第4回 公益通報者保護専門調査会 議事録

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日時

2010年9月13日(月)16:00~17:56

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、橋本座長代理、大杉委員、田井委員、仲田委員、野澤委員、松村委員、
 三木信夫委員、三木由希子委員、山本委員、吉村委員、渡邊委員
【担当委員】
 中村消費者委員会委員長代理、日和佐消費者委員会委員
【説明者】
厚生労働省 加藤労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、
近藤大臣官房総務課行政相談室専門官
農林水産省 船田消費・安全局消費者情報官補佐
消費者庁 福嶋長官、成田企画課長、米田企画課長補佐
 
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.公益通報者保護制度の運用状況について
・労働組合における公益通報への対応事例について(仲田委員ご報告)
・労基法等関連の公益通報について(厚生労働省ヒアリング)
・行政機関の外部通報窓口の対応について(厚生労働省、農林水産省ヒアリング)
3.福嶋消費者庁長官挨拶
4.諸外国の公益通報者保護制度に関する動向調査の結果について
5.公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について
6.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:41KB)
【資料1】 厚生労働省提出資料「申告受理件数と公益通報受理件数の関係について」 (PDF形式:44KB)
【資料2】 厚生労働省提出資料「厚生労働省公益通報の状況」 (PDF形式:35KB)
【資料3-1】 農林水産省提出資料「農林水産省における公益通報の処理手順(外部からの通報)」 (PDF形式:45KB)
【資料3-2】 農林水産省提出資料「農林水産省公益通報に関するガイドライン」 (PDF形式:113KB)
【資料4】 消費者庁提出資料「諸外国の公益通報者保護制度の概要」 (PDF形式:110KB)
【資料5】 消費者庁提出資料「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」 (PDF形式:222KB)
【資料6】 「公益通報者保護専門調査会 今後のスケジュール」 (PDF形式:51KB)


≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
 ただいまから第4回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。本日は所用により、大村委員と土田委員が御欠席です。消費者委員会担当委員の日和佐委員は、17時ごろからの参加予定になっております。
本日途中で、このたび消費者庁長官に就任された福嶋長官にごあいさつをいただく予定にしておりますので、そのとき随時、また御案内をさせていただきます。
 それでは、議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第の次のページに配付資料一覧ということで、資料1から資料6まで準備をしております。
 資料1と資料2が、厚生労働省の提出資料。
 資料3が、農林水産省の提出資料。
 資料4が、消費者庁の提出資料ということで、これは諸外国公益通報者保護制度の調査をされましたので、その概要ということ。
 資料5として、同じく消費者庁の提出資料ですが「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」です。
 最後に資料6として、今後のスケジュールについて1枚で提示をしております。
 配付資料は以下のとおりですけれども、審議の途中で過不足等がございましたら、事務局までお申し出いただけたらと思います。
 それでは、島田座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

≪2.公益通報者保護制度の運用状況について≫

○島田座長 議事に入らせていただきます。この間、3回にわたりまして公益通報者保護制度の現状につきまして、法律・ガイドラインの概要を確認し、消費者庁及び旧内閣府国民生活局の取組みを通じた把握を行い、そして、運用状況について企業の取組み、労働組合・弁護士会による民間の相談窓口等の取組み、それから、地方自治体における取組みを通じて把握を行ってまいりました。
 本日は、公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点についての御議論をいただく予定でございましたが、その前に、この間の運用状況の把握において質疑のあった部分について確認を行っておきたいと思います。

(1)労働組合における公益通報への対応事例について(仲田委員ご報告)

○島田座長 まず、前回の専門調査会で仲田委員から、労働組合につきまして公益通報の対応事例についての御発表をいただきましたが、席上質疑がございました事項について追加の御報告をいただけるとのことですので、お願いしたいと存じます。
 それでは、仲田委員の方からお願いいたします。

○仲田委員 ありがとうございます。前回の専門調査会において御質問いただき、持ち帰り調査させていただく旨を申し上げていた件について若干説明させていただければと思います。
 まず1点目ですが、労働組合が公益通報窓口として指定されている例はあるかという御質問をいただいたかと思います。
 お恥ずかしい話でございますけれども、連合内で具体的なアンケートを行ったことはないのですが、当時の国民生活局が実施した、平成20年度の民間事業者における通報処理制度の実態調査によりますと、通報受付窓口を社内外もしくは外部のみに設置しているというふうに回答された企業1,213社中で、38社においては通報窓口を労働組合に設置していると回答されております。残念ながら、固有名詞についてはわかりませんが、数は少ないものの、指定されている先はございます。
 次に2点目ですが、公益通報に関する労使協定はあるのかということ、また、実際に労使交渉に入った例があるのかという御質問をいただいたかと思います。
 これも具体的なデータがあるわけではございませんが、労使協定自体につきましては、私、損害保険会社でございますが、私の出身会社を含めて、大きな会社を中心に比較的多くの企業において、通報者の保護についての協約が結ばれています。
 一方、労使交渉に至ったケースでございますが、こちらの方は、残念ながら把握できておらず、今後の課題となっています。
 ありがとうございました。

○島田座長 ありがとうございました。それでは、今の仲田委員の御報告につきまして何か御質問・御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、仲田委員、どうもありがとうございました。

(2)労基法等関連の公益通報について(厚生労働省ヒアリング)

○島田座長 次の点に移らせていただきます。これは前々回の専門調査会でございますが、消費者庁の方から行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査等の結果の御報告をいただいた際に、労働基準法等に基づく労働基準監督署に対する通報としての、この調査結果に記載されている件数と、労基署に対する全体の申告件数との間に乖離があることに関する指摘がございました。本日は、厚生労働省労働基準局監督課から加藤中央労働基準監察監督官にお越しいただいておりますので、この点について御説明をいただきたいと思います。
 それでは、加藤様、お願いいたします。

○加藤中央労働基準監察監督官 御紹介いただきました加藤でございます。それでは、資料1に基づきまして御説明申し上げたいと考えてございます。
 まず1番のところでございますが、平成21年もしくは平成21年度の受理件数につきましては、申告受理件数は年計で4万2,472件、公益通報受理件数につきましては年度計で4,346件と、3万8,000件ほどの差が生じておるところでございます。この差を生じておる原因でございますけれども、これはいわゆる退職労働者の取扱いの差から生じているものでございます。
 申告受理件数につきましては、労働基準法の第104条に基づきまして、事業場に、労働基準法に違反する事実がある場合におきましては、労働者は、その事実を労働基準監督機関に申告することができる旨、規定されているところでございます。
 ここで言う労働基準法第9条の「労働者」には、法解釈上、退職労働者は含まれておりませんで、同条は現に使用されている労働者に申告する権利を保障したものというふうに考えておるところでございます。しかしながら、申告受理事案には、賃金不払いのために退職した労働者からの申告、これは例えば賃金不払いの被害をこうむった労働者が、被害の拡大を恐れて、直ちに退職した後に申告に及ぶといったものであったり、在籍している間にはいわゆる賃金不払い・遅払いというものに対して我慢していた者であっても、退職を契機として申告に及ぶといったようなものでございますけれども、このような申告事案でございましたり、解雇予告手当の支払いなく即時解雇されたというような労働者からの申告事案が多いという現状にございます。
 したがいまして、これを現に使用されている労働者と区別いたしまして、申告を受理しないということになりますと、実質的な労働者の保護に欠けると考えておるところでございまして、労働基準監督機関におきましては、既に退職した労働者につきましても現に使用されている労働者と同様に申告として受理する取扱いを行って、監督権限行使の契機とすることにより救済を図っているところでございます。したがいまして、この申告受理件数には既に退職した労働者によるものが多数含まれておるというところでございます。
 他方、公益通報者保護法による保護を受ける通報者としての労働者につきましては、労働基準法第9条と同義でございまして、現に使用されている労働者のみが対象でございます。退職労働者は対象とされていないというところでございます。
 したがいまして、平成21年度の公益通報受理件数には、既に退職した労働者のものを含めていないというところでございます。
 このため、労働基準監督機関が申告として受理した事案には、退職労働者からのものが多数含まれているということから、それを算入しない公益通報受理件数との間に差異が生じているというところでございます。
 ありがとうございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明につきまして御質問・御意見のある方は御発言をお願いいたします。
 よろしゅうございますか。

○山本委員 山本です。細かい話で申し訳ないのですが、退職者からの申告の中で、雇用期間中に公益通報したことによって不利益を受けている。例えば退職金が不払いになっているとか、そういった相談はどのように扱われるのでしょうか。

○加藤中央労働基準監察監督官 公益通報したことによる不利益ということになりますと、公益通報の中のお話になるかと思いますけれども、労働基準法の中にも、御案内のとおり、労働基準監督機関に申告したことをもって不利益取扱いということは労働基準法上で禁止しておりますので、申告処理の中で、そのような事案があれば指導してまいるというふうな対応になるということでございます。

○島田座長 どうぞ。

○山本委員 そのような場合は、この公益通報の事案にカウントするのか、しないのかということですが。

○加藤中央労働基準監察監督官 そのような場合も、公益通報に該当するということであれば、現に使用されている労働者であればカウントするということになろうかと思います。

○島田座長 よろしゅうございますか。

○山本委員 はい。

○島田座長 他にいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 どうもありがとうございました。

(3)行政機関の外部通報窓口の対応について(厚生労働省、農林水産省ヒアリング)

○島田座長 それでは、次の点に移らせていただきたいと存じます。これまでに行政機関のうち地方自治体における運用状況について御報告をいただきましたが、府省庁の運用状況についても把握することが有用であると思われますところから、本日は厚生労働省、農林水産省の外部通報窓口の統括部門の方にお越しいただいております。
 まず、厚生労働省大臣官房総務課行政相談室の近藤専門官からお願いいたします。

○近藤専門官 御紹介をいただきました近藤でございます。資料2に基づきまして、厚生労働省の公益通報の状況について御説明をいたします。
 まず、私ども厚生労働省内での通報受付態勢の状況でございますが、こちらにつきましては内部規程を定めておりまして、「厚生労働省における外部の労働者からの公益通報に対する事務手続きに関する訓令」でございます。この中で窓口の設置、窓口が行う業務、所管課が行う業務など、公益通報に関する事務について定めているところでございます。これはあくまでも本省についてのものですので、地方につきましては別途、地方が行うべき事務手続に関する通達を出してございます。
 「(2)通報窓口と相談窓口の設置状況」でございますが、厚生労働省の窓口は大臣官房総務課行政相談室に設けてございます。こちらで、各所管部局に直接通報が行くものは別として、メール、電話等について受付をしているところでございます。
 「(3)公益通報以外の通報の取扱い状況」でございますが、受け付けた相談や通報につきましては、公益通報者保護法、それから、私どもの訓令に定められた公益通報の要件、労働者かどうかというところがポイントになりますが、そのような要件を満たしているかどうかを判断いたしまして、公益通報の要件を満たしていないというものにつきましては、情報提供という形で受け付けてございます。
 「(4)職員への周知」でございますが、私どもは4月に人事異動が多いのですが、そういう大量の職員の異動等があった場合に、公益通報制度の適切な運営に資するということで、事務連絡を発出いたしまして、公益通報制度の周知徹底を図ってございます。
 公益通報の制度につきましては、ごらんになった方もいらっしゃるとは思いますが、私どものホームページにも掲載しておりまして、内部の職員だけでなく外部の方への情報提供等も行っているところでございます。
 それから「2.省内での通報処理状況(平成21年度の状況)」でございます。
 私どもが公益通報として受理した件数は約4,500件で、この中には地方部局の分が含まれておりまして、厚生労働省の状況で申しますと、先ほど私どもの労働基準局の担当が申していたとおり、そのほとんどが地方で、しかも労働基準監督署の案件が多数となってございます。
 受け付けた後の処理状況でございますが、こちらにつきましては、公益通報として受理したもののうち、まず調査に着手した件数が約4,100件。そのうち措置を講じた件数が、処分や勧告に至らなかった助言等も含めまして約3,300件ございます。こちらもほとんどが地方部局の案件でございます。公益通報として受理した場合、その後の措置の状況につきましては、通報者にその旨、連絡をしているところでございます。
 それから、通報の受理から処理の終了までにかかる標準処理期間でございますが、これについては特に私どもで定めてはおりません。ただ、実際に処理に当たった事例を見ますと、2~3か月間ぐらいの期間を要してございます。
 最後になりますが、公益通報関係の処理に当たっての資料の保存期間でございますが、こちらは5年ということで保管をしてございます。
 以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。時間の関係もございますので、御質問・御意見は農林水産省からの御説明をいただいた後でまとめてお願いしたいと思います。
 それでは、続きまして、農林水産省消費・安全局の船田消費者情報官補佐からお願いいたします。

○船田消費者情報官補佐 農林水産省では「消費者の部屋」というものを設置しておりますけれども「消費者の部屋」を担当しております船田と申します。私の方から、農林水産省における公益通報情報の処理体制を御説明したいと思います。
 まず、農林水産省では、お配りした資料の3-2で内部規程といいますか、これは国のガイドラインに沿ったものと同じでございますけれども、「農林水産省公益通報に関するガイドライン」に沿って公益通報を処理しているというものでございます。これをずっと説明すると時間がかかってしまいますので、お配りした資料3-1の方の処理手順というものがガイドラインに沿った処理手順の概要を示したものになります。
 厚生労働省と同様に、国のガイドラインに沿ってやっておりますので、まず窓口の設置でございますけれども、農林水産省の場合ですと、公益通報保護法ができる前から消費者相談を受ける窓口を設置しています。これは昭和59年に最初に「消費者の部屋」を本省に設置しまして、それ以降、昭和63年に地方農政局・農政事務所にも消費者相談を受け付ける窓口を設置しています。これまで公益通報といいますか、内部告発などの情報については、外部からの情報について、一応「消費者の部屋」で一元的に受け付けるという体制を取っているところです。
 公益通報以外の取扱いについては、公益通報者保護法が決まってからガイドラインをつくったのですけれども、従来から消費者相談の相談要領というものがございまして、ガイドラインとほとんど同じ処理の手順で、受け付けた相談については常に迅速に相手方に返していく方針で処理しているところでございます。
 それから、農林水産省のホームページがございます。そこでは公益通報の窓口は「消費者の部屋」で受け付けていることを公表しています。また、このガイドラインについても公表しているところでございます。公益通報については、相談窓口の専用電話、手紙等が届くということも想定されますし、メールでも受け付けています。
 相談件数ですけれども、今回、資料にはお示ししていないのですが、平成21年度、消費者からの相談は年間約7,400件程度で、これは全国での受付件数でございます。そのうち情報提供といいますか、公益通報に該当する、該当しないは別としまして、情報提供的なものがそのうちの400~500件を受け付けております。
公益通報者保護法として法律に合致するものとして受理した過去の実績ですけれども、農林水産省として受け付けたものは平成18年に1件、平成19年に1件ということで、正式に受け付けた件数としては少ないというところでございます。
 ただ、情報として受け付けたものに対しては、それをほうっておくわけではなくて、随時、調査なりを実施いたしまして、場合によっては、農林水産省の場合はJAS法、食品の表示の情報提供というものが多いのですけれども、それに対して担当の方でしかるべき措置を取らせていただいているところでございます。どうしても食品の表示というものが情報提供として多いものですから、消費者相談の窓口とは別に食品表示110番という電話相談窓口も設置して、そちらの方でも随時、情報提供や疑義情報を受け付けている状況でございます。
 通報の受理から処理までの標準処理期間でございますけれども、資料3-1に書いてあるとおり、農林水産省のガイドラインとしましては、受け付けてから調査に着手、終了するまで大体3か月以内ということでやらせていただいております。特に表示関係のものについては更に、たしか1週間だと思いますけれども、1週間以内に調査に着手するように処理させていただいております。
 あと、最後になりますけれども、省内での通報関係の資料の保管ということですが、これは農林水産省の文書管理規定に基づきまして、案件によりますが、大体5年ということになろうかと思いますけれども、どうしても個人情報が入ったようなものもありますので、その部分については随時削除していくという形で処理させていただいているところでございます。
 先ほども申しましたけれども、正式に受け付けた件数は少ないのですが、公益通報として受け付けたものについては、農林水産省では表示の監視体制を強化するなどして適切に処理しているところでございます。
 以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。

○原事務局長 議事の途中でございますけれども、冒頭に御案内いたしましたとおり、福嶋消費者庁長官にお越しいただきましたので。

○福嶋長官 消費者庁の議論に入ったところで結構ですので、どうぞ、切らずに続けてください。

○原事務局長 わかりました。お時間が大丈夫ということのようですので、よろしくお願いいたします。

○島田座長 申し訳ございません。少しお待ち願うということで、それでは、今、それぞれ厚生労働省、農林水産省の方から、行政機関における外部通報窓口の対応を含めた取組みについて御説明をちょうだいいたしました。御質問・御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。

○大杉委員 厚生労働省の近藤専門官に教えていただきたい点がございます。会社の従業員とか元従業員とか、労働者と言うべきなのかもしれないのですが、そういう方から厚生労働省の窓口に相談が来た。その相談というものが公益通報かもしれませんし、むしろ労基法の方の申し立てかもしれないというふうなときに、1件の申し立ての中に両方の要素が含まれていることは、私は十分あり得ると思うのですけれども、それは必ず入り口のところでどちらかに分類されて、両方に属するとして2件とカウントされるのでしょうか。それとも入り口で分類の上、1件というふうに処理される流れでしょうか。

○近藤専門官 先ほども申し上げましたが、私どものところが窓口でございまして、それぞれの内容を見た上で、例えば今、委員がおっしゃったように、1件の中に複数の案件があるというような場合に、それが1つの部局だけの場合につきましては、案件を所管している部局に情報を提供いたしまして、あとは担当部局で必要な手続・処理を行いますので、それが1件になるのか、2件になるのかというのは、私どもでは把握しておりません。

○大杉委員 例えば公益通報に関する通報があった。しかし、通報しているのは現在、会社との間に雇用関係はなくて、いわゆる元従業員であるという場合には、そこで言わば打ち切ってしまってということではないのですか。

○近藤専門官 いえ、それは情報提供として受け付けて、必要なら、例えばそれが深刻な法令違反とかにつながるような場合については、それについての事実確認を行っております。

○大杉委員 これはどうも公益通報の方の筋に属する通報らしい、というように事案の性質決定がされる場合であっても、法令上の公益通報に該当するためにはさまざまな要件を満たさないといけませんので、そのどれかを満たしていないという理由で、公益通報にはカウントできないというときに、その同じ案件の中の、労基法のもう一つの方の違反の申告として、また、署内でフィードバックといいますか、そちらの方に重点を置いて見ていくというような、またぐるっと戻るわけですけれども、そういうような処理が予定されているのでしょうか。

○近藤専門官 それもそれぞれの部局の業務のやり方になるので、申し訳ないですが、私はそこについては把握しておりませんので、お答えできません。

○大杉委員 わかりました。
 最後に1点だけなのですけれども、これもお答えが難しい質問であろうと推測しているのですが、公益通報者保護法は法令を500ほど限定列挙して、それに該当しているかどうかということを公益通報に当たるかどうかの要件として定めているのですけれども、具体的に通報があったとき、そこはお役所として、どこかの管轄のところで調べないといけないわけですね。それというのは、まず事務負担としてそういう制約があることは、プラスなのか、マイナスなのかということと、実際にやってみて、立法論としてそういう制約があった方がいいのか、ない方がいいのかということに関して、もし御意見といいますか、感触がお持ちであれば、最後の質問は農林水産省の船田消費者情報官補佐に関してもできればお願いいたしたいところなのです。

○近藤専門官 今、500幾つあるうち、私どもはその中の120ぐらい関係しているのですけれども、それが教示されていた方がやりやすいかどうかということですか。

○大杉委員 世間には開示されているのですけれども、通報する人はそれを見てということはまず考えられない。恐らく、限定列挙していることは余り合理的ではないと思っている方は多いと思うのですよ。

○近藤専門官 通報の内容に応じて、どのような法律に抵触する、関係してくるというのはわかりますので、その内容を見た上で処理をしております。

○大杉委員 それは、手続において特段の大きな負担を課しているとか、そういうことはないのですか。

○近藤専門官 ないです。

○大杉委員 わかりました。

○船田消費者情報官補佐 農林水産省の方でも、公益通報の該当する法律というものは、当然、担当の方で掌握しております。
 先ほども申し上げましたとおり、結構、農林水産省の場合、消費者相談の件数が結構あるものですから、公益通報といいますか、従前から、これは法律違反になるのではないかということがありそうな場合、常にそういった相談があったときには、他省に関するものでしたら他省と連絡を取りながら、これはどうでしょうかという相談をしながら進めるという形を取っております。
 それが特段、負担になるとか、そういったことは感じておりません。公益通報として受け付けなくても、この事案に対して法律違反になるのだろうということであれば、担当部局に回して、何らかの処置をしなければならないということで打ち合わせをしながら進めているところでございます。

○大杉委員 どうも、御回答ありがとうございました。

○島田座長 よろしいですか。
 それでは、どうぞ。

○野澤委員 野澤です。厚生労働省の近藤専門官にお聞きしたいのですが、全体の位置づけを知りたいのでお聞きしますけれども、平成21年度で公益通報として受理した件数は4,493件ですね。それで、この要件を満たさなかった通報で情報提供として受け付けたものは何件ぐらいあるのですか。

○近藤専門官 情報提供の件数については把握してございません。

○野澤委員 かなりの、これ以上という感じですか。

○近藤専門官 私どものところは窓口で、毎日いろんな情報が入ってきています。特に多いのは、メールですが、その中で公益通報の要件に全然該当しないのですが、要は通報という形で、例えばある飲食店でこういうようなことがあるので調べてくれというような通報とか、さまざまなものがまいりますので、その中で当然、先方に回答しなければならないものは、別に法にのっとるとかそういうことではなくて、例えばそういう案件でしたら、どこどこに御相談下さいというような形で応対をしております。
 そういうものについて、向こうからきちんとこれは公益通報ですという形で明示してきて受けたものについては、担当に確認すれば件数は把握しているかもしれませんが、情報提供という幅広い整理でいきますと、どのぐらいの数が来ているかというのは把握し切れていないのが現状でございます。

○野澤委員 専門官の主観で結構なのですけれども、要件を満たさない理由としてはどんなものが多いですか。

○近藤専門官 やはり、労働者ではない方からのものが多いと認識しております。

○野澤委員 農林水産省の方にもお聞きしたいのですけれども、相談が7,400件ぐらいですか。それで、そのうち平成18年は1件、平成19年が1件で、ほとんどが公益通報には該当しない相談ということですね。

○船田消費者情報官補佐 公益通報者保護法の言うところの公益通報に該当しないということで報告したのですけれども、情報提供ということで、先ほども厚生労働省の方がおっしゃったように、労働者の方でないとか、特に表示の関係では匿名の場合が多いとか、そういったことで、一応、法律の要件には合致しないということで報告させていただきました。

○野澤委員 要件に合致しないけれども、重要な相談とか通報というものはかなりある感じですか。そうでもないですか。

○船田消費者情報官補佐 そうですね。皆さん御存じのように、先ほども言いましたけれども、食品表示110番という形で結構、情報を受け付けています。その中で法律に違反するようなものについては調査して、農林水産省の場合は指示・公表という形で農林水産省のホームページで公表しています。食品表示110番のホームページを開設して、そこで情報を開示しているというところでございます。それなりに結構、件数は多いのではないかというふうに感じているところでございます。

○島田座長 どうぞ。

○三木由希子委員 まず厚生労働省の方に質問させていただきたいのですが、先ほどから出ている質問とも関連するのですけれども、要は労働者かどうかの差によって、公益通報か、そうではないか。法律に合致するものかどうかということの一つの区分がされるということなのですが、それであっても、要は法令違反とか重大な問題である場合は、情報提供として受け付けられているという理解でよろしいのですね。その場合に、通常の公益通報であった場合と、情報提供として扱った場合のフローは何か違ってくるのかということが1点目の質問です。
 あと、通報窓口を用意していただいているのですけれども、例えば業務や事業を所管している所管課に直接、相談や情報が行ってしまった場合はどういうふうに処理がコントロールされていくのかということです。この窓口に来ないと正規の行政内部でのフローに乗りませんということになりますと、法の趣旨からすると結構逸脱があるかなと思いますので、その辺はどういうふうに扱っているのかということが質問です。
 もう一点が、同じことで農林水産省の方にも質問なのですが、そうやって設けておられる窓口外に行ってしまった場合には、どういうふうな処分になっていくのかということをお聞かせいただければと思います。

○近藤専門官 それでは、まず1点目でございますが、こちらにつきましては公益通報とそれ以外の場合でフローが違ってくるのかというお話ですが、公益通報の要件を満たした場合、私どもの規定で、通報者に、標準で大体どのぐらい処理期間がかかるかということも明示しなければなりませんし、また受け付けた内容について、受け付けてから処理するまでの間、逐次フォローするということもございます。それ以外の情報提供の場合につきましては、努めるということでやってございます。どこまで部局がフォローしているかについては把握しておりませんが、公益通報という要件を満たしたものと、それ以外のものについて、多少フローが違っていることはあると思います。
 それから、もう一点の所管課に直接届いたという場合ですが、こちらについては私ども窓口で把握はできませんが、事務連絡の中で、窓口に来た場合、それから、直接所管課に行った場合についてどういう処理をするかというものはフローに示してございますので、先ほども申し上げたとおり、4月に人事異動等が行われた場合、そういうものを各職員に周知してございますので、各担当はその手続にのっとって処理していると理解しております。

○島田座長 ありがとうございました。

○三木由希子委員 済みません、農林水産省からも同じことをお聞きしたいのです。

○島田座長 ごめんなさい、失礼しました。

○船田消費者情報官補佐 農林水産省の方でも、窓口以外の担当課に直接通報が行った場合については、お示しした外部からの通報の処理手順の中に入っているのですけれども、公益通報として受け付けたものについては逐次、消費者情報官の方に報告願いたいというふうにガイドラインの方でもうたっていますし、そういった様式も定めて、逐次報告いただいているところでございます。
 そこに書いていますとおり、受け付けた公益通報なり情報提供についての進め方というのは、従来から農林水産省としては区別なく、法に沿った措置を講ずるといいますか、そういったものについては特段、公益通報である、なしにかかわらず、進めさせていただいているところでございます。担当の方でも、公益通報である、なしにかかわらず、きちんと進められているというふうに、こちらは承知しているところでございます。

○島田座長 どうぞ。

○三木由希子委員 済みません、公益通報者保護法に基づいて労働者が保護されるかという問題と、それから、もともと公益通報に該当するような問題があって、その問題がきちっと処理されるのかということと、2つの議論がどうしても起こってしまうので、今は、要は公益通報者として保護される人についてのお話ということで御説明いただいていると思うのですけれども、情報提供という中に公益通報する事実に該当するようなものについて、労働者ではない方から寄せられたときに同じように処理されるかというのが1つ、非常に関心があるところなので、そういう趣旨で質問させていただきました。それで、今のお話をお聞きすると、必ずしもそこは明確に担保されていないのかなと理解をいたしましたが、それでよいのかということ。
 あと、ごめんなさい、もう一点、農林水産省の方に御質問するのを忘れたのですけれども、文書管理規定上5年の保存で、個人情報については随時削除ということを御説明としていただいているのですが、確かに不要であれば削除ということもあると思うのですけれども、通報した後に何か不利益を発生した場合に、ここにこういう形でちゃんと公益通報者保護法に基づいて処理された案件だったのですということを、今度は不利益を受けた側が証明するような場合に、逆に個人情報がないと不利益になるようなこともあるのかなということを想像しまして、どれくらいで随時削除ということをおっしゃっているのかというのをお聞かせいただければと思います。

○船田消費者情報官補佐 農林水産省の方でよろしいでしょうか。

○三木由希子委員 はい。お願いいたします。

○船田消費者情報官補佐 個人情報につきましては随時削除というふうに申し上げたのですけれども、そこは確かにおっしゃるように、後々、裁判の問題等、いろいろあろうかと思いますので、削除するかというのはケース・バイ・ケースでとしか申し上げられないのですけれども、今までに受け付けた2件については、個人情報を全く削除しているかといいますと、公表はできないかもしれませんけれども、保管している部分はあります。
 どれほど保管するかは、農林水産省の規定でとしか、なかなか申し上げにくいところがあります。
 あと、1点目で、情報提供で受けたものの中に違反事例があったような場合にはどうするのですかということなのですけれども、農林水産省の場合は、その場合が多くて、それについては、例えば食品表示であればJAS法にもとづく違反があるかどうかを調査いたしまして、対処させていただいているというところでございます。
 以上でございます。

○島田座長 よろしゅうございますか。

○三木由希子委員 済みません、厚生労働省の方にも情報提供の件を御回答いただきたいと思います。

○近藤専門官 労働者か、労働者でないかということで、労働者でない、公益通報の要件を満たしていない場合についての情報の取扱いですが、その場合には、やはり情報の提供の仕方は、匿名でこういう事実があるということの場合が大半なのですが、それ以外にきちんと、名前なり住所、電話番号など連絡先をきちんとこちらに明示してきた方の場合については、公益通報に準じて、当然、情報提供者の保護ということを主眼にして処理を行っているところでございます。

○島田座長 どうぞ。

○大杉委員 これは質問ではなくて、先ほどの私の質問の補足といいますか、趣旨なのですけれども、先ほど私がああいう失礼な質問をした趣旨は、これは近藤専門官よりは、むしろ退席された加藤監督官がいらっしゃる間にお話しすべきだったのかもしれませんが、お話だけを伺っていますと、労働者か、元労働者なのかという点とか、公益通報なのか、そうではない通報なのかというところの区別が通報の処理にあたって出発点となる。
 ところが、入口のところできれいに分け過ぎていると、本来は公益通報の要件を満たしているものが途中で消えてしまったりとか、逆に公益通報ではないものが公益通報の窓口の方に入ってしまえば、後の処理フローの中で別の、公益ではないけれども、別に取り上げるべき要素があるのに、だめでしたねということでやはり消えてしまったりということがあるのではないか。もしそうだとすると、行政として必ずしも適切ではない対応が取られているのではないかというような気がしたので伺ったのですが、先ほどいただいた回答で、そういう問題は大きなものとしては存在しないという心証を得ましたので、大変失礼いたしました。

○島田座長 ありがとうございます。
 多分、厚生労働省の方のおっしゃったのは、労基法違反としての申告のうち現に使用されている労働者かどうかによって、公益通報かどうかを判断しているということだと思います。現に使用されている労働者の4,346件ということについても、要するに公益通報として云々というよりは、基本的に労働基準監督署に対する申告として、極端に言えば公益通報者保護法がある以前と同じように対応してきているという処理であると理解をしてよろしいのですね。
 ですから、私の理解では多分、公益通報ということと、労働基準法の先ほど出ていた104条に基づく申告に対する取扱いというものを分けてやるという実務ではないのであろうと思います。労働基準法以外の法律にも申告権を認めている法律が多いので、労働基準監督署だけではないわけですけれども、多分、そういう形での処理をされているのかな。したがって、労働者ではないところに関して重要な情報提供があれば、特に労働基準監督官の場合は司法警察と同じ権限を持っていますから、といいますか、ある意味ではそれ以上ですね。令状がなくても入れるということがありますから、そういう権限を必要があればお使いになってやるのだということでいいのかなというふうに伺ったのですが、少し違いますか。

○大杉委員 ただ、公益通報者保護法10条で、公益通報があると行政機関は適当な措置を取らなければならないという義務を負わされて、それを前提にガイドライン等々が作られていますので、私は、労働基準監督署の方の法律がどうなっているかは詳しくないのですけれども、何かの通報を受けた行政庁として、公益通報者保護法の方に該当する公益通報なのか、そうでないのかというのは、恐らく分けて処理をするということになっているはずなのではないでしょうか。

○島田座長 いや、要するに非常に単純な例で、例えば不払い残業があるという通報を受ければ、それはそれに対して摘発して払わせたりしていますね。それ以外に何かやらなければいけないということでは、公益通報者保護法についても、ないのではないですか。
 そこについては今後の議論ということで、それで農林水産省の方も、例えば「消費者の部屋」とか、あるいは食品表示110番というものは必ずしも、要するに公益通報者保護法のための制度ではなくて、一般から情報を収集して、それについて適切な対応を取るという仕組みですね。ですから、あくまでもここで議論している公益通報者保護法というものは、通報対象事実があって、要するに公益通報に該当しているということですね。ですから、通報対象事実があるというだけではなくて、労働者が解雇その他不利益な取扱いを受けるとか、そういう場合について公益通報として取り扱う。多分、そういうことになるので、通報と件数とに非常に差があるということなのかなというふうに伺ったのですが、私の理解が違っていれば、それぞれお答え願えればと思うのです。

○船田消費者情報官補佐 今、座長の方からおっしゃられたとおりでございます。あくまで情報提供を受けたものに対して、農林水産省としては適切に対処していきたいという方針がありますので、公益通報と、あえて普通のJAS法なりと措置を、手順が違うとかというところはないというふうに思っております。「消費者の部屋」はそういった総合窓口でございますので、そういった情報を常に把握しているということでございます。

○島田座長 どうぞ。

○中村委員長代理 中村ですが「消費者の部屋」が通報窓口であると聞いて、私は正直言ってびっくりしているのですが、昭和59年以来「消費者の部屋」というものは農林水産に関する情報を消費者に提供するということと、消費者相談をやってこられて、そこにいらっしゃるのは消費生活アドバイザー、コンサルタントとか、専門相談員がそこで受け付けてきた。そういうものとして国民は20年間慣れ親しんできていて、そこが今、公益通報の窓口になっていますと言われても、果たしてそれで公益通報らしきものが、もし持っている人がいて、農林水産省に言わなければというときに、そこへ届くだろうかというのはすごく気になるのです。
 ですから、平成18年、平成19年で1件ずつだったというのは、それはそうかなと思わず思ったのですけれども、やはり公益通報の窓口はここにあるのだというアピールとしては「消費者の部屋」を兼務するような形というのは、私は非常に国民にとってわかりにくい。果たして、そこで受けるアドバイザー、コンサルタントの方たちが、公益通報を受けて対応できる、そういう訓練を受けているのだろうかというのも少し気になるのです。そういう辺り、今のガイドラインでそういう設置をされたようですけれども、そういう在り方でいいのかどうか。そこはやはり、もう一回、検討する必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○船田消費者情報官補佐 今の御意見ですけれども、私の方から、この場でお答えすることはなかなか難しく、持ち帰って検討させていただきたいということでよろしいでしょうか。
 農林水産省の中で、外部の受付は「消費者の部屋」ということで一応、ガイドラインに沿って設置されているところですけれども、食品表示110番のように、表示についての情報提供は多いので、別途、窓口を設けているというところもありますので、持ち帰らせていただいて、検討させていただきたいと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 近藤専門官の方は何かございますか。特になければ結構ですが。

○近藤専門官 特にございません。

○島田座長 どうもありがとうございました。他に御意見はございますか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、近藤様、船田様、どうもお忙しいところ、誠にありがとうございました。

≪3.福嶋消費者庁長官挨拶≫

○原事務局長 どうもありがとうございました。 それでは、お待たせをいたしました。消費者庁の福嶋長官にお越しいただいておりますので、ごあいさつをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○福嶋長官 どうも、貴重な時間をいただきまして恐縮です。先月、消費者庁長官に就任いたしました福嶋です。どうぞよろしくお願いをいたします。
 もちろん、皆さんはもう御存じのように、消費者庁は消費者・生活者中心の社会をつくるために、とりわけ、安全で安心な消費生活を実現できる社会をつくろうということで取組を進めております。そうした社会づくりにおいて、公益通報者の保護というものは重要な課題の一つであると考えております。消費者庁としても、これまで法の周知・啓発のために説明会・研修会を開いたり、あるいは各事業者・行政機関に窓口の設置等を働きかけたりしてまいりましたけれども、やはり十分な実施状況ではないと私自身も認識しております。
 委員の皆様には、6月に第1回を開いていただいて以降、これまでは特に制度の現状とか実施の状況を議論していただいていて、これからいよいよ具体的な課題の議論に入られるというふうにお聞きしております。消費者基本計画では、消費者委員会の検討を踏まえて、来年の4月には、これは法に基づく見直しの事項であるわけですけれども、来年の4月には消費者庁として必要な措置を講ずるということになっておりまして、かなり期間が迫っておりまして時間がないのですけれども、どうか皆様には幅広い観点から十分な御審議をいただきますよう心からお願いいたしまして、簡単ですけれども、あいさつとさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、また議事進行ということでよろしくお願いいたします。

≪4.諸外国の公益通報者保護制度に関する動向調査の結果について≫

○島田座長 次の議題に入らせていただきます。このたび消費者庁におきまして、諸外国の公益通報者保護制度に関する動向調査の結果がまとめられたそうでございます。これにつきまして、消費者庁の成田企画課長から御報告をいただきたいと存じます。
 それでは、成田課長、お願いいたします。

○成田企画課長 消費者庁企画課の成田でございます。お手元の資料4「諸外国の公益通報者保護制度の概要」についてでございます。
 消費者庁では、公益通報者保護法の附則に基づく見直しに資するために、諸外国の公益通報者保護制度に関する調査を行いまして、先週の金曜日に、この結果をとりまとめて公表したところでございます。委員の皆様方には報告書を送付させていただいております。本日の議論とは直接関係はないかもしれませんけれども、簡単にこの概要を御紹介させていただきたいと思います。
 2ページで、調査を行いましたのはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ドイツの7か国でございます。
 その結果でございますけれども、日本の公益通報者保護法の参考となったとされておりますイギリスを始め、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにつきましては公益通報者保護制度の整備が比較的進んでおりますが、ドイツ、フランスでは制度の整備が余り進んでいないというような状況でございます。
 各国の状況についてでございますけれども、まず3ページのアメリカにつきましては、公的部門を対象として1989年に制定されました内部告発者保護法という法律と、民間部門につきましては包括的・横断的な法律はなく、分野ごとに、例えばサーベンス・オクスリー法などを始めとする個別法が制定されているというような状況でございます。
 4ページのイギリスでございますけれども、イギリスでは民間部門、公的部門を通じた公益開示法が制定されております。この法律では、適格性のある開示を行って、不利益処分を受けた労働者は、雇用審判所に提訴し、不利益処分の取消、損害補償を受けることができるというような規定がございます。
 5ページのカナダにつきましては、公的部門につきましては国家公務員開示者保護法という法律がございます。また、民間部門につきましては刑法修正第425.1項というものがございまして、通報した被用者に対して使用者のとった報復措置については刑罰が科せられることになっております。
 6ページのオーストラリアでございますが、通報者保護のための法律には連邦の法律と州法がございますけれども、連邦法では、公的部門については連邦公務員に対する公務法がございます。民間部門につきましては会社法において、会社法の規定に違反する行為を一定の者に通報したことに対する報復行為の禁止などが規定されております。
 次の7ページ、ニュージーランドでございますけれども、こちらは民間、公的部門の両方をカバーする包括的な開示保護法が設定されております。
 8ページのフランスでございますが、フランスでは包括的に通報者保護を規定した法律はございませんけれども、労働法の中で、例えば収賄行為につきましては、いかなる者もその職場内部で目撃又は察知した収賄行為に関する通報を理由に制裁、解雇、又は給与・社員教育等に関して差別的待遇の対象となってはならないといったような規定がございます。
 最後の9ページのドイツでございますけれども、ドイツでは通報者保護を目的とした包括的な法律はなく、裁判所が既存の法律によって、個別の案件ごとに通報者保護が適正かどうかを判断しているということでございます。ただ、ドイツでは民法典を改正して、通報に関する規定を盛り込むというような動きがあるということも今回の報告書の中では紹介されております。
 簡単ではございますが、資料の御説明は以上でございます。

○島田座長 ありがとうございました。時間の関係もございますので、今、御報告いただいた諸外国の制度についての御質問・御意見につきましては、次の議題でございます「5.公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」の議論の中でいただければと思いますが、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

≪5.公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について≫

○島田座長 それでは、次の議題である「5.公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」の議論に入りたいと思います。消費者庁の成田企画課長から、公益通報者保護制度についてこれまでの議論や取組みを整理して御説明いただいた上で、在り方・見直しの視点について皆様に御議論いただければと思います。
 成田課長、お願いいたします。

○成田企画課長 それでは、資料5「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」でございます。
 本日の議題は、5月に決定されました本専門調査会の主な審議事項の中の2つ目の「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」の4つの事項ということになっておりますので、それぞれにつきまして、法制定時の議論、関係する調査結果、消費者庁の取組など、この中には第2回専門調査会で既に御報告させていただいた内容と重複した部分もございますけれども、御議論の参考としていただければということで論点ごとに整理をさせていただきましたので、御説明させていただきたいと思います。
 おめくりいただきまして、3ページでございます。まず「(1)本制度が何を目的とし、どのような場面での機能が期待されるのか」という点でございます。
 この点につきましては、御案内のとおり、公益通報者保護法第1条では「公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする」と規定されております。
 この点につきまして、法制定時の国民生活審議会の議論、これは平成15年5月の報告書から引用しておりますけれども、この中では、例えば、事業者のコンプライアンス経営の促進等に向けた取組を一層進めることが求められる、通報者の保護に関する制度的なルールを明確化することが必要である、消費者被害の未然防止・拡大防止に資するほか、法令違反に対する行政の監視機能を補完する仕組みとしても効果を発揮することが期待される、というようなことが書いてございます。
 また、法制定後につきましては、これも第2回専門調査会で御紹介させていただきましたけれども、昨年、旧内閣府国民生活局において開催されました「公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会」におきましては、本制度の存在を契機として、企業内部のコミュニケーションの円滑化を図り、企業の自主的な是正の取組を促すことが重要である、法令遵守は、本来事業者内部での通常のコミュニケーションを通じて実現すべきものであり、公益通報は言わば緊急のルートである、というような御指摘もあったところでございます。
 4ページ以降は関連する資料でございます。
 まず4~5ページは「公益通報者保護法の逐条解説(消費者庁ホームページ(抄))」ということで、消費者庁のホームページに掲載されているものから関連する部分を抜粋させていただいたものでございます。
 6~7ページは、今、御紹介いたしました法制定時の国民生活審議会での議論をまとめました平成15年5月の「21世紀型の消費者政策の在り方について」の抜粋でございます。
 8ページは、法制定時の国会における関連する議論の中から議事録を抜粋したものでございます。
 9~10ページは、昨年の懇談会の主な議論等の関連部分を抜粋したものでございます。
 ただいま御紹介いたしましたように、この法律の目的は、解雇や不利益取扱いから公益通報者を保護するという民事ルールによって、事業者等の法令遵守を図り、国民生活の安定等に資することと書いてございますけれども、実際にこの法律ができたときにどういう役割が期待されていたのか、この法律が施行されて、どういった役割を果たしてきたのか、あるいは今後どのような役割を果たしていくことが期待されるのか、ということにつきましては、この本専門調査会の御議論を伺っていても、いろいろな考え方があるのではないかという印象を持っております。
 この点につきましては、次回以降、公益通報者保護法の具体的課題について御議論いただく際の前提となるような重要な事項かとも思われますので、本日この後、御議論をいただければと思っております。 11ページからが「(2)公益通報者保護制度の導入を促すための施策」についてでございます。
 まず公益通報者保護法が制定された際に、衆議院と参議院の附帯決議においても「国、地方を通じて行政機関における通報・相談の受付窓口の整備・充実に努めること」、「事業者及び行政機関において、通報をしようとする者が事前に相談できる窓口が整備されるよう促進すること」といった御指摘がございまして、旧内閣府国民生活局におきまして、行政機関、民間事業者、それぞれについてのガイドラインの策定などを行ってきたところでございます。
 一方で、これも第2回専門調査会において御報告させていただきましたけれども、公益通報者保護制度の導入状況につきましては、行政機関においては相談・通報窓口は全府省庁、都道府県において設置されているものの、市区町村における設置率は4割程度にとどまっておりまして、民間事業者におきましては、大企業における内部通報制度の導入がかなり進んでいるのに対しまして、中小企業では導入率が低い状況にございます。
 旧内閣府国民生活局及び消費者庁におきましては、こういった附帯決議や調査結果を踏まえまして、広報資料の作成・配布、説明会や行政機関職員向け研修会の開催、公益通報者保護制度ウェブサイトの開設、公益通報者保護制度相談ダイヤルの設置などによりまして制度の普及・促進を図ってきたところでございます。
 12ページ以降は、これまで御紹介させていただいたデータでございます。
 12ページの左側は、第2回専門調査会で御報告させていただきました、平成21年度の「行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査等」の結果における、行政機関における通報・相談窓口の設置状況でございます。
 右側の表は、今御紹介いたしました施行状況調査の公表の後で、窓口を設置していないと回答された市区町村と、そもそも調査に御回答いただけなかった市区町村に対しまして、改めて設置していない理由をお伺いする簡単なアンケートを送付させていただきまして、その結果を御紹介したもので、今回新しく出させていただいているデータでございます。
 これによりますと、導入していない理由としましては、「必要な制度ではあるが、優先度が低い」、「人手が足りない」、「同規模の市区町村も導入していない」、「(規模・組織の状況等からみて)通報者の秘密が守れない」といった回答の割合が多くなっております。
 13ページは、民間事業者における内部通報制度の、左側が導入状況、右側が導入しない理由でございます。
 14ページは、既に御紹介いたしました、消費者庁における公益通報者保護制度の導入を促すための取組状況でございます。
 市区町村における通報・相談窓口の設置状況や、規模の小さい民間事業者における内部通報制度の導入状況を踏まえますと、今後、これらの行政機関や民間事業者に対してどのように取り組んでいくかということが一つの課題ではないかと考えられるところでございますけれども、その方法といたしまして、例えば平成19年度に内閣府で行った研究会では、中小企業では共同窓口の設置を進めてはどうかというような御提案がございました。また、昨年の懇談会におきましては、業界団体を通じて取組の促進を図ってはどうかというような御指摘もいただいたところでございます。
委員の皆様方から、効果的な導入促進策などについての御提案をいただければと思っているところでございます。
 15ページから「(3)公益通報者保護制度の改善のための方策」でございます。
 公益通報者保護法の制定時の国会の附帯決議におきましては「公益通報を受けた行政機関がとるべき対応について、ガイドラインの作成等により、公益通報者に対する調査結果の通知等適切な対応を確保すること」といった御指摘もございまして、施行前に旧内閣府国民生活局におきまして、行政機関、民間事業者、それぞれを対象とした、通報を適切に処理するためのガイドラインを作成し、その周知を図ってきたところでございます。
 法施行後も、各種調査や研究会等によって、問題点の把握などに努めてきたところでございます。
 16ページは、関連する附帯決議の抜粋でございます。
 17ページから、ガイドラインの策定や、これまでの各種調査・研究などの取組を記載しております。
 この点につきましては、例えば内部通報制度を導入している民間事業者に対する調査によりますと、運用上の課題や実務上の負担として、「通報というより、不安や悩みの窓口となっている」、「本当に保護されるのか、職員に不信感がある」、といった点が挙げられているところでございます。
 また、昨年度の懇談会におきまして、大規模な事業者においては内部通報制度の導入は進んでおりますけれども、ヒアリングにおいて、ある企業の方から、窓口が整備されるほど、公益通報は窓口の担当者の問題であって、自分には関係がないというような意識が現場に見られるというような御発言がございまして、企業の現場において問題点の指摘が公益通報として認識されないで握りつぶされてしまうのであれば問題ではないかというような、既に制度を導入している規模の大きな事業所における運用の問題に関する指摘もあったところでございます。
 本専門調査会におけるこれまでのヒアリング結果なども踏まえて、制度を導入している行政機関や事業者においてどういった問題があるのか、また、問題があればどのように改善していくべきなのかといったような点について御議論をいただければと思います。
 21ページから、「(4)通報を受けた事業者・行政機関がとるべき対応」についてでございます。
 公益通報者保護法には、公益通報者の解雇の無効や不利益取扱いの禁止などに関する条文のほかに、通報を受けた事業者や行政機関がとるべき対応について3つの条文がございます。
 第9条は、通報を受けた事業者が是正措置をとったときなどに、その内容などを通報者に通知することについての努力義務が規定してございます。
 第10条と第11条は、通報を受けた行政機関のとるべき措置についての規定でございます。
 第10条が、公益通報された行政機関が、必要な措置を行い、通報対象事実があると認めるときは、適当な措置をとらなければならないという規定でございます。
 第11条は、勧告等の権限を有しない行政機関に誤って公益通報されたときは、その行政機関は正しい行政機関を教示しなければならないという規定でございます。
 また、民間事業者や行政機関が通報処理等を適正に行っていただくために、それぞれに係るガイドラインを策定して、周知を図っているところでございます。
 22ページは、関係の条文でございます。
 23ページは、それぞれのガイドラインの内容でございます。
 このガイドラインにおきましては、例えば通報者などに関する秘密の保持に関する事項や、通報を処理するさまざまな段階、通報の受付、調査、是正措置の実施などのそれぞれの段階における、通報者への通知などに関する事項が規定されております。
 こういった点も含めまして、実際に通報を受けた事業者・行政機関にどのような対応が求められるのかといった点について御議論いただければと思っております。
 簡単ではございますが、資料の御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、先ほどの「諸外国の公益通報者保護制度の概要」、それから、今の「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」、2つの御報告を受けまして、これらの点について御意見・御質問のある方は御発言をお願いしたいと思います。いかがですか。

○渡邊委員 東京商工会議所でアンケート調査を実施いたしました。その結果といいますか、中間報告をしたいと思うのですけれども、今後の議論の参考になるとは思うのですが、東京商工会議所で中小企業向けに今年の8月にアンケート調査を行った結果を速報で報告したいと思います。まだ最終的な集計は終わっていないので、本日は中間の集計ということで御了承いただきたいと思います。 9月9日現在、対象は2,400社ですけれども、回答数は430社。これは東京23区内に事務所がある中小企業が対象で、その結果をとりまとめたものです。実施時期は8月25日~9月1日。景況調査の附帯調査として行ったわけでございます。
 設問は2つで、まず1つ目の設問は、公益通報者保護制度に対する認知度。2番目は、制度について望ましい見直しの方向。この2つの設問を設けました。
 まず、公益通報者保護制度に対する認知度につきましては、制度面だけでなく内容も知っていると回答したのは約2割、20.9%にすぎませんでした。逆に、ほとんど聞いたことがないと答えた方が24.4%、初めて知ったという方が17.4%。これを合わせると、4割以上の41.4%がほとんど聞いたことがないということになっておりました。残念ながら、中小企業には公益通報者保護制度という制度が余り浸透していないということがわかったわけでございます。
 続きまして、2つ目の公益通報者保護制度についての望ましい見直しの方向についてでございますけれども、最も多かった回答は、制度を見直すよりも周知・広報を徹底すべきが約6割、57.7%でした。過半数を超えた回答はこれだけで、圧倒的に多い結果でございました。2番目に多かったのは、見直しの方向がわからないという回答が約2割でございます。やはり制度をほとんど知らない状況では、見直し等々というよりも、まず周知徹底が先であるという回答が極めて妥当な認識ではないかと思っております。
 以上、簡単ではございますけれども、御報告をさせていただきたいと思います。最終的な集計結果はもうそろそろ上がると思いますので、次回以降に資料として供したいと思います。
 以上でございます。

○島田座長 大変貴重な御報告、ありがとうございました。それでは、今の渡邊委員の報告も含めまして御質問・御意見等をちょうだいできればと思いますが、各委員の先生方、いかがでしょうか。

○三木信夫委員 大阪市の三木です。私は、まずこの制度の在り方・見直しのところで、本制度は何を目的とするかというところなのですが、そもそも論になってしまうのですけれども、この制度が基本的には労働者の解雇とか不利益取扱いから保護するということで、労働者に通報者としての資格を限定しているのですけれども、それが、この間のいろいろな報告もございまして、労働者以外の、あるいは労働者であっても退職した人とか、そういった通報者の範囲を広げることも、この専門調査会の中で議論をしていく方向と考えてよろしいのか。それとも、労働者であるというのを前提とした上での見直しとなるのか。その辺りをお聞かせいただきたいと思います。

○島田座長 それは、成田課長への御質問ということでよろしいですか。

○三木信夫委員 はい。

○島田座長 よろしいですか。あるいは私の方からお話しした方がよろしいですか。

○成田企画課長 はい。

○島田座長 通報対象者の範囲をどうするかというのは、拡大を必ずするという趣旨ではないと思うのですが、この見直しの一つの論点というふうになっているかと思います。そこはいろいろな御意見を、今後、順番にやっていく中の一つの柱にはなろうと思います。

○三木信夫委員 わかりました。

○島田座長 この点について、何か事務局の方で補足はございますか。
 よろしいですか。

○成田企画課長 1点だけ。この専門調査会でどの範囲まで、御議論いただくかということは専門調査会の方でお決めいただくことであると思いますけれども、労働者の方は解雇や不利益な取扱いを受ける可能性があるので、そこから保護するためにこの法律があるので、これを広げたときに、その広げた人たちにはどういう保護が必要なのかということを多分セットで御議論いただく必要があるのかなと思っております。

○島田座長 そうですね。最初の御報告にもありましたように、消費者保護という観点から見たときに、この法律だけで全部をやるというわけではなくて、通報がどなたからあったときにどうするのかというのはありますけれども、一応、法律の趣旨としては公益通報者保護法なので、労働者の場合に解雇その他不利益な取扱いからの保護というものがあって、仮にそれ以外の方という場合に、どこを考えていくのかというのは、確かに併せて、もしその議論をするときには、していく必要があろうかと思います。ありがとうございました。

○三木信夫委員 それで、通報者の保護という観点以外に、国民生活全体といいますか、消費者保護全体という面で考えますと、行政機関に対する法的統制を図ることが、ひいてはそういう消費者全体の保護になるという考え方もあろうかと思いますので、例えばですけれども、少なくとも行政機関とか、あるいは一定の大企業に関しては、労働者以外に通報者の範囲を拡大するとか、そういった方向性も場合によってはあるのかなという、私の私見でございますけれども、そういう点も補足させていただけたらと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 他に、御報告等に対する御質問というものは特によろしいですか。最初の方の諸外国について、ごく簡単でございますが、この報告書自体はホームページに。

○成田企画課長 はい。ホームページにも掲載されておりますし、委員の皆様方にも、お手元に届いているかどうかはわかりませんが、お送りするようにしております。

○島田座長 ありがとうございます。

○山本委員 山本です。報告書は、私はざっと、1回しか目を通せなかったのですが、やはり、この中身でも更にお伺いしたい点等がまた出てくると思うのですけれども、その場合は、これは、このもととなる資料とかはちゃんとあって、また報告いただける、回答いただけるということでいいのですか。それとも、これがベースで、これ以上は掘り下げないという形なのですか。

○成田企画課長 今、私どもで把握している情報はそこに載っているものだけでございますので、例えば何か、更にそこに書いていない事項で御質問があれば、調べてわかれば御回答できるかと思いますが、わからなければそれ以上の調査は困難であるということを御理解いただきたいということになろうかと思います。

○島田座長 どうぞ。

○渡邊委員 日本の制度の一番参考になるのはイギリスであると言われたのですけれども、その主要要件で、これは3つになっていますね。最初に使用者の方に通報するということと、2番目に使用者が認めた、あるいはあれ以外の第三者機関、公的機関であると思うのですが、あと、3つ目がそれ以外ということで、ハードルはだんだん高くなってきていますね。そういうことは、これは基本的に言いますと、使用者のどこかの通報機関に報告するのが一番いいのだろうというような論点になるのですか。

○米田企画課長補佐 消費者庁企画課課長補佐の米田と申します。私の方から御回答させていただきます。
 今の点ですが、まさにこの点が日本の公益通報者保護法制定に当たって参考とした部分で、まずは内部通報、なるべく早い段階で通報を受け付けて損害等の規模が大きくならないように内部通報をする、そして一定の要件を満たせば外部へ通報できる、というふうにイギリスの方でもなっていると理解しております。

○島田座長 よろしゅうございますか。
 山本委員、何か今、特別にあれば、どうぞ。

○山本委員 山本です。済みません、先ほどの点なのですけれども、私が少し興味あるのは、刑事・民事上の免責のことなのです。それが規定されているのは、この資料を見ますと、オーストラリアとニュージーランドとなっていると思うのです。ただ、ニュージーランドについてはどういう規定ぶりになっているのかというのは、この資料では伺えないので、そこはまたお伺いしたいのと、刑事責任・民事責任の免責についてどのような議論があったのかというようなことが、もしわかればそれは知りたいと、私はこの調査の報告書を読んで思いました。

○島田座長 どうぞ。

○成田企画課長 そこは、これ以上わかるかどうかは持ち帰らせて検討させていただければと思います。

○島田座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。
 それでは、勿論、また議論の過程で問題になれば御議論いただくといたしまして、一応、この「諸外国の公益通報者保護制度の概要」については以上にさせていただきまして、大変大部な「公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」という御報告をちょうだいしました。これが今後の、多分、我々がこれから具体的に、先ほど三木信夫委員からの御指摘もございましたことを含めて、個々、議論をしていくための素材になろうかと思いますので、事実の確認なり、あるいはそれを踏まえて、今後、この専門調査会でどういうことを議論していくべきかというようなところを、ざっくばらんに各委員の方からお出しいただければと思います。どうでしょうか。
 どうぞ、お願いします。

○大杉委員 前提の確認ですけれども、公益通報に当たらないような内容の情報提供が国家機関に対して、あるいは地方公共団体も含めてなされたときに、そういう行政機関はそれに対して誠実に対応する一般的な義務はあると思うのですけれども、必ず対応するとか、必ずそれについての結果を出すというふうな、そういう義務はない。それに対して、ある通報が公益通報に該当した場合には法律10条によって、行政は適当な措置を取らなければならないと書いてあるので、何が適当な措置であるかについては曖昧さは残りますが、この場合には行政庁には裁量の余地がない、あるいは裁量が相当に制約されている、という理解でよろしいのでしょうか。

○島田座長 私もそう考えております。

○大杉委員 実際、行政機関にいろいろな情報を寄せられますし、それに、例えば農林水産省などにとって、食の安全に関わるような情報らしきものを入手すれば、適切に対処すべきというぼんやりした義務は当然あると思うのですけれども、実際には寄せられる情報の恐らく大半はガセであったり、実際、マンパワーの問題ですべての情報に対処することが難しければ、できるところから優先順位を付けてやっていかないといけないというのは残念ながら避けられないことです。
 そういう意味では、別に公益通報者保護法に書いていない、広い意味の通報があっても行政機関が適切に対処すべきで、ただ、そこにはかなり裁量の幅があるだろうということは、この法律と関係なく存在します。それに加えて、この法律では、狭い範囲の公益通報概念に該当すると、行政の裁量は相当狭くなるという理解でよろしいのですか。

○島田座長 私が答えられるかどうかはわからないのですが、私はそういうふうに考えております。

○大杉委員 ありがとうございます。

○島田座長 今の私の理解でいいのかどうかも含めて議論はあろうかと思います。今後およそ3回程度の会議で、相当詰めた議論をしていくことになろうかと思いますので、今、少なくとも各委員の方で、公益通報者保護法の見直しという観点で必ず論点にすべきであるというようなことがあれば、勿論、今日でなくても結構ですが、もし、今日あればお出しいただけると、今後の進行にとって非常にありがたいと思っておりますので、いかがでございましょうか。

○山本委員 山本です。何度も済みません。
 一応、見直しについて、私もいろいろ報告いたしましたが、公益通報者保護制度というものがまず漠然としているところからいろいろ議論が混乱するところだと思うのですけれども、私自身は、公益通報者保護法自体は制度の一部だけ、少なくとも安全地帯を示すというのが答弁でも出てきましたが、そういうものであって、あとはガイドラインとかいろんなもので補完していって全体的な制度づくりがあるのだろうというふうには思っています。
 そういう中で、制度全体を考えた場合の公益通報というものは余り、公益通報者保護法で定義する公益通報に該当するかどうかというところに限定されないで制度全体を考えるべきであるとは思っています。そういう意味で、今回の見直しでガイドラインとかそういうところの活用は検討すべきであると思っています。
 あと、保護法自体の見直しとなれば、少なくとも私自身は通報対象事実が限定されているということもありますし、特に行政機関以外の第三者への通報の要件も限定されていて、もう少し、例えばその他の事情を総合的に考慮して合理的とみなされる場合とかそういった、少なくともやはり、この法律がマイナス方向に働かないような公益通報者の保護を定めていくということが必要であろうと思っています。 更にもう一点、私としては、行政機関への通報についてですけれども、やはりこれに対する義務というものが、先ほど大杉委員の指摘もありましたけれども、規定がただ、適切な処置を取らなければならないだけでして、その点が具体的に、例えば情報公開法であればどれぐらいの期間内に処理するとか、ですから、いろんなそういう、ある程度の縛りといいますか、そういうものを法律などでかけていくということも必要ではないかと考えています。
 とりあえず、以上です。

○島田座長 ありがとうございました。そうしますと、山本委員としては、1つは通報対象事実の見直し、それから、通報要件についての見直し、特に第三者に対するというところが中心ということですか。

○山本委員 それを含めてということです。

○島田座長 わかりました。
 それから、3つ目が行政機関の措置ということの規定で、具体的には第10条をもう少し具体化してはどうかというようなことが論点になるのではないかということですね。
 ありがとうございました。他にいかがでございましょうか。

○三木由希子委員 山本委員がおっしゃったこととおおよそ、私もそれは必要ではないかと思っているのですけれども、先ほど来、特に厚生労働省、農林水産省からヒアリングをお聞きしていて思ったのですが、労働者保護という意味での公益通報者保護といいますか、そういうものは非常に重要であると思うのですけれども、要はもう一方で、法律の目的にもありますが、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することということを目的とするのであれば、通報者がだれかということで情報の扱いが変わってしまうような、そういうメッセージを発するような法律であると非常によろしくないのかなということを少し思いました。
 なので、何を労働者に対して、あるいは通報者に対して保護をするのかという議論も非常に重要であると思うのですけれども、一方で寄せられた公益通報と事実に関するものについてどう扱うのかということをもう少し基本原則的にちゃんと確立しないと、公益通報に該当するかどうかという範囲の問題だけで情報の取扱い方が変わってくる、あるいは扱いが変わってくるということになってしまうと、少し本末転倒かなと思います。なので、労働者の保護とか通報者の保護という観点と、もう一つが、通報事実として上がってきているものを、労働者の保護という観点から外れてどう扱うかということは、一つ議論をしておいた方がいいのではないかと思いました。

○島田座長 それはかなり根本的な問題で、公益通報者保護法の目的条項の問題ということになりますね。
 ただ、一応、現行法ですと、公益通報というものは、労働者が通報すれば公益通報と呼んでいるので、この法律では労働者以外の方ですと、その通報というものは公益通報にはならないというのは、この法律の大きな建前になるわけです。
 問題は、今後の議論として、そこを外して広げていくという、つまり、さまざまな、先ほど農林水産省さんなどでおやりになっているような食品表示110番とか、そういうことの通報も含めて、この法律の中で考えるのかどうなのかというのが恐らく大きな問題になろうかと思うのです。
 この目的条項も、基本的には公益通報者の保護を図って、それが安定につながるのだという法律なのです。ですから、多分、今の三木由希子委員の御提案は恐らく目的条項そのものを見直すという話になって、それを議論するというのであればした方がいいのではないかと私も思いますが、そこは大変、今後の一つの大きな論点になるのかなというふうに伺いました。
 他にいかがでございましょうか。

○三木信夫委員 諸外国の法律の概観ですけれども、オーストラリアとかカナダとかでは「効果」として不利益扱いをした者に対する刑罰が上がっておるのですけれども、今の日本の法律には、仮に企業の方が通報した労働者を解雇その他不利益な取扱いをしたとしても罰則がありませんので、それで通報する労働者としては、万が一、もし不利益な取扱いをされたときを考えると、雇用する方の使用者の方に罰則がありませんので、そこが実質的に担保されていないというような感じはするのですけれども、罰則の付加とか、そういった辺りの御議論とかはどうされるのかというのは。

○島田座長 3条との関係で、罰則を付けるのかというのは法制定のときの議論になりました。個別法ではたしか、私の知る限り、核燃料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律には罰則が付いていますが、当時の議論としては、公益通報の中身によるので、個別の判断、個別の立法に委ねるという御議論でしたので、そこをどうするのかというのが多分、問題にはなってくるのだろうかと思います。
 解雇については、当時は労働基準法18条の2ですが、現在は労働契約法16条ですけれども、先ほど御説明にあったように、無効な解雇をした使用者に罰則があるというのではなく、すべて民事的なルールであるという前提で議論してまいりました。勿論、罰則を絶対付けてはいけないという話ではないので、そこは恐らく実効性の問題という中で議論したらいいかと思います。ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。

○大杉委員 たびたび済みません、大杉です。過去2回、学校の方の公務で休んで、申し訳ございませんでした。
この公益通報者保護法に関して、一番必要なものが制度の周知であるという点は多くの方が恐らく賛成してくださると思うのですけれども、周知というものは単にお金をかけてテレビコマーシャルを打てばいいというだけではどうもなくて、この法律の趣旨・目的が難しくて伝わりにくいという点について、ここで議論して整理することが必要ではないかと思っています。それは前から思ったことでもありますし、本日の議論を聞いても感じたところであります。
 少しばかり法律の世界のうんちくを語ることをお許しいただきたいのですけれども、法律家の世界でルールとプリンシプルという言葉遣いがありまして、ルールというものはAという条件が満たされればBという法律効果が発生するという具体性のあるもので、それに対してプリンシプルというものはそういう当てはめの明確性がない、もう少しあいまいな、精神的なものとか法律の目的というふうなものを示す場合に使われる言葉です。
 公益通報者保護法というものは、ルールのレベルでは不当な解雇とか不利益扱いを無効にすることが定められており、他方、プリンシプルのレベルでは、法律が目指しているものは、通報対象事実のようなものをなるべく早い段階で食い止め、なるべく社会的に低いコストでコンプライアンスを実現するということにあると思います。ですので、具体的なルールと、法律が達成しようとしている目的=プリンシプルの間に物すごく距離があって、イメージがつかみにくいのではないかと思っています。ここについて何か効果的な議論とか、それは法律の条文も含めて何かができるのではないかということであります。 先ほど私が言いましたように、行政機関は別に公益通報でなくても、一定の通報を受ければ合理的な対処をする義務は行政法の一般理論として当然あるわけですけれども、当然あると口で言うだけではなくて、法律に書き込むということはあり得る。これは公益通報の場合と、そうでない通報の場合で、取扱いの密度に差を生じることを認めて明文化するという意味ですので、先ほどの三木由希子委員からいただいた意見と私の意見は少し違うのかもしれないのですけれども、労働者の処遇だけに話を絞らずに、行政機関の在り方を法律の中で書くことは不可能ではない。ただ、その場合も結構あいまいな書き方になろうかなと思います。
 同じことが、先ほどの三木信夫委員の罰則のこともあると思います。その罰則を入れるかどうかについては今日は語らないことにしたいと思いますけれども、例えば公益通報をしている人に不利益処分をするような企業については個別企業名を公表するといったような措置も選択肢としては考えられますので、この法律の性格としては民事ルールに限るとか、刑事も含むとかというふうなことは、最終的な落としどころはともかく、考え方としては幅広く論じていくべきでありますし、要するにいろんな手、あの手この手を使って、早目のコンプライアンスを確保するということ、そういう趣旨を社会全体に、それも中小企業も含めて多くの人に知っていただきたいと思った次第です。
 あと、個人的には、法令の限定列挙はもうやめた方がいいのではないかということを考えております。

○島田座長 まだお時間はありますので、ありがとうございます。
 御議論いただいたようなことで、今後の課題になろうかと思います。
 多分、最初のかなり議論されたところは、1条とか2条という辺りを実際にどう考えていくのかという、そこら辺のお話になっていって、想像ですが、ここは少し難しいところはいろいろあるのですが、是非、議論をしたいと思います。
 それから、さっきの民事ルールに限るというのは、この法制定時は一応、そういうことをしたということを御説明したので、さまざまな形での直接的な不利益取扱いに対しての罰則もあるでしょうし、おっしゃられたような勧告で、それに従えない場合の企業名の公表とか、多分、そういう手法はあろうかとは思います。それは御議論いただければと思います。
 最後の重要な御指摘としては、現在は2条では別表において対象法律を決めるという仕掛けを取っているのですが、ここを少し見直すべきであるという御意見であったかと思います。ありがとうございます。
 他にいかがでございましょうか。

○野澤委員 先ほどの意見の中にあったと思うのですけれども、通報する側から見ると、やはり心配なのは、そうして本当に不利益をこうむらないのかとか、守ってもらえるのかというのは、どうしても一番、心的なハードルの高くなる部分だと思うのです。
 どうすれば不利益をこうむらないようになるのかということを考えていきますと、1つは罰則とか何らかのペナルティーでそういうことを抑止していくとか、あるいは不利益をこうむった場合に何らかの救済措置といいますか、そういう手段を設けていくのかということが考えられると思うのですけれども、ただ、こういう場合には人事による報復とか、そういう場合には有効かもしれませんが、現実の職場内のことを考えていきますと、そうした形に見えるような報復よりも、むしろ仲間内での、仲間外れにしたり、いじめたりとか、何かそういう、何とも定義のしようのないものが非常に大きいと思っているのです。それでは、これを一体どうすれば変えていけるのかみたいな議論も必要ではないのかなと思ったりしています。
 1つは、内部通報というものに対する組織内のマイナスイメージを払拭して、むしろポジティブな評価をしていく。これは周知徹底して、理解を促して、研修なり何なりをしていけばそうなるのか。それとも、何かもう一つ、この法律の中にそうしたものを、概念を変えていくような、イメージを変えていくようなものを盛り込めるのか、どうなのかみたいなことを、私自身はわからないのですけれども、そうした議論も必要ではないのかなということを、今、感じております。

○島田座長 ありがとうございます。
 一応、最初の方の事実上の不利益取扱いも、この法は対象にしているという前提にはたしかなっているかと思います。ですから、それこそ村八分のような対応をしたということについて、それもここで言う5条の不利益取扱いその他というところには一応入る。
 ただ、御発言をちょうだいしたのは多分、実質的にそういうものに対処できるかということであると思いますので、そこは本当に難しいところかと思います。ですから、要するに法律のイメージを少し変えていかないと周知というものは難しいという御発言であると思いますので、その点も確かに重要なポイントであると思います。
 いかがでございましょうか。

○松村委員 松村ですけれども、先ほど成田企画課長からの御報告でも、特に中小企業を中心に相談窓口の設置が余り進んでいないということで、また、その理由についてもアンケートで調査されているのですが、やはり先ほどの周知徹底とも関連すると思うのですけれども、通報窓口の設置が進んでいないということなので、こちらについても法律の中で、なかなか強制的な義務という規定にまでするのは難しいかとは思うのですが、現行よりももう一段トーンを上げて努力義務とか、何かそういった条項を設けるということも検討してはいかがかなと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 そうしますと、それは、ここでは通報対象先として労務提供先となっていますけれども、そこはどういう措置を、あるいは仕組みを取るのかという、もう少しイメージを、従来はガイドラインという中である程度出しているものを、もう少し法の中に取り込むべきではないか。こういうような御趣旨ですね。

○松村委員 はい。
 あと、それと、どこまでガイドライン等に盛り込められるかはわかりませんけれども、内部での窓口の対応というものが難しいのであれば、外部のそういった窓口もあるというようなサジェスチョンも含めて、何か制度として盛り込めないかということも検討したらどうかと思います。

○島田座長 ありがとうございます。
 恐らく、今日の渡邊委員からの御報告での、中小企業に対する周知という問題も、そこら辺の問題と不可分だろうと思います。確かに現在は労務提供先が定めたものというような規定なので、確かに少しイメージは、そこから一般の方がしづらい部分はあるのかもしれません。
 それでは、そういうことも含めて大分論点が出てきたかと思いますが、他にいかがでございましょうか。

○田井委員 先ほど野澤委員からもお話があったのですけれども、制度とか法律を整備しても、その力というものは、実際に通報制度を運営しますと、それでできる範囲は限られると思います。最終的には職場とか風土とか、そこに行く必要があります。法律をつくったからといって必ずしも、すぐに、あるいは徐々に解決に向かうものでもないということは、やはり頭に入れて議論すべきではないかと思います。

○島田座長 貴重な御発言、ありがとうございます。
要するに、実施する方である程度使いやすいといいますか、多分、そこを考えておかないとなかなか難しいという御示唆であると思います。ありがとうございます。
 他にいかがでございましょうか。

○仲田委員 先ほど来、皆さんの話に出ているので、多分重なっていると思いますが、対象案件について、法律が限定列挙されていますが、こちらの方を考えていかないといけないということとともに、法令違反のおそれについても対象とすべきなのかどうかという観点も併せて検討いただけるとありがたいと思います。

○島田座長 それは、通報対象事実ということで見ていいかと思います。
 まだ御発言いただいていない委員の方で、もし、特段なければ結構ですが、いかがでございますか。御遠慮なさらずに、どうぞ。
 お願いいたします。

○橋本座長代理 特に新しい議論ではないのですが、先ほど松村委員から御指摘のあった、現在、非常に内部通報制度のガイドラインが重要な役割を果たしている中で、法律に何らかの内部通報制度を根拠付けるような規定を置くべきではないかという点は昨年の懇談会でも議論がありまして、やはり重要な点ではないかと思います。
 そうなったときに、田井委員から御指摘があったように、中小規模の組織のときに、どうしても、このアンケートの結果でいきますと、市町村で「通報・相談窓口の設置状況・設置しない理由」として、「通報者の秘密が守れない」という理由が上がっていますが、これは制度設計のありかたを工夫したとしても、例えば、先ほど成田企画課長の方から御説明があったように、企業外部での窓口設置を促すにしても、秘密が守れないというところはクリアーできないのではないかと思っています。調査が始まってしまえば、やはり通報者が誰かといった情報がわかってしまうのではないかと思います。このような小規模な組織における内在的な限界というものもあるようにも思っておりまして、仮に内部通報制度の設置を義務付けるとしても、企業規模等に応じた適用除外という議論も必要になってくるのではないかと思います。

○島田座長 どうもありがとうございます。

○吉村委員 今、小さい市町村のことを心配していただいて、ありがとうございます。一つはそういうこともあると思いますし、もう一つは、この公益通報ということで、この窓口、入り口で対象者とかいろいろ広げていきますと、当然、これにしっかり対応していかなくてはならぬということになる。そうやってがんじがらめにするということの方法も、済みません、つい行政で、受ける側で考えてしまうのですが、そういう方法もあるかもしれないのですけれども、そうでない、現在の公益通報制度の中ではない通常の通報を、公益通報と同じように、しっかりと行政側に対応してくださいということであれば、それはそれで別のところで考えていった方がいいのではないかという、小さい市町村とすると、そんな心配といいましょうか、感じがします。

○島田座長 多分、そこら辺は今日御議論のあった、この法律の目的とか、そういうものに関わってくるような御議論になろうかと思います。どうもありがとうございます。
 他にいかがですか。

○大杉委員 多分、今日話すのは4回目ぐらいになって、大変申し訳ございません。
 さっき話題になりました、中小企業とか中小規模の行政機関に関しては、意味のある通報窓口をつくるのはかなり難しいのではないかというふうなことを直感的に思っています。また、中小企業が単体でつくるのではなくて、共同でつくるというのもかなり難しくて、もし、中小企業のために共同の通報窓口のようなものがあるとすれば、実は行政機関に通報するというのがイメージとしてはそれに近いと思いますので、通報窓口という形に過度にこだわらなくてもいいと思います。
 もし、法律の中でガイドラインへの端緒のようなものをつくるのであれば、テクニカルな議論で恐縮ですけれども、「設置を努力する義務」というよりは「設置を検討する義務」とすればいかがでしょうか。中小企業であっても窓口を設置することがいいのだという、そこまでの強いメッセージは出さなくていいのではないでしょうか。ただ、「検討する」という義務は、中小企業であっても認められてしかるべきではないかと思います。
 もう一点、これは法律のきばを殺す方向の議論になってしまうのですが、ドイツとかフランスでは公益通報者の保護には、これまで、少なくとも伝統的には消極的です。これらの国は、解雇規制が比較的強いという意味で、日本はドイツ、フランスに近い方に分類されると思いますので、恐らく、この場ではそういう意見はそんなに強くないような気がしているのですけれども、理論的には、日本では公益通報者保護を余り図らなくていいという議論もあり得ると思います。
 私自身はその考えには反対です。また、ドイツ、フランスなどを別に理由に持ち出さなくても、世間では恐らく、公益通報者保護というものは密告を奨励しておるような法律でけしからぬという、ある種の古いといいますか、伝統的なタイプの議論がございますが、これには全力で抵抗していかないといけないと思っています。社会の公益を守るための活動をした人というのは相応の保護を受けられるということについて明確なメッセージを法律とか周知の過程で出さないといけないと考えています。
 と申しますのは、日本はやはり組織における同調圧力というものが強い社会ではないかと思っているからです。そういうところで、この法律をつくる、そして今回、場合によっては改正するということは、ともすれば同調圧力を生じてしまう、そういう日本の文化を必要な範囲では変える。文化を法律でやすやすと変えられるものなのかというのは限界があるわけですけれども、必要があれば文化すら変えるのだという意気込みの部分が大事なのかなと考えています。
 最後は少し空回りした精神論かもしれませんが、どうもありがとうございました。

○島田座長 どうもありがとうございます。他の委員の方、いかがでしょうか。
 この間、公益通報者保護制度の運用状況についてをテーマにいたしまして、企業、労働組合、弁護士会、自治体の各委員からそれぞれの取組状況を御発表いただきました。そして本日、行政機関における外部通報窓口の対応状況について御説明いただくとともに、消費者庁から資料に基づき、諸外国の公益通報者保護制度についての調査結果及び公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点についての御説明をいただきながら、活発な議論をちょうだいいたしました。
 もし、他に御意見がないようでございましたら、これで閉じたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、次回は今日御提案がございましたことを踏まえて、通報者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の要件、それから、通報先の範囲等々、これ以外にもさまざまな御提案がございました。これらを是非、事務局の方で御整理いただいて、具体的な課題について更に今後、議論を深めていきたいと思います。

≪6.閉会≫

○島田座長 本日の議題は以上でございますが、最後に事務局から次回以降の日程についての報告があるということですので、お願いいたします。

○原事務局長 活発な御意見、どうもありがとうございました。次回については、今、島田座長からも御発言いただきましたけれども、専門調査会の進め方で示させていただきました公益通報者保護法の具体的な課題について議論をお願いしたいと思っております。
 資料6に今後のスケジュールということでお付けしておりますけれども、次回の第5回は10月27日の16時から18時ということで予定しております。あと、第6回、第7回、それから、予備回というものを付けておりますが、今日の皆様方の御発言を聞いておりますと、非常に根本的な課題も含めて、幾つか大きな論点をいただいたように思っておりますので、第5回、第6回、第7回と進めてまいりますけれども、少なくとも予備回も開くというところで、今、決まったところだけのスケジュールをお示ししているというふうにお考えいただけたらと思っております。
 事務局からは以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。
どうも、もう一回ぐらい増えそうな雰囲気でございますが、それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)