第6回 公益通報者保護専門調査会 議事録

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日時

2010年11月24日(水)16:00~17:48

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、橋本座長代理、大杉委員、田井委員、土田委員、仲田委員、松村委員、
 三木信夫委員、三木由希子委員、山本委員、吉村委員、渡邊委員
【担当委員】
 中村消費者委員会委員長代理
【説明者】
 消費者庁 成田企画課長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.公益通報者保護制度の具体的課題について
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:7KB)
【資料1】 前回(第5回)までの専門調査会で出された意見等(PDF形式:56KB)
【資料2】 公益通報者保護専門調査会で出された意見等に対する消費者庁の考え方(消費者庁提出資料)(PDF形式:508KB)
【資料3】 公益通報者保護専門調査会 今後のスケジュール(PDF形式:10KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。 消費者委員会事務局の原でございます。
 本日は、皆様、夕刻のお忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。
 ただいまから「第6回公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。
 なお、本日は、所用により、大村委員、野澤委員、それから、消費者委員会の担当委員である日和佐委員が御欠席、それから、三木由希子委員と大杉委員はちょっと遅れておられますけれども、時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 それでは、議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第と書かれた資料の次に配付資料一覧を付けておりますけれども、資料1として、「前回(第5回)までの専門調査会で出された意見等」と、前回の資料に前回の席上出された意見等を追加したものをお示ししております。
 それから、資料2として、消費者庁提出資料ということで、「専門調査会で出された意見等に対する消費者庁の考え方」を本日お示しいただくことにしておりますので、その資料を付けさせていただいております。
 資料3として「今後のスケジュール」を予定しております。
 不足がございましたら、事務局まで申し出ていただけたらと思います。
 それでは、島田座長、議事進行、どうぞよろしくお願いいたします。

≪2.公益通報者保護制度の具体的課題について≫

○島田座長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日は、「公益通報者保護制度の具体的課題について」を議題にしたいと思います。
 前回の専門調査会では、消費者庁から公益通報者保護法の具体的課題について、これを御説明いただくとともに、この間の各委員の意見等について、事務局で整理した資料「前回までの専門調査会で出された意見等」に基づき、確認をいただきながら、各論点について論議を行いました。
 本日は、まず、事務局におきまして、前回の内容を踏まえて資料を訂正しておりますので、その内容について確認を行っておきたいと思います。
 それでは、原事務局長、お願いいたします。

○原事務局長 それでは、お手元の資料1をご覧いただきたいと思います。
 資料1「前回までの専門調査会で出された意見等」をお開きいただきますと、「1.制度の目的・在り方」ということで、黒字の部分は、前回の資料でお示した意見を、青字になっている部分が、前回、追加で出された意見として付け加えさせていただいたものとなっております。本日は、前回出されて付け加えた意見を中心に御紹介をしたいと思っております。
 1ページ目、「1.制度の目的・在り方」ですけれども、「(1)立法事実」について前回は多くのご意見をいただきましたので、まず、最初に持ってきております。
 1つ目の意見として、法律改正の検討に当たっては、施行後の具体的事実をもとに特定の問題を把握した上で、当該問題を解消するためにいかなる改正をすべきかという議論が必須であり、まだ具体的な立法事実というところまで特定の問題は指摘されていないのではないかという御意見。
 それから、この法律の窮屈なところを少し緩め、少し敷居を下げることによって、大きなコストをかけることもなく、もう少し日本全体のコンプライアンスの雰囲気を明るいものにする余地があるのではないかという御意見。
 それから、実際に問題になっているのは、ルートに則って通報したけれども是正してくれなかった。監督官庁もやってくれなかった。それで仕方なくマスコミ等の外部に通報して、それが表沙汰になって初めて是正されたケース。その場合でも解雇や不利益扱いを受けたりする事例が大半であり、今の法律の3段階の通報対象の分け方がいいのかどうか検討されるべき部分だと。そこに立法事実があるという御意見がございました。
 「(2)制度の目的・在り方」の「目的」に関しては、社会的制度といった意義と、公的監視機能の補完ということをもう一度目的で確認すべきではないかという御意見がありました。
 それから、3ページに入りまして、「在り方」ですけれども、この制度を生かすためには、不正行為を把握できる人も広くとらえて、それぞれの通報者の類型ごとにどういう保護が可能かを検討すべきではないかということ。
 それから、この法で解雇が無効とされる場合は、判例よりかえって狭いぐらいではないかということで、労働法的な側面は確かにあるけれども、ローコストで法令遵守を進める方が究極的な法の目的で、労働者の保護、特に解雇無効というのは、やや手段的な位置付けではないのかという御意見がございました。
 それから、運用等のソフト面の検討は、多様な課題改善に有効なので、そういう施策の提示は非常に有益であるという御意見が出されております。
 それから、4ページ目に、これも制度の「在り方」の続きになりますけれども、行政機関向けガイドライン等の中で、従業員である職員以外の一般市民等からの通報も一定の範囲で受け付ける形にしてはどうか。住民による行政の法的統制を補完する機能として期待できるという御意見も出ておりました。
 ただ、一方で、行政機関に対する住民の監視機能としては、それぞれの行政機関や省庁で大いにやってもらうのはいいが、その問題とこの法律は一緒に議論できないと思うという御意見が出されたところです。
 それから、5ページ目の「2.通報者の範囲」です。ここから附帯決議に基づく具体的課題事項になりますけれども、「(1)通報者の範囲の拡大」で、労働者に限るのか、いや、それ以外にもというお話も出ておりまして、「退職者」とか「役員」とかに関する御意見を加えておりますが、解雇については、伝統的に日本では無効構成をとっている。他方、事業者との契約について、解約したが無効で契約関係は継続するということを解雇と同レベルで議論するのは難しいということで、労働者に限定するべきか、労働者以外と広げるときに、例えば退職者はどうするか、役員をどうするかという話と、それから、こういった事業者との契約をどうするかという課題がありましたけれども、それぞれについて御意見が出されてきているというところになります。
 それから、6ページですが、「3.通報対象事実の範囲」の「(1)対象事実の拡大」についてですが、脱税事案とか公金横領事案の相談があったことから、公益のための通報を一般市民がどう受け取るかという観点から、こういったものも広く含めるようにしていかないと、この制度自身も根づいていかないのではないかという御意見が出ております。
 それから、通報対象事実の範囲を拡大すると、法の定義に当てはまる公益通報と具体的な保護の対象となる公益通報とにすき間が出てくる可能性があるということで、こういった問題はガイドラインの活用等で、明確に、行政機関が通報を受けた場合の対応について示していくことが必要になるのではないかという御意見が出されております。
 それから、7ページですが、「(2)対象法律制度」について、通報対象事実について、明確性を要すると言われているが、通報者から見れば、対象法律が余りにも細かく書かれていて、逆に明確性がなく分からないという矛盾を感じる。イギリス法でもこれほど細かい限定列挙を挙げておらず、見直すべきという御意見が出ており、大体同様の趣旨の発言もいただいております。
 それから、「(3)法令違反の「おそれ」」の扱いについて、「おそれ」も含めてしまうと、安易な形での通報が激増することになり、実際に対応し切れないのではないか、安易に「おそれ」を対象に入れることは避けるべきではないかという意見が出されています。
 ただ、3条の真実相当性の解釈で読み込むことができれば、今回「おそれ」という形で更に広げることはそれほど重要な問題ではないのではないかというご意見もあり、真実相当性の解釈で「おそれ」も読み込むことができればいいのではないかという御意見になるかと思います。
 それから、8ページですが、「4.外部通報の要件」の「(1)外部通報の要件の緩和」について、以前外部通報の要件を緩和すべきではないかという御意見が出されていたところですが、これに対して、この法律の要件は、労働者保護と企業の利益の調整の結果、内部通報をまずやってもらいたいというルートを促し、行政機関、事業者外部の通報が最後のルートと想定をしており、それなりに具体化されていて分りやすいのではないかという意見。そして、企業は、問題が大きくならないうちに自浄作用を発揮させたいということで、実際の不正は、通報よりも監督や職制ラインの中で見つけ、大きな問題はそこから出てきているということで、法律を変える等の改善を行うと、急に制度が全部うまく回り出すものではないという御意見が追加で出されたところです。
 「(2)一般的保護要件」ですけれども、これは、基本的に外部通報でいろいろな要件を課すということは、それなりに相当な理由があることは理解ができると。ただし、一般的保護要件を入れるだけで随分安心感が違ってくるのではないかという御意見が出されております。
 それから、9ページ目ですが、「5.外部通報先の範囲」の「(1)第三者機関の設置」について、内部に通報するにしても、通報先は第三者のところ、あるいは、第三者の方が判断するという仕組みを導入されてはどうかということ。それから、外部通報先を民間と行政の場合で区別することはあり得るのではないか。自治法上は「機関の共同設置」ということも制度的にはあるということ。それから、中小企業の場合は、何か国の制度でこういった機関を設けることもよいのではないかということ。ただ、こういった第三者機関の設置については、通報した相手が適切に取り扱うか、調査も含めてきちっとできることが重要で、そうなると、一般的な広い意味での第三者機関がどうなのかというイメージがわかないという御意見。最後に、小規模な自治体の50%がまだ制度を導入していない中で、導入できていない小規模な団体のことも議論の中で考えてほしいという御意見が出されております。
 それから、10ページですが、「(2)通報と相談」ということで、前回たくさんの意見が出されています。最初に、公益通報事実に該当するかどうかのアドバイスを気軽に相談できるような機関があれば、かなり公益通報の周知・普及に役立つのではないかという御意見、簡単な相談、これは通報なのかどうかということを相談できるような場とか、簡単なガイドラインとか、そういったようなものがあるといいという御意見が幾つも出されております。それから、ある程度守秘義務のある一定の立場の人に相手を限定すればできるのではないかという御意見、一番最後に、法律の制定前に、大阪で民間の公益通報支援センターがあって、相談を受ける活動をしていたけれども、この法律ができた途端、活動をほとんどしていないと。どうしても反対解釈をされるというおそれの中で、なかなか相談がしにくくなっているというところがあって、この辺をどのように解決していったらいいかという御意見が出されたところです。
 それから、11ページですが、「6.民間事業者・行政機関がとるべき措置」の「行政機関」の部分ですけれども、行政機関がとるべき措置を10条で定めているけれども、10条の内容をもう少し具体化してもいいのではないかという御意見が出ております。同様な御意見で、10条に「行政機関は必要な調査を行い」とあるが、その調査の範囲や基準等をもう少し明確にしてもらえれば、実際の調査がやりやすくなるという御意見が出ております。
 それから、13ページに「中小規模の機関への配慮」ということで、中小企業への普及促進のためには、例えば内部通報制度が設置できないような企業には、外部通報の要件を引き下げたり、現在のガイドラインの実効性を高めたりすることの検討も必要ではないかという御意見が出ております。
 それから、14ページですが、「7.効果」の「(3)刑事免責・民事免責」についてもご意見が出されております。事後的に事業者から損害賠償されることが通報の壁になる。民事での損害賠償に対して、救済というか、損害賠償を制限する民事免責は、この制度を実効化するためには必要なものであるという御意見が出されております。
 それから、15ページですが、「8.運用」のところでは、中小企業の制度の認知度が非常に低いことに危機感を持っている。むしろ労働組合のない中小企業においてこそ制度の普及が重要と考えているという御意見が出されました。
 16ページ、17ページは、追加をする御意見ということでは特には出されておりません。
 事務局からは以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。
 御活発な議論を背景にいたしまして、相当詳細にまとめていただいているかと思います。後からいらっしゃった委員もいらっしゃいますので、もう一度確認をします。今、御説明をいただいた青字の部分が、前回の議論をまとめて追加をした部分ということでございます。各委員は是非ご覧いただきまして、発言について、意見が反映されていないような部分、あるいは、ちょっと趣旨が違うというようなことがございましたら、御指摘をいただきたいと思います。また、前回御欠席の、特に渡邊委員、もし御意見があれば、是非お聞かせ願いたいと思います。

○渡邊委員 前回欠席しまして、誠に申し訳ない。全体的な意見をさせていただきたいと思うのですけれども、この専門調査会では、これまでたくさんの事例報告がありましたけれども、法律の欠陥や不備のせいで労働者が救えなかった事例というのは、私が知る限りは一つもなかったと思っています。つまり、現在では法律改正を必要とするほどの不都合な事例がないならば、無理に改正すべきではないのではないかと考えております。たとえ施行後5年をめどに見直すという規定がありましても、これに縛られるべきではないと思います。むしろ消費者庁には、法改正に値する不都合な事例収集を是非お願いしたいと思います。
 前回の私どもの東京商工会議所の調査というのを会合でも御報告していただいたと思うのですけれども、その中で、中小企業の半数以上、51.5%ですけれども、「この法律は知らない」と答えているので、この事実を重く受けとめてもらいたいと思っています。この法律の実効性を上げるためには、まず最初に、周知徹底が何よりも重要ですし、拙速な改正は避けるべきではないかと考えております。
 なお、中小企業の対応が進んでいないからといって、大企業と区別して、中小企業に厳しく適用すべきという意見には全く賛成ができないと思っております。これは、企業の現場を知らない議論でありまして、問題の解決にはならないのではないかと思います。これまで十分な意見を申し上げられませんでしたけれども、この機会に私としてはまとめて意見を申し上げたいと思います。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございました。
 それでは、事務局の方で、今日の渡邊委員の発言は、前回御欠席ですので、資料の中に適宜付け加えていただくということをお願いしたいと思います。

○原事務局長 追加をさせていただきたいと思います。

○島田座長 ほかには、前回御出席だったかと思うのですが、何か先ほど申し上げましたように、御確認いただければと思いますが、いかがでしょうか。

○中村委員長代理 前回までの議事録がまだ今日現在アップされていないのですが、議事録のアップは、1か月前に前回やっているので、早く載せていただきたい。そうすれば、今日の説明もかなり省けたと思います。
 それから、渡邊委員が今、御発言なさったので、それがもし加わるとするならば、後に消費者庁から考え方が出される中にもいっぱい書いてあるのですが、具体的な立法事実となるような事例があるのかという疑問符で終わっているのですが、実は私ども、個別に細かくは取り上げていないけれども、いっぱい事例はあると思っています。ここはまさに専門調査会なのですから、その事例の調査を是非やっていただきたいと思うのですね。そこをやって、やってもなかったというのなら、それは改正の必要なしでもいいのかもしれませんが、やっていないのに、早々に結論を出すべきではない。やはり専門調査会なのだから、具体的に公益通報者保護法の不備を感じるような事例があるのか、ないのか。きちっとまず調査することが先だと思っています。ある程度の事例は私どもも出すことはできますけれども、是非事務局なり消費者庁の方でしっかりした調査をまずやっていただきたいと思います。

○島田座長 事務局の方、何か今の御意見に対してございますか。

○原事務局長 今いただいた御意見ですけれども、この後、消費者庁が御説明になりますので、それを含めて、今後どうしていくかというところでの課題とさせていただけたらと思います。

○島田座長 それでは、ほかに何かございますか。
 よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、先に進めさせていただきます。
 前回の議論で、各論点について追加すべき点は御指摘をいただいたと思っておりますので、そこで、本日は、消費者庁から、この間の専門調査会で出された意見等に対する考え方について説明をしていただき、議論を深めていきたいと思います。
 それでは、消費者庁の成田企画課長、お願いいたします。

○成田企画課長 消費者庁企画課の成田でございます。
 資料2につきまして、御説明させていただきたいと思います。
 まず、この資料でございますけれども、島田座長より、消費者庁長官に対しまして、文書で、本日の議題である「公益通報者保護制度の具体的課題について」、資料を提出の上、「前回までの専門調査会で出された意見等に対する消費者庁としての見解」について御説明するようにという御指示がございましたので、それを受けまして作成したものでございます。
 この専門調査会で、今まさに御議論いただいている段階で、御意見等に対する消費者庁としての見解をお出しするというのはなかなか難しい面もございましたけれども、これまでにいただいている御意見につきまして、残りあと3回の会合の中で御検討いただく際の視点のようなものを整理させていただいたような形になっておりますけれども、そういった形で資料を整理させていただきました。
 2ページでございますけれども、目次がございます。1から9までに9の論点を挙げております。これらの論点は、前回、消費者委員会事務局が提出されました「前回までの専門調査会で出された意見等」という資料の項目に合わせてございます。最後に、10といたしまして、消費者庁としての考え方を少し整理させていただいております。
 3ページでございますけれども、この資料は、左側にそれぞれの論点ごとに専門調査会で出された御意見、右側にそれぞれの論点についての消費者庁の考え方を記載しております。専門調査会で出された御意見等につきましては、事務局の資料においても整理していただいておりますけれども、この資料におきましては、個々の論点ごとに主にどういった御意見が出されているのかを消費者庁なりに整理させていただいたものでございます。
 1つ目の論点、「制度の目的・在り方」についてでございます。
 目的・在り方につきましては、さまざまな御意見が出されているところでございます。一つひとつ御紹介することはできませんけれども、1つは、一般的に法改正の検討に当たっては、施行後の具体的事実を基に特定の問題を把握し、それを解消するためにいかなる改正をすべきかという議論が必須という御意見と、立法事実ということを言い出すと何もできないというような御意見がございました。
 また、法律の目的につきまして、この法律でコンプライアンス等をすべてやるわけではない、法律でできる範囲は限られているといった御意見がある一方で、法令の規定の遵守、公的監視機能の補完といった目的を指摘される委員の方もいらっしゃったところでございます。
 右側に消費者庁の考え方を書いてございますけれども、まず、全体に通じることといたしまして、公益通報者保護法は、通報者保護に関する制度的なルールを明確にするために、国民生活審議会、国会等の議論を経て制定されたものであり、これを改正するためには、改正を必要とする具体的事実や理由が必要であると考えられるところでございますけれども、これまでの専門調査会における御議論におきましては、こういった具体的事実や理由が十分に浮き彫りになってはいないのではないかと思っております。
 また、制度の目的ということにつきましては、法令遵守を目的とする他の法令等との関係で、この法律をどう位置付けるのかということについて、更に検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 現行法の「公益通報」に該当しない通報に対する行政機関の対応ということにつきましては、次の通報者の範囲の議論とも関連いたしまして、いろいろな御意見がございました。通報者である労働者の保護ということを離れまして、国民の皆様からのさまざまな情報について、行政機関がどのように対応するかという点につきましては、公益通報者保護法の枠組みで対応することとすれば、現在の公益通報者保護法の枠組みを大きく変えることになりますし、前回も申し上げましたとおり、こういった事項につきましては、公益通報者保護法の枠組みで議論することが適切なのかという検討から必要なのではないかと考えられるところでございます。
 4ページ、2の「通報者の範囲」につきましては、通報者の範囲を拡大するという御議論の中で、前のページとも関連いたしますけれども、「国民一般」に広げることにつきましては、既に申し上げていることではございますけれども、通報者に対してどのような保護が必要なのかということとセットで検討が必要なのではないかと考えられるところでございます。
 「退職者」につきましては、退職者からの通報や相談が多いという御指摘をいただいているところでございますけれども、退職者に対してどのような保護が必要なのか。すなわち、何か不利益な取扱いを実際に受けているのかということと併せて検討が必要なのではないかと考えられるところでございます。
 「下請等取引事業者」につきましては、これまで、対象とすべきという御意見と、対象とすべきではないのではないかという御意見があったと記憶しておりますけれども、この点につきましては、前回御説明させていただきましたとおり、法制定時には取引自由の原則から慎重に検討すべきと判断されたところであり、今回これを変更すべきかどうか、するとすれば、どのような理由で変更するのかという検討が必要なのではないかと考えられるところでございます。
 5ページで「取締役」についてでございますけれども、法制定時には、会社法との関係などもございまして対象とされなかったところでございますが、これも今回変更するのであれば、会社法との関係を含めてその理由をどのように整理するのかという検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 「匿名通報者の取扱い」につきましては、「国民一般」とも関連するかと思いますけれども、どのような保護が必要なのかという検討が必要なのではないかと考えられるところでございます。
 6ページ、「3 通報対象事実の範囲」につきましては、対象事実が狭いのではないか、また、いわゆる対象法律制度をとることがいいのかどうかという御意見が出されているところでございます。この点につきましては、前回の繰返しになりますけれども、公益通報者保護法が制定される前から、通報者は判例や一般法理、労働契約法、これは法制定時には労働基準法でしたけれども、こういったものによって保護されてきたところであり、公益通報者保護法は、通報者保護に関する制度的なルールを明確化し、通報の結果に対する予見可能性を高めていくことが必要であると考えられたことから制定されたものでございます。
 通報対象事実の範囲の検討に当たっては、どこまで拡大するのかという点に加えまして、明確性、予見可能性をそもそも確保する必要があるのかどうか、ある場合には、通報対象事実の範囲の変更に伴って、これが確保されるのかどうかということも検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 また、通報対象事実の範囲が分かりにくいという御指摘と、狭過ぎるという御指摘をいただいておりますが、それぞれについてどのように解決していくのかという点も留意が必要ではないかと思われるところでございます。
 仮に拡大する場合には、通報を受ける事業者や行政機関の対応が可能かという視点も必要になるのではないかと考えられるところでございます。
 7ページでございますけれども、法令違反の「おそれ」を対象とすべきかどうかという点につきましては、法制定時には保護される範囲を明確にするということと、蓋然性が低い状態で通報された場合に、事業者の正当な利益を害することがあるということから、「まさに生じようとしている」とされたという経緯がございますけれども、これとの関係をどのように整理するかということと、根拠のない通報を対象とするのかどうかといったような検討が必要であると考えられるところでございます。
 8ページが「4 外部通報の要件」についてでございます。これにつきましては、外部通報の要件が厳しいのではないかという御意見と、現在のままでよいのではないかという御意見が出されているところでございます。これも前回の繰返しになりますけれども、法制定時の整理では、労働者である公益通報者が雇用元の事業者に対して負う誠実義務との関係上、公益通報者は労務提供先の利益を不当に侵害しないよう配慮して行動する必要がある一方で、例えば事業者内部に公益通報すれば公益通報者が不当に不利益な取扱いを受けるおそれがあるなど、一定の場合には、誠実義務を履行することが困難でございますので、その他の事業者外部に公益通報することが相当であると考えられたこと、また、通報先に応じて保護要件に差が設けられておりますけれども、これは法令違反の通報による公益の実現と、事業者の正当な利益の保護とのバランスを図る観点からであったこととの関係をどのように整理するのかという検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 また、「一般的保護要件」を設けることにつきましては、これも前回、法制定時に個別の通報が保護されるのか否かについての予見可能性を害し、通報のたびに裁判所の判断を仰がなければならなくなるため、通報者保護にはつながらないとされたということを御紹介させていただきましたけれども、このこととの整理をどのようにするのかという検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 9ページ、「5 外部通報先の範囲」についてでございます。前回、「第三者機関の設置」につきまして、さまざまな御意見がございましたけれども、こういったものを設けるとすれば、その具体的な内容などの検討が更に必要であると考えられますことと、仮に国や地方に設けるとすれば、行政コストとの関係にも留意する必要があるのではないかと考えられるところでございます。
 「通報と相談」につきましても、前回いろいろと御議論がございました。事業者外部に対する相談について、一定の保護ができないかという御指摘がございましたけれども、これについても一律に法律で対応することが適切かという検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 なお、前回御紹介できませんでしたけれども、消費者庁では、「公益通報者保護制度相談ダイヤル」というものを設けておりまして、労働者の方などからの相談にも一定程度は対応させていただいているところでございます。
 10ページ、「6 民間事業者・行政機関がとるべき措置」についてでございます。
 現在、9条から11条までの規定がございますけれども、こういった規定に加えて、民間事業者・行政機関がとるべき措置を具体化するかどうかということにつきましては、例えば処理期間、調査の範囲や基準を明確にするといったような御提案があったところでございます。
 これにつきましては、具体的にどのような措置が求められるのか、また、中小企業や市区町村において通報処理の仕組みの整備が必ずしも進んでいない中で、求められる措置を一律に法律に記載することが必要なのか、ガイドラインのような形で対応を促進していく方がよいのかといったような検討が更に必要なのではないかと考えられるところでございます。
 11ページ、「内部通報制度の導入、通報窓口設置の義務化」ということにつきましては、制度の導入が進んでいない中小企業や規模の小さい行政機関について、何らかの対応が必要なのではないかという点は、この専門調査会において御異論がなかったのではないかと受けとめております。この点につきましては、消費者庁としても中小企業等において制度の導入がなぜ進んでいないのか、進めるためにはどうすればよいのかといったようなことが十分把握できていないのではないかと考えております。
 したがいまして、これらの実態把握を行った上で、事業者が具体的にどのような制度を導入することが望ましいのか、そして、それを進めていくためには法律に明記することが適切なのか、ガイドラインの策定、改定などによることが適切なのか、事例集などの情報提供がまず適切なのかといったようなことを検討した上で、必要な対応を行っていきたいと考えているところでございます。
 12ページ、「7 効果」ということでございますけれども、公益通報を行ったことに伴う効果について、解雇の無効や不利益取扱いの禁止等だけではなく、解雇や不利益取扱いを行った事業者に対する罰則や企業名の公表なども必要ではないかという御意見があったところでございます。
 罰則につきましては、右側に書いてございますが、法制定時には罰則を設けるかどうかは、その規定によって行おうとする強制の程度等を勘案して決すべき、罰則の必要性については、個別法令の実効性確保の観点から個別法令ごとに検討が行われるべきことから、罰則が設けられなかったところでございます。したがいまして、罰則を設けることにつきましては、法制定時の考え方を変える必要性があるのかどうかという検討が必要であり、また、刑罰の対象とし得るほど構成要件が明確となっているのかという検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 企業名の公表につきましては、仮に通報を受けた行政機関、すなわち、通報対象事実について処分等の権限のある行政機関が公表を行うこととするのであれば、こういった行政機関が、通報した労働者が解雇されたり、不利益な取扱いを受けたりしているのかどうか、そして、それが公益通報したことを理由とするものであるのかどうかということを調査し、判断することが適切なのかという検討も必要なのではないかと考えられるところでございます。
 13ページ、「通報者に対する救済制度」を設けるべきという御意見がございました。これにつきましては、その内容等について更に検討が必要ではないかと思われるところでございます。
 また、「刑事免責・民事免責」についても、前回、検討すべきという御意見がございました。これにつきましては、現在の日本の法律におきましては、参考となりそうな例が余り見受けられない中で、公益通報者保護法についてこういった規定を設けることが適切なのかどうか、慎重に検討が必要なのではないかと考えらえるところでございます。
 14ページ、「8 運用」についてでございます。まず、制度の周知につきまして、制度の周知が十分なされていないことにつきましては、委員の間でほぼ御異論がなかったのではないかと思っております。この点につきましては、消費者庁といたしましても、制度の周知普及の一層の促進が必要であると考えておりまして、積極的に取り組んでいきたいと考えておりますけれども、その効果的な方法などについて、本専門調査会において御提案をいただければと考えております。
 また、通報に対するマイナスイメージの払拭や制度での対応が困難な事象ということで、職場での仲間外れやいじめ、通報への心理的な抵抗などの問題につきましては、制度の見直しなどの即効性のある対応は困難であり、時間をかけて制度についての皆様の御理解を進めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
 15ページ、「9 その他」といたしまして、法律が分かりにくいという御指摘を再々いただいております。これにつきましては、法律の条文は条文といたしまして、例えば、広報資料の工夫などによりまして、分りやすい周知・普及に努めていきたいと考えております。
 不利益取扱いについて、結果として損害賠償の形でしか救済されないといった手続の問題、国際化の問題などにつきましては、公益通報者保護法の見直しのみによる対応は困難なのではないかと考えているところでございます。
 また、最後のところでございますが、例えば消費者庁に通報するようにするといった、消費者庁の位置付けという点につきましても御意見をいただきましたけれども、これは、法制定時に行政機関としての通報先を処分等の権限のある行政機関とすることによって、通報内容について権限に基づいて調査を行い、必要に応じて是正措置を行うことが必要であると考えられたからでございまして、いったん消費者庁で受け付けて権限のある行政機関に対応を依頼するといったような仕組みが通報者の保護につながるのかという観点からの検討が必要ではないかと考えられるところでございます。
 最後に、16ページに、これまでに御説明した内容を整理しております。
 まず、現状といたしまして、制度の周知普及や運用の充実などが必要だということにつきましては、委員の皆様の中では特に御異論がなかったのではないかと思っております。
 一方で、法改正により対応が必要となるような具体的な事例や理由については、これまでのところは余り浮き彫りになっていないのではないかと思われるところでございます。
 こういった中で、本専門調査会におきましては、法改正を要する事項について、さまざまな御意見が出されている状況であると理解をしております。
 したがいまして、消費者庁といたしましては、まずは御異論のない事項についての対応から着手いたしまして、御意見が分かれている事項、法律改正を必要とする事項につきましては、引き続き、本専門調査会で御議論いただいた上で、その結果も踏まえて、また、並行いたしまして消費者庁においても更に実態把握などを行いながら、少し時間をかけて取り組んでいく必要があるのではないかと考えているところでございます。
 当面の対応といたしまして、従来から行っております制度の周知普及の促進につきまして、本専門調査会でいただいている御意見などにも留意しながら取り組んでいきたいと思っております。
 また、前回の専門調査会で委員から、消費者庁として中小企業における制度の普及促進のためにどのような周知を行っていくのか、中小企業向けのガイドラインの新設などを含めて、どのように対応していくのかという御質問をいただいたところでございます。これに対する御回答も含めてということになりますけれども、中小企業や規模の小さい行政機関での制度導入を促進するために、ガイドラインの見直しですとか、事例集の提供などの対応が考えられますけれども、具体的にどういった対応が適切かを検討した上で、それに取り組んでいきたいと考えております。
 また、その前提といたしまして、ただいま渡邊委員、あるいは中村委員長代理からも御指摘がございましたけれども、周知普及が進まない理由や、本専門調査会において指摘されている法改正を必要とする事項について、具体的な事例があるかどうかなどについて、消費者庁も実態把握が必要であると考えております。これらの当面の取組みを踏まえまして、中期的に法改正も含め、どのような対応が必要であるかを検討していきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、この専門調査会におきまして、あと3回御議論いただくことになっておりますので、その中でいただく御意見も踏まえて対応していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

○島田座長 ありがとうございました。
 今日を含めてあと3回ということで、その中で本委員会に対する報告をまとめていかなければいけないということもございますので、一応各委員の方の御意見を踏まえて、消費者庁として今どう考えているかということを御提示いただいて、参考にしてというようにしたいと思います。
 議論ですが、先ほども御報告の中にもございましたように、通報対象者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の要件、外部通報先の範囲、この4点は、法制定時における国会の附帯決議におきまして、見直しに当たって検討を行うべき事項とされた部分ということでございます。
 したがって、この4点、それから、更に、先ほども議論が出ていました制度周知、あるいはガイドラインの見直しというのは、運用面に関わる検討であり、ここらあたりを検討して、本委員会の方に御報告をするのが、この専門調査会の任務だと私は考えております。
 そういうことを踏まえて、4ページの通報者の範囲から順に、それぞれの項目について、今日は御意見をいただきたいと考えておりますが、よろしゅうございますか。

○山本委員 山本です。
 今言っても仕方がないことかもしれないのですけれども、この専門調査会はあくまでも消費者委員会のもとで設置されている専門調査会で、消費者委員会は、消費者庁とは独立して、こういう問題を取り上げて検討するという中で、消費者庁の今の考え方がこの議論をリードするような形で検討されていくと、消費者委員会の存在意義自体からもちょっとおかしな感じがするので、今回の消費者庁の意見というのはどういう形で考えるべきであるかという点は、まず一つ確認しておかなければならないし、あくまでも論点整理、一つの意見という形で進めていくということでよろしいのでしょうか。

○島田座長 それで結構です。
 よろしゅうございますか。
 それでは、早速4ページ、5ページ、今日消費者庁から出された資料、あるいは資料1の方で対応する部分、これらを参考にして、それぞれ御意見はちょうだいしているかと思いますが、それに加えて御意見があれば出していただきたいと思います。今、山本委員から御確認いただきましたように、必ずしも消費者庁の考え方ということに対して、それをどう考えるかとかということではなくて、所轄官庁である消費者庁がこう考えられているというのを一つの素材にはしていただくという範囲で御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

○山本委員 幾つか申し上げたいことはあるのですが、まず、今回の意見でも指摘され、前回も出された具体的な事実がないという点の確認なのですが、具体的事実というのをどういうふうに考えているかということですね。例えば、先ほどの渡邊委員のお考えですと、この法律によって労働者が保護されなかった例はないのではないかということですけれども、それ以外にも、この法律が不備であるから、この法律が使えなかったという例もこれは検討しなければならないだろうし、あくまでもこの法律の目的が、労働者保護か、国民の利益の保護のために、公益通報した労働者を保護するという手段を使っているのかというところが大きく違いがあると思いますので、その具体的な事実というのをどういうふうに考えるのかということは、はっきりさせなければならないだろうし、手前みそになるかもしれませんけれども、私は実際に相談窓口を担当している者として、この法律が公益通報を進める方向では使えなかったという例は幾つも紹介していますし、その中で通報対象事実が狭いから通報できなかったとか、通報者の範囲が限られているから、この法律では適用できなかったとか、そういった各事例というのは報告差し上げているのですが、こういったものは事実に含まれないということなのですかね。

○島田座長 どなたに対する御質問ということですか。

○山本委員 まず、消費者庁への質問と、私としてそういう事実はあるのだという意見です。

○島田座長 分かりました。お答えできる範囲でお願いいたします。

○成田企画課長 確かに弁護士会でのいろいろな相談事例を御紹介いただいていて、一つの事実というか、データなのだと思っております。例えば、今御指摘のあったように、通報対象事実から外れたから通報できなかったということが、労働者の方で不利益な取扱いを受けるおそれがあるから通報できなかったのか、仮に御相談者が退職者の方など労働者の方でなければ不利益な取扱いを受けないので通報対象事実から外れても通報していただくことは可能だと思いますので、その辺りについて、もう少し、具体的に、どなたがどういうことができなかったので、どういう問題が生じたのかというところについて整理が必要なのかなという印象を持っております。

○渡邊委員 私、再度確認なのですけれども、この法律というのは公益通報者の保護ですね。保護の対象になるのは、私はやはり労働者だけだと。例えば、退職者にしても一般国民にしても、不正があったら通報してもいいと思うのですけれども、そのときには、別に失うものは何もないと思うのですね。退職者は、元の会社に対して、これはおかしいと言っても、年金が減らされるわけでも何でもないと思います。あるいは、取締役の場合ですと、私も取締役ですけれども、上場会社の場合ですと誓約書を書かされていまして、法令違反は絶対していませんというような形で上場会社というのをやっていますので、未上場の場合はちょっと分からないですけれども、上場会社の場合は、この法律以外でもコンプライアンスという面ではかなりの縛りが効いていると思っていますし、匿名の場合でも、罰則というのは、名前が分からない人に対して不利益取扱いはできないと思いますので、そういう面で、私は労働者に限る。不利益を被る人というのは、今のところ、私が考える限りは、こういうものは労働者だけではないかと思います。
 以上です。

○島田座長 今の御意見との関係ですと、今日の整理の中にもありますが、1つは、下請け等の取引事業者ですね。ここが、例えばそのことを理由にして契約を解除される不利益というのがあり得ること、あるいは損害賠償の可能性は一応御指摘されていて、そこは検討する余地があると思います。通報者の範囲を拡げるべきかどうかということはまた別ですが、検討の素材にはなっているのだろうと考えております。
 それから、退職者の場合は、たしか具体的には退職金の支払とかでしたか、そういう問題が言われたように思いますが、そこが入るかどうかということにはなるかと思います。
 ただ、退職者の場合、もしかすると労働者という枠組みの中で近似的な部分で、まだ雇用関係の清算が済んでいないという範囲については扱われる可能性はあるのかなとは思っています。
 私は今までの議論を聞いて、そのように考えていましたが、そのほか、何か、今の点でいかがですか。一応よろしゅうございますか。
 どうぞ。

○山本委員 こちらで私の方が退職者からの通報というものが多いと申し上げたのは、この法律の目的の問題ですけれども、社会の透明性を確保するとか、公正な競争を確保する、ひいては国民の利益を図るという目的のためには、そういった退職者からの相談が多いという実態を含めて、こういった方々を通報者に含めて、また、その保護の方法も考えてくださいという意見なのですね。あくまでも今の枠組みについて。だから、そういう意味ではちょっと意見がかみ合わないといいますか、正確に言えばそういう趣旨であるということを付加しておきます。

○島田座長 多分、具体的にどういう退職者が不利益を受ける。そこから、言わば保護しなければいけないというところを山本委員の方からおっしゃっていただけると、イメージがわくのかなと思うのですが。

○山本委員 こちらの相談窓口での報告で申し上げたことは、退職者は、通報した場合に、企業から嫌がらせとか損害賠償されるということは非常に心配されているということです。

○島田座長 分かりました。そうすると、要するに退職された方に対する損害賠償の可能性、嫌がらせというのは、ある種の事実行為みたいな、そういうことということですね。分かりました。

○中村委員長代理 私ども、相談を受けることがあるのですが、もう一つ、在職しながら通報することの不利益を考えたときに、退職せざるを得ない。そして、退職をして通報するというケースがあるのですね。そこら辺は、退職者だから保護しなくていい、じゃなくて、退職せざるを得なくなるような状況に追い込まれていったという、退職しないでずっといけば、退職金も出るだろうし、今後の雇用も確保できるのだけれども、自分の正義心からして、訴えなければいけない。だけど、在職中にはできないから、あえて退職して、それで通報するというケースも実際あるのですね。そういう人たちのことを考えると、もうちょっと広くてもいいのかなという気はします。

○島田座長 ただそういう御意見だと、要するに、その退職された方がもう辞めてしまっているわけですよね。そうすると、何から保護するのかというところがちょっと分かりづらいというのと、それで、通報するということ自体、ある行政機関なら行政機関に通報する。そうなれば縛りもないですから、マスコミに対して通報する。これもできるかと思うのですね。ただ、そこで、法律として、言わば通報者保護ということで何が欠けているのかというのがよく分からないということが一方にあるのではないかと思うのですね。
 ただ、山本委員のご指摘は分かります。損害賠償請求の危険性があるとか、あるいは、嫌がらせとなると、どうやったらいいかというと、ちょっと難しいかもしれませんが、しかし、そういう不利益の可能性を持っているということとのつながりで、前回ですと、民事免責を含めて検討できないかという御意見だったように思っています。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしければ、通報対象事実の範囲という、これも今日の御報告とプラスこれまでの御意見をまとめた資料1も含めて御意見をちょうだいできればと思います。

○山本委員 通報者の範囲のところで1点だけ意見を申し述べさせてもらいます。
 取締役とか匿名通報について、建前上、確かに取締役というのは自分から自制すべき立場にあるし、匿名通報というのは、匿名であったら不利益を受けようがないという考え方は成り立つと思いますが、現実に私どもが相談を受ける事例では、取締役であっても、100%株主の代表者が暴走して止められない、そういった事例で相談に来られるわけで、取締役だから止めることができるというのは、しっかりした会社と言うとおかしいかもしれませんけれども、そういった会社だけではないということですし、匿名の通報をした場合でも、企業によっては、だれが通報したかを調査して特定して不利益を及ぼすということは十分あり得るわけです。私どもが聞いた中でも、社員寮からどうやら行政機関に電話がかかったらしいということを会社がつかんで、社員寮の通話記録をチェックして、どの部屋からかけたかを特定して不利益を及ぼされたという例も聞いています。そういう意味で、匿名通報だから不利益は及ばないという考え方も、多分現実問題としては正しくないということだと思います。

○島田座長 その場合、不利益が及んだ時点で争うわけですよね。

○山本委員 そうですけれども、ただ、それは通報自体が匿名だから公益通報に当たらない、だから、この公益通報者保護法では保護されないということになってはおかしいということです。

○島田座長 そういうふうには多分ならないと思いますけれども。争う時点ではですね。

○山本委員 実際、匿名であっても不利益は受ける。

○島田座長 受けて、なぜ受けたのかというのが、こういう通報をしたからだということになれば、それはこの法律の適用対象になると思います。
 取締役については、いろいろ御意見はあろうかと思いますが、取締役でも不利益を受ける蓋然性があるという場合もあるのだという御意見として承りたいと思っております。
 それでは、失礼しました。通報対象事実の範囲ということについてはいかがでございましょうか。
 特段付け加えて議論の必要がないということであれば、更に進めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。どうぞ。

○山本委員 何度も済みません。山本です。
 通報対象事実を拡大した場合に、例えば、行政機関がとるべき措置がなかなか明確でないとか、実効性がないとかいう議論もあり得るかとは思いますが、少なくとも前回も申し上げましたけれども、この法律の公益通報という対象となる事実は広げて、その中で行政機関が対応できるものについては対応するという構成も十分あり得るわけで、そういう意味で、入口自体を厳格に定めてしまうと、なかなかこの法律は使えないし、そういう問題があるから、この法律が周知徹底されないし、根づかないのだというところを根本から考えてもらいたいと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 ほかによろしゅうございますか。

○三木由希子委員 確かに対象事実を広げることによって、事業者・行政機関がとるべき措置の実効性を維持できるかということは、そこは確かに議論の余地はあるのだろうとは思うのですけれども、結局、まだ法整備が不十分であるとか、それから、まだ社会的にきちっとどういうふうにその問題を扱うかということがきちっと整理されていないとか、そういうものも含めて、社会の中のいろいろな問題を多面的にすくい上げていくという考え方はあってもいいのかなと思っています。なので、単に現行のような形で特定の法律に違反する行為、犯罪行為というようなことだけではなくて、そもそも社会にとって、国民にとって何が不利益なのかということについても一定程度この法律で救えるような形が必要なのではないかと思います。

○島田座長 ほかにいかがでございましょうか。

○大杉委員 これは事務局への質問なのですけれども、法2条3項の通報対象事実として定められた、つまり、一言で言うと、6ページの対象法律制度なのですけれども、別表の法律というのは事業者とか行政庁が通報を受けたときに対処するという観点から具体的な指定がされた、つまり、指定する法律とそうでないものというのは、そういう観点から区別されたと言っていいのでしょうか。

○島田座長 これは事務局というよりは消費者庁の方ですね。

○成田企画課長 対象法律には、行政機関が処分等を行うこととされていない法律も指定されており、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律で、かつ、罰則があるものを指定しております。ですから、行政機関の処分等の対象となる事実であれば、行政機関に言って、是正措置等が講じられる可能性がありますし、直罰規定しかない、例えば刑法のような法律に該当する事実であれば、すぐ警察に行っていただいて、しかるべき対応をしていただくことになります。

○大杉委員 罰則とか処分の対象とされてもいいような、立法論を言い出すと、個人の価値観が表に出てしまうので、しようがない部分はあるのですけれども、なぜかそういうものの対象から落ちているような、しかし、1条で言う国民の生命、身体、財産その他の利益の保護という観点からは看過し得ないような重大な事実が事業者において発生しているとしても、それが指定の網にかからないということになると、この法律ではフォワードルッキングにそういう個々の法令の不備みたいなものを公益通報者の保護という形で取り込むというのは、限界とか危うさもあると思うのですけれども、今の制度というのは完全な後追いになっているという印象は受けます。これは、いいとか悪いとか、また、消費者庁、消費者委員会に何ができる、できないということを捨象した単なる印象論ですけれども、ちょっと対象法律制度というのはそういう性格を持っているという印象はあります。ただ、ちょっと、だからこうするという具体的な意見は、今日はこの点に関しては言わないことにしておきます。

○島田座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

○中村委員長代理 今の大杉委員の発言ともちょっと似ているのですが、法律を立法化されるときに、実は政府案のほかに民主党が対案を出していまして、それはまさに指定法律制じゃなくて、一般条項化して、これに違反するものは全部保護しましょうという対案を出していたのですよね。それは、実は一つの考え方で、法の目的ですね。第1条の目的を本当に徹底して実現しようとすると、今、大杉委員が言われたように、法律を定めてしまうと、後追いになるのは仕方がない。だけど、後追いじゃなくて、これでは保護が不十分だとなれば、一般条項化して、民主党はどういうふうに変えていたかというと、「法令に違反し、又は違反するおそれがある事実、人の生命又は健康に重大な影響を与えるおそれがある事実、会計経理に関して明らかに不当であると認められる事項がある事実」、この3本を一般条項として掲げて、保護の範囲を非常に広げた立法提案をしていたわけで、結局、法律の指定制度みたいになったわけですが、最近、特定商取引法や割販法等も昔の指定商品制をどんどん廃止して、ざっくり網にかける方法に転じていますので、これからの立法の在り方として、一般条項化して、できるだけ保護を広く図るという発想もそろそろ持っていいのではないかと思いますので、そっちのことも意見として残すと同時に、是非検討していただきたいと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。
 大体よろしゅうございますか。
 それでは、今の問題と密接に関連すると思いますが、外部通報の要件というところですね。そこはいかがでございますか。

○山本委員 山本です。
 外部通報の要件で、一般的保護要件について予測可能性を害し、通報者の保護にはつながらないという意見があるのですが、確かに一般的保護要件だけであれば、その理屈というのは通じると思うのですが、少なくとも今、イからホまでの個別の具体事由が挙がっていて、これに加えてその他という形で一般保護要件を付け加えることは、これは通報者の保護につながらない方向で保護の範囲を不明確にするという理屈は当てはまらないのですね。イからホが保護されて、更に一般要件でも保護される。この一般要件の保護というのは、現状でも法律の保護の対象になっていないわけですから、裁判等で争われてしまうところなのですね。それを法律に入れたところで、予見可能性を害するという理屈は、僕は通らないと思うし、この保護要件を入れるということは、絶対、反対解釈されないという面でも必要なことだと感じています。

○島田座長 ありがとうございます。
 これは法制定時にこういう議論がされたということの御紹介でよろしいですか。

○山本委員 (うなずく)

○島田座長 分かりました。それに対しては、必ずしも一般的保護要件を設けたとしても、予測可能性を害することにはならないのではないかという御意見をちょうだいしたということだろうと思います。
 ほかにございますか。

○中村委員長代理 ここは0か100かじゃなくて、イギリスの立法がすごく参考になるのではないかと思うのですけれども、イギリスの場合は、「以下のいずれかの条件を見たし、かつ、通報先がいかなるものであるかも含めて、すべての事情を考慮して通報を行うことが合理的であること」というので「イ・・ロ・・ハ・・ニ・・」と、こういう定め方をしていまして、先回、消費者庁の方で海外調査された中にも紹介されていたと思うので、必ずしもどっちかというのではなくて、かなり折衷的な立法の仕方だと思うのですね、イギリスの法律というのは。そういうことも工夫してみていいのではないかという気がします。

○島田座長 ほかに何か付加するようなところはございますか。
 では、一応先に進めさせていただきまして、また何かございましたら、御意見をちょうだいするということにしたいと思います。
 次は、外部通報先の範囲ということでございます。これについてはいかがでございましょうか。

○三木由希子委員 第三者機関の設置について、まとめていただいたものを見ても、具体的に何を第三者機関と言って議論しているのかというのが、いま一つよく分かりません。かなりばらばらなものがばらばらと入っている感じがしまして、そもそも第三者機関というのはどういう意味で必要なのかというところが、私の中ではどういうふうに議論していいかよく分からないというところであります。結局、行政機関として何か設けるのか、それとも、内部で設置ができない、内部通報の設置ができない、内部通報窓口の設置ができない場合に、それを代替するものとして第三者的な機関を外に置くのかによって、恐らく議論すべき内容が大分違うのかなと思っています。第三者機関をかませたからといって、何が得られそうなのかというところが、つまり、この法律がより機能的になったり、通報者保護に非常に資するようになったりするのであれば、議論する必要性があると思うのですけれども、この段階で私自身は第三者機関についてどういうふうにこの場で取り扱うべきなのか、そういうところまで論点が詰まっていないような気がいたしまして、議論がしにくいというのが、感想になってしまいますが、そういうところです。

○島田座長 確かに第三者機関というのはいろいろな考え方があって、外部通報先の範囲というところでまとめるのがいいかというのは、御指摘のとおりかなと思います。というのは、1つは、中小企業になってくると、実際には内部機関を設けづらいという御議論があって、そのときに何らかの、例えば共同設置のようなことは考えられないかという意味での議論というのも勿論ありますし、それから、自治体も同じような問題で、共同設置というような御意見もちょうだいしたところで、そういうのはどちらかというと行政機関としての通報先という格好であるのと、内部通報という場合もあり得るということでしょうし、それから、更にまた、今はありませんけれども、例えばということで御意見として出ていたのは、認証を受けたような団体に対する通報というようなこともあっていいのではないかという御意見もございましたので、そういう意味では、ここで議論するのだけでいいかというのは、確かに整理の仕方としては考えた方がいいかなと私も思います。
 ただ、それを踏まえた上で、幾つかのタイプの今ある、内部通報を外に出すというのは、これまでも法律上もできるわけですね。通報先として定めたということにすればできますから、そこは多分、あとは例えば中小企業とか、あるいは小さい自治体に対する普及ということで考えていけばいいのかなと思いますが、むしろ、そうではないところで何か第三者機関というものを、例えば法が認証していくとか、そういうことというのはあり得るのか。前も大阪の公益通報支援センターですか、そういうところに通報の受け皿としての例えば位置付けを与えていくとか、そういうことは議論できるのではないかなと私は思っているのですが、もしそういう点を踏まえた上で何か御意見があればと思います。
 委員の意見も、議論してはだめだということではないですよね。

○三木由希子委員 はい。

○島田座長 分かりました。

○三木由希子委員 例えば、いわゆる外部通報先という意味では、第三者機関ということになると、通報することの受皿をつくることが大事というよりも、それ以上に通報を受けた先がそれなりの対応ができるということがセットでないと、せっかく通報されたとしてもそれが活かされないと。あるいは、通報した人にすごく高いリスクを負わせる結果になる可能性もあるということを考えると、第三者機関の設置を検討するのであれば、それは、そこの権限というか、そういうものを併せて考えないと、単なる言う先が増えただけで、そこから先の本来の公益通報の大切なことである、適切な対応がなされていくというところにつながらないと思いますので、仮に第三者機関という話になるのであれば、それは一定の何らかのそこの調査ができ得るようなものが必要なのだろうと思います。
 例えば、これは報道機関に通報するというような場合であれば、報道機関は取材活動としてそれを取材して、通報者に不利益がない形、なるべく不利益がないように取材をされるという意味で、ある意味社会的な通報の受皿として多くの人がその役割を共有していると思うので、あとはジャーナリズムもそうですけれども、ただ、それ以外の第三者機関となった場合には、なかなかそこの正当性を得ていくのも、それから、それを調査していく手段というのもかなり限られてくるだろうと思いますので、そういう意味では、第三者機関を議論するのであれば、そこがどういう機関として社会の中で、この制度の中で機能するのかということも併せて議論が必要なのではないかと思っています。

○島田座長 そういう一つの構想としては確かにそこに調査権限というのがあるというのは結構ですが、いろいろハードルが高いかなという感じがしています。私がちょっとイメージしたのは、通報と相談について認証された団体なりが行えるようにして例えば、そこがワンストップサービス的に、これは公益通報だからとして扱っていくとか、そういうのをやれるようなフットワークのいい相談機関みたいなものがあってもいいのかなという印象で伺っていたのですが、それはいろいろな考え方があり得ると思います。

○松村委員 イメージが人によって違うもしかすると違うかもしれないのですけれども、私が東京の弁護士会で相談を受けている、経験した限られた事例ではあるのですが、そこでの相談を受けた相談者の方たちは、自分の名前が企業にすぐ知れてしまうのは困るということで、非常に匿名性ということを心配していまして、ただ、匿名の通報を無制限に受けるということであれば、無責任な通報が来るかもということで企業に負担がかかってしまうかもしれないという、その両方の兼ね合いのバランスをとる方法としまして、第三者機関という、名前はよく分かりませんけれども、そういったものを設けて、そういう通報の内容を確かめる専門性ですとか、技能を持った方が、相談というか通報を受けて、そこを通じて企業に対して調査を依頼するとか、こういうことを情報として出してくださいとか、そういったイメージのものというのができれば、通報を活発にするという意味で便利というか、活用できるのではないかと考えました。

○島田座長 ありがとうございます。
 この辺はほかに。どうぞ。

○大杉委員 半分意見で、半分質問なのですけれども、行政庁、地方公共団体のようなイメージであって、そこがNPOなんかと共同して、通報窓口のファンクションの一部をNPOが担うのだけれども、そこに通報するというのは、法で言うと、外部に対する通報ではなくて、行政機関に対する通報として扱ってもらえるような仕組みというのを現行法でつくることができるかどうかということで、もしできるとすると、単に行政とNPOの間で契約を結べばいいのか、それとも認証等の一定の行政行為というものを介してやるのか、それとも現行法ではそれは無理で、そういう点についての法の手当までしないとできないということなのか、どういう整理がされているのか教えていただければと思っています。
 こういうことを尋ねる理由は明確で、通報者は、自分の氏名は通報先の窓口にはきちんと知らせるのだけれども、それが事業者には伝わらないで処理ができるような状態をつくりたいという問題関心です。
 あと、もし行政機関には一定の調査権限があるので、受けた窓口は、平たく言うとNPOであっても、それを法令上行政機関のものというふうに位置付けることができれば、いろいろな問題はかなり前進、緩和されると思った、これが問題関心です。

○島田座長 ありがとうございます。
 その点は消費者庁の方は、今お答えは可能ですか。

○成田企画課長 内部通報する先として、労務提供先以外に外部の窓口、例えば外部の弁護士をあらかじめ指定しておけば、そこに通報した場合でも、これは内部通報として取り扱われることが現行法でも可能です。例えば消費者庁でも、消費者庁の職員が総務課に通報するだけではなく、外部の弁護士に通報すると、誰が通報したか名前は言わないけれども、消費者庁の方に言って調査をさせるとか、そういうことは、現行法でもできる対応だと思いますが、権限のある行政機関への通報について、権限のないNPOに通報しても同じ取扱いにするということは、今の法律のままだと難しいのかなと。
 なお、公務員は当然守秘義務がありますので、行政機関が通報を受けたからといって、その方の個人情報を事業者にまた戻していいのか、これは別の問題で、一定程度の制約はあるのかなと思います。

○大杉委員 もう一つだけしゃべると、建前は行政庁の通報で、事業者は内部での通報よりは勿論保護されるための要件は若干プラスアルファが及ぶのですけれども、そこそこ低い要件で通報しても保護してもらえるというふうになっているのは、結構いい制度だと思うのですけれども、一言で言うと、行政庁というのはしばしば信用されていなくて、所管の官庁に通報したのに1年間放っておかれたということがしばしば毎日新聞の一面トップに出たりとか、なぜか毎日だったりするのですけれども、そういうことがあって、行政庁の側からすると、そんなことはなくて一生懸命やっているし、報道されるのはレアケースであることも多いのでしょうけれども、通報したいと考えている人の安心感とか、そういうものを得るためには、さっき言った行政庁とNPOがコラボレートできるような仕組みというのは、何か法律でそういうのをがちがちに定めたり、義務付けたりということではなくて、可能な範囲でそういうものを広げていくというのは、かなり可能性のある選択肢で、それは、さっきの企業内部であれば、窓口は外にあるのだけれども、企業と外部の法律事務所が契約で委託関係を結んでいて、勿論守秘義務とかそのあたりを契約でつくり込んでという、同じことが行政庁とNPO等の間でできないと考える理由もないのかなと思い、要するに、単なる投げではなくて、行政庁としての責任を果たしたというためには、契約とかそういうのはつくり込まなければいけないというのは当然なのですけれども、現行法でできるのか、できないのかとか、そういうのをもうちょっと。また、できないのであれば、何かあり得るのかなと思いましたので、今日の段階で私も経験ないのですけれども、調べていただければと思いました。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございます。
 では、次回までにもうちょっと詳しく。
 どうぞ。

○成田企画課長 今まさに御指摘があった、立法論としてどうするのかというのはあると思うのですが、現行法では「処分等の権限のある行政機関」と法律で明記しておりますので、NPOとかに通報したときに、処分等の権限のある行政機関と同じ効果を生じさせるというのは、現行の公益通報者保護法では難しいと思います。そこはもしも何らかの対応が必要なのであれば、法律改正をしてということになろうかと思います。

○島田座長 大体よろしゅうございますか。外部通報先につきましては。

○三木由希子委員 通報と相談というところも一緒に今議論していたという理解でよろしいのでしょうか。

○島田座長 それはまたと思ったのですが、この後にとは思っていたのですが、お話しいただいても、関連すると思いますので、結構だと思いますが。

○三木由希子委員 前回もいろいろと意見を申し上げさせていただいたのですけれども、私たちのところも数としては少ないですけれども、公益通報者保護法が制定された当初とか、施行された当初とか、メールとかで相談があったことが何度かありまして、通報者は通報者で、自分たちが行動することによって何が起こるのかという予見性を求めるのですよね。それは当然で、こういう通報をした場合にどういうことが起こり得るかということは、法律はどこまで守ってくれるのかということとか、それから、この法律に適用されるような問題なのかどうかとか、そういうことを非常に知りたい。行動する前に知りたい。リスクをとる前にリスクを知りたいということがありますので、やはり外部通報とは明確に分ける形で相談窓口というのを位置付けていただくと、非常によいのではないかと。
 結果的に、今は行政や事業者にとっては予見可能性が高いような仕組みになっているのですけれども、通報者の立場からすると、なかなか予見性が余り高くないと。特に抽象的な不利益に関しては、職場に居にくくなるとか、そういうことについては、それは当然予見できるものではなくて、結果論としてそうなってしまったという場合には、言いようがないような問題も含めて、一応何が起こり得るのかということを知りたいということは、これは当然だと思うのですね。なので、ここは外部通報というものとははっきり分ける形で、ちゃんとした相談ができると。それは労働者の権利であるというような位置付けはあってもよいのではないかと思っています。

○島田座長 ありがとうございます。
 今のも多分第三者機関とかそういうのと関連する議論としてお聞きいたしました。
 外部通報先の範囲ということで、今の通報・相談というのも入っておりますので、何かほかにはございますか。
 よろしければ、この後としましては、民間事業者、行政機関のとるべき措置ということ、これについてまた御議論をいただき、更に、そのほか運用面とかもございますので、その他の問題について、適宜御発言をちょうだいできればと思います。いかがでございましょうか。
 一つひとつ区切るということにはしないで、あとについては、どうぞお気付きの点を御発言いただければと思います。
 お願いします。

○渡邊委員 中小企業の問題なのですけれども、まず、中小企業の従業員が外部通報した場合、かなり深刻だと思うのですけれども、そういう企業というのはほとんどつぶれてしまうと思うのですね。中小企業の場合。そうすると、保護というよりも、その人の保護するそのもの自体がなくなってしまうというのが一番の問題だと思うのですね。
 ですから、ここから消費者庁の方にお願いなのですけれども、法令違反をやらないという、そっちの方の法律よりも以前の問題で、絶対やらせないのだと。やったらつぶれちゃいますよというような周知徹底というのは本当に必要だと思うのですね。ですから、さっきも言ったように、従業員が外部通報したというのは、ほとんど最後で、この会社はないというふうに。例えば、北海道の食肉業者とか、あるいは船場吉兆だとか、みんなつぶれていって、かわいそうなのは、残された従業員だと思いますので、そういうところの、まず、最初にそういう周知徹底がまず必要じゃないかと私は思います。

○島田座長 ほかにいかがでしょうか。
 特にございませんか。よろしゅうございますか。どうぞ。

○大杉委員 別途、14ページとか15ページとかで出てくる制度の周知徹底を図るということの意味が私はよく分からなくて、まず、公益通報者保護法というのは制度なのかというのが私はよく分からなくて、仮に法文の内容の周知徹底を図るとすると、つまり、法の例えば3条の解雇無効とかで、実際に判例法で認められている解雇が無効になる範囲よりは、判例法で認められる範囲というのは、やってみないと分からないので、それを法文に書き切るのは不可能なのですけれども、やや狭めに、セーフハーバー的に書かれているものを一生懸命周知徹底すればするほど、外部通報しにくくなるということも皮肉としては考えられなくもなくて、あと、よく制度という言葉で念頭に置かれているのは、大企業であれば、社内に通報の窓口をつくり、かつ、かなり大規模なところだと、法律事務所と契約を結びということをやっていますし、地方公共団体、官庁であれば、小規模なところ以外は、通報を受け付けるという制度について、ガイドラインを守って、いわゆる制度に呼ぶにイメージしやすいものがつくられて運用されて、それはこの法律を制定したことの物すごく大きな成果であったと思うのですけれども、中小企業も同じことをやれと言っても、それは無理ですし、じゃ、周知徹底というのは何を周知するのか。特に制度の周知徹底というときの制度というのは、私はないのではないかと本気で思っていて、法改正もさることながら、消費者庁、消費者委員会で、今後この法律についてやっていくべきことも、つまり、この法律というのは訓示的精神規定的なものなのか、もうちょっとインクルーシブな労働法とか行政法にしゃしゃり出るようなことも含み得るものなのか。国の行政とか立法の在り方として、この法律でどこまで書くのかという話とも関わるのですけれども、法律でやるべき話と、周知徹底でやるべき話というのは勿論ずれていて、恐らく法は大きな改正はせずに、周知徹底しましょうみたいな流れは理解できるのですけれども、周知徹底の意味は、教えていただければ、あるいは議論させていただければと思っています。

○島田座長 いかがですか。

○成田企画課長 資料での言葉遣いが明確ではなかったかもしれませんが、周知が必要だというのは、労働者に対するアンケート調査や事業者の方に対するアンケート調査をして、そもそも法律を知らないという方がいらっしゃるというところからも認識しているわけです。特に事業者の方には、内部通報制度という言い方をしていますが、例えば企業の中に窓口をつくって、そこに通報しやすいような仕組みをつくった方が、いきなり外部の行政機関とかマスコミに通報されるリスクが少し減って、内部通報がなされ、自助努力で解決できるという可能性が高いので、非常に有益なのではないか、そういう制度を設けていただいたらどうかと周知することも含めて、制度の周知という表現を使っております。一般法理等で保護される可能性があるということも含めて、広く公益通報関連のこと全体を分かっていただくことが必要なのではないかとは思っております。

○島田座長 どうもありがとうございます。
 ほかによろしゅうございますか。

○中村委員長代理 周知の話が出たので、関連してなのですが、この法律はもともと平成16年の通常国会で成立して、周知徹底の必要があるということで、わざわざ2年おいて平成18年の4月から施行したのです。この間に政府は周知を図るという期間として2年わざわざつくったのですね。ところが、それから更に、今はもう6年たっていますけれども、みんな忘れちゃうのです。要は。法律ができたときは、マスコミもバンバン取り上げてくれるけれども、5年、6年とたっていくと、忘れてしまう。周知徹底というのは1回だけやればいいというものじゃないのですね。そこがやはり問題で、継続して皆さんにこういうことを繰返し言っていかないと、皆さん忘れてしまう。最近の大企業の内部告発に対する不利益処分の事案を見ると、大企業なのに忘れちゃったのかしら、この法の精神、と思うような事案が散見されるわけですね。ですから、周知徹底というのは簡単に言うけれども、法律が制定されたときに政府がやった周知徹底ではだめだということなので、やり方もきちっと考えなければいけない。
 例えば、先ほどの消費者庁の説明の中で、「相談ダイヤル」という言葉が出たのですけれども、あれも相談事例集というのは平成19年までの分はまとめて発表しておられる。だけど、その後3年たって、またいっぱい蓄積があるはずなのですが、そこの事例集が全く公表もされていないので、政府の取組みはどんなに重要かということで、周知徹底の仕方というか、そこら辺、十分工夫しないと、口で言うだけではだめだと思いますので、その辺も配慮していただきたいと思います。

○島田座長 ありがとうございました。
 では、よろしゅうございますか。活発な御意見をどうもありがとうございました。
 それで、今後のことでございますが、後ほど日程等の御説明も事務局からあろうかと思いますが、一通り相当活発に御意見をちょうだいしたかと思います。次回以降はとりまとめに向けて議論を行っていきたいと思いますが、あと2回という中で、これまでの議論を一つの意見にとりまとめるのは少し難しいかなという印象を持っておりまして、最終的には意見が分かれている部分につきましては、分かれているままに消費者委員会に御報告をするということは、親委員会である消費者委員会には大変申しわけないのですが、そうせざるを得ないかなという認識を持っています。勿論、できる限りあと2回の議論で、方向性で一致できるところについては明確にし、しかし、基本的な部分で逆の御意見もございますので、そういうところについては、あえて統一はしないという方向にしたいなと思うのですが、そんなようなとりまとめの方向でよろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○島田座長 では、そういうふうに一応進めさせていただきたいと思います。

≪3.閉会≫

○島田座長 最後になりますが、事務局より、次回以降の日程等について報告があるということでございますので、お願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。
 今後のスケジュールについて、資料3にお示ししております。
 次回は、第7回、12月16日、木曜日の16時から18時ということで予定をしております。今、座長からも付言いただきましたけれども、本日の議論を踏まえて、とりまとめに向けた議論をお願いしたいと考えております。その後、年明け1月25日、第8回を予定しておりまして、その後、消費者委員会へとりまとめた結果を報告し、消費者委員会でも議論をするということでお願いしたいと思っております。
 事務局からは以上です。お忙しいところ、今日はどうもありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

○島田座長 日程はそういうことで進めさせていただくということになろうかと思います。
 どうぞ。

○山本委員 前からお願いしていて、今日も始まる前には聞いているのですが、厚労省の件について、まだ報告できていないという点なのですが、これが行政庁の対応とかを考える重要な立法事実といいますか、具体的な事実になると思いますので、できれば、とりまとめより前にそういった資料や報告をいただければと思います。

○原事務局長 今の状況については、山本委員にはまだ完全な回答にはならないのでという状況について、お話ししたいと思っておりました。

○島田座長 前回御質問があったのですけれども、まだ完全な回答はちょうだいできていないと、こういう状況だということだそうです。よろしゅうございますか。

○大杉委員 よろしいですか。なるべく手短に話したいと思います。
 つらつら考えていて、今日の最初の山本委員がおっしゃっていた話に戻ってしまうのですけれども、今日のまとめで消費者庁からよく、何か変更する具体的な事実とか理由が必要である。そして、それを見いだせていないということが出てくる点についてなんですけれども、例えば、ある会社に勤めている人が、その会社の違法事実というものを知っていて、多分会社に通報すれば、自分は間違いなく嫌がらせを受けるだろうと。行政庁に通報しても、多分相手にしてもらえないだろうと。ただ、法律に照らすと、さっきの私の前提とやや矛盾するのですけれども、外部に通報したときに、この法律では守ってもらえないけれども、自分はどうしても外部に通報したい、みたいな事実関係があるときの考え方、つまり、立法事実があるとか、ないとかというのは、これはいかようにも議論することができて、つまり、目の前に困っている人がいる。でも、現在の法律だと十分に保護されないというのは、ある意味個人の感覚にすぎないので、それは立法事実というか、個人の主観で議論してしまっていることに一方ではなるのですけれども、他方、現行法でそれは保護されない通報なのだから、そういう事例があったからといって、保護すべき現行法が不十分だということを示したことにならないというと、現行法を改正するかどうかの議論をしているときに、現行法を基準に保護すべきかどうかというのを判断してしまえば、それは論理矛盾で、議論したことにならないので、立法事実があるか、ないかというのは、いずれの方向にも、あるとも、ないとも簡単には言えないことだろうなと思っています。
 私自身、例えば解雇無効とか不利益取扱い無効とか、外部の下請業者の場合に、例えば契約打ち切りの無効とかというふうな議論、いろいろありますけれども、公益通報者保護法でできることというのは限られていて、本気で通報したいのだったら、首になるなとか、それ以外の不利益取扱いを受けることはあきらめてせざるを得ないということは、世の中には多々存在して、それを法律がすべて保護するとか、従業員等の不安を全部払拭することはしょせん無理だと思っているのですけれども、さはさりながら、少なくとも現行法を前提に、立法事実があるとか、ないというのは、そもそも議論の立て方としておかしいので、立法事実があるとか、ないとかというのは、余り、軽々にと言うと、私の発言が一番軽々しいので何とも言えないのですけれども、そういう言葉遣いを使うのは余り好ましくないのかなという印象は持っています。今日の議論とかの雰囲気だと、統一的な議論には次回以降ならなさそうな気はするのですけれども、さはさりながら、なるべく議論の共通の土台はあった方がいいと思うので、立法事実的なところは、みんなが一致する議論にはなりにくいのかなと思った次第です。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございます。
 今の御意見は、とりまとめのときに少し活かす形で進めたいと思います。
 よろしゅうございますか。

○中村委員長代理 コマーシャルさせていただきたいのですが、公益通報の問題を考えるのに格好の材料で、クジラの調査捕鯨の肉を横流ししていたという事件があって、それを内部告発した先の方が流通業者の倉庫から肉を持ってきた。これで今度、証拠としてちゃんと確保したつもりが窃盗になる。今日、刑事免責とか、そっちの議論は余りいかなかったのですが、それから、NGO団体がそこに絡んでいると、第三者機関の問題も含めて、いろいろ考える材料があるシンポジウムが12月7日の午後6時から弁護士会館、霞が関でありますので、入場無料ですので、お時間があったら、是非参加していただきたい。12月7日の火曜日の午後6時から、霞が関の弁護士会館5階でやります。よろしくお願いします。

○島田座長 アナウンスありがとうございました。
 よろしゅうございますか。ほかに。
 それでは、本日はこれにて閉会をさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)