第2回 公益通報者保護専門調査会 議事録

最新情報

日時

2010年7月22日(木)10:00~11:43

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、大村委員、田井委員、土田委員、仲田委員、野澤委員、橋本委員、松村委員、
 三木信夫委員、山本委員、吉村委員、渡邊委員
【担当委員】
 中村委員長代理、日和佐委員
【説明者】
 消費者庁 成田企画課長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.公益通報者保護制度の現状について
3.公益通報者保護制度の運用状況について(委員ヒアリング)
(1)雪印メグミルクの取り組みについて(日和佐消費者委員会委員)
(2)帝人の取り組みについて(田井委員)
(3)大崎電気工業の取り組みについて(渡邊委員)
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:36KB)
【資料1】 公益通報者保護制度に関する調査結果について (PDF形式:294KB)
【資料2】 公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等
(資料2-1) 公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等(概要) (PDF形式:65KB)
(資料2-2) 公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等
【資料3】 日和佐消費者委員会委員提出資料「公益通報者保護法施行に伴う社内体制の対応・雪印メグミルク株式会社」 (PDF形式:487KB)
【資料4】 田井委員提出資料「帝人グループの相談・通報制度」 (PDF形式:397KB)
【資料5】 渡邊委員提出資料「大崎電気工業株式会社の公益通報制度について」

≪1.開 会≫

○原事務局長 おはようございます。今日も暑いところ、御参加いただきましてありがとうございます。事務局の原です。
ただいまから第2回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。本日は所用により大杉委員と三木由希子委員が御欠席ですが、委員の数としては過半に達しておりますので、会議としては成立していることを御報告申し上げます。
 本日お配りしております資料ですけれども、議事次第の次に配付資料一覧をお付けしております。
 資料1として公益通報者保護制度に関する調査結果について。
 資料2は公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等についてということで、第1回目の専門調査会は1時間という短い時間でお願いをいたしましたので、十分説明し切れなかった部分もございますので、その部分を消費者庁からの御説明の資料ということでお付けしております。
 資料3~資料5については、本日は委員ヒアリングということでお願いをしております日和佐消費者委員会委員、田井委員、渡邊委員の資料ということでお付けをしております。審議の中で不足がございましたら、事務局まで申し出ていただけたらと思っております。
 それでは、島田座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○島田座長 それでは、まず議事に入る前に、前回所用により欠席されました大村委員、渡邊委員から簡単に自己紹介をお願いしたいと存じます。それでは、大村委員からお願いします。

○大村委員 東京大学の大村と申します。大学では民法を担当しております。研究を始めたころに10年ちょっと契約法の基礎理論をやっておりまして、それとの関係で消費者契約の規律などに関心を持っておりました。公益通報の問題は必ずしも得意なところではないのですけれども、前回立法したときにたまたま審議会の委員をしておりましたので、今後どうなっていくのかということについて関心を持っております。
 現在の主たる関心は、消費者契約法と民法の関係をどう調整するかということですけれども、公益通報制度につきましても市民社会の一般的な法規範との整合性、接合性を考えていきたいと思っております。公務の関係でなかなか出席が困難な日が多いのですが、できるだけまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

○島田座長 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 続いて渡邊委員、お願い申し上げます。

○渡邊委員 大崎電気工業の会長をしております渡邊でございます。前回欠席をして誠に申し訳ございません。大崎電気工業の会長のほかに、東京商工会議所の副会頭も務めさせていただいておりますし、今回の公益通報者保護の委員会でございますけれども、立法のときの委員ということで参加させていただいたのではないかと思っています。そういう面で余り専門的ではないですが、企業という立場で発言をさせていただければ幸いかと思っております。
 以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。

≪2.公益通報者保護制度の現状について≫

○島田座長 それでは、議事に入りたいと思いますが、本日は公益通報者保護制度の現状についてと、公益通報者保護制度の運用状況の2点について、議題として取り上げたいと存じます。
 まず議題の1点目でございます、公益通報者保護制度の現状に入りたいと思います。前回、消費者庁企画課の成田課長から公益通報者保護法の概要、各種ガイドライン、消費者庁における取組み状況について概要を説明いただきました。本日は消費者庁における取組み、具体的には公益通報者保護制度に関する調査結果及び公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等について、その内容を御説明いただきたいと思います。
 それでは、消費者庁の成田企画課長、お願い申し上げます。

○成田課長 おはようございます。消費者庁企画課の成田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、今お話がありましたように、前回の専門調査会におきまして公益通報者保護法などの概要、消費者庁の取組み等について御説明させていただきましたが、本日は、内閣府及び消費者庁で行いました公益通報者保護制度に関する調査結果の概要と、昨年内閣府国民生活局において開催いたしました、「公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会」における主な議論等について、御紹介させていただきたいと思います。
 まず資料1の調査結果の概要でございます。調査は3種類ございます。「行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査」、「民間事業者における通報処理の実態調査」、「公益通報者保護制度に関する労働者向けインターネット調査」の3つでございます。このうち1つ目の行政機関における施行状況調査につきましては、一昨日、7月20日に平成21年度の調査結果を公表したところでございますので、この新しい調査結果について御報告させていただきたいと思います。あとの2つの調査につきましては、前回、参考資料4-2として配付させていただいたものと同じ内容につきまして、御報告させていただきたいと思います。
 3ページ「I.行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査」等についてでございます。法律が施行されましてから毎年度、行政機関における公益通報者保護法の施行状況調査を実施しております。各府省庁、都道府県、市区町村を対象に、年度末時点における内部の職員等からの通報・相談窓口の設置状況などについて調査を実施しております。昨年度末、すなわち本年3月31日現在の状況について御報告申し上げます。
 4ページは、「通報・相談窓口の設置状況」でございます。行政機関における内部の職員からの通報窓口の設置状況でございますけれども、国の行政機関と都道府県ではすべて設置されております。一方、市区町村レベルでは、全体では設置している機関が43.2%となっておりまして、昨年の40.1%に比べますと割合は増えておりますが、市区町村レベルでは引き続き取組みが必要なのではないかと思われる状況でございます。
 5ページは「外部窓口の設置状況」でございます。前回、「国の行政機関の通報処理ガイドライン(内部の職員等からの通報)」につきまして、少し御紹介させていただきましたけれども、このガイドラインにおきましては、行政機関内部に窓口を設置した上で、行政機関の外部にも窓口を設けるように努めなければならないと書いてございます。これを受けまして、府省庁につきましては19機関のうち17機関において外部の窓口が設置されております。地方自治体につきましては、このガイドラインの直接の適用は受けませんが、都道府県レベルでは約6割が設置しておりますけれども、市区町村レベルでは1割強という状況になっております。
 6ページは、「内部の職員等からの通報処理件数」でございます。内部職員等からの通報処理件数につきましては、行政機関全体では85%の行政機関で通報件数がゼロになっています。府省庁、都道府県、市区町村の順に受理件数のない行政機関の割合が多くなるという状況になっています。
 7ページは「外部の労働者からの公益通報」の件数、すなわち権限のある行政機関として行政機関の外部の民間事業者等の労働者から受け付けた公益通報の数について、対象法律ごとに集計したものでございます。対象法律は400法以上ございまして、通報件数のないものもかなりございますけれども、件数の多い上位の法律、具体的には10件以上の通報があったものを御紹介しております。表の下の方を見ていただきますと、圧倒的に件数が多いのは労働基準法、労働安全衛生法などの労働関係法令の違反で、労働基準監督署に通報されたものでございます。ほかの法律といたしましては、労働者派遣法、介護保険法、JAS法、健康保険法、厚生年金保険法、食品衛生法等が多くなっております。
 8ページ「II.民間事業者における通報処理制度の実態調査」でございます。この調査は昨年1月から2月にかけまして約1万5,000社の事業者に対して調査票を送付いたしまして、約5,000社の事業者から回答をいただいたものでございます。
 9ページは「法及びガイドラインの認知度」ということで、事業者の方に公益通報者保護法と民間事業者向けガイドラインを知っていますかとお伺いいたしましたところ、「いずれも知っている」と回答いただいた事業者が約4割、「法は知っている」という事業者が約4分の1、「いずれも知らない」という事業者が34.4%となっております。これを従業員数別に見てみますと、従業員の数が多い事業者ほど、「いずれも知っている」と回答された事業者の割合が高くなっております。
 10ページは、「内部通報制度の導入状況」についてお伺いいたしましたところ、「導入している」事業者が44.3%、「検討中」が16.4%、「導入する予定なし」が39%となっております。これにつきましても従業員数別に見てみますと、従業員数が多い事業者ほど「導入している」と回答された事業者の割合が高くなっております。
 11ページは、「内部通報制度の導入状況」を業種別に見てみますと、かなりばらつきがございまして、金融・保険業では高く、次は不動産業となっておりますけれども、建設業やサービス業では導入率が低い状況になっております。
 12ページは、内部通報制度を導入していない事業者に、その理由についてお伺いをしたところ、「どのような制度なのかわからない」、「どのようにして導入すればよいのかわからない」といった回答が多くなっております。
 13ページは、通報窓口を社内、社外のいずれに設置しているのかをお伺いいたしましたところ、「社内外いずれにも設置」している事業者が49.7%、「社内のみに設置」が43.5%、「社外のみに設置」が5.2%となっております。これも従業員数別に見てみますと、従業員数が多いほど「社内外いずれにも設置」している事業者の割合が高くなる傾向がございます。
 14ページは、内部通報制度を運用する上での課題や、実務上の負担についてお伺いをいたしましたところ、30.7%の事業者が「特にない」と回答しておられます。一方、課題や実務上の負担を回答された事業者では、「通報というより、不安や悩みの窓口となっている」、「本当に保護されるのか、職員に不信感がある」といった回答が上位になっております。
 15ページは、実際に民間事業者の通報窓口に寄せられた内部通報件数でございます。過去1年間の内部通報件数について見てみますと、「0件」と回答された事業者が41.2%、「1件から10件」が42.5%ということで、10件以下と回答された事業者が全体の8割強を占めております。従業員数が50人以下の事業者を除きますと、規模が小さいほど0件と回答された事業者の割合が高くなっております。
 16ページからは、「III.公益通報者保護制度に関する労働者向けインターネット調査」でございます。こちらも昨年1月に労働者、これは従業員の数が100人以上の事業者に勤務する労働者の方約3,000人に、インターネットを通じて行ったアンケート調査結果でございます。
 17ページは、法律の認知度ということで、法律について知っていますかとお伺いをいたしましたところ、「よく知っている」、「ある程度知っている」と回答された方が28.6%、「知らない」と回答された方が71.4%となっております。雇用形態別に見てみますと、正社員の方が正社員以外の方に比べて「よく知っている」、又は「ある程度知っている」と回答された割合が高くなっております。
 18ページは法律の内容についての認知度をお伺いいたしましたところ、「法は労働者が労務提供先の法令違反行為について、一定の要件を満たして労務提供先へ通報する場合、解雇や不利益取扱いを禁止していること」、「法は労働者や労務提供先の法令違反行為について、一定の要件を満たして行政機関やその他の外部へ通報する場合、解雇や不利益取扱いを禁止していること」を知っていると回答された方は、それぞれ8割以上いらっしゃいますけれども、「法に定める要件を満たさない通報であっても、労働契約法等によって解雇等が無効とされる場合があること」まで御存じの方は、約半数となっております。
 19ページ、もしも労務提供先で法令違反行為等がなされていることを知った場合に、通報しようと思いますかとお伺いいたしましたところ、「通報する」という方が9.5%、「原則として通報する」方が48.8%、「原則として通報しない」が32.1%、「通報しない」が9.7%となっておりまして、通報するとされている方が約6割になっております。これを雇用形態別に見てみますと、正社員の方で「通報する」又は「原則として通報する」と回答されている割合が、正社員以外の方に比べて高くなっております。
 20ページ、労務提供先の法令違反行為を知った場合に、まずどこに通報しますかということをお伺いしたところ、「労務提供先」と回答された方が52.9%、「行政機関」が39.9%、「その他の外部」が7.2%となっております。これも雇用形態別で見てみますと、正社員の方で「労務提供先」に通報される方の割合が、正社員以外に比べて高くなっております。
 次に、通報する場合にどこに通報しますかという回答と、労務提供先に通報窓口が設置されているかということをクロスさせたものでございます。労務提供先に通報窓口が設置されていると答えた方の中では、法令違反を知った場合に「労務提供先」に通報すると答えた方が66.4%いらっしゃるのに対して、通報窓口が設置されていないと答えられた方では、「労務提供先」に通報すると答えられた方が4割に減って、「行政機関」に通報すると答えた方が半数を超える状況でございます。したがいまして、通報窓口を設置していれば、法令違反行為などが事業者内部に通報される可能性が高くなり、早期に是正を図ることや解決することが可能になるのではないかと考えられるところでございます。
 22ページ、通報しないと回答された方に、通報しない理由についてお伺いをいたしましたところ、「解雇や不利益な取扱いを受けるおそれがある」という回答が約半数、「職場内で嫌がらせ等を受けるおそれがある」という御回答が約4割となっております。以上が調査結果の概要でございます。
 次に「公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等」について、御説明させていただきたいと思います。
 資料2-1の概要と、資料2-2の薄い冊子を御用意させていただいております。
 資料2-2の2ページでございますけれども「1 検討の経緯」と書いてございます。前回もお話がございましたけれども、公益通報者保護法の附則では法施行後5年、すなわち来年4月を目途とした、いわゆる「見直し規定」がございます。昨年の消費者庁関連法案が成立した段階で、見直しについては、「公益通報者の保護に関する基本的な政策に関する重要事項」を審議することとなっている消費者委員会で御議論されることが想定されていたわけでございますけれども、消費者委員会における検討に先立ちまして、当時の内閣府国民生活局におきまして、各種調査や関係者へのヒアリングなどを通じて、法律の施行状況などを把握するとともに、制度の運用上の問題点の整理、見直しの方向性などについて御議論を行っていただくために、この「公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会」を開催したところでございます。
 この懇談会におきましては、時間の制約などもございまして会議を4回しか開催できないこともございましたし、見直しの方向性につきましては、消費者委員会ができた後で、消費者委員会で御議論されるのではないかということでございましたので、報告書という形で意見を取りまとめるのではなくて、懇談会で出された「主な議論等」という形で意見を整理して公表したところでございます。これが資料2-2でございます。したがいまして、論点によりましては、異なる御意見を並べて書いてあるような箇所もございます。
 この資料の13ページに懇談会の名簿を付けております。この専門調査会の座長・座長代理をしていただいている島田座長、橋本座長代理にはこの懇談会にも御参加いただいたところでございます。
 14ページの別紙2で懇談会の開催の経緯を書かせていただいております。
 15ページでございますが、4回の会合のうち2回の会合においてヒアリングを実施しております。本日これからお話をいただく帝人株式会社様を含む8名の方々から、お話を伺ったところでございます。
 2ページにお戻りいただきますと、「2 公益通報者保護制度の周知・普及状況等」と書いてございます。「(1)内閣府の実施した調査結果の概要」につきましては、先ほど御紹介をいたしましたとおりでございますので省略させていただきますけれども、(2)で「懇談会でのヒアリング結果の概要」を記載しております。
 このヒアリングの詳細につきましては、16ページ以下に別紙4ということで添付させていただいておりますので、後ほど御参照いただければと思いますが、ヒアリングの結果を簡単に御紹介させていただきますと、1つは内部通報制度を導入しておられる民間事業者においては、この制度をリスクマネジメントのためのツールとして、あるいは法令遵守を含む内部統制のためのツールとして導入されておられるということでした。また、内部通報制度を導入しておられる行政機関では、その制度導入のきっかけが不祥事による場合やトップのイニシアティブによる場合があったという御紹介をいただきました。
 導入している制度におきましては、通報の対象を公益通報者保護法の対象となる法令違反行為等に限定をせず、企業倫理違反など広くとらえておられるということでございました。
 労働者に対する周知ということでは、ホットラインの運営状況を社内で労働者の方に情報開示をされたり、経営幹部のコンプライアンスに対する思いなどを従業員に浸透させたりといった取組みを行っている事例を御紹介いただきました。
 外部の窓口を設置している事例についても御紹介をいただきましたし、通報によって実際に法令違反行為や、不適切な事例が改善されたことがあるということも御紹介いただきました。
 労働組合の方にもヒアリングをさせていただきましたけれども、事業者として相談窓口を設けるほか、組合員の企業倫理の確立のための啓発活動や、組合員からの相談の受付などを行っているということを御紹介いただきました。
 通報や処理状況の対外的な公表という点につきましては、行政機関では行政の透明性を高めるために、例えば四半期ごとに運営状況をインターネットで公表しておられる事例や条例で違法や不当な事実があったときに公表するということが定められておられたりするのですけれども、その範囲を超えて実際には違法や不当な事実がなかった場合にも、公表しておられるという事例の御紹介をいただきました。一方、民間事業者の場合には通報によって発覚したかどうかに関わりなく、重要な不祥事の案件は公表しているけれども、一般的な通報の状況については外部には公表していないといったことを御紹介いただきました。
 4ページ「3 公益通報者保護制度の全体的な評価及び課題」以降につきましては、資料2-1の1枚紙の概要で御紹介させていただきたいと思います。
 「公益通報者保護制度の全体的な事項についての評価と課題」についてでございますが、公益通報者保護制度があることによって、早い段階で問題を把握して是正が図られることは、意味があるという肯定的な評価があった一方で、3つ目の「・」でございますけれども、この制度は、事業者内部で違法行為の是正というのは本来であれば通常のコミュニケーションによって解決されるべきであるにもかかわらず、これが機能しない場合の緊急のルートであるという御指摘もございました。
 2つ目の「・」でございますけれども、内部通報の対象を広くとらえるか狭くとらえるかという御議論がございまして、一方で公益通報というのは公益が最終的な目的であるので、その本質をあいまいにすべきではないという指摘がございましたけれども、他方で通報者や相談者の利便性や重要な情報を幅広く収集するためには、制度の対象を広く捉えることが望ましいのではないかという、両方の御意見があったところでございます。2つ目の○で公益通報者保護制度の当事者、すなわち事業者や労働者についての評価や課題でございますけれども、事業者につきましては、制度導入を促進するためには、制度の整備が、単に公益通報者保護法という法律があるということだけではなくて、事業の遂行にとって有益だという認識を促していくことが必要ではないかという御意見をいただきました。小規模の事業者では制度についての認識などが不十分であり、ヒアリングでは、そもそも公益通報者保護制度は零細事業者では成立しないのではないかという御指摘もあったところでございますけれども、まずは業界団体などを通じての普及促進などを図っていくことが必要ではないかという御意見がございました。一方で、労働者にとっても制度を利用しやすくするための取組みが必要ではないかという御意見もございました。
 こういった御議論を踏まえまして、懇談会では、内部通報制度の効果的な普及啓発や、民間事業者の取組みの促進策等についての検討が必要であるということと、今後懇談会での議論も踏まえた消費者委員会での議論が期待されるというとりまとめを行っていただいたところでございます。
 資料の御説明は以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に御質問、御意見のある方は御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。渡邊委員、よろしくお願いいたします。

○渡邊委員 今回のアンケートは大変興味深く拝見させていただいたのですが、公益通報者保護制度で公益通報者が企業なり何なりに通報をしたときに、不利益を被ったかどうかというのが、アンケートとして余り書かれていないというのに若干不満が残ったのが1つ。
 それから、今回このような通報したら不利益を被った事例があるかどうか、その辺のところをお聞かせ願えればと思います。

○成田課長 ありがとうございます。御指摘いただいた点につきましては、例えば、労働者の方のアンケート調査の中で、通報したことがありますか、通報したときに不利益な取扱いを受けたことがありますかという質問を設けることも、アイデアとしてはあるのかと思うのですが、そういった方の数もかなり数が少なくなるのではないかと思われたところから、そういった項目を設けていないところでございます。
 実際に通報されて不利益を受けたことがあるかどうかということを統計的に把握するのは、なかなか難しいのかなと思っておりまして、むしろそういったことにつきましては、これからいろいろな委員の先生方などから事例の御紹介をいただけるかと思いますけれども、そういった中で明らかにしていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○島田座長 ありがとうございます。ほかの委員の先生方はいかがでございましょうか。中村委員、どうぞ。

○中村委員 資料1で説明いただいたのはあくまでも概要で、ホームページを見ると3つの報告書、例えばIの報告書は25ページ、IIの民間事業は40ページ、インターネットのものが43ページもので、ホームページには分厚いデータが載っているのですが、これから議論される際に一々ホームページからというよりは、それも配付していただいた方がよろしいのではないか。概要だけで説明を受けた以上のことがいろいろ入っていますので、是非資料提供をそのようにしていただきたいと思います。

○成田課長 了解いたしました。事務局を通じて委員の皆様方にお届けするようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。橋本委員、どうぞ。

○橋本委員 資料1の7ページ「外部の労働者からの公益通報」で、同様のデータを昨年の懇談会でも出していただいていまして、そのとき島田先生からの御指摘だったと思うのですが、通報の内容は、労基法関連が圧倒的に多いわけですけれども、これでも実際は労基署への通報はもっとたくさんあるはずで、このデータは限定しているようですが、通報内容によって限定をかけているのか、ちょっと少な過ぎるのではないかという御指摘があって、私も調べてみたところ東京だけでもこれ以上の数の相談があるようで、主に賃金不払いなのですが、もしこのギャップが解明されたのであればなぜかということをお訊きしたいと思います。

○成田課長 橋本委員の御指摘の点につきましては、昨年の懇談会でも御指摘をいただきました。厚生労働省に聞いてみたのですけれども、実際に労働基準法等に基づく申告があった場合に、その中で一定の要件を満たして公益通報に該当するものを公益通報ということで、件数として数えているというようなことでしたが、具体的にどういう場合に数えているかというところまでは、お話を伺っていないというのが現状でございます。

○島田座長 ありがとうございます。その点は大事なポイントなので、もう少し詳しく厚生労働省さんの整理の仕方をお伺いしていただければよいと思います。

○成田課長 厚生労働省に聞いてみます。

○島田座長 労働基準法は御存じのように昭和22年にできたときから通報制度を持っていますので、それとの関連を聞いていただくようお願いいたします。

○成田課長 相談してみたいと思います。ありがとうございます。

○島田座長 ほかにはいかがでございましょうか。仲田委員、どうぞ。

○仲田委員 連合の仲田と申します。全体の資料を通して見ていないので何とも言えないところなのですけれども、例えば通報があったもののうち法令違反の割合というか、例えば公益通報者保護制度で守られる対象となったものがどの程度あるかとか、そういったデータは把握されているのでしょうか。

○成田課長 申し訳ありません。この調査においては、これ以上細かい調査はしておりません。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。

≪3.公益通報者保護制度の運用状況について≫

○島田座長 それでは、よろしければ2番目の議題でございます公益通報者保護制度の運用状況についてに移りたいと思います。本件につきましては前回、消費者委員会担当委員の中村委員から法制度の実態を把握するため、各委員から資料に基づく報告を願ってはどうかという御意見をいただいたところでございます。こうした御意見を踏まえまして、今回は企業において直接あるいは間接的に制度の運用に携われている委員お三方から、それぞれ発表していただく予定でございます。
 それでは、早速各委員から発表をお願いしたいと存じますが、発表後に質疑応答を行い、論議を深めていきたいと思います。

(1)雪印メグミルクの取り組みについて

○島田座長 最初に消費者委員会担当委員の日和佐委員からお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○日和佐委員 日和佐でございます。報告をさせていただきます。資料の28ページ目に当たりますけれども、資料3です。
 雪印メグミルク株式会社と今はなっておりますけれども、この当時は雪印乳業でございます。雪印メグミルク株式会社は経営統合を昨年9月にいたしまして、このような形になっているわけですが、公益通報者保護法の取組み経過に関してはメインに雪印乳業での取組みがどうであったのかについてお話をしたいと思います。
 公益通報者保護法が施行になったと同時に、会社の中にその制度を取り入れるということをいたしました。ですけれども、この法律自体社員にとっては決してやさしい法律ではありません。どんな法律なのかということをまず理解してもらって、そうして運用していかざるを得なかったということです。
 したがって、社員研修プログラムをつくりました。全会社の中を42か所ぐらいに分けまして、今はCSR部となっておりますけれども、当時のコンプライアンス部の部員が手分けをして、講師となって説明会に行ったということなのですが、そのときの研修プログラムの項目が、ここに挙げてあります。公益通報者保護法制定がどのような背景で制定されたのか、概要、目的、公益通報というのは一体何が公益通報に当たるのか、公益通報者の範囲等、いわゆる公益通報者保護法に関する知識を正確に持ってもらうという意味合いで、全社員に対して研修をしたことがまず基本にございます。
 3ページは具体的な取組みに入るに当たって、内部通報規定という規定をつくりました。その規定の項目が1~13に当たるものです。そしてこれを運用していくに当たっての運用のガイドラインをつくりました。これがここに御紹介してありますように1~7章までということで、この運用ガイドラインは小冊子にいたしまして全社員に配布をする。当然ですけれども、その前の研修のときに同時に資料として配るということで、公益通報者保護法という制度は一体どういうためにつくられて、どのような効果を期待して会社の中で取り上げるのか。社会的にどのような位置づけがあって、そして会社としてはどのような考え方で、この法律に基づいて公益通報を受け付ける仕組みをやっていくのかということを、きちんと知らせたことになります。
 そして具体的にはどのようになっているのかというのが、その次のスノーホットラインに書いてあります。実はこれは真ん中にありますように社外に通報窓口があるもので、もう一本、企業倫理ホットラインというホットラインを持っております。この企業倫理ホットラインは、当時のコンプライアンス部、現在はCSR部が受付場所になっています。いわゆる社内に対するホットラインと社外に対するホットライン、2本のホットラインを設置いたしました。この社内通報窓口は公益通報者保護法が制定される前からありました。公益通報者保護法が制定されるのを契機に、社外通報窓口を新たに設置したということです。
 そしてもう一つ、子会社は規模がさまざまでありまして、例えば60人ぐらいの子会社もあります。そこは自立して自前で通報窓口を持つのが非常に難しい。どんなに通報者を保護しますよ、匿名は守りますと言ってもわかってしまうのです。規模が小さいと自然にわかってしまう。ということで、独自で持つのは非常に難しいということで、このスノーホットラインは子会社が共通で使えるホットラインといたしました。
 6ページは通報状態がどのようなものなのかということです。年次を経て企業倫理ホットライン、スノーホットラインに、これは大まかな分類なのですけれども、どのような件数が上がってきているかということです。このデータはすべて公表をしております。これを実際に運営していくに当たって一番悩んだことは、いわゆる公益通報者保護法で指定している400余りの法律があります。その法律に違反した事例が該当するわけなのですけれども、法律に違反しているかどうかを個人の社員が判断をすることが非常に難しい。そこを要求するのも非常に難しい。
 したがってスノーホットライン、企業倫理ホットライン両方とも、ともかく身近なことでおかしいなと思ったこと、あるいは相談したいなと思ったこと、悩んでいることでもいいから、ともかく出してください。出された案件によって受け付けたところが判断することにしています。このような形で垣根を低くしないと、なかなかホットラインに電話をしてみようということにはならないのです。何か非常に高い壁の向こうにあり、すごく決断をして電話をかけなければということではなく、まず気軽に通報ができるという仕組みを心がけました。
 7ページは経営統合をいたしました以後で、メグミルクと雪印双方にまだホットラインを持っていた時期が2009年上期までですので、このような数字になっております。2009年の下期からは経営統合したことによってホットラインを一本化したということで、このような数字になっておりまして、このデータもすべて公開をしております。
 企業として公益通報者保護法をどう考えるかということなのですけれども、いわゆる公益通報をきちんと受け止めることは勿論大事なわけなのですが、それだけではなくて、むしろ企業内にあるリスクにはどんなリスクがあるのか。これだけではありませんけれども、リスクの把握の大きな手段になるということと、そこで把握したリスク情報についてはきちんと対応していきますので、それによって企業自身、自浄作用を活かすことができるというメリットがあるのではないかと思っております。
 戻っていただきまして、スノーホットラインの図がありますけれども、公益通報あるいはその他の通報も含めてなのですが、通報者の身分が不利益な扱いを受けているかどうかをチェックする仕組みをこの中で持っておりまして、一番下に企業倫理委員会への報告義務というものがございます。スノーホットライン、倫理ホットライン両方ともすべてなのですけれども、ホットラインに寄せられた声はすべて個人名を秘匿した上で、企業倫理委員会に内容が報告がされます。そして、それに対してどのような対応をしたのか。そのことも企業倫理委員会に報告があります。
 したがって、企業倫理委員会では対応がよかったのかどうだったのかということについても、意見を言うことができることになっています。そして、この企業倫理委員会は取締役会の諮問機関という位置づけになっておりまして、大半のメンバーが社外の人間という構成になっております。
 身分状況の報告なのですけれども、通報をした案件が解決をした半年後と1年後に、通報したときはどの職場でどのような位置にいて、半年後、1年後にどのような職場、どのような位置にいるのかということについて、企業倫理委員会に報告をしてもらうということにしております。したがって、これで通報者が不当な扱いを受けることを避けることができるように思っております。
 以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、今の日和佐委員の御報告に関しまして、何か御質問、御意見等はございましょうか。大村委員、よろしくお願いします。

○大村委員 大変興味深いお話を伺いました。どうもありがとうございました。
 2点御質問をさせていただきたいと思います。ホットラインへの投稿状況ということでデータを出していただいていて、数字を拝見したのですけれども、内部と外部で2つのホットラインをお持ちだというお話だったのですが、それぞれに上がってくるものの性質の違いみたいなものがおわかりでしたら、教えていただきたい。それから、年度ごとに数が変動していますけれども、これに何か意味があるのかということについても、もし御感想があれば伺いたい。以上が第一点です。
 第二点は、お話の中で出ましたし、先ほどの成田課長のお話にもあったのですけれども、公益通報者保護制度というのが全体として企業のコンプライアンスに役立つというのは、それはそれで大変結構な話だと思います。しかし、それならばコンプライアンスのための制度として位置づければよいわけですが、当初つくられたときはまさに公益のための通報ということであって、特に消費者保護の観点から特定の事件があって、それに対応する必要があるということでつくられたわけですけれども、実際に運用されていて、企業のコンプライアンスということとは別に、消費者保護の観点から見たときにこれがどの程度の意味を持っているというご理解なのかというのが第二点の質問です。

○島田座長 では、お願いします。

○日和佐委員 外部と内部とでの通報の差があるのかという御質問が最初だったと思います。全体的に見まして余り顕著な差はない。そして、どういうわけですか外部よりも内部への通報の方が件数としては全体的に多いのです。ですから、そこは社内が信頼されているのかなと思うわけですけれども、外部よりも社内の方が多い。
 年によって件数に大小があるということなのですが、特に2002年度は非常に多いです。これは雪印乳業が食中毒事件を起こしたのが2000年で、2001年には牛肉偽装事件というのを起こしています。したがって、まだ2002年度は事件から余り経っていないということで、いろんなことを言いたいということが多かったのではないかと考えられます。
 その次のページで少し数字が上がったり下がったりしていますけれども、数字が上がっている場合は、ときどきスノーホットラインを利用しましょうというキャンペーンをやるのです。やはり周知徹底することが大事で、だんだん新入社員が入ってきますと、毎年研修でやってはいるのですけれども、やはりときどきキャンペーンをやらないと意識が薄れていくということですので、キャンペーンをやると増えます。そういうことで、何か社会的に何らかのことがあって数字が動いているようには見えません。
 コンプライアンスの問題として役に立っているのならばというお話がありました。そうなのですけれども、これによって、企業がきちんと企業経営について正すことができるわけです。そうすれば、結果的には消費者にとって利益をもたらすのではないか。企業経営がきちんとしていく、不正をしないことにつながっていくのです。
 ということは、結果的には消費者のためにもなっているのではないか。企業が誠意のある経営をすることにつながっていく。それは勿論コンプライアンスでありCSR経営であるわけですが、そのこと自体が結果としては消費者の利益につながっていると私は思っております。

○島田座長 ありがとうございました。大村委員よろしゅうございますか。
 ほかにはいかがでございましょうか。野澤委員、どうぞ。

○野澤委員 このホットラインによって改善されたことが具体的にあれば、何か教えていただきたいということと、社内の風土とか意識がどのように変わってきているのかというのが、もしおわかりになったら教えていただきたい。

○日和佐委員 社内の風土や意識がどう変わってきたかということなのですが、これはホットラインによってすごく変わったというのは、変わる要素が少しはあったかとは思いますけれども、これがメインで社内の風土や意識が変わることはなかったと思います。むしろ会社の風土や社員意識を変えていくということは、コンプライアンスの徹底ということでありまして、それが徹底されたことで全体的に意識が変わってきた、会社の風土が変わってきたと思っています。これはそれを援助するための1つの手段という感じがいたします。
 具体的に余り思いつかないのですけれども、どちらかと言うとごらんいただいておわかりだと思いますが、人間関係が非常に多いのです。ですから、そこのところでこれはまた解決するのも非常に難しい。ある場合はどうしても合わないので、その人を配転させるということもいたしますが、ここに上がってこなければ見えない、わからないこともあるわけですので、上がってくることによって対応がとれるということのメリットと思っておりまして、大きな事件につながるようなことが上がってきたというのは、現実ではないということです。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。土田委員、どうぞ。

○土田委員 先ほどの公益通報者保護制度の現状の中のお話で、規模が小さいところだとなかなか公益通報の制度を設置されにくいというか、されていない現状があるという御報告がありましたけれども、その観点からすると非常に興味深かったのは、子会社の方でもこの制度を使えるというところがありました。
 そこでお伺いをしたいのは、今回出された数字の中に子会社の社員の方から上がってきたものが、どのくらいあるかというのが、もしわかりましたら、お教えいただきたいというのが第一点。
 第二点目は、冒頭で社員の方に周知徹底するために、全社員を対象にして研修会を開催されたということでしたけれども、ここに子会社の方たちというのはどういう形で入ってきているのかということの2点をお伺いしたいと思います。

○日和佐委員 このデータの中に子会社のデータは入っていません。別です。ただし、匿名の場合はわからないのです。匿名の場合だけは混じっている可能性がありますけれども、でも匿名でもおっしゃっていらっしゃる中身でこれは子会社の問題なのか、本社の問題なのかというのは大体推定がつきますので、このデータには子会社の分は入っていないと思っていただければいいと思います。
 研修に当たっての子会社なのですけれども、そもそも講師さえいないわけです。小さい規模のところは、こういうことについて専門に扱うような人がいないわけですから、ですので全部本社からコンプライアンス部の人間が講師として行って、話をしてきたということです。

○島田座長 ありがとうございました。
 このデータには入っていないということなのですが、ある程度利用はされているというのは。

○日和佐委員 利用はされています。正直言いまして、件数はそんなに多くないです。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。田井委員、どうぞ。

○田井委員 ありがとうございました。1点スノーホットラインという図のところでお聞きしたいのですけれども、社外の通報相談窓口と、その下に社内のCSR推進部があるのですが、そこから社外に報告という矢印がついているのですけれども、これはどういったことを報告されているのでしょうか。

○日和佐委員 匿名ではなくて実名で来た場合に、社外通報相談窓口のところまでは実名ですけれども、事実確認をしなければなりません。したがって、社外通報相談窓口からCSR推進部に、これは名前を絶対に明かさないのですが、匿名ですけれども、事案についての情報が寄せられます。そして、その事案について事実関係をCSR推進部の方で調査をいたします。そしてどのような対応を取った方がいいのかということも考えて、その結果について社外通報相談窓口に報告をすることになります。

○田井委員 ありがとうございます。

○島田座長 よろしゅうございましょうか。ほかにございますか。

(2)帝人の取り組みについて

○島田座長 よろしければ先に進めさせていただきます。田井委員から報告をお願いいたします。

○田井委員 では帝人の制度について御説明をさせていただきます。
 最初にお断りをしたいのは、これはあくまで一企業の1つの例であるということと、法律等の世界と違うのは、対象が企業の社員で、広げても我々の取引先ということで、ステークホルダーの範囲が限定されているところでの運用であるということを、御理解いただけたらと思います。
 まずどのぐらいの人数、規模感とか、イメージをつかんでいただくために会社の内容をお話します。2ページ目は、持ち株会社化を2003年に実施しまして、今、帝人株式会社というのは持ち株会社機能だけで、あとは全部グループ会社という構成になっています。国内にグループ会社が75社プラス持ち株会社があり、海外は80社で、社員数は国内に約1万人、海外に8,000人になります。ホットライン制度は一応海外にも1つラインは通じているのですが、基本的に今からお話をするのは、国内の1万人、派遣社員さん等も含めて1万2,000人~1万3,000人を対象にしたものです。
 3ページは企業理念についてです。「Quality of Lifeを高めていきましょう」、「社会とともに、社員とともに成長しましょう」ということで、これは93年につくったものなのですが、いわゆるCSR経営そのものを目指しています。4ページでは、企業の責任というのも、最初は左側の「基本となる責任を果たせばいいですよ」ということだったのですが、昨今はそれからもう少し広がって、CSR経営というのが大事になってきました。
 5ページの絵は、ステークホルダーというのは直接のステークホルダーである社員や仕入先、お客様以外にも、官公庁、地域住民、NGO、もっと言えば地球環境も全部企業のステークホルダーの範囲に入ってきましたということです。6ページでCSR経営というのは、過去においては「社会に迷惑をかけないいい会社」、「信頼できる会社」、「社会にいいことをする倫理的に優れた会社」、「悪いことをしてはいけない」、「いいことをするとほめられる」ということだったのですが、今は「いかに社会の課題解決に企業も貢献できるか」という視点からのCSR経営が、企業のレピテーションとかブランド力とか、競争戦略にも結び付いてきたということです。
 7ページ、帝人の中での位置づけですが、「事業戦略によって市場やマーケット、顧客に対する責任を果たす」と同時に、「コーポレートガバナンスを利かすことで、経営の健全性を確保する」、それから、「社会的な問題にも対応することによって、ステークホルダーの信頼を得る」という3つの戦略すべて大事ということで進めております。
 私の部署はコンプライアンス、リスクマネジメントを担当しております。内部統制というのは非常に広範な定義もあるのですが、ここでの内部統制はいわゆる財務諸表の信頼性という一番小さい定義をとっており、経営監査室という別の部署が担当をしております。
 8ページ、CSRというのは非常に広い範囲をカバーする概念です。この図は帝人グループ独自の整理なのですけれども、まず基本的には「社会的な責任を果たしましょう」という部分で企業倫理、コンプライアンス、リスクマネジメント、それから、化学メーカーはやはり環境保全だとか安全、防災というのはずっと昔から力を入れてやってきたものですから、それと製造物責任という、いわゆる「責任をちゃんと果たしましょう」というところを基本的CSRと名付けています。労働、購買、グリーン調達などはそこから一歩進めたものとし、それから、社会貢献活動と分けております。企業さんによっては、社会貢献活動=CSRというタイプのCSR活動をやっていらっしゃる会社もたくさんありますが、帝人としてはこういう整理をしております。
 ということでコンプライアンスなのですが、帝人の中では法律を守ることは勿論なのですけれども、それだけではなく、もう少し広い意味の「人として、企業として守るべき社会的規範を守りましょう」ということで、企業倫理とコンプライアンスをほぼ同じ意味で使っています。
 企業活動、業務に関する行動規範、行動基準を1つのハンドブックの形にまとめて、「帝人社員は、このハンドブックに書いてあることをきっちりやることがCSR経営であり、コンプライアンスであり、正しい社員としての在り方ですよ」ということで、毎年いろいろな教育啓発活動をやっております。
 10ページ、一番最初に企業理念があって、その下に企業行動規範の10項目があるのですが、そこまでは海外も含めて共通です。それからだんだん具体的になっていき、行動基準からは海外では一部バリエーションを認めています。企業理念が93年にできたときに企業行動規範も同時につくりました。企業行動基準制度は98年ですが、行動規範と行動基準は2006年~2007年にかけて、グローバル経営が進んできたということで、グローバルな視点を入れた形で改訂しています。
 その改訂したものが11ページですが、企業規範までは世界共通で、12ページにある基準になると、ここに載っているのは日本の16項目です。海外のグループ会社も基本的にはこれをベースにつくりなさいということですが、一部そぐわないところは変えてもいいとしています。
 例えば8番目の「反社会的勢力に対する防衛」は、海外では特に該当しないので省いている会社もあったり、「独禁法」についてはヨーロッパのものはもっと詳しい記述をしていたり、「嫌がらせ、差別」についてはアメリカでは日本語の行動基準の単なる英訳では文言的にかえって差別的な表現だと言われるようなこともあるというので、アメリカの弁護士も入れて、同じ内容を維持しつつ表現を適正なものに変える。そういう形で運営をしています。
 毎年10月を倫理月間と決めて、全世界の全社員に「ハンドブックを読みましょう」、あるいは「スモールミーティングをもって、必ず年1回は各部署で倫理に関する話し合い、研修をやりましょう」ということで啓発に取り組んでいます。
 ここまでが全体の形で、相談通報制度は13ページから説明します。ここにもありますように、事件にしても事故にしても、職制のラインを通じての報告が基本です。該当することがあれば社員は企業倫理規程の8条で、報告しなければならないと義務化しています。
 ただし、職制を通じての報告、相談がしづらい場合には、直接CSR部門に報告をすることができます。上司がたまたま問題の原因である場合ですとか、あるいは非常に厳格に匿名性を確保したいということで、「自分が言ったと思われるのが嫌だ」というような場合に使ってもらえるように、直通のラインを持っています。職制にしてもホットラインを使うにしても、「報告者は保護される」というのが倫理規程の第12条です。12条は公益通報者保護法ができたときに、新たに企業倫理規程につけ加えたものです。ですから、企業倫理規程はこの法律ができる前から制定されています。
 14ページ、ホットラインとしては今4つ持っています。社内、グループ内で運営しているのが1つ。それが一番上の企業倫理意見箱で、これは社内のイントラネット経由で送られます。英語版のイントラネットには、オピニオンボックスと呼ぶ英語版があり、海外のグループ社員も利用できます。
 ただ、英語版については、2005年に開設後、今まで1件しか通報はありません。しかも通報相談というよりも、意見を述べたというものでした。ですから、やはりほとんど国内での運営です。
 その下のコンプライアンス・ホットラインは、外部の法律事務所にお願いしています。セクハラ・ホットラインも外部機関です。「社内では言いにくいこともあるのではないか」と考え、複数のラインを持って、「どこか一番言いやすいところを利用していただければいい」ということです。また、敷居を低くするため、匿名での通報も可としています。
 インターネットのホームページには取引先通報受付窓口を持っています。ここにも匿名の投稿が入ることがありますが、実際に対応するのは実名のもののみにしております。
 15ページ、もともと企業倫理意見箱というのは、「社内のコミュニケーションをよくしましょう」ということで、社員が社長やその他役員に自由に物が言える「スピークアウトコーナー」という、コミュニケーションツールとしてつくったのが発端です。それを企業倫理意見箱と2003年に改称したので、そもそものスタートが、「何か法律違反があったら通報しましょう」というよりは、「普段言いにくいこと、あるいは経営に直接話がしたいということがあれば、そういう場を設けましょう」というところからです。
 99年には均等法の絡みだと思うのですが、セクハラ問題というのを重大に受け止め、「この問題は特に社内では言いにくいだろう」と考えて、専門のセクハラ・ホットラインを開設しました。
 2003年に弁護士事務所のコンプライアンス・ホットラインを開設して、3つのホットラインに入ってくる内容の情報開示を社内イントラで行うようになりました。
 2005年は海外グループ会社向けの窓口を設け、2006年に取引先通報窓口を導入しました。また、アメリカにあるHolding Companyが在米グループ会社社員を対象にしたホットラインを2006年に開設しています。これ以外のホットラインはすべて帝人株式会社の本社で運営していますが、利用できるのは国内外すべてのグループ会社の社員、そこで働く派遣さんも含めています。
 16ページにありますように基本は職制報告ですけれども、言いにくいときはホットラインを使って構いません。目的はまずは会社のリスクマネジメント、「何かおかしいことがあれば、早期に発見して自浄作用を促進しよう」というのと、もう一つは社員が「これは問題ではないか」と悩み、「どう対応したらいいのかわからない」場合、悩んでいる社員に対する救済というか、「一人で悩まずに相談してください」ということの2つです。
 企業にとって今大きな問題となってきているのがメンタルヘルスの問題ですが、それが社員からの相談が契機で早期発見されたりしますので、「違反ということだけではなくて、人間関係の悩みなんかでも使ってください」と呼びかけています。
 外部の法律事務所はいわゆる顧問弁護士ではなくて、通報専門の弁護士さんと契約しています。利用者資格としてはグループ会社も含め、派遣社員や契約社員も含めています。取引先の社員という社外の方からの通報も受け付けますが、ただ、これは帝人の問題についての通報を受け付けるということで、取引先の会社内部の問題に関する通報は受け付けておりません。通報いただいても自分の会社外で起こっていることに対して、我々には権限がありませんので、そのことを丁寧に説明します。
 通報者保護については、法律よりも広い範囲で保護すると書いてありますが、これも、悩みの相談もあるので、広がっているということです。最初に申し上げたように帝人という会社に何らかの関係のあるステークホルダー、直接的なステークホルダーという、クローズされたところでの運用であるので、こういうふうに範囲を広げることが可能なのだろうなと思っております。ですから、国民全員を対象とすることになると、また違った議論が恐らく出てくるのだろうと思っています。
 企業活動のさまざまな側面を法律で規制して、コンプライアンス、倫理的にいいことをさせるというのが企業に対する1つのプレッシャーになるのと同時に、もう一方で、先ほど申し上げたように、今はCSR経営というのがすごく注目されており、それに対応できない企業はマーケットからそれなりの評価をされる。そういう形でも企業にとってはプレッシャーがかかってきていると思います。
 17ページは社内からの通報件数ですが、下の棒グラフを見ていただけたらわかるように、2003年の20件ぐらいから徐々に増えています。ここ3年ぐらいは、年40件~50件というのが大体です。相談内容についてはパワーハラスメントが最近多くて、先ほどメグミルクさんもおっしゃったように人間関係のことが多いのは同じです。あと、不正経理に関連して「これはおかしいのではないか」という情報も比較的多いです。内容をかなり抽象化して、具体的にどこの誰かわからないような形にしますが、「こんな形の相談があって、こんな対応をしました」ということを社内には公表しています。社外には、ここに書いてある項目程度で、中身は(どんなことがありましたというのは)開示していません。
 18ページ、どのくらいホットラインを知っているのかという調査ですが、これは国内のグループ全体で契約社員まで含めて1万2,000人ぐらいの中から、10%を選んで、毎年同じアンケートをとっています。大体1,200人~1,300人が対象で、1,000人ぐらいから回答が来ます。無記名です。
 調査の結果によると、それなりに知ってもらっています。「使う意思がありますか」という問には70%近くが「意思あり」と回答しています。ただし、別のアンケートがありまして、そこではもう少し具体的に、「ほとんどの場合通報できると思う」、あるいは「半々だ」、あるいは「できないと思う」という聞き方をすると、「ほとんどできる」というのは管理職では6割ぐらいなのですけれども、それ以外では4割ぐらいに減っています。具体的に聞けば聞くほど腰が引けてくるというか、「気軽に使ってくださいよ」とは言いますが、真面目な社員ほど影響を考えて、なかなかそう簡単に使えない。それはそれで、私は健全な考え方だと思います。
 最後は倫理規程の抜粋を載せさせていただきました。
 事例なのですが、どちらかというとホットラインが利用されるケースは、大きな法律違反は少なくて、むしろ相談案件で、社内的な懲戒の対象にもならない方の数が多いのですが、1点これは新聞にも出たことですが、一例としてお話ししたいと思います。2004年1月、ある事業所で大きな工事に取り掛かっていたのですが、なかなか工事が進まない。そのため、必要な許可を取らずに無許可工事をしてしまったケースです。県の立ち合いでは判明しませんでした。幹部の指示で、「急ぐから、納期が遅れるから」と無許可で工事を実施したわけですが、その部署にいた一社員が「おかしいのではないか」と、本社に通報したものです。それで調べたら「やはりそういう違反行為があった」ということで、県に自主的に申告をして、20日間の操業停止処分を受けました。自主申告したことで、処分は20日で済んだとも考えられます。
 これは、ホットラインが有効に作用した1つの例なのですけれども、それ以外はやはり重大な問題というのは、ホットラインというよりも職制を通じて、社内的な制度運営の中で「おかしいな」というケースが見つかる方が、多いと思います。
 駆け足でしたが、以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、委員の方々、御質問等はございましょうか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 御説明が十分に聞けなかったので、もう一度お願いしたいのですけれども、16ページの通報制度の特徴のところで、9)裁定と回答というところがあるのですが、その中身をもう少し説明をお願いしたいのと、具体的にイメージしにくいのが基本的な職制制度を通じての申告を受け付けるという、この場合に回答というのがどういった形でもとの通報者までなされるのか。そういうところの説明をお願いします。

○田井委員 職制通報の場合は当然ラインから上がってきていますので、そのラインで調査をして、何らかの判定があって処分があればそのラインで当然わかっていることですね。ここは通報制度、ホットラインに入ってきたものなので、通常の職制ラインは知らないところで来たものです。
 そういうときには、我々は通報を受けたら、問題が起こっている部署の当事者ではなくて、その会社の人事なりCSR部門なりに調査を依頼して、その報告を受けます。そして、「これはやはり問題ですね」、あるいは「これは誤解からの通報だったので、実際は問題がなかったですね」などの結果が得られます。
 CSROというのは帝人グループのCSRのトップです。重大な問題はCEOまで報告され、そこで「こういう問題が起こり、こういう判断をして、処分をして、再発防止策をとった」という一連の対応を、このレベルで決めていくということです。
 ただ、場合によっては、まったくの匿名情報で事実が余りよくわからないこともあります。何らかの判断をするためには詳しいところまで話を聞かないと、いいとも悪いとも言えません。匿名の場合は、調査がそこまで行き届かないので、何の判断もできない場合も出てきます。そういうことです。

○島田座長 よろしゅうございますか。ほかにはいかがでございましょうか。大村委員、お願いします。

○大村委員 興味深くお話を伺いました。一番最後に言及された比較的重大な案件について、もし差支えなければお伺いしたいのですけれども、新聞等でも書かれたからとおっしゃったかと思います。公益通報者保護制度をつくるときにメディアの役割をどう考えるのかということについて、いろいろな考えがあったかと思うのですけれども、先ほど言及された事件について新聞等に出た経緯について何かございましたら、お教えいただきたい。

○田井委員 新聞に出たのは私どもから県に自主申告をしましたので、そこから出たわけです。

○大村委員 わかりました。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。土田委員、どうぞ。

○土田委員 運用上の問題として何かこの間に明らかになってきたことがあれば、御教示いただきたいと思います。

○田井委員 そうですね、担当者としては、人間関係の問題で、「各職場で解決していただくのがいいのではないですか」というケースが結構ありまして、そういう意味では職場のコミュニケーションが下手になってきていると思います。
 「何でこんなことを本社の我々に言ってくるの」というような、直接本人や上司に言いにくければ隣の先輩だとか、斜め上司だとかに相談すれば済むケースが多々あります。結局我々が相談を受けても、対応のためには現場へ下ろすしかないわけです。そういう相談が最近は増えているという印象です。これを見ていると管理者教育、「職場のコミュニケーションをいかにしてよくするか」という問題点が浮き彫りになっていると思います。また変なのですけれども、大体年間40件~50件の通報・相談があるのですが、時期が重なる傾向があります。そうすると、しばらく全く通報がないとかえって心配になってくる。
 余り多いのも問題なのですが、かと言って地下に潜ってしまう方がもっと心配です。そのため、「こんなことまで」ということでも丁寧に答えて、「何でも言っていいのですよ」というスタンスをPRして、できるだけ「何でも言ってみよう」という気になってもらおうとしています。お答えになりましたでしょうか。

○島田座長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。松村委員、どうぞ。

○松村委員 通報の窓口で内部と外部と両方あるということなのですが、通報の数の比率はどちらが多いのかということと、外部窓口で法律事務所が指定されているということで、ただ代理人ではないということなのですけれども、そうしますと法律事務所というのはその方のために動くということでもなく、こういうものがありましたということを会社に伝えて、その結果を報告する通達の窓口みたいな役割になるのでしょうか。その辺をお伺いいたします。

○田井委員 最後の質問からお答えします。おっしゃるとおりです。
 数で言いますと、やはり社内が多いです。セクハラ・ホットラインというのは設置した当初は多かったのですが、最近は減ってきていますので、40~50件のうち外部は半分までいかないと思います。取引先通報はもっと少なくて、年間数件までという感じです。
 社員で弁護士事務所にまず通報する人の傾向としては、どちらかというと、「こういう制度・運用は法律に照らしてどうなのだ」という、専門的な意見が聞きたいというのが多いようです。我々の制度を法律的に見て、制度と運用の確認をして、その結果を通報者にフィードバックしていただいているということです。

○島田座長 ありがとうございます。吉村委員、どうぞ。

○吉村委員 1点だけ、直接関係はないのですけれども、10月を倫理月間と位置づけていらっしゃるということだったのですが、差支えなければ具体的にどんな取組みをなさっているのか、教えていただけますか。

○田井委員 倫理とかコンプライアンスは、日常的にやっていかないといけないものなのですが、とは言いながら、どこかで何かイベントがあった方がきっかけになるということで、まずは、ポスターをつくってCEOからメッセージを出します。それは海外にも出しますので中国語ほかに訳します。全社共通の行事は各部署で5人~15人ぐらいの単位で必ず何らかの倫理関係の研修をやります。そのためのツールとして私どもからケーススタディ教材を提供していますが、「ハンドブックの内容全部でなくても、自分たちの部署に一番関係のあるテーマを選んで勉強しましょう」ということです。結果は職制を通じてまとめられ、実際に何人の社員が参加したかを、毎年1月にチェックをしています。
 もう一つは先ほど紹介した企業倫理アンケートを国内グループ社員の10%に実施するということと、企業倫理、コンプライアンス、CSRに関するe-Learningの希望者を募るとか、活動としてはそういうものがメインになります。

○島田座長 ありがとうございます。

(3)大崎電気工業の取り組みについて

○島田座長 よろしければ、時間の関係もございますので先に進めさせていただきます。渡邊委員、お願いいたします。

○渡邊委員 大崎電気工業の渡邊でございます。
 本日はレジュメにあるとおり、第一点として当社の公益通報者保護制度について御説明させていただきます。
 2番目に、私は東京商工会議所の副会頭を務めさせていただいておりますので、中小企業向けの普及啓発活動についても説明させていただきます。
 3番目に、今後の専門調査会の議論についての3点について話させていただきたいと思っております。
 まず当社の公益通報者保護制度について御説明させていただきたいと思いますけれども、その前に当大崎電気とはどんな会社かということを、御説明させていただきたいと思うのですが、主に8割ぐらいが電力会社向けの電力量計、あるいはその横に使い過ぎると電気が切れてしまうブレーカー、温水器なんかを使っていらっしゃるとタイムスイッチというのがありますけれども、いわゆる電気を家庭の中で配線するまでのところの器機をつくっております。それ以外ですと薄型テレビの製造装置等々もつくっておりますが、売上規模的にはグループで500億円、従業員数で約2,000名という中堅企業だと思っています。
 今までですと余り話題性がなかったのですけれども、最近ですとスマートグリッドとかスマートメーターというのがあると大崎電気の商品でございまして、そういう面で昨年ぐらいから急に注目を浴びている会社であります。
 それでは、当社の公益通報制度でございますけれども、2006年4月に公益通報者保護法の施行に基づきまして、当社及び子会社において組織または個人的な法令違反及び不正行為に関する通報または相談の適正な処理の仕組みとして、大崎電気グループヘルプライン制度を設けております。これは法令違反行為等の早期発見と是正を図り、コンプライアンス経営の強化に資することを目的としております。業務に関する法令違反、業務に関しない法令違反、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、メンタルヘルス等、相談対応部署をそれぞれ設置し対応をしております。
 パワハラとかセクハラはまた別の部署ですけれども、いわゆる法令違反等の通報先は当社の監査役室に置かれております。また、通報者が通報等をしたことを理由に不利益な取扱いを受けることなく、通報者の職場環境が悪化することのないよう処置を講じているほか、通報者に対して不利益な取扱いや嫌がらせ等を行う者に対しては、直ちに当該行為の中止命令等の処置を講ずるように努力をしております。
 虚偽の通報、推測に基づく通報、他人を誹謗中傷する通報、その他不正の行為を目的とする通報を防ぐために、当社の場合は通報または相談方法は原則実名で、書面はイントラネットからとれるようになっておりますけれども、それによって電子メール及び口頭で行っております。資料5-2にあるように通報件数は残念なことに非常に少なくて、私が知っている限りですと1件ございまして、これは不適切な金銭処理をやった人がいたということで、これに対しては改善措置を講じております。
 こういう形でコンプライアンスの意識というか、社会的にもコンプライアンス重視というのが大変厳しくなってきたということで、当社としても大変遅れていると言えば遅れているかもしれませんけれども、2007年に企業行動憲章をつくらせていただきまして、2009年4月にコンプライアンス規程を設定いたしまして、コンプライアンスマニュアルを全従業員に配布をいたしています。これはいわゆる法令違反、特に反社会、談合、特に当社の場合ですと電気のメーターという法定計量器でございますので、それに対してのデータの改ざんなどがあると、当社の企業存続にも大変に重要な問題でございますので、そういうことがないように考えて行動しているわけでございます。
 次に、東京商工会議所の中小企業向けの啓発活動について、御紹介をさせていただきたいと思いますけれども、この2つの青い冊子に詳しくは記されております。
 東京商工会議所では中小企業のいろいろな施策、普及啓発活動を行っておりますが、公益通報については法律が施行される際に、パンフレットの配布に協力をいたしました。
 最近特に力を入れているのは、企業に対してのCSRや社会的責任の取組みを促進することで、公益通報者保護制度が導入された背景には、企業における倫理観や社会的な規範意識の問題があると考えております。
 法律を説明するだけでは不十分と考えたために、東京商工会議所では中小企業にもわかりやすい、自分の会社で規範をつくる際の参考になる企業行動規範を作成したり、具体的にどこまで社内体制ができているか、今後どのような行動をとるべきか、わかりやすく解説いたしました社会的責任対応チェックシートを配布したりいたしております。チェックシートの中には法令違反行為が生じていないか、定期的にチェックしているかどうか、寄せられた意見を分析し企業活動の改善に活用しているかという項目もございます。公益通報の根底にある考え方を具体化しているものだと思っております。
 なお、企業行動規範は平成19年に東京商工会議所傘下のすべての企業に約8万部配布をいたしました。現在でも普及啓発活動に努めているわけでございます。
 最後に今後の議論について一言申し上げたいと思います。公益通報者保護法が平成18年に施行されてから5年目を迎えておりますけれども、残念ながら私が思うには中小企業のほとんどの企業が、こうした法律があることを知らないし、自分の会社が制度を整備する必要があること認識していないと思っております。
 本日御出席の委員の皆様方は、我が国の企業の99.7%が中小企業であるという現実を御存じだと思っておりますけれども、その辺のところを改めて問いかけていきたいと思います。是非、大企業だけを視野に入れるのではなく、中小企業の実態を十分に踏まえて、より実効性の上がるような施策になるように、是非議論を進めていただきたいということを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。いかがでございましょうか。三木委員、どうぞ。

○三木委員 大阪市の三木です。今いただいた報告の中で、通報は原則としまして実名でという制度を採用されておられるということで、それは非難中傷といった推測に基づく、あやふやな通報を排除するという意味では非常に有効だと思うのですが、一方で特に中小零細企業等で社員数が少ない場合、実名でとなりましたら事実上の不利益ですとか、そういったことを恐れて通報を回避するような、アンダーグラウンドに潜ってしまうおそれというのはないのでしょうか。また、それに対する対策というのはどのようにお考えでしょうか。

○渡邊委員 当社の場合は一応実名でということで、いわゆる非難というのが結構多いのではないかということで、実名とさせていただいたのですけれども、中小企業となると3人、4人のところで実名というよりも、通報が作用するかどうかというのもなかなか難しいと思いますので、その辺のところは実名あるいは匿名を含めて、もうちょっと議論をしていかなければならないのではないかと思っています。

○島田座長 よろしゅうございますか。ほかにはいかがでございましょうか。中村委員、どうぞ。

○中村委員 今2名、3名と言われたように中小企業で公益通報の窓口をつくろうと思うと本当に絶望的になると思うのです。そこで例えば商工会議所などが音頭をとって、数社とか何十社でも何百社でもいいのですが、まとめてどこかに外部通報の1つの窓口をつくってもらって、各社みなさんそこに通報してください、みたいな制度構築というのは考えられないのでしょうか。

○渡邊委員 御意見を参考にしながら、検討させていただきたいと思います。

○島田座長 ありがとうございます。大変重要な御指摘だと存じます。今後中小企業において、公益通報者保護法が、どうやったらうまく機能していくのかも1つの大きなテーマですので、今後議論を深めていただければと存じます。ほかにいかがでございましょうか。土田委員、どうぞ。

○土田委員 今の点と関連してなんですが、現場での感覚として公益通報の制度が、特に中小で普及しないことの原因は何だとお考えになられているのか。周知徹底がされていないことは1つあるのだろうとは思うのですけれども、仮にそれがされたとしても、今のお話でなかなか難しいものがあるのではないかと個人的には考えております。現場の感覚からすると、恐らくこういうことが大きな障害として考えられるのではないかということがありましたら、御教示いただきたいと思います。

○渡邊委員 先ほど言ったように、中小企業の公益通報というのはなかなか難しいところがあると思うのですけれども、それ以上に企業として絶対に法令違反をしないのだ。例えば中小企業の場合ですと法令違反をしたらつぶれてしまう。そういうところから我々としては、絶対に法律違反をしないようにしようという啓蒙活動は更に重要だと思っていますので、その辺のところの努力をしていきたいと思っております。それによって、要するに公益通報をしなくてもいい、とにかく法律違反をしないのだというところをやりたいと思っています。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。
 それでは、私の方から一言お伺いしたいのですが、企業行動規範など大変結構な取組みかと思うのですが、加盟している皆さんからの反応のようなものがもしあれば、お聞かせいただければと思います。

○渡邊委員 いろいろと反応はあると思うのですけれども、先ほども言ったように行動を我々としてもやっていこうということでやっております。

○島田座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。事務局もよろしゅうございますか。

≪4.閉 会≫

○島田座長 どうもありがとうございました。本日は公益通報者保護制度の現状に関して実態調査の結果、懇談会における主な議論等について、まず消費者庁から御説明をいただきました。
 また、各委員からの発表を通じて運用状況の把握を行わせていただきました。
 次回につきましても、引き続き各委員からの御発表を通じて、運用状況の把握を行っていきたいと思います。
 皆様の方からほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、本日の議題は以上でございます。最後に事務局から次回の日程について報告があるということでございますので、お願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。島田座長からも今お話がありましたけれども、次回についても引き続き地方自治体、弁護士会における相談窓口等に関わられている委員の方からの御発言を通じて、更に運用状況を把握し、議論を深めていただければと思っております。
 次回第3回の専門調査会は、8月5日木曜日の16時から行いたいと思います。第4回の専門調査会は9月13日月曜日の16時からということで、8月、9月と続きますけれども、どうぞ御協力よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

○島田座長 ありがとうございました。
それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)