分権クローズアップ[有識者へのインタビュー] 第3回 谷隆徳氏インタビュー(その1)

分権クローズアップコーナーでは、地方分権改革に関する様々な記事を掲載してまいります。第3回は、日本経済新聞社 谷論説委員にお伺いした地方分権改革の総括と課題についての記事を3回に分けて掲載します。今回はその1となります。

谷論説委員は、日本経済新聞社において編集委員兼論説委員を務められており、地方行政・財政全般を専門とされています。

(注)なお、本記事は、平成25年9月30日に開催された第5回地方分権改革有識者会議におけるヒアリングを基に、インタビュー形式に再編集したものです。

 

 

たに・たかのり/東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。1986年日本経済新聞社入社。大阪経済部、岡山支局、金融部、地方部を経て、2005年から地方部編集委員、2006年から論説委員兼務。

―――まず、メディアからみた地方分権改革の現状についてお聞かせください。

谷:メディアから見た分権改革の現状ということで、まず、日経グローカルの調査結果をお示しします。

日経グローカルの調査(「地方分権 首長に聞く」から)
2013年1月に掲載 都道府県と市が対象(回答率83%)

基礎自治体への権限移譲 義務付け枠付けの見直し
50万人以上の市 (1)88%  (2)12% (1)88%  (2) 4%
30万~50万人の市 (1)58%  (2)26% (1)55%  (2)32%
20万~30万人の市 (1)42%  (2)42% (1)50%  (2)39%
10万~20万人の市 (1)34%  (2)37% (1)34%  (2)41%
5万~10 万人の市 (1)29%  (2)38% (1)32%  (2)39%
5万人未満の市 (1)18%  (2)38% (1)23%  (2)44%
(注) (1)「進めてほしい」  (2)「ある程度進めてほしい」

日経グローカルは、我が社が地方自治体向けに出している雑誌であり、その雑誌で「地方分権 首長に聞く」というタイトルの特集をまとめました。首長の方々に調査をし、その結果をまとめたものです。その中で、今後どのような改革を求めているのかという設問を立てました。まず、基礎自治体への権限移譲ということですが、50万人以上の市を見ると、(1)「進めてほしい」が88%、(2)「ある程度進めてほしい」が12%、合わせて100%。全ての市が権限移譲を進めてほしいと回答していますが、30万~50万の市の場合、「進めてほしい」が58%、「ある程度進めてほしい」が26%と下がってきまして、人口規模が小さくなるにつれて「進めてほしい」という割合が低下しています。5万人未満の市になると、「進めてほしい」は18%で2割を切っています。ただし、「ある程度進めてほしい」を合わせると過半数になっているわけですが、この調査を見ても、人口規模が少ない地域は、いわゆるマンパワーの不足と財源に対する不安があって、やや分権に消極的になっているということだろうと考えます。
義務付け・枠付けの見直しを見ても、50万人以上の市で「進めてほしい」が88%、「ある程度進めてほしい」が4%でほとんどが支持しているのですが、5万人未満の市になると「進めてほしい」が2割程度に低下しています。義務付け・枠付けの見直しの方は、現実的にそれほど仕事量の増大にはならないとは考えますが、やはり不安を抱えています。そうした意味で、私はこの調査を行って、その結果を見てみて、20年経って分権改革は1つの壁にぶつかっているのだろうという認識を持っています。そして、こうした人口が少ないところほど改革に消極的になるということは、地方税財政制度の見直しや道州制に関しても同様で、例えば地方税財政制度の見直しだと、人口50万人以上の市は92%が「進めてほしい」と答えているのですが、5万人未満になると29%、3割に落ちるという結果になっています。

続きまして、過去20年間の地方分権のメディア露出度を、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞及び産経新聞の全国紙5紙並びにNHKを対象として調べてみました。

 

過去20年間の「地方分権」のメディア露出度
全国紙5紙+NHKに掲載された記事の本数(「地方分権」「地域主権」で記事を検索)

1993年  2100本 2000年  4800本 2007年  3500本
94年  2600本 01年  3700本 08年  3200本
95年  2900本 02年  3000本 09年  5400本
96年  3600本 03年  5200本 10年  4400本
97年  3600本 04年  3200本 11年  2300本
98年  2600本 05年  3000本 12年  2500本
99年  4100本 06年  2900本 13年  1050本
(9月20日まで)
(ちなみに13年「道州制」は1800本、「TPP」は1万3000本)

NHKはニュースで放映されたものが活字になっているので、この6つの媒体の中で、「地方分権」という言葉及び「地域主権」という言葉が入った記事が何本あったかについて、検索システムを使い、数えてみました。大体毎年「地方分権」という言葉が入っている記事は2,000~3,000本載っていますが、幾つかの時代では上振れしています。最初が99年の4,100本と、2000年の4,800本です。御存じのとおり、分権一括法が制定されて施行されました。私自身も当時を振り返ると、機関委任事務がなくなった、国と地方は対等、協力の関係になったなどの記事を書いた記憶があります。次の山が2003年の5,200本で、これはいわゆる三位一体改革が始まった時期になります。3番目は2009年の5,400本と2010年の4,400本で、民主党政権ができて、当時の鳩山総理が地域主権改革は一丁目一番地の改革だと言ったことに伴って記事が増えました。
問題は、2013年が9月20日までで1,050本ということです。おそらく、通年でも1,500本を切りそうで、そういう意味では過去20年間、21年間の間で最も分権に絡む記事がメディアに載らないという年になっています。理由は、これは類推でしかないのですが、一つは、どうしてもメディアというものは新しいもの好きだからであると考えます。法案を出す、出さないという議論はありますが、具体的にまだ何も検討されていない道州制の記事が1,800本あります。そちらに目が行ってしまうと、足元の改革に対するいわゆる感度が低下してしまうということです。もう1つは、おそらく分権はもう既に実践段階に入っていますので、そうした意味で言うとメディア側の努力不足と同時に、個々の地域、個々の地方自治体からの情報発信が足りないのだろうと感じます。本来ならば、個々の地方自治体でこういう条例を作ったと、いろいろな話をそれぞれの地域で取り上げて、全体でまとめる形でいろいろな動きが起きていますというような記事は累積的に増えていくのですが、そうした動きがないのだろうと考えています。ですので、私は、分権は1つの壁にぶつかっていると認識しています。あわせて、話題性も低下していることをメディアにいる人間として感じております。

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