合も含めて、全部授権を受けるということで手続に乗せていくことにしてはどうかと考えてございます。
 (2)の請求内容につきましては対象消費者の給付請求を基本とする。
 (3)の手数料につきましては低・定額なものについて検討するということで更に検討していきたいと考えております。
 5ページの「4.簡易な手続の審理」としましては、(1)手続というところで書いてあります、先ほど申し上げましたとおり、申立団体が一括して整理をして加入した対象消費者に関する請求権、債権について届出を行う。
 マル2以下のような手続ということでイメージですけれども書いてございます。申立団体は対象消費者からの申し立てを整理し、債権一覧表という形で作成し、それを裁判所に提出するとともに相手方事業者等にも直送する。相手方事業者はその認否表を作成して裁判所に提出するとともに、また団体に直送する。
 争いのない債権は確定するということにしまして債権者表という形で記載し、確定判決または和解と同一の効力を有するものとして確定されてしまうというということで、この辺りは現在の破産手続における査定手続などを参考にしまして、簡易迅速かつ一括的な処理というのを可能とする手続として考えてみてはどうかと考えております。
 それで不服があるという場合には査定の申し立てを行い、裁判所が査定の決定をすると書いてございます。
 (3)ですが、先ほど授権申立団体は対象消費者に対して授権を基本的には受けるんだということの関係で、特にマル2ですけれども申立団体の辞任については正当な理由がない限りできないこととするというようにしてはどうかと書いてございます。
 (4)その他のところにつきましては、マル1、マル2と書いておりまして、特にマル1報酬費用の問題につきましては、また回を改めて検討させていただければと考えております。
 6ページの「5.決定」のところでありますけれども、査定をして決定をするということで考えておりますが、特に(1)のマル2の仮執行宣言でありますが、現在の破産の査定の決定につきましては、仮執行宣言はついていないということになろうかと思いますけれども、今回の手続については決定の実効性を確保するという観点から仮執行宣言を付することを考えてみてはどうか。これは後ほど取り上げさせていただきたいと思いますが、一段階目の手続で責任原因判決が出ているということを踏まえまして、仮執行宣言を場合によってはつけることを可能にするとしてはどうかと考えてございます。
 7ページの「6.異議申立て(異議訴訟の提起)」ということでありまして、決定に対して異議のある者が異議を申し立てた、ないしは異議訴訟を提起した後の手続につきまして書かせていただいてございます。
 ここにつきましては、だれが異議を申し立てるかということにつきまして、申立団体側の方ですが、マル1に書いておりますように申立団体が授権を受けて申し立てる。これは最初の簡易の手続との連続線上で同じようにできることをしてはどうかと思っておりますが、マル2加入した消費者が自ら異議を申し立てることもできることとしてはどうかと書いてございます。
 これは後ほど御検討いただければと思いますが、この異議訴訟におきましてはちょっと簡易な手続とは違いまして、かなり個別な争点がいろいろ出てくるということが想定される局面でありまして、むしろ加入消費者自らの異議申立てということもできるとした方がいいんではないかと書いております。
 その異議申立ての仕方について、※印にあるようにどうするかについては更に検討していきたいと考えております。
 (2)手数料等についてのところですが、この手数料の訴え提起手数料と納付済手数料との差額の納付につきまして、異議申立人が納付するのか、それとも当初の申立人ないしは申立団体が納付するのかということにつきまして、更に後ほど御検討いただければと思っております。
 8ページ「7.訴訟手続における審理」というところにつきましては、基本的には民事訴訟の規律に従うという形で書いております。
 (4)加入消費者の授権の撤回ないし申立団体の辞任のところでありますけれども、辞任につきまして、先ほど5ページ4.(3)マル2のところでは、正当な理由がない限り辞任することはできないということで、適格団体が授権を受けることを拒否できないということとの関係でそのように書いてございましたが、8ページ7.(4)につきましては合理的な理由があれば辞任することができるということで、ちょっと書き分けております。
 これは先ほど7ページ6.の異議申立てについて、加入消費者が自ら異議申立てすることができるというように、そこは必ずしも授権の強制という形ではないというようにするということとの関係から、ここはちょっと考え方を分ける方がよいのではないかということで書き分けております。
 9ページ「8.訴訟手続における判決」でありますけれども、判決主文、ここに書かせていただいている形で判決を書くということであります。
 仮執行宣言の関係で査定の決定のところで仮執行宣言がつくとした場合には、効力をそのまま残しつつ通常手続における判決ということになろうかと思いますので、査定の決定を認可するという形の判決になるのではないかと考えておりますが、そういった形での判決をするということで考えております。
 最後、10ページの「9.執行」のところでありますけれども、決定判決の名あて人となっていた適格団体は、その対象消費者からの授権を受けてということを勿論前提とするわけですが、執行申立てをすることができるということにしてはどうか。
 加入消費者は適格団体が名あて人となっている場合には、承継執行文を得て自ら申し立てることもできるということにしてはどうかと書いてございます。
 以上、ちょっと早口で大変恐縮ですけれども、二段階目の手続の概要ということで御説明いたしました。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 通知・公告ですとか、二段階目の手続の遂行主体ですとか、後で個別に御審議いただく予定になっております項目もございますので、この段階ではむしろ全体的なこと、あるいは必ずしも個別的な審議の対象として予定していないようなことを中心にして御意見、あるいは御質問をちょうだいできればと思います。
 どうぞ、三木委員。

○三木浩一座長代理 一段階目の判決が下りた段階で、その責任があるという判決を受けた被告がそれを契機として和解の意欲を申し出ることはあろうかと思います。
 この通知・公告の手続ですが、これを見ると二段階目の手続申立てがあって、二段階目の手続が始まった後に通知・公告がされるという前提だろうと思いますけれども、今、私が申し上げたように二段階目の手続で争うつもりはないと。和解をしたいというときには、二段階目の申立てをしない段階での通知・公告をして和解に加入する消費者を募るという手続も設けていいのではないかと思います。
 前回の会議で、一段階目手続中の和解の話が出て、そのときに意見として一段階目の手続の和解をするときには、結局一段階目の中で何らかの通知・公告をして、その和解参加者を募るということを言いましたが、それと併せてといいますか、一貫のものとして二段階目の申立てがない段階での通知・公告というものを考えてはどうかと思います。

○伊藤座長 とりあえず加納さんの方で今の御発言に関して御説明ございますか。よろしいですか。
 そうしましたら、今の三木委員の御発言に関しまして何か。大高委員、関連ですか。

○大高委員 関係ないです。

○伊藤座長 ちょっとお待ちいただいて、三木委員の御指摘にもありましたように、一段階目の手続における和解をどういう仕組みで考えるかという、前回議論した問題とも関係をいたしますけれども、他の委員の方で関連して御発言ございますか。
 どうぞ、朝倉さん。

○朝倉課長 さきほど三木座長代理がおっしゃったように、一段階目の判決後にそれを受けて和解をするということは十分あると思います。
 問題は手続を別途つくる必要があるかどうかというところだと思います。一段階目の判決後に債務名義をつくるかどうかというところがポイントになるのではないかと思いますが、話し合いができて、それを何らかの形で債務名義にしたいということであれば、基本的な合意をした上でその合意に従って二段階目の申立てをしていただいて、認否を経て債務名義ができていくという形で基本的には問題はないのかなと思います。
 その際に通知・公告をどの段階でやるかという点ですが、それも二段階目をうまく使えばできないこともないと思います。ですから、三木座長代理がおっしゃるように別途つくっても勿論構わないと思いますが、今のままでも使えないことはないかなというのが感想です。

○伊藤座長 どうぞ、三木委員。

○三木浩一座長代理 おっしゃるとおりです。私が申し上げた趣旨は、必要のないように二段階目の手続の申立てをかませると技術的なところですけれども、申立てというのは適格団体がすると思うんですね。適格団体に申立費用がどれぐらいになるのかわかりませんが払わせるということが不合理ではないかという趣旨を含んでおります。

○伊藤座長 わかりました。どうぞ、山本委員。

○山本委員 前回、いろいろなルートで和解が成立するような筋をなるべく設けるべきだと申し上げて、基本的には三木委員が言われたことは相当だと思うのですが、ただ、テクニカルな問題かもしれませんが、手続の仕方が難しいと思うのは、第一段階目の判決が出てから第二段階目の手続の申立てまで、恐らく何らかの期間制限を設けざるを得ないのではないかと思うんです。
 時効が中断するという形になっていますので、第一段階目の判決が出てから10年たって申立てをしても時効が中断していましたという話にはやはりならないので、そこは何らかの期間制限、それは3か月か6か月かわかりませんが、もっと短いかもしれませんが、それを設けることになると。
 そうすると第二段階に移らずに何か和解の話し合いをして、話し合いがつかなければ申立てをするということがうまく手続として仕組めるのかどうかということがもし難しいとすれば、今、朝倉さんが言われたようにとりあえず第二段階をやって、その手続を中止するか何だかして、ADRとかのあれを設けるとか、そういうことになるかもしれないと。その辺りはテクニカルなやや難しいところがあるかなと思っています。

○伊藤座長 どうぞ、黒沼委員。

○黒沼委員 判決後に判決を受けて和解をする道があってもいいのではないかという三木先生の御提案ですが、私はメリットがよくわからないのです。先生は適格団体に申立てをさせて手数料を払わせる意味があるかとおっしゃいましたが、もし判決の内容について互いに譲歩をして、それを違った形で実現していくというのであれば、なぜ判決後にわざわざそれをしなければならないのかというのがよくわかりません。
 特に争いがないのであれば債権の届出をさせて、すぐに査定をして、二段階目で迅速に解決できるのではないかと思いますので、その点でも別途手続を設けるにせよ、設けないにせよ、和解の道を開いておく必要性がよくわかりませんでした。

○伊藤座長 わかりました。どうぞ、大高委員。

○大高委員 三木座長代理、各委員の御発言を聞いて感想めいたことになるんですが、いろいろな和解のスタイルがあると思いますので、幾つかのルートを用意するということで三木座長代理がおっしゃったような一段階目の判決が確定した後に、正式な二段階目を使わない形で何か和解をするということはあってもいいのかなとは思っております。勿論、そのルートを使わないといけないということではなくて。
 これを言うと、三木座長代理の考え方とは、もしかして違うかもしれませんけれども、事案によっては責任原因を認めた上で実際に個々の損害が決定して配分していくというときに、今日提案いただいているような本則的な二段階目の手続をしていくよりもより簡易で、また費用的にも安く上がるような方法があって、それが原告団体と事業者の間の協議でそれがなし得るのであれば、それを排除する必要はないのかなという気もいたしますので、ルートとしては検討をされてもいいのかなという気はいたします。

○伊藤座長 確かに場合によっては一段階目の判決で原告の主張を認める判決が出て、そこで和解の機運が高まって、和解による解決に移行しましょうという状況になる事案もあるかと思います。
 そういったときに一旦は二段階目の手続に移行してこの手続に乗せるか、あるいはそこでの和解になるかということにするのか、それとも三木委員がおっしゃったような形で別途の通知・公告の制度を設けるのか。その辺りは現在、私どもが検討している一段階目の和解の在り方とも関係をいたしますので、各委員の意見を踏まえて、そういう別途の制度をつくることの合理性などに関して事務局で検討していただくことにしましょう。
 どうぞ。

○三木浩一座長代理 通知・公告だけの話をしましたが、確かに通知・公告に基づく和解というのが訴訟の面前での和解というルートに乗せないと裁判外の和解になってしまいますので。
 ただ、先ほど言いましたようにそれを二段階の言わば争うことを想定した手続の申立てをさせるというのは、費用の問題だけではなくて和解の友好的な雰囲気にも関わるので、場合によっては深くは考えておりませんが、何と呼ぶかは別として和解手続の申立てということをかませるということがあるのかもしれないということです。

○伊藤座長 どうぞ、山口委員。

○山口委員 私自身、幾つかの集団的な消費者被害事件では全体的な和解をまず総論的にした上で、即決和解とかあるいは弁護士会でのあっせんセンターでの和解をしました。そういう和解ができるような会社の場合には執行力など余り気にしなくてもいいという感じがあってやっています。
 そういう意味では、条文上制度化しなくても和解ムードができればいろいろな方法はあるので、それほど気にしなくてもいいのかなという感じは正直しています。
 もう一つ言うと、例えば名簿流出事件のような場合には、責任が認められた段階で、和解の手続の中で、会社側が第一段階の判断に基づいて希望者については1人幾らお支払いすることになるので会社の方に連絡ください、あるいは適格消費者団体の方に連絡くださいという形で通知・公告の方法についても、和解手続の中で、法律上定められた第二段階の手続と違う方法での和解の通知公告の方法を決めるという話し合いだってできると思うんですね。
 そういう意味ではいろいろな和解があり得ると思うので、中途半端な形で法律で枠組みをせばめるよりも、そこら辺は何か一定の和解ができる条件を整えておけばいいのではないかと思います。

○伊藤座長 ただいまの御意見も含めて、先ほど私が申しましたような形で事務局に検討してもらいましょう。
 大高委員、先ほどさえぎって申し訳ありません。

○大高委員 個別の論点について後ほど取り上げられるということで、全体的な感想として申し上げたいと思います。
 全体としては今日、資料をいただきまして二段階目の手続のイメージがかなり具体的にできてきたかなと思っておりまして、全体としては基本的な手続としては、先ほど議論していましたように他のルートがあるのか別にして、基本的な進め方としては違和感ないんではないかと思っております。
 個別で何点か質問及び意見を申し上げたいと思います。
 まず一点目、申立て開始の段階で、当然届出期間というものが定まってくるということになろうかと思いますけれども、これは恐らく今後の技術的な点かと思いますが、期間を定めるに当たって、やはり事案によって必要となる期間は当然変わってくると思いますので、ある程度幅を持たせた形で今後は仕組んでいただければと思っております。
 それと関連することで、期限をある程度決めるとしても、期限を超えた届出をどうするかということはやはり問題として残るのかなと思っております。
 破産手続においても債権届出期間を決めつつ、期限に遅れたものについても一定のペナルティ的なものを課した上で追加届出を認めるということもしておりますので、例えば時効についての利益は得られないとか、そういったある程度不利益は課しつつ、手続が遅延するといった弊害がない場合には追加して届出を認めるということも考慮されていいんではないかと思います。
 次、これは質問になりますけれども、4ページ3.(1)※印二つ目、対象消費者がその申立団体に手数料等を添えて申し出るというくだりがございますが、これは確認も兼ねておりますが、この手数料等というのは団体に対する手数料というよりは、裁判所に対する手数料を払ってもらって、それを団体が取りまとめて裁判所に納付するという趣旨の手数料なのか、この点、ちょっと確認をさせていただければと思います。
 最後に10ページ9.執行のところでありますが、やや細かいところでありますが、加入消費者の執行の可否については、これは理論的には本来消費者の権利ですので、いろいろ難しいところもあるのかもしれませんけれども、制度的な点で考えればできるだけ適格消費者団体が中心となってやれるような仕組みが好ましいんではないかと思っておりまして、適格消費者団体が自ら執行しないときとか、そういったある意味例外的な形で制度の方向性を考えていただければなと思っているところです。以上です。

○伊藤座長 ただいま、大高委員の御発言の最初の部分、つまり個別消費者が自分の権利を届け出る期間に関しては一定の幅を持たせて柔軟にということ、それから、やむを得ないような事情がある場合に関しては、それを過ぎてもなお届け出ることを認めるべきであるということは私も十分理解できますので、この点は事務局で検討していただくことにしましょう。
 3番目の執行については、団体が執行するのを原則として、それができていないような場合に関して例外的に個別消費者による執行を認めるべきであるということ。これは御意見ですので、他の委員の方で御意見があれば受け賜りたいと思います。
 2番目の手数料のことに関しては、加納さん、いかがでしょうか。

○加納企画官 ここでの手数料というのは申出との関係の手数料と考えておりまして、大高委員がおっしゃったような裁判所に納める手数料という意味で考えております。

○伊藤座長 その点は大高さん、よろしいですね。
 それでは、大高委員の御発言のうちの届出期間の問題とか、あるいはだれが強制執行の申立てをすることを原則にするのかという辺りで他の委員で御発言があればお願いいたします。

○池田委員 二段階目で対象消費者が増えていくことになると思うのですけれども、対象消費者は多数ですから、対象消費者の妥当性というのか、本当に被害を受けた人か受けていない人なのかということを見分ける保証をどうするのかという問題があると思います。
 多数であればあるほど、このようなチェックをしていくことが必要ではないかなと思います。特に、こういう世の中ですから、いろいろな人がいろいろな考えで申し立てるということがあると思いますので、そういう仕組みなり制度なりを考える必要があるのではないでしょうか。
 逆に、消費者団体側も対象消費者の申し出を安易に認めるのではなく、被害を受けていない人が紛れ込むことをチェックする仕組みを考えておくべきではないでしょうか。これは多数の集団被害ということですので、なおさらそういう仕組みが大事ではないのかという思いからです。

○伊藤座長 おっしゃるように、だれが、だれに対して幾らの金額を払わなければいけないのかということを二段階目の手続の中で確定して、それによって適正な権利の実現を図るというのが二段階目の手続の基本的な考え方だと思いますので、その意味ではまさに池田委員がおっしゃられたとおりかと思います。
 どうぞ、山口委員。

○山口委員 今の議論との関係ですが、4ページに対象消費者が手数料等を負担した場合には全部受任しなければならないとなっているのですが、例えば敷金について原状回復義務が云々という約款があって、それが仮に無効だと認められた場合に第二段階で、では、その約款に基づいて敷金の余り返ってこなかった人たち届け出なさいと適格消費者団体が誘った場合に、例えば中には賃料を3~4か月滞納して、それで追い出されてしまったという賃借人がいたとしますね。そうすると届け出ても消費者団体としては、これは明らかに主張として成り立たないなと。これは要するに明らかに参加者として認めるべきではないなというような人がいたとしますね。
 そういう場合には、それでもやはり授権を受けなければいけないのか。そこは必要な処理を提出しないところに自分もそういう被害者の一人なんだということを証明する簡単な資料の提出も条件付けとしているのか。それとも住所と名前さえあれば、一定の印紙代か何かさえ払えば、適格消費者団体は、申込者全員について受任して、後は裁判所の判断に、裁定手続の中にぶち込まなければいけないということになるのか。その点のイメージがわかりにくいと思います。
 かといって、やはり余り厳しく適格団体が入り口でチェックするようになると不満が残る。損害を主張する人も出てくるでしょうから、そこら辺の気合はかなり難しいところがあるなと思うんです。その点、条文づくりのところで苦労すると思うので少し議論していた方がいいかと思うんですが。

○伊藤座長 基本的な考え方としては、今、例えば山口委員がおっしゃったような例が出てきたようなときに、適格消費者団体が当該消費者に対して、あなたの場合は請求権がないから難しいんではないですかという示唆をしたり、場合によっては説得をするということはあり得るにしても、しかし、対象消費者が自分はそう思わないので何としてでもやってほしいと言われたときには、それを受けて、その消費者のための申立てをする、あとは査定の手続の中でしかるべく判断してもらうということかと思いますが、必要な書類の提出だとか、そういうことの関係で加納さん、ご説明があればお願いします。

○加納企画官 今、伊藤座長におっしゃっていただいたとおりに基本的には考えてございまして。山口先生がおっしゃったような滞納家賃が問題というような場合に、そのままではあれば恐らく対象消費者として認められないのではないかという話をする中で、授権を受けるかどうかということをやっていくんだろうと思っております。
 ただ、それでもどうしてもということになれば、基本的には授権を受けて、それを簡易な手続に乗せていき、その中で当然事業者側からそれなりの認否がされると思いますので、それでおのずと処理されていくと。
 この段階での適格団体といいますのはそういうたくさんの対象消費者に対して一定の整理といいますか、そういうのに徹して、それをした上でどんどん手続を乗せていくという役割を果たすということではないかと思っております。

○伊藤座長 ただいまの点、どうぞ中村委員、お願いします。

○中村委員 先ほど、池田委員がおっしゃったことと関連するんですけれども、5ページ(1)マル2のところで、流れとしては破産法をイメージした形での記載がしてあるわけでございますが、破産の場合には当然、債務者側には自分が債務を持っているかどうかということは判断できるわけなので、こういった形で済むということだと思うのですが、今、山口委員が御指摘になったように、むしろ事情について消費者団体側といいますか、消費者側にはわかるけれども、認否表という形で出していただいても、事業者が見てもまず判断ができないというケースも多くあるのではないかなという感じがいたしますので、その辺りの場合についてのやり方がどうなるのかというところをもうちょっとお伺いしたいなと思っております。
 今、加納さんから御説明がありましたように、事業者としてもできれば消費者団体に的確にある程度切り分けをしていただいて、その情報も適応をしていただいて、その中での判断というようにしていただけるとありがたいと考えております。
 併せて8ページの方に、訴訟提出手続における審議のときには、団体は合理的な理由があれば辞任することができるということで、先ほどの御説明でちょっと温度感が違うんだということがあったんですけれども、それほど場合は違わないのではないかなという感じがしておりまして、合理的な理由という意味なんですが、やはり今の同じような形で基本的には団体で受けていただけるというような方向で考えていただけないかなと思っているところでございます。

○伊藤座長 わかりました。加納さん説明をお願いします。

○加納企画官 中村委員の御指摘の点でございますけれども、5ページ4.マル2の届出債権一覧表の出し方というところについては、例えばこの時点で何らかの資料を添付して出すとか、その辺のところはちょっと工夫をさせていただきたいと思ってございます。
 それから8ページ7.(4)合理的な理由というということにつきまして、この場面では正当な理由がない限りというよりは広がるのではないかということではありますけれども、基本的には適格団体ができるだけたくさんの消費者を束ねて訴訟追行をやっていくということができれば、それはそれに越したことはないと思っておりますので、後は事情に応じてどうしても、例えば個別に対象消費者と適格団体の間で信頼関係がなくなってしまうということもあるかもしれませんので、そういった場合にはこういった辞任というのもやむなしと思っております。

○伊藤座長 どうぞ、山本委員。

○山本委員 中村委員のお話で、異議に関して簡易な手続の段階と訴訟手続の段階がそれほど違わないのではないかという御趣旨のお話もあったかと思いますが、我々から見るとかなり違うのは、簡易な手続の段階で勿論適格団体の代理というか、それを強制しなければ違いはなくなるわけなんですけれども、現在の原案では適格団体に代理してもらわないとこの手続は乗れないという仕組みになっておりますので、ここで拒否されると結局その対象消費者から見れば、この手続で裁判を受ける権利は失われてしまうということになってしまうというところがやはり非常に大きいので、異議訴訟の段階では仮に申立団体が辞任しても、ここにあるように加入消費者が個人で訴訟を追行することはできるという形になっておりますので、裁判を受ける権利に対する打撃はそれだけ小さくなっているので、合理的な理由という少しゆるい理由でも大丈夫だということにしているのかなと思います。
 現在の仕組みを前提とすればやはり適格団体は先ほど加納さんが言われたような形で、基本的には査定の手続の段階では、簡易な手続の段階では受けざるを得ないということになるのかなと思っております。

○伊藤座長 どうぞ、磯辺委員、お願いします。

○磯辺委員 7.の異議申立て後の訴訟手続の審理に関しては、(4)のマル2の記載内容での具体化をお願いしたいと思います。
 適格消費者団体が第一段階で提訴して共通争点で争って、想定できる争点の範囲で最後まできちんと責任を持つというのはそのとおりなんですが、第2段階の簡易な手続の決定に不服があって異議申立てが起きるという場合には、適格消費者団体として想定しなかったような争点が個別争点として浮上しているということが考えられます。そこまでなかなか責任を負いかねるということですから、こういった定め方で結構かと思います。

○伊藤座長 朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 先ほど大高委員のおっしゃった執行を適格消費者団体ができるだけ取りまとめて行うという方向性については、私も賛成でございます。技術的にどこまでできるかというところは検討していただかなければいけないと思いますが、何万人もいる消費者から大量に差し押さえがなされるよりは、まとめた金額でそれに見合う不動産なら不動産、債権なら債権を押さえていただくという方が事業者にとっても、また社会的に見ても合理的なのではないかと思いますし、その方が救済も早いのではないかと思うところでございます。
 それから、若干これも細かいところになりますが、資料5ページ(4)その他マル2に記載のある簡易な手続を終了させて訴訟に移行する、という点についてですが、これは要するに査定まで行かずに途中で訴訟移行するということだと思われます。検討すること自体については異論もないわけですが、ちょっと気になりますのは相手方事業者から対象消費者に対する不当利得返還請求権の扱いと関連してと書いてあるところでございます。
 どういう場合を想定しておられるのかよくわからないのですが、多分これは不当利得返還請求権ではなくて、例えば代金支払請求権というようなものを考えておられるのかなと思うわけです。
 例として、100万円の商品の購入において、30万円は一時金として払う必要があったところ、事情があってある消費者は10万円しか払ってなかったという場合に、当該契約の損害賠償額の予定の条項が無効であるという一段階目の結論のあとに、10万円返してほしいと消費者が二段階目の手続に加入してきたら、相手方からあと20万円払えという請求ができるということを想定しておられるのかなと思うのですが、普通に考えると一段階目で損害賠償額の予定の条項が無効だということになれば20万円の請求というのはあり得ないわけですし、これが有効ということになれば10万円返してくれと言ってくる消費者というのは初めから請求の理由がないことが明らかなわけですから、余りそういう場面が生じることが考えられないのではないかと思います。
 また、賠償額の予定ではなく代金請求だとしても20万円の請求というのは別個の代金支払請求権であって、訴訟物が違いますので、二段階目でいきなり訴訟物が別個のものが出てくるというのはどうかという問題があります。さらに、社会的現象として大量の消費者が返してくれと言って手続に加入してきたところ、結果として大量に事業者からの支払請求を認める債務名義ができあがるといったような訴訟にもなり得るわけです。
 このように、いろいろな視点から考えましても、相手方事業者からの請求権というのは余り考える必要はないと思うところでありまして、そうすると、不当利得返還請求権との関係で移行というものを考えるというのもどのようなものかと感じる次第です。
 ただ、少し技術的なことを考えると、相殺という問題はあります。事業者からの相殺の主張との絡みであればそれはあり得るのかなと思わないではないですので、検討に当たってちょっと考慮していただきたいこととして申し上げました。

○伊藤座長 わかりました。執行の問題については、先ほどの大高委員の御発言と併せて、余り個別に強制執行が繰り返されるということは好ましくない、これは疑いのないところでございますので、合理的な制度設計ができるようにもう少し検討していただきましょう。
 それから、最後の訴訟への移行の問題、今、朝倉さんから説明ございましたようにいろいろな問題を含んでおりますので、この点も併せて検討してもらうことにしましょう。
 どうぞ、窪田委員。

○窪田委員 最後の朝倉課長からお話があった具体例ですが、私自身が考えたのは例えば公序良俗違反に該当するような行為、たとえば、対価的な給付の均衡を欠くような非常に安ものを高い値段で売りつけたというケースにおいて無効とされる。無効とされることで支払った代金の返還を求めることができるわけですが、同時に、目的については、返還の必要が出てくる。その場合の扱いといったことが問題となるだろうと考えておりました。いずれにしても検討していただくということで、もちろん構いません。

○伊藤座長 わかりました。そういうのも一つの典型例であるということでよろしいですね。そういうものを想定して、訴訟に移行するのが果たして妥当かどうかということは更に検討していただきましょう。どうぞ。

○三木浩一座長代理 最後の執行のところですが、大高委員の問題意識をちゃんと理解していないので、あるいはずれているかもしれません。
 皆さん、おっしゃるように基本的に取りまとめられれば、適格消費者団体がまとめて執行するのが原則的である方が望ましいというのはそのとおりだろうと思います。
 ただ、これは事務局の説明にもありましたが授権がどうしても必要になるので、授権なしに執行権限は当然ないわけですね。その授権をどういう形で取りまとめるかということですが、恐らく事務局が考えておられるのは、当初の簡易な手続の授権をするときに、併せて執行の授権もすると。
 勿論、それは各個別消費者にそのことがわかっていないといけないので、当然授権の要旨には簡易な手続の授権をしますというのと執行の手続もしますという文言が何かの形で入っていなければいけないということだろうと思います。
 それでまとめて執行権限が授権されるわけですが、問題は事後に適格団体の側から、あるいは消費者の側から授権の撤回なりがどう考えるかという問題だろうと思います。
 この点は、訴訟のときには合理的な理由があれば授権の撤回を適格団体の方からできるというのと執行との利害状況が同じとは言えないと思うんですが。
 これは意見ではなくて検討課題ということで申しますけれども、一種の信頼関係がその後の簡易な手続なり訴訟手続の中で壊れるということはあり得ると思うんですね。そのときに適格団体の側から授権を解消して、個別の消費者にその限りではゆだねるということが許されるのかどうか。それから逆ですね。
 一度、言わば約款的な形でまとめて授権をさせられているわけですよね。簡易な手続とか訴訟と切り分けて執行の授権はとりあえずできないという形で最終授権をさせられているわけですね。
 そのときに事後的な手続の長い流れの中で信頼とか崩れた場合に消費者の側からその撤回ができるのかと。私はそうしろと言っているのではなくて、その問題は検討する必要があろうということです。

○伊藤座長 わかりました。いずれにしてもその件は検討してもらうことにしましょう。そこで、今までもお話が出ておりますけれども、二段階目の手続への加入を促す通知・公告についてより立ち入って審議をいただきたいと思いますので、資料1に即して加納さんから御説明お願いします。

○加納企画官 資料1の11ページ「二段階目の手続への加入を促す通知・公告」ということで取り上げております。
 まず「1.基本的な考え方」のところですが、通知・公告につきましてはできる限り多くの対象消費者が加入して救済を受けられるようにするとともに紛争の一回的解決に資するということで、実効的な方法を検討する必要があると考えております。
 その際、できる限り広く対象消費者に実効的な通知・公告をするということを確保する観点から、通知・公告の主体としては一段階目の手続追行主体である適格団体が行うということとしつつ、相手方事業者もこれに一定の協力をするということを制度的に措置するということを基本的な枠組みとして検討していってはどうかということで考えております。
 2.以下の具体的な方法や情報提供等のところでありますけれども、まず(1)方法というところですが、先ほどの繰り返しになりますが、できるだけ多くの対象消費者が加入するべきだということで、二段階目の手続追行主体である適格団体は原則として知れたる対象消費者に対し、相当な方法により個別通知をするということとともに、インターネットを利用するなど、相当な方法で公告をするということとしてはどうかということで考えております。
 その際の費用の負担の問題でありますが、(2)一段落目に書いてありますように、一段階目の判決で適格団体が勝訴した場合である。すなわち相手方事業者の行為が違法である、何らかの責任が認められるということを前提としておりますので、そこでのところですけれども、相手方事業者の情報提供に関する規定を設けるとともに、事情に応じて通知・公告に関する費用を相手方負担とするということとしてはどうかということで書いております。
 12ページ、3.「情報提供等」というところであります。
 (1)基本的な考え方というところでありますけれども、できるだけ多くの対象消費者の加入を促すということを考えるべきでありますが、その適格団体はその対象消費者の住所などの情報を有していないことが多いのに対し、対象消費者との契約関係、またはこれに類する関係にある相手方事業者。この辺は対象事案をどうするかということも関係するところでありますけれども、対象消費者を特定するのに必要な情報を有していることが多いと考えられますので、これを活用する制度を考えてはどうかと。
 (2)、その情報提供を事業者に対して命ずるということの合理性でありますが、一段落目に書いてありますとおり、相手方事業者に一定の責任原因があるとされている場合であるということをまず踏まえる必要があると。
 それから「また」のところですけれども、事業者にとってもできるだけ、そういう責任原因が認められたという局面に来ておりますので、そうであればできるだけ多くの対象消費者を加入させることで紛争の一回的解決を図るということは事業者にとってもそれなりのメリットと見られるのではないかと。
 それから「そして」というところでありますけれども、その情報を受ける者というものにつきましては、その手続追行主体である適格団体、これは情報管理が適切に行われるということが制度的に担保されているといった仕組みを更に設けることも考えてはどうかと思いますが、一段階目、二段階目の手続追行に関し知り得た情報の適切な管理、目的外使用の禁止等に関する一定の規定を設けるということも併せて検討し、対象消費者のプライバシーや相手方事業者の営業秘密侵害等の弊害が生ずるのが避けられるのではないかということで、相手方事業者に対しても情報提供を求めることができることとしても、これは合理性が認められるのではないかということで書いております。
 具体的な内容としまして、マル1、マル2という形で12~13ページにかけて書いております。
 まずマル1、情報提供命令でありますけれども、裁判所は相手方がその情報を提供するために過分の費用や時間を要する場合など一定の場合を除き、13ページですが裁判所が対象消費者の所在、連絡先等の通知に必要な対象消費者に関する情報の提供を命ずることができるとしてはどうか。
 この一定の例外という場合ですが、例えばコンビニエンスストアで非常に安い商品をたくさんの消費者が買っているような場合、確かにそれは契約関係にあると言えばあるんですけれども、その対象消費者が具体的にだれなのかというのは、さすがにそのコンビニエンスストアでは把握していないと思いますので、そういった場合についてまで情報提供を命ずるというのは場合によっては酷なことがあり得るのではないかということで、そういった場合を想定して例外とするということにしてはどうかと考えておりますが、一定の例外は認める必要があるのではないかと。
 そうでない限りは、裁判所の命令にかからしめることによって情報提供を命ずるということにしてはどうかということで考えております。
 マル2ですが、そういった情報提供はもともと難しいという場合もあると思いますので、そういった場合には個別通知に代わる方法としまして申立団体は相手方事業者に対し、申立団体も公告を行うということを前提としたいと思っておりますが、相手方事業者のウェブサイトなどに見やすいように掲載をすると。
 例えば適格団体のホームページに書いているものを事業者のホームページにも書くとか、そういった形で個別通知に代わる得る方法による公告を求めることができることとしてはどうかと。
 マル3ですが、第三者に対する命令の関係でありまして、第三者が情報を何らかの理由により持っているということも場合によってはあり得ると思うところでありますけれども、先ほど12ページで申し上げましたとおり、正当化根拠としまして一段階目の判決で相手方事業者の行為が違法であること、ないし責任原因があることが認められていることが非常に大きいと思っておりますので、相手方事業者以外の第三者に対する情報提供を求めるということまではできないこととしてはどうかということで書いております。
 13ページ(4)制裁のところでありますが、裁判所の命令にかからしめるという情報提供命令につきましては、違反の場合には過料の制裁というものを検討してはどうか。他方、事業者はその制裁に対する不服申立てをすることができることにしてはどうかということで、基本的には過料の制裁というのを考えてみてはどうか。
 また、情報提供命令に従わない、あるいは正当な理由なく情報提供の措置を講じないという場合、あるいは申立団体の求めに関わらず、先ほどの個別通知に代わる得る方法としての公告を行わないというような場合につきましては、一種の費用負担の転換という形で適格団体が余分に支出した費用について相手方事業者が負担する。これは必ず負担するという形で転換してはどうか。
 制裁と位置づけるのはどうかと思いますけれども、合わせまして実効性を確保することにしてはどうかということで書いております。
 (5)適格団体の情報管理でありますが、現行法でも適格団体、それなりに情報管理をしなければならないということは要件となっておりますが、13ページ一番下辺りのところですが、これに加えまして相手方事業者から対象消費者に関する情報を取得するということに関し、14ページですが、その情報の適切な管理、あるいは目的外使用の禁止などの行為規範・責務規定を設けると。それに違反した場合には行政監督の対象とするということでどうかということで書いてございます。
 最後その他、個人情報の問題につきましては、こういった情報提供命令という形での明文の措置というのを設けるということにしますので、個人情報保護法でいうところの例外的な場合、法令に基づく場合に該当するものと考えられますので、それ以上の特段の措置は講ずることとしなくてよいのではないかと考えてございます。
 以上でございます。

○伊藤座長 通知・公告は、技術的な問題でもありますけれども、この制度がうまく機能して、その事案に関わるできる限り多くの消費者がこの手続に参加して、紛争を全体的に解決をするという意味では大変重要な問題かと思います。
 そこで、どなたからでも御意見等をお願いできればと存じます。どうぞ、野々山さん。

○野々山理事長 質問も含めてですが11ページ2.(2)のところです。通知の公告費用の負担の関係で、最後から2行目は「事情に応じて通知・公告に要する費用を相手方事業者に負担させることとしてはどうか」という記載となっていますが、「事情に応じて」ということはどういう場合を指しているか不明であり、上の理由を見ますと、むしろ原則として、あるいは、多くの場合は相手方事業者に負担をさせることになるのではないかと思われるのですが、その点はどうかということであります。
 それからもう一つは、これとの関係で2ページの2.(3)のところです。情報提供による場合のマル1のところで情報提供を命じないことが考えられるという場合が記載されております。ここでは過分の費用または時間を要する場合と書いてあるのですが、具体的にはどんなことを想定されているのか。数が単に多いというだけではこれには当たらないだろうと思っております。その点が二つ目であります。
 それから三つ目としましては13ページの(3)具体的な内容のマル3のところの第三者に対する命令です。この場合、原則として第三者に対して求めることができないとするのはやむを得ないかと思いますけれども、一律にこういう形にしていいかどうかということに若干疑問があります。
 例えば、顧客の管理等について子会社に任せているという場合があるわけでありまして、密接な関連がある、あるいは子会社的なものについては、そこに対しても命令ができるような道は残しておくべきではないかということであります。
 以上、3点です。

○伊藤座長 そうしますと、第3点目は御意見のように承りましたが、第1点目、つまり事情に応じて相手方事業者に費用を負担させるという場合の事情というのはどのようなことを想定しているのか、
 それから、第2点目の過分の費用を要するような場合というのは、どういう状況を想定しているのか。
 この辺りについて加納さんからの説明をお願いいたします。

○加納企画官 まず、事情に応じて負担させることにしてはどうかというところでありますけれども、(2)1段落目で責任原因が判決されるのを前提されていることからすると、原則は相手方事業者負担ではないかという御指摘であったかと思いますが、更にその前提としましては適格団体がこの通知・公告を行うという前提がありまして、その更なる前提ということからしますと、適格団体がやはり負担をするというのが原則としてあると。
 ただ、どういう手続費用がかかったのかとか、相手方の対応関係であるとか、そういったいろいろいなこともありますので、事情に応じて転換させることもできるということではどうかと考えておりますので、転換させる理由としましては(2)一段落目で書いてあるようなものであると考えてございます。
 また、この通知・公告費用につきましてはそもそも手続費用になるのかどうか、訴訟費用として位置づけられるかどうかというところの問題もございまして、例えば訴訟費用として位置づけられるのであれば、これは敗訴者負担だという形になろうかと思います。
 敗訴者負担になるということになりますと、最終的に例えば事業者敗訴ということになれば敗訴者負担ということで事業者負担ということになろうかと思いますが、そうでなければ適格団体負担ということになると思いますので、そこの訴訟費用とすることができるかどうか。また、そうでないととどまるかどうかの検討も併せまして、事情に応じて負担させることができるかどうかという書き方にとどめております。
 12ページの過分の費用または時間を要する場合の意義ということでございますが、野々山先生が御指摘の人数がたくさんいるからといってこれに当たるという想定では考えておりません。
 先ほど申し上げましたけれども、例えばコンビニエンスストアでチューインガムを買った消費者に対して何らかの請求をするというような場合に、チューインガムの購入者というのはさすがにコンビニエンスストアにおいても把握はしていないだろうと思われるところでありまして、どうしてもそういうのを探せと言われれば特別な調査手続をして何かやるということもできるのかもしれませんけれども、それは非常に過分の費用、労力、負担、時間もかかるだろうということで考えておりまして、そういった場合はさすがに難しいだろうと考えております。
 これにつきましては、対象事案をどうするかということもかなり密接に関連するところだと思っておりまして、この対象事案につきましてはまた回を改めて御検討いただければと思っておりますが、12ページ(1)に書いてありますように、基本的には契約関係またはこれに類する関係になるということであれば、たいていの場合は相手方事業者においてそういった情報を提供するということは可能ではないかと考えておりまして、それを前提として、一定の例外を設けるということでどうかと考えております。

○伊藤座長 わかりました。第1点の費用の負担に関しては、今、加納さんからの説明がありましたように、この費用をどういう性質のものとして考えるかというのが基本にあるかと思います。
 手続の追行主体である団体が、二段階目の手続に加入してくる人たちを募るという意味からすると、当然に相手方事業者にその費用を負担させるというのはおかしいのではないかという考え方もできると思います。
 とはいえ、既に第一段階目での判決が確定しているのであるから、そういう考え方だけでいいのかという辺りが、いろいろ検討をしなければいけないところだと思います。
 それでは、今の費用の負担の考え方、あるいは過分の費用の問題、それから野々山さんが御意見としておっしゃった第三者に対する命令を検討することの是非など、とりあえずその辺りに関して御意見があれば、まず承りたいと思います。
 まずは後藤委員からお願いします。

○後藤委員 我々中小企業団体の立場で考えますと、企画官が言われたように対象事案によって広告(公告)の中身が違ってくると思います。例えば大半が通販で一部が店舗販売という場合、通販で実施している部分については対象消費者を把握しているが、店舗販売の場合は把握できないということが想定され、その場合に一部の対象者を特定するために過度な公告(広告)をやるということは極めて不合理だと思います。
 先ほどガムの事例が示されましたが、対象類型ごとに、ある程度公告(広告)の方法について一定の基準を設けていただくのが合理的ではないかと考えられます。インターネット上で公告(広告)をするというのは費用も手間もあまりかからないので前提とするにしても、それ以外手段については個別対象事案ごとに、事業者側と適格団体との間である程度のコンセンサスが得られるような内容を示していただくのが良いと思います。
 最終的にどちらがその公告費用の負担をするかについても、ある程度の合理的な基準に基づいていれば、負担の議論の際も大きな問題にならないのではないと思います。事業者の側がある程度負担をするという前提での意見ではありますが、是非、基準を作っていただきたいと思います。

○伊藤座長 おっしゃることはよく理解できます。それを制度そのものの中に組み込んでいくのか、それとも今、後藤委員がおっしゃったような運用を可能にするような幅を持った制度設計をするのかという辺りを検討しなければいけないかと思います。
 三木澄子委員お願いします。

○三木澄子委員 先ほど野々山理事長がおっしゃったところで、13ページの第三者に対する命令のところなんです。
 やはり第三者にそういう情報提供を求めることはできないこととしてはどうかということに関してはちょっと反対かなと思っておりまして、結構第三者、子会社のようなところが情報を持っていますし、ここでは事業者がやはり一段階目で敗訴している状況なので、少なくとも事業者から第三者に対して何か協力を求めるような方法を明記するとか、そういうものの扱いにしていただければと思っております。

○伊藤座長 わかりました。中村委員、お願いします。

○中村委員 後藤委員と三木委員が言われたことに関連してお話をしたいんですが、ここのまずだれが負担するのかというところに関しましては、当然、事業者の立場としては原告が進めていただくということですので、原告にできれば御負担いただきたいということなんですが、それはさておいて、やはりこれはA案をとったということで、オプトアウトではなくてオプトインの手続でできるだけ簡便な形で今回制度を入れようという趣旨だと理解しておりますので、必ず全部の消費者を集めるんだということよりも、小額ということも前提としながら経費を全般的にかからないような形に、あるいは少なくともかかっている訴訟物の金額に応じた、それよりも少ない金額の形での簡易な形での公告ということを原則として考えるべきなのではないかなと考えているところでございます。
 それに関連をいたしまして情報提供のところで、先ほど加納さんの御説明ではコンビニエンスストアの場合には過分の費用だという御説明があったんですが、私どもの考え方としてはそれは過分の費用ではなくて、そもそもできない場合だということなので、まずこの情報提供命令を出す前提としては可能な場合であるということを条件とした上で、過分な費用というのは今、申し上げましたようにかかっている訴訟物に対して大きな金額がかかるという形での整理はできないのかなと思うところでございます。
 もう一つの第三者に対する命令でございますけれども、これは協力を求めるというような形での措置というのは考えられると思うんですが、先ほど御指摘がありましたように、例えば被告に密接な関係を有するような第三者であるときには例外的にということは確かにあるかもしれないけれども、そうではなくて例えば単なる取引先であるとかいう場合に関しては、やはり個人情報という問題もありますし、それによってクレームが逆に生ずるというようなことも考えられますのでそういうことも加味いたしますと、これを命令という形で一般的に提議するのはちょっと難しいのではないかと思っております。
 以上でございます。

○伊藤座長 ただいま議論いただいている幾つかの論点に関していかがでしょうか。
 それでは、大高委員からお願いします。

○大高委員 まず、通知・公告の方法ですけれども、これは後藤委員からも御指摘があったように事案によってあるべき方法は変わってくるんだろうと思っておりまして、その点で11ページ2.(1)で書いてありますように、相当な方法で個別通知ないし公告をするという形で事案の特性に応じてしかるべき方法を考えるということはまさしくそのとおりなんだろうと思っています。
 その費用の問題になるわけですが、ここは2つの方向の問題があるかと思っておりまして、1つはできるだけ費用をリーズナブルな形でするということの方向性はないのかということで、これは何人かから今、御指摘があったことですが、インターネットの活用もありますが、この観点から被告の相手方事業者の協力というのも非常に重要になってくるんだろうと思います。
 13ページ(3)マル2で、相手方事業者が対象消費者に関する情報を提供できない場合における取扱いと例外的な形で記載されておりますが、仮にある程度、対象消費者が特定できる事案であっても、やはり一部特定できない方もいますので、公告等を組み合わせていくという観点からすると、限定的にこういう事業者の義務を規定するのではなくて、やはり一定程度事業者側も協力義務のようなものを一般的に設けてもいいのではないかと。それは費用をできるだけ安くするという観点から、事業者にとってもメリットがあるんではないかと思います。
 もう一つは、できるだけ費用を安くしたとして最終的な費用の負担をどうするかというところが問題になるわけですが、先ほど野々山理事長からの質問に対して加納企画官にお答えいただきましたけれども、私としては野々山理事長がおっしゃったとおり、二段階目では原則として事業者負担でいいのではないかと思っておりますけれども、いろいろな理屈の問題で難しく、ある程度、原告団体で負担をしなければいけないというスキームになるのであれば、原告団体に対するサポートというのをよく考えていかないと、費用の負担のために適切な解決というか、訴訟追行をゆがめられるということもありますので、ここは慎重に考えられるべきだろうと思います。
 次に情報提供に関してですが、総論としてはおおむね賛成をしたいと思っております。
 ただ、何点か申し上げたいことは、2ページ(3)の情報提供命令に関して団体に申立権を認めるか、職権で行うかという点がございますが、私としてはできるだけこれは申立権という形で明確にした上で、かつ不服申立も認めるという形の方がクリアでいいのではないかと思っております。
 もう1点申し上げたいのは、第三者に対する命令に関してでございまして、これは再三複数の委員から申し上げましたとおり、一般的に第三者に対する命令というものを認める必要性は乏しいかもしれませんが、これまで出ましたように子会社であるとか、もしくはダイレクトメールの発送等を特定の会社に委託をしているとか、そういう相手方事業者の利益のために情報を預かっているような第三者で、かつ相手方事業者に自らが情報提供を履行しないような場合と一定の制約をかけた上で第三者に対する命令というのは認めていっていいんではないかと思います。
 13ページ(4)、(5)、(6)の制裁等もしくは情報管理義務その他については、基本的には異存のないところであります。
 長くなりましたが、以上です。

○伊藤座長 窪田委員、お願いします。

○窪田委員 私は第三者に対する命令に関する部分についてのみ発言させて頂きます。
 先ほどからお話が出ていましたように子会社が情報を持っているような場合に命令ができて当然ではないかといったことは、実感としては大変よくわかります。ただ、恐らく子会社かどうかという基準だけでは、うまくいかないことも、大高委員からの御説明にあったように考えられるだろうと思います。情報管理を事業としている別の法人が、複数の会社の情報を持っているという場合には、子会社かどうかという判断基準では、うまくいかないだろうと思います。
 ただ、そうした問題を考えるうえで、独立した第三者に対する命令という構成が本当に必要なのだろうかという点については、ちょっとよくわからない部分がございます。
 そうしたケースでは、実は相手方、被告の企業は当然子会社なり情報管理会社に対して自分の預けている情報を引き出すことはできるはずです。そうすると、データそのものは現時点では第三者たる会社にあったとしても、当然被告側企業としては、事業者としては出せる情報だということになるのではないかと思います。そうだとすると、自ら出せるものを出さずに協力しないというのは情報提供義務を履行していないということになるだけで、それで構成できるのではないかという気がします。
 民法的に言うと相手方に対する請求権があって、その相手方が第三者に対して請求権あるんだから債権者代位権的な構成を考えるとか、いろいろなアプローチも考えられるのかもしれませんが、そうした法律構成をしなくても、単に引き出せる情報を提供しない以上は義務が履行されていないという説明でいく方がむしろ簡単なのではないか、あるいは子会社なのかどうなのかといった実質的な判断をしていくよりは単純なのかなという気がいたします。その点だけ申し上げさせていただきたいと思います。

○伊藤座長 磯辺委員、お願いします。

○磯辺委員 二段階目の通知・公告の費用の負担の件なんですけれども、第一段階目で事業者側の責任が認められて判決が出て、それを事業者側も受け入れている段階で第二段階に移行するわけですので、本来であれば事業者側が責任を果たして、個々の知れたる被害者に通知をして権利を回復するという対応を自ら取られてもいいという性格のものだと思います。
 ただ、なかなかインセンティブが働かないだろうということで適格消費者団体が行うという考え方だと思いますので、費用については事業者側に負担を課するということで原則考えていただいていいのではないかと思います。
 情報提供の件については、第三者への命令とまでするかどうかという問題はあるかと思いますが、今、窪田先生がおっしゃったように当該事業者が第三者から情報の取得をして提供をするということがきちんとできるように定めていただきたいと思います。特に事業者そのものは、例えば顧客の名簿を実務上の必要性で2~3年ぐらいしか保管していない場合にも、決済代行等をクレジット会社等にお願いしている場合には、クレジット会社等の保管期間はたしか法令等の何らかの定めがあるのではないかと思いますので、一定の期間保有しているということもあり得ます。そういういろいろな可能性を追求して被害当事者が特定できるように当該事業者がきちんと対応することが必要であり、そのこととの関係で第三者も協力をするということがあってしかるべきではないかと思います。

○伊藤座長 山口委員お願いします。

○山口委員 事業者側が住所をどの程度把握しているかなんですが、例えば敷引の契約の場合などは本来返還されるべき敷金が戻ってこなかったという人たちは既にアパートから転出しているわけですね。そうすると事業者側としても、例えば平成10~20年の間に退去した人の名前はわかるかもしれませんが、それ以上はわかりませんね。
 しかしながら、これは消費者団体としては一応名前を見せてもらった場合には、住民票を取って転出先を調査するということをせざるを得なくなると思うんですよ。これは公告よりもそういう形で特定した方がよほど実務的なんですね。その場合に住民票を取る費用はどうするのか。
 エステの場合も同じです。例えば平成15~20年の間の5年間、約款、契約条項に問題がありました。だから一定のお金を返さなければいけないということがわかった場合に、その間に取引をしたお客さんのリストを事業者側が出すと。
 当然、相当な人が転居してわからないと思うんですね。その場合、私ども被害弁護団の場合はそこであきらめずに念のために住民票を取ります。それで転出先がわかった、そこで改めて連絡をとって意向打診するということになるわけですね。その場合の費用負担はどうなるのかということはどうお考えになっているのかが一つあります。
 それから、先ほど来の第三者に関する関係で言うと、代理店が関わってくる場合が結構あるわけですね。ある商品について契約があった場合に代理店を通して販売しているという場合、この代理店の責任まで最初から被告にするかというとそこはしないかもしれないので、そうするとそういう場合はどうするのかなと。
 先ほど窪田先生がおっしゃったことで気になるのは、適格消費者団体としてはペナルティがあるからいいやということではないと思うんですね。別にペナルティで10万円でも100万円でもいいですが、事業者側が払わされてもちっとも消費者団体では助からないわけでして、やはり実として名簿がほしいと思うんですね。どこに住んでいるだれが、要するに対象消費者になるのかという、実を取るために何か措置を考えると代理店とか名簿管理会社その他なんかの一定の要件の場合には提出するということは必要なのかなと。
 ただ、先ほど磯辺委員がいったクレジット会社となると、またこれは微妙な問題があるのかなというところもあるので、これは相当要件の決め方は工夫しないと難しいなと思います。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 3点ですが、第1点は原則的な費用の負担のところですけれども、先ほど磯辺委員が言われたこと、私もそのとおりだと思いまして、第一段階でもし責任原因と言えるようなところまで判断がされて被告事業者が敗訴したような場合は、本来であれば被告事業者が自分の費用でリコールではないですが消費者に対して知らせて自ら賠償を行っていくべき筋合いの事柄なので、そういう場合には被告事業者に費用を負担させてもなんら問題はないような気がします。
 ただ、第一段階でも判断の内容というのはかなり訴訟物の範囲というのは今までの議論からしてもいろいろなものがあり得ますので、条文的には事務局の提案になっているような、ある程度裁判所の裁量にゆだねるということになっても仕方ないのかなと思いますが、基本的には私は磯辺委員の言われたことに賛成です。
 第2点ですが、今、問題になっている第三者に対する命令のところで、私は窪田委員が言われたことに基本的には賛成で。今、山口委員が言われたように代理店の場合、あるいは最初出た子会社のような場合にも、基本的には相手方事業者は第三者が持っている情報を自分がもし持っていないとしても自分に対して渡せということは多くの場合には言えるんではないかと。そして、それを適格団体に対して提供するということで、おおむね解決はつく問題ではないかと。
 もし、相手方事業者との関係でも第三者が出さなくてもいいという、第三者に何らかの、自らの利益がある場合かなと思うんですけれども、そういう場合にまで第三者に過料を伴って提出を命じるということが果たしてできるのかなという感じもしますので。
 実際上の多くの場合は前者に当たるという感じがしますので、あえて第三者に対する命令というものを設けなくても足りることが多いのではなないかという印象を持ちました。
 最後、第3点ですが、私が気になっているのは13ページの制裁のところで、結局、科料にすると。これは制度の並びからして仕方のない感じはするんですが、過料だと恐らく何十万円というレベルが最大限だと思うんですね。
 そうすると、もし被告が経済合理的に考えれば、情報を出したら何億円と来るかもしれない。しかし、出さなければ何千万円とかで収まるかもしれないと。過料で50万円払ってももとが取れるということになる可能性があって。しかし、この場合多くの事業者は悪徳事業者を対象としていないので、コンプライアンスとかレピュテーション・リスクという問題で一種の社会的な制裁でそこはカバーしようという発想の制度になっているんだろうと思います。
 そのこと自体は、私はそういうことかなと思うんですけれども、この制裁の公団のところの、結局従わない場合に適格団体に生じた追加的な費用を相手方事業者に負担させることはかなり実質的な制裁になるかなと思っていまして。ここも私はかなり重要なところではないかと思っています。
 もし、可能ならばということなんですが、これは結局、支出した費用を負担させるということなんですが、場合によっては、これは一種の民事執行の世界における代替執行に近い。つまり、相手方事業者が本来自分ですべきことをしないので、代わりに適格団体がやっているという部分があります。
 代替執行の場合には、かかる費用を相手方に対して前払いを請求することができるということがございます。この場合でも同じようなことが考えられないだろうかと。つまり、一旦適格団体が負担してから、その費用を相手方事業者に回収するということだけではなくて、場合によってはこういう費用がかかるので相手方事業者に対して前払いを求めるということもあればより、先ほどのような制裁的な機能が働きやすくなるという感じがしますので、もし可能であればそういうことをお考えいただきたい。
 以上です。

○伊藤座長 それでは、そろそろ休憩を取りたいと思いますが、その前に三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 先ほど通知・公告のことを言い忘れたのですけれども、通知・公告の費用の問題も今、出てきているんですが、本来は山本委員がおっしゃったように被告事業者への負担と私は思うんですけれども、いろいろ難しいところがあるので。
 やはり、通知・公告の主体を考えたときに、適格団体それから事業者と裁判所がそういうものの通知・公告を何か考えていただくことも一つ加えていただければどうかと思っております。

○伊藤座長 わかりました。朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 個別通知の関係の手続というのは、一段階目でもう責任原因がわかっていることを前提に、二段階目に入ってできるだけ早く消費者の救済をする必要があるところ、この手続に時間がかかってしまうと制度の本質を覆してしまうようなものだと思います。
 先ほどの山本委員の話もありましたけれども、下手をするとこの時点で当事者間に激しい争いが始まってしまう、インセンティブが働くとか思っていまして、その意味で要件を明確に、かつ判断が簡素にできるようなものに事前にしておく必要があり、それは裁判所に任せてしまうと時間がかかり、双方でものすごい争いになりますので、事前に明らかにしておくことが重要だと思います。
 その意味では先ほどいろいろなお話がありましたが、どういう事例があり得るのか、どういうところに情報があり得るのかということをよくもう一度考えて、そのニーズにこの要件の立て方で答えきれるのか、答えきれない第三者というのがいるのであれば、その人からの情報の取得というのをどう考えるのか。その際、本当に第三者が提出しないときに事業者に制裁を加えるというスキームでいいのか。もしくは、文書送付嘱託のような民事訴訟手続がありますけれども、一般的な義務というような形にして、実際には制裁がほとんどないというようなものにしていくのか。そういう第三者がもしかしたらいるのかもしれません。先ほどの住民票の場合の自治体なんかそうかもしれないと思うわけです。その辺をもう少しきちんと整理して、要件を明確にしておくことが大事ではないかと思うところでございます。
 もう一つ、この関係ですが、先ほど大高委員の方で不服申立てという話がありました。不服申立てを盛り込むとなると、高裁に行き、最高裁に行きこの手続はぴったり止まります。そういうことをしていたらどうかと思いますので、ここはむしろ要件をきちんと事前にたてることで不服申立てをしなければいけない場面というのをほとんどなくしていく方が大事だと思います。

○伊藤座長 そういたしましたら、費用の負担については、根本にさかのぼれば相対立する考え方があり得るかと思いますけれども、実際に制度設計をするときにどちらかでなければいけないということではなくて、まさに原案の「事情に応じて」という表現はそういうことを意味しているんだと思いますが、その辺り、もうちょっとどういう場合にということをはっきりさせるような形での検討をしてもらうことにしましょう。
 それから制裁に関して、先ほど山本委員がおっしゃった13ページの点についても、それを踏まえてより立ち入った検討を事務局にお願いします。
 また、第三者に対する命令に関しては両論ございまして、ある種の事案でそういうものは必要だろうという認識は恐らく一致していると思うんですが、その種の情報が過大な時間を要せずに出てくるようにするための制度設計としては、第三者に対する命令というようなものを一定の要件のもとに考えるのがいいのか、それとも相手方事業者に対する命令にとどめておいて、後は相手方事業者との第三者との関係を通じて、合理的な解決に到達するような考え方でいいのかという問題かと存じます。
 ここは委員の間で御意見が分かれているところかと思いますが、それを踏まえてどのような取りまとめをするのかということを考えさせていただければと思います。
 そこで、11時10分でございますので、ここで10分間ほど休憩を取らせていただきたいと存じます。

(休憩)

○伊藤座長 それでは、審議を再開したいと思います。
 引き続き、論点の検討をお願いしたいと思いますが、「第3 二段階目の手続における手続追行主体」について加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の17ページをごらんください。「第3 二段階目の手続における手続追行主体」ということで、一定の整理をしたところであります。
 「1.簡易な手続における手続追行主体」ということと、18ページ「2.異議申立て後の主体」という形で分けて書いております。
 1.(1)ですが、二段階手続というものはここに書いてあるとおり、一段階目で判断された共通争点に関する判断を前提として個別争点について審議していく。ここの消費者については非常に多数の消費者が入ってくることもあり得るということで考えております。
 そうしますと、この手続において多数の消費者についてどんどん判断していくということでありますので、やはり効率的な処理というものを考えなければ、かえって消費者被害の救済が遅れるということにもなりかねないと思っております。
 そうしますと、個々の消費者が個別に主張・立証を行うよりも、できるだけ一つの主体が授権を受けるなどして、主張・立証を取りまとめて行うということが手続の円滑化にも資するでしょうし、相手方事業者にとっても対応窓口一本化などのメリットがあり、手続の負担が軽減されると考えられます。
 また、二段階目手続では通知・公告をして対象消費者を呼び掛けるということを考えておりますけれども、二段階目手続が対象消費者にとって負担が重いということであれば加入を躊躇するということになりかねませんので、対象消費者にとってはできるだけ簡易な手続ということで、主張・立証も主体手続追行者にゆだねるということをすれば便利だろうと思います。
 そうした場合には、一段階目の手続を追行した適格団体は当然、当該事案をよく知っておりますので適切と考えられますので、一段階目の手続を追行した適格団体が主体となるということを基本的な考え方としたらどうかと。
 その場合、(2)ですけれども、簡易な手続では破産の手続を参考にしながら、簡易迅速な効率的な処理を制度的に考えていくべきではないかと思っておりますが、そういう特別な手続を設けるということにしまして、当該手続追行主体が消費者の主張・立証を整理して適切に対応するということを前提としておりますので、対象消費者が適格団体に授権せず、個別に二段階目の手続に加入することはできないこととしてはどうかということで考えております。
 ただ、その反面、そうしますと対象消費者がこの手続による権利救済というものを受けられないのは不適当ではないかという御指摘もあろうかと思いますので、最後の段落ですが、適格団体は一定の正当な理由がない限りは授権を受けることを拒否できないこととしてはどうかということで書いておりまして、これは先ほど、第1のところでも触れさせていただいたとおりであります。
 これに対して18ページ2.異議申立て後の審理の場合ですけれども、この場合、どうかということですが、(2)で確かにこの場合も審理の効率化などの要請はあろうかと思いますが、「もっとも」というところに書いているところですが、この異議申立て後は通常の訴訟手続というものを想定しておりまして、簡易な手続ほどに一本化するということは高くないと思われること。
 それから、異議申立て後の訴訟は個別争点がいろいろ出てきまして、かつ、当事者間の対立も激しくなってくるだろうと思われますので、そういったものを全部適格団体が抱えていくのかどうかということについては、その負担についても考慮する必要があるだろうと思います。
 「そこで」というところですけれども、一段階目の手続追行した適格団体が消費者のための異議を申立てすることができる。その後の訴訟手続においても訴訟追行を行うことができると。それは基本的にはそれでいいと思いますけれども、かっこの次ですが、二段階目の手続に関しては消費者も自ら異議申立てをする、更には訴訟追行もできるという形で、ここは簡易な手続と分けて考えてはどうかと考えております。
 「3.消費者と適格消費者団体の関係について」というものにつきましては、基本的には委任ないし準委任という形での委任類似の関係にあると考えられますので、「したがって」というところですが、加入の取り下げであるとか異議申立てとか和解であるとか、いろいろな局面が出てきますので、そういうところがこまめに対象消費者に意思確認を行うという規律にしてはどうかと考えてございます。
 第3につきましては以上でございます。

○伊藤座長 それでは、ただいま加納さんから御説明がありました、二段階目の手続追行主体に関する基本的な考え方。それから異議申立手続における異議申立ての主体等について審議をお願いしたいと存じます。
 どうぞ、三木委員。

○三木浩一座長代理 異議申立てがあって通常訴訟に移行した場合には、この原案にありますようにさすがに個別消費者の主体性を否定することは難しいだろうと思いますので、その点、現案でよろしいかと思います。
 異議申立てがない場合の簡易な手続の方ですが、考え方としてはこちらの方も本来個別権利者の権利を審判対象とするわけですから、個別権利者に主体を認めるという考え方もありうるとは思いますが迅速性を重んじる簡易な手続でありますし、そうした考慮も含めて現案のような考え方は選択肢としてあり得ると思います。
 質問なのか意見なのかよくわかりませんが1点あるのは、簡易な手続で進んでいく方の関係ですが、私の理解が間違っていなければ、この手続は非訟事件手続法が適応されるという理解でよろしいのか。それは後でお答えいただければと思います。
 改正された非訟事件手続法、私もメンバーでしたけれども、よく覚えていないんですが、確か任意参加の規定があったと思います。任意参加を実際してくる消費者がそういるとは思いませんが、だから理論上の問題かもしれませんが、非訟事件手続法が適応されるとしたら当然任意参加の規律も適応されるということで。補助参加的な形の任意参加は手続進行にとって妨げになる余地が少ないですから、それは認めるという理解でいいのかどうか。
 この2点、お願いします。

○伊藤座長 加納さん、ただいまの三木委員の御意見、簡易な手続の基本的な性質を踏まえつつ、個別消費者が参加をすることに関しては原案の考え方はどういうものかという点の説明をお願いします。

○加納企画官 まず、簡易な手続が非訟なのかどうかというところは、ちょっと事務局でも完璧には詰めきれておりませんでして、破産の査定手続を参考にこういった形での簡易迅速な処理手続を制度として設けてはどうかという形で御提案させていただいているところですが、これが非訟かと言われるとちょっと躊躇するところがございます。
 といいますのは、最終的に異議訴訟、異議申立てというのも当然ありますし、やはりこの手続自体、やはり対象消費者の請求権の審理を行う手続として一段階目、二段階目という形で組んでおりますので、それが非訟かと言われると別の考え方として訴訟手続でありつつ簡易な手続としてこういった独特の集団的な処理手続を設けていると整理するのもあり得るのではないかと考えておりまして、後ほど、第4のところで仮執行の話であるとか、手数料の差額負担の話を論点として出していただいておりますけれども、そこがちょっと非訟と見るか訴訟と見るかという論点と絡み得るのではないかと思っております。
 非訟にかなり近い側面はありますが、非訟手続であると断言するというか、そこまでは至っておりません。
 参加の問題でありますけれども、これにつきましては非訟事件手続法が適応された場合どうかという問題もありますが、そもそも訴訟手続であるかもしれないと。その場合の補助参加の問題というのも当然あると思います。
 これにつきましては前回でも似たような問題点、御指摘いただいたところでありますが、補助参加で任意参加の規定がその要件の下に適用されるという考え方もあり得ると思いますけれども、他方でこういった簡易・迅速かつ大量な消費者の請求権の処理ということで、どこまで個別消費者の参加を認めるかということについては、また別途検討する必要があるのではないかと思いますので、その点はまた手続の性質論とも併せましてちょっと検討させていただきたいと思っております。

○伊藤座長 わかりました。手続の性質論は、それ自体をここで議論してもどちらに決着がつくというような性質のものではないかと思いますので、背景にはあるとしても、簡易な手続が始められたときに個別の消費者が自分で手続の追行主体になることはできないんとしても、適格消費者団体かやっている手続の追行を助けるために手続に加わってくることを認める必要があるのか、それとも適格消費者団体に限定をして手続の追行資格を認めているので、個々の消費者がそれを助けるために参加をしてくるということは想定すべきでないのか。その辺りをもし御意見があれば承れれば思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○三木浩一座長代理 まず、この手続のイメージが完全に浮かんでいないのですが、これは公開なんでしょうか、非公開でしょうか。

○伊藤座長 私の理解では、公開を当然に要請される手続ではないと理解しておりますが、加納さん、いかがでしょうか。

○加納企画官 これは完璧に詰めきれているわけではありませんけれども、非公開ではないかとどちらかというと考えております。

○三木浩一座長代理 理屈だけですけれども、仮に非公開とすると、訴訟が非公開というのは憲法違反の問題が生じますので、先ほどの説明でちょっとわからないところがございます。

○伊藤座長 どうぞ、山本委員。

○山本委員 ここで議論しても仕方がないのですが、恐らくイメージとしては任意的口頭弁論の手続で、犯罪被害者の刑事の損害賠償命令とか、そういう民事訴訟を準用しながら任意的口頭弁論で処理をするという形がイメージされているのかなと想像しますが。

○伊藤座長 ここで今、余り立ち入って議論をするという性質のものではないように思いますけれども、一応事務局でただいまの御意見を踏まえて整理はしておいていただければと思います。
 その上で、先ほど申しましたような意味での個別消費者の手続への参加に関しては何か御意見ございますか。では、朝倉さんどうぞ。

○朝倉課長 適格消費者団体に授権した形で入ってきていて、更に自分が参加してくるというのが理論的にあり得るのかどうか、よくわからないところであります。一方で今回の手続自体は届出をして認否をして、認めるということであれば終わりですし、認めないとしても書証のようなものを出していただいて、そこで簡易に審議して迅速に査定の決定をするという手続でございますので、消費者が個別に入ってきて何かするような場面が余り想定できないですし、そういうことであるとすればむしろ査定に異議があって訴訟に移行するものだと思います。
 適格消費者団体を信頼していない消費者を念頭に置いているのかもしれませんが例えば消費者が1万人いるときに、そういう人が300人ぐらい加入してきて個別の主張をされますと、結局ほかの9,700人の人の手続が遅れてしまうということになりかねませんので、必ずしもここで認めなくてもいいのではないかと思っているところでございます。
 理論的に非訟法の適用があるかどうか、訴訟法の適用があるかどうか別途詰めていただくとして、いずれにしても何らかの特別法で、この手続自体が独立した手続として考えていただければいいのではないかと思うところです。

○伊藤座長 どうぞ、三木委員。

○三木浩一座長代理 私も別に特に参加させろと言っているわけではないけれども、イメージとしては朝倉さんがおっしゃったように授権したものではなくて、授権していない消費者のことが考え得るのではないかということです。

○伊藤座長 どうぞ、中村委員。

○中村委員 簡易な手続がうまくいかなかった場合のものに通常の訴訟に移行するという場合についてちょっとお尋ねというか確認がしたいんですけれども、そもそもこの制度の今までの議論の中で、できるだけ最初のところで議論をすると、第二のところで簡易に解決がつくという方向での制度の仕組みにするということであれば、消費者にとっても事業者にとっても利益があるということだったと思いますので、基本的にはそういう形にきちんとこの制度の仕組みができた場合には、消費者というか被害者といった方がいいかもしれませんが、一般的な消費者はその中に乗ってきて、それで解決がつくということだと思うんですね。
 それが納得ができない、適格な消費者団体は納得しているんだけれども、ある個別の消費者は納得ができないということですと、これは本当の意味での通常の訴訟に移行するということであって、この制度の中で訴訟手続になるという位置付けではないのかなという気がするのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○伊藤座長 どうでしょうか。裁判所の簡易な手続で判断が下された、それに対して手続追行主体である団体はそれでやむを得ないだろうという判断なんだけれども、査定をされた個々の消費者はそれに納得できないというので異議の申立てをして、訴訟手続に移行する、状況はそういう場面ですね。

○中村委員 逆に言いますと、仮にこの制度とは別に通常の訴訟は後でも提起ができますという話が以前もあったと思うんですが、その辺りとの関係はどうなるのでしょうか。

○伊藤座長 加納さん、何か御発言があれば。

○加納企画官 ちょっと問題意識の確認をさせていただければと思うのですが、簡易な手続から異議訴訟にいくということについて、そこで適格団体と対象消費者との間で考えが食い違った場合はどうなるんですかという御質問でしょうか。

○中村委員 そうです。

○加納企画官 異議申立て自体は対象消費者自身もできることしてはどうかと書かせていただいておりまして、例えば適格団体はちょっとやめておいてはどうですかと言っていても、対象消費者はいや、私はもっと頑張りたいんだと言ったら、それでやってもらうということにならざるを得ないのではいかと思いますが。

○伊藤座長 どうぞ、山口委員、お願いします。

○山口委員 それは案外深刻な事態が考えられるんです、これは報酬との関係も出てくるのですが、適格消費者団体にお願いした場合には例えば手数料10%払わなければいけないということを言われていたとします。
 ところが、ある弁護士がうちは3%でやりますよ。だから、とりあえず異議申立てをしてくださいと。通常手続に移行したらそれでさっと片付けますから、うちは3%で結構ですよ。こういうフリーライドといいますか、ためにする、消費者ではなくて消費者の後ろにいる弁護士なり個人なりです。そのような不公正な介入は余り意識すると変なことになってしまいますが、あり得るのかなと。そこら辺がどうするのかというのが、ちょっと現実問題としてあるかなと思っています。

○伊藤座長 こういう仕組みをつくっても、山口委員が御指摘のような形態がある程度不可避的に出てくるのかもしれないですね。
 どうぞ、大高委員。

○大高委員 最初の三木座長代理の問題意識と関連するのかしないのか、不明なところがあるんですが、今、山口委員がおっしゃったところにも関連するんですが、私としては二段階目の手続については基本的には、先ほど第1で議論になったところと関連しますが、執行段階まで含めて基本的には適格消費者団体が授権を受けてやることを原則にすべきではないかと思っています。
 その背景に考えているのは、一つは集団的な手続ですので、できるだけ統一的にやった方がいいという点と、もう一つは今、山口委員からもありましたようにできるだけフリーライド的な動きというのは抑えていくべきではないかというところが2点目です。
 こうした場合、当然二段階目で問題になっているのは個々具体的な対象消費者の権利ですので、そういう授権を最後まで原則とするということについては疑義もないわけではないですけれども、逆に言えば少なくとも今回A案でいくということで、個別訴訟の道は封じられていない形で第二段階に参加してもらうという選択をしてもらうわけですので、もし、そういう最後まで基本的には授権してもらうということが嫌だという人は最初から個別訴訟をやってもらうということが許されているというところで許容されないかなと思っているところです。
 その関係で、簡易な審理の段階においては基本的には授権強制で授権を外れることも基本的にはできないというスキームが好ましいと思いますし、異議訴訟においても、18ページでは対象消費者に一転、選択権があるような形の記載になっていますけれども、むしろ原則として授権することとして、適格消費者団体が異議申立てをしない、要するに請求に理由がないとかという事情で自ら異議申立てをしないとか、そういった事情の場合に限り、個別の訴訟追行を認める。もしくはそういう場合でも訴訟参加のみを認める形にするという形が望ましいのではないかと。
 執行のところで第1のところで申し上げましたとおり、自ら団体が執行しないような場合に限って例外的に対象消費者に執行申立てを認めればよいのではないかと。そういう形をイメージとしては思っているところです。

○伊藤座長 大高委員のお考えでも、要するにゼロないしはそれに近いような査定がされて、団体は、この人に関してやむを得ないだろうと判断して、異議申立てはしない。
 それに対して、当該消費者はそんなはずはないという場合に、その消費者が異議申立てをする機会は保障されるわけですね。

○大高委員 そういう趣旨です。逆に言えば、そういった場合に限り個別に訴訟を追行することを認めればいいんではないかという趣旨です。

○伊藤座長 大高委員から具体的なお考えの提示がございました。そういったことについても御意見をいただければと思います。
 山口委員、お願いします。

○山口委員 確認なんですが、仮に対象消費者が100人いて、簡易な手続でやったと。90人については特にその決定で異議なく了解をして確定をすると。ただ、10人については仮に不満で異議申立て手続に移行したという場合には、この90人については確定的な判決ということで勿論仮執行の問題はありますが、それは執行可能な状態になると。残りの10人だけがペンディングな状態で審理が続くという前提でよろしいわけですね。

○伊藤座長 加納さん、いかがでしょうか。

○加納企画官 そのとおりです。

○伊藤座長 大高委員からの話にございましたが、異議申立権については、第一次的には手続追行主体である団体に認める、団体がそれを行使しない場合に限って、第二次的に個々の消費者に異議申立権を認めると。そういう制度設計になるんだと思いますが、御意見がございましたら、お願いします。
 それでは、おっしゃっていることの実質は理解できるところですのでただいまの御意見を踏まえて、検討してもらうことにいたしましょう。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは第4「二段階目の簡易な手続での解決を促進するための方策」の方に移ってよろしいですか。では、加納さん、説明をお願いいたします。

○加納企画官 19ページをごらんいただければと思います。
 1.「基本的な考え方」のところでありますが、今回の制度におきましては個々の消費者が個別に訴えを提起することが困難な場合ということで考えておりまして、二段階目手続はできるだけ簡易迅速に行うということで考えております。
 「そのような観点からは」というところですけれども、およそ合理的な理由のない不当な異議申立てということにつきましては、一定の範囲内で抑制をするということで簡易な手続における判断というものの実効性を確保していく必要があるのではないかと考えてございます。
 ただ、「もっとも」というところですけれども、最終的にその請求権の存否ということでありまして、個別争点についてもいろいろと争いが残るということでありますから、そこは勿論、その判断の機会は保障すべきと考えられますので、その両者のバランスを取る必要があるだろうということで考えております。
 「2.考えられる方策」としまして、2つここに書かせていただいておりまして、1つは簡易な手続の決定に仮執行宣言、仮に執行することができるという形でする考え方。
 マル2、異議申立人に訴え提起手数料と納付済手数料の差額を納付することとするという、この二つがあり得るのではないかということで、以下、3.と4.のところで若干敷衍して書いております。
 3.(1)のところですが、簡易な手続の決定をどう見るかということですが、2行目に書いてありますとおり、確かに簡易な手続における決定ではあるものの、やはり一段階目の手続において共通争点が確定していると。それなりに重みのある判断が出ている局面であると。
 それを前提とした簡易な手続での判断となると思いますので、そうしますと簡易な手続での解決を促進するという観点から、仮に執行することができることとするというのも一つ考えられないかということで書いております。
 そうしますと、相手方事業者が異議を申立てたとしましても仮執行宣言に基づく執行というのはまた別途できるのではないかと考えておりまして、実効性が確保できるのではないかと考えております。
 「なお」に書いておりますので、相手方事業者がその強制執行を止めるためには、やはりその担保を立てるということが必要になるということで考えております。
 担保の関係で20ページですけれども、更に進めまして仮執行の有無に関わらず、簡易な手続の決定について実効性を確保という観点から相手方事業者が異議を申し立てる際は相当な担保を立てるという形で考えるということもあり得るのではないかということで書いてございます。
 それに対して「4.手数料の差額」の問題でありますが、まず、(1)では類例で労働審判と損害賠償命令のことを若干書いておりまして、これらにつきましては、いずれも異議申立てがあった場合にはそれぞれの手続の申立てをした者と。本件では消費者側ということになろうかと思いますけれども、それが手数料の差額を納めなければならないとなっております。
 労働審判や損害賠償命令につきましては、あくまでもそれに続く訴訟の先駆的な手続であると。それにすぎないということが考え方の背景としてあるのではないかと思われるところです。
 これに対しまして(2)労働審判や総合賠償命令とは違う側面もあるのではないかということで、若干検討しておりまして、今回の制度は消費者の紛争を集合的に解決するんだということで、共通争点を確認して二段階目の手続で簡易な手続をするとしておりますので、いうなれば集合的な解決というところがかなりのウェートを占めるものであると見る余地もあるのではないかということで書いております。
 他方で、異議申立て後は通常訴訟に移行するということからしますと、「もっとも」というところですけれども、訴訟の先駆的なものとして簡易な手続を位置づけるべきとも思われますので、そうしますと先ほどの労働審判や損害賠償命令と同様に異議申立人に差額分を負担させるということは適当でないとも思われるところであります。
 「なお」で書いておりますのは、倒産手続による債権確定手続におけるように簡易な決定というのは査定の手続であると見てしまって、それに対して不服のある当事者が異議訴訟を提起するんだと見てしまえば、異議申立てをした者が手数料を負担するということにもなろうかと思います。
 この点につきましては、先ほど三木先生からの御指摘、訴訟か非訟かというところも若干絡んでくるのではないかと思われるところでありますが、簡易な手続をどう見ていくのかということによりまして、仮執行という形でいくのか、手数料の差額を異議申立人が納付するという形でいくのかというところは、両説あり得るのではないかと思われますので、御意見をちょうだいできればと思っております。

○伊藤座長 「基本的な考え方」のところにありますように、異議の申立ての機会はいずれにしても保障しなければいけない。ただ、そのために手続が遅延するとか、あるいは救済の実現が先延ばしになることは好ましくないので、そういった事態が生ずるのをどのように防ぐかが基本的な視点で、説明があったような仕組みが何通りか考えられるということでございますが、この点について御意見を承りたいと存じます。
 いかがでしょうか。どうぞ、大高委員。

○大高委員 簡易な手続での解決促進するための方策が一定必要といいますか、できるだけ簡易な手続の中で解決ができるようにしておくということは非常に重要な視点だろうと思いますので、その点を確認したいと思います。
 それでどういう方法があるのかということで2点御提案いただいているわけですが、理論的な点はさておきまして、もし可能なのであれば是非導入していただきたいと思うところです。
 この点は勿論今、加納企画官からもありましたように、簡易な手続というものを本則的な手続として見るのか、異議訴訟を本来的な手続として見るのかというところに大分帰結するところあるかと思うんですが、そういう理論的なものは学者の先生にいろいろ御指摘いただくとして政策的な部分から申し上げますと、4.異議申立人に訴え提起手数料と納付済手数料の差額を納付させるという形に取ることは私は必須ではないかなと思っております。
 と言いますのも、一定、裁判所の簡易な査定が出て、消費者の方はその金額に十分納得をしているという場合にも関わらず、事業者の方から異議が出たからといって、申立人である対象消費者に差額を納付しなければそもそも申立て自体が却下されるとなると、これはかなり対象消費者に対して厳しい制度となりまして。小額な事件であればともかく、100~150万程度になればそれなりに訴訟手数料もかかってきますし、1~2万といっても負担となる場合もありますので好ましくないのではないかと。
 仮に申立人が負担をするとすれば、事業者側からすれば、こういったことをする事業者は極めてレアだとは思いますけれども、とりあえず異議を出しておいて手数料を納付できなかったところは落ちてもらって、その後は訴訟になればすぐ認めてしまって、落ちるところでは落としてしまえという選択も取ろうと思えば取れると。
 こういったことができるということ自体が好ましくないんじゃないかと思いますので、できれば両方、少なくとも4.の方については何とか実現を図っていただきたいと思うところです。

○伊藤座長 わかりました。どうぞ、山本委員、お願いします。

○山本委員 私も可能であればこの2つの方策が両方とることができればいいかなと思っているんですが、私自身はやはり消費者のできるだけ迅速な権利救済という観点からすれば、3の仮執行があれば非常にいいかなと思っているところです。
 大高委員と同じように、私も懸念するのは見境もなく異議を出してくるということが戦略的に行われて、自主的に簡易な手続は無に帰すという事態は防ぐ安全面が必要ではないかということなんですが、仮執行があれば見境なく異議を出してきた場合は、それをまとめて適格団体が強制執行するということができることになりますので。
 この手数料の納付というのは確かにあるんですけれども、これはある程度、納付に期間の猶予を持ってもらえれば、強制執行うまくいけば取った分から納付するということが可能になるとも思いますので、私自身はなんとか3の仮執行宣言が入れられないかなと思うところです。

○伊藤座長 山本委員、大高委員のお考えの根本は、3の仮執行宣言をするという考え方と、それから4の差額納付の考え方は、必ずしも相互に排斥的といいますか、どちらかを取るとどちらかを取ることが難しいとか、そういう関係ではないという認識でしょうか。その辺りをお聞かせいただければ。
 事務局の考え方は、論理的にはどうかはともかくとして、どちらか一方を取ると、併せて他方を取ることは難しいというのが背景にある認識だともいます。
 どうぞ、山本委員。

○山本委員 現行の制度が恐らくそうなっていて、そう説明される部分があるということは、多分事務局のそういう認識なんだろうと思います。
 つまり、一種の訴訟の前駆的な手続であるということを前提とすれば、それに仮執行をつけることはできるけれども、費用の負担はやはり本来の申立て人、原告側が負担をすべきだということになるのに対して、前段の簡易な手続が一種の非訟的なもので債権査定のようなものであるとすれば、それに仮執行をつけるということはなかなか難しいけれども、異議訴訟を起こす場合には、それは異議訴訟という独立の訴訟の形になりますので異議を申し立てた人間が費用を負担すると。
 恐らく、そういう論理的な説明で3と4というのが排斥し合う関係にあるということを言われるのかなと思います。
 ただ、この制度事態は第一段階の判決というのが別途あって、そこで責任原因等が規範力を持って確定されて、それを受けて第二段階の手続があるという意味では私の認識では本邦初の制度なので、今までの前例ですべてがあるから、これで両方を両立させることができなくなるかということについては、理論的には私にはなお検討しうる余地はあるのではないかと思っております。

○伊藤座長 わかりました。大高委員、いかがですか。

○大高委員 理論的な整合性については、私はとても山本委員以上の説明を加える自信は全くないですので、ある意味、立法論的な提案をせざるを得ないのですが、仮に両者が背反し合うもので、どちらか一方しかできないとなるのであれば、1つは山本委員が先ほど御示唆されたように3の仮執行宣言を基本としつつ、訴訟手数料の差額納付については一定猶予するといった立法的措置をとって、仮に異議が出された段階で納付ができなかったとしても、そのことが直ちに申立ての却下につながるようなものではないという立法的手当てがされるのであれば、それは1つのスキームとしてあり得るのではないかと思うところです。

○伊藤座長 どうぞ、朝倉さん。

○朝倉課長 理論的な面については今、山本委員がおっしゃったとおりで、伝統的に考えればどちらかということになると思います。そうだとすれば先ほどの事務局の御説明、ここでの議論もそうですが破産の債権査定のような手続だとすると、むしろ差額を納付するという方向でいくというのが自然かなと思わないでもないところでございます。
 その場合に仮執行宣言をつけることができないのか。検討する余地があると山本委員がおっしゃることは、理論的にはそのとおりだと思いますが、一方で実質的に考えてみたときに仮執行宣言をつけますと、事業者側としては当然、執行される前に執行停止の申立てをし、担保を積んで停止の決定をもらう必要が出てきます。
 不動産執行は時間がありますが預金を押さえられてしまうと非常に影響が大きいですから、本当にそれが必要な制度なのかなというのが第一点です。
 それから、仮執行宣言がついていて、企業が適格消費者団体に支払い、それが消費者の手元まで行くと多分多くの人は使ってしまいます。そうすると、もし異議訴訟で反対の結論になったときにそのお金は返ってくるのだろうか。消費者本人が返せないとなると、もしかすると適格消費者団体が負担して払うなんてことになったら大変なことだという気がします。
 つまり、仮執行宣言の場合、払ってしまって使ってしまったものをだれが負担するのかという問題をどうしても考えなければいけない。特に費消してしまうようなことが考えられるような例だとすると、本当にそれでいいのかというところがあります。そこで、折衷的に、異議訴訟を起こすときには例えば相当額の担保を積んでおかないといけない、その分の出捐を覚悟しないと異議訴訟は起こせない制度にする。でも、それは消費者が使ってしまうことはできなくて、言わば貯金されている状態ですよということにとどめるのが全体のバランスとしてはいいのではないかと思うところでございます。

○伊藤座長 どうぞ、三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 理屈の問題とこの制度請求はどうリンクすべきなのかという問題はよくわからないところがあるんですが。
 先に理屈の問題の方を考えますと、大高委員がこの制度は本則が訴訟の方なのか、それとも今回の決議の方なのかということですが、理屈を考えれば、恐らく訴訟の方が本則なんだろうと思います。
 といいますのは、先ほど山本委員が私の発言との対比で犯罪被害者保護訴訟の保護制度のことを言いましたけれども、程度の差なのか質的な差なのかよくわかりませんが、やはりちょっとこちらとは違う気がします。犯罪被害者保護法の方は、刑事訴訟の方で基本的な審理がまさに公開法廷でほぼやられているわけですね。恐らく、保護法手続の方でやられるのは損害額の算定だけで、一番クリティカルに違うのは、犯罪被害者であることは当然わかっているわけです。
 だけど、こちらの方ではそもそもあなたは被害者ではないと言われる可能性があるわけです。そこは本質的な訴訟事件というか、本質は責任論に勝るとも劣らない訴訟事件性の高い本質部分が二段階目でやられるんだということで、本来は訴訟が本則でやるべきだけど、その訴訟でいつも解決するんでは大変だから簡易な手続を用意して、これで進めばお互い納得すれば問題ないということではないかと思いますから、本則は訴訟だろうと思います。
 ただ、その議論と今の保護策というのがどうリンクするのかですが、余りしないような気もするんですね。本則が訴訟だったら仮執行宣言をつけられるかつけられないとか、理論的に決まっていくのかと、そうはならないと思いまして。私は仮執行宣言がつけられたら被害者側に便利だろうということは勿論よくわかりますが、結論的には朝倉さんがおっしゃったような問題意識は共有しております。
 やはり仮の手続で、しかも異議は双方から出る可能性のある制度ですよね。ですから、常に事業者からだけ出るとは限らないわけで、それに仮執行宣言をつけるという。つける段階では裁判所は異議が出るかどうかわからない状態ですから、果たしていいのか。
 それから朝倉さんがおっしゃった、事後的な処理の問題は多少気になるところです。
 山本委員がおっしゃった、仮執行宣言をつけると安易な異議の申立てを抑制できるのではないかという問題は仮執行宣言で対応すべきなのか。どれほど効くのかよくわかりませんが、以前も少し話が出たと思いますけれども異議申立てをした者がその訴訟で敗訴した場合の費用負担をさせるとか、そちらの方に対応で理不尽な異議申立てを防ぐということは考えられると思います。
 朝倉課長がおっしゃった、異議申立者に担保を積ませるというのは、ちょっと後で確認しないといけないんですが、それは事業者が異議申立てたときだけの話なのか、反対側が申立てた場合とか、適格団体とか消費者個人が申し立てた場合もという御趣旨だったのか、そこはちょっとよくわらかないんですけれども、後者だとするとなかなかきついなという気はいたします。
 2点目の差額の差額納付の問題は私も、これは双方が異議申立ての可能性があるわけですけれども、今までの議論が常に事業者側異議申立てだけを想定しての議論なのか、ちょっとよくわからなかったところはあるんですけれども。
 しかし、最終的に提訴手数料とか納付済手数料というのは、いわゆる訴訟費用の話でしょうから、最終的にこれは敗訴者負担になるわけですね。ですから、勿論事前出費の問題はありますが、消費者団体とかに負担をさせても、最終的には相手方が勝てば取れるわけです。だからその辺は、当初の申立て人に負担させるということもあり得るかなという気はいたしております。

○伊藤座長 先ほど、どなたか手をあげられましたか。宜しいでしょうか。
 今までの御意見を受け賜っておりますと、どちら側からであれ合理的理由のない異議が出されて、それによってこの手続が簡易でなくなってしまって、紛争の早期解決の妨げになるという事態を防がなければいけないという認識は共有されていると思います。
 そのための手段として異議を申し立てる人に差額を払ってもらうという形で一種の負担を課すという考え方と、まだ確定はしていないんだけれども、一定の額が裁判所からの判断として示されているときに、その権利を仮に実現することができるという形の制度設計をして、それによって合理性のない異議が出てくるということを言わば間接的に抑止するという、もう一つの考え方があるように伺いました。いずれも一長一短といいますか、利点と問題があるかと思います。
 そこで、この点もどちらにするかに関しては、まだこの段階では決めないで、それぞれの長所短所を踏まえて事務局でもう一度取りまとめに向けて整理をしてもらって、最終的にどちらかの考え方にするかを取りまとめの段階で御審議いただくということではいかがでしょうか。
 どうぞ、加納さん、お願いします。

○加納企画官 この制度自体をどう捉えるか、簡易な手続とは一体何なのかということで、山本先生のお言葉によると本邦初の制度でどこまでできるのかということだと思いますので、この辺はちょっともう一度整理させていただいた上でお示しするようにさせていただきたいと思います。

○伊藤座長 一応、第4までの審議をいただきましたが、若干予定時間余裕ございますけれども、いかがでしょうか。いつもとは逆になりますが、特に御発言がございましたら御遠慮なく。
 よろしいでしょうか。それでは、その都度、私から取りまとめめいたものを申し上げましたけれども、それを踏まえて最終的にどういう形での調査会としての考え方を提示するかということを事務局にて検討いただいて、その上で皆様方に審議をお願いできればと思います。

≪3.閉会≫

○伊藤座長 他に特段の御発言がなければ本日の調査会はこれで終了させていただくことにして、事務局より次回の日程についての連絡をお願いいたします。

○原事務局長 どうも御議論、ありがとうございました。
 次回は7月22日木曜日9時半からを予定しております。議題については論点整理4ということで、「その他の論点」としておりますが、積み残された課題という論点というところで議論をお願いしたいと思っております。会場は今日と同じ、この場所を使いたいと思っております。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 これにて本日の調査会は閉会にさせていただきます。また次回、どうぞよろしくお願いいたします。

(以上)