第3回 公益通報者保護専門調査会 議事録

最新情報

日時

2010年8月5日(木)16:00~17:53

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、田井委員、土田委員、仲田委員、松村委員、三木信夫委員、三木由希子委員、
 山本委員、吉村委員
【担当委員】
 中村委員長代理
【説明者】
 消費者庁 成田企画課長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.公益通報者保護制度の運用状況について(第2回委員ヒアリング)
・公益通報者保護法について~労働者、労働組合の視点から~(仲田委員)
・大阪弁護士会公益通報サポートセンター活動報告(山本委員)
・東京3弁護士会による公益通報者保護に関する取り組みについて(松村委員)
・大阪市の公益通報制度の運用状況について(三木信夫委員)
・深谷市における公益通報制度の取り組みとその運用状況(吉村委員)
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:34KB)
【資料1】 公益通報者保護法について~労働者、労働組合の視点から~(仲田委員提出資料) (PDF形式:249KB)
【資料2-1】 大阪弁護士会公益通報サポートセンター活動報告(山本委員提出資料) (PDF形式:117KB)
【資料2-2】 参考資料[電話相談分析、相談対応で感じられた問題点、相談フローチャート](山本委員提出資料) (PDF形式:208KB)
【資料3-1】 東京3弁護士会による公益通報者保護に関する取り組みについて(松村委員提出資料) (PDF形式:166KB)
【資料3-2】 東京3弁護士会の公益通報相談窓口[東京弁護士会、第一東京弁護士会WEBより](松村委員提出資料) (PDF形式:346KB)
【資料4-1】 大阪市の公益通報制度の運用状況について(報告)(三木委員提出資料) (PDF形式:185KB)
【資料4-2】 大阪市 公益通報の受付状況(三木委員提出資料) (PDF形式:278KB)
【資料4-3】 大阪市 公益通報 処理状況(三木委員提出資料) (PDF形式:251KB)
【資料4-4】 公益通報者保護法による通報制度と大阪市条例による通報制度との比較(三木委員提出資料) (PDF形式:205KB)
【資料4-5】 大阪市 職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例等(三木委員提出資料) (PDF形式:366KB)
【資料5-1】 深谷市における公益通報制度の取り組みとその運用状況(吉村委員提出資料) (PDF形式:241KB)
【資料5-2】 深谷市 コンプライアンスハンドブック(吉村委員提出資料)

≪1.開会≫

○原事務局長 本日、皆様お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから第3回「公益通報者保護専門調査会」を開催したいと思います。
 今日、人数がすごく少なくて大変恐縮なのですが、早めの夏休みというところもあるかと思いますけれども、橋本委員、大杉委員、大村委員、渡邊委員、野澤委員、消費者委員会担当委員の日和佐委員がご欠席となっております。
 議事に入る前に配付資料の確認を事務局からさせていただきたいと思いますが、第3回議事次第がございますけれども、そちらの後ろに配付資料1ということで資料1~5までです。
 今日はここに書いてございますように、それぞれの委員の方々からヒアリングを行わせていただきたいと思っておりますけれども、そちらの資料を付けさせていただきました。不足の資料がございましたら審議の途中でもお申し出ください。
 それでは、座長、議事進行、どうぞよろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもお暑いところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

≪2.公益通報者保護制度の運用状況について≫

○島田座長 本日は、今ございましたように「公益通報者保護制度の運用状況について」を議題にして取り上げたいと思います。
 前回、企業における運用状況を3名の委員の方からご発表いただきました。本日は引き続きまして労働組合、地方自治体、弁護士会における取組みについて5名の委員の方から発表していただくことを予定しております。

(1)公益通報者保護法について~労働者、労働組合の視点から~

○島田座長 それでは、早速、各委員から発表していただきたいと存じますが、また、発表後には前回同様質疑応答を行って議論を深めたいと思います。
 資料の順番ということで仲田委員からお願いいたします。

○仲田委員 連合経済政策局の仲田と申します。本日、きれいなカラーの資料を用意していただいてどうもありがとうございます。5名発表ということを知らなかったので、時間がかかってしまうかもしれないので早口で説明させていただくかもしれませんけれども、よろしくお願いします。
さて、早速でございますけれども、本日お話しさせていただくテーマについてご紹介させていただきます。2ページの方に1、2、3と書いておりますけれども、最初に企業の不祥事が発生する中でCSRとコンプライアンスの確立について考えてみます。続いて職場での制度の推進ということで、労働組合での取組みについてご紹介させていただきます。最後に公益通報者保護制度の問題点とこれからの課題について触れさせていただければと思っております。
 3ページでございますが、企業不祥事の続発と内部告発について、最初に説明させていただきます。
 4ページの下の段の方に記載しておりますとおり、この間多くの企業、官公庁などの不祥事が表面化したことが記憶に新しいことと思います。このようなトラブルの続発はCSR、コンプライアンス確立の必要性が組織の体制や構成員の意識に浸透しておらず、内部の論理を優先する体質が色濃く残っているということも一因だと考えております。
 ちなみに、一番下、2010年の日本相撲協会でございますけれども、こちらはCSRの問題とは外れるかもしれませんけれども、個人的思いが強かったので記載させていただいているところでございます。
 コンプライアンスの確立のためには、まず社内、組織内の体制の確立と意識の改革が必要であり、それを通じて不祥事を未然に防ぐことが最も重要と考えております。そのために企業などでは労使の日常的な協議を進めるとともに、消費者、地域住民などのステークホルダーとの対話を積極的に推進しなければならないと考えております。同時に職場での法違反などの不祥事やそのおそれについて、幹部はもとより一般の職員が日常的に指摘できる体制と意識づくりが必要となります。
 しかし、実際には組織内部の論理が優先し、正しい指摘をした労働者が不当な解雇や配転、あるいは労働条件を切り下げられる事例が後を絶ちません。特にマスコミなど外部への通報は、今であると裏切りというような形で受けとめられるおそれもあって、解雇を含む懲戒処分に付される事例も少なくありません。
 解雇された通報者による訴訟は長期化することが多く、また、たとえ勝訴したとしても労働者は多大な負担を乗り越える必要があるというところでございます。
 労働組合はこのような事例の相談を扱うことなどを通じて、通報した労働者を保護する法律の制定を求めてきました。このような背景もあって、2002年に政府が法の制定に取り組む際の審議会の段階から議論に参加をしてきたというような背景がございます。
 5ページでございます。こちらはCSRに関する企業の取組み状況についてアンケートを記載したものでございます。連合のシンクタンクに当たります連合総合生活開発研究所の労働CSR研究会で行われた調査結果を示したものでございます。
 企業の取組みにつきましては、1,242社の対象企業のうち、378社から回答を得て、有効回答30.4%、平均従業員数は3,200人ぐらいの規模のものでございます。
 表1の方でございますが、CSRに関する24項目の企業行動に関して企業が熱心に取り組んでいるかどうかを質問した結果でございます。これによれば、24の項目のうちトップは健康・メンタルヘルスの管理・改善で46.6%。次いで、不正行為防止のための内部通報システムの構築などが続いておりますが、いずれも50%未満の水準とCSRに関する取組みについてはやや熱意に欠ける部分が見られるという状況でございます。
 表2は現時点での組織、制度の有無にかかわらず、CSRのために最も有効と思われるもの、これは9つの項目のうち3つ以内を選択するというような方式をとっておりますが、こちらを尋ねたものでございます。
 9つの項目のうち、一般社員研修制度が51.6%とトップで、次いで専門部署の設置、横断的なCSR委員会となっております。
 こちらの表では同時にその組織、制度の普及率というものを掲載しておりますが、ご覧いただけますように、存在する制度と有効だと思われる制度のギャップというものが生じているのが1つの特色でございます。
 一般社員研修制度や専門部署の設置というものは、いずれもコストと時間を要するものであって、それも一因として普及が遅れているのではないかと思っております。
 続いて下段の6ページでございますが、同じ調査を企業ではなくて労働組合に対して行ったデータでございます。1,242組合に対して558組合から回答を得たもので、有効回答率は44.9%、平均従業員数は2,645人となっております。
 表3でございますが、労働組合から見て企業が取組んでいるものを表1と同じ24項目について尋ねたものでございます。トップは健康・メンタルヘルスの管理・改善が74.9%で、法令遵守のための社員教育と65歳に向けた雇用延長が続いており、企業側の熱心な取組みについて質問した結果とほぼ同じ項目が示されております。
 これら24項目のうち、労働組合が労使協議で実際に発言したものを右側に「発」という形で記載しておりますが、65歳に向けた雇用延長など、賃金や雇用、労働条件に関する項目は非常に高い発言数となっている一方、法令遵守というような問題や環境保全などの発言は伸び悩む傾向にございます。
また、CSR推進への労働組合への参加については、やや心もとない結果となっております。表4に現時点での制度、組織の有無にかかわらずCSRのために最も有効と思われるものを示しておりますが、CSR遂行のための常設の労使の委員会というものが39.8%で第3位となっておりますが、企業にこの制度があるとする労働組合は、実は11.3%にとどまっており、全項目の中で最下位の普及率になっております。
 また、ここには掲載しておりませんが、労働組合から見て気になるデータもございます。それはCSRの行動基準や指針がある企業に対して、その制定について労働組合が関与したかどうかを尋ねたものでございます。それによれば、共同でつくった、もしくは意見を聴取したというようなものは合計でも14%にとどまっておりまして、作成後にそれを説明したというのが66.8%、報告も説明もなかったというものが15.9%と非常にさみしい数字となっております。
 このようなデータからも労働組合のCSR推進の取組みについてはばらつきがあるということが伺えます。
 7ページでございますが、職場での対応のあり方について説明させていただきます。公益通報者保護制度に関する職場での対応についての基本は、それをCSR、コンプライアンス確立の柱の1つとして位置づけ、企業のトップを始めとして全組織的な意識づけを行うことであると考えております。
 そのためには、まず法令遵守やCSR推進のための社員教育などを徹底する必要がございます。労働組合は労使の協議を通じて公益通報者保護制度の適切な導入がCSR、コンプライアンス推進の重要な課題であることを確認し、更にそのことを職場集会などを通じて労働組合員に浸透させる努力が必要となります。この際、組合員はもとより、組合員ではない事業所の労働者に対しても、可能な限り情報提供を行って周知を図る必要がございます。
 また、労働組合自身のコンプライアンスの強化ということも、常に意識することが大切と思っております。
 続いて、制度の確立と点検についてでございますが、公益通報者の保護を図るには労使協議を通じて企業における制度の確立を具体的に進める必要がございます。まず法とともに行政のガイドラインに示されているシステムを企業の制度として確立します。その際には社員、職員などによって窓口のアクセスが容易であって、通報の受付から企業の対応までの流れが明確に示される必要がございます。
 現在の公益通報者保護法は、労働者の保護や制度の整備を進めるためには不十分な面があると考えております。そのため、労使協定で補完をして実効あるものにする必要があると考えているところでございます。
 連合は2006年1月、実効ある制度の整備について、職場での対応のあり方をまとめましたので、ここで紹介させていただきます。9ページは全体のフロー図で、具体的な項目については8ページにマル1~マル6として示しております。
最初に「マル1相談窓口の設置と適切な運営」という課題です。行政のガイドラインに従って、まず相談窓口を確認する。相談窓口では労働者の幅広い相談を行い、公益通報に相当するものは通報窓口に伝えるようアドバイスを行うことが望ましいということでございます。労働組合が単独で相談窓口の設置や相談業務を行うことが困難な場合は、上部団体や外部の相談窓口などと連携して対応することも想定されます。
 「マル2通報窓口の設置と適切な運営」という課題です。各種の相談が持ち込まれる相談窓口とは別に置くことが本当は望ましいのですが、同一のところで行う場合にはそれが相談なのか通報なのか、これを正しく判断する必要がございます。また、労働者の保護のためには、相談通報の窓口では匿名のものも受け付けることが必要であると考えております。
 通報窓口には企業のヘルプラインなどに加えて、弁護士事務所あるいは労働組合を指定することで制度の実効性が高められると考えられます。なお、内部通報については保護の範囲が広く、労働組合員ではない労働者、派遣や請負の場合も含め労働者の保護を強化することができるため、労働組合の内部通報窓口への指定を事業主に働きかけることを呼びかけております。
「マル3通報手続きの整備」でございます。通報内容の検討、調査の実施、是正措置の実施など、法とガイドラインを踏まえた通報手続を整備することが必要でございます。この際に注意すべきことは、内部通報、行政、外部通報では、それぞれ労働者の保護のレベルが大きく異なることでございます。
 なお、派遣労働者と請負労働者の法律上の保護には違いがあることを理解しておく必要もございます。公益通報を理由とする派遣契約の解除というものは禁止されておりますが、請負営業の解除というものは、法律上は禁止されておりません。
更に下請け、系列企業の労働者の公益通報の保護について、関係する労働組合の適切な配慮が望まれます。系列にある小規模企業に相談、通報窓口の設置が難しい場合は、親企業の窓口を指定することも可能でございますので、企業グループの労働組合での十分な話し合いが必要と考えております。
 「マル4適切な通報処理の実現」という観点です。企業の不正に関する情報が通報された場合は、労働組合は企業のヘルプラインが適切に処理しているかをチェックします。そして、通報された事実を速やかに確認し、不正があれば直ちに解決することを求めます。同時に守秘義務の遵守など、通報した労働者の保護を徹底するよう求めます。
 「マル5労働者の保護と救済」という観点です。労働者の解雇や不利益取り扱いなどが発生した場合には、労働組合は労働者の保護と救済のために的確に行動する必要がございます。まず、団体交渉を通じて解決を図ることになりますが、そのため、公益通報者の保護と救済を労使協定に定めておくことが望ましいと考えております。
 公益通報者の保護に関する協定がない場合には、通常の団体交渉という形での対応になりますが、交渉が難航する場合は労働審判制や裁判所などの公的制度に訴えることを検討するという流れになります。
 最後に「マル6労使協定の締結」ということでございますが、前項の労働者の救済という観点はもとより、法の保護要件を満たさない公益通報の保護、守秘義務の徹底、制度運営に関する情報開示などの事項は、労使協定を締結して確認する必要があると考えております。
 10ページ、最後になりますが、制度の問題点と今後の課題について話をさせていただきます。まず制度の問題点と課題については、前回事務局からお話もございましたが、中小企業の組織への周知と徹底が不十分であるということが挙げられます。
 また、内閣府が実施した労働者向けインターネット調査にもございますとおり、労働者の保護が十分行われていないのではないかというおそれから、公益通報しないという通報制度の信頼性が問われる結果も出ております。この制度では法は解雇の禁止などのみを規定しておりまして、具体的な手続や労働者の救済などは法的拘束力のないガイドラインに委ねられていると認識しております。したがって、現行制度の下では、企業がガイドラインの内容に沿った制度とするよう強く求めることとなります。
 続いて相談体制の充実についてでございますが、労働者の通報に先立ち、相談ができるようなシステムにすることが望ましいと考えております。公益通報者保護法はその保護の対象と内容が一般の労働者にはわかりづらい面があり、その意味からも相談体制を充実する必要がございます。相談体制の充実に関しては、労働組合の役割も重要と考えております。労働組合自身が法と制度の内容を十分に理解して、労働者の保護を確実なものとする必要があると思っております。
 法と制度の強化についてでございます。委員会の初回でも述べさせていただきましたが、再度説明させていただければと思います。1つ目が「法令違反のおそれ」を対象とすること。現在は「まさに法令違反が行われる」場合の通報は保護されますが、「法令違反のおそれ」は対象としておりません。深刻な不正となる可能性が高い事案が放置されることのないよう、対象範囲の拡大を図るべきと考えております。
 2つ目が外部通報の保護要件の緩和でございます。現状では外部通報は内部通報に比べて保護要件が厳しく制限されております。一方ではマスコミへの匿名メール、通報などは激増していると言われておりまして、ゆがんだ状況をもたらすことが懸念されます。判例なども参考に外部通報の保護要件を緩和することを検討すべきかと考えております。
 3つ目が手続に関する法の規定でございます。中小の事業所ではガイドラインに記されている相談、受付窓口の設置に始まる手続の実施が大きく遅れております。拘束力のない任意のガイドラインのみで対応することには限界があるのかなと思っております。
 なお、労働者の保護が十分行われていないのではないかというおそれを少しでも解消するためにも、公益通報を専門に受けつける第三者機関を設置するということを検討することも1つなのかなと思っております。
 最後に救済に関する法の規定でございます。現在の法には公益通報者が不利益取り扱いを受けた場合の救済に関する規定はございません。そのため、法違反の解雇が行われた場合には、裁判所で救済、補償を求めることになりますが、労働基準法などのシステムに比べて労働者の負担は大きく、救済に関する法の規定を検討すべきかと考えております。
 最後に(4)でございますが、公益通報に関して増大しつつある課題として、海外における企業の不正への対応の問題がございます。公益通報者保護法は日本国内に適用されるものであることから、日本企業の海外事業者に雇用されている労働者や海外への長期出向の労働者には適用されず、現地の法律で扱われることになります。
 公益通報者保護制度がある国であればまだよいのですが、整備されていない途上国などの場合には、公益通報を行った場合に公的な保護の手立てがないという問題がございます。グローバル化が進む中、海外での企業行動やサプライチェーンの問題が国際的なCSRの主要課題となっております。その中で公益通報者保護法の国際化という課題についても検討を行う必要があるのではないかなと思っております。
 長くなって大変恐縮でございますが、以上でございます。ありがとうございました。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見のある方はどうぞご発言をお願いいたします。特にございませんか。
 どうぞ。

○三木由希子委員 ありがとうございました。単に聞きもらしているだけかもしれないのですが、組合として相談窓口とかそういうのを設けているような例というのはあるかどうかというのが1点目の質問です。
連合としていろんな組合から公益通報の問題について相談を受けることがあるか、あるいは助言をしていくという仕組みがあるのかどうかというのが2点目の質問です。
もう一つは、先ほど公益通報に関する労使協定がある場合もあるというようなお話だったかなと思うのですけれども、実際にそういう実績があるのかということと、公益通報に絡んで労使交渉に入ったような例があるのかということを、お答えいただける範囲でいただければと思います。

○島田座長
 どうぞ。

○仲田委員 ご質問いただき、ありがとうございます。答えるのが非常に難しいというところでございますけれども、実際にそのような相談窓口を企業に設けているかどうかというような観点につきましては、それはございます。具体的な企業名については持ち帰って調べさせていただければと思っております。
 組合からの相談についてですが、最初にこの制度が導入されるときに、まず連合で方針を確認しまして、このような方針でやりましょうということを各産業別労働組合にお伝えをして、その協力も得ながら各個別の企業の労働組合に説明させていただきました。
 最初に取り組んだときは、その他様々な取組みでもそうなのでしょうけれども、最初のうちはどういうふうに規定をつくったらいいのかというような質問、あるいは社内規定、具体的にはここの部分はどうなのというような相談はたくさんございました。ただ、最近は、連合に相談が寄せられるということはほとんどなく、山があるというか、最初のときだけで最近は停滞していると言ったら失礼になるかもしれないのですけれども、このことについて関心が薄れてきているのかなというように感じられます。
 あともう一つ、何でしたか。

○島田座長 労使協定。

○三木由希子委員 労使協定と労使交渉に入るような事例があるのか。

○仲田委員 私自身把握できていないものなので、そこの部分は戻って調べてみたいと思っております。わかる範囲でご提供させていただければと思っております。

○島田座長 ほかにございますか。では、私の方から1点だけお伺いしたいのですが、今の三木委員からのご質問に関連をするのですが、法の2条の労務提供先が指定しているものという通報先がございますね。これで労働組合が指定されたという例はございますか。

○仲田委員 すみません。私自身把握できていないので、そこの部分は確認してみます。ただ、最初導入するときに実際指定された場合には非常に重労働になると。実際、守秘義務の問題であったりとか、例えばセクハラの問題で相談されたというときに、今までの労働組合の動きとすると、労働者がわざわざ人事ではなくて労働組合に相談してきたというような状況であると、労働組合が主体的になって何とか解決しようと動いておりました。それが今回内部の通報機関という形になりますと、労働組合だけが勝手に動くわけにいかず、本人の保護を図りながら対応しないといけない。
 勝手に労働組合が上司とかに当たってしまって、それが表ざたになって問題になったときに、非常に対応上困難になるということも考えられるので、そこの部分は注意して取組まないといけないねということで、最初のうちはそういうような話が結構多かったのです。そういうようなこともあってなかなか進んでいないのかなと思いますが、現在実態がどうなっているかというのは調査してみないとわからないので、わかり次第またご連絡させていただければと思います。

○島田座長 そうすると、労働組合としてはどちらかというと事業者内部の通報先というよりは、その他外部の通報先ということで相談窓口を考えているということでよろしいのですか。

○仲田委員 方針的にはできるだけ内部通報先として指定されるように働きかけてくださいとは言っていたのですけれども、実際現場でどうなるかというと躊躇してしまうところも多いかという状況になっている。

○島田座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○中村委員 今のことと関連するのですけれども、私どもは相談を受けた時や、裁判をやっていて非常に感じるのは、内部通報したことによって差別を受けた人が相談に来て、これは長い戦いになりそうだけれども、労働組合の支援は得られるのですか、という質問を必ずしております。
 労働組合にも実は相談したけれども、支援を得られなかったということで弁護士のところに来た。結局通報する人というのは1人でやるのが多いですね。そうすると、例えば集団的差別を受けたようなケースだったら労働組合は組合を挙げて支援になるのでしょうけれども、1人で通報して1人だけが差別されたというケースには組合を挙げて支援を得られにくいというのはすごく実感するのです。
 こういう孤立無援の方がどうしても出てくるのですけれども、この辺、今おっしゃっているように組合としてはいろんな立場上難しいことはあるかもしれないけれども、労働者の通報からの不利益を守るということではもう一歩踏み出さないと実際には扱えないのではないかということを、私たち相談を受ける範囲から実感しているのですけれども、その点は何かお考えはございますか。

○仲田委員 労働組合への叱咤激励だと思って今のご発言を受け止めさせていただければと思っています。やはり理想としてはすべて労働組合で守りたい。例えば1人の方の話であっても、できる限り労働組合としては全力を持って守っていくというのが本来あるべき姿なのかなと思っております。
 一方で、なかなかそれだけの体制をとれるかどうか。労働組合の中でも専従の方がどれぐらいいるのかというところで、そこにどの程度人が割けるのかというような問題もあったりしますので、個々の労働組合ではなかなか難しい問題なのかなと。したがって、理想像としてはできれば単体で、それができないのであれば例えば上部というか、産業別労働組合との連携も使いながら何とかできないものかなということを模索していくのかなと思っております。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、よろしゅうございますか。

(2)大阪弁護士会公益通報者サポートセンター活動報告

○島田座長 時間の都合がございますので、続きまして山本委員の方からお願い申し上げます。

○山本委員 山本です。お手元の配付の資料2-1と2-2になります。申し訳ありません、最初に訂正が2か所ほどです。まず、2-1の表題「大阪弁護士会公益通報サポートセンター」と書いていますけれども、正式名称が「大阪弁護士会公益通報者サポートセンター」で「者」が入ります。
 2ページ目「4 電話相談対応で感じられた問題点」の後で「参考資料1」と書いてありますが「参考資料2」の誤りです。
 では、早速ですけれども、中身に入らせていただきます。お手元に当サポートセンターのリーフレットを配付いたしましたので、適宜ご参照ください。若干中身が古いということになっていますけれども、こういうもので広報活動をしております。
 センター自体の目的は、レジュメに書いていますように公益通報をしようとする者及び公益通報したことにより不利益な取り扱いを受けた者に対する支援活動並びに公益通報に関する調査、研究活動等を行うということになっておりまして、この中でも支援活動というものが中心となっています。
 平成18年4月1日、法施行日から活動を始めています。相談自体はこのレジュメにありますように電話相談と面接相談、この2つが中心で二段階になっています。電話相談は毎週月曜日の正午から午後3時まで、当然費用は無料ということです。受け付ける相談につきましては、広く捉えておりまして、公益通報に関するものであればよく、公益通報しようとする者、した者からの相談を予定しています。ただし、公益通報と言っても、保護法上の公益通報を指すというものではなく、広く公益を侵害し、または侵害するおそれのある違法行為が行われる、また行われようとしていることに関する通報を含むという形にしております。
 相談担当者用にマニュアルというものを作成しておりまして、そのレジュメの下部に書いてありますけれども、マニュアルには対象事実としてこういうことを念頭に置いていますということで6項目を掲げております。法律の範囲よりも随分と広い範囲ということを書いております。
 続きまして、面接相談です。電話相談を受けまして、継続相談、面接相談が必要だという場合に面接相談が行われるということがまず1つ。もう一つは、大阪弁護士会のホームページから面接相談を予約できるというWEB投稿システムというものがありまして、そこで申し込みを受けて、これは面接相談を行うべしという判断ができる件について面接相談を行っているという形になります。
 この面接相談も1回は無料という形で進めています。2回目以降どうなるかということですけれども、基本的には2回目は弁護士が事件として受任するという形、または有料の法律相談として継続して相談を行っていくということを予定していますが、事実上無料の法律相談で、継続して行っているという場合もあるように見受けられます。
 広報としましては、大阪弁護士会のホームページのトップページに内部告発(公益通報)でお困りの方へということでバナーを貼って、そこから入っていけるということにしていたのですが、この7月から若干システムが変わってしまいまして、トップページには載っていないという形になっております。リーフレットを各自治体とか労働組合といろんな関係機関に送って広報活動しています。
2ページ、実績になります。多少集約が不正確なところもありますので、数字に誤差があるかもしれませんが、電話相談が平成18年度から本年度の7月まで合計で243件、WEBの相談申込は68件ですので、合計で311件、その中で面接相談に移行したものは合計で22件ございます。
 本日、私がお伝えしたい点は、具体的にどのような相談があって、公益通報者保護法で十分対応できているのかというところです。3に移りますけれども、電話相談内容の分析というものから説明します。参考資料1になります。これが先ほど説明した電話相談に関する分析結果です。なお、各年度の総件数というのは分析できたもの、相談があった中で相談カードを作成されているものに限られますので、先ほどの実績の数字とは若干異なってきます。
 それと各年度で通報前の相談と通報後の相談とに分けていますが、1つの相談で一旦内部通報したけれども是正されないので更に通報したいというのと不利益取り扱いを受けているというのが併存した相談というのがありまして、そういうものは両方に振り分けていますので、この合計数と総件数は一致しないという形になっています。
 この相談分析を見てみますと、1つ大きな特徴としては、退職者からの通報件数、相談件数というものが割合的に非常に多いということです。職場にいる中ではなかなか言えないけれども、会社から出て初めて相談できる、通報できるということが多いということが伺えます。
 結果の方を見ていただいたらいいのですが、相談のみで終わるというのがほとんどでして、面談へ移るのが少ないということです。当然、相談の中では公益通報事案に当たらないというものが結構多くありますので、そこも反映していますが、なかなか保護法に基づいて担当者が慎重にアドバイスをしているとそこで終わってしまう。先になかなか進まないということが指摘できると思っております。
 次が4の電話相談対応で感じられた問題点ということです。詳しくは資料を後で見ながら説明しますが、まず大きく7~8項目あります。
(1)通報対象事実に含まれないという通報に関する相談が多いということです。
(2)労働者に入らないものからの通報がある。
(3)通報者が望むような形での通報に対するアドバイスがなかなかできないということ。
(4)保護の内容が限定されているので、相談された方の保護には保護法は直接適用されないという例も多いということです。
 (5)事業者が通報者捜しを行っている、通報者が特定されて不利益をこうむっていますという通報後の相談というものが多くありまして、事業者の意識改革というのが進んでいないのではないかと感じる点があります。
 (6)また行政機関に通報したけれども、ちゃんと調査してくれないとか、レスポンスがないというのであわててこちらに相談に来られるという方もいらっしゃいます。
 (7)法律上おそらくこれは行政機関以外の外部通報に当たるのだけれども、事案によっては内部通報と同じぐらいの内部是正に働くのだろうというような通報もあるということです。またこの中で詳しく話します。
 (8)その他としましては、法律が非常に難しくて、その場で弁護士が適切なアドバイスができない、通報対象事実に入るのかどうかという判断を電話相談ではできにくいというようなことがあります。
 では、資料2-2を見ながら、若干詳しく説明したいと思います。字が細かくて見にくくて申し訳ありませんが、ある程度資料として件数を書きましたのでそうなってしまいました。ここに書いていますのは、対応について問題を感じるというものでして、当然このセンターに相談いただいて実績が上がっているというようなケースもあります。裁判に進んだ、あるいは報道等で取り上げられて是正されるといった例もあります。ここではそういうものではなくて、なかなか対応できなかったという事例についての報告です。
 1は、障害者雇用に関して法定の基準を満たしていない、障害者である社員への待遇が悪いというような相談です。この基準違反については法律上おそらく罰則はないだろうという担当者の判断ですので、通報対象事実には含まれないという回答をしています。面接相談まで至りましたけれども、詳しく事情を聞いて公益通報者保護法の通報対象事実に入らないのではないかいうことで、アドバイスのみで終了してしまったという事案です。
 2は、不正経理があったという問題で、その中で残業手当の不正受給もあり、こういうことを会社に通報したら、通報者が不正受給の犯人の1人とされて裁判を起こされて解雇されたといった事案です。
 通報者自身はこのような仕打ちを受けてマスコミに訴えたいというような気持ちがあったようですが、担当弁護士としては行政機関への通報ぐらいでとどめたらどうだというアドバイスをするに終わっています。
 3つ目は会社による雇用保険の不正受給というものです。電話相談だけでしたので、詳細な内容はわかりませんが、この不正受給に関しても雇用保険法上は罰則がなく、雇用保険法違反ということでは通報対象事実にはならない、詐欺となれば警察に告発することになるということでアドバイスのみで終わっています。
 おそらく通報者としては社会保険所に通報をすることを後押しできるようなアドバイスというものを求められていたと思うのですが、どうも法律を厳格に解釈していくと、この場合、通報対象事実に当てはめようとしたら詐欺になって警察ですよという形で対応してしまっています。
 4つ目は、保険金の不払い事案です。代理店経営者が保険会社本部に通報したら、支社から嫌がらせを受けて廃業に追い込まれたという事案です。これも保護法では当然この被害救済等に当てはまるような条項はなく、個別被害救済しか方法はありませんねということで、一般の法律相談に進んでいただくという形をとっています。
 5番目は、脱税事案です。公金横領、補助金不正受給というのが通報相談では結構ありますけれども、脱税については皆さんもご承知のように保護法の通報対象事実に含まれないということで、そういう前提での対応に終わっています。
 6は会社の霊感商法に反対したら、その役員が無断で辞任登記されたというものでして、少し事案として公益通報に該当するのかという問題がありますけれども、違法行為を指摘あるいは通報した役員が解任されるということもあるということで、役員に対する解任は保護法の適用はない、この辺も考える必要があるのかという形での問題提起とさせていただきます。
 7番目は市営駐車場での横領事案というものです。通報者は退職者でした。問題を指摘したところ、議員から圧力がかかったということで、嫌がらせ等を非常に心配されていたということです。
 まず、退職者自体に公益通報者保護法は適用されにくいということを伝えています。相談者からは、それであれば従業員から通報させたらいいのかというようなやりとりになってきまして、法に当てはまるために本筋と違うような話をせざるを得ないという形になってしまっています。
 8番目は歯科医院の患者からの通報で、これも当然保護法では保護されませんよというアドバイスをしたということです。
 9番目は保護法施行後も会社は相変わらず通報者捜しをしているということを示す事例です。これは飛行訓練時の免許不携帯を国交省へ通報したら、会社が社宅の電話履歴等を調べ、特定されたというような事案です。
 会社の意識改革がなかなか進まないということで、保護法違反というものをもう少し厳しく処罰する等、ある程度強化しないと意識改革が進まないのではないかというようなことで、事例の13、14も同じようにすぐに通報者特定が行われてしまっているという事例でした。
 10番はメーカーの従業員が販売業者の談合にメーカーが加担しているということを公取へ通報したいというものです。メーカーの販売業者間に独禁法違反があるということは割と簡単にわかるのですが、メーカーがそこに加担していて、それが独禁法違反に当たるかどうかということになると、真実相当性の立証に難しい点が出てくるということで、まずは親会社のヘルプラインを利用して、とりあえず是正を図ったらどうかというようなアドバイスで終わっています。この辺は保護法がなければかえって公取への通報や相談が積極的に進んでいた事例ではないかなと思われます。
 11は、航空機開発会社における行政機関に提出する書類への計算値の虚偽記載というものです。電話相談ですので、どのような法律に違反するかまではわからなかったということです。相談者は行政機関やマスコミ等に通報した場合に、守秘義務違反やその他を理由に損害賠償を受けないかということを心配していました。
 担当弁護士は、保護法では多分保護されないでしょうということでした。どうしても現実の訴訟で違法行為について立証するということが容易でありませんので、不正行為の通報であれば損害賠償についても大丈夫ですよというようなアドバイスは弁護士としてしにくい、その結果、どうしてもマイナス方向に働いてしまうという事例です。
 12についても同様の事例ですが、この場合は会社の独禁法違反というのもある程度資料等が手元にあって明確であるということで、正当な行為であり、損害賠償については大丈夫ではないかとある程度積極的なアドバイスはできていますが、いずれにしても保護法による保護の対象ではありませんということになっています。
 13は社会福祉法人で人員基準を満たしていない、架空請求等があるなどと市に通報して、配置転換を示唆されたというような事例です。法人自体は公益通報に該当しないと明言していたということです。
 電話相談ですので、明確に保護法の通報対象事実に該当するか否かはわからず、通報先もすぐにはなかなか特定できないということで、継続相談、面接相談を勧めましたが、そこまでということであればということで、なかなか継続相談に進まずに電話相談のみで終わってしまったということです。この点は通報対象事実該当性の判断等が難しくて、通報者にマイナスに働いたのではないかと考えています。
 15は、鉄道で具体的にはATS自動列車保安装置といって、ATSが作動した場合に自動的に通報がなされる装置というのがあるのですが、それが設置されていないということで、現実にはATSが作動しても運転士は自分が危険物を見つけて停止したと報告している、こういう報告がまかり通っているということです。
 自動列車保安装置の設置自体に義務はないということでしたので、おそらくこのような報告自体が何らかの法律で違反していると判断するのは難しい。
 回答としては、保護法の対象ではないとした上で、行政機関への通報というものを勧めるように持っていきましたが、相談者はどうしても職場での自分の立場というものを考えて匿名でないとできないということでしたので、それであればなかなか保護法というのは適用されませんというようなアドバイスに終わっています。
 この事案は場合によっては国民生活の安全に大きな影響を及ぼす問題であって、やはり通報対象事実にこういうものが含めるべきだろうと考えています。
 17は、助成金の不正受給を総務省に情報提供したけれども、反応がないということです。行政機関に通報したけれども、反応がない、しっかりと調査しない、動いてくれないという相談は結構あって、16番、22番に書いている事案もそうなのです。
22番は国家試験のための学校の先生が国家試験の出題委員をしていて、試験前に試験問題が漏えいしてしまった、でも、試験は終わってもうすぐ合格発表がある、それまでに行政機関に伝えているのだけれども、全然反応がないということで相談がありました。この場合は面談日の直前にようやく動きがあったということで、面接まで至らなかったのですが、そういうふうに行政機関に伝えた場合にどういう流れで本人に情報が返ってくるかということが全く通報者はわからないのです。法律上も定めはありません。この辺をもう一度考えるべきではないかと思っております。
 19番は詐欺再生の事案で、民事再生申立に際して資産を隠匿しているということで従業員が通報したが、再生申立代理人に言ってもなかなか相手にされず、監督委員や裁判所に通報したらどうかということなのです。その場合、監督委員や裁判所というのは監督行政機関以外の外部になってしまうのではないか、ということになればそれなりの保護要件を満たさなければならないということで、こういう事案で監督委員とかに通報するのに要件を重く課す必要があるのか、相当かという点で考えれば、やはり外部通報の要件というのを重く設定し過ぎているのではないかと感じています。
 同様に23番では、上場企業の粉飾決算で、監査に入る監査法人に通報したいということです。当然、監査法人に通報すれば、監査法人により会社の中でのチェックが働きますから、内部での是正というものが図られるはずなのですけれども、特に会社が監査法人を通報先というふうに指定していないわけですから、この場合も法律上の当てはめでいけば行政機関以外の外部通報という形になって、それなりの証拠とかをしっかり持っている、イ~ニの要件に該当しないと公益通報者保護法では保護されないという枠組みになってしまう。こういうことで外部への通報という要件はもう少し緩和される、もしくは幅を持った運用ができるような規定の仕方というのが必要ではないかと感じました。
 とりあえず報告は以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。詳しいご報告を頂戴しました。いろいろご質問があろうかと思いますが、あと3人残っていらっしゃるということもございますので、ポイントで何かご質問がございましたらお願いをいたしますが、いかがでございますか。よろしゅうございますか。

(3)東京3弁護士会による公益通報者保護に関する取り組みについて

○島田座長 それでは、またお時間がございましたらご質問を頂戴するということで、とりあえず松村委員の方にバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いします。

○松村委員 では、私からは東京の弁護士会での取組みについてご報告させていただきたいと思います。レジュメに沿ってご説明したいと思います。
 まず1番ですけれども、ご存じかもしれませんけれども、東京には弁護士会が3つございまして、東京弁護士会第一、東京弁護士会第二、東京弁護士会という弁護士会に分かれております。ただ、この公益通報保護に関しましては、それぞれの弁護士会が独自の取組みをするとともに、三弁護士会が共同して取組みをしているという活動がありますので、そちらの三弁護士会共同での活動というのを中心にご報告したいと思います。
 2番にいきまして、まず公益通報(内部告発)の相談窓口についてご説明をいたします。(1)としまして、相談窓口の沿革についてですけれども、そこに記載されておりますように平成16年5月21日の衆議院内閣委員会で公益通報者保護法案に対する附帯決議がされております。その8項をそこに引用してございますけれども、本法の適用に当たっては通報しようとする者が事前に相談できる場が必要であることから、国、地方を通じて行政機関における通報相談の受付窓口の整備、充実に努めること。また、民間における相談窓口の充実に関し、日本弁護士連合会等に協力を要請することとされておりまして、これを受けて内閣府国民生活局長から日本弁護士連合会に要請があり、これに基づきまして全国の弁護士会に相談窓口の設置を呼びかけられたわけですけれども、これを受けて平成18年4月に東京三弁護士会で公益通報相談協議会を発足させました。
 その協議会で、下に書いてありますように平成18年4月1日に公益通報相談窓口をオープンし、受付を開始したということであります。そのオープンに際しましては、平成18年4月12日に公益通報110番というものを第1回目で実施いたしました。この110番には私も参加しましたけれども、15件の相談が寄せられました。2回目が約半年後の9月29日に実施されております。以降、東京三弁護士会で通報窓口を運営して現在に至っております。
 その相談の実施方法について、東京三弁護士会がそれぞれホームページを持っておりまして、それぞれが通報窓口について広報を行っております。本日は一番充実していると思われます東京弁護士会のホームページを資料として配付させていただきました。お配りした資料の4ページ目以下をご覧いただきたいと思います。
 こちらが東京弁護士会で公益通報相談窓口を広報しているページになっています。4ページ目の項目の下の公益通報相談をするにはという中をご覧いただきたいと思うのですけれども、東京の弁護士会では郵送での申し込みということを受け付けております。申し込みにつきましては、先の資料になるのですけれども、8~9ページに公益通報相談カードという資料を付けておりますけれども、このカードをホームページからダウンロードしていただきまして、必要事項を記載していただいて弁護士会の方に郵送していただくことによって申し込みを受け付けるという体制をとっております。これはFAX等ですと通報の内容によっては非常に秘密性が高いものがありますので、その漏えいを防ぐということで郵送での受け付けということにしております。
 この申し込みがありましたらば、弁護士会の方で受け付けまして、先ほどのレジュメの1ページ目に戻っていただきたいのですけれども、相談実施方法のところで弁護士会の方であらかじめ用意をしております相談を担当する弁護士の名簿から弁護士を指定しまして、原則として弁護士会館または相談を担当する弁護士の事務所で面談による相談を実施しております。
 この公益通報の相談につきましては、相談者の方からの相談料は無料にしておりまして、相談を担当する弁護士には弁護士会から日当が支給されております。初回の相談の後に相談者が更にその担当弁護士に継続的な相談ですとか、代理行為を依頼するという場合には、別途弁護士費用がかかるということになっております。
 続きまして、2ページ目の(3)相談実績ですけれども、平成18年以降の相談件数はそこに記載されているような数字になっておりまして、大体30件前後、月にすると2~3件くらいの相談があるということになっております。
 その相談の具体的な内容ですけれども、今まで相談を受けました相談の実施カードを100件ぐらいざっと見てきたのですけれども、その相談項目、内容としましては、一番種類として多いのは労働関係ですとか、職場のパワハラ、セクハラといったことが14件程度ということで一番数としては多かったと思います。
 それ以外には企業の中での上司が会社のお金を不正使用しているとか、背任をしているとか、そういったことについて通報したいということが続いて多いということで、それ以外は先ほど大阪弁護士会での相談事例と非常に共通しているなと思ったのですけれども、食品衛生法の問題ですとか、産地偽装の問題ですとか、それ以外は特にこの法律のものが多いということはなくて、さまざまな法律に該当するような通報というのが多かったと思います。あと弁護士会へ通報ということなのかもしれませんが、弁護士法違反の通報というのも2件ぐらいありました。
 その内容につきましてレジュメの(4)ですが、どういったことについて弁護士が助言をしているかということにつきましては、マル1で相談者が通報しようとしている情報が公益通報者保護法に規定されている公益通報に該当するかどうか。この点について相談者がわからないとか検討がつかないということで、これについてアドバイスをするということが数としては多かったと思います。
 マル2としましては、通報するということになった場合に、どこにどのような方法で通報するということが適切であるかということについての助言もしております。
 マル3に通報者が弁護士による通報を希望するという場合には、個別の代理行為を受任するということになりますけれども、こういった依頼もそんなに数は多くないですけれども、ございます。
 マル4に通報者が公益通報により解雇その他の不利益を受けた場合に、その不利益を回復するための弁護士活動ということで、これは労働審判を起こすとか、訴訟を起こされた場合に訴訟について依頼を受けて、代理人となって弁護士として活動をするといった活動を行っております。
 以上が公益通報の相談窓口についての活動ですが、3番目としましては、外部窓口の設置の依頼を受けるという活動もしております。
まず(1)ですが、官公庁からの依頼を受けておりまして、中央官庁からの依頼は6省庁から外部窓口の設置として担当してほしいという依頼を受けております。これも東京の3弁護士会で分担をしまして、6省庁について弁護士8名が担当しています。これは1つの省庁で複数の弁護士が担当しているという事例がありますので、省庁の数より弁護士の数の方が多くなっております。
 自治体からの依頼につきましては、東京23区の1つの区なのですけれども、そちらから外部窓口になってほしいという依頼を受けて、こちらには弁護士が3名担当しております。
 2番目に一般企業からの依頼を受けて外部窓口になるということも東京の弁護士会としては取組んでおりまして、こちらについては資料の10~11ページに、これは第一東京弁護士会のホームページからの広報をプリントして配付したものです。11ページの上から2行目をご覧いただきたいのですが、こちらは弁護士を依頼に応じていろいろな企業ですとか個人の方に紹介をするセンターなのですが、この紹介センターで企業の公益通報外部窓口部門というのも設けておりまして、依頼があれば適当な弁護士を弁護士会の方から推薦するという制度をつくっております。
 今日、弁護士会の方にも問い合わせたのですが、本日までのところではこの紹介センターにこういった外部窓口を担当する弁護士を紹介してほしいという依頼は今のところ0だということですが、今後こういった活動も活発に行っていきたいとは考えております。
 続きまして、レジュメの2ページの4番の弁護士のための研修会の実施ですが、こちらは先ほどご報告しました東京三弁護士会での公益通報相談窓口を運営するに当たりまして、相談を担当する弁護士のレベルアップを図るために毎年研修会を行っております。
 具体的なテーマとしましては2ページの下の方から書きましたけれども、平成18年には講演と事例研究を行っております。平成19年にも講演を行っております。
 3ページにいきまして、平成20年、21年度にも講演と、21年度にはパネルディスカッションも行っておりまして、本日ご出席の中村先生も加わったパネルディスカッションということも行っております。
 駆け足でしたけれども、以上が東京三弁護士会での活動の内容で、これまでの個人的な私の弁護士としての活動の経験も踏まえまして、この専門調査会で公益通報者保護法の改正についての意見というか若干提言ということで述べさせていただきたいと思います。まず第一点、(1)としましては、報告者からの報告でも複数出ているところではありますけれども、私の個人的な感じとしましても、やはり相談窓口での相談の大半というのは、相談者が通報しようとしている情報が公益通報に該当するかどうかとか、その内容に応じて、どこに通報すべきかといった事柄が多いものですから、これは公益通報者保護法の規定は読み方が非常に難解で、素人の方がさっと一読してどういった事柄が公益通報に当たるかとか、自分が通報しようと思っている内容はどこへ通報すれば適法になるのかといったことについてなかなか理解が難しいのではないかと思いましたので、法律を読みやすくというか、一般素人の方にわかりやすくするとともに、そういった方法での広報ですとかガイドラインとかそういったものを見直していただければいいのではないかと感じました。
 2番目としましては、実際に通報しようかという方が一番迷っているというか悩んでいるのは、自分の名前を会社の中で知られたくないということで、正義感から通報したいという気持ちはやまやまなんだけれども、だからといって自分が不利益を受けるのは困るという気持ちが大変強いということで、匿名性を保ったままでの、だけれども、不正は是正したいといった需要に応えるために、そういった法的な整備ですとか、システムの構築というのが必要になるかと思います。
 弁護士会に相談をされる方というのは、やはり弁護士というのは守秘義務があるので自分を守ってくれるのではないかという期待で相談をされるということも多いかと思うのですが、ではいざ通報に際して弁護士に依頼をして代理人になってもらおうと思うと、弁護士というのは大体頼むと幾らぐらいかかるのですかとか、そういったお金を自分が払えるかどうかといった心配をされる方が多いものですから、弁護士に頼んで安心して匿名性を保持して通報ができるようというためのシステムですとか、財源ということについてもご検討いただければというように、これは法律の改正とは離れるかとは思うのですけれども、そういったことも感じております。

○島田座長 どうもありがとうございました。東京三弁護士会のご活動、大阪弁護士会のご活動をご報告いただきました。2つの弁護士会の活動が出ましたので、余り時間はないのですが、そうは言いましてもかなり詳しいご報告を頂戴いたしましたので、若干ご質問等をお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 どうぞ。

○三木由希子委員 まず、山本委員に質問させていただきたいのですけれども、レジュメの1枚目の下に相談担当者マニュアルで対象事実とされているものと、公益通報者保護法で対象となる事実というのは大分差があるように思うのですけれども、広くマニュアルでは相談内容をしているのはどういうご趣旨かというのをお聞きできればと思います。
 松村委員には、実名での面談相談が基本ということだと思うのですが、結構ハードルが高いのかなという気もいたしておりまして、なぜ実名での面談相談が基本となったのかという経緯がもしわかれば、あるいはなぜ電話相談という選択肢がないのかということとか、その辺をお聞かせいただければと思います。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにこのお二人に対するご質問はこれでよろしゅうございますか。では、山本委員からお願いいたします。

○山本委員 まず、相談を受け付ける範囲を広くしているというのは、相談される方が入口で迷わないようにということが1つと、大阪弁護士会の委員会自体も公益通報者保護法の通報対象事実は狭すぎるという意識がありますので、それ以外の通報についても対応できる分は対応したいという思いがあります。
 一応説明としましては、保護法の対象事実や公益通報に当たらない場合には、それは保護法では保護されないけれども、ほかの法律や判例等の枠組みの中で保護されますというようなことまでできる限り説明するという形で対応はしています。

○島田座長 ありがとうございました。
それでは、松村委員、お願いします。

○松村委員 先ほどの実名についてのご質問ですけれども、これは実名でないと、全く匿名だと不真面目な相談というのを防ぐという趣旨かなと思っております。実名をいただいても弁護士は厳格な守秘義務がありますので、その点で秘密が漏れることはないということでご了解いただきたいと考えております。この制度立ち上げは私というよりも、むしろ中村委員の方が関与されているので、補足していただきたいと思うのですが。

○島田座長 中村委員、よろしいですか。

○中村委員 電話でなぜ受けないかですが、全くそれは制度とは関係ないのですが、東京の3つの弁護士会で受け付けたものを東弁、一弁、二弁に割り振るローテーションとして、電話を3本かけるよりは手紙でまず受けて、手紙で受けたものを事務局の方で東弁、一弁、二弁というふうに割り振っているという関係があって、手紙を原則にしています。
 メールでの受け付け等もやるべきだというので今検討しております。いずれそういうところも広げていこうと思っています。

○島田座長 ありがとうございます。

(4)大阪市の公益通報制度の運用状況について

○島田座長 それでは、先に進めさせていただきたいと存じます。次に三木信夫委員の方からお願い申し上げます。

○三木信夫委員 大阪市の情報公開室の三木でございます。それでは、私の方から大阪市の公益通報制度の概要につきましてご報告させていただきたいと思います。
 資料が多いので、資料4-1のレジュメに沿って簡潔にしたいと思います。まず、最初に制度の概要に入る前にここに書いていないのですけれども、大阪市でなぜこのような公益通報制度が導入されたかという背景を申し上げますと、平成16年、17年に大阪市では、いわゆるカラ残業事件と言いまして、超過勤務の実態がないにもかかわらず一律に月10時間とか残業を付けてそれを支給しておった。あるいはヤミ年金、退職金ということで、条例での支給割合を超えて一部そういう年金等の拠出に充てておった。ヤミ専従ということで、定められた時間以外に勤務時間中に労働組合活動を行っておったというような一連の不祥事がマスコミ等のリークをきっかけに出まして、それを受けまして当時の關淳一市長が任期途中だったのですけれども、出直し選挙ということで一度辞任されまして、出直し選挙をしました。それで再選されまして、再選後に市政改革ということで市政改革本部を設置して進めていった。その中の中心が3つあったわけですけれども、1つはマネージメント改革。2つ目はガバナンス改革。3つ目はコンプライアンス改革ということで、職員の公正な職務を執行していかなければいけないというような内容となったわけです。
 それを受けまして、平成18年4月1日から、この制度の概要のところにございますが、職員等の公正な職務の執行に関する条例というのを制定、施行いたしまして、制度運用を開始したということでございます。
 2番目に通報者ですが、大阪市の条例では何人でも通報可能となっております。したがいまして、大阪市職員あるいは大阪市民かどうか問わないということで、外国人の方でも何人でもできる。匿名も可能であるという点が大きな特徴でございます。
 3といたしまして、通報対象事実。これにつきましても、法律よりはかなり広げておりまして、大阪市職員の職務に関する事実、または委託先事業者の役職員の委託事務に関する職務執行に関する事実で、違法または不適正なものを広く受け付けておるということで、刑事罰に当たるような違法とかその他の違法だけではなく、不適切なものも受け付けておるということ。外郭団体等を含めるという意味で、委託先事業者にも広げておるという点が特徴でございます。
 4つ目に通報手段としましては、あらゆる媒体が可能ということで、電話、面会、郵便、FAX、電子メール、ホームページ等がございます。
 通報窓口につきましては、内部窓口と外部窓口がございます。内部につきましては、私ども監察部が中心ですけれども、大阪市の全部局、本局、区役所でもこれは受け付けることができます。公正職務審査委員会の委員長をされておる弁護士さんの事務所に外部窓口を設置しております。弁護士さんのところの外部窓口につきましては、本来の弁護士業務に支障があったらいけませんので、郵便、FAX、電子メールに限っております。
 6つ目に外部審査機関を持っておるということで、弁護士2名、公認会計士1名による大阪市公正職務審査委員会というのを条例で設置しております。また、委員の委嘱には監査委員とかと同様に市会の同意が必要とされております。
 この公正職務審査委員会がすべての通報案件を調査、審議するということで、必要に応じて市長、その他公営企業管理者等に勧告あるいは意見を述べることができるとなっております。
 7番目に調査方法ですが、調査をするかどうか、また調査をだれに委ねるかについては、委員会の判断により決定いたします。調査を行う必要があるときは、所管局にやらすことも多いのですけれども、内容によっては委員会の事務局であります私ども監察部が行う、あるいは委員会が直接行うということもできます。
 また、調査結果につきましては、所管の本市の機関に通知するとともに、通報者にも通知するようにしております。ただし、通報者が氏名、住所を明らかにして、結果通知を希望する旨を表示した場合に限っておりますが、通知をする。
 8番目に通報者保護ということで、通報者に対する不利益取り扱いの禁止。通報者が識別できる情報。これはモザイクアプローチで他と組み合わせることによって識別可能な情報を含めて、これは一切非公開ということで通報者保護に万全を期しております。
 2番目に制度の運用状況でございますが、これは資料4-2-1以下をまた時間のあるときに見ていただいたら結構なのですけれども、要約しますと、そこのレジュメの2の(1)にありますように、この4年間で2,815件の通報を受け付けております。年平均で約700件ということで、日本の自治体では最も件数が多いということでございます。
 この内訳は大阪市の部局に対する内部窓口で約8割。外部窓口、弁護士さんのところが約2割となっております。受け付け方法では、ホームページとかメールなどインターネット利用が最も多くて40%となっています。以下、電話が19%、郵便が17%、FAX13%、面会11%となっています。
 匿名と顕名、氏名を明らかにした分との比率ですが、匿名が6割、顕名が4割となっておりまして、やや匿名の方が多くなっております。職員か職員以外かの比率ですが、匿名の部分はわかりませんので、顕名通報のうちでこれを調べますと、職員と職員以外ではほぼ半々という形になっております。
 所属別の被通報件数ですが、多い順で言いますと、本庁部門では環境局といいまして、ごみの収集作業とか廃棄物処理を所管しておりまして、ここが一番多い。教育委員会、特に小中学校の教員等ここの辺りについても多くて、3つ目は交通局ということで地下鉄、バス等ということであります。健康福祉局。これは生活保護その他社会福祉、社会保障等をやっております。総務局は人事、給与、組織、文書等を管理しております。こういったところが多くなっておる。このほか、区役所、大阪市の場合は24区役所あるわけですけれども、24区総体としては環境局に次いで2番目に多いという結果になっておりまして、これらから一般的に言えることは、やはり現業部門ですとか出先機関を多く抱える事業所といったところを持っておる局、あるいは人事労務部門であるとか、区役所のように市民と直接接する部門に通報が多くなされるという傾向がございます。
 次に通報事案の性質の分類ですけれども、一番多いのは職員の服務規律関係でございまして、その次に公金管理、施設管理、契約関係、生活保護というような順になっております。
 7番目に処理件数ですが、4年間で2,815件の受付のうち、2,660件ということで、94.5%は処理したということです。
 処理に要する期間については、統計をとっておらないのですけれども、本格的な調査が不要と判断した案件については1か月程度。本格調査に入った案件につきましては、案件内容によって異なりますが、3~6か月程度が大体平均かなと。特に複雑で慎重な扱いをする分については例外的に1年を超えるようなものもございます。
 3ページでございますが、4年間に公正職務審査委員会が市長等に対しまして行った勧告が49件。意見書が10件になっております。
 主な勧告といたしましては、不適正資金。これはいわゆる裏金です。業者への預けとかプールとかそういった部分。これが他の自治体で明らかになる以前に大阪市では公益通報によって明らかになって、それを委員会の勧告で全庁的に調査、是正させたということで、約3億円を職員から返還させたというような実績がございます。
 架空の工事実態がない契約で代金を払っておったとか、入札を避けるために100万円以下とかそういった小さい契約に分けて随意契約で行っておったとか、そういうふうな不適正契約の調査、是正も、この通報、勧告を契機に全庁的に改善しております。
 その他補助金の不正支出でございますとか、大阪市は非常に生活保護が多いのでございますけれども、それの医療機関からのレセプトエラーリストの点検を怠っておったということで、これも点検をしていくという中でかなりの不正受給等の発見・防止に貢献しました。今は生活保護については全庁的にプロジェクトチームを立ち上げて対策を行っておるというような感じになっております。その他施設管理ですとか服務の確保等がございます。
 9番目に勧告には至らなかったけれども、通報調査を契機に直ちに是正されたものというのがございます。これは公益通報があった場合に各局に調査させて、その調査の過程で例えば手当の不正受給がわかりましたら、その段階でも局において、あるいは総務局等において当該職員に対する処分、不正受給額の返還等をさせます。既にそれによって是正された場合には勧告までは行わないということで、通報を契機に自主的に是正されたものということで、一番多いのは通勤手当を余分に取っておったとか、通勤経路と違う経路でいっているとか、自動車通勤をしているとかというような部分。住居手当ですとか、その他各種手当の不正受給の是正は非常に件数が多くございました。休息時間、その他勤務労働条件に関しまして、不適正なルーズな運用を行っておったということで、それを是正させた部分。職員の営利企業の従事制限。アルバイトとかがこれで発覚してそれを是正させたとか、病気休職中の職員が非違行為を行っておって、それが通報で明らかになって処分を行ったとか、最近減りましたけれども、時間内組合活動等が違法に行われておったとかという場合。そういったものが多数ございます。
 3番目にこういった大阪市で公益通報制度の利用頻度が高い理由ということで上げておるのですけれども、1つは通報者を大阪市職員に限定せず、市民とか何人でもできるという形になっています。この市民等からの通報によってもかなり是正がされておる。メールを始め、あらゆる媒体が可能だということと、匿名での通報を広く認めておる。
 通報窓口については、全部局に設置。外部委員による設置ということと、初代の公正職務審査委員会の委員長、辻公雄弁護士という方で、住民訴訟ですとか情報公開訴訟とか市民オンブズマン活動で非常に実績のあった方でございまして、大阪の方で著名な弁護士であって、信頼感があった。通報対象事実を法令違反に限定せず、事実上の不適正な行為も広く対象にしておる。また、通報の処理を市内部の職員限りで処理しますと、どうしても都合の悪いこと、あるいは本来ここまでやってしまうとどうかということがあると、それをマイルドにしようという傾向になってしまいますけれども、それをすべて外部委員の方の判断に委ねておる。その外部委員の委員会は職権調査権も付与されていまして非常に強い権限を持っておって、かつ、市長からも独立して大阪市の活動を監視することを保障されておる。言わば市長の方から指揮権を発動するような形でこれは調査しないでおいてくれということは言えないとなっていまして、そういう意味で独立した活動が保障されておって、通報者からの信頼感がある。
 勧告、意見書等につきましては、委員会の委員自身が記者会見で必ず発表いたしまして、勧告の内容とか改善状況、それは報道機関によって新聞、テレビ等でオープンにされる。それによって市民が目に見える形でそれが調査、改善されているというのがわかるということ。
 4ページですが、調査方法等を工夫しておりますので、職員からの内部通報であっても、通報者が不利益を受ける、職場での不利益、いじめとか、配置転換等を受けるということがまずない。今までそういった不利益取り扱いについての申し出はありませんので、その点は各局に徹底しておるということで、安心して通報ができるということになっております。
 4番目で、大阪市の公益通報制度の運用上の問題点といたしましては、広く捉えている関係で、単なる苦情ですとか意見、要望にすぎないような通報も多く含まれておるということで、本来的な市に対する意見の受け皿であります市民の声という別の制度があるのですけれども、それと一部混同されているのではないかということ。
 匿名を認めておりますので、常習的なクレーマーですとか、公益通報を装った市職員に対する非難・中傷がある。通報案件が非常に多いということで、どうしても調査・審議に時間がかかる。調査を行う所属についても、コスト負担とか労力がかかるということがございます。
 そういった問題点はございますが、全体しては有効に機能しているのではないかと評価しております。
 最後に、この4年間に大阪市が受理した公益通報者保護法に基づく通報については、わずか11件しかございません。片や2,800件ほどありまして、片や11件ということ。法律に基づく分が少ないという原因は、私見でございますが、やはり皆さん方がおっしゃっているように1つは通報者が労働者に限定されておるということで、一般の人とか退職した人ができない。匿名による公益通報をした場合、不利益処分を受けても保護がされないとか、外部窓口の設置数が少なくてどうしても窓口が労務提供先になりますので言いにくい。行政機関とかマスコミにしようと思いましたら、その要件が厳しくて、あるいはどこにしたらいいのかが通報者にとってはわかりにくい。
 通報対象事実が限定列挙された法律の犯罪行為等に係るもので、これが先ほどからもありましたように一般の人にとってはわかりにくいということで、通報対象事実になるかどうかの判断が難しいということです。そういった点から、労働者が通報しようとする場合に躊躇してしまうのではないかなということ。中小企業とか小規模自治体においては、費用、コスト、人員面でそれだけの余裕がないということ。そういったことが考えられるのではないかというのが私見でございます。
 私からの報告は以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。詳細な資料が付けられてございますので、是非委員の皆様方、後ほどご参照いただければと思います。

(5)深谷市における公益通報制度の取り組みとその運用状況

○島田座長 それでは、引き続きまして吉村委員にご報告をいただきたいと思います。

○吉村委員 それでは、ご報告を申し上げます。私の資料は5-1と5-2の2つです。5-1を基に報告をさせていただきますが、「3.制度の概要」のところで5-2を使わせていただきたいと考えております。
 1ページ「はじめに」ということで、深谷市を簡単に紹介させていただいております。東京都心から70km圏。熊谷市の北に隣接しておりまして、利根川を挟んでお隣は群馬県の太田市です。人口は14万8,000人、5万5,000世帯、面積が137.58平方km。緑豊かな田園都市です。近代日本経済の父、渋沢栄一翁の生誕の地であります。
 また、ねぎなどの野菜やチューリップなどの花の栽培が盛んで、市の面積の約半分が田畑となっております。
 交通のアクセスといたしますと、電車ですとJR東日本高崎線の深谷駅、自動車ですと関越自動車道花園インターチェンジがございます。
 財政規模ですが、平成22年度の一般会計予算が460億円。特別会計予算が273億円という状況です。
 職員数が1,133人。うち、普通の市役所の職員と呼ばれる者が780人です。消防士だとか保育士だとか幼稚園教諭だとかおりますので、除きますと780人という形になります。
 「1.制度発足の経緯」です。マル1といたしまして平成20年6月に生活保護費不正受給事件が発覚いたしました。暴力団組員とその妻が平成15年1月から約5年間にわたって生活保護費(約1,900万円)を不正に受給していたというものです。
 この事件の発端は、当該組員が生活保護費受給以前に、交通事故で障害を負い、障害福祉サービスの受給申請に来庁した際、窓口で対応した職員が恫喝をされまして、本来、県から障害者手帳の交付を受けた人のみ対象としている事業であったにもかかわらず、県の障害者手帳交付を待たずに事業を実施してしまったということにありました。
 そんなことで平成20年12月、再発防止策を作成したところです。市として作成した再発防止策の中に第三者調査委員会からご提言をいただきました公益通報制度の導入を盛り込んだところです。同時に12月、公益通報条例を議会に上程し可決いただいたところです。昨年、21年4月に公益通報条例を施行いたしました。深谷市職員等公益通報条例です。
 「2.条例制定の目的」ですが、市政における違法または不当な事態の防止及び損失の抑制を図り、もって公務に対する市民の信頼を確保し、透明で公正な市政運営を行うことを目的とするとしております。
 小規模な団体ですと、わざわざ条例化をしないで要綱あるいは規則等で対応しているところが多いのですけれども、こういった事件を起こしてしまったということで、市としての決意を市民の皆様にお示しするということで条例化をしたところです。
 次に「3.制度の概要」ですが、これにつきましては資料5-2をご覧になっていただきたいと思います。2ページ、深谷市のコンプライアンスの範囲です。事件を起こしてしまったという反省の下から、深谷市におけるコンプライアンスの範囲は公務員倫理や社会常識等も含めた広義、広い意味のコンプライアンスであるということで、より積極的に市民のために行動することを目指しているということです。
 6ページ、コンプライアンスを推進する取組みの「3 コンプライアンスが守られているか確認する仕組み」の中で公益通報制度を位置づけしております。
 7ページ、深谷市の庁内におけるコンプライアンスの推進体制図ということで、市長の下に副市長、教育長、部長級職員を中心としたコンプライアンス委員会を設け、その下に次長級のコンプライアンス推進員を設置し、全職員で取組んでいるところです。
 その右側でございますが、公益通報ということで、行政監察員、弁護士さんにお願いしておりますが、この方に通報できるようにし、市長へ勧告いただくというような流れとなっております。
 そして、12ページに公益通報条例についてということで、12ページ、13ページ、14ページに職員向けなのでかなり基本的な部分から「公益通報って何?」というところから説明しておりますが、これにつきましてはまた先ほどの資料5-1にお戻りいただきまして、こちらで説明させていただきたいと思います。
 2ページになります。マル1といたしまして、通報先ですが、市の外部に設置した行政監察員に通報する。行政監察員は隣接する熊谷市で法律事務所を開設している弁護士さんです。
 マル2通報者の範囲ですが、臨時職員を含んだ市の職員と、市の事務事業の受託請負業者の従業員、指定管理者の従業員としております。
 マル3通報対象行為ですが、市の事務事業の執行に関する違法または不当な事実及び市から委託され、または請け負った事務事業の執行に関する違法または不当な事実としております。
 なお、下記の事項は対象外ということで、私生活上のことや人事管理上の不平不満。これらにつきましては毎年末、人事担当課へ自己申告書を提出しておりますので、そこでお願いしております。
 また、セクハラ、パワハラですが、こちらも随時人事担当課で受付しておりますので、そちらへ通報していただいております。
 市や市職員に対する苦情、要望、提案などにつきましては、市長へのメールあるいは市長への手紙で対応しているところです。
 マル4通報の方法ですが、原則として実名、書面によるとさせていただいております。ただし、確実な資料があるときや人の生命、身体等の危険を避ける緊急の必要があるときは匿名でも電話でも受け付けるとしております。
 「4.制度の運用状況」です。まだ1年と4か月しか経っておらないのですが、まず平成21年度ですが、通報が2件ございました。ただ、どちらも公益通報ではなかったと弁護士さんから聞いております。
1件は市の職員で、健康診断の結果を一覧表にして上司に渡しているのは個人情報を漏らしているのではないか、おかしいのではないかという通報があった。それは労務管理上どうしても必要ですよということで公益通報には当たらないというお話をしていただいたということです。
 もう1件は、市民の方ですが、外部団体、任意団体、団体名は申し上げられないのですが、ある団体の副会長をやっていた方が、次は自分が会長だろうと思っておったのが会長ではなかった。これは裏で市が、あるいは事務局の職員がいろいろ動いたのではないかというようなクレーム的な電話があった。それについても公益通報に当たりませんよということでお話をしていただいたということでした。
 平成22年度は7月末までに1件ございました。これも公益通報には当たらないということでした。内容的には入札の談合情報でした。ただ、談合の情報は指名を受けた業者、談合をした業者の従業員からではなく、また聞きだった。こういう話だよと、だから談合があるのではないかというような話でしたので、談合に加わっていた業者の従業員からであれば公益通報になるけれども、それは公益通報には当たりませんよということでお話をした。ただ、そういう入札の談合情報はあったのだから、調べた方がいいよということで弁護士さんからお話をいただき、入札を担当しております課にその旨情報提供し、結果的には入札は中止になったというところです。
 最後に「5.制度の課題」です。まだ1年4か月しか経っておらなく、課題といっても意見とかいろいろごちゃごちゃ混ざってしまっておるのですが、とりあえず箇条書きにしております。
 まず、マル1といたしまして、通報が少ない。原則は実名、書面によるとしておりますが、状況により匿名でも電話でも受け付けるとしているところです。ところが通報が極めて少ないという状況です。これについて不正がないのか、通報しづらいのか、あるいは周知が不足しているのか判断が難しいところです。
 これについては11月をコンプライアンス月間ということで決めました。前回の会議でコンプライアンス月間を設けていらっしゃるというお話を聞いて、深谷市もやろうということで、11月にコンプライアンス月間ということで職員を対象にアンケートを実施し、そこでなぜ通報が少ないかある程度把握していきたいと考えております。
 地方の小規模自治体。特に深谷市のような農業が盛んな地域では、農耕民族的な気質が色濃く残っておりまして、内部告発しづらいという雰囲気があるのかもしれないという大方の意見です。これはやはりみんなで力を合わせてやろうという中で和を重んじるといいましょうか、逆に言えば村八分を恐れるといいましょうか、そういうところが見受けられます。
 小規模自治体では、各セクションの人員配置が少ないため、通報内容により通報者が特定されやすいということになります。ボリュームは少ないのですけれども、仕事の種類は大きい団体さんと同じだけありますので、どうしてもそれなりのセクションをつくらなければならないという中で通報しますと、この内容だと何課の何々ちゃんだよねということで特定されやすいということでなかなか通報がないのかなというところも考えられます。
 次にマル2といたしまして、制度が理解されていないというところです。生活保護費不正受給事件の再発防止策の1つとしては認知をされているところなのですが、日常業務の場合余り直結しないというところから、制度自体の内容を熟知している職員が少ないという状況です。
 また、公益通報者保護法自体を知らないという職員が多いです。これは我々のPRが足りないというところですが、また、中にはこの法の対象が製造業、特に食品関係がメインだというような偏ったイメージを持っている職員がおります。この法律がつくられる流れの中で勝手にそういうふうに思い込んでいるものかと思います。
 市内の民間事業者に本市の公益通報制度の説明をしたのですけれども、公益通報という言葉を理解していただけませんでした。市町村では公という字は、公民館や公共施設あるいは公立幼稚園、公立保育園などに使われているため、公という字は市を連想させるようで、それに通報が付くと市に対するクレームでも受け付けるのかという勘違いをされているようです。
 最後にマル3といたしまして、必要性やメリットが見えないということです。地方公務員法に遵法義務が定められ、刑事訴訟法に告発義務が定められている中で、公益通報条例が必要なのかという職員もおります。
 小規模自治体では市民との距離が近く、監視の目が行き届くので不正が起こりにくい。そう言いつつ、生活保護費不正受給事件が起きてしまったのですが、また、市民や職員からの提案や苦情を受け付ける窓口が既にある。情報公開制度も導入されている。このような状況の中で新たな通報チャンネルを設けるのは費用対効果の面でメリットがあるのかという職員もおりました。
 最後に、小さい組織ほどトップの意向が反映されやすいということで、トップに必要性やメリットを理解していただかないとなかなか制度を導入するのは困難ではないかと思うところです。
 以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。大変お時間のない中、各委員それぞれご準備いただきまして、ご報告をいただきました。まだ多少お時間がございますので、今の2つの自治体からのご報告につきまして何かご質問、ご意見等ございますでしょうか。いかがでございますか。
 どうぞ。

○田井委員 すみません。自治体さんにということではないのですが、法律はよくわからないので非常に初歩的な質問なのですけれども、これは公益通報者保護のための法律ですね。先ほどから匿名での通報がというような問題提起があったのですが、そもそも匿名通報者は保護できないので、この法律の議論のところでは匿名であるか実名であるかいとうのは余り関係がないような気がするのですが。

○島田座長 その点は難しいところで、多分皆様方のところでご苦労いただいているのは、その前に公益通報という概念があって、公益通報する者が公益通報者だということになっていて、そういう仕組みの上で公益通報者を解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないという仕組みになっていまして、その最初のところでの公益通報という場合に、要は通報者を絞ると出てこないではないかというご懸念がそれぞれ起こされていて、多分法の制度の中で田井委員がおっしゃるようにこの法律というのは、ご発言がございましたように公益通報者の保護ということで、こうしたコンプライアンスなり何なりをこの法律ですべてやろうというわけでは勿論ございませんので、多分匿名というのを中に制度として取り込むというのはかなり難しいのかなというのは思っております。
 ただ、もう少し議論の幅を広げて、内部通報なり、あるいは外部通報というのをどういう仕組みの中で考えるのかというときに匿名というものをどう取扱うのかというのは、一方で匿名ということになるとかなりのものが入ってくる。しかし、他方で無責任なものも入ってくるというのは実態としてあって、それを弁護士会さんの中でも、あるいは自治体さんの中でもかなり制度的に2つのパターンが出ているかと思うので、それ自体は法制度の背景事情というようなところで検討するというのは意味があるのかなというふうには思っておりますが、ほかにご意見はありますか。
 どうぞ。

○三木信夫委員 大阪市で匿名を広くとらえていますのが条例の目的が資料4-5-1の1ページですけれども、目的が公益通報者の保護だけでなくて、大阪市職員による法令の遵守の確保、不正行為の防止を図ることによって、最終的には、公正な市政の運営と市政に対する市民の信頼を確保すること。ですから、条例の目的は公正な市政運営と市民の信頼確保というのが目的になっておりますことから、匿名であっても先ほど言いましたような裏金ですとか分割契約のような、不適正な市民の信頼を損なうような部分がそれで告発されて調査の結果明らかになって改善される。それは結果的には市民サービスの向上、行政に対する信頼の確保というのにつながるということで、広く匿名を入れておりまして、条例の目的はそういうふうになっておるというところです。

○島田座長 そうですね。ですから、大阪市さんの場合はいろいろ背景事情のご説明の中にあったような、かなり市政自体が問題にされる中で、それを正すという中で公益通報の話を含めて入ってきていますので、おそらく公益通報者保護法自体とは目的を異にするような部分というのが入り込んでいるのだろうと思います。
 ほかに何かございますでしょうか。
 どうぞ。

○土田委員 今の点とも若干関連いたしますけれども、大阪市の件については、抽象的に言えば住民による行政統制の1つの制度かなと思います。このような住民による行政統制ということであれば、従来法律上も重い制度としては、一番重いのはおそらく住民訴訟なのでしょうけれども、住民監査請求だとか住民訴訟だとかがあり、条例レベルでもいろんな制度がおそらくあろうかと思います。条例にまでなっていなくても、要綱等の制度で住民による行政統制というのを実現しているところもあろうかと思います。
 そのような中で、このような大阪市の公益通報制度を位置づけていく必要があろうかとは思いますけれども、そのような視点からすると、この制度を導入したことによって他の類似の制度との運用関係がどうなのかということを伺いたい。ご報告の中に市民の声という制度が従来はあったということなのですけれども、公益通報のこの制度を導入したことによって、例えば市民の声の制度でいっぱい挙がっていたものがなくなって、それがこちらの方に単に流れてきただけなのかどうかということで、類似の制度との関連を伺えたらと思います。

○三木信夫委員 類似の制度との関連ということですが、まず法律上の制度であります住民監査請求、住民訴訟との関連でございますが、これはかなり関連がございまして、何人でもということでございますので、市民オンブズマン等からの公益通報は結構あるわけなのです。オンブズマンの方は実際同一の事案について住民監査請求をされて、ところが住民監査請求の場合は財務会計上の行為というような感じで非常に要件が厳しくて、なおかつ行為から正当な理由がない限り1年超えるとそれができないということで、監査請求しても却下されてしまうことが多いのです。却下とか棄却とか。
 そうしますと、その後、住民訴訟を提起するとなるとまた弁護士費用とかかなりの費用と労力が要ります。ということで、それを公益通報されまして、公益通報の場合は、そういう財務会計上の行為とか、出訴期間とかそういった制限がございませんので、その辺りを広く見て、当然法律上の検討もしているのですけれども、その上で実際監査請求では1年とかそういうような財務会計上の行為等の関係で棄却とか却下された内容であるけれども、通報ではそれについて通報対象事実が認められたということで、市長に対して勧告とか、勧告に至らなくても改善を行ったという例が幾つかございます。
 市民の声、いわゆる苦情とか要望、提案等の制度との関係なのですが、公益通報ができたからといって市民の声が減っているというわけではありませんで、市民の声は市民の声で年間1万件ぐらい来ておりまして、それについても各局の方で回答するという形にはなっておるのですが、一部本来だったら市民の声でやってもらった方がいいと思うようなことが、市民の声でしたら市内部での回答をつくるだけなのでちゃんと調査してもらえないということで公益通報という形でされる方もいらっしゃいます。大体そういうようなところでございます。

○島田座長 どうぞ。

○中村委員 東京都新宿区も全く似ていまして、もともと「区民の声」だか何か忘れたのだけれども、その制度がずっとあって、そこにはいっぱい相談や意見が来るのです。公益通報者の相談窓口というのが新たにできて、最初の2年間0です。件数は1件も相談がないのです。3年目、4年目でようやく1件、2件とか3件とかそんなレベルで入ってきて、周知度が全然違うなと。歴史が違うというか、区民の人は「区民の声」には何でもかんでも相談できる。でも、今おっしゃったように相談だけなのです。その後調査に入って是正するとかそういうところまでは特にやっていないわけで、ようやくここへ来て公益通報のところにそれらしい相談が入ってくるようになった。
 最初の2年間0です。だから、やはり歴史のスタートの違いとか、使い勝手とかそういうこともあるのかもしれませんけれども、もう少し広報しなければいけないと新宿区にはときどき言っているのですけれども、「新宿区の便り」という広報紙、毎月1日と15日か何かあるものにたまにしか載らないのです。通報窓口は何番の電話で外部相談はどこの弁護士でというのが書いてある。非常に広報が下手というか、市の職員に言うと、ホームページにいつもちゃんと貼っているのだからいいのだといいます。しかし、ホームページを見ない人もいっぱいいますので、そういうところが原因ではないかなという気がします。

○島田座長 ありがとうございました。それでは、よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。
 本日は前回に引き続きまして、公益通報者保護制度の運用状況に関しまして各委員からの発表を通じて労働組合、弁護士会、自治体の取組みの把握を行わせていただきました。次回はこれまでの現状把握、運用状況の確認を通じて出された意見などを基に、公益通報者保護制度の在り方、見直しの視点について更に議論を深めてまいりたいと存じますが、何か次回の件でご意見等ございますか。そのように進めさせていただいてよろしければ、そうさせていただきます。
 それでは、本日の議題は以上でございます。

≪3.閉会≫

○島田座長 最後に事務局の方から次回の日程について報告があるということですので、お願い申し上げます。

○原事務局長 どうも今日は活発なご報告と議論とありがとうございました。今、座長からもお話がありましたけれども、次回については専門調査会の進め方でも示させていただきましたけれども、公益通報者保護制度の在り方、見直しの視点について議論をお願いしたいと考えております。
 次回、第4回の専門調査会は9月13日月曜日の16時からを予定しております。事務局からは以上です。

○島田座長 本日は本当に8月の暑い中、タイトなスケジュールでお願いをいたしました。また次回も来月ということで大変お忙しい中、恐縮でございますが、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

(以上)