分権クローズアップ[地方分権改革の旗手] 第13回 総社市

分権クローズアップ[地方分権改革の旗手コーナー]では、各地方の「地方分権改革の旗手」の方から、それぞれの地域における地方分権改革の取組や成果について紹介をしていただきます。第13回は、総社市総合政策部政策調整課の弓取克哉課長から寄稿いただいた記事を掲載します。


1.はじめに

総社市は,「自立した総社市」を目指し,様々な“弱者”に光を当て,やさしさを原点とした,総社流の独自政策を進めてきました。

現在,人口減少の時代にあって,総社市は人口が増加しており,これは,国の地方創生事業などに先駆け,総社市が独自流にこだわってきた,交通弱者に対するドアtoドアで1乗車300円の公共交通「雪舟くん」や,子育てをはじめ障がい児支援などを行う「子育て王国そうじゃ」の取組,障がい者が地域で安心して暮らすことができる社会を目指す「障がい者千人雇用」事業,過疎地域の幼小中学校において一貫した英語教育が受けられる「英語特区」事業など,様々な角度から政策をコツコツ行ってきた成果であると考えております。

これからの人口減少社会の到来の中で,地域の生き残りをかけていく上では,弱者に対する政策,ウィークポイントがある地域に対する政策を総合的に考え,弱点を克服していかなければなりません。

今回は,そのような中で,総社市が取組んできた「障がい者千人雇用」の取組,総社流地産地消「地・食べ」の取組について,紹介させていただきます。

 

2.事例紹介I 障がい者千人雇用

総社市では,平成20年から「子育て王国そうじゃ」を標榜し,子育て世帯に対する福祉施策を充実させてきました。この数年,出生数が増加傾向にあることは,その成果の表れと見ることができます。しかしながら,人口の約3~5%にあたる障がい者への支援については,総社市独自の取組みが行われていませんでした。そのため,障がい者の地域での生活状況について,行政ではほとんど把握できていませんでした。

このことから,平成22年に障がい者支援に目をむけ,新設される県立の特別支援学校の誘致を進めましたが,同年12月に隣接市である倉敷市に設置が決まりました。それであれば,特別支援学校を卒業する子どもたちが働ける場をつくることに目を向け,雇用に特化した施策「障がい者千人雇用」を打ち出しました。

その当時,市内障がい者数は3,152名であり,そのうち18~64歳の就労年齢層は,1,187名。行政が把握している就労者数は,一般就労に80名,福祉的就労に100名とわずか180名しかいませんでした。この現状を打破するため,残り1,000名すべての人が就労できる場と機会の提供を目標に取組がはじまりました。

この取組では,市が千人雇用実現に向けた理念条例を制定し,周知啓発するとともに,講演会を開催するなど積極的にその歩みを進めていきましたが,その中でも次の3点の取組が大きな効果をあげ,「障がい者千人雇用」を支えてきました。

1点目は,市内のハローワークと「福祉から就労へ」支援事業の協定を締結し,ハローワーク2階に「就労支援ルーム」を設置しました。これは,障がい者のひとりひとりの特性を把握し,寄り添いながらサポートできる市と就労機会を斡旋できるハローワークが連携した,きめ細やかな支援を提供するための体制整備です。この取組により,多くの障がい者にワンストップで働く場が提供されています。また,障がい者に限定した「就職面接会」を市とハローワークで開催し,毎年多くのマッチングに成功しています。


総社市資料1 協定
平成23年10月 総社商工会議所と「障がい者雇用の推進に関する協定」締結


2点目として,市内企業に障がい者に対する理解と雇用を促進するため,商工会議所と包括協定を締結しました。この協定により,商工会議所会員企業に助成制度の周知やセミナー,雇用意識調査,障がい者就労事業所の視察等を実施し,雇用者が障がい者についての理解を深めました。併せて,障がい者が貴重な戦力となるという認識を新たに共有するなど,障がい者雇用の気運を醸成しました。

3点目は「障がい者千人雇用センター」の設置であり,このセンター機能がすべてのハブとなり,この施策の中心的な役割を担うことになりました。センターの役割として,ひとりひとりへの寄り添い型支援を基本として,個人の特性から企業が求める人材とのマッチング,就労してからのアフターケアを支援しています。それに加えて,離職した障がい者がいれば,その理由を聞き取り,次の就労に繋げるとともに,雇用者に対しても継続した求人のために意見交換を積極的に行っていきました。こうしたことの積み重ねから,障がい者と雇用者双方からの信頼関係が生まれ,雇用に対するコーディネートと日常生活のトータルサポーターとして地域社会で障がい者が安心して暮らせるための必要不可欠な存在となっていきました。


総社市資料2 千人センター
総社市障がい者千人雇用センターを中心とした障がい者支援の連携体制(PDF形式:95KB)別ウインドウで開きます

こうした取組の積み重ねにより5年目を迎えた現在では,856人の障がい者が就労しています。また,市内には少なかった障がい者就労支援事業所は15事業所と急増し,元気に楽しそうに働く障がい者が街中で多く見られるようになりました。

しかしながら,こうした取組から見えてきた課題も多くあります。高齢を迎えた障がい者の終の棲家や自閉症・発達障がい者への支援,そして困り感がある子どもへの(3~5歳児における)早期サポート体制や福祉的就労から一般就労への移行推進などは今後,重要視されてくる内容であります。こうした課題に対して,障がい者雇用に取組んできた今までの経験を生かしながら,今後も総社流独自施策を全国に発信していきます。


3.事例紹介II 地産地消「べ」の取組

総社市は,中央部を南北に,高梁川という一級河川が流れており,農業では,この豊かな水を利用した水稲作が中心です。一部には軟弱野菜やナス,イチゴ,セルリー等の施設栽培も見られます。

また,特に,もも(白桃)やぶどうの果樹栽培は盛んであり,フルーツ王国岡山県の中でも有数の産地を形成しています。

しかし,原油価格の高騰や世界的な農産物の価格競争,農業者の高齢化など,農業を取り巻く状況は年々厳しくなっており,農作物を作っても収益が上がらないことから農業の担い手は減少し,耕作放棄地も増加の一途をたどっていました。

また,兼業農家など小規模農家においては,販路や価格競争などにおいて,競合することができず,農業経営自体が負の遺産といわれ,小規模農家の農地は,今後の耕作放棄地予備軍となっていました。

これに歯止めを掛け,新しい農業・農村のあり方を示し,一人でも多くの農業者を増やすべく,総社新農業会議を平成21年5月に設置。この会議が現在総社市流の独自施策となった「地・食べ」の原点です。

総社新農業会議は生産,流通,加工,消費,学識経験者,行政などの各分野から30名の委員で編成し,食料,農業及び農村に関する施策を実現するための方策や多様な事業体との連携のあり方等について具体的な取組みを検討しました。

総社新農業会議はおよそ1年半にわたる会議を行い,平成22年10月には総社市農業ビジョン~60の提言~という形で施策提言をいただきました。このビジョンに示された60の提言を実現するに当たり,共通して出たキーワードが地産地消です。

そして,地産地消の出口の部分,どこで市内産農産物の消費を拡大するのかというところが,1日6,400食作られる市内小中学校の学校給食でした。学校給食での地産地消をきっかけにして,その輪を広げていくために,総社市が作ったものが2つあります。

ひとつは,総社市が推進する地産地消の考え方を,市民の共通理念となるよう明文化した総社市地産地消推進条例です。

もうひとつは,地産地消を推進するために,農業者・農協・学校給食関係者・農業公社・行政で編成された実働部隊です。この実働部隊が,そうじゃ「地・食べ」委員会という名称で発足し,「地・食べ」という言葉は,総社市流の地産地消推進施策の愛称として,使われるようになりました。

そうじゃ地食べ委員会では,総社市で地産地消を推進するために年単位での計画作成と実施した事業の評価を行っており,販路の開拓や作付けの割振りなどについての協議が行われ,委員会のメンバーがそれぞれの立場・それぞれの現場でリーダーシップをもって地産地消を推進しています。

この中で,生産者から農産物を仕入れて,これを販売していく卸売業者の役割を担う事業体が,農業公社「一般財団法人そうじゃ地食べ公社」です。

この農業公社は,給食調理場と連携して地元の農産物を買いつけ,給食調理場に農産物を卸していく役割を担い,さらには,市内8店舗のスーパーに総社市産農産物の販売コーナーを設置して販売し,学校給食以外の販路を確保した上で、安定的に出荷が行える体制作りをしています。


総社市資料3 生産者との取引
総社市における生産者との取引体制図(PDF形式:35KB)別ウインドウで開きます


それにより地域の農業者が丹精込めて作った農産物が,学校給食に使用されたりスーパーに並んだりすることで,子どもたちや市民は安心してこれらを口にすることができるようになりました。地域の農業者が張り切って農産物を作り続けていくことで地域の農地が保全されたり,地域が活性化したりという好循環が見られるようになりました。

そして,現在では,基本方針である「儲かる野菜づくりで,総社の農業を元気に!」に基づき,次の3点について取組んでいます。

まず1点目は,契約農家の生産・出荷・流通体制を強化し,販路をさらに拡げていくことで,儲かる野菜づくりを実現することです。

2点目は,イベント出店やオンラインショップでの情報発信などを通じた地食べブランドの全国発信です。

3点目は,他の独自施策との連携や,子供たちを対象にした地食べの普及活動を行うこと等で,複合的に事業を活性化することです。

さて,このように,総社市の独自施策として取組んでいる地食べ事業ですが,総社市には他にも「障がい者千人雇用」の取組,デマンド交通の雪舟くん,自由枠一括交付金制度などの独自施策があり,「障がい者千人雇用」施策との連携では,農業を行う就労支援事業所等と協定を締結し,仕入れた農産物を学校給食やスーパー等で販売しています。

さらに、今年4月には,「ふるさと納税 米2万俵本部」を設置。お礼の品においしい総社産米を全国の皆様に味わっていただくとともに,米価の下落に悲鳴をあげる農家から,地食べ公社が上乗せした価格で買い上げるシステムを作り,水稲作農家を支援しています。

市ではこういった施策同士の横のつながりも重要だと考えており,それぞれの独自施策が相乗効果をあげ,さらに効果が2倍,3倍となっていくよう考え,農業分野のウィークポイントの克服や,支援が必要な方々の課題解決など,総合的,横断的な政策運営で挑戦を続けています。


総社市資料4 地食べ ①作業
「地・食べ」公社での作業風景
総社市資料5 地食べ ②スーパー
スーパーの「地・食べ」コーナーの様子
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