分権クローズアップ[有識者へのインタビュー] 第3回 谷隆徳氏インタビュー(その3)

分権クローズアップコーナーでは、地方分権改革に関する様々な記事を掲載してまいります。第3回は、日本経済新聞社 谷論説委員にお伺いした地方分権改革の総括と課題についての記事を3回に分けて掲載します。今回はその3となります。

谷論説委員は、日本経済新聞社において編集委員兼論説委員を務められており、地方行政・財政全般を専門とされています。

(注)なお、本記事は、平成25年9月30日に開催された第5回地方分権改革有識者会議におけるヒアリングを基に、インタビュー形式に再編集したものです。

 

 

たに・たかのり/東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。1986年日本経済新聞社入社。大阪経済部、岡山支局、金融部、地方部を経て、2005年から地方部編集委員、2006年から論説委員兼務。

―――地方分権改革の今後の取組に関して必要と思うこと、不安なことについてお聞かせください。

谷:今後の取組に関して必要と思うこと、不安なこととしては4点ございます。
1つ目は、先ほどの日経グローカルの記事とほぼ同時期の2013年1月に、日経新聞の本体でも分権20年とあわせた特集の記事を書きました。その時に、何人かの首長の方々にインタビューさせていただきました。ある首長には、分権改革から20年経ったのですが、富士山に例えたら何合目になりますかと私は質問しました。そうしたら、即座に5合目であると言われました。その心は何かと言いますと、5合目まではバスでみんなで一緒に登れるが、そこから先はバスから降りて登りたい者だけがそれぞれのピッチで登るのだとお話しされていました。私はそれを聞いて、うまいことをいうものだなと思ったのですが、同時に感じたことは、本当に5合目まで来ているのかということを確認しなければいけないということと、もし山として考えるのであれば、その山頂といいますか、目標は何なのかを改めて考えなければいけないということです。特に、地方自治体がそれぞれ団体ごと、人口規模別でも何でもいいですが、さらに、その全体を取りまとめるような形で、もう一度、分権改革の現状はどうなっていて、どこを目指すのかについて摺り合わせなければいけないと強く感じております。ちなみに、先ほどの新地方分権構想検討委員会では、当時、第2次改革後の方向性として、地方分権型道州制と憲法改正に言及していました。
2つ目は、大震災以降、地方自治体の国への依存体質が強まっているのではないかと感じています。2012年暮れに中央自動車道の笹子トンネルの崩落事故がありましたが、それを受けて国土交通省が調査して地方に行くと、地方の道路のトンネルはあまり検査も何もされていないということで、道路法が改正されました。その中では、地方自治体に人材がいなければ地方道や市町村道などの補修を地方整備局が代わりにやるという国による代行制度が盛り込まれました。国民からすると、国であろうと県であろうと市町村であろうと、きちんと道路を補修してくれれば良いのですが、分権改革に関係してきた、またそれを取材してきた人間からすると、いわゆる補完性の原理から考えたとき、市町村が難しいならばやはり都道府県がやるべきだろうと考えます。例えば過疎法などでも、過疎市町村に代わって下水道や道路を都道府県が代行するという仕組みがありますが、この法律では直接国に行ってしまっています。理由は、市町村だけではなくて都道府県も人材がいなければ国に代わりにやってくださいということを求められるという法律の立て付けにしてしまったので国に行ってしまったのですが、分権改革を進めるという中で余り議論されないまま、本来ならば、できる限り市町村がやるべきものであり、それが難しいならば都道府県がやるべきものが国に直接行ってしまっている点に関してややどうかと感じております。
3つ目は、地方議員の意識改革です。第2次分権改革の柱は条例の制定権の拡充でしたが、それに対する議員の反応が鈍かったと感じています。今後、この有識者会議でシンポジウム等をされると聞いております。できれば、そうした地方議員の方々も巻き込むような形で進められると良いと考えます。
4つ目は、国と地方の協議の場の活性化で、これは有識者会議の場でも古川知事が知事会として分科会を作ってほしい等の意見をいつも出されていますが、私もそのとおりだと考えています。ある程度、今の分権改革は新しく何かをやるというより、今までやってきたことについてどのように成果を出すかのという局面にあると感じております。このままだと国と地方の協議の場が形骸化してしまいます。それはぜひ避けていただきたい。
最後に、何よりも地方自治体自身が個性を活かして自立した地方をつくるために何が必要なのかを全国市長会、全国知事会及び全国町村会、さらには全体を合わせて考えてほしいということが私の今考えている一番の意見です。 

 ―――地方分権を進めるにあたっては、住民にどう説明し理解してもらうかという点も重要になると考えられます。住民の理解を進めるにあたって何かアドバイスはございますか。

谷:問題は、それぞれの地域で例えば町おこしなどを一生懸命されているNPOの方やリーダーの方々がそうした市町村に権限が移ってきた方が良いと思っているのかどうかというところがポイントだと考えます。地域のそれぞれの地区のリーダーの方々が、分権が必要だと思ってもらわないと、行政の中だけで言ってもなかなか伝わらないし、普通の一般の住民の方に分権の話をしてもなかなか難しい。住民は、変な、悪い事例を表現すればついてきます。伝統的に言えば、バス停を1m動かすのも駄目だといった類の話であればついてきますが、こうすれば良くなるという話だと難しいので、まずはそうした地域のリーダーの方々に、理解度と言うと偉そうですが、国、県、市町村の役割分担をどうあるべきかということに対する率直な意見を聞いて進めた方が良いと常日頃感じております。

―――本日は、大変御示唆に富む御意見を頂戴いたしまして、重く受けとめ、咀嚼しながら今後の議論を進めてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

谷:どうもありがとうございました。

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