第5回 公益通報者保護専門調査会 議事録

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日時

2010年10月27日(水)16:00~18:05

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、橋本座長代理、大杉委員、田井委員、土田委員、仲田委員、
 松村委員、三木信夫委員、三木由希子委員、山本委員、吉村委員
【担当委員】
 中村消費者委員会委員長代理
【説明者】
 消費者庁 成田企画課長、米田企画課長補佐
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.前回専門調査会報告事項に係る補足的報告について
3.公益通報者保護法の具体的課題について
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:59KB)
【資料1】 東京商工会議所・公益通報者保護制度に関するアンケート調査結果(渡邊委員提出資料) (PDF形式:51KB)
【資料2】 オーストラリア、ニュージーランドにおける刑事上・民事上の免責について(消費者庁提出資料) (PDF形式:64KB)
【資料3】 公益通報者保護法の具体的課題(消費者庁提出資料) (PDF形式:382KB)
【資料4】 前回までの専門調査会で出された意見等 (PDF形式:152KB)
【資料5】 公益通報者保護専門調査会 今後のスケジュール (PDF形式:52KB)


≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、始めたいと思います。
 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。消費者委員会事務局の原です。よろしくお願いいたします。
 ただいまから、第5回「公益通報者保護専門調査会」を開催します。。
 なお、本日は所用により、大村委員、渡邊委員、野澤委員、消費者委員会担当委員の日和佐委員が御欠席となっております。
 議題に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 本日お配りしている資料は、議事次第に配付資料一覧として付けておりますけれども、資料1は渡邊委員からの提出資料、資料2は消費者庁からの提出資料、この2つは前回からの宿題を含めての資料になります。資料3として消費者庁の提出資料、資料4として前回まで専門調査会で出された意見等のまとめ、資料5として今後のスケジュールをお付けしております。議事の進行の中で不足などございましたら、事務局までご連絡をお願いしたいと思います。
 なお、本日は御欠席でいらっしゃいますけれども、渡邊委員から、前回の専門調査会で中間的な集約状況について御披露いただきました、東京商工会議所における「公益通報者保護制度に関するアンケート調査結果」がまとまったということで、お手元に資料1としてお付けしております。説明につきましては割愛させていただきますけれども、参考としてご覧いただければと思います。
 それでは、島田座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

≪2.前回専門調査会報告事項に係る補足的報告について≫

○島田座長 それでは、議事に入らせていただきます。
 前回、消費者庁から、諸外国の公益通報者保護制度に関する動向調査の結果について御報告をいただきましたが、調査結果に関連して質疑のあった部分について消費者庁から追加資料をお出しいただいております。まず、その内容について確認を行っておきたいと思います。
 それでは、消費者庁の成田企画課長、お願いいたします。

○成田企画課長 消費者庁企画課の成田でございます。
 前回、「諸外国の公益通報者保護制度の概要」につきまして御説明申し上げましたが、その際に、「刑事・民事上の免責」につきまして、オーストラリアとニュージーランドの規定ぶりがどうなっているのかということと、刑事・責任上の免責についてどのような議論があったのか、という御質問がございました。
 これにつきまして確認いたしましたところ、資料2に御紹介させていただきましたとおり、両国の法律の規定につきましては報告書に記載がございましたけれども、これについてどのような議論があったのかということにつきましては、調査報告書にも記載がなく確認できませんでしたので、御報告させていただきたいと思います。
 以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。
 委員の方々、御質問のあった点につきましてはよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

≪3.公益通報者保護法の具体的課題について≫

○島田座長 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 前回、公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について委員の皆様に御議論いただきましたが、今回はこれまでの議論を踏まえまして、公益通報者保護法の具体的な課題について御議論いただきたいと思います。
 これに先立ちまして、まず消費者庁の成田企画課長から、公益通報者保護法の具体的課題のうち法制定時の附帯決議において検討すべき事項として挙げられております、「通報者の範囲」「通報対象事実の範囲」「外部通報の要件」「外部通報先の範囲」について、法制定時及び法施行後、本専門調査会が開始されるまでになされました議論を整理して御説明いただきたいと存じます。
 それでは、成田課長、お願いいたします。

○成田企画課長 資料3でございますけれども、この資料は、5月に消費者委員会において決定されました、本調査会の「主な審議事項」のうちの「公益通報者保護法の具体的課題について」の4つの事項、具体的には、2ページの目次にございますが、「通報者の範囲」、「通報対象事実の範囲」、「外部通報の要件」、「外部通報先の範囲」につきまして、公益通報者保護法の逐条解説の関連部分、法制定時の国民生活審議会における御議論、国会における御議論などを、この調査会における御議論の参考といたしまして、論点ごとに整理いたしましたので、御説明させていただきたいと思います。
 なお、これらの事項につきましては、公益通報者保護法が制定された際の国会の附帯決議におきまして、施行後5年の見直しの際に検討することとされている事項でございます。
 3ページから、まず1つ目の「通報者の範囲」でございます。公益通報者保護法第2条では、通報者は「労働基準法第9条に規定する労働者」とされております。その下に、労働基準法の規定を引用してございます。4ページからは、消費者庁のホームページに掲載されております「公益通報者保護法の逐条解説」の関連部分の抜粋でございます。
 マル1のイに、通報者を「労働者」とする理由につきまして、「事業者と労働者との『労働契約』は自由対等な契約関係になく」、「労働者が公益のために通報をした場合には、事業者から解雇その他不利益な取扱いを受けるおそれがあり、このような報復措置から労働者を保護する必要がある」とされたところでございます。
 また、マル2で、公務員も「原則として『労働者』に該当する」とした上で、必要な規定の設けているところでございます。
 5ページのマル3で、「取締役」について、「労働者と比べて事業者に対し重い忠実義務を負い、自ら発見した通報対象事実を是正する立場にあること」、「その選任・解任は、会社法に基づき株主総会の決議によること」から、本制度の保護の対象とはされていないとされております。
 マル4の「下請事業者などの取引事業者」についてでございますけれども、「事業者間の取引関係に保護を加えることは、取引自由の原則から慎重に検討すべきとの意見」があったことから、対象とはされなかったとされております。
 6ページは、前回も御紹介させていただきました、公益通報者保護法制定時の国民生活審議会での御議論をまとめた、平成15年5月の「21世紀型の消費者政策の在り方について」の関係部分の抜粋を記載させていただいております。
 7ページは、関係する国会での御議論を紹介させていただいております。
 9ページから、2つ目の論点の「通報対象事実の範囲」についてでございます。この法律は、通報対象事実は、公益通報者保護法の別表又は政令で定める法律(対象法律)に規定する罪の犯罪行為の事実等とされております。9ページの下にございますように、現在、対象法律は、法律で定められた7つの法律と政令で定められた426の法律の合計433となっております。
 10ページから逐条解説を引用しております。2の「対象範囲の広さ」において、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」としておりますけれども、このことについて「公益通報に関する制度の整備」は、「国民の生命、身体、財産等を保護し、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とするものである」としております。
 11ページの(3)ですけれども、国会で新たに法律が定められたり、法律が改正された場合、その法律を対象法律にするかどうか、対象法律から外すかどうかといった検討が必要になってまいります。実際に政令で定められている対象法律につきましては、「『通報対象事実』を最終的に刑罰により実効性が担保されている規定に違反する行為としていることから、まず、刑罰規定のある法律であることが前提」となっておりまして、更に目的規定などから判断いたしまして、「国民の生命、身体、財産その他の利益を保護することを直接的な目的としていると考えられる」かどうか、「違反することにより国民の生命、身体、財産その他の利益への被害が生ずることが想定される規定」かどうか、という観点から決定されているところでございます。
 12ページの「7.対象範囲の深さ」の(1)で、検討の対象として、「犯罪行為」、「行政処分の対象となる違法行為」、「民事法違反」、「不当な行為」が挙げられた上で、(2)におきまして、「このうち、『民事法違反』や『不当な行為』を公益通報の対象とすることについては、公序良俗違反や不法行為の範囲が抽象的なものとならざるを得ず」、「公益通報に関する予測可能性を害し、法的安定性を損なうと考えられること」、「現行法で規制の対象とされず、努力義務等にとどまっている危険については、リスク評価を巡って見解が分かれ、公益通報の対象範囲が不明確になることから、対象範囲とされなかった」としております。
 前回提出させていただいた資料にも記載させていただきましたけれども、公益通報者保護法の「目的、必要性」の御議論の中で、通報者はこの法律が制定される前から、判例、労働契約法第16条(当時は労働基準法第18条の2)などによって保護されてきたところであり、公益通報者保護法は、「通報者保護に関する制度的なルールを明確化し、通報の結果に対する予見可能性を高めていくことが必要と考えられ」たことから制定されたということがございます。通報対象事実の範囲の検討に当たっては、ルールの明確性、予見可能性が確保されるのかどうか、また、される必要があるのか、という点が考慮されたと考えられるところでございます。
 なお、これも補足でございますけれども、公益通報者保護法第6条では「解釈規定」ということで、公益通報者保護法の規定が労働基準法第16条などの規定の適用を妨げるものではない、ということを確認的に規定した条文もあるところでございます。
 13ページの(3)では、景表法などでは直接罰則が課される違法行為ではなく、主務大臣による命令等によりその実効性を担保しているところであるが、本制度が企業不祥事を発端として導入が検討されてきたことを踏まえると、これらの規定に違反する事実を含めることが必要であると考えられることから、(4)に書いてございますが、通報対象事実としては、マル1の「犯罪行為」に加えまして、マル2の「規定違反に対し、主務大臣の命令等が用意されており、かつ、当該命令等に違反することが罪となる行為である場合における当該規定に違反する事実」なども含めるとされたところでございます。
 15ページに進みますけれども、通報対象事実が現に生じている場合に加えて、まさに生じようとしている場合を通報対象事実としている理由について記載しております。
 16ページは国民生活審議会における御議論でございますが、ここでは、通報の範囲について、(1)で「まず、消費者利益(生命、身体、財産など)を侵害する法令違反を本制度の通報の対象とすべき」とされた上で、更に(2)において、「国民生活にかかわる分野での法令違反は、消費者利益を害する法令違反と密接な関係があり、また、被害の未然防止・拡大防止を図ることが重要であることから、通報の対象としてこれらの分野も含めることが望ましい」とされたところでございます。
 3つ目の論点が「外部通報の要件」、4つ目の論点が「外部通報先の範囲」ですけれども、先に35ページの「4.外部通報先の範囲」から御説明させていただきたいと思います。
 公益通報者保護法では公益通報の通報先の範囲といたしまして、「事業者内部」、「行政機関」、その他の「事業者外部」の3つの分類に分けて、それぞれに異なる保護の要件を定めているところでございます。
 それぞれの内容は四角の中に書いてあるとおりでございます。36ページから逐条解説がございまして、マル2の行政機関につきましては、通報対象事実について処分等の権限を有する行政機関とした上で、処分権限を有しない行政機関に誤って通報された場合には、その行政機関は、処分権限を有する行政機関を通報者に教示しなければならないという第11条の規定が設けられているところでございます。
 マル3のその他の事業者外部につきましては、37ページから具体的な例が挙げられており、「通報対象事実によって被害を受け又は受けるおそれがある者」として、「有害な物質を含んだ食品が販売されている場合の購入者」、「有害な物質が排出されている場合の周辺住民」が挙げられております。また、「消費者利益の擁護の観点から、事業者活動をチェックしている消費者団体」、「加盟事業者の公正な活動を促進している事業者団体」などが例示として挙げられております。また、イにございますように、報道機関も基本的には外部通報先に含まれることとされております。
 38ページは、行政機関について、通報対象事実について処分等の権限を有する行政機関とされている理由につきまして、行政機関に通報する場合に、その「行政機関が通報内容について法的な権限に基づく調査を行い、事実の有無を確認し、当該事実がある場合にはその是正を行うことが可能でなければ」、通報に対処することができないことから、処分等の権限を有する行政機関を通報先としていると書いてございます。
 39ページからが、国民生活審議会における御議論、40、41ページが、国会の関係する御議論の部分でございます。
 戻っていただきまして21ページからでございますけれども、3つ目の論点の「外部通報の要件」でございます。公益通報者保護法では、3つの通報先の類型ごとに異なる保護の要件を定めているところでございます。23ページから逐条解説を付けてございます。通報先ごとに異なる要件としている理由については、法令違反の通報による公益の実現と、事業者の正当な利益の保護とのバランスを図る観点からとされておりまして、行政機関につきましては、23ページの3にございますように、「事業者外部への公益通報については、真実でない通報等によって労務提供先の正当な利益が不当に害される可能性がある」ものの、その他の事業者と外部とは異なって、行政機関では「守秘義務が課されていること」、「通報内容について法的な権限に基づいて調査を行うことができ、通報内容が事実でない場合には、通常、その内容が外部に公開されることはないこと」から、その他の事業者外部への公益通報よりも要件が緩和されているとされております。
 また、その他の事業者外部につきましては、24ページの(2)のマル1にございますけれども、「労働者である公益通報者が雇用元の事業者に対して負う誠実義務との関係上、公益通報者は雇用元の事業者の利益と密接に関わる労務提供先の利益を不当に侵害しないよう配慮して行動する必要がある」一方で、例えば事業者内部に公益通報をすれば、公益通報者が不当に不利益な取扱いを受けるおそれがあるなど一定の場合には、「誠実義務を履行することが困難であるため、その他の事業者外部に公益通報をすることが相当」であると考えられるということで、そういった場合として幾つかの要件が定められているところでございます。
 27ページの3でございますけれども、その他の事業者外部への通報の要件として、「一般的な保護要件」を設けることにつきまして、「個別の通報が保護されるのか否かについての予測可能性を害し、通報のたびに裁判所の判断を仰がなければならなくなるため、通報者保護にはつながらない」ためとされていると書いてございます。
 28ページが国民生活審議会における御議論、29ページから33ページまでが、関連する国会における御議論でございます。
 資料の御説明は以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。
 続いて、事務局におきまして、前回までの専門調査会に出された意見等を整理した資料を作成していただいておりますので、これについて御説明をいただいた上で議論に入りたいと思います。
 それでは、原事務局長、お願いいたします。

○原事務局長 資料4をご覧いただきたいと思います。前回まで4回ございましたけれども、「専門調査会で出された意見等」ということで、不十分ではありますけれども、まとめさせていただきました。
 審議事項項目に沿いますけれども、「1.制度の目的・在り方」、2ページに「2.通報者の範囲」、3ページに「3.通報対象事実の範囲」、4ページに「4.外部通報の要件」、「5.外部通報先の範囲」、5ページに「6.民間事業者・行政機関がとるべき措置」、7ページに「7.効果」「8.運用」、9ページに「9.その他」ということで分類させていただいております。
 最初の1ページに戻っていただいて、全部を御紹介するわけにはまいりませんけれども、主立った御意見を御紹介したいと思います。
 「1.制度の目的・在り方」ですけれども、3つ目のマルに、「通報したことによって自分の身が守られるかということが最大の気がかりになると思うので、そういったことに対する安心を与える工夫、制度自体の改革も必要ではないか」という御意見。
 「公益通報者保護制度が全体として企業のコンプライアンスのための制度としての位置づけなのか。あるいは、公益のための通報、特に消費者保護の観点からどの程度の意味を持つものなのか」という、制度の目的についての御意見をいただいています。
 それから、「公益通報者の保護ということで、コンプライアンス等をこの法律ですべてやろうというわけでは勿論ない」と、コンプライアンスの議論もたくさん出てまいりましたけれども、それとのかかわりをどうするかということです。
 「公益通報者保護法自体は制度の一部だけ、少なくとも安全地帯を示すという説明があったが、ガイドライン等が補完していって全体的な制度づくりがあるのではないか」、「通報事実として上がってきているものを、労働者の保護という観点から外れてどう扱うかということについても、一つ議論があっていいのではないか」という御意見がありました。
 一番下に、「制度や法律を整備してもできる範囲は限られる。最終的には職場や風土とかの話も入ってくるので、法律をつくったからといって解決に向かうものでもないということを頭に入れて議論すべきではないか」という御意見をいただいております。
 2ページ目の「通報者の範囲」のところでは、「少なくとも行政機関や一定の大企業に関しては、労働者以外にも通報者の範囲を拡大する方向性も考えられるのではないか」という御意見。
 その下に、「(弁護士会の相談窓口には)退職者からの通報・相談の件数が割合的に非常に多い。職場にいる中ではなかなか言えないけれども、会社を出て初めて相談できる、通報できることが多い」という御意見が出されております。
 (2)の「匿名通報者の取扱い」も御意見として出されております。3つ目のマルのところに、「匿名性を保ったまま、不正は是正したいといった需要に応えるために、法的な整備やシステムの構築も必要ではないか」という御意見がございました。
 3ページ目の「通報対象事実の範囲」では、最初に掲げておりますのは、弁護士会の相談窓口の対応の中で気が付くことの御報告ですけれども、最初のポツにありますように、「通報対象事実に含まれない通報に関する相談が多い」、これをどう考えるのかというところです。同じようなことですが、「刑事罰を伴うか否かにかかわらず問題があると思ったものが通報し、それによって不利益を受けないという枠組みにすべきではないか」ということで、通報範囲をなるべく幅広くしてはどうかという御意見がありました。
 「(2)対象法律制度」では、上から4つ目のマルに、「本法の制定の際、公益通報者保護制度検討委員会における審議では、限定列挙ではなく、個人の生命、身体に関わるような法令」という大くくりな議論をしておりましたけれども、その御紹介。
 その下に、「現在の法制執務としてなるべく具体的に書くという理由があるのかもしれないが、具体的に四百数十本の法律を書くことのメリットとしては、企業側に自分の会社であれば、どういう法令が関わり得るかを明らかにすることが考えられるが、恐らくメリットよりデメリットの方が大きいのではないか」という御意見がございました。
 「(3)法令違反の「おそれ」を対象とすべき」の御意見として、「保護される通報の範囲の中に法律違反の「おそれ』を含めるべきではないか」というものがございました。
 4ページ目ですが、「外部通報の要件」では、「(1)外部通報の要件の緩和」ということで、「要件が厳しい」というのは複数の委員から御意見が出たところです。
 その欄の一番下ですけれども、「公益通報をしたことが本人にとって望ましいのかというと、必ずしもそうはならない可能性も高いということから、企業の内部での通報を優先して、そこで円満に解決することが労働者にとっても望ましいのではないか」、こういった御意見もいただいております。ですから、ここもいろいろな御意見が出されたということになります。
 「(2)一般的保護要件」ですけれども、「行政機関以外の第三者への通報の要件も限定されていて、もう少し、「その他の事情を総合的に考慮して合理的とみなされる場合」などの公益通報者の保護を定めていくということが必要ではないか」と。もう少し広がりというものも考えていいのではないかという御意見がありました。
 「5.外部通報先の範囲」です。「(1)第三者機関の設置」に関しては、「通報先がわかりにくい」という御意見、それから、「労働者の保護が十分行われていないのではないかというおそれを少しでも解消するためにも、通報先として新たな専門の第三者機関を設けるべきではないか」という御意見も出されておりました。
 5ページ目は「6.民間事業者・行政機関がとるべき措置」ということで、「(1)通報を受けた民間事業者・行政機関がとるべき措置の具体化」について、ここは大変たくさんの御意見が出されております。行政機関については、弁護士会の相談窓口にあった相談として、「行政機関に通報したが反応がない。しっかりと調査しない、動いてくれないという相談が結構あり、内部通報の上行政機関に通報したが動かないものもあった」。そういう意味では、行政機関というものがどういう役割を果たすのか、きちんと見えるようにという御意見がございました。
 それから、「法律10条によって、行政は適当な措置を取らなければならないと書いてあるので、何が適当な措置であるかについて曖昧さは残るが、この場合には行政庁には裁量の余地がない、あるいは裁量が相当に制約されている、という理解でよいか」。これは御質問ではあったのですけれども、法律10条の考え方の整理が提案されております。
 その下は民間事業者についてですが、最初のマルに、「(労働組合としては)この制度では法は解雇の禁止などのみを規定しており、具体的な手続や労働者の救済などは法的拘束力のないガイドラインに委ねられていると認識している。したがって、現行制度の下では、企業がガイドラインの内容に沿った制度とするよう強く求めることとなる」ということで、ガイドラインと法制度との関係をどうするのかということです。
 この項の一番下ですけれども、「手続に関する法の規定の整備が必要ではないか」ということで、「拘束力のない任意のガイドラインのみで対応することには限界があるのではないか」という御意見が出ておりました。ガイドラインの位置づけが問題として出されております。
 6ページ目の「(2)内部通報制度導入、通報窓口設置の義務化」のところでは、先ほどのガイドラインの話ですけれども、「ガイドラインが重要な役割を果たしている中で、法律に何らかの内部通報制度を根拠づけるような規定を置くべきではないか」という御意見。それから、「内部通報窓口の設置が進んでいないので、法律の中で強制的な義務の規定にまでするのは難しいとは思うが、現行よりもう一段トーンを上げて努力義務といった条項を設けることも検討してはいかがか」という御意見が出ております。
 それから、「大企業だけを視野に入れるのではなく、中小企業の実態を十分に踏まえて、より実効性の上がるような施策になるように、是非議論を進めていただきたい」、「民間の場合も、小さいところになると不十分。そもそも法が定めているやり方が合っているのかどうか。スケールに合った公益通報の体制の議論が必要」ということで、それぞれの事業者の規模や体制が違うので、それに見合った法制度というのはどういうものかという御意見が出ております。
 7ページ目は「7.効果」ということで、「(1)罰則」の規定は、「一般企業への罰則の制定といった検討が必要ではないか」、これは複数の方から出ていた意見です。それから、「公益通報をしている人に不利益処分をするような企業については個別企業名を公表するといったような措置も選択肢としては考えられるのではないか」といった御意見もございました。
 (2)としては、「通報者に対する救済制度の制定といった検討」という御意見が出されております。
 「8.運用」のところです。「(1)制度の周知」には、たくさんの御意見が出されたところですけれども、「法律とか制度自体の周知徹底が十分になされていない」、「公益通報者保護法自体を知らないという職員が多い。PRが足りないというところだが、中にはこの法の対象が製造業、特に食品関係がメインだという偏ったイメージを持っている職員がいる」、「中小企業のほとんどの企業が、こうした法律があることを知らない」といった御意見がございました。
 8ページ目は、「(2)「通報」に対するマイナスイメージの払拭」ということで、「通報に対するイメージや概念を変えていく必要がある。余りにもマイナスイメージに見過ぎていて、むしろ小さなことでも通報できるような環境を持っている職場が社会的にも評価されるくらいに考えていけば、対象や範囲を広げていけるのではないか」といった御意見がありました。
 「(3)制度での対応が困難な事象」ということで、これは当初から言われておりましたが、「現実の職場内では、形に見える報復よりも、むしろ仲間内での仲間はずれにしたり、いじめたりという定義のしようのないものが多い。こういったものをどうすれば変えていけるのか」という御意見が出されております。
 「(4)今後必要な調査・実態の把握」ということで、こういった調査とか実態の把握が必要ではないかということで、ここにも幾つかの御意見をいただいているところでございます。
 最後のページですが、「9.その他」ということで、「(1)法文のわかりやすさ」について、「公益通報者保護法の規定は読み方が非常に難解で、素人の方がさっと一読して理解することが難しい」という御意見。「(2)手続規定」では、「裁判で争っても結局、訴訟技術的な理由によってはねられてしまっており、結果として損害賠償というような形でしか救済されていないのが現状である」ということ。(3)の「国際化」の部分、あるいは、「(4)消費者庁の位置付け」ということで、「公益通報者保護の枠組みの中で、消費者庁をどう位置付けていくのか」といった御意見が出されておりました。
 専門調査会を4回開催しておりますけれども、いずれもヒアリングをしたりということで、質問のような形での御意見もあったりして、それを拾うような形になって不十分かとは思いますけれども、今の段階での事務局のまとめとさせていただきます。

○島田座長 ありがとうございました。以上について何か補足はございますか。
 それでは、公益通報者保護法の具体的課題についての論議に入りたいと思います。初めに、これまで複数の委員から御意見をいただいております、公益通報以外の通報に対しても行政機関は適切に対応すべきであるという点につきまして、これを本専門調査会の主たる議論の対象とすべきかどうかについて検討したいと考えております。
 私は、この点は大変重要な視点であると思う一方で、公益通報以外の通報に対する行政機関の対応について制度化ということになりますと、現行法の目的やコンセプト全体を大きく変えることになろうかと思いますし、多くの他の法令や制度との整合性の検討も必須になると思われます。また、公益通報以外の通報に対する行政機関の対応については、第1回の本専門調査会において確認いたしました、消費者委員会からの調査審議の付託事項の範囲外にあると考えております。
 そこで本専門調査会におきましては、時間の制約もございますので、公益通報以外の通報に対する行政機関の対応については主たる議論の対象とはせず、現行法の目的の範囲における数々の論点について、活発な御議論をちょうだいできればというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
 どうぞ。

○三木由希子委員 私が発言した内容でもあると思いますが、公益通報者保護法の範囲内で具体的に何か対応ができるかというと、法律の枠組みからしてなかなか難しいのではないかと思っております。ただ、行政機関としては、公益通報者を保護する役割と同時に、問題がある事柄があるのであれば、それに適切に対応していくことも、当然に行政機関として行うべき事柄であると思います。法律上の措置をどうするかということとは別の問題になるかもしれませんが、公益通報の対象事実となるような事柄について、労働者以外から通報があった場合についても同様に対応するということで、ガイドラインとか何かの中で、基本的には準ずるというような形で扱っていただくことを少し御検討いただければというふうに思っております。

○島田座長 他にいかがでしょうか。

○山本委員 まず、公益通報対象に当たるかどうか、その対象外についてどうするかということですけれども、これから公益通報の対象事実をどうするかということを検討していくことが一つある。私もいろいろ考えていたのですが、そうすると、公益通報者保護法の定義に当てはまる公益通報と、具体的な保護の対象となる公益通報というのにすき間が出てくる可能性もあるわけです。
 現在でも、公益通報者保護法の公益通報に当たっても、事業者外部への通報についてはそれらがすべて保護されるわけではなく、他の要件が課されて保護されるということで、法で定義される公益通報と保護を受ける公益通報の間にギャップが出てしまう。それは恐らく、行政機関でも出てくる可能性があって、そういうところをどうするかということも含めて、今、おっしゃったようにガイドラインの活用等で、明確に、行政機関が通報を受けた場合はどういうことをするということを示していくことも必要になってくるだろうと思っています。この議論は、今の段階で主たる議論の範囲外とされることは私も特に異論はないのですが、公益通報の対象をどうするかということを一旦議論した上で、もう一度改めて見直すことも必要ではないかというふうに思っています。

○島田座長 他に何かございますか。
 貴重な御意見をありがとうございます。今、この議論の対象とするかどうかということについては、ガイドラインを考える中で少し御検討をというような御意見だったかに思います。ちょうだいした御意見については議事録に残させていただきまして、議論の中心は、現行法の目的の範囲内ということを主たる議論の対象として進めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

○島田座長 ありがとうございます。それでは、公益通報者保護法の具体的な課題についての論議に入りたいと思います。
 最初が制度の目的・在り方の部分でございますが、この部分につきまして、この間、公務等によって御欠席の大村委員からコメントが寄せられているということでございますので、事務局から御報告をちょうだいできればと思います。

○原事務局長 大村委員ですけれども、実は座長の日程と大村委員の日程がちょうど講義が重なって、座長が御都合のいいときは大村先生の講義が入っている。御本人としては本当に申し訳ないということではあるのですけれども、御欠席が続いておられて、事務局としても御説明に伺ったりしたところ、これまでの資料も拝見させていただいてコメントということで、口頭ですけれども、発表をお願いしたいということでした。本来であれば、皆様方の御意見を聞いた後にというところではありますけれども、僣越ですが、コメントを発表させていただきます。
 (コメント読上げ)本日は出席がかなわず、申し訳ありません。欠席が続いておりますので、このような形となり恐縮ですが、消費者委員会事務局より御報告をいただいたこれまでのご議論の内容を踏まえ、若干の私見を申し述べさせていただきます。
 大きな話になりますが、法律というものは、制定時に相応の議論を経た結果として成立したものでありますので、これを改正すべきか否かの検討にあたっては、施行後の具体的事実をもとに特定の問題を把握した上で、当該問題を解消するためにはいかなる改正をすべきか、という議論が必須であると考えます。すなわち、具体的事実なくして法制定時になされた議論を繰り返しても、改正には至らないというのが私見です。
 この点について、これまでの御報告や御議論を拝見すると、公益通報者保護法の改正についての検討を要する「具体的事実をもとにした特定の問題」は、今のところ、指摘されていないように理解しております。
 他方、運用等のソフト面については、先を見据えた積極的な取組みをいただくことが制度の推進につながりますので、現状において課題とされている事項を改善するための有効な施策についての多様な御意見が提示されることは、非常に有益であると思料いたします。
 このように、法改正についての議論と運用等についての議論については、必要となる視点が少し異なるものと考えております。
 大村委員からのコメントは以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。

○島田座長 ありがとうございました。大村委員には大変申し訳ないと思っております。
 それでは、1ページの制度の目的・在り方という部分で、各委員から御意見をちょうだいしたいと思います。意見が反映されていない、あるいは、ここにまとめられていることに論点として追加すべき点がございましたら、御意見をちょうだいできればと思います。いかがでございますか。

○山本委員 何度も済みません。目的ということは、今後の通報対象事実をどうするか、保護の内容をどうするかと密接に関連してくるわけです。その点でいろいろな議論を含めて考えていかないとだめなのですが、今、私自身が考えていまして、ここに十分書いていないことは、そもそも導入経緯では、例えば公的監視機能の補完という視点があったわけですが、現在の法律の目的ではそういうところが抜けている。そういう意味で通報対象事実が制限されているということもあるかと考えていますので、消費者利益の確保、施策の実効性を確保するための社会的制度といった意義と、公的監視機能の補完ということを、もう一度、目的で確認すべきだというふうに考えております。

○島田座長 他にいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、議論を進めさせていただきまして、次は通報者の範囲です。ここでは、「労働者」ということと、匿名通報者の取扱いについての議論を整理していただいておりますが、いかがでございますか。

○山本委員 私も繰り返し述べていることですが、この制度を生かすためには、労働者ということに限るわけではなく、先ほど説明がありましたけれども、取締役等の役員とか、退職者、更には、この制度の導入の検討のきっかけになりました雪印食品の牛肉偽装事件では、取引先事業者が不正行為を知り得て通報したということもあります。そういった不正行為を把握できる立場にある人を、広くとらえて進めていくことが大切ではないかと思っていますし、ちょっと議論が先走ることになるかもしれませんが、それぞれの通報者の類型ごとに、どういう保護が可能かということを検討していくことも必要だと考えています。

○島田座長 ただ、先ほど述べましたように、この法律の公益通報者というのは労働者保護のための法律だと思うのです。我々から見ると、労働法の一環という側面が濃厚なので、それを、類型をまた広げていくということになると、先ほど出ておりました資料の中での国会でのやりとりもあって、この法律の性格というのを全く変えてしまう議論になる。そこまで議論をしていくと、ちょっとこの専門調査会の範囲を超えるのではないかというのが私なりの理解ですが、その点はどうでしょうか。

○田井委員 その議論で、私も、労働者以外をどう保護するのかというのが現実的に見えてこない。例えば、下請けを切ったらそれは保護されていないので問題だと言いますが、実際にそれは、通報したから下請けを切っているのか、それとも、そこの会社から出てくるサービス・製品がビジネス上のニーズに合ったものでないから切らざるを得ないのか。その辺りがどっちなのかというのは、どうやって現実で判断をするのか。それを決めるために長い裁判をするというのも現実的な話でもないですし、それから、役員というのはそもそも、不正があれば正すというのは義務として持っているもので、上が怖くて対応ができないということ自体がおかしな話なので、そういう意味では現実的な保護をするというと、やはり労働者に限らざるを得ないのではないかと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○大杉委員 法技術的には、日本のように終身雇用制を取っているところでは、通報を行った従業員が解雇されたときに外で再就職することが難しいということがあるので、そういう人を保護するという効果の書き方から逆算して現在の法律ができ上がっています。半面、取引先、例えば下請けとか、元従業員の方の不満が数多く日弁連の相談窓口に寄せられている。元従業員の方は、不満を聞いてほしいとか、それをどこかに伝えたいという気持ち、熱意はわかりますけれども、この場合に考えられる保護というのはなかなか法律に書けないなと一面で思っています。
 他方、内部者による通報ではない、もう少し広い外部者による通報について何も書かないというのは、この法律をものすごく弱くしているように思われます。外部者に対しても通報を理由とする不利益扱いをしてはならない、というような努力義務的な訓示規定のようなものを置くことは検討に値するように思います。そういうことをしないとこの法律が社会に発するメッセージはいつまでたっても弱いままなのではないか。
 現在の法律で解雇が無効とされる場合は、法制定前から裁判例で認められている場合よりかえって狭いぐらいでして、私は現在の公益通報者保護法は何をやっているかよくわからない法律だと思っています。労働法的な側面があるのは確かですけれども、公益通報に対して一定の範囲ではそれを保護し、企業、官庁等の組織の法令遵守を促進する、それもなるべく早い段階で、かつ、低コストでやるということの方が究極的な法律の目的で、労働者の保護、特に解雇無効というのは、本法の究極目的の中ではやや手段的な位置づけであるのではないでしょうか。仮にこの点を論じることが、この委員会に対して委託されている範囲を明瞭に超えることはなく、議論する権限自体はあるのだとすると、訓示規定を置く選択肢を今は排除しないでいただきたいなと思っています。最終的には、意味ある規定を書けるかどうかが問題になりますので、この点は落とさざるを得ない、ということもあり得ると思います。長々しゃべった割に中身がなくて申し訳ございません。

○島田座長 了解しました。要するに可能性として議論の余地は残しておいて、最終段階で、どう考えるかということですね。

○松村委員 今の点に関連しますけれども、おっしゃるように、もともとこの法律の成り立ちというか、生い立ちが労働法だということは勿論あるとは思いますが、今回のこの審議でその限定がつくのかどうかというのは、また、ここで議論をすればいいのかなと、個人的な感想です。
 あと、先ほど、下請けの場合にどう保護するかというところで、通報したから契約を切ったのか、それともニーズに合わなくなったから切ったのかという認定は難しいというお話でした。それは確かにそうだと思いますが、解雇についても同じようなことは言えて、通報したから解雇されたのか、それともその方のそれ以外の勤務ぶりとか、他の要素で解雇されたのかという事実認定は、同じように難しい点があるのではないかと思いますので、それだけを理由に保護の方法がないとは言えないのではないかと思います。

○島田座長 今の点、解雇とは違うと思うのです。というのは、解雇は無効になるのです。無効になりますから、契約は継続していくということになります。しかし、事業者との契約は、解除しても、違法になって損害賠償とかになるかもしれないけれども、契約がそのまま続くということは通常あり得ないので、決定的に違うのだと思います。

○山本委員 何点か補足したいのですけれども、いろいろな類型ごとに保護を定めることについて一つの保護の方法として私が考えているのは、民事免責、刑事免責というものを念頭に置いているということがあります。ですから、保護のしようがないというわけではなくて、そういったダイナミックな展開までするかどうかというところで、まさしくここで検討するのかどうかということはあると思いますけれども、そういうことを念頭に置いているということです。
 今の契約関係につきましても、念頭に置いているのは継続的契約関係と言われるものだと思います。それについては、解除が全く自由かといえば、裁判例で解除が無効となっていることは当然あると思いますので、議論の仕方として、信頼関係を破壊するに至るかどうかという事情の一つの要素にはめ込むことも可能でしょうし、そういった観点から効果を定めることもできるのではないか、というふうに私は個人的には思っています。

○島田座長 解雇については、伝統的に日本では無効構成をとっています。法律上、明確に定まっていますけれども、それと同じようなレベルで事業者との契約について、解約したが無効で、契約関係は継続するという解雇と同レベルで議論するのは難しいと思います。全然違いますが、フランチャイズでも違法になるという議論がありますけれども、継続するというのは実際にはなかなか難しいですね。そこは分けて考えたほうがいいのではないか。ですから、そこは、仮に大杉委員がおっしゃったように少し考えるにしても、具体的な手段ということになるとかなり難しいだろうと思います。
 それから、労働者保護については、労働法上の解雇無効とか、懲戒処分の無効という伝統的手段がありますけれども、事業者に対する規制というのは、これは日本の法の中で全く別の話で、取引の自由との関係でかなり厳しい問題が出てくる。この公益通報者保護法の中でどこまで議論できるかというのは、繰り返しになりますけれども、ちょっと難しいのではないかというのが私の持論です。
 どうぞ。

○三木信夫委員 地方公共団体の運用からした議論ですけれども、私どもでは、以前も御報告させていただきましたが、従業者である職員からの通報よりも、外部、市民、住民、監視団体等からの通報によって、行政の違法な行為等が明らかになって改善されたという、住民による行政の法的統制を補完するという機能が大阪市での公益通報では大きな比重を占めております。また、契約関係といいましても、例えば談合ですとか、官製談合的な内容についての通報、それは必ずしも当たっているとは限らない場合もありますけれども、これは契約相手方、あるいは契約相手方の下請け業者等からの通報も結構ございます。
 そういった意味もございまして、先ほどの議論で、法律の目的を変えるということはこの中では望ましくないと思いますが、行政機関向けのガイドラインですとかそういった中で、行政機関については、従業者である職員以外の一般市民等からの通報も一定の範囲で受け付ける形にしてはどうかなと。保護とセットとはなっていないかもしれませんけれども、その辺は意見として述べさせていただきます。

○島田座長 そういう議論について言うと、通報者に対する保護というのがこの法律の目的です。ですから、行政機関に対して住民の監視機能として、さまざまな申立てといいますか、意見を聞く。それぞれの行政機関でおやりになるとか、それぞれの省庁でおやりになるとか、これは大いにやっていただくのはいいのですが、その問題とこの法律を一緒に議論できないというのが先ほど申し上げたことなのです。公益通報者保護法の制度の枠でやる話ではないのではないですか、というのが申し上げたいことで、行政に対することについては、公益通報者保護法以外で検討されているというのがありますから、その辺を、消費者庁さんがいいのか、事務局がいいのかわからないですが、御紹介いただければと思います。

○原事務局長 消費者庁からお願いします。

○成田企画課長 平成20年に、内閣から行政手続法の改正案が国会に提出されました。ここで、「何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる」という規定が盛り込まれております。この法案は廃案になっておりますけれども、こういう動きがあるということでございますので、最終的にこの専門調査会の御議論の範囲がどうなっても、その結果を公益通報者保護法に反映させることがいいのかということは、別の議論としてあるのではないかと思っております。

○三木信夫委員 そこでそういった議論があることは承知しておりますし、ここの専門調査会での議論を超えるということは認識しております。ただ、実際運用上のそういった部分があったということで、御記録にとどめていただけたらというふうに思っております。

○島田座長 どうぞ。

○大杉委員 先ほどの山本委員の御発言と島田座長の返答は少し対応していないところがあります。本日の資料2で配付されている、オーストラリアのCorporations Actの条文のようなものを日本の公益通報者保護法に定めることが考えられます。つまり一定の要件を満たした通報は違法性がない、そのことをした人は保護されるというように。これはかなり漠然とした規定で、これが具体的な場面でどう適用されるかあいまいな部分が残りますが、そういうことは、例えば下請けのような場合とか、先ほどの行政機関の文脈で出ている事例においても十分考えられることです。私は、公益通報者保護法の1条を素直に読むと、この法律は労働者保護を目的としているとは思えない。それは手段であり、国民の利益の保護に係る法令の規定の遵守の方が目的だと思います。
 いくらここで議論しても国会で通る見込みのないような改正案であれば、私は自重したいと思いますし、また、事務局の意向に正面から逆らうことをして、公務員いじめをするつもりは全くないのですけれども、労働法に比重を置いている現在の公益通報者保護法の仕組みを少し広げないと、この法律はいつまでたっても普及しないのではないかという気がしています。これは、さっきの大村委員のご意見の伝言に関する私のコメントでもありますけれども、立法事実が大事で、立法事実がなければ感情論で法改正をすべきではないし、そんなことはできないという趣旨であったと思いますけれども、立法事実をどっちが証明するのかというのは、神学論争になりがちです。
 私は実際に窓口で相談を受けたわけではないので判断はできないのですが、少なくとも日弁連の窓口に寄せられている話を聞くと、この法律の窮屈なあちこちのところを少しずつ緩めて、少し敷居を下げることによって、企業、自治体に大きなコストをかけることなく、もう少し日本全体のコンプライアンスの雰囲気を明るいものにすることができる余地があるのではないか。実際に法改正をやってみて、意外とそうでもなかったということがわかる可能性はありますけれども、改正を主張する側が立法事実を証明しなければならないとすれば、何もできないような気がしています。
 私自身は、お手元資料4の1ページ、2ページのところであまり時間をかけずに、3ページ以降に進んだ方がいいと思っているのですけれども、入り口のところでは、広げる余地を残しておいていただければと考えております。

○島田座長 わかりました。そういう了解で進めたいと思います。山本委員に対する議論はありますけれども、その先に進めてということにしたいと思います。それでは、よろしゅうございますか。
 では、御示唆に従いまして先に進めさせていただきます。
 次が通報対象事実の範囲ということで、ここは3ページ、4ページにわたっておりまして、対象事実の拡大、対象法律制度、法令違反の「おそれ」、この3つについてまとめられておりますので、同じように御議論いただければと思います。よろしくお願いします。

○山本委員 通報対象事実ということが、先ほどの説明では明確性を要求するということが言われていますが、それこそ通報者から見れば余計細かく書いていてわからない、明確性を求めている余り逆に通報者から見て明確性がない、そういう矛盾を非常に感じています。
 特に、法律の直接罰則がなくて、勧告・命令があって、それに対して違反があった場合に罰則が適用される行為を入れるとかなってくると、単純な話、その法律自体の条文が罰則に結びついていたら私たちもすぐ判断できるのですが、そうでない構成で、例えばおかしな事実があったときには立入検査はできると、立入検査を拒んだから例えば罰則適用があるというときに、これは適用されるのか、されないのかというのは、全然わからなくなってきますし、弁護士としても、通報対象事実に当たるかどうかの判断というのは非常に難しいわけです。一般の通報者がこの法律に基づいて通報するということは、やはり非常に難しいですし、それこそ消費者目線と言ったらおかしいですけれども、通報する側から見て明確、容易に公益通報の通報対象に当たるかどうかがわかるということも必要です。イギリス法で言いましても、これほど細かい限定列挙制を挙げていないわけで、ここはやはり、通報対象事実の限定列挙制ということは見直すべきだというふうに考えています。

○島田座長 対象法律制度のこの限定列挙をしないでという話ですね。

○山本委員 はい。

○島田座長 わかりました。
 他にいかがでしょうか。

○三木由希子委員 基本的には山本先生の御意見と同じですけれども、比較的最近、必要がありまして、解雇された方がいて、それで公益通報者保護法の対象になるかどうかということを調べようと思ったのですけれども、余りにも参照すべき法律、規則、政令等が多過ぎて、とうとう最後までたどり着けずに、時間切れでわからなかったということがありました。私は外にいて、不利益を被った人間ではないのですけれども、通報しようとしている本人がそれをしなければいけないのかというふうに思うと、それは非常に酷だなと思いました。対象法律制度については、法律自体の実効性を逆に弱めてしまう意味合いを持っているのかなというふうに、身にしみて感じたところです。ですから、これについては十分に見直しの検討対象としていただきたいということです。

○島田座長 他にいかがですか。

○田井委員 確かに私も、どの法律が対象に入るのかがわからないというのであれば、それは明確にすべきだと思います。ただし、ここに一つ、「おそれ」というものを含めるとか、含めないとかいう話がありますが、何らかの不正があって、だれかが不正しているということを通報するというのは、やはり通報者にとっては、慎重に考えて確かな信念を持って通報すべきものです。ここに「おそれ」も含めてしまうと、人はいろいろですので、安易な形での通報が激増することになると実際に対応しきれないのではないか。そんなにハードルを高くせずに通報できる制度、周知というものも大事ですけれども、現実の行為として何をやるかというと、だれかが悪いことをしていますよということを言うわけですね。それに当たっては、言う方もそれなりの準備というか、確認をした上でのアクションにさせるためには、ここは安易に「おそれ」も対象に入れることは避けるべきではないかと考えます。

○島田座長 そうすると、(3)については、むしろ適切ではないのではないかという御意見ですね。

○田井委員 はい。

○島田座長 わかりました。

○大杉委員 現在の法律で言うと、通報先が行政機関とか外部のときには、通報対象事実が生じ、または、まさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由が必要です。その「信ずるに足りる相当の理由」という文言の解釈について教えていただきたく存じます。これは、もしある事実があれば法令違反に該当するという法解釈については明確で、ただ、通報者の事実の認識に誤りがある、でも本人は誠実にそう信じているという、いわゆる事実の錯誤を言っているのか、それとも法律の錯誤なのか。つまり法解釈というのは一義的ではない。事実を正しく認識していても、それが何とか法何条に違反しているということについては解釈が分かれるから、それについても信ずるに足りる相当の理由があれば、結果としては法令には違反していないということになっても、その法律の錯誤も、大きな過失がなければ保護されるというのであれば、ここに含まれるのでしょうか。ここの公定解釈はどうなっているのか。事務局の方、教えていただけますか。

○米田課長補佐 消費者庁企画課課長補佐の米田と申します。
 今、大杉委員がおっしゃったのは、「おそれ」の論点とは別の3条の「信じるに足りる相当の理由」の解釈という理解をさせていただいてよろしいでしょうか。

○大杉委員 そうです。

○米田課長補佐 先ほど田井委員がおっしゃったのは、事実が生じているかどうかという時点の問題かと思いますが。

○大杉委員 3条の真実相当性の解釈で読み込むことができれば、今回、おそれという形で更に広げることは、それほど重要な問題ではないのかなという問題意識でございます。

○島田座長 そういう意味では、そっちが明確になることによってこの議論をということなので、今、そこはどうですか。

○米田課長補佐 法律の錯誤か事実の錯誤かという点では、事実錯誤、すなわち通報対象事実があると信じていたけれども、実際はなかった場合に、「信ずるに足りる相当の理由」があった場合には、保護の対象となるという規定であるとの理解をしております。

○大杉委員 ありがとうございました。さっき私が質問させていただいたのは、田井委員が挙げておられたのは恐らく事実の錯誤の方の類型で、それに対して三木由希子委員とか山本委員がおっしゃっていたのは、どちらかというと法律の錯誤の方の話だったのかなと思ってのことでした。軽率な錯誤は保護されるべきではないですけれども、法解釈であれ事実の認識であれ、無理もないような場合、結果的には違法行為はないとしても、そう信じたことにある程度理由があれば、勘違いをした場所が事実認識にかかるものであれ法令解釈にかかるものであれ、保護すべきだと私は考えます。3ページの下の「おそれ」というのは、法令解釈に関するものかなというふうに考えておりましたので、現時点で私は定見がないのですけれども、整理をするときにこの点も御勘案いただければと考えております。

○島田座長 ありがとうございました。大変重要な指摘をちょうだいしたと思います。
 どうぞ。

○三木由希子委員 今、いろいろ皆さんの御意見をお聞きしていて、先ほど法律の限定列挙の問題と申し上げましたけれども、そもそも定義のところには、「犯罪行為の事実」ということと、「別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実」と。別表に掲げるものと施行令に掲げるものの法律の列挙が、そもそも定義の中に書き込まれているいろいろなものに縛られて、こういうのができてきているという構造だと思うのですが、そういうことを考えると、対象法律制度というよりは、定義の中に書かれている犯罪行為の事実とか、そういう縛りを引き続き残すのかどうかということを、まず、最初に議論しなければいけないことなのだろうというふうに思います。
 それから、「おそれ」を入れるかどうかということは、犯罪行為の事実等について公益通報の対象事実と、そこに限定するかどうかという問題とかかわる問題なのではないかということ。それから、内部と外部の通報要件の中でどういうふうに扱うか。そういうふうな認識というふうに考えられるのかなと思いますので、先ほど対象法律制度のところで意見を述べたのですけれども、その前の対象事実の拡大についても含めて、ここについては議論をいただければということです。

○島田座長 それでは、また整理をさせていただきたいと思いますが、他にいかがでございますか。

○山本委員 私の方も意見を漏らしてしまったのですが、対象事実の拡大のところに意見に書いていますように、脱税事案とか、公金横領事案の相談があったということですし、一般的な感覚で、公益のための通報というのを一般市民がどう受け取るかということを考えても、こういった犯罪行為を広く含めるということにしていかないと、この制度自身も根づいていかないのではないかというふうに考えています。 ○島田座長 ありがとうございました。では、通報対象事実の範囲につきましてはよろしゅうございますか。
 それでは、既に議論に入りましたが、4ページの4、外部通報の要件について、いかがでございますか。

○山本委員 基本的に外部通報でいろいろな要件を課すということは、それなりに相当な理由があることは私も理解できます。ただし、(2)に書いてありますように一般的保護要件、例えば通報に至る経緯とか、通報対象事実、通報対応等いろいろ考慮して、相当な通報であると考える場合は保護するという一文を入れるだけで、随分安心感が違ってくるわけです。実際にこれまでの公益通報事案で、法律制定前の判例で検討されているというのは、例えば報道機関への通報に対する保護が図られるかどうかというのはそういった点で検討されているわけで、そういった保護要件を設けること自体、何らデメリットもないだろうし、法律を推進していく中では非常に重要なことだと考えています。

○島田座長 今の発言のご趣旨は行政機関以外の第三者ということですね。

○山本委員 はい。

○島田座長 わかりました。
 他にございますか。

○大杉委員 行政機関に通報するときには真実相当性が必要で、外部に通報するときには、更に3条3号のイロハニホのどれかに該当することが必要であるというのは、立法の趣旨はよくわかりますけれども、例えば労働者が外部に通報しようとする状況に自分が立ったときを考えると、酷であるという気がします。だから、方向感としては先ほど山本委員がおっしゃったことに近い。例えば3号にプラスアルファして保護の範囲を広げるというときに、当該通報先を通報する相手として選んでいることに相当性があるというふうに、もう少し一般的な書き方にすることはできないでしょうか。現行法のイロハニホに該当するときは、勿論、相当性があると判断されると思うのですけれども、具体的な事実に照らして、場合によっては少し保護される場合が拡がることはあってもいいのかなというふうに思っています。
 最近、ある法科大学院の学生が書いた論文を見ると、現行法でイロハニホに該当するものを削って行政機関への通報と同じ要件で通報者を保護することを主張しているものがあって、半分なるほどと思いつつ、半分、いや、ちょっと行き過ぎだなと思いながら読んでいたのですけれども、現行法のイロハニホに話を戻すと、従業員の側からこれらについて具体的に証明しないといけないということになると、酷ではないか。保護を広げる方法の一つが一般的保護要件なのですけれども、それと両立する議論として、法文の書き方について考えていただければと思います。
 言い換えると、現在の規定振りでは、いわゆるイエロージャーナリズムに告発、通報する場合と、かなり信用のできる消費者保護のための団体に通報するのが同じ保護要件で判断されてしまう。外部という意味では同じですけれども、相当性は大分違ってくるだろうと思います。現在の条文は、スタティックな議論としては非常によくできていますけれども、通報する人の置かれた立場が十分には考慮されていないのではないか、という印象を持っていますので、この点は是非検討課題にとお願いしたいと思います。

○島田座長 どうぞ。

○橋本座長代理 今の点についてですが、この法律の要件は事務局から御説明がありましたとおり、労働者保護と企業の利益の調整の結果、このような要件になっていると理解しています。やはり内部通報をまずやってもらいたい、そういうルートを促していますので、この規定は、外部通報を行政機関、そして事業者外部の通報が最後のルートということを想定していると思うのですが、その場合として、イロハニホという具体的な要件を示していると思います。内部通報がどうにも機能していない場合に外部通報ができるというような理解が十分に可能だと思いますので、それなりに具体化されていて、わかりやすいのではないかと思い、私はこれでいいのではないかという問題意識を持っております。

○大杉委員 私の現時点の考えを述べますと、企業は、内部への通報をすれば誠実に対応しますという制度をつくり、かつ、そのことについて従業員に安心感を与えることができれば、外に通報する人というのはほとんど現れない。そういう安心感のある状況が整っていれば、多少要件を広げても、すごく変な人が現われてイエロージャーナリズムにたれ込んだときには保護されないので、特に企業にとって不利益が拡大するわけでもない。
 今の法律だと、企業はいい制度をつくっているというだけではなく、そのことについて従業員が一定の安心感を得ることができていないときの結論が変わってきます。日本の比較的大規模な会社はいい制度をつくっているし、また、従業員に安心感を与えるというのは、法律でどうこう言わなくても、まともな企業で一定の大きさがあれば絶対やることなのです。外にたれ込まれないためには自発的にやることです。制度について従業員の信頼がないというときに、現在の法文だと、そのことの不利益が告発をするかどうか迷っている従業員側に課せられてしまう。つまり橋本委員がおっしゃっている、企業の利益と従業員の利益を調和させるという観点に立っても、線引きが少し従業員に不親切なところで行われているのではないかというのが私の趣旨です。もっとも、私は実務を全然知りませんので、現実的でないということであれば、勿論いつでも発言は訂正しますので、よろしくお願いします。

○島田座長 全体としてどういう仕組みにするかということが、橋本委員もおっしゃったように、内部通報の制度をよりきちっと定着し、また、それを利用できるようにするかというのはいろいろな形があり得ると思いますので、貴重な御意見ということで、両方の角度から今後も検討したいと思います。

○中村委員長代理 実際に通報先の問題で問題になっているのは、例えば、従業員が会社のやっている不正を会社の上司に言った。しかし、是正してくれなかった。監督官庁に言った。そこでもやってくれなかった。それで仕方なくマスコミ等の外部に通報して、それで表沙汰になって初めて是正されたというケースで、その場合でも、解雇されたり不利益扱いを受けたりするというのが今まで起こっている日本の事例の大半なのです。そこで、今の法律の三段階式の通報対象の分け方がいいのかどうか、そこがやはり検討されなければいけない部分だと思います。今、実際に日本の社会で起こっている、大村先生ではないけれども、立法事実がそこにある。それを今の法律のままでいいのかどうかという視点で検討していただきたいと思います。

○島田座長 どうぞ。

○田井委員 企業で、ホットラインというか、ホイッスルブローイング・システムというのを運営していますが、今、おっしゃった、上司に言ったが何もしてくれない場合がある。だから、社内の通報機関あるいは社外の窓口を設ける。この法律以前から企業によってはそういう機関を設けて運営しているわけです。そこがだめだったら行政機関に通報する、あるいは外に通報するということですが、企業としては、できるだけ問題が大きくならないうちに自浄作用を発揮させたい。それは企業のためだけではなく、全ての関係者のために、小さいうちに芽を摘んでいこうということで日々努力しているわけです。我々も制度のPRをかなり一生懸命やっていますが、それでもアンケートをとると、社員の半分ぐらいは、「なかなか通報できない」というところが本音だと思います。
 だから、通報だけですべて不正がなくなるというわけでは決してなくて、制度の運営をかなり一生懸命やっていても、いろんなことを考えると半分くらいの社員はなかなか通報できない。また、私どもの例では、通報制度で上がってくるものはむしろ悩みの相談の方が数的には多い。実際に不正が発見されるのは、通報よりも、むしろ監査であったり、職制ラインの中で上司が見つけたりということで、大きな問題はむしろそこから発見されることが多い。法律を変えるなど改善を行うと、急に制度が全部うまく回り出すというものではないと思います。

○島田座長 他にいかがですか。
 よろしければ、その次の外部通報先の範囲。今のこととも関連しておりますが、第三者機関をつくってはどうかという話がございました。これについては、今、ここにおまとめいただいた意見以外にございますか。

○松村委員 一番下の「新たな専門の第三者機関を設けるべきではないか」ということに関連しますけれども、私はそういった機関が必要ではないかというふうに考えます。補足の理由としましては、また後の方で出てきますけれども、中小企業の場合には、規模が小さいとか、資金力の問題で、個々の企業が個別にそういった窓口を設けることが難しいと思いますので、何か国の制度で、そういった第三者機関を設けることがよろしいのではないかというふうに思います。
 先ほどから、公益通報事実の判断が一般の方にとっては難しいという問題がありますので、通報の第三者機関とは少し外れるかもしれませんけれども、そういった公益通報事実に該当するかどうかだけのアドバイスを気軽に相談できるような機関と。今、弁護士会でもそういった相談には対応していまして、これは規模もそんなに大きくないですし、弁護士会の負担でやっているものですが、そういったことを公の機関として設置できれば、かなり公益通報の周知・普及に役立つのではないかと思いますので、検討していただければと思います。

○島田座長 どうぞ。

○三木信夫委員 大阪市が全国で一番公益通報が多いというのも、第三者機関、公正職務審査委員会というのを設置して、外部の有識者の委員会が独立して、そこで公益通報の内容を審議・調査します。それが通報者の方の安心感といいますか、信頼感を得ていまして、通報されている。また、行政機関も、その第三者機関の勧告や意見についてはそれを尊重して、違法な行為あるいは不適正な行為の是正を行うということがございます。これについては、公益通報者保護制度を実効性あらしめるという意味においても、事業者内部に通報するにしても、その通報先は第三者のところ、あるいは、その第三者の方で判断していただくという仕組みを導入されてはどうか。費用とかコストの問題もありますでしょうけれども、その辺りは、実際運用した実績から言って非常に有効な方法であろうというふうに確信しております。

○島田座長 どうぞ。

○土田委員 今の点に関してですけれども、通報先として、民間の場合と行政の場合で区別するということは、あり得るのかなというふうに思います。今、三木委員から、大阪市の場合は第三者機関が非常に有効だという御指摘をいただきました。大阪市ぐらい大きな団体であると、そういった機関を設けることもそれほど負担ではないのかもしれませんが、多くの小規模な自治体では、やはり負担というのはあり得るのかなというふうに思います。また、負担だけの問題ではなく効率性の問題もあろうかと思います。
 一体どういう形で、そういった通報先を新たに設けた方がいいのかということを考えた場合、新しく任意の機関としてつくるということはあり得ますが、従来の法制度にのっかって利用できるものは利用するという観点からすると、自治法上は「機関の共同設置」ということも制度的にはあるわけです。機関の共同設置ということだと、公平委員会とか教育委員会などが従来運用としてはあったわけですが、そういった従来の制度を使うか、使わないか、使わずに新しい機関を任意で置くというのも一つあり得るでしょうし、自治法上の制度を使って、規模の小さいところは協力して共同設置することもあり得えていいのではないかというふうに考えております。

○島田座長 公平委員会とかは、組織法上、一応共同設置というのが入っていますね。もしこういうのをつくる場合は、そういう根拠法をつくらなければならないということになるのですか。

○土田委員 自治法上の252条の7だったと思います。ちょっと正確に覚えていませんが・・・。たしか自治法上の規定を使う場合は、法定機関だけではなく、任意機関の場合も可能というのがコンメンタール等の解釈だったと思いますので、そういう制度を使うことを考えてもいいのかなという気はいたします。ただ、そうすると若干組織形態として重いかなということも、他方で言えるのではないかというふうに思います。

○島田座長 ありがとうございました。行政機関については一つの示唆だというふうに思います。

○三木由希子委員 完全な外部通報に関しては先ほど来御議論されていますけれども、市民の立場から考えて、何か問題があるということがわかって、それを通報して、通報した相手がそれを適切に取り扱うというか、調査も含めてきちっとできるということが重要です。単に伝えるだけではなく、伝えた先が適切な対応をとり得るということが重要なのだろうと思います。
 そうなると、一般的な広い意味での第三者機関がどういうイメージになるのかというのが、ちょっとイメージとしてわかない。第三者機関といったとき、例えば行政機関に関しては、行政に通報するということになると、行政は職務範囲の中の何らかの権限によって調査等を行うことになると思いますけれども、完全に民間とかそういう場合になったときは、どういうような第三者機関ということが考えられるのか。外部でも、行政機関としてどういうふうな権限とかそういうものがあるのかなということが、何となくまだストンとイメージが落ちないというところです。
 もう一つは、これは法律の導入時の議論としてもあったのですけれども、相談なのか、通報なのかというのが、通報者にとってわかりにくいという話は何度か議論があったように思います。弁護士に相談する場合は、守秘義務等があるので大丈夫だろうというお話だったと思いますけれども、例えばこれが公益通報の対象になるのかどうかとか、通報した場合にどうなのかとか、そういうことについて具体的な内容を相手にお話しした場合に、それが外部通報になるのか、それとも相談の範囲で、特に通報ではないのかというところで、法律だけ見るとそこがわかりにくいというところがあったかに思います。ですから、例えば一定の立場の人に対する相談については、通報とかそういうことではないという扱いがもし法律の中で何らか書けるのであれば、そういうことも一つは検討の要素かなというふうに思っております。

○島田座長 少しお話が広がっていたのでわからないところがありますが、要するに、相談したことを理由として不利益取扱いということも考えた方がいいと、こういう御趣旨ですか。

○三木由希子委員 相談をすることが外部通報という扱いにならないか、ということなのです。不利益の扱いになるかどうかというのはまた別ですけれども、例えば外部ではなくて、どこかに相談した後に内部で通報して不利益扱いを受けて、実はここに相談していましたということがわかったときに、外部通報を内部にする前にしていたという扱いにはならない、ということができないのかなと思うのですが。

○島田座長 労働者の場合、職務上の守秘義務を負っています。これは判例もあって、弁護士の方は守秘義務を持っていますから、ここに相談するのはいい。ただ、そうではないところに一般的に相談するということになって、そこでそれ以上広がらなければ問題はないのですが、そこから広がるということになると、それは多分、守秘義務違反という問題が発生するので、それを一種の通報と見て義務違反を免責させていくわけです。それで内容の真実性とか何とかという議論をしていくと思うので、そこのところはいろいろ慎重に考えた方がいいのかなということだと思います。

○三木由希子委員 恐らく相談相手というのは、守秘義務がある相手とか、免責をするのであれば、ある程度相手を絞るというか、相手の立場を絞る必要はあると思っています。

○島田座長 わかりました。そうすると、仮に何か新しい機関をつくった場合に、そこにかなり守秘義務をかけていくとか、そういう話になりますか。

○三木由希子委員 新しい機関かどうかという議論と相談というのは、別の議論として考えていたのですけれども、一つは、相談という形になった場合に、今の法律の中だと、相談ということがどういう扱いになるのかというのが実はよくわからない。一定の立場、例えば守秘義務のある弁護士とか、そういう立場の人に対して相談した場合については、具体的な事実まで含めて述べた場合でも外部通報には当たらないとか、そういうことを法律に書くのか、それとも別の形にするのかわからないですけれども、そういうことも通報をしやすくするという意味では大事かなというふうに思っています。

○島田座長 十分整理できていないかもしれませんが、弁護士の方に対する相談を理由として、それが労働者の守秘義務に反するかというと、多分それは反しないという整理だと思います。確かに通報と相談をどう考えるかというのは、議論はありますから、そこの中で整理をしたいと思います。

○大杉委員 行政機関に通報するときは真実相当性が要るのですけれども、そうではない外部のときのプラスアルファがありますね。しかし、外部の機関といっても、何度も言いますけれども、イエロージャーナリズムと、かなりしっかりしたところがある。例えば日弁連でやっているところは、弁護士は守秘義務がある。さっきの地方自治法252条の7だったと思いますけれども、ああいうふうに法律で制度をつくってしまうのとまた別に、民間でやっているけれども、かなりクオリティが高い相談窓口については、行政機関に近い要件で通報が保護されるようにする。それは法解釈なのか、法改正なのか、よくわからないのですけれども、そういう方向の整理ができないかというのが1点です。
 もう一つは、通報ではなく相談だと思って行っていても、この法律上は通報に当たる場合が少なくありません。従業員にとって、まだ真実相当性とかそういう段階ではなく、通報したいという強い意欲があるわけではなく、もやもやした状態にあって、自分にはどういうオプションがあるのか、仮にもしこれ以上のシリアスな事実を知ってしまったときには自分はどこまで行動できるのか。こういうことに関して早い段階で相談したいというニーズがある。そういう通報の段階に至っていない相談の案件を、クオリティの高い民間の相談窓口のようなところがどのように扱うことが推奨されるのか、ということに関して簡単なガイドラインがあると、それが法解釈に反映する可能性がある。勿論、相談は無条件に保護しろと言っているわけではないのですが、早い段階の相談を、あるところまで安心できるというのが非常にありがたいのではないかなと思いました。

○島田座長 わかりました。帝人さんも多分そうだと思いますが、企業では、受け付ける段階というのはワンストップサービス的に相談から何から全部受け入れて、そこを整理して次の段階に進めていくというのをやられていて、そういう機能を、言ってみれば外部通報というレベルでもつくってはどうかと、そういう御示唆なのかなと。

○大杉委員 クオリティの高い消費者保護団体がやっている相談窓口が、法解釈上、企業の内部への通報に該当するのであれば、問題はないわけです、もともと保護要件のハードルが低いので。これが企業の外部への通報ということになると、保護のハードルが一気に上がってしまう。もちろん、むやみに保護の範囲を広げようというわけではなくて、企業の利益が害されない範囲でというための配慮は必要だと思いますけれども、相談の段階で、「通報」に関する硬い解釈をそのまま当てはめるといささか酷ですので、一定のプロシージャー、当該機関(相談窓口)における取扱いの手順が合理的に定められていれば、外部通報の適法性要件が原則としてあったものとみなされる、というふうな整理をしたいということであります。

○島田座長 弁護士さんがやっていただければ、そこは問題が一番整理できますけれども、そうはできないでしょうから、その団体のようなところを例えば行政が認定するとか、そういうことを含めてですね。わかりました。
 どうぞ。

○山本委員 法律制定前に、大阪に民間の公益通報支援センターというのがあり、弁護士さんなどがメンバーになっていて、自分たちがいろいろな不祥事について相談を受けるという活動をしていたのですが、この法律ができた途端、活動をほとんどしていない。それはなぜかというと、形式的に外部通報に当たってしまう。そうすると、気楽に相談を受けられないという形になったわけです。外部通報の要件が重くなっていて、どうしても反対解釈をされるというおそれの中で、外部通報の要件を満たさない限り、そういうところに相談してしまうとそれを理由に解雇されてしまう。その場合、公益通報者保護法の公益通報に当たらないから保護されないという、悪循環を生んでしまうということが根本的な問題としてある。その中で、そういったところへの相談というのは通報に当たるのかどうかというのが、法制定時にも議論があったというふうに私は認識しています。
 そういう意味で反対解釈を許さないといいますか、これまでの制度を運用する、いろいろな保護はそのままだということを強調することは必要ですし、それとともに、先ほどから言っていますように、外部通報の要件として一般的な要件を課すその通報態様で保護されますという、これまでの制度の確認のような規定をしっかり置いておくことによって、そういった不利益や反対解釈に対する敏感な反応とかそういうものがなくなっていくのではないかというふうに思っています。

○島田座長 わかりました。

○吉村委員 話が少し戻ってしまって申し訳ないのですけれども、確かに大阪市さんのような規模の大きい先進的な自治体は、第三者機関という視点も必要かと思います。半面、小規模な自治体のおよそ50%がまだこの制度を導入していないという状況で、そういった未だ対応できないでいる団体についてもこの議論の中でいろいろ考えていただけるようお願いしたいと思います。

○島田座長 わかりました。
 予定された時間がかなり限られてまいりましたけれども、今日、全部やらなくても、次に少し回ってもよろしいですか。

○原事務局長 あと、6、7、8、9ですけれども、8は運用、9はその他ということで、6についてはかなりたくさん御意見を出させていただいておりますので、6について御意見をいただきたい。

○島田座長 では、大変恐縮ですが、6番、7番、8番、9番を通して、確認的な御発言というよりは、ここには一応書いてあるけれども若干補足した方がいいというのは、事務局にもお寄せいただくことを含めて、ここには盛られていないところ、あるいは、これはまとめ方として真意とは違うというところを中心に、御発言をちょうだいできればと思います。

○仲田委員 仲田でございます。本日配付いただいた渡邊委員からの資料にもございますが、やはり一番大きな問題は、中小企業において保護制度の認知度が非常に低いということであり、危機感を持っています。この資料にもございますとおり、周知・広報について今後どのような対応をとっていくのかという観点も、これからの論議として必要であると考えています。
 我々連合としては、むしろ労働組合のない中小企業においてこそ、このような制度の普及が重要だと考えています。つきましては、中小企業の普及・促進のために、実現可能性はわかりませんが、例えば内部通報制度が設置できないような企業については、外部通報の要件を引き下げたり、現在のガイドラインの実効性を高めたりすることの検討も必要ではないかと思います。
 ここで、本日即答でなくても構いませんが、所管庁である消費者庁に伺いたいことがあります。例えば中小企業向けのガイドラインを新設する場合に、導入を促すためには現行のガイドラインのどの部分を、どれぐらいの範囲まで緩和するのであれば耐えられるのかという観点、中小企業という範囲をどの程度の規模で線引きするかという観点、更に、窓口設置を促進するために、どのような周知方法が考えられるのか、教えていただければと思います。

○島田座長 かなり大きな議論も含まれておりますので、御回答は次回にということでよろしゅうございますか。

○仲田委員 はい。

○島田座長 では、消費者庁は今の御質問を後で確認していただいて。
 他にいかがでございますか。

○三木信夫委員 6の(1)の通報を受けた行政機関のとるべき措置のところです。行政機関に通報したが反応がないとか、調査してくれないというのは確かにありますが、行政機関としましても、例えば特別養護老人ホームを設置している社会福祉法人で不正があるという通報があった場合も、社会福祉法に基づく調査を行政機関がその法人に特別に行うことは、当該法人にとっては非常にダメージになります。そういったことから、どうしても慎重になります。通報対象事実との関連もありますけれども、これが果たして、社会福祉法で規定する罰則をもって処罰するような行為に当たるのかどうかというのが、非常に判断が難しいところが、実際問題、運用の現場としてはあります。
 また、社会福祉法でもこの調査については、犯罪捜査のためとみなしてはならないと解釈されていたと記憶しておりまして、どうしても謙抑的にならざるを得ない部分があります。公益通報者保護法10条に、通報があった場合は「行政機関は、必要な調査を行い」というところがありますが、その調査の範囲とか基準とか、そのあたりをもう少し明確にしていただいた方が実際の調査がやりやすいという形がございます。

○島田座長 他にいかがでございますか。

○山本委員 最初に申し上げたことですけれども、今回の論点整理に入っていないので確認のために申し上げますが、いわゆる通報者にとって何が一番壁になるかというと、後で事業者から損害賠償されることです。事業者にとっての損害賠償の負担と、個人の一通報者がそれによってこうむる負担というのは、はかり知れない差があります。そういう意味では民事での損害賠償に対して、救済といいますか、損害賠償を制限する民事免責というものは、この制度を実効化するためには必要なものであると考えていますし、諸外国の法令でもあるような刑事免責までも検討できたら、というふうには考えています。

○島田座長 多分、刑事免責以上に難しいでしょうね。わかりました。制裁というか、効果のところですね。それは、先ほど言った通報対象者の範囲と密接にかかわる問題だと思います。そこは効果のところで入れておいてください。
 他によろしいですか。

○土田委員 現行法は行政機関がとるべき措置を10条で定めております。前回の議事録を拝見させていただくと、裁量が広いとか、狭いとかいったような議論がございましたけれども、この条文だとどちらかといえば広いのだろうと思います。ただ、そこを補うような形で国のレベルではガイドラインが定められているわけです。この間に、そのガイドラインに基づいて公益通報の処理というのは行われてきている。その中で先ほど三木委員の御指摘にあった問題というのは、実体要件、すなわち通報対象事実に該当するかどうかの判断が難しいから、そこを何とかという御指摘だったと思います。それはそれで確かに問題になると思いますが、ガイドラインの中でも手続に関するルールについては、ガイドラインから一歩上に引き上げてもいいのではないかという気がしております。
 具体的には、例えば標準処理期間だとか、あるいは、措置をとらないことについての理由の提示だとか、こういったものについては、運用上この5年間で問題がないということがわかっていれば、10条の内容をもう少し具体化してもいいのではないかと思っています。また、そういった手続的な点について改めて書き加えることに、それほど大きな支障はないのではないかという気がしております。

○島田座長 施行規則というよりは、もう一つ上げて法文の中にという意味ですか。

○土田委員 そうです。実際に同様の規定は、例えば国と国民の間であれば行政手続法の中にありますし、国と地方公共団体の関係であれば、自治法の中に同様の規定がありますから、比較的そういった導入しやすいものについては、書き加えることが考えられてもいいのではないかと考えております。

○山本委員 今の点に関してですけれども、つい最近、私が確認したのは、朝日新聞社のインターネットの記事でしたが、厚労省が自治労共済の自動車共済に関する公益通報について、通報を放置していた。更に、事業者に対して通報者の名前や通報内容を伝えていたということが記事に載っていました。こういった実態も鑑みた場合に、やはり行政機関がとるべき対応について法文に明記することは必要ではないかと思っています。個人的には私は、例えば情報公開法ですと、30日で対応する、差し支える何か事情があったら更に30日延期できるとか、そういった規定がありますし、そういったことを盛り込むことは可能だと考えています。

○大杉委員 通報する人が期待しているのは、例えばどこそこの企業が違法なことをやっているので、行政が立入調査をし、場合によっては行政処分まで下る。人間であれば、そういう立ち入り調査や行政処分をテレビのニュースとか新聞で見て、自分が溜飲を下げたいと思うと思います。けれども、いざ行政が調べてみると、通報とは大分違うとか、あるいは、行政処分を下すことはできても、その事実を公にすることがためらわれるようなことは当然ある。通報する人が主観的に求めているものと、行政庁が実際になし得ること、なすべきことの間には、実はかなりギャップがある。さっき山本委員が挙げられた厚労省の例は、恐らくかなりひどい例だと思いますけれども、そういうのは、土田委員が言っていたように、標準化とか、一定の道筋を示すという法改正に反対するものでは勿論ないのですけれども、通報してきた人の主観的な満足が得られるというのを目的にしてしまうと、余り現実的ではないのではないかという印象を持っています。
 通報する側も、自分のアイデンティティを隠して匿名でやる場合もあるはずで、そういう人に対しては行政も処理状況を伝えようがない。例えば行政庁として調査をして一定の処分をその企業に対して行ったということを、問い合わせてきた人に答えるとか、行政庁の方からお知らせできることだけお知らせしたいと思っても、匿名だと知らせようもない。そういうときは、例えばですけれども、4けたの整理番号を2つ渡しておいて、その番号を電話で言ってくれれば何か教えるといった処理の仕方はありえないではないですが、通常は本人確認が難しいという問題が生じる。自分が保護されたい、従業員として解雇されそうになっているという部分においては、保護を厚くすべきでしょうけれども、内部者ではない人があの企業は悪いことをしているから行政処分してくれというのに対して、官庁ができることにはしょせん限界があります。このことは、その人たちには気の毒ではありますけれども、我々が議論をするときには共通の認識を持っておいた方がいいのかなというふうに思いました。

○島田座長 ありがとうございます。
 お時間ということもございますので、もし特段なければ一応議事はと思います。ただ、6番以降いろいろな御意見がありましたので、もし何か補足したいということがございましたら、事務局に御連絡をいただくということで、申し訳ございませんが、お許しいただきたいと思います。
 それでは、この議論を踏まえまして、次回は更に議論を深めたいということで、とりまとめの方向も含めて議論することになろうかと思います。

≪4.閉会≫

○島田座長 最後でございますが、事務局より、次回以降の日程等について報告があるということでございますので、お願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。日程に入る前に一つ御報告させていただきます。
 前回、農林水産省からの御説明の中で、農林水産省の内部規程に基づき、公益通報や内部告発などの情報について、「消費者の部屋」で対応するという体制がとられていることが報告されました。これに対して席上、消費者委員会の担当委員である中村委員から、「消費者の部屋」は発足以来、農林水産に関する情報を消費者に提供する窓口、あるいは消費生活アドバイザーといった方々が消費者相談をやっておられる窓口という印象を持っており、アドバイザーの方たちがそのような対応をできるだけの訓練を受けておられるのか。そのような窓口が公益通報の窓口になっていると言われても、農林水産省へ公益通報が届くのか、あるいは、公益通報の窓口としてアピールして、「消費者の部屋」が兼務するような形というのは、国民にとってわかりにくいのではないかという御指摘がありました。
 この点につきまして、農林水産省から以下のとおり御連絡をいただいております。資料をお付けしておりませんが、1点目として、実際に公益通報の情報がもたらされた場合の対応は、原則職員が対応されているということで、情報管理や担当部局との連携とか、そちらへの円滑な移行の上で支障が生じることはないとのことでした。
 2点目の消費者相談を受ける「消費者の部屋」が公益通報の窓口を兼ねることについてですけれども、国民の意見を広く聞き迅速に担当部署へつなぐという役割も担っており、窓口の一本化という観点から公益通報の窓口を兼ねているという御回答です。
 なお、農林水産省のホームページのトップページは、従来、外部の労働者からの公益通報を受け付けている旨のアナウンスは行っておられましたけれども、今後、よりわかりやすくするために、「消費者の部屋」のホームページ上のバナーリンクを設定するなど、更なる工夫をしてまいります、とのことでした。ホームページ上の更なる工夫の部分につきましては、そのように早速対応をとられたということを事務局としても確認しておりますので、御報告いたします。
 次に、資料としてスケジュールを付けておりますが、次回は11月24日の水曜日、16時からを予定しております。議題につきましては、今、座長からも御発言をいただきましたけれども、本日の議論を踏まえ、とりまとめに向けた議論をお願いしたいと考えております。
 1月25日は、もともと予備回としておりましたけれども、第8回として開催させていただきたいと思っておりますので、御予定いただけたらと思います。
 事務局からは以上です。

○島田座長 本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもお忙しいところをお集まりいただき、また、御活発な議論をいただき、ありがとうございました。

(以上)