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分権クローズアップ[有識者へのインタビュー] 第8回 田尻佳史氏インタビュー(その1)

分権クローズアップコーナーでは、地方分権改革に関する様々な記事を掲載してまいります。第8回は、認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 田尻佳史常務理事・事務局長にお伺いした地方分権改革と市民参加についての記事を2回に分けて掲載します。今回は、その1となります。

田尻常務理事は、認定特定非営利活動法人日本NPOセンターにおいて、NPOの社会的基盤の強化などに取り組まれています。

(注)なお、本記事は、平成25年10月16日に開催された第7回地方分権改革有識者会議におけるヒアリングを基に、インタビュー形式に再編集したものです。

 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 田尻佳史常務理事・事務局長

 

たじり・よしふみ/大学卒業後、ケニアに渡り、現地のNGOが運営している養護施設にボランティアとして入り、運営メンバーとて4年間関わる。帰国後、大阪ボランティア協会の職員となり、特に企業の社会貢献活動推進の企画担当として従事。1996年11月より日本NPOセンターへ出向。非営利セクターの基盤整備の一環として、NPOと他のセクターとのパートナーシップづくりの企画をはじめ、コーディネーション、コンサルティングを行っている。

―――地方分権は市民に伝わっているのかという点についてお聞かせください。

田尻:地方分権は本当に市民に伝わっているのかという点についてですが、生活感として地方分権の実感が湧いていないのではないかと感じています。今回のお話を頂戴してから、各地域に赴く際、地方分権が生活にどのように生かされているかという話を様々な人にぶつけてみました。地方分権というものがどのようなものかわからないという方や、具体的に考えていないという方々が非常に多かったというのが実感です。
同時に、私は仕事上、各地方の県、市町村の方々、行政の方々と話をする機会もいただきますが、その中でお聞きしても、地方分権が市民生活において非常に効果を発揮している、関係していると思う方は手を挙げてくださいと申し上げたところ、ほとんど手が挙がらないということがありました。これは非常に手続論的なところがあるので、例えば国から県に移管されたパスポートの発行についても、市民にとってみると、パスポートセンターがたくさん増えたという程度の感覚であり、分権が進み、このようになってよかったという実感がなかなか湧いてこないというのが現状かと考えます。まだまだ始まったところですので、今後、なぜこのように変わったのかというのを調べていくと、我々の生活に非常に影響しているというものがあるのかもしれませんが、この辺がまだまだ弱いのではないかと考えます。
そのような意味では、可視化されていない地方分権の効果を、政府としてホームページ等々できちんと公開していこうという計画をされているようですので、地域の実情に合わせた行政サービスを行い、それが結果としてはこうなったということが、うまく見える仕組みができればよいと思います。
実際に地域に出向くと、非常に格差が広がっていることを実感します。例えば、私は東京に住んでいますが、先日、私の区では保育所の待機児童が460人ぐらいいるということが発表になりました。待機児童について、東京は非常に多いです。一方で、つい先日、富山や石川といった北陸地方に行く機会があり、話をしてみると、ちょうどこの時期から12月ぐらいに、保育園に預けていない子どもの家でも、保育園の対象になる年齢の子どもがいると、保育所から電話がかかってきます。来年はぜひうちの保育所に預けてくださいという電話です。それぐらい、地方では保育施設が定員割れを起こしています。費用等々に地域ごとに大きく差が出てきます。そのような意味では、同じ日本で生活していても、すぐに預けられない地域と、子どもを集めている施設がある地域もある。国一本の制度ではないという地方分権改革の効果が、このように地域差があるところでぐっと出てくると思います。それがなかなか市民には伝わっていないというように感じます。そういう意味では、可視化をどのようにしていくのかが、地方分権をさらに進めていく一つの大きなポイントになるのではないかと考えます。

―――次に、地方分権と市民参加について、お聞かせください。

田尻:分権が進めば進むほど、市民参加・参画が不可欠な社会になっていくのではないかと思います。これまでの数々の委員会の中の前文等を読んでいましても、市民がどういうかたちで参加しているのかということが非常に重要なポイントになっていくかと思います。
市民の参加、分権を進めていく中で、全てが基礎自治体で対応できるかというと、そうとも限りません。そのような意味では、財源も非常に厳しく、地域ニーズも非常に多様化する中で、画一のサービスではなく多様なサービスを提供することが大切です。ただ、多様なサービスを提供するということは非常にコストがかかりますので、財政難の中でどのようにしていくのかという議論は、この間ずっと、政府でも地域でもなされてきたと思います。
その中で、前民主党政権では「新しい公共」というキーワードで市民活動を活発にすることにより、公のサービスというのは公の機関だけではなく、みんなが考えて、対応していくべきだという方針を出して、その施策も実施しました。
そして、今度は自民党政権になり、「共助社会づくり」を打ち出しています。安倍総理の言葉を借りると、これは、全員参加の国づくりという言葉で表現されています。まさに公共なるもの、我々が生活していくような社会的なサービスを、行政や民間企業だけではなく、市民自ら、国民自らがそれを解決していく。まさに自助・共助・公助のうちの共助を強く打ち出すという政策の推進が進んでおります。
私も共助社会づくりの懇談会の末席に座らせていただいて、いろいろな議論をしております。民主党の時代から自民党の時代にかけて、かれこれ4年、5年、NPOに対する、もしくは市民活動に対する支援策もたくさん打っていただいておりますが、まだまだ入り口のところというのが現状であり、この部分はさらに強く進めていく必要があるのだろうと考えています。
そのような中でも、未だに行政に依存した市民や住民は、何かあれば行政に連絡をとって解決してもらおう、要求は行政に持っていこうということで、自らが課題解決に取り組むという姿が、地方へ行けば行くほどなかなか見られなくなります。都市部も実はそうです。数が多い、人が多いのでそれが目立たないだけですが、実際に自分たちがアクションを起こすというのはまだまだ少ない。その辺が課題だと考えます。
地方公共団体の職員の方々と話をしていても、国に対して何でも要求したり、依存したり、そのような姿勢がまだまだ強いという気がしています。ただ、そればかり言っていても何も進みません。そのような状況で、地域のNPOに対する期待値が非常に上がっています。地域課題の解決に向けた取組が、市民主体の活動としてなされているということです。
先ほど申しましたような保育の問題でも、朝子どもが高熱を出すと保育園に預けられない。では、それをどうしたらいいのか。特に共働き世代の多い都市部などでは、どちらかの親が休まないといけないというのが頻繁に続きます。そのようなときに、病気になったときだけ預かりますよというようなサービスもNPOで創出したものです。また、教育の分野についても言われていますが、学校にうまくなじめず通い続けられないという子どもたちに対するサービスが公的にはなかなかありません。そういう子どもたちのためのフリースクールを展開しているNPOもあります。最近は学校だけではなく、学校を卒業した後、就職できないという若者も非常にたくさん増えています。それに対し、何とか社会的な居場所を作ろうというような事例もあります。そのような子どもや高齢者、そして障害を持っている方々といった援助を必要とする方々それぞれに向けた細やかなサービスをNPOは探っています。また我々が生活する上での重要な環境の問題等に関しても、2年前に起きました震災の復興という目的を持って、一人一人の力ではなかなか解決できない問題のために、非常に多くの市民が組織を作って、安定した、継続的な活動を提供していこうという動きが広がっています。
ただ、NPOの弱さとして、行政と違い、広域的な課題についてはなかなか対応し切れません。そういう意味で、個別の活動としての点がたくさん集まることにより、広域的、すなわち面的に対応をしていこうという機運が高まっています。NPO間のネットワークが必要だと言われるのはこのあたりです。反対に、行政や企業ではやらないような小さな課題、もしくは行政のように、一律公平で担保していかないといけないサービスでは対応し切れない、非常に小さな課題というものに対して取り組んでいくというのが、NPOの一つの強みかもしれないとも考えます。
このようにニーズの多様化の中で、NPOに対する期待が大きくなっています。例えば被災地では、1年以上仮設住宅での生活が続いています。最近はニュース等マスメディアの報道も非常に減りましたが、課題は非常に多様化しています。家は与えられたが、これから生きていく希望がなかなか持てないと、家に閉じこもりっきりの方々がいます。そこに訪問するような仕組みも今、行政で作られ、地方公共団体の方が定期的に訪問されていますが、これは非常に難しい活動です。訪問しても、住民の方に扉を開けてもらえないという事態が起こるわけです。私は元気にやっていますと言われると、それ以上ここを開けて顔を見せてくださいとはなかなか言えません。
それをどうしたらいいのかというところで、その地域で同じように訪問活動をする団体は、例えばお弁当のような、介在するものを持っていくことにより、扉を少し開けてもらいます。そうすると、それを差し上げるためには扉を開けてもらわなければならず、開けてもらうと顔が見え、元気にしているか、家の中が少しのぞけて大丈夫なのかという確認もできます。そういう様々な工夫がなされているという意味で、多様な復興の支援において、NPOが必要だということです。
各基礎自治体でもNPOの必要性が指摘されるようになってきましたが、法律もNPO法が1998年にでき、現在4万8,000を超えるNPO法人が存在します。この度の震災を受けて、2012年には大きな改正がありました。これも実は地方分権に合わせた法改正でした。もともと47都道府県と内閣府で認証していこうということで進んできましたが、実際にはNPOというのは非常に狭い範囲の地域で活動しています。県が見てもその団体がきちんと活動をしているのかどうかも分からないので、そのような業務、事務をできるだけ市町村に近いところに持っていこうという話が出てきます。そして、国が見ても、佐賀県だとか富山県のNPOのことはよくわからないので、内閣府は認証をやめて各都道府県にお任せしましょうと、どんどんと地域におりていく。それと同時に、今回の改正で非常に大きかったのは、地域ごとの条例により、特例支援を定めたり、税制優遇を受けたりすることができるようになったことです。
ただ、これはなかなか進んでいないというのが現状です。なかなか進んでいないと言っても、実を言うと全国の統計データがありません。どこの県、どこの市がその地域に合った条例を作っているかという統計データが、残念ながら内閣府にもありません。数が分からないのですが、各都道府県のホームページ等々を見ていきますと数が出てきます。そして、例えば、もともとNPO法人が多く、NPOの推進には非常に力を入れてきた神奈川県のホームページを見ますと、33の市町村がありますが、そのうち特例支援など、地域に合わせた形での条例を作っているところは3分の1の11しかありません。これを全国約1,700の市町村に当てはめてみると、神奈川で3分の1ですから、500にも満たないだろうと推察されます。そのような意味では、せっかく大きな枠組みができても、市町村ごとに作るNPO法人の活動を後押しする条例はまだまだできていない、重点課題に対する取組が進んでいないというのが現状です。
と同時に、残念ながら、条例を制定していても、県と同じ条件で認めるという市町村が多い。そういう意味では、地域の独自性というのはなかなか発揮されていない。地方分権が進んでいく中で、うちの地域は高齢者が非常に多く、その対策に取り組む団体に対しては税制優遇を当てはめるとか、子どもの課題があるので、それに取り組む団体に対して補助を行うとか、ピントを絞ると非常に分かりやすく、見えやすいですし、分権改革の効果が分かりやすく出てきます。しかし、なかなかその段階に到達していないというのが現状です。

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