分権クローズアップ[地方分権改革の旗手] 第4回 飯田市 その1

分権クローズアップ[地方分権改革の旗手コーナー]では、各地方の「地方分権改革の旗手」の方から、それぞれの地域における地方分権改革の取組や成果について紹介をしていただきます。第4回は、長野県飯田市総合政策部企画課の清水秀敏課長補佐から寄稿いただいた記事を2回に分けて掲載します。今回は、その1となります。

1.はじめに

地方分権が進むにつれ、市町村においてもその地域の課題について自ら政策形成し、判断し、実行する力が求められるようになってきています。しかしながら、多くの自治体では依然として、国や県のメニューを選んで活用するという視点に立って、仕事を進めることが多いのではないでしょうか。今後、さらに地方分権を進めるには、今まで以上に基礎自治体の自立できる力を育むことが大切と考えます。

飯田市では、以前から公民館活動などを中心として、地域活動が盛んです。直面する人口減少、少子高齢社会の中で、地方にある資源や人材を活かして事業を立案し、実行すること、あるいは自立する力を支え、協働するなかで育むことは、本来の意味の地方分権の出発点になるのではないでしょうか。

そうした意味で、今回は6月30日に開催された地方分権改革シンポジウムで飯田市長が発表した2例の取組を紹介します。

2.事例紹介I 上村プロジェクト

上村地区は、飯田市の中心部から車で1時間ほどの人口500人ほどの地区です。南アルプスと伊那山地に囲まれた遠山谷の北部にあり、しらびそ高原や下栗の里、そして800年の伝統を持つ湯立て神楽などが有名な伝統のある地域です。

このような魅力のある地域でも、人口減少、特に年少人口の減少が顕著となる中、平成25年3月現在で保育園児2人が卒園したら、閉園せざるを得ないという状況になりました。市役所の次年度の予算査定の際、その方向性について最終的な判断が必要となり、飯田市長は、園児を確保し上村保育園を存続させるためのプロジェクト(上村プロジェクト)の立ち上げを指示し、地域住民の大きな協力を得て取り組んだ結果、保育園の閉園を当面回避することができました。

しかし、これは入口政策とも言える緊急避難的な措置であり、中長期的な視点に立てば、連続的な地域衰退要因の解決に向けた出口政策とも言える仕組みを必要としていました。

同時期、この地区を流れる小沢川で150kw程度の小水力発電を住民が主体となって実現ができるよう検討が進められていました。地域環境権とは、長野県飯田市が平成25年(2013年)に制定した「再生エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」の中で提唱した住民の権利であり、太陽光・風力・河川水・バイオマスなどの自然資源を地域の共有財産と捉え、これを再生可能エネルギーとして地域住民が優先的に利用する権利です。この考え方に基づいて、「保育園存続のための仕組みづくり(入口政策)」とこの「市民共同発電事業により得た財貨を地域へ再投資する構想(出口政策)」を結びつけることにより、その収益で上村プロジェクトも含め、地域が自主的に行う定住促進事業を賄い、地域に再投資できる仕組みをつくります。これにより、市民自らが地域の課題を自分たちで明らかにし、様々なやり方で解決する「地域の自主自立の精神」を大事にするプロジェクトの枠組みが誕生しました。

地域環境権は国レベルで法制化されているものではなく、地域としての価値基準を出発点として、独自に確立した概念です。地域環境権にあたる上位法令はなく、地域からのボトムアップでできています。これは、FIT(固定価格買取制度)が出来ても、地方に外部資本が参入し、投資を回収していくというだけでは、その地域における財貨循環や波及効果は小さなものになってしまいます。このために、地域の再生可能エネルギーは地域のものであるとした地域環境権の概念が生まれました。

上村プロジェクトは、複数の施策の複合化への取組にあたります。園児数の減少により、通常の判断であれば保育園が閉園となるところを、市長は800年の歴史やアイデンティティを消してはならないと方向性を示し、子育て支援策と地域環境権に基づく再生エネルギー政策という縦割行政のなかで融合することのなかった2つの政策を結びつけることによって、エネルギー、財貨、人の循環を中山間地域に創り出す装置を仕掛けました。

地方分権改革の旗手コーナー 第4回 飯田市(その2)へ >>

内閣府 Cabinet Office, Governmentof Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)