第1回 公益通報者保護専門調査会 議事録

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日時

2010年6月9日(水)9:00~10:10

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 島田座長、大杉委員、田井委員、土田委員、仲田委員、野澤委員、橋本委員、松村委員、
 三木信夫委員、三木由希子委員、山本委員、吉村委員
【担当委員】
 中村委員長代理、日和佐委員
【説明者】
 消費者庁 成田企画課長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.公益通報者保護専門調査会の進め方について
3.公益通報者保護制度の現状について
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:58KB)
【資料1】 公益通報者保護専門調査会の進め方について (PDF形式:64KB)
【資料2】 公益通報者保護制度説明資料 (PDF形式:310KB)
(参考資料1) 消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員名簿 (PDF形式:67KB)
(参考資料2) 消費者委員会運営規程 (PDF形式:70KB)
(参考資料3) 消費者委員会公益通報者保護専門調査会設置・運営規程 (PDF形式:97KB)
(参考資料4-1) 公益通報者保護法関連資料 (参考資料4-2) 公益通報者保護制度に関する調査結果(概要) (PDF形式:434KB)
(参考資料4-3) 公益通報者保護制度のあり方に関する懇談会における主な議論等

≪1.開 会≫

○齋藤審議官 本日は皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
 ただいまから「消費者委員会公益通報者保護専門調査会」の第1回会合を開催いたします。
 私は内閣府の方で消費者委員会担当の審議官を務めております齋藤でございます。よろしくお願いします。本来でありますれば、原事務局長が議事進行のお手伝いをするところでございますけれども、ほかの会議が今、同時に動いておりまして、その関係でしばらくの間、進行役を務めさせていただきます。
 公益通報者保護専門調査会につきましては、本日が発足後、初めての会合となります。お手元の参考資料1をごらんいただきますと、この調査会の委員名簿を付けております。お名前等を御確認いただければと思います。
 消費者委員会から、中村委員、日和佐委員がこの専門調査会の担当委員として調査審議に参画いたします。
 本日は、所用により、大村委員、渡邊委員が御欠席でございます。
本専門調査会の座長につきましては、5月28日の第25回消費者委員会におきまして、消費者委員会の松本委員長から指名がありまして、島田陽一委員にお務めいただくこととなっております。
 それでは、島田座長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○島田座長 このたび、公益通報者保護専門調査会の座長を務めることとなりました、島田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は第1回会合でございますので、最初の本専門調査会を消費者委員会に置くことになった経緯につきまして、事務局の方が御説明をお願いいたします。

○齋藤審議官 公益通報者保護専門調査会を消費者委員会に置くことになった経緯などについて、御説明させていただきます。昨年の通常国会の審議を経まして、消費者庁関連三法が成立、施行されました。それによりまして、消費者庁及び消費者委員会が設置されたわけでございますが、これに伴いまして、公益通報者保護法が内閣府から消費者庁に移管されております。一方、消費者委員会につきましても同じく設置法の規定に基づきまして、公益通報者の保護に関する基本的な政策に関する重要事項についての調査審議を行うことが所掌事務となっております。
 そこで消費者委員会におきましては、第10回消費者委員会において、お手元の参考資料3にございます公益通報者保護専門調査会設置・運営規程が決定されまして、消費者委員会の下に専門調査会を設置することとなりました。その後、本日お集まりの皆様に委員となっていただくための所要の手続を進めまして、本日この第1回の会議を開くこととなった次第でございます。皆様におかれましては、これからの審議をよろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、次に座長代理を決めたいと思います。今、御紹介がございました公益通報者保護専門調査会設置・運営規程の第2条4項でございますが、座長があらかじめ座長代理を指名することとなっております。座長代理につきましては、私の方から右隣にお座りをいただいている橋本陽子委員にお願いをしたいと思います。私とずっと一緒に公益通報者保護の見直しの検討を進めてきたということもございまして、御指名をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、委員の皆様に簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。なお、時間の関係もございますので、御所属とお名前のみでお願いいたします。
 それでは、まず橋本座長代理から順にお願いをできればと思います。よろしくお願い申し上げます。

○橋本委員 学習院大学の橋本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○野澤委員 毎日新聞の論説委員の野澤と申します。よろしくお願いいたします。

○仲田委員 連合の経済政策局の仲田と申します。よろしくお願いします。

○土田委員 中央大学の土田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○田井委員 帝人株式会社CSR企画室の田井と申します。よろしくお願いいたします。

○大杉委員 中央大学の大杉と申します。よろしくお願いいたします。

○吉村委員 埼玉県の深谷市役所行政監察室の吉村と申します。よろしくお願いします。

○山本委員 弁護士の山本と申します。大阪弁護士会所属です。よろしくお願いします。

○三木由希子委員 NPO法人情報公開クリアリングハウスで理事をしております、三木と申します。よろしくお願いいたします。

○三木信夫委員 大阪市情報公開室で公益通報を担当しております三木と申します。どうぞよろしくお願いします。

○松村委員 第一東京弁護士会所属の弁護士の松村と申します。よろしくお願いします。

○中村委員 消費者委員会の委員長代理をしております中村です。よろしくお願いします。

○日和佐委員 同じく消費者委員会から参加させていただいています日和佐でございます。よろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございました。2人は消費者委員会からこちらに参加いただいているということでございます。
 また本日は消費者委員会の事務局から先ほど御説明いただきました齋藤審議官に加えて、原事務局長に御出席いただくことになっております。また、消費者庁から成田企画課長に御出席いただいております。よろしくお願い申し上げます。
 なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録につきましても後日公開することとします。
 それでは、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○齋藤審議官 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お配りしました資料の議事次第の次に配付資料が一覧になっております。資料が1と2と2つございます。参考資料といたしまして、1、2、3、4-1、4-2、4-3といったものが用意されてございます。もし不足がございましたら、事務局の方にお申し付けをお願いいたします。

○島田座長 よろしいでしょうか。カメラの方はここで御退出をお願いいたします。

≪2.公益通報者保護専門調査会の進め方について≫

○島田座長 それでは、議題に入ります。本日は「2.公益通報者保護専門調査会の進め方について」、「3.公益通報者保護制度の現状について」を議題として取り上げたいと存じます。
 まず「2.公益通報者保護専門調査会の進め方について」につきまして、議論を行いたいと思います。設置運営規程の第3条によりますと、本専門調査会は委員会の求めに応じて調査審議するとされておりますことから、先般5月28日の第25回消費者委員会において、お手元の資料1「消費者委員会公益通報者保護専門調査会の進め方について」がとりまとめられたところでございまして、この進め方に沿って調査審議を行うことが求められております。
 それでは、事務局より資料1の説明をお願いいたします。

○齋藤審議官 それでは、資料1に沿いまして、進め方についてということで御説明をさせていただきます。この紙は5月28日の消費者委員会においてとりまとめられたものでございます。
 「1 趣旨」に書いてございますように、本専門調査会は公益通報者の保護に関する基本的な政策に関する事項について、消費者委員会の求めに応じて調査審議するとなっております。
 1枚おめくりいただきまして、関連する法律の規定がございます。御覧いただければと思います。まず公益通報者保護法の附則の第2条に、施行後5年をめどとして、施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするという規定がございます。施行は18年4月でございますので、5年ということになりますと、来年の3月末には5年経過するということになります。
 附則の下に、この法律が制定されたときの附帯決議が書いてございまして、まず衆議院の附帯決議の第9項におきましては、本法の見直しについて、通報対象事実の範囲、外部通報の要件及び外部通報先の範囲の再検討を含めて行うことということで、検討事項が列記されております。参議院についても同様の規定がございます。
 こうした規定を受けまして、1枚目にお戻りいただきますと「2 主な審議事項」として、以下のようなことが掲げられております。
 「(1)公益通報者保護制度の現状と課題について」。まず現状と課題を整理する。
 その上で「(2)公益通報者保護制度の在り方・見直しの視点について」ということで、やや広い視点からこの制度の状況を眺め渡すということがございます。
 (3)はそういったものを踏まえまして、更に具体的な課題ということで、法律で規定すべき項目について、どのように考えているかといったような議論が次に行うべき課題かと存じます。
 (4)はその他ということになっております。
 「3 スケジュール」でありますけれども、先ほど申しましたように、附則の規定は5年をめどに検討ということがございますので、平成22年度中をめどに一定の検討結果を得ることを念頭に、当面以下のようなスケジュールで進めていってはいかがかということでございました。第1回、第2回におきましては、制度の現状、これまでの議論をレビューするということでございます。第3回以降は各審議事項についての検討を進めていっていただくということでございます。
 御説明は以上でございます。

○島田座長 ありがとうございました。それでは、御質問等のある方は御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、ただいま事務局から御説明のありました資料1の進め方に基づいて、専門調査会を運営していきたいと思います。

≪3.公益通報者保護制度の現状について≫

 続きまして「3.公益通報者保護制度の現状について」に移りたいと思います。本専門調査会の審議を始めるに当たりまして、公益通報者保護法の概要、各種ガイドライン、消費者庁における取組状況について確認をしておきたいと思います。
 それでは、消費者庁の成田企画課長より御説明をいただきたいと思います。

○成田企画課長 消費者庁企画課の成田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず公益通報者保護制度の概要につきまして、既に御案内の方もおられると思いますけれども、念のため、資料2に沿って御説明させていただきたいと思います。
 資料をおめくりいただきまして、4枚目でございます。法律の制定の背景ということで、この制度の検討が始まりました平成12年から14年ごろに食品の偽装表示事件や、自動車のリコール隠しなどの企業の不祥事が続発いたしまして、こういった不祥事の多くが事業者内部からの通報を契機として明らかになったのではないかと考えられるところでございます。
 こういった通報者が通報を行ったことを利用として、解雇などの不利益な取扱いを受けることがないように、通報者の保護に関する制度的なルールを明確化していくことが必要ではないかと考えられましたことから、国民生活審議会における議論などを経まして、平成16年に公益通報者保護法案が国会に提出され、6月に成立いたしまして、平成18年4月1日に施行されたところでございます。
 この法律の目的でございます。この法律では、公益通報者の解雇の無効などに関する規定、公益通報に関して事業者や行政機関が取るべき措置に関する規定がございます。こういった規定によりまして、公益通報者の保護を図り、事業者による法令遵守の促進を図り、こういったことによって、最終的には、国民生活の安定と経済社会の健全な発展を図ることが目的となっております。
 5枚目は、法律の概要でございます。この法律では、後ほど御紹介いたしますように、公益通報に関して、いろいろな定義や要件が定められております。労働者の方が、こういった要件を満たす公益通報を行った場合に、その効果としまして、1つは公益通報者に対する解雇の無効やその他の不利益な取扱いの禁止というような民事ルールが定められているということと、通報を受けた事業者や行政機関のとるべき措置が規定されているというのが法律の全体の構成でございます。
 6枚目は、「公益通報」の定義でございます。まず「労働者」とマル1に書いてございますけれども、公益通報者となり得るのは労働者とされております。したがいまして、例えば、企業の取締役でありますとか、下請事業者などの取引事業者は公益通報者保護法の対象にはなっていないということでございます。また、公務員も原則として公益通報者となり得る労働者に該当することとされております。
 マル2としまして、「不正の目的でなく」と書いてございます。例えば、通報を手段として、金品を授受したり、他の従業者などの他人に対して有形、無形の損害を与えたりする目的であるというような社会通念上違法性が高い通報は公益通報とはならないこととなっております。
 マル3に「労務提供先」と書いてございます。この法律は、公益通報の内容となる法令違反行為等の主体としての事業者の範囲を、通報者である労働者と一定の関係にある「労務提供先」ということで明確にしております。この「労務提供先」は、「ア」でございますけれども、通報を行う労働者を直接雇用している事業者が該当いたします。また、通報を行う労働者が派遣労働者である場合には、派遣先の事業者も労務提供先となってまいります。更に勤め先が他の事業者と請負契約などの取引契約を締結していて、この契約に基づいて労働者の方がその「他の事業者」で労務を提供する場合に、その取引先が労務提供先となってまいります。
 マル4の法令違反行為につきましては、後ほど御紹介をさせていただきます。
 マル5が「通報先」の関係でございます。この法律では通報先として3つの分類が規定されております。1つは「ア」でございますけれども、「事業者内部」ということで、労務提供先又は労務提供先があらかじめ定めた者ということで、労務提供先といたしましては、例えば、事業者の代表者、権限を有する管理職や直属の上司が該当いたします。労務提供先があらかじめ定めた者につきましては、例えば、労務提供先においてグループ企業共通のヘルプラインを設けたり、社外の弁護士の方を通報先として定めたりするということが考えられますので、こういった方への通報も内部通報として取り扱うという趣旨でございます。
 「イ」に「行政機関」とございますけれども、通報を受けた行政機関が、通報内容について法的な権限に基づく調査を行って、事実の有無を確認し、当該事実がある場合には、その是正を行うことができるように、その法令違反行為について「処分又は勧告等をする権限を有する行政機関」とされております。
 「その他の事業者外部」でございますけれども、これは、その者に対し法令違反行為を通報することが、その発生や被害の拡大を防止するために必要であると認められる者ということで、例えば、消費者団体、事業者団体、報道機関などが考えられますけれども、ライバル企業など労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者は除かれることとされております。
 「5.『公益通報者』の定義」でございますけれども、公益通報を行った労働者とされております。
 7枚目の「6.通報の対象となる『法令違反行為』とは」でございますけれども、公益通報に該当することとなりますのは、すべての法令に違反する行為ではなくて、特定の法律に違反する事実についての通報ということになっております。この法律では、公益通報の対象となる特定の法律について、例えば、「個人の生命又は身体の保護」、「消費者の利益の擁護」に関わる法律など、幾つかの分野を挙げております。また、別表において、例示といたしまして、刑法、食品衛生法、金融商品取引法など幾つかの分野に該当する代表的な7つの法律を挙げまして、それ以外の法律につきましては、政令で定めることとされております。現在、この対象法律は合計で431本ございます。
 通報対象事実でございますけれども、これらの法律に直接違反する行為だけではなく、例えば、ある基準が定められていて、この基準に違反をすると主務大臣が命令をすることになっていて、この命令に違反することが罪となるような行為の場合に、最初の基準に違反するような事実も含めることとされております。
 8枚目「7.通報先に応じた保護の要件」でございます。先ほど申し上げましたように、通報先として3つの分類が設けられておりまして、それぞれ異なる公益通報となる要件が定められております。
 1つは、事業者内部への通報の要件でございますけれども、不正の目的ではなく通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合に公益通報できるとされております。
 2つ目の行政機関への公益通報の要件でございますけれども、不正な目的ではなくて、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由がある場合に公益通報をすることができることとされております。
 行政機関以外の事業者外部への通報につきましては、行政機関への通報の要件に加えまして、下にポツが5つございますけれども、例えば、事業者内部や行政機関に公益通報をすれば、解雇その他の不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当な理由がある場合ですとか、事業者内部に公益通報をすれば、通報対象事実に係る証拠が隠滅されるなどと信ずるに足りる相当な理由がある場合などのいずれかの要件に該当する場合とされております。
 資料の9枚目は、こういった要件を満たす公益通報を行った方が受けられる保護の内容でございます。1つは、解雇の無効ということで、公益通報者が公益通報したことを理由として雇用元の事業者が行った解雇は無効となることになっております。また、解雇以外の不利益な取扱いの禁止といたしましては、事業者が、公益通報者が公益通報をしたことを理由として、降格、減給などの不利益な取扱いをしてはならないこととされております。3つ目の労働者派遣契約の解除の無効などにつきましては、派遣労働者である公益通報者が、その派遣先の事業者等における通報対象事実について、公益通報したことを理由として、その派遣先の事業者等が行った労働者派遣契約の解除も無効となることなどが規定してございます。
 資料の10枚目と11枚目でございますけれども、公益通報者保護法では、例えば労働基準法などに基づく申告制度、労働契約法の解雇の規定など、他の法令の適用との関係を整理した規定を設けております。
 資料の12枚目でございます。ここまでは公益通報者の保護に関する規定でございますが、公益通報者保護法には通報を受けた事業者や行政機関の取るべき措置に関する規定がございます。1つは、事業者内部に通報した場合でございますけれども、法律では書面によって公益通報者から公益通報された事業者は、公益通報に係る通報対象事実の中止、その他是正のために必要と認められる措置を取ったときはその旨を、通報対象事実がないと認めるときはその旨を公益通報者に対して遅滞なく通知するように努めなければならないと書いてございます。公益通報された方は、通報した結果がどうなったのかについて関心を持っておられると思いますので、事業者が実際に是正措置を取ったのかどうかについて、通報者への通知の努力義務などを規定しているところでございます。
 また、行政機関に通報した場合でございますけれども、外部通報を受けた行政機関は、必要な調査を行って、通報対象事実があると認めるときは法令に基づく措置、その他適切な措置を取らなければならないこととされておりまして、公益通報が誤って処分などの権限を有しない行政機関になされた場合には、その行政機関は正しい行政機関を公益通報者に教示しなければならないとされております。
 なお、法律の条文、これから御紹介させていただきますガイドラインにつきましては、参考資料4ということで御用意させていただいているかと思いますので、適宜御参照いただければと思います。
 資料の13枚目から「II.ガイドラインについて」でございます。法律では、通報を受けた事業者や行政機関が取るべき措置についての規定もございますけれども、実際にこういった制度が有効に機能して、事業者や行政機関における法令の遵守を図っていくためには、通報を受けた事業者や行政機関が通報者の秘密にも配慮しつつ、適切な対応を行っていただくことが重要であると考えられるところでございます。したがいまして、公益通報者保護制度に関しまして、3つのガイドラインが定められております。
 14枚目に「1.ガイドラインの種類」がございますけれども、ガイドライン3つのうち2つが行政機関に関するもの、1つが民間事業者に関するものでございます。行政機関に関するガイドラインが2つございますのは、行政機関には、1つは事業者としての側面、すなわち内部の職員が行政機関における法令違反行為などについて通報し、それを受け付けるという側面と、権限のある行政機関として、外部の民間事業者等の労働者の方から、その事業者における法令違反行為に関する外部通報を受け付けるという側面がございますので、2つのガイドラインがございます。
 通報を処理する主体となる民間事業者が、問題点を自ら発見して解決する自浄作用を十分に発揮していただくために、事業者内部における通報処理の仕組みを整備することが求められておりますので、「公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン」が策定されております。
 資料の16枚目からガイドラインの内容を御紹介しております。ガイドラインの全体の構成は3つとも大体同じになっております。共通して言えますことは、1つは通報処理の仕組みを整備していただきたいということでございます。それぞれの行政機関や事業者において通報処理の仕組みを整備して、通報窓口を設置して、内部規程を整備していただきたいということが書いてございます。
 また、いずれのガイドラインにおきましても、通報に関する秘密の保持を徹底していただきたいということが繰り返し書いてございます。
 通報処理の流れでございますが、通常、通報を受け付けて、調査をして、必要があれば是正措置を取るというような流れになろうかと思いますが、それぞれの段階における必要な事項をガイドラインにおいて規定しております。また、それぞれの段階において実際に通報された公益通報者の方に対する通知についての規定もございます。
 このほか、ガイドラインによっては、通報を行った者への解雇や不利益取扱いの禁止に関する規定。通報処理を行った後のフォローアップに関する規定、労働者に対する仕組みの周知に関する規定なども盛り込まれております。
 23枚目の取組状況でございます。公益通報者保護制度が行政機関や事業者における法令遵守の促進のために有効に機能していくためには、より多くの事業者や労働者の方に制度を知っていただくことが不可欠でございますので、消費者庁において、制度の内容等について周知啓発等を行っております。
 まず周知啓発の1つといたしまして、24枚目でございますが、例えば「公益通報ハンドブック」というような広報資料を作成いたしましたり、各地で説明会を開催したりしております。行政機関において公益通報に適切に対応していただくという観点から、行政機関の職員の方向けの研修会なども実施しております。
 25枚目でございます。公益通報者保護制度に関する調査なども実施しております。概要につきましては、本日、参考資料4-2で御用意させていただいておりますが、もし次回以降お許しをいただければ、こういった内容についても御紹介させていただければと思っております。
 26枚目は公益通報者保護制度に関する研究でございます。幾つか研究などをやっておりまして、例えば、昨年度は、内閣府国民生活局におきまして、懇談会を開催いたしまして、本日御出席いただいております島田座長や橋本委員にも御出席いただいて、いろいろと御議論をいただいております。この資料につきましても参考資料4-3で御用意させていただいておりますので、次回以降、御紹介させていただければと思います。
 最後に27枚目の情報提供・相談ということで、例えば、制度に関するウェブサイトを設けて、法律やガイドラインの内容のほかに、権限のある通報先となる行政機関を検索できるような仕組みを用意しておりましたり、相談ダイヤルということで、制度全般についてのいろいろな相談を受け付ける体制を整備したりしているところでございます。
 駆け足でございますが、資料につきましては以上でございます。よろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございました。それでは、御質問等のある方は御発言をお願いします。いかがでございますか。今のところは特に御質問はございませんでしょうか。
 それでは、まだお時間もございますので、これからこの委員会を進めていくに当たりまして、委員のそれぞれから公益通報者保護制度に関する認識あるいは問題意識等を御披露いただけると大変ありがたいと思いますが、よろしいでしょうか。ごく簡単で結構でございますので、大変恐縮ですが、お願いできればと思います。どなたからでも結構でございますが、いかがでしょうか。
 では、山本委員からお願い申し上げます。

○山本委員 弁護士の山本と申します。最初にお話しさせていただきますけれども、私自身は日本弁護士連合会の消費者問題対策委員として、この公益通報者保護制度に関わりまして、法制定の過程から日弁連の意見書等でいろいろな問題点の提起をしてきました。附則で見直しが決められたという背景は、やはり法制定のときのいろいろな議論があった、そういうことをまず前提として、今回の見直しの場合でもどういう議論があったかということをしっかり認識してもらいたいと思っております。
 特に日弁連等が申し入れた当時の意見では、通報対象事実が非常に狭いという問題点、あと外部通報において、通報の仕方が非常に難しいというところが主な点でありました。そういう点も今回の見直しで検討したいと思っております。
 法が整備されましたときに、衆議院の附帯決議で民間の相談窓口の充実に関して、弁護士会等に協力要請するということがありまして、この協力要請に基づきまして、現在、東京、大阪、京都の弁護士会で公益通報者の相談窓口が設置されております。私は大阪の公益通報者サポートセンターで副委員長を務めていまして、法制定からこれまで約200件の相談が入ってきています。
 内閣府から要請があってセンターを設置したのですけれども、実態調査のときはだれも来てくれなかったというところが非常に残念に思っていますが、そこでやはり弁護士として通報者から相談を受けたときに、この法律がうまく使えないといいますか、法律が通報をエンカレッジできないということに働いてしまうという非常に歯がゆい思いをしているところがあります。そういった点でも問題点の提起ができたらと思っております。
 あとは私個人としましては、法制定のときは消費者庁がまだできていなかったものですから、消費者庁がせっかくできたので、この公益通報者保護の枠組みの中で、消費者庁をどうやって位置づけしていくかをこの際、検討できればと考えています。
 以上です。

○島田座長 口火を切っていただき、大変ありがとうございました。
 ほかにいかがでございますか。お願いいたします。

○三木由希子委員 私も法律が制定する前から、公益通報者保護法というか内部告発者保護制度というものが必要ではないかと。私たちは法的機関の情報公開の問題を主にやっておりまして、特に公的機関の組織の運営を考える上で、風通しのいい組織をつくり、問題が起こりにくい組織体制をつくるためには、やはり公益通報者保護制度のようなものが必要だろうということで、もともとは情報公開のことをやっていたのですけれども、その延長として公益通報者保護制度も取り組んできました。
 私たちだけではなくて消費者団体とか、いろいろな人たちと一緒に取組みをしていまして、日弁連の消費者対策委員会の方ともやり取りをさせていただいて、ずっと取り組んでまいりました。
 公益通報者保護法ができたこと自体は評価をしているというか、それはそれでよかったと思っているのですが、これは法制定の当時から、先ほど山本委員がおっしゃられたように、いろいろな議論がございまして、私も公益通報の対象となる範囲が狭いことと、通報先がわかりにくいということは問題ではないかというよりも、間違ったメッセージが社会に伝わるのではないかということを懸念してきました。
 刑事罰を伴う違法行為で、しかも別表に掲載されているものが保護される公益通報の内容になるということで、刑事罰を伴うような特別なものが保護される通報範囲になるというのは、通報する人にとっては通報してもいいものかどうか、そういう判断を迷わせる可能性があるということと、保護されるのはそういう刑事罰を伴うような問題だけなのだというメッセージが伝わっても問題ではないかと思っていましたので、公益通報者保護制度がどういうことを促進する制度なのかをもう一度考える必要があるのではないかと考えています。
 できれば通報範囲はなるべく幅広くして、特に内部通報に関しては刑事罰を伴うかどうかではなくて、問題があると思ったものが通報をして、それによって不利益を受けないというような枠組みにした方が、社会に対して法律としてよいメッセージを発することができるのではないかと、ずっと考えてまいりました。
 通報先も少し複雑というか、わかりにくい。外部への通報についても通報先が限られるとか、要件が厳しいのではないかということが問題意識としてはあります。全くの組織外、行政機関の更に外に出す場合については、むしろ内部通報の仕組みを整えて、しっかり機能させるためには、そこへの道筋をきちんとわかりやすく付けておくことが必要だと考えていまして、そういう意味でも使いやすく、わかりやすいメッセージを社会に発するような法律に今の法律がなっているのかどうかということと、そのための仕組みとして、どういうものが望ましいのかを、これまでの運用を通じて少し検証しながら、いろいろと検討をこの場でできればいいなと思っております。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございました。それでは、どうぞ。

○三木信夫委員 大阪市で実務をしております三木でございます。大阪市の実際の公益通報制度の運用の面から、先ほどお二人の委員の方がおっしゃったことも踏まえて、御報告したいと思います。
 大阪市ではこの法律と同一の時期の18年4月1日から独自に条例を設けまして、公益通報者保護制度を実施しております。この条例の運用状況が18~21年度までの4年間で通報件数が2,815件ございまして、年平均大体700件くらいの通報があるということです。ところが公益通報者保護法の法律に基づく通報で大阪市が受け付けましたのは、この4年間で11件しかないということです。
 どうしてこれほどの違いが出るのかとなりますと、先ほどもございましたように、1つは通報者が法律の場合は労働者に限定されておるということですね。そうしますと、雇用関係があると保護されるとは言いながら、どうしても心理的に通報しにくい。解雇やそういったことまではなくても、実際上の不利益を受けるのではないかというおそれがあるということだろうと思います。
 逆に大阪市の場合は、何びとでもという形にしております。言わば従業員である大阪市職員以外に一般市民、国民、外国人でもどなたでも結構です。メール等でも受け付けておりますということで、その通報内容につきましても匿名がありますので、はっきりと比率はわかりませんけれども、職員と職員以外の比率が大体5対5くらいで、職員以外からの一般市民、国民からの通報で非常に是正されたという件数も多くございます。そういう意味で、通報者の範囲を広げていただいた方がいいのではないかという点。
 通報窓口につきましても、大阪市では全部局で受け付けている。プラス独自に公正職務審査委員会という外部専門家による委員会を設けまして、そこでも外部で通報を受けられるということで、職員の方であっても上司等に知られることなく、それが通報できるという点。匿名での通報についても非常に広く受け付けていますので、それによって改善された例が多いということ。
 何よりも通報対象事実ですが、先ほどもございましたように、法律の場合は別表等で限定した刑法等の法律の犯罪行為といったものに限定されていますので、これが国民の方にとっては非常にわかりにくいですし、使いにくいということでございます。大阪市の場合は、そういう法令違反だけではなく、その法令違反も単に刑法とか犯罪行為以外の一般的な法規違反も入っておりますし、その他不適正な行為ということで、法違反ではありませんけれども、不適正な行為ということで広く受け付けております。
 そういった中で、ほかの自治体に先駆けてといったらおかしいのですけれども、裏金、預け、プール金、そういったものが公益通報制度によって明らかにされて、他の自治体よりも早くそれが改善されたということ。契約に関する内容等につきましても、意図的に分割して入札を回避している、随意契約でされているといった部分についても改善とか、非常に多くの改善がされております。
 そういった点で、通報対象者を労働者に限らず国民に広げていただくのはどうかという点と、特に通報対象事実について法令だけではなくて、不適正な部分等も広げて、なおかつ通報窓口が非常にわかりにくいというのがございますので、その辺りの改善をしていただけたらどうかという形に考えております。
 以上でございます。

○島田座長 どうもありがとうございました。いかがでございますか。お願いします。

○松村委員 では、流れがこういう形になっていますので、私からも一言申し上げたいと思います。法律の内容、問題点については、今いろいろと御意見が出ましたけれども、私としましては、この法律とか制度自体の周知徹底がまだ十分にされていないのではないかと考えております。
 先ほど山本委員の方から、弁護士会で相談窓口になっているというお話が出ましたけれども、私は東京ですが、東京の三弁護士会で公益通報についての協議会を設けておりまして、東京の中央官庁の職員の方たち等の相談窓口を三会の協議会を通じて設置をしておりまして、私も某官庁の相談窓口を担当させていただいていますが、まだ1年弱ではありますけれども、今のところ相談は0件です。
 その協議会で、ほかの官庁の相談に当たっている弁護士からも報告を受けているのですが、官庁によって多少差があるものの、やはり0件という官庁が結構ありまして、通報すべきような事実が全く発生していないということではないのではないかと思うのですけれども、先ほど職員の方たちに取組みということで広報をなさっているということをお聞きしたのですが、まだまだ十分ではないのかなということ。
 あと職員の方たちの身になって考えてみますと、通報したことによって自分の身が守られるかということが最大の気がかりということになるかと思いますので、そういったことに対する安心を与える工夫ですとか、そういった制度自体の改革も必要ではないかと思いますので、御議論をいただければと思います。

○島田座長 ありがとうございました。では、順番でよろしければ、橋本委員、よろしいですか。

○橋本委員 先ほど御紹介がありましたけれども、昨年に開催されました懇談会の方でこのテーマについて勉強させていただきました。そこでは、今ずっと御意見がありましたように、通報対象事実が狭い、公益通報をもっと拡大すべきだという御意見、公益通報をもっと促進すべきだという御意見も勿論ありました。
 それとともに、労働者にとってみますと、公益通報をしたことが本人にとって望ましいのかというと、必ずしもそうはならない可能性も高いということから、企業の内部での通報を優先して、そこで円満に解決することが労働者にとっても望ましいのではないかという観点から、やはり内部通報の仕組みをもっと実現可能なものとして整備する必要性があることを認識しました。内部通報制度については、ガイドラインもできておりますけれども、ヒアリングなどでは大企業は整えられているのですが、中小企業ではなかなか難しい、余裕がないということから、この内部通報の仕組みを中小企業でも拡大するための枠組みといいますか、それを促進できるような方策を考えていけたらよいのではないかということを勉強させていただきました。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○野澤委員 毎日新聞の野澤です。私は報道の現場にいる者でして、主に社会部がずっと長かったものですから、調査報道にも関わっていました。特に医療関係とか食品偽装の問題に関わってきたり、あるいは社会福祉法人の中での虐待、不適切な処遇、金銭をめぐる問題について、あれこれ情報提供を受けて、取材したり調査したり等をしてきた立場です。
 通報してくる側の人たちは、必ずしも公益をクリアーに自覚してやってくる人たちばかりではなくて、いろいろな思惑がないと今のこの日本社会では通報してこないです。ところが結果的にそれが公益にかなうようなものになって、組織や社会全体にとってもいい方向に向かっていくことを現場では経験してきました。
 通報してくる側の人たちは、解雇とか明確なペナルティーがあって通報してこられないというよりは、むしろ職場内の調和を乱すことに対する無言の圧力みたいなものがあったり、何とも言いようがないいじめみたいなものがあったりして、それでなかなか表に出てこない。職場の管理者にとっても、通報されること自体、異論を唱える声が出てくること自体が、管理者として能力がないみたいな見られ方もする傾向はまだまだあるように思います。
 私の経験から言って、最初はみんな小さなことです。その小さなことを通報できないために、だんだんエスカレートしてきて、しまいには意思的に隠さなければいけないようなことになって、組織全体の崩壊につながりかねないような状態になってくるというケースがほとんどでした。
 通報というものに対するイメージや概念をもっと変えていく必要があるのではないか。余りにもマイナスイメージに見過ぎていて、むしろ小さなことでも通報できるような環境を持っている職場が社会的にも評価されるくらいに考えていけば、対象や範囲を広げていけるのではないかと漠然と考えております。よろしくお願いします。

○島田座長 ありがとうございました。

○仲田委員 利用者である労働者団体の連合の仲田と申します。4年前、ちょうど法施行のタイミングで連合としての考え方をまとめましたので、簡単に御紹介させていただければと思います。
 第一義でございますが、まずは制度の周知徹底、普及という観点が必要だと思います。この制度が定着する中で、私たちは労働者の団体ということもありますので、健全な労使関係の構築を進めていくことがまず必要なのだろうと思います。それに加えて、法律の問題点として、4点ほど課題をまとめましたので、簡単に紹介させていただきます。
 まず1点目でございます。保護される通報の範囲の中に、法令違反のおそれというようなものを含めるべきではないかという点。
 2点目。外部への通報制度。先ほど来、話が出ておりましたけれども、こちらの要件が厳し過ぎるのではないかという点。
 3点目。通報先として新たな専門の第三者機関といったものを設けるべきではないかという点。
 4点目が一般企業への罰則であったり、処分を受けた通報者に対する救済制度の制定といったようなものであったりも設けるべきではないかという点、以上が当時にまとめられていた考え方でございます。
 こちらの考え方は当時の考え方でございまして、現在の情勢や今日的な考え方を踏まえて、この考え方が本当に正しいのかどうかも含めて、この委員会の中で検討していければいいなと思っております。よろしくお願いします。

○島田座長 ありがとうございます。

○土田委員 私は専門が行政法という科目でして、どうしても公益通報の枠組みの中でも行政の果たす役割に関心があるのですが、そのような観点から昨年度の懇談会の資料などを拝見させていただいていると、都道府県レベルでは100%の対応が仕組みとしてはでき上がっている。実際にどれだけ使われているかは別としてですね。
 これに対して、市町村レベルだと、まだ半分も行っていないという数字がありました。地方自治法などを見ていると、市町村は住民に最も身近な基礎的な団体ということになっています。住民に最も身近なはずの組織でそういった体制がいまだ取られていないということについては、どういうふうに分析をすべきかということは思っております。これにはいろいろな理由があると思いますので、特に現場の方の声などを拝聴できればと思っております。
 昨年度の懇談会の資料や先ほど大阪の方の話を伺っていると、大規模な組織ではそういった体制が取りやすいけれども、小規模だと話がまた変わってくるのかなとも思います。これは行政の現場だけではなくて、民間の場合も、言えそうで、資料を拝見させていただいていると、大規模企業では比較的そういった体制が整備されているけれども、小さいところになると、それが現状としていまだに十分ではないし、そもそも法が定めているやり方が合っているのかどうかという議論もあります。それぞれの組織にはいろいろな事情があると思いますけれども、スケールに見合った体制は一体どういうものなのか。恐らく一律ではないと思いますので、スケールに合った公益通報の体制というところをここで議論できれば、というのが第1点です。
 第2点目は、この間の裁判例などを見ておりますと、法律で禁止されていることが実際に行われた場合に、労働者の側で一体どういう救済が受けられるのかという観点から見ると、細かい話になりますが、事実上の不利益の取扱いについては、裁判で争っても結局、訴訟技術的な理由によってはねられてしまう。結果として損害賠償というような形でしか救済がされないというような現状があります。そういったものが裁判過程で考えられるべき問題なのか。あるいは立法過程で考えられるべき問題なのか。どこでその議論を行うべきかという問題はあろうかと思いますが、裁判で出てきたいろいろな議論をこの場で議論をさせていただければと思っております。
 以上です。

○島田座長 ありがとうございます。

○田井委員 帝人のCSR企画室で、実際にこういう内部通報の運営をやっております。範囲などは先ほど大阪市の方がおっしゃったように、我々もかなり広い範囲で、匿名も認めてということで、年間50件前後の通報を受けます。社内の通報窓口に加え、外部の弁護士事務所その他、契約外部機関への通報も含めてです。
 我々としては、目的は自浄作用。そういう意味では外部、行政、マスコミ等々に通報をする前に社内で早く発見して、できるだけ小さいうちに問題を解決したい。
 もう一つは、結構これが違反であるのかと悩んでいたり、どうしたらいいか考えあぐねていたり、ある意味、お悩み相談室みたいな機能も果たしつつということでございます。
 2006年には取引先を対象にした社外の通報窓口もつくっておりまして、結局、今4本の窓口を持っております。周知徹底とか利用促進の1つのやり方としては、通報内容の公開をしております。社員にはこれはどこのだれだというのがわからないように、抽象的にこういう主旨の通報があって、こういうふうに解決しましたと年に2回、報告しています。
 あとCSR報告書で、これはタイトルだけですけれども、パワハラの相談が何件ありました等、内容別の数字を公開しています。社員の関心も高いので、そこで自分たちが相談したことがそれなりに処理されているのをできるだけわかってもらおうという努力をしております。
 法律については概要しか存じ上げないので、今回は法律に関しては勉強しながら努めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○島田座長 どうもありがとうございました。

○大杉委員 中央大学の大杉でございます。私の専門は商法、会社法です。前回、法律の制定のときに親委員会が当時は国民生活審議会消費者政策部会で、私は子の委員会である公益通報者保護制度検討委員会におったのですけれども、この委員会で審議していたときには、先ほどの成田さんの説明資料7ページの通報対象となる法令は限定列挙ではなくて、個人の生命、身体に関わるような法令という議論をしていたのが、検討委員会の議論を離れた後に、何らかの理由で限定列挙になったという事情があって、どうしてかなと。現在の法制執務としてなるべく具体的に書くとか、そういう理由があるのかもしれません。具体的に四百数十本の法律を書くことのメリットとしては、企業側に自分の会社であれば、どういう法令が関わり得るということを明らかにすることが考えられるのですけれども、恐らくメリットよりデメリットの方が大きいのではないかというのが私の感想であります。
 通報先として現在、官庁に通報して、もし間違っていたら正しい通報先を教えてあげるということですけれども、所管の官庁に通報するのが制度の建付けでは主として予定されていますが、当時と違って現在では、例えば消費者庁に通報するような制度設計も考えられるところであります。
 霞が関のパワー・ポリティクスとして、例えば個別の官庁以外に消費者庁に通報できる制度がうまく機能するのか、しないのかが私はわからないので、ここは現実に即してみる必要があるのですけれども、とにかく先ほどの法令の範囲も含めまして、通報を考えている人にとって無用な障壁は課すべきでないという点では、これまでにほかの委員の方々が指摘していたような方向に私も賛同しております。
 なるべく手短にと思うのですけれども、企業が外部に通報されなくて済むようなものを中に設ける方が絶対にいいわけですが、現実には先ほど、土田委員あるいはほかの委員の方も言っておられたように、中小企業や中小の官庁では、中にしっかりしたものをつくるのは、「しっかりしたもの」の定義にもよりますけれども、重いものをつくるのは不可能ですし、作れるものがかなり限られる。
 そういう意味ではガイドラインで促すことにも限度があって、先ほどそういう専門の窓口について意見が出ていましたが、民間企業本体でもなく、さりとて官公庁でもない中間的なものということだったと思いますけれども、そういう点で現実的に考えないといけない、要するになるべく早い段階で、信頼関係が壊れないところで処置できる方がよいのです。重大になって会社側にとっても労働者の側にとっても抜き差しならないような段階で、例えばここにもいらっしゃるので悪意はないのですけれども、例えば抜き差しならない状態でいきなりマスコミに持っていくというのでは、それはみなにとって不幸なことといわざるを得ません。私も法制定やガイドライン制定をよく勉強していないので、今後勉強しながらと思うのですけれども、現在の状態がそうなっているかというのは大変関心を持っております。
 次の点で最後にしたいと思いますけれども、少し一般的に言いますと、行為規範が明確になっているかというのがポイントかと思います。法律そのものは、言わば裁判規範で一定の要件を満たしていれば解雇されないという民事のそういう部分について、中心として定めていまして、それだけでは例えば労働者の方にとって匿名で通報した方がいいのか、実名でした方がいいのか。また、通報を受けた企業等にとっても、どういうふうに行動するのが合理的なのかがわかりにくくなっています。この点は恐らくガイドラインである程度対処されていて、そこは私の不勉強な部分ではあるのですけれども、労働者から見れば匿名ですることのメリット、デメリット、会社の方にとっては処置を公開するかどうか等についての基本的な考え方が勿論書き切れない部分があって、法律ですべて書き切るのは不可能ですので、現在の法律にも合理性はあると思いますが、もう少し行為規範を明らかにする作業があり得るのではないかということを考えておる次第です。
 私が最後ではなくて、最後は吉村委員のはずなので、ここで失礼します。

○島田座長 申し訳ございませんが、手短にお願いします。

○吉村委員 聞きほれてしまいました。埼玉県の深谷市です。人口が15万人ほどの本当に小規模な市ですが、そんな私どもが公益通報を条例化したのは、平成20年に生活保護費不正受給事件を起こしてしまいまして、その再発防止策の一環としてつくったところです。平成21年4月でまだ1年ちょっとですけれども、実施しております。隣の熊谷市で弁護士の事務所を開いていらっしゃる方に、行政監察員ということでお願いをしております。
 今、1年3か月くらいで、この間2件ほど通報がございましたが、どちらも公益通報には該当はしないということで、弁護士さんからはお話を伺っております。1件は職員、1件は外部団体の者からの通報だったということです。
 そんなことで平成21年4月から実施していますが、昨年4月と今年4月と2回、職員の研修とは別に、市と取引のある業者。工事とか業務委託といった請負をしていただく業者の皆さんにも、この深谷市としての公益通報制度の説明会を開いております。150社、どれも中小零細ですけれども、ほとんどの方がこの公益通報者保護制度自体を知らない。
 それは我々、末端の行政としてもPRが足りないということで反省しなければならないのですけれども、もう一つには、公益通報というネーミングが末端のところでは、ぴんと来ない。説明の中で公益通報と言ってもわからないし、内部通報と言ってもわからない。内部告発ですと言うと、ああ、チクリかと。そこでやっと理解をしていただけます。これが実態なのかなという気がします。その中で今、実施をしているわけですが、今回参加させていただいて、いろいろと勉強をさせていただければと思っています。
 以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。今日は時間が少々短こうございまして、意を尽くせない委員の方もいらしたかと存じますが、今後の審議の中で御発言いただければと思います。
 本日の議題は以上でございます。本日は公益通報者保護制度の内容について御説明いただき、議論を行いましたが、次回以降、これまでの調査の結果の御説明などをいただきながら、制度の実態を把握し、これを加えた議論ができればと思います。
 最後に、事務局より次回日程について報告があるとのことですので、お願いいたします。

≪4.閉 会≫

○原事務局長 早朝からありがとうございました。遅れてまいりまして、申し訳ございません。事務局長をしております原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 次回の専門調査会ですが、7月22日木曜日の10時から行う予定にしております。本日は1時間という短い時間でしたので、公益通報者保護法の概要、各種ガイドライン、消費者庁における取組状況に関する説明もポイントのみということでお願いをしておりましたので、次回は公益通報者保護制度に関するこれまでの調査の概要及び昨年度に開催されておりました公益通報者保護制度の在り方に関する懇談会においてなされた議論などについて、消費者庁から改めて御説明をいただきながら、議論を深めていただきたいと思います。
 今日は皆さんからいろいろと御意見も出ましたけれども、制度の実態の把握をまず進めてみる必要があるかなということで、座長からも御示唆をちょうだいいたしましたので、委員の方々から制度の実態に関する御報告をいただくことも進めたいと思っております。具体的な実施方法等は、次回までに事務局において詰めさせていただきます。
 更に各委員は非常に御多忙ということで、今回もこのような時間帯の開催をしておりますが、第3回以降のスケジュールに関しましては、早速にまた御相談させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。

○島田座長 どうもありがとうございました。ほかに何かございませんか。

○中村委員 中村ですが、まさに今回要求されているのは附則の2条にあるように、この法律の施行状況について検討をして、改正すべきかどうか。まさに実態を出していただきたいのですが、今日は皆さんがいろいろな情報をお持ちだということがよくわかったので、これは言いっぱなしではなくて、できたらペーパーにして皆さん方の知っておられる公益通報に関する実態。ここら辺を次回にそれぞれペーパーでお寄せいただいたらと思います。よろしくお願いします。

○島田座長 中村委員から大変な宿題が出ましたが、事務局の方で今の御意見を踏まえまして、各委員と御連絡を取っていただいて、次で全部できるかはわかりませんが、22日に向けて御準備いただければと思います。よろしいでしょうか。

○原事務局長 はい。

○島田座長 それでは、時間をオーバーしてしまいまして恐縮でございますが、本日はこれにて閉会をさせていただきます。誠にお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)